改正育児・介護休業法を職場でいかすために

改正育児・介護休業法を職場でいかすために
日本労働組合総連合会(連合)
男女平等局
レジュメ
 育児・介護休業法が改正された背景
 データで見る育児・介護の現状
 改正育児・介護休業法の概要




ポイント①妊娠・出産後も同じ職場で働き続けられるために
ポイント②父親も育児に参加出来るようにするために
ポイント③家族の介護をしながら働き続けるために
ポイント④もしも、育児休業取得などを理由に不当な扱いを受けたなら
 改正育児・介護休業法を職場でいかすために
育児・介護休業法が改正された背景
仕事と家庭の両立の現状
今後の両立支援の基本的な考え方
○就労している女性の約7割が第1子出産を機に退
職※女性の育児休業取得率は7割超
○育児休業後に両立を続けられる見通しが立たない
○育児休業後も継続就業しつつ子育ての時間が
確保できる働き方の実現
○男性の育児への関わりが十分とはいえない
※休業取得率は1.23%に過ぎない。一方、育児休業を取得したい
と考えている男性労働者は約3割
○男性の家事・育児分担の度合いが低いため、妻の子育て不安が
大きく、少子化の一因となっている
○父母と子どもとの時間が十分にとれない
保育所への送り迎えが余裕を持ってできる等
○全ての企業の労働者が育児期に短時間勤務
が選べるようにする。
○父親も子育てに関わることができる働き方の実
現
○父親の育児休業取得を促進させ、育児参加を
促す。
○家族の介護のために5年間で約45万人が離転職
○要介護者を日常的に介護する期間に、年休・欠勤
等で対応している労働者も多い
○労働者の介護についても、状況に応じた両立
支援制度の整備
現行の育児・介護休業法では十分に対応できて
いない。
子育てや介護をしながら働くことが普通にできる
社会への転換
○労働者の介護の状況はさまざまであり、状況に応じた
利用しやすい制度とする。
データで見る育児・介護の現状(1)
子どもの出生年別、第1子出産前後の就業経歴の構成
100%
4.7
5.7
6.1
8.2
34.6
32.3
32.0
25.2
90%
80%
70%
60%
50%
40%
35.7
37.7
39.5
19.9
16.4
12.2
5.1
8.0
10.3
41.3
その他・不詳
妊娠前から無職
出産退職
就業継続(育休なし)
就業継続(育休利用)
30%
20%
10%
0%
1985~89年
1990~94年
1995~99年
子どもの出生年
11.5
13.8
2000~04年
出所:国立社会保障・人口問題研究所「第13回出生動向基本調査(夫婦調査)」
育児休業を利用して就業
を継続した女性は増えてい
るものの就業継続者その
のは1980年代後半以降
25%前後で大きく変化して
いない。
第1子出産を契機に離職し
た女性はむしろ増加してい
る。
データで見る育児・介護の現状(2)
育児休業取得率の推移
100.0
90.6
90.0
80.0
72.3
70.0
60.0
女性の育児休業取得率は、
年々増加し90%を超えている。
64.0
56.4
女性
男性
50.0
40.0
30.0
20.0
10.0
0.0
0.42
1999年
0.33
2002年
0.50
1.23
2005年
2008年
出所:厚生労働省「雇用均等基本調査」(平成20年)
男性の育児休業取得率は、
2008年に大幅に増加したものの
わずか1.23%にすぎない。
国の「ワーク・ライフ・バランス憲章」に
基づき、政労使が2007年に策定した
「仕事と生活の調和推進のための
行動指針」では女性80%、男性10%
の取得率を目標としている。
データで見る育児・介護の現状(3)
家族の介護・看護のために離・転職した
雇用者の数とその年齢割合
79,800人
15.9%
129,100人
25.7%
60歳~
40~59歳
15~39歳
293,200人
58.4%
家族の介護・看護のために離
転職している労働者が、2002
年からの5年間で約50万人存
在する。
総計502,100人
男性87,400人、女性414,700人
出所:総務省「就業構造基本調査」(平成19年)
その大半は、40歳代、50歳代
である。
改正育児・介護休業法の概要
 妊娠・出産後も同じ職場で働き続けられるために
・子育て期間中に、短時間勤務や残業なしで働き続けるようにする。
・子の看護休暇制度を拡充する。
 父親も育児に参加出来るようにするために
・父親の育児休業取得を促進する仕組みを設ける。
 家族の介護をしながら働き続けるために
・介護のための1日単位の休暇制度を設ける。
 実効性の確保
・紛争を迅速に解決するための仕組みを設ける。
・法違反に対する公表制度を設ける。
改正育児・介護休業法のポイント①
<妊娠・出産後も同じ職場で働き続けられるために>
法改正のポイント






3歳までの子を持つ親が利用できる短時間勤務制度(原則として1日6時間)を事
業主が設けることが義務化されます。
3歳までの子を持つ親は請求すれば所定外労働(残業)が免除されます。
育児休業の再度取得ができる要件に「子どもの負傷や疾病で2週間にわたる世
話が必要となった場合」、「保育所に入所申請を行ったが当面入所できない場合」
が加わりました。
育児休業取得に加えて、短時間勤務制度や所定外労働免除制度を利用したこと
による解雇や人事処遇面での不利益な取り扱いが禁止されます。
育児休業等の申請は、これまでの書面に加えて、メール、FAXでも申出できるよう
になります。なお、事業主は、休業の申出を受けると速やかに労働者に申出を受
けた旨を通知しなければなりません。→具体的な申請方法は次ページ参照
子の看護休暇制度が拡充され、小学校就学前の子がいる労働者は、子が1人で
あれば年5日、2人以上であれば年10日の休暇取得が可能となります。
育児休業の申請方法
書面、FAX、メールの
いずれかで提出
会社
労働者
育児休業を申請する際、必ず明ら
かにするにする事項
①申出の年月日
②労働者の氏名
③申出に係る子の氏名、生年月
日及び労働者との続柄
④休業開始予定日及び休業終了
予定日
労働者
休業開始1ヶ月前
に申請
速やかに通知
会社から労働者に通知
する事項
①申出を受けた旨
②休業開始予定日及
び休業終了予定日
③休業を拒む場合はそ
の旨及び理由
改正育児・介護休業法のポイント②
<父親も育児に参加出来るようにするために>
法改正のポイント
 パパ・ママ育休プラスとして、両親ともに育児休業を取得すると1歳2ヶ月
まで休業可能期間が延長されます。
【パパ・ママ育休プラスの取得要件】
①配偶者の一方が先に育児休業を取得している。
②もう一方の配偶者は、子の1歳の誕生日までに育児休業を開始する。
(開始日が誕生日であっても可)
③育児休業期間は、父親は最長1年、母親は産後休業とあわせて最長1年
 出産後8週間以内に父親が育児休業を取得すると特別な理由がなくても
育児休業の再度取得が可能となります。
 労使協定による専業主婦(夫)除外規定が廃止され、家に専業主婦(夫)
がいる労働者も育児休業を取得出来るようになります。
パパ・ママ育休プラスと父親の再度取得を組み合わせたモデルケース
出生
1歳
8週間
母 産後休業
父 育児休業
産後の大事な時期に両親で
育児が出来ます。
注2)母親の産後休業期間
中に1回目の育児休業を取
得しているので、特別の事
由がなくても再度取得出来
ます。
母 育児休業
注1)再度取得す
るには、初回の父
親の育児休業は、
産後8週以内に開
始して、終了させ
る必要があります。
上記モデルは、父親が育児休業を再度取得するケースを前提としています。
1歳2ヶ月
父 育児休業(再度取得)
母親の育児休業が終了する時期に
父親の協力があると母親の職場復帰
が容易になります。
改正育児・介護休業法のポイント③
<家族の介護をしながら働き続けるために>
法改正のポイント
 介護休暇制度が新設されま
した。
 介護休暇は、要介護状態の
対象家族が1人であれば年
5日、2人以上であれば年
10日、取得できます。
 介護休業、介護休暇取得を
理由とする解雇や不利益な
取り扱いは禁止されます。
【不利益な取り扱いとなる例】
① 解雇すること。
② 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと。
③ あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に当
該回数を引き下げること。
④ 退職又はパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働
契約内容の変更の強要を行うこと。
⑤ 自宅待機を命ずること。
⑥ 労働者が希望する期間を超えて、その意に反して所定外労働
の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限又は所定労働時間の
短縮措置等を適用すること。
⑦ 降格させること。
⑧ 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと。
⑨ 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと。
⑩ 不利益な配置の変更を行うこと。
⑪ 就業環境を害すること。
(注:下線部は今回の法改正にあわせて追加された項目)
今回の改正を踏まえた育児・介護に関する制度のイメージ
改正育児・介護休業法のポイント④
もしも、育児休業取得などを理由に不当な取り扱いを受けたら
法改正のポイント




育児休業取得等により、会社との間で紛争が生じた場合は、都道府県労働局長
による紛争解決の援助(助言、指導又は勧告)が受けられます。
都道府県労働局長を通じて「両立支援調停会議」に調停を申請することが出来
ます。
都道府県労働局長の勧告に従わない企業は企業名が公表されます。
都道府県労働局に虚偽の報告等を行った企業は過料(罰金)を支払わなければ
ならなくなります。
妊娠したことを会社に報告したら解雇され
こんな時は….
た。
出産・育児休業を申請したら解雇された。
育児休業が終わる頃、会社に連絡したら、
「もう 出社しなくていい」と言われた。
都道府県労働局に
相談しましょう!!
都道府県労働局は、全国に置かれ
ている厚生労働省の出先機関です。
改正育児・介護休業法の施行スケジュール
2009年9月30日(第1次施行)
①事業主による苦情の自主的解決及び都道府県労働局長による紛争解決の援助
制度の創設
②法違反に対する勧告に従わない場合の企業名の公表制度、報告を求めた場合
に報告をせず又は虚偽の報告を行った場合の過料の創設
2010年4月1日(第2次施行)
育児・休業法に係る労働者と事業主の間の紛争に関する調停制度の創設
2010年6月30日(第3次施行)
①3歳までの子を養育する労働者に対する短時間勤務制度の義務化、所定外労働
時間の免除の制度化
②子の看護休暇の拡充
③男性の育児休業取得促進策
④介護休暇の創設
※①、④について、従業員100人以下の企業の施行期日は、2012年6月30日(予定)
改正育児・介護休業法を職場でいかすために(1-1)
以下の項目についてチェックし、
改正育児・介護休業法に沿って、労働協約を見直しましょう!!
3歳までの子を養育する労働者を対象とした短時間勤務制度を設ける。
3歳までの子を養育する労働者を対象とした所定外労働の免除制度を
設ける。
労使協定の中に、育児休業および時間外労働の制限の対象外にでき
る労働者として「配偶者が子を養育できる状態である労働者」という記
述あれば、その記述を削除する。
父母がともに育児休業を取得する場合、子が1歳2か月に達するまで
の育児休業を取得可能とする。また、取得期間・時期については当該
労働者の希望に沿った対応をする。
改正育児・介護休業法を職場でいかすために(1-2)
以下の項目についてチェックし、
改正育児・介護休業法に沿って、労働協約を見直しましょう!!
出産後8週間以内に父親が育児休業を取得した場合、特別な事由がな
くても再度、父親が育児休業を取得することを可能とする。
育児休業の再度取得要件等に、「子どもの負傷や疾病で2週間にわた
る世話が必要となった場合」「保育所に入所申請を行ったが当面入所で
きない場合」も加える。
子の看護休暇について、小学校就学前の子が1人であれば5日、2人
以上いれば年10日の休暇を取得可能とし、取得理由に「子どもの予防
接種」と「子どもの健康診断の受診」も加える。
介護休暇制度(要介護状態の対象家族が、1人なら年5日、2人以上い
れば年10日)を新規に盛り込む。
改正育児・介護休業法を職場でいかすために(2)
以下の項目についても取り組みを進め、
育児・介護と仕事の両立をめざしましょう!!
短時間勤務制度の義務化、所定外労働の免除の制度化、介護休暇の創設が2012年6月
末まで猶予される常時100人以下の労働者を雇用する企業についても、必要な場合は協定
を見直すとともに、積極的な制度導入に取り組む。
勤務時間の短縮措置の対象外となった場合には、フレックスタイムや始業もしくは終業時刻
の繰り下げもしくは繰り上げなど、改正法にもとづく代替措置の導入に取り組む。
有期契約労働者についても今回の改正措置が利用できるようにする。あわせて、休業取得
促進に向けた制度の拡充に取り組む。
派遣労働者については、派遣元に法の規定にもとづく措置を講ずる責任があることを周知する。
育児休業、介護休業、子の看護休暇、短時間勤務、所定外労働の免除、介護休暇の申し出
や取得により、労働者が解雇されたり、人事考課おいて評価されない等の不利益取り扱いを
受けないよう労使で確認を行う。 →不利益取り扱いの例は「改正育児・介護休業法のポイント③」のスライド参照
1日6時間の短時間勤務の労働者がいる場合、労働基準法に基づく休憩が適用とならいため、
昼食休憩が与えられないことがないよう就業規則が全労働者にきちんと適用されるよう取り組む。