アメリカ金融覇権 終りの始まり

アメリカ金融覇権 終りの始まり
グローバル経済危機の検証
毛利良一
新日本出版社 2010/04/25
288p
2013-15
MohriR
1
編別構成
• はじめに
• 序章 3つの課題 米一極支配から多極化へ
米国型資本主義の存在態様 オバマ政権
経済チーム
・第1部
カジノ資本主義の暴走 1,2,3章
・第2部 世界同時不況とその克服 4,5,6章
・第3部 アメリカ金融覇権の行方 7,8,9章
・終章 日本経済との関わりと対応
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はじめに(1)
グローバル経済危機が問いかけるもの
• 1 国際金融覇権国アメリカ発の危機 ♪図
表H-1
• アメリカ発・アメリカ仕掛け・損失も最大.アメ
リカの金融覇権はどうなるのか
• 伝統的な金融危機ではなく,投資銀行などに
よる「闇の銀行システム」の破綻
• 肥大化した金融経済・証券経済と世界の実体
経済の関係の問題.
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はじめに(2)
グローバル経済危機が問いかけるもの
• 2 「100年に1度の危機」の克服 1930年代
恐慌の学習と国際協調で保護主義回避
• 世界同時不況の諸相
• 金融安定化政策(大手金融機関救済と超低
金利・流動性供給)
• 財政刺激による危機打開策(長期的政策と結
び付けた諸国)
*2009年以降の欧州債務危機への深化
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はじめに(3)
グローバル経済危機が問いかけるもの
•
•
•
•
3 国際金融システム再構築の課題
国際金融監督規制の強化
IMFの機能強化とガバナンス改革
基軸通貨ドル体制の行方
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序章 3つの課題
*1 米一極支配から多極化へ G7→ G20体制図表J-1
*2 アメリカ型資本主義の存在態様
2-1 投資銀行ビジネスモデルの隆盛とその終焉
1999年「グラム・リーチ・ブライリー法」銀証保の統合可能
ハイリスク・ハイリターン新商品サービス,高レバレッジで資金調達し,自
己勘定で住宅ローン債権を証券化し転売する ♪図表J-4
• 2-2 国際マネーフローにおける「帝国循環」とその行方
経常収支赤字を上回る資本収支黒字を引き寄せ,高収益部門に再投資
*3 結節点ロバート・ルービンとオバマ政権経済チー
ム ♪図表J-5 GS会長からクリントン政権経済補佐官・財務長官
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第Ⅰ部 カジノ資本主義の暴走
第1章-1 サブプライムローン危機と
金融工学・証券化
• 1 略奪的サブプライムローンと延滞率の上昇
♪図表1-1,1-2 NINJA(No Income, Job, Asset)ローン
• 2 住宅ローン債権の証券化の歴史:1934年住宅法.
• 3 投資銀行による証券化商品の組成・転売モデル
♪図表1-3 格付会社によるお手盛り, 投資家(個人,機関,ヘッジ
ファンド)
◆補論
過剰資本 カネ余りの要因
①1971年金ドル交換停止→変動相場制
②21世紀ITバブル崩壊→グリーンスパンの大胆な金融緩和
③新興国マネーの流入 ④高齢化→年金資金の増大
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第1章-2 サブプライムローン危機と
金融工学・証券化
• 4 サブプライムローンと金融工学 ♪図表1-4,
4-1 金融グローバリゼーションとデリバティブ
金ドル交換制停止→変動相場制→不確実性の増大→リスク
ヘッジのための金融派生商品の革新→ノーベル経済学
• 4-2 CDS:図表1-5.定期的な金銭の支払と引き替えに、
一定の国や企業(「参照組織」)の債務の一定の元本額(「仮
想元本額」)に対する信用リスクのプロテクションを購入する
(信用リスクを移転する)取引.保険会社AIGなどが引き受け
too interconnected to failを理由に救済
• 5 証券化商品とシャドーバンキング・システム
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第2章-1 世界金融危機への展開
• 1 米欧金融機関の破綻 ♪図表2-1
欧州における金融危機序曲2007年夏: 独のIKB,仏BNP
パリバ,英ノーザンロック銀行 欧州住宅バブル+米証券購入
震源地米国:投資銀行5位ベア・スターンズ(NY連銀の支援でJPモ
ルガンが買収),ファニーメイ(連邦抵当金融金庫)とフレディマック(住宅抵
当公社)に対する政府支援
• 2 リーマン破綻とAIGの救済
♪図表2-2
リーマン・ブラザーズ(投資銀行4位破綻),3位メリル・リンチはバンク・オ
ブ・アメリカが買収,1位ゴールドマン・サックスと2位モルガン・スタンリーは
銀行持株会社に業態変更→SECの監督からFRB(連邦準備制度)に変わ
る→最後の貸手から流動性支援,預金保険機構の庇護を受ける可能性
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第2章-2 世界金融危機への展開
• 3 デレバレッジと株価・為替相場の大変動
米金融機
関は現金確保のために世界中で売れるだけの資産を投げ売り
♪図表2-3,2-4,2-5 新興国(ロシア,上海,インド,韓国,ブラジルな
ど)や先進国(日本,ドイツ,仏,英)で株価激落,震源地米は小幅
日本円,英ポンド,豪ドル,中国人民元を除いて米ドル増価
円高:①先進国で証券化商品に手を染めず,損失が少なかったという消
去法,②低金利円のキャリー・トレードの手仕舞い→輸出関連企業の株安
• 4 欧州の信用バブルの崩壊と対応
①英,スペイン,ア
イルランド,アイスランドでは住宅バブル,②欧州では銀行・証券兼営の
ユニバーサル銀行が証券化商品を作り販売,③証券化資金がドル建て
• 5 中東欧およびアジア諸国の金融危機
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♪図表2-8
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第3章 原油・穀物価格の騰落と投機マネー
• 1 原油・穀物の先物市場における騰落と投機資本
の流出入 not需給ギャップ ♪図表3-1 原油価格動向と地政学リ
スク要因
♪図表3-2 穀物等の国際価格の推移
• 2 世界エネルギー・食料危機とその影響
①各国・地域の消費者
物価の上昇→世界を覆う食料騒乱,各国の食料自給率,ランドラッシュ
• 3 米国連邦議会公聴会における原因調査:インデックス投
資 ♪図表3-7 原油相場とファンド筋のネットポジション,3-8 コモディティ8種
• 4 商品先物市場への投機資金流入の原因 資本市場の飽和
①店頭市場の規制緩和,②海外市場の特例,③建玉制限の免除規定
• 5 商品先物市場の再規制の方向
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第Ⅱ部 世界同時不況の諸相
第4章 世界同時不況の諸相
• 1 世界同時不況 ♪図表4-3 国・地域別GDP構成・成長率
• 2 信用膨張型の震源地米国と欧州実体経済の悪
化 信用膨張型の欧州先進国 中東欧経済(8か国がIMFに支援要請)
• 3 輸出依存型経済(アジア諸国の不況転落
と急速な回復)♪図表4-8
• 4 資源輸出国(ロシアの低迷,中東産油国は小康,ベ
ネズエラ?)
• 5 内需依存型の諸国(インド,インドネシアなど)
♪
図表4-8
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第5章-1 米欧における金融安定化政策
• 1 流動性・資金調達面での対応
♪図表5-1 主要国の
金融安定化政策
• 1-1 中央銀行による流動性供給と最後の貸手機能
♪図表5-2 FRBバランスシートの拡大,
• 1-2 預金保険制度の強化と金融機関の政府管理
• 2 不良資産処理・資金増強
• 2-1 ポールソン財務長官「包括的金融安定化策」
♪図表5-3 包括的金融安定化政策の資金使途
• 2-2 オバマ新政権ガイトナー財務長官「金融安定
化プラン」 ストレステストと追加資本投入 TALF拡大
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第5章-2 米欧における金融安定化政策
• 3 欧米における金融規制改革
• 3-1 EUド・ロラロジエール報告と英ターナー・レ
ビュー ♪図表5-4 欧州の金融規制改革提言 ヘッジファンド オフ
ショア金融市場規制
• 3-2 米オバマ政権金融規制改革法案システム上重要な
金融機関はすべて監督 クレジット・デフォルト・スワップに規制 消費者
• 3-3 「ボルカー・ルール」による規制強化案♪図表5-5
2010/01 「大きすぎて潰せない」をなくす ①銀行によるファンド投資,②
自己勘定取引,③負債の市場シェア,の制限
• 4 危機における新興国における金融面での対策:
インドとブラジルの事例①サブプライム証券化商品を購入せず,
②政府系金融機関のシェア大
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第6章-1 世界同時不況下の危機打開策
• 1 IMFの財政出動論 緊縮政策を説かず,先進国に財政出動
• 2 主要先進国の景気刺激策 ♪図表6-1
米英日が積極財政派 日本①トリクルダウン理論,②選挙目当ばら撒き,
③省エネ家電・低燃料車補助,④消費税増税を予定
• 3 米「グリーン・ニューディール」政策
• 3-1 スマート・グリッド構想 IT技術による電力需給の最適化
補論1 日米半導体摩擦に見る米国の巻き返し戦略
補論2 IT革命への情報ハイウエー構想の分かり易さと軍事技術の民間
開放
•
3-2 グリーン・ニューディール政策の提起①再生エネルギー
発電と製造業むけ景気刺激策,②税制優遇措置,③電気自動車,住宅
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第6章-2 世界同時不況下の危機打開策
• 4 新興国の景気刺激・成長持続政策♪図表6-4,6-5
• 4-1 アジア諸国エコカーや小型車の買替え補助
• 4-2 中国 ①政府による大規模な投資,②産業振興,③科学・技術
に対する支援,④社会保障レベルの引上げ,◆農村部の消費拡大:汽
車下郷,家電下郷,以旧換新政策,説能恵民工程 ◆都市市場 ①1級
都市(北京,上海,天津,重慶,広州,深セン),②2級(省都クラス,人口
数百万~1000万,40~50都市),③3級地方拠点都市,人口100~数百万,
空港はないが高速道路あり,④県の中心都市,⑤人口数万の郷・鎮
• 4-3 インド①食料・肥料・石油などへの補助金,②公務員給与引き上
げ,③農民の借入債務減免や所得税,物品税引下げ,④労働集約産業
の輸出信用への利子補給→2009/05総選挙で与党圧勝
• 4-4 ブラジル①自動車,家具,家電の税引下げ,②最低賃金引上げ
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第Ⅲ部 アメリカ金融覇権の行方
第7章-1 国際金融監督規制のありかた
• 1 1990年代の国際金融危機とIMF/BISを中心と
した改革
ヘッジファンド危機:1992年ポンド,97アジア,98ロシア
情報開示による透明性の向上と基準作り
BISによる自己資本規制:Ⅰ 1992 8%ルール
分母=国債保有額x0%+銀行向けx20%+企業100%+住宅50%
BIS Ⅱ:①分母に信用リスク+市場リスク+オペレーショナルリスク
②銀行内部のリスク管理手法の活用,③市場規律の実効性
課題:①比率8%→12%,②レバレッジ規制導入,③リスクウェイト
2 ヘッジファンド,投資銀行の規制
♪図表7-2
HLI:直接規制は避け,業界の自主規制や金融機関を通じた間接的監視
投資銀行規制:G20文書に見当たらない
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第7章-2 国際金融監督規制のありかた
• 3 タックス・ヘイブン(租税回避地)の規制と
トービン税の導入
TH:井上ひさし(1981)『吉里吉里人』(新潮社)東北の村が日本から独立
「医療立国」「無防備地域宣言」多国籍企業看板の誘致による外貨財源
*オフショア金融市場:バハマ,ケイマン諸島(英領)にヘッジファンド拠点.
大金持ち,機関投資家,マフィア,テロリストのマネーロンダリングなど.
G20で租税情報交換条約締結を議論.骨抜き情報提供で公認する.
過去30年で先進国の税率が著しく低下.
*金融取引税:ATTAC「市民を支援するために金融取引への課税を求
めるアソーシエーション」.トービン税はもともと通貨投機抑制のために提案.
• 4 巨額報酬規制と「大きすぎて潰せない」
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第8章-1 IMFの役割強化とガバナンス改革
• 1 ブレトンウッズ協定によるIMFの設立
• 2 IMFの「開店休業」から融資急増へ♪図表8-1
1997-98アジア,ロシア危機,2001-12アルゼンチン,トルコ
多すぎるコンディショナリティ,融資国に不名誉なイメージを与えたと反省
2008年10月以降,中東欧の移行諸国や中米が駆け込み殺到:アイスラ
ンド,ウクライナ,ハンガリー,パキスタン,ベラルーシ,セルビア,エルサル
バドル,アルメニア,モンゴル,コスタリカ,グアテマラ,ルーマニア,メキシコ,
コロンビア,ポーランド...
IMFは世界金融システムの監視,FSFは監督,規制,標準の精緻化
• 3 IMFの機能強化
サーベイランス(政策監視)は機能しているか アジア危機,ロシ
ア危機,アルゼンチン危機をIMFは手をこまねいて見ていただけ
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第8章-2 IMFの機能強化とガバナンス改革
• 資金源拡充:増資の前倒し実施,日本1000億ドル融資
(2国間融資はEU,スイス,カナダ),SDR建てIMF債の初発行
• 4 コンディショナリティの簡素化
IMF成立期にコンディショナリティ論争
アジア危機後にIMF改廃論争
1990年代の構造改革コンディショナリティ(移行国,アジア)と
今回の簡素化の相違
5 ガバナンス改革
♪図表5 専務理事,理事割当,投票権
*補論 IMF,世銀は国連の専門機関か
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第9章-1 基軸通貨ドル体制のゆくえ
• 1 ドルの下落とドル離れ
•
♪図表9-1
長期的トレンドと有事のドル回帰を区別すること
• 2 基軸通貨ドルの地位はどう変わったか
貿易取引,資金調達・運用,為替媒介通貨,外貨準備
ユーロ建て各国国債はあっても,ユーロ建てEU国債なし
• 3 政府系ファンド,産油国マネーの動き
中東などを中心とするSWF(Sovereign Wealth Fund)
中東産油国のドルペッグと分散投資(クウェート,UAE)
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第9章-2 基軸通貨ドル体制の行方
• 4 「帝国循環」は終わったのか
米国が国際資金
循環の中枢に座り,英国とカリブが資金の回転台(出自不明).中国,香
港,日本は資金の出し手
• 4-1 アメリカ長期資本収支の動向
♪図表9-3
中国は2008年7-10月に米政府機関債を引揚げ,しかし対米証券投資
は続いている.日本も世界も.
• 4-2 米国債主要保有国の動向:首位日本→中国
• 4-3 中国のSDR活用論 特定国国民通貨ドルが国
際準備通貨になっていることへの疑問表明.金保有増大も.
• 4-4 米国の対外純債務の持続可能性
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終章 グローバル経済危機と日本
• 1 グローバル経済危機と日本
– 危機要因としての日本:超低金利と円安
– 先進国中で最悪の経済危機国としての日本
• 2 外需から内需型への転換は可能か図表10-1
• 3 アジア諸国との共生
• 3-1 人口構成の変化とボリュームゾーン ♪図表10-2
• 3-2 消費市場の拡大
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