地方における小児救急医療

医療資源の集約化・重点化にお
いて県が当面している課題
青森県健康福祉部医療薬務課
課長 佐川誠人
本県の小児救急医療の現状
• 小児科医の不足
人口10万対医師数 164.0人
(全国平均201人)
医師:少ない方から全国4位
人口10万対小児医数9.9人
(全国平均11.5人)
小児科医:少ない方から全国
8位
• 人口と医師の偏在
青森、津軽、八戸の3保健医療
圏に集中
人口の69.8%
小児科医の84.7%
救急医療体制の不足
•
休日夜間急患センター
6保健医療圏のうち、青森、津軽、八戸
の3保健医療圏のみ設置
・ 在宅当番医制、病院群輪制
6保健医療圏で実施しているが、小児科
医は内科の中に組み込まれている。
・ 八戸地域保健医療圏
毎日、休日夜間急患センターか、在宅
当番のいずれかに、小児科医を配置す
るシステムとなっている。
・ 津軽地域保健医療圏
一次、二次、三次が連携した小児救急
医療システムが構築されている。
各医療圏ごとの人口及び医療施設の状況
保健
医療
圏
人口(人)
18.3.31
現在
15才未
満人口
人口10
万対医師
数
人口10
万対小児
科医数
小児科
医数
病院勤務の
小児科医数
常勤小児科
医がいる病
院数
小児科医診
療所数
青森
343,886
45,480
156.7
11.6
40
23
7
17
津軽
320,053
42,369
260.9
14.7
47
30
7
17
八戸
355,684
51,328
152.1
9.8
35
17
6
18
西北
五
158,280
19,986
96.7
4.4
7
4
3
3
上十
三
195,548
28,075
107.9
5.1
10
7
4
3
下北
86,693
12,088
117.7
5.8
5
2
1
3
合計
1,460,144
199,326
144
83
28
61
・大学医学部のある保健療圏に医師が集中
・保健医療圏の医師数、小児科医数の格差は最大3倍
救命救急センター
病院数
3(準1)
青森県救急医療体制図
病院群輪番制病院 21
休日夜間急患センター 3
★
☆
二次医療圏
小児科医常勤病院数
小児科診療所数
6
28
61
下北地域保健医療圏
人口:86,693人
面積:1,414.67k㎡
青森市から自動車で2時間
(100km)
むつ市★1☆3
1
西北五地域保健医療圏
人口:158,280人
面積:1,752.78k㎡
青森地域保健医療圏
人口:343,886人
面積:1,477.14k㎡
青森市から自動車で1時間
(50km)
2
鶴田町★1
上十三地域保健医療圏
人口:195,548人
面積:2,017.69k㎡
平内町★1
五所川原市★2☆3
藤崎町☆1
4
青森市★6☆17
1
七戸町★1
三沢市★1☆1
1
6
黒石市★2☆3
弘前市★4☆13
大鰐町★1
津軽地域保健医療圏
人口:320,053人
面積:1,597.67k㎡
1
5
十和田市★2☆2
五戸町★1
三戸町☆1
八戸市★5☆17
八戸地域保健医療圏
人口:355,648人
面積:1,346.38k㎡
青森県救急医療体制図
★ 小児科を有する
病院
★
★
★★ ★
★★ ★
★★
★
★
★
★★
★★
★★
★★
★
★
★★★
★★
平成17年度に開始した「津軽地域における小児救急医療体制」の概要
【一次】
方法 :弘前市休日夜間急患センターを活用し、市医師会(小児科開業医)及び弘前大学の派遣医師が、当番制で対応
時間 :平日・土曜日 19時~22時30分
日曜・休日 10時~16時、19時~22時30分
入
る院
患を
者要
す
【二次】
方法 :6病院が輪番で、小児の二次救急医療に対応(オンコール体制も含む)
時間 :平日・土曜日 19時~23時
日曜・休日
10時~16時、19時~23時
(一次が実施していない時間帯は、当番の二次輪番病院が対応する。)
者応 二
困次
難で
なは
患対
【三次】
方法 :弘前大学医学部付属病院が、小児の三次救急医療に対応
時間 :毎日24時間
特徴
☆ 計画当初から、医療機関、医師会、市町村による協議会を設置して、一次、二次、三次の連携体制を検討
☆ 保健療圏内各市町村が、協定を締結して、休日夜間急患センター(弘前市が設置)における小児救急経費を負担
☆ 弘前市医師会小児科部会の協力
☆ 弘前大学が、休日夜間急患センターへの医師派遣や、体制整備に係る協議会の纏め役となるなど地域医療を支援
本県における主な小児救急医療関係事業
事業名
事業内容
⑬~⑯小児救急医療対策協議
会開催
各二次保健医療圏毎に、小児救急医療に関わる関係者による協議会を開催したが、小児科医の絶対数が少な
い地域では、有効な具体策の検討が難しいため、課題の検証に留まった。
⑮~⑯初期小児救急医療医師
研修事業
内科医等が小児救急医療を担うことについては、医師の考え方が統一されておらず、研修実施後の体制構築
の目処が立たないため、16年度で中止した。
⑯~⑰小児救急体制検証・調
査事業
•弘前大学医学部小児科学講座に研究委託を行って、本県の小児救急医療体制の検証や課題の分析、今後の
あり方などについて、調査を実施している。
•今年度は、小児救急に係る全県的な協議会を設置し、調査結果を参考にしながら、本県の中長期的な小児
救急医療体制のあり方を検討する予定であり、協議会では、集約化・重点化についても検討する。
⑯~ ⑱小児救急医療電話相談
事業
小児救急電話相談事業の実施について検討を行ってきたが、小児科医の負担など、多くの課題があり、実施
に到っていない。年度内開始を目指して、継続協議を行っている。
⑰~⑱小児二次救急医療支援
実施事業
輪番制により、小児の二次救急医療体制を構築する医療機関に対し、国庫補助基準に満たない場合に、県単
独で運営費補助を行っている
⑰~⑲小児救急医療支援実施
事業運営費補助
輪番制により、小児の二次救急医療体制を構築する医療機関に対し、国庫補助を活用し、運営費補助を行っ
ている。
⑰休日夜間急患センター設備
整備事業費補助
休日夜間急患センターで使用する、小児の救急医療に必要な医療機器の整備経費に対し補助を行った。
【地方における行政機関の悩み】
☆ 財政基盤の弱さ(国庫補助金頼み) 、医療資源の不足、民間活力の弱さから決定打が打てない。
☆ 国民の関心が、良質な医療の確保に向かっているにもかかわらず、地域住民に明るいビジョンが示せない。
小児科の集約化・重点化を考える上での本県の課題
おそらく、地方に共通の課題
•
•
•
地理的な課題
・人口が分散しており、小児科を有する病院まで相当
の距離。距離プラス、山あり、川あり、雪あり・・・の
気候風土
・県が、青森市、弘前市、八戸市の3市を中心とした3
極に 分化して発展してきた特殊性。人も資源も文化も
3極に分散しており、1極集中できない。
医療資源の課題
・ 小児科医数が絶対的に不足しているため、集約化によ
るメリットはわかっているが、身近な地域に小児科医が
いなくなるデメリットも大きい。
・ 無床診療所の増加により、入院治療の担い手は病院
のみと言う現実
地域医療確保の課題
・ 地域住民の要望(付き添い、面会なども含めた利便性
が求められる。 )
・ 集約化に伴う人件費の増加や、診療科毎のベット数の
適正配分など、自治体病院の経営と密接に関連してお
り、小児科単独の問題としては検討できない。
•
将来的な課題
地域に魅力ある病院(=小児科医の複数配置、若手医
師の研修が可能、症例が豊富)を増やさなければ、小
児科を志望する医師を育て、定着を図ることができない。
•
小児科医師の地域偏在の課題
人口対10万小児科医数は、本県は全国の86%程度
だが、県内の保健療圏間では、最大3倍の格差が生じ
ており、地域偏在が明らか。
解決のキーワード
•
病院(勤務医)と診療所(開業医)間の連携
•
医師確保対策の充実
政策医療として、小児科医・産科医確保は
国の責任で
•
自治体病院の機能再編成
地域における合意形成
魅力ある病院づくり
•
地元大学医学部との連携
小児科志望者の増加・地元定着