質量分析によるタンパク質の同定

1
質量分析によるタンパク質の同定
まずはじめに、二次元電気泳動によって得られたタ
ンパク質に酵素処理を行い、ペプチドを解離する。
・トリプシンで処理した場合、リジンあるいはアルギ
ニンのC末端で切断される。
切断
N末端
C末端
リジンorアルギニン
2
酵素処理を行った物質に対し、MS解析を行う
と目的とする物質の質量(モノアイソトピック質
量)が得られる。
モノアイソトピック質量
→安定同位体中に最も存在比の高い質量から得られた
値。天然同位体存在比を踏まえて算出される原子量と
は区別される。
ex)炭素Cのモノアイソトピック質量は12.00
一方、原子量は質量12.00の炭素存在比98.9
3%と質量13.00の炭素比1.07%を踏まえた1
2.01となる。
3
質量分析計
イオン源
分析計
検出計
コンピュータ
物質を気体状のイオンにする
質量と電荷の違いにより分離する(質量の小さい
or電荷数の大きいイオンほど運動性は大きい)
イオンと電気信号として検出
スペクトルに変換
4
目的とするプリカー
サーイオン
質
量
1回目のMS解析で得られ
たイオンをプリカーサーイ
オンという。
M/Z
M:分子量
Z:価数
さらに2回目のMS/MS
解析へ
5
目的とするプリカーサーイオンをArなどのガスと衝
突させ、そのとき発生したエネルギーによりイオン
を壊す。(衝突誘起解離)
ガス
プリカーサー
イオン
衝突
プロダクトイオ
ン
*この他にも赤外線や電子線を照射することによりイオンを壊す方
法もあるが、ほとんどのMS/MS装置ではガスと衝突させることで
イオンを壊している。
6
衝突誘起解離によって得られたプロダクトイオン
に2回目のMS解析(MS/MS解析)を行うことで
それぞれの質量が得られる。
質
量
M/Z
M/Z
7
MS/MS解析により得られたプロダクトイオンは必
ず元のプリカーサーイオンに由来するため、プリ
カーサーイオンのアミノ酸配列(構造)を導き出す
ことができる。
したがって‥‥
MS解析での質量情報
+
タンパク質の同定が可能
MS/MS解析での構造情報
このように、質量分析によりタンパク質の同定を行うことで、疾
患の特定さらにはその疾患に対する薬剤効果及び有用性が期
待される。