家族シネマ

家族シネマ
著者 柳 美里
あらすじ
主人公の素美は、企画担当のOL。ある日、いつものように会社から
帰宅した彼女は、家の前で父、母、妹・羊子、弟・一樹に揃って迎え
られる。4人は素美の顔を見るや、「お誕生日おめでとう」と一斉にお
祝いの言葉を口にするのだが、それは彼女には信じがたい光景だっ
た。なぜなら、ここ20年、家族はずっと別居状態で暮らしていて暴力
的な父、キャバレー務めの母、ポルノ女優の妹、自閉疾患症の弟な
ど「幸せ」という言葉はどこにも見当たらないような家族が映画に出
演し、幸せな家庭を演じることから始まるブラックコメディーである。
感想
 演技と感情が入り混じることで映画として、また
は実在の家族として見ることができるのがこの
「家族シネマ」の面白さではないかと思った。最
初は「幸せな家族を演じようとしてる映画」にしか
見えなかったが、著者の柳美里さんは「自分の
目というカメラを通して映し出されている家族は
実は全て演技であり、心の底が映し出されてい
ない」という今の家族の在り方を表しているので
はないかとも感じた。