災害時輸送の支援ツールについて 合同セミナー 「サプライ・チェイン・リスク管理と人道支援ロジスティクス」 東京海洋大学 平成25年7月4日 海上技術安全研究所 間島 隆博 1 背 景 東日本大震災 •支援・救援物資が避難所に届かない •同様な問題は、阪神淡路大震災、新潟県中越地震でも発生 •帰宅困難者問題が現実化 本報告内容 •計画されていた災害時の輸送体制は・・・ •東日本大震災では・・・ •災害時輸送支援ツールの紹介 2 災害時の輸送計画、体制 3 災害時の輸送計画、体制 輸送業務の基本的要素 • • • • • 輸送経路(道路、鉄路、海路、空路) 輸送機材(トラック、列車、船、航空機:燃料、ドライバー) 輸送拠点(荷役設備、作業空間、作業員等) 物資(品目、量、荷姿、重量、体積等の情報) 情報(需要、在庫管理等) (輸送作業を滞り無く行うための必要条件) 4 災害時の輸送計画、体制 制 度 災害対策基本法において、防災計画の作成を義務付け。 防災基本計画: 中央防災会議 防災業務計画:・指定行政機関 (中央省庁) ・指定公共機関 (公共的機関、公益的事業を営む法人 日本通運、JR各社、高速道路会社、独法・・・等) ・指定地方行政機関 (関係省庁の地方支分局、地方の行政機関) ・指定地方公共機関 (公共的施設の管理者、公益的事業を営む法人 宅配会社、トラック協会、鉄道会社、バス会社・・・等) 地域防災計画:都道府県防災会議、市町村防災会議 5 災害時の輸送計画、体制 防災計画の内容 被害想定(甚大な被害が起こる状況を設定) 関係機関 項目別に担当機関を指定。 ・輸送モード(トラック、バス、船舶、航空) ・インフラ(道路、輸送拠点、緊急道路障害物の除去など) ・物資(食料・生活必需品等) 輸送協定 関係機関と事前に輸送や備蓄に関する協定を結び、発災後の迅速、 円滑な協力体制を整備。 協力体制 国と地方の縦方向の関係だけでなく、地方公共団体相互の連携、 協力体制が整備 ・全国都道府県における災害時の広域応援に関する協定 ・18大都市災害時相互応援に関する協定 ・八都県市(+相模原市)災害時相互応援に関する協定 6 災害時の輸送計画、体制 輸送対象の優先順位 災害発生からの経過時間で、優先される輸送対象の変化を想定 第1段階(発災~2日) 救助・医療、消防活動、輸送施設等の復旧活動 第2段階(3日~1週間) 食料、水、傷病者 第3段階(1週間目以降) 生活必需品、復旧に必要な人員 7 災害時の輸送計画、体制 道 路 災害道路、 緊急交通路の 指定 航 路 ・耐震強化岸壁 ・防災船着場 ・リバーステーション 8 災害時の輸送計画、体制 輸送機材 指定公共機関、指定地方公共機関や輸送協定を結ぶ公共的事業を営む法人 の車両で賄う 迅 機 経 速 動 済 性 性 性 長 所 短 所 船舶 低 低 高 大量低廉輸送 重量品、巨大貨物輸送 低公害、省エネ 天候の影響大 港湾諸費用(荷役)が大 移動速度遅 港湾に制限 鉄道 中 低 中 大量効率輸送 定時制 低公害、省エネ 積替え、集配の時間ロス大 緊急輸送に不向き 駅に制限 自動車 高 高 中 戸口戸口輸送 小口多頻度輸送 包装、流通加工が簡易 大量輸送に不向き 交通事故、公害多 航空機 高 中 低 極高速輸送 流通加工が簡易 高運賃 重量制限 空港に制限 9 災害時の輸送計画、体制 物 資 災害発生から3日間もてば、ライフライン、インフラや流通の応 急措置が可能? 個人の備蓄(1日分)、 基礎自治体の備蓄(1日分)、 都道府県の備蓄(1日分) ・自助、共助、公助 備蓄物資:食料、生活用品、仮設トイレ、防災資機材等 飲料水は特別な扱い ・東京都では1日1人当たり3リットル ・給水タンク、配水池、給水拠点の整備 ・給水用資器材、給水車の準備 10 災害時の輸送計画、体制 輸送の階層構造 (国) 都道府県 基礎自治体 避難所 11 東日本大震災の輸送問題 12 東日本大震災の輸送問題 輸送活動 県の輸送拠点で大量の物資が山積み、避難所へ届かず? ・全国 被災地域への輸送は機能 ・県→市区町村→避難所は停滞 原因 ・市区町村内、避難所への道路網の損壊 ・車両、燃料、ドライバーの不足 ・輸送拠点における仕分け人員の不足 ・情報の途絶・不足・混乱 民間の流通活動は迅速な回復 ・イオングループ、 コンビニ等 イオンの 物流経路 13 東日本大震災の輸送問題 幹線道路は迅速な普及 14 東日本大震災の輸送問題 15 東日本大震災の輸送問題 船 舶 ・がれきの影響で発災から1~2週間、入港不能 ・燃料、畜産飼料、車両(物資含)の輸送に貢献 鉄 道 ・日本海側経由(例:根岸新潟郡山)で燃料輸送 その後、陸送で被災地へ トラック ・道路復旧が早く、幹線輸送(被災地外一次集積所まで)は概ね順調 ・だが、避難所まで物資が届かない 避難所A 被災地 二次集積所 被災地 以外 被災地 一次集積所 A市の 荷受拠点 避難所B 病院C ・県の荷受拠点 被災地 二次集積所 ・物資が山積み B町の 荷受拠点 避難所F 避難所G 病院H 支援・救援物資の流れの階層構造 【参考】日通総研、ロジスティクスレポート、No.17 Jul. 2011 16 東日本大震災の輸送問題 情 報 インターネットが情報の収集発信機能として有効? (阪神淡路大震災では携帯電話が効果) ・Google:避難所情報(右図) ・Google:ITSジャパン(下左図) ・Mapion:いすゞ自動車 みまもりくん (下中図) ・国土地理院:災害情報集約マップ (下右図) 17 災害時輸送支援ツール 18 災害時輸送支援ツール 緊急・代替輸送支援システムの開発 国交省委託業務 緊急・代替輸送支援システム データベース (ネットワーク 輸送拠点 輸送機材等) データベース 編集 災害時輸送対応型 GIS 解析結果入力 図表化 災害時物資輸送シミュレータ 計算条件出力 目的: 輸送計画、体制の 評価ツール リアルタイム輸送支援ツール 補助解析ツール (OD別帰宅困難者数推計ツール) データベース 編集機能 編集対象データ 物資貯蔵量、物資需要量、避難所、輸送拠点、道路網、河川網、鉄道網、輸送機材 データベース 出力機能 災害時物資輸送シミュレータ 輸送ネットワーク、輸送拠点、供給可能量、需要量 リアルタイム輸送支援ツール 同上 補助ツール(帰宅困難者数推計) 鉄道ネットワーク、途絶区間 災害時物資輸送シミュレータ 輸送量、輸送機材の位置、滞留状況 リアルタイム輸送支援ツール 輸送機材の位置、輸送候補ランキング表 補助ツール(帰宅困難者数推計) 帰宅困難者数推計分布図 解析結果の 図表化機能 19 災害時輸送支援ツール 災害時物資輸送シミュレーターの動作(1) MAS(Multi-Agent System)を採用 Agent =輸送機(トラック、船、航空機) 行動(輸送作業)を独自に判断 Blackboard System=Agentの情報共有システム 共有情報 ・優先順位表 ・荷役場の混雑度 (・他機材(荷降ろし中)の荷降ろし終了時間) 20 災害時輸送支援ツール 21 災害時輸送支援ツール 災害時物資輸送シミュレーターの動作(2) 積載量1トン ST0 供給基地 ST1:要求量100トン ST2:要求量10トン 上図の条件ではST1:ST2=10:1で配車、配船 ■配送先(被災地荷受拠点)の決定 •荷降ろし終了時に次の輸送作業を決定 ①需要地、②供給地 •災害時:平等分配が前提 発送量/要求量:被災地間の差を小さくする •高順位の被災地での荷役待ち時間が長い場合 順位を落として他の被災地へ輸送 優先順位表 順 位 発送量/ 要求量 被災地 ID 荷種 1 0.10 ST1 水 2 0.11 ST2 食料 3 0.20 ST2 水 4 0.21 ST1 食料 22 災害時輸送支援ツール 災害時物資輸送シミュレーターの動作(3) ST1 任務(荷卸し)完了 ST2へは 1トン/50分 供給基地 5分後に任務(荷卸し)完了 ST2へは 1トン/25分 ST3 ST2 優先順位:1 ・機材選定のタイミング: 任務終了機材の出現時 ・対象機材: 任務終了機材 + m分後までの任務終了機材 積載量/輸送時間が大きい機材→優先順位が高い被災地へ 23 災害時輸送支援ツール シミュレーション条件 項目 貨物の発着地 需 要 輸送機材 移動速度 荷役速度 輸送路 輸送拠点の 荷役スペース 設定内容 (国の輸送) 基幹的広域防災拠点(東扇島) 埼玉、千葉、東京、神奈川の広域輸送拠点 12,900トン (4 kg/人を仮定、323万人分) (人数は地震被害想定支援ツールによる) ・トラック:積載量4.8トン、400台 ・船舶(はしけ):積載量3トン,50隻 道路、航路とも一律 15(km/hr) 荷揚、荷卸とも100(kg/分) 荷役準備トラック0分、船3分 ・緊急交通路 ・緊急輸送路 ・荒川、隅田川、小名木川、 江戸川、海上航路 基幹的広域防災拠点(東扇島) トラック50台、船10隻 24 災害時輸送支援ツール シミュレーション条件(需要の推定) 内閣府、地震被害想定支援ツール(東京区部直下地震) 発災条件,震源,計算方法等を指定すると,市区町村別・3次メッシュ別に地震 被害を推計することが可能 25 災害時輸送支援ツール シミュレーション条件 広域輸送シミュレーション用のネットワーク 都県が指定する緊急交通路、災害道路 & 航路ネットワーク 26 災害時輸送支援ツール 結果:東扇島都県への輸送量 トラック400台 トラック400台 トラック800台 トラック800台 27 災害時輸送支援ツール 道路網損壊の影響(液状化) ■液状化の危険度大 移動速度:153km/hr 28 災害時輸送支援ツール 結果:東扇島都県への輸送量(道路損壊の影響) ↓液状化によるダメージ有 29 災害時輸送支援ツール 2次、3次輸送の シミュレーション条件 (右図、都の荷受量 =都の供給可能量) 項目 貨物の発着地 需 要 輸送機材 移動速度 荷役速度 設定内容 都の輸送 都県の広域輸送拠点 →市区町村の地域内輸送拠点 都内 区市町村の輸送 地域内輸送拠点 避難所 5,530トン (4 kg/人を仮定、138万人分) 地震被害想定支援ツールによる トラック:積載量2.4トン、100台 トラック:積載量1.2トン、20台 道路、一律 15(km/hr) 荷揚、荷卸とも100(kg/分) ・緊急交通路 幅員5.5m以上の道路 輸送路 ・緊急輸送路 都県:トラック10台,船1隻 避難所トラック5台(卸5台) 輸送拠点の (但し,神奈川県はトラック20台) 荷役スペース 区市町村輸送拠点:トラック5台 30 災害時輸送支援ツール 輸送経路ネットワーク(市区町村の場合、幅員5.5m以上) さいたま市 横浜市 千葉市 川崎市 江東区周辺 31 災害時輸送支援ツール 1次、2次、3次輸送の結合シミュレーション結果 (東扇島東京都→市区町村への輸送量) 32 東日本大震災の輸送問題 帰宅困難者(首都圏)問題が具現化 警視庁11万人台。首都圏白書9万人以上。(公共施設利用者数) 300万人程度(速報値概算)との報道 平日移動量、おおよそ1000万人 X 帰宅できなかった人の割合30%(アンケート調査の結果) 33 東日本大震災の輸送問題 東日本大震災時、帰宅困難者の アンケート調査(372人の移動需要) Edge Bundleによるグラフィック処理 ↓ (リンクの重なり度合いが大きいほど、 白を強調) 34 帰宅困難者数推計システム 運行(青)、途絶(赤)路線 3/12 00:00の状態 →3/11 15:00の状態と仮定 発地分布 推計結果 230万人程 都心からさいたま市、千葉市、藤沢市 へ向かう需要大 東京湾&荒川による船舶輸送 も効果的? 目的地分布 35
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