投資計画手法 - 大阪大学 経済学研究科

投資計画手法
会計利益とキャッシュフロー
投資採算分析手法

投下資本利益率法(ROI)、回収期間法
DCF法:NPV法、IRR法


演習1~6
(c)Makoto Tomo 2006
1
会計利益とキャッシュフロー

会計利益=期間損益計算の結果


キャッシュフロー=現金収支会計



永遠に続く企業を想定し、1年ごとに収益、費用を割
り振り計算上の利益を出す
プロジェクトの成否は最後に現金がいくら残るか
キャッシュの時間的価値を考慮に入れる
見方が違うだけで、プロジェクトに限れば一致
(c)Makoto Tomo 2006
2
CF計算での減価償却費の加算




減価償却前利益≒キャッシュフロー
発生主義会計では、償却資産の購入翌年以降
は、現金支出していないのに費用として計算する
会計利益 =
減価償却費控除前利益 - 減価償却費
(≒現金流入額)
(非現金流出)
減価償却費控除前利益 =
会計利益
+ 減価償却費
(≠現金流入額)
(非現金流出)
(c)Makoto Tomo 2006
3
有形固定資産とは



定義:企業が営業目的のため長期(1年超)
にわたって使用する有形の資産。
例:建物、土地、備品、車両運搬具、機械
参考:無形固定資産と消耗品


無形固定資産:電話加入権、特許権,借地権,
商標権,鉱業権,漁業権等、営業権(のれん)
1年未満の資産:消耗品(紙、鉛筆、FD)
(c)Makoto Tomo 2006
4
固定資産の購入

購入時の処理


取得付随費用(運賃、据付費、税金など)を含める
仕訳



固定資産の個別の勘定を使う
建物 5,000,000 / 当座預金 5,000,000
備品 1,000,000 / 現金
1,000,000
(c)Makoto Tomo 2006
5
減価償却費


設備資産は年が経つに従って使用価値が
減っていく。減価に見合う金額を費用化す
る。この費用化の手続を減価償却という。
減価償却費の計算(定額法)

減価償却費=(取得原価-残存価額)÷耐用年数



耐用年数:資産を使う年数(一般に法定耐用年数を使う)
取得原価:購入時の価格+付随費用
残存価額:耐用年数経過後の使用価値
(c)Makoto Tomo 2006
6
減価償却費の処理方法

直接法と間接法

直接法:資産から直接控除。B/Sでは控除後の帳
簿価額のみが表示される。


100
間接法:資産から減価償却費累計額を用い間接
控除。B/Sでは取得価額、減価償却累計額、控除
後の帳簿価額の3種類が表示される。


減価償却費 100 / 建物
減価償却費 100 / 建物減価償却累計額 100
一般には、間接法を用いる。
(c)Makoto Tomo 2006
7
演習1 減価償却費の計算




営業用のトラックを\640,000で購入
耐用年数4年
残存価額は取得原価の10%
減価償却費(定額法)を計算しなさい。
(c)Makoto Tomo 2006
8
現金支出と減価償却費
200,000
100,000
0
-100,000
0
購入時
144,000
144,000
144,000
144,000
1年目
2年目
3年目
4年目
-200,000
-300,000
-640,000
-400,000
費用
現金支出
-500,000
-600,000
-700,000
(c)Makoto Tomo 2006
9
帳簿価格と減価償却費
700,000
600,000
0
減価償却費
帳簿価額
144,000
500,000
144,000
400,000
300,000
640,000
144,000
496,000
200,000
352,000
208,000
100,000
144,000
64,000
0
購入時
1年目
2年目
(c)Makoto Tomo 2006
3年目
4年目
10
投資採算分析手法の種類
1.
会計的利益率法(ROI法)

2.
回収期間法

3.
会計利益を予想し、(平均)投下資本
に対する年平均の利益率を計算
最初の投資額が何年で回収できるか
DCF法(NPV法とIRR法)

キャッシュフローに時間価値を考慮
(c)Makoto Tomo 2006
11
会計的利益率法(ROI法)


会計利益を予想し、(平均)投下資本に
対する年平均の利益率を求める。
ROI=平均利益額÷(平均)投資額

分母には、平均投資額を用いる他に、総投
資額を用いることもある。
(c)Makoto Tomo 2006
12
演習2 ROI
つぎの投資案を会計的利益率法で評価せよ
年
0
正味CF
(2,000)
減価償却費
会計的利益
投資残高
平均投資額
1
400
500
2
3
4
平均
600 800 1,000
500 500
500
500
(c)Makoto Tomo 2006
13
回収期間法

最初の投資額が何(N)年で回収できるか
N 1
N
 利益  投資額 ≦ 利益
0
j
J 1
j
J 1
利益j=税引き後利益j+減価償却費j
プロジェクト
PJ_A
PJ_B
PJ_C
初期投資
-100
-100
-100
1年目
50
0
50
2年目
50
100
50
(c)Makoto Tomo 2006
3年目
回収期間
200
2
200
2
500
2
14
演習3 回収期間法
つぎの投資案の回収期間を計算せよ
年
0
正味CF
(2,000)
CF累計
減価償却費
会計的利益
投資残高
平均投資額
1
400
500
2
600
500
(c)Makoto Tomo 2006
3
800
500
4
平均
1,000
500
15
ROI法、回収期間法の問題点



キャッシュフローのタイミングを無視(ROI法)
回収期間後の利益を無視(回収期間法)
時間的価値を無視(両者とも)
(c)Makoto Tomo 2006
16
DCF法
Discount Cash Flow method


キャッシュフローに時間価値を考慮する方法
NPV法(正味現在価値法)
1.

現在価値(金額)で考える方法
IRR法(内部利益率法)
2.

正味現在価値がゼロになる率(利益率)を基
準に考える方法
(c)Makoto Tomo 2006
17
時間的価値1



0
複利計算 1
計算結果 1
「今の1万円=5年後の1万円」か?
預金の計算:複利計算
金利が10%の時
1
=1*1.1
1.1
2
=1.1*1.1
1.21
3
4
5
=1.21*1.1 =1.331*1.1 =1.4641*1.1
1.331
1.4641
1.61051
(c)Makoto Tomo 2006
18
時間的価値2


今の1万円が5年後に1.611万円
5年後に100万円にするために今いくら必要か



1:1.611=X:1
X= 0.621
こういう計算を割引計算という

時間価値分を割り引いて(少なめに)見積もる。
金利
10%
年前 (5) (4) (3) (2)
(1)
0.621 0.683 0.751 0.826 0.909
(c)Makoto Tomo 2006
0
1.0
19
1円の現在価値

1円の現在価値とは

複利計算を逆数にしたもの
0
複利計算 1
逆数
=1/1
計算結果 1
1
1.1
=1/1.1
0.909
2
1.21
=1/1.21
0.826
3
1.331
=1/1.331
0.751
(c)Makoto Tomo 2006
4
1.4641
=1/1.4641
0.683
5
1.61051
=1/1.61051
0.621
20
演習4 時間的価値

金利 20%の時、1円の現在価値を5年分
求めよ
金利
0
1.0
20%
1
2
(c)Makoto Tomo 2006
3
4
5
21
NPV法(正味現在価値法)とは


キャッシュフローの現在価値 - 投資額
計算ステップ




1:年々の正味キャッシュフローを計算する
2:1を割引率で割り引く
(割引率:金利相当!?)
3:2をすべて合計し、初期投資額を引く
判断基準:NPV≧0
(c)Makoto Tomo 2006
22
NPVの例題

つぎのプロジェクトのNPVを計算せよ




初期投資:20,000円
正味キャッシュフロー:初年度5000円
正味キャッシュフローの増加率:年20%
割引率:10%
金利
1円のPV
正味CF
PV
0
1.0
-20,000
10%
1
0.909
5,000
4,545
2
0.826
6,000
4,959
3
0.751
7,200
5,409
(c)Makoto Tomo 2006
4
5 計
0.683 0.621
8,640 10,368
5,901 6,438 7,253
23
演習5 NPV法
つぎの投資案のNPVを計算せよ
金利
0
1円のPV
1.0
正味CF
(2,000)
PV
(2,000)
10%
1
2
400
600
(c)Makoto Tomo 2006
3
4 計
800 1,000
24
IRR法(内部利益率法)
正味現在価値がゼロになる率を基準に考える方法
IRRが一定基準のものを採択する。


金利
1円のPV
正味CF
PV
0
1.0
(2,000)
(2,000)
金利
1円のPV
正味CF
PV
0
1.0
(2,000)
(2,000)
12%
1
2
3
4 計
0.893 0.797 0.712 0.636
400
600
800 1,000
357
478
569
636
40
13%
1
2
3
4 計
0.885 0.783 0.693 0.613
400
600
800 1,000
354
470
554
613
-8
IRR= 12.83%
エクセル(IRR関数)=irr(-2,000~1,000のセル)

(c)Makoto Tomo 2006
25
NPVとIRR の図解
NPVとIRR
1,500
1,000
同じCFでも、割引率が高く
NPV_a
なると、厳しい評価となる
500
0
0%
-500
-1,000
5%
10%
15%
20%
IRR
25%
30%
35%
40%
NPVとIRR の逆転2
NPVとIRR
2,000
NPV基準
1,500
1,000
NPV_a
NPV_b
500
IRR基準
0
0%
-500
-1,000
5%
10%
15%
20%
25%
30%
35%
IRR
40%
NPVとIRRが逆転する理由

再投資の利益率が異なるから
NPV:資本コスト(あらかじめ決めた値)
 IRR:内部利益率(自動計算された値)
→NPVのほうが理論的


IRRの存在意義
 同質的でない複数の案件比較に便利
 (例)社内投資基準:IRR20%以上
(c)Makoto Tomo 2006
28
NPV法、IRR法の問題点

キャッシュフローの予想が恣意的


10年先のCF予測がどの程度正確か?
NPV法の問題

割引率(リスク)の決定が恣意的


割引率により意思決定が異なる可能性有り
IRR法の問題
IRRが複数存在する可能性がある。
 再投資が、内部利益率で決定される

(c)Makoto Tomo 2006
29