ご注意:この日本語版ドキュメントは、参考資料としてご使用の上、最新情報に つきましては、必ず英語版オリジナルをご参照いただきますようお願い します。 AN1156 デルタ - シグマ ADC デバイスを使用したバッテリ残量測定 著者 : Youbok Lee, Ph.D. Microchip Technology Inc. はじめに バッテリ残量インジケータは、バッテリ駆動型の携 帯用デバイスの一般的な機能となっています。バッ テリ残量の測定は、放電電流と充電電流をリアルタ イムに測定することで実行します。放電電流とは バッテリから流出する電流で、充電電流とはバッテ リに流入する電流をいいます。使用されたバッテリ 容量 (mAH) と残りのバッテリ容量 (mAH) は、放 電電流と充電電流を経時的に追跡して計算します。 この放電電流を累計したものが使用されたバッテ リ容量で、残りのバッテリ容量はバッテリのフル充 電時容量から使用された容量を引くだけで求める ことができます。 バッテリ液の動作は、温度と経年劣化の影響を大き く受けます。これらの影響を考慮した理想的なバッ テリ残量ゲージを実現するには、機能している間の 電流、電圧および温度を経時的に測定する必要があ ります。 バッテリの電圧および電流の測定には、ADC (Analog-to-Digital Converter) を使用します。バッテ リ残量測定の精度は、ADC 性能の精度に依存しま す。バッテリ電圧の測定は簡単明瞭ですが、バッテ リ電流の方は、電流センサを使用して間接的に測定 する必要があります。電流センサには抵抗素子が使 用されます。電流センサに電流が流れると、センサ 素子の前後で電圧降下が生じます。電流値は、この 電圧降下の測定値から、センサの既知の抵抗値に基 づいて計算します。電流センサによる電圧降下は損 失であり、システムにおけるバッテリ電圧バジェッ トを減少させることに注意してください。このた め、電流センサはなるべく抵抗値の小さいものを選 ぶ方がよいことになります。 電流センサによる電圧降下は、センサ素子の抵抗値 に反比例します。このため、ADC のビット分解能 が十分でない場合、電流センサの抵抗値が小さい と、µA 単位、あるいは mA 単位でも低電流域だと システムで検出できないことがあります。そこで、 電流測定を実行するには高ビット分解能の ADC、ま たはプログラマブル ゲイン アンプ (PGA) を内蔵し た高分解能 ADC の使用が推奨されます。 © 2008 Microchip Technology Inc. 最近の集積化されたバッテリ残量ゲージ デバイス には、ADC と制御ロジック回路の両方が組み込ま れています。こうしたデバイスでは、幅広いアプリ ケーション仕様に対応するため、今も機能拡張が進 められています。しかしこのようなデバイスは、省 コスト性の製品で使用するにはまだ比較的高価で す。しかも、内蔵 ADC 回路のビット分解能の制約 により、アプリケーションによっては精度が不足す ることがあります。 より賢明な選択肢として、集積化されたバッテリ残 量ゲージ デバイスを使用せず、マイクロコントロー ラ ユニット (MCU) のファームウェアを利用して独 自のバッテリ残量ゲージ アルゴリズムを開発して いる設計者もいます。電流と電圧の測定は、設計者 自身が選択した単体のADCデバイスで実行します。 この方法では、各アプリケーションに柔軟に対応し たソリューションを構築し、バッテリ残量ゲージ を低コストで実現できるように選択します。この方 法では MCU の持つ各種オプション機能を選択でき るので、量産アプリケーションでは大幅なコスト削 減が可能となります。使用するバッテリやアプリ ケーションの種類によって、バッテリ残量ゲージに はさまざまな設計トレードオフがあります。シンプ ルなアプリケーションではバッテリ電圧のみを測 定し、精度が要求されるアプリケーションでは高度 なバッテリ残量ゲージ機能を実現する、といった具 合です。 本アプリケーション ノートでは、MCU および ADC デバイスを使用したバッテリ残量測定について概 説します。 バッテリの充放電特性の概説 バッテリの放電動作は、バッテリの電解液の種類、 負荷電流、温度、経年劣化などさまざまなパラメー タによって変化します。図 1 に、バッテリの放電曲 線を電解液の種類別に示します。多くのバッテリで は、放電曲線が全容量の約 80%まではほぼ平坦で、 そこから急激に下降します。 バッテリ内部の化学反応は主に電圧と温度に左右 されるため、バッテリの放電動作は温度の影響を大 きく受けます。バッテリ動作温度の下限は、電解液 の凍結温度によって決定されます。多くのバッテリ は、-40°C 未満では正常に動作しません。バッテリ は、温度が高い方が良好な性能を発揮します。これ は、高温の方が化学反応が促進されるためです。し かし同時に、好ましくない化学反応も進行するた め、バッテリ寿命が短くなってしまいます。極度の 高温の下では化学的活性物質が不安定になり、バッ テリが破壊されることがあります。 DS01156A_JP - ページ 1 AN1156 図 2 に、バッテリの温度別放電曲線を示します。 図 1 と図 2 を見ると分かるように、理想的なバッテリ 残量ゲージ管理システムを実現するには、電流と電 圧、そして温度のいずれも監視する必要があります。 Cell Voltage (V) 4.0 3.5 Li-Ion 3.0 2.5 Lead-Acid 2.0 1.5 Ni-Zn Ni-Cd NiMh ZnMnO2 1.0 0.5 20 % 40 % 80 % 100 % % of Capacity Discharged 図 1: 60 % バッテリの放電特性 4.0 Cell Voltage (V) 3.5 55 oC 3.0 2.5 25 oC 2.0 -25 oC 1.5 0.5 2 3 4 5 6 7 8 9 10 Discharge Time (Hour) 図 2: MCP3421 ADC ファミリには、電圧および電流測定 アプリケーションに特化した機能が用意されてい ます。MCP3421 は 18 ビットのシングルチャネル デ ルタ - シグマ ADC で、 構成ビットの設定はユーザー 側でプログラミングできます。このデバイスの動作 モードには、(a) 連続モードと (b) ワンショット モー ドの 2 つがあります。連続モード時には、デバイス は連続して変換を実行します。変換時のデバイスの 消費電流は約 140 µA です。一方、ワンショット モー ドでは 1 回の変換が完了すると、デバイスは自動的 に省電流モードに移行します。このデバイスを 18 ビット モードで毎秒 1 回データを取得するように 設定した場合、デバイスの消費電流はわずか 40 µA 程度です。スタンバイ モードでは、消費電流はわ ずか 100 nA 程度です。この機能は、特にバッテリ駆 動型の低消費電力アプリケーションで大きな効果 を発揮します。 このデバイスには、最大ゲイン 8 倍、内部リファレ ンス電圧 2.048V のプログラマブル ゲイン アンプ (PGA) が内蔵されています。この PGA ゲイン機能 は、低抵抗の電流センサの前後での低い電圧降下を 測定するのに有用です。入力は、内部で 8 倍されて から A/D 変換されます。つまり、PGA は LSB サイ ズの 1/8 の入力信号まで検知できることになりま す。また、2.048V の内部リファレンス電圧には、 ADC の性能が VDD の変動に左右されないという利 点があります。ただし、入力電圧の最大値は 2.048V に制限されます。このような制限により、測定する バッテリ電圧がリファレンス電圧よりも高い場合 は、簡単な分圧回路が必要です。MCP3421 ファミ リには、シングル チャネル、デュアル チャネル、 4 チャネルのデバイスがあります。 以下に、MCP3421 デバイス ファミリの主な機能を 示します。 1.0 1 MCP3421 18 ビット デルタ - シグマ ADC ファミリの主な特長 リチウムイオン バッテリの温度別放電特性 • プログラマブルな ADC 分解能 - 12 ビット、14 ビット、16 ビット、18 ビット • 差動入力動作またはシングルエンド入力動作 • 電圧リファレンス内蔵 • プログラマブル ゲイン アンプ (PGA) 内蔵 - ゲイン = 1、2、4、または 8 • ワンショット変換オプションまたは連続変換オ プション • 低消費電流 - 145 µA( 標準 )、連続変換時 - ワンショット変換 (1 SPS)、VDD= 3V の場合 39 µA ( 標準 ) (18 ビット モード時 ) 9.7 µA ( 標準 ) (16 ビット モード時 ) 2.4 µA ( 標準 ) (14 ビット モード時 ) 0.6 µA ( 標準 ) (12 ビット モード時 ) DS01156A_JP - ページ 2 © 2008 Microchip Technology Inc. AN1156 ADC を使用したバッテリ電圧の測定 図 3 に、MCP3421 デバイス (U1) を使用したバッテ リ電圧測定回路を示します。MCP3421 デバイスには 内部リファレンス電圧があるので、測定可能な入力 電圧の最大値は、内部電圧のリファレンス電圧であ る 2.048V までとなります。このため、内部リファレ ンス電圧よりも高い入力電圧を測定するには、R1、 R2、R3 で構成される分圧回路が必要となります。R3 はオプションであり、R1 と R2 の部品公差を校正す るために使用するものです。分圧回路の直列抵抗の 値をきわめて大きく (> 1 MΩ) すると、分圧回路によ る電流損失は無視できるレベルになります。 図 3 に示す回路例では、ADC は正入力ピン (VIN+) をバッテリ電圧に、負入力ピン (VIN-) を VSS に接続 したシングルエンド構成となっています。ADC か らの出力は、I2C バス ラインを経由して MCU に接 続されます。 図 4 に、3.7V リチウムポリマー バッテリ (3.7V、 170 mAH) の放電曲線を示します。この曲線を見る と、全容量の約 80%まではバッテリ電圧が直線的 に下降していることが分かります。 バッテリの放電曲線は、急激な下降を始めるまでは きわめて直線的に推移しているため、バッテリ電流 の状態を低コストで推測する場合はバッテリ電圧 を測定するだけでよいことになります。この場合、 バッテリ電圧の測定値は MCU ファームウェア内の ルックアップ テーブルに格納された残量値と比較 できます。 ここに示した回路は、バッテリの種類にかかわら ず、バッテリ電圧の測定に使用できます。この回路 を使用する際は、ADC デバイスへの入力電圧の最 大値 ( すなわちバッテリのフル充電時に VIN+ ピン にかかる電圧 ) が ADC の内部リファレンス電圧 (2.048V) より低くなるよう、分圧回路 (R1、R2、R3) を正しく調節する必要があります。 電圧の測定だけでバッテリ液の残量を正確に知る ことはできませんが、実現が簡単明瞭であるため、 シンプルで省コスト性のアプリケーションではこ の方法が広く使用されています。 To Load Voltage at VIN+ pin = LSB = 図 3: 2.048V 2 (18-1) Battery Volt * (R2 + R3) R1 + (R2 + R3) = 15.625 µV バッテリ電圧の測定 © 2008 Microchip Technology Inc. DS01156A_JP - ページ 3 AN1156 Actual Curve Linear Approximation Line 図 4: 3.7V リチウムポリマー バッテリの放電曲線 DS01156A_JP - ページ 4 © 2008 Microchip Technology Inc. AN1156 Start Send I2C Write Command to write the ADC Configuration Register Bits (One-shot conversion and 18 bit mode, PGA = 1) Send I2C Read Command and Acquires 18 Bits of Conversion Data Convert the acquired digital data into voltage: Measured Voltage = Acquired ADC Code * LSB where: LSB = 2.048V 2(17) Battery Voltage = Measured Voltage * = Measured Voltage * = 15.625 µV 1 Scale Factor of Voltage Divider Circuit R1 + (R2 + R3) (R2 + R3) No Do you want to display the voltage on LCD ? Yes Convert the resulting Input Battery Voltage in binary form to decimal number Display the Battery Voltage in LCD 図 5: バッテリ電圧測定用の MCU ファームウェアのフローチャート © 2008 Microchip Technology Inc. DS01156A_JP - ページ 5 AN1156 放電 / 充電電流の測定 図 6 に、MCP3421 ADC デバイスを使用したバッテ リの放電 / 充電電流測定回路を示します。放電モー ドでは、電流はバッテリから電流センサ素子を経由 して負荷の方向へ流れます。電流センサに電流が流 れると、センサの抵抗成分により、センサ素子の前 後で電圧降下が生じます。この電圧降下を MCP3421 デバイスで測定します。 例に示す回路では、MCP3421 の差動入力ピンが電 流センサの前後に接続されています。放電モードで は、VIN+ 入力ピンにかかる電圧は VIN- ピンにかか る電圧に対して正となります。充電モードでは、電 流の方向が反対になるため、極性も反対になりま す。MCU は、ADC 出力コードの符号ビット (MSB) を調べて電流の向きを判断します。 10 mA の負荷電流が 10 mΩ の電流センサを流れた とすると、電流センサ前後の電圧降下は 100 µV と なります。これは 18 ビットの MCP3421 ADC デバ イスの 6.4 LSB、すなわち 6.4 の出力コードと同等 です ( 実際には整数部分の 6 が出力される )。 MCP3421 デバイスには PGA が内蔵されています。 PGA のゲインを 8 に設定すると、入力が内部で 800 µV に増幅されてから A/D 変換が実行されます。 この結果、測定に十分な 51 LSB、すなわち 51 の出 力コードが得られます。 この例が示すように、電流を正確に測定するには高 分解能の ADC が必要です。比較的高い抵抗値の電 流センサを使用するのでなければ、PGA を内蔵し た ADC を選択することが推奨されます。 設計時に電流センサを選択する際は、バッテリの電 圧バジェットと ADC のビット分解能の両方を考慮 する必要があります。電流センサによる電圧降下は 損失であるため、最小限に抑える必要があります。 その一方、ADC で測定できるだけの大きさも必要 です。理論上は、入力信号が 1 LSB (Least Significant Bit) より大きければ ADC で測定できます。 電流は、電圧の測定値を、電流センサの既知の抵抗 値で割って求めます。こうすることで、電流を短い 間隔で定期的に測定できます。次に、この測定値を 経時的に累積します。この放電電流の測定値を累計 したものが使用されたバッテリ容量で、残りのバッ テリ容量はバッテリのフル充電時容量から使用さ れた容量を差し引いたものになります。これらのパ ラメータの計算は、MCU のファームウェアを使用 して実行できます。 式 1: 式 2: MCP3421 の LSB 電流の計算 Voltage- = 2.048V LSB = Reference ----------------------------------------------------------- = 15.625 µ V n–1 17 2 2 ここで : n 式 3: = Measured VoltageI = ----------------------------------------------R of Current Sensor 分解能ビット数 使用 ( 放電 ) されたバッテリ容量 N Fuel Used ( mAH ) = ∑ Disch arg ing Current ( mA ) × ∆Time ( n ) n=1 N Fuel Used ( mAH ) = ∑ Disch arg ing Current ( mA ) × ∆Second ( n -) -----------------------------3600 n=1 式 4: 残りのバッテリ容量 Fuel Remaining ( mAH ) = Battery Full Capacity ( mAH ) – Fuel Used ( mAH ) DS01156A_JP - ページ 6 © 2008 Microchip Technology Inc. AN1156 MCU ファームウェアは、MCP3421 ADC デバイス がデータ変換、乗算、除算、および 2 進数から 10 進数への変換を実行する際の制御を実行します。こ うした処理を実行する MCU のコード例は、本アプ リケーション ノートに付属のファームウェアに含 まれています。 図 6: バッテリの放電 / 充電電流の測定 © 2008 Microchip Technology Inc. DS01156A_JP - ページ 7 AN1156 Start Send I2C Write Command to write the ADC Configuration Register Bits (One-shot conversion, 18 bits mode, PGA = 8) Send I2C Read Command and Acquires 18 Bits of Conversion Data No Sign Bit = 0 ? This is the discharging current The direction of current is from the battery to the load. MSB = 1 Yes ADC Data = two’s complement of Acquired ADC Data This is the battery charging current. The current flows into the battery. MSB = 0 Convert the acquired ADC code into voltage: Measured Voltage = where: LSB = Acquired ADC Code 8 2.048V 2(18-1) * LSB (Dividing the factor of 8 is to take care of the PGA setting for the input signal.) = 15.625 µV Convert to current: Current = Measured Voltage Resistance Value of Current Sensor No Do you want to display the current on LCD ? Yes Convert the current in binary form into decimal number Display the value in LCD 図 7: バッテリ電流測定用の MCU ファームウェアのフローチャート DS01156A_JP - ページ 8 © 2008 Microchip Technology Inc. AN1156 デュアルチャネル ADC を使用した電圧 と電流の測定 図 8 に、バッテリの電圧と電流の両方を測定する回 路の例を示します。この測定には、デュアル チャ ネルの MCP3421 ADC デバイスを使用します。 MCU は、チャネルを多重化することで電圧と電流 を測定できます。チャネルを多重化することを除け ば、測定の原理は前項で説明した電圧と電流の測定 と同じです。 2-channel MCP3421 Family Device 図 8: バッテリの電圧と電流の測定 © 2008 Microchip Technology Inc. DS01156A_JP - ページ 9 AN1156 MCP3421 バッテリ残量ゲージ デモ ボードを使用したバッテリ残量測定 アルゴリズム 図 9 と図 10 に、MCP3421 バッテリ残量ゲージ デモ ボードとその回路図をそれぞれ示します。 MCP3421 バッテリ残量ゲージ デモ ボードはバッテ リの電圧と電流を 1 秒ごとに測定し、使用された バッテリ容量と残りのバッテリ容量を計算します。 測定値と計算結果はいずれも LCD に表示されます。 充電式バッテリを使用する場合は、必要に応じて バッテリを充電することもできます。この回路で は、電圧測定用 (U5) と電流測定用 (U1) とで 2 つの MCP3421 デバイスが使用されています。U5 と U1 の機能は、1 個のデュアルチャネル デバイス (U6) で代用できます。U6 はこのボードには実装されて いません。R3、R4、R1 は分圧回路を構成します。 R1 は、R3 と R4 の部品公差を校正するための可変 抵抗器です。これらの抵抗の合計が 1 MΩ より大き い場合、分圧回路による電流損失は無視できるレベ ルになります。 R12 は 0.01Ω の電流センサです。すべての負荷電流 が R12 を流れます。 R11 は負荷抵抗の合計 (100Ω) を表しています。こ の値は、ある一定の負荷状態を表すために選択され たものであり、どのような値でもかまいません。 上記の状態で 1.5V の単四形電池を使用すると、負 荷電流は 15 mA となります。電流センサ前後の電 圧降下は次のとおりとなります。 V = 15mA • 0.01 Ω = 150 µ V U1 の ADC を 8 倍の PGA ゲインで構成して 18 ビッ ト分解能で動作させた場合、ADC デバイスから出 力される有効なデジタル変換コード ( カウント ) の 総数は次のとおりとなります。 式 5: PGA ゲインを 8 に設定した場合の ADC デバイスへの入力電圧 = 150 µV * 8 = 1.2 mV 有効な ADC コード カウント の総数 = 1.2 mV LSB ( = 15.6 µV) = 77 カウント 式 5 に示した例は、15 mA の電流が 10 mΩ の電流 センサを流れた場合について測定したものです。こ れを見ると、18 ビットの MCP3421 ADC デバイスで 同一符号であれば利用できる全 131072 コードのう ち、約 77 デジタル コードが有効に利用できること が分かります。この数の出力コードを利用できるだ けでも、10 mΩ のセンサを流れる 15 mA の電流は 十分検出できます。有効に利用できるコード数が多 いほど精度が向上し、それとともに ADC のビット DS01156A_JP - ページ 10 分解能と PGA 設定も高まります。一般に、ADC は ビット分解能が大きいほどデバイスのテスト時間 が長くなり、それにつれて価格が高くなります。 PGA のゲインを 8 に設定すると、MCP3421 デバイ スは 1.953 µV からの入力電圧を測定できます。こ れは 21 ビット ADC の LSB サイズであり、18 ビッ トの ADC デバイスに 3 ビットを追加して使用する のと同等です。 MCU のファームウェアは電流センサを流れる電流 を追跡し、使用されたバッテリ容量と残りのバッテ リ容量を計算します。 MCP73831(U3) は、単一セルのリチウムイオン / リ チウムポリマー バッテリ充電管理コントローラで す。MCU が PROG ピンを制御することで、バッテ リの充電を開始または停止します。また、MCU は STATUS ピンを利用してバッテリの充電状態を監視 します。 図 11 に、MCP3421 バッテリ残量ゲージ デモ キッ トで使用しているサンプル アルゴリズムのフロー チャートを示します。このアルゴリズムは MCU の ファームウェアをベースにしているため、アルゴリ ズムは各自で容易に変更できます。 MCU のサンプル ファームウェア 本アプリケーション ノートには、図 9、図 10、図 11 に対応した MCU のサンプル ファームウェアが添付 されています。このファームウェアは、PIC18F4550 MCU を使用して作成しています。充電式バッテリ には、米国カリフォルニア州 Powerizer 社 ( ウェブサ イト : http://www.batteryspace.com) 製 3.7V / 170 mA リ チウムイオン / ポリマー バッテリ ( 製品番号 : PL052025) を使用しています。 MCP3421バッテリ残量ゲージ デモ ボード キットは 1.5V 単四形乾電池を使用するユーザー向けに出荷 されているため、バッテリ充電機能は無効になって います。しかしながら、本アプリケーション ノー トのサンプル ファームウェアでは充電式バッテリ ( 製品番号 PL052025) を使用しています。 ユーザーは、MCP3421 バッテリ残量ゲージ デモ ボード キット、付属のファームウェア、指定の充 電式バッテリ ( 製品番号 PL052025) を使用してバッ テリ充電機能のシミュレーションを実行できます。 MCP3421バッテリ残量ゲージ デモ ボード キットでこ のファームウェアを使用すると、バッテリ残量を追跡 し、残量がなくなったらバッテリを充電できます。 MCU のファームウェアはダウンロード可能です ( ファイル名 : MCP3421 App Note on Battery Fuel Gauge.Zip)。 © 2008 Microchip Technology Inc. AN1156 USB Connector (not used) Connector for MPLAB® ICD2 In-Circuit Menu Selection Switch 2x16 LCD Test Pins for Battery Charger 9V Battery Connector (TP11) (See Note 1) Battery Under Test – 9V Power Supply (See Note 1) + Current Sensor PIC18F4550 Potentiometer MCP3422 Footprint MCP73831 MCP3421 I2C Interface Test Points MCP3421 MCU MCLR Reset Switch Jumper for Discharging Path 図 9: MCP3421 残量ゲージ デモ ボード © 2008 Microchip Technology Inc. DS01156A_JP - ページ 11 ᵈ1 9V㔚Ḯ߹ߚߪ9Vࡃ࠶࠹ࠍ↪ߒߡߊߛߐޕ ߚߛߒޔਔᣇหᤨߦߪ↪ߒߥߢߊߛߐޕ AN1156 図 10: MCP3421 残量ゲージ デモ ボードの回路図 DS01156A_JP - ページ 12 © 2008 Microchip Technology Inc. AN1156 Start Fuel Remaining (mAH) = Initial Battery Fuel (fully charged, 170 mAH) Get ADC value from U1 ( for Discharging Current) Multiply ADC counts * LSB (LSB = 15.625 µV) Get ADC value from U5 (for Battery Voltage) (Take into account the voltage divider at input) Display Discharging Current and Battery Voltage Yes Battery Voltage < 50% and want to Recharge? No Fuel Used (mAH) = Fuel Used (mAH) + ∆Discharging Fuel (mAH) (Discharging Fuel (mAH) = Discharging Current (mA•s)/3600) Enable MCP73831 output (to recharge battery) Fuel Remaining (mAH) = Fuel Remaining (mAH) - Fuel Used (mAH) Display Fuel Remaining and Fuel Used Get ADC value from U1 ( for Charging Current) Disable MCP73831 output (recharging is done) Get ADC value from U5 (Battery Voltage) Display Charging Current & Battery Voltage Fuel Remaining (mAH) = Fuel Remaining (mAH) + Fuel Charged (mAH) Display Fuel Remaining Is Battery Fully Charged ? or Interrupted ? No Yes 図 11: バッテリ残量管理のアルゴリズム © 2008 Microchip Technology Inc. DS01156A_JP - ページ 13 AN1156 結論 参考資料 バッテリから流出する電流 ( 放電電流 ) とバッテリ に流入する電流 ( 充電電流 ) をデバイスで経時的に 追跡できれば、バッテリ残量は比較的簡単に測定で きます。バッテリ残量ゲージの精度は電流の測定精 度に依存します。単体の MCP3421 ADC ファミリ デ バイスは、一般的な集積化されたバッテリ残量ゲー ジに使用されている ADC よりもはるかに高い測定 精度を備えています。また、優れた性能だけでなく、 大幅にコストを削減できるという利点もあります。 [1] MCP3421 データシート『18-bit ADC with I2C Interface and On-Board Reference』(DS22003) Microchip Technology Inc. 本アプリケーション ノートには、バッテリ残量測 定アルゴリズムを実現するのに必要な MCU のサン プル ファームウェアが添付されています。この MCU ファームウェアは PIC18F4550 をベースにして います。このサンプルには、MCP3421 ADC デバイ スの読み出しと書き込み、2 進数の乗算と除算、LCD ディスプレイ表示のための 2 進数から 10 進数への 変換など、実際に役立つコードが多く含まれていま す。 [2]『MCP3421 Battery Fuel Gauge Demo Board User’s Guide』(DS51683A) Microchip Technology Inc. [3] MCP73831/2 データシート『Miniature SingleCell, Fully Integrated Li-Ion, Li-Polymer Charger Management Controllers』(DS21984) Microchip Technology Inc. [4] PIC18F2455/2550/4455/4450 データシート 『28/40/44-Pin, High-Performance, Enhanced Flash, USB Microcontrollers with nanoWatt Technology』 (DS39632) Microchip Technology Inc. 本アプリケーション ノートに示したサンプルでは、 バッテリ特性への温度の影響は考慮していません。 注: 添付されている MCU のサンプル ファー ムウェアは、指定のバッテリに対しての み有効です。 他の種類のバッテリを使用する場合は、 各自でファームウェアを書き換えてくだ さい。 DS01156A_JP - ページ 14 © 2008 Microchip Technology Inc. マイクロチップ社デバイスのコード保護機能に関する以下の点にご留意ください。 • マイクロチップ社製品は、その該当するマイクロチップ社データシートに記載の仕様を満たしています。 • マイクロチップ社では、通常の条件ならびに仕様どおりの方法で使用した場合、マイクロチップ社製品は現在市場に流 通している同種製品としては最もセキュリティの高い部類に入る製品であると考えております。 • コード保護機能を解除するための不正かつ違法な方法が存在します。マイクロチップ社の確認している範囲では、この ような方法のいずれにおいても、マイクロチップ社製品をマイクロチップ社データシートの動作仕様外の方法で使用す る必要があります。このような行為は、知的所有権の侵害に該当する可能性が非常に高いと言えます。 • マイクロチップ社は、コードの保全について懸念を抱いているお客様と連携し、対応策に取り組んでいきます。 • マイクロチップ社を含むすべての半導体メーカーの中で、自社のコードのセキュリティを完全に保証できる企業はあり ません。コード保護機能とは、マイクロチップ社が製品を「解読不能」として保証しているものではありません。 コード保護機能は常に進歩しています。マイクロチップ社では、製品のコード保護機能の改善に継続的に取り組んでいます。 マイクロチップ社のコード保護機能を解除しようとする行為は、デジタルミレニアム著作権法に抵触する可能性がありま す。そのような行為によってソフトウェアまたはその他の著作物に不正なアクセスを受けた場合は、デジタルミレニアム著 作権法の定めるところにより損害賠償訴訟を起こす権利があります。 本書に記載されているデバイス アプリケーションなどに 関する情報は、ユーザーの便宜のためにのみ提供されて いるものであり、更新によって無効とされることがあり ます。アプリケーションと仕様の整合性を保証すること は、お客様の責任において行ってください。マイクロチッ プ社は、明示的、暗黙的、書面、口頭、法定のいずれであ るかを問わず、本書に記載されている情報に関して、状 態、品質、性能、商品性、特定目的への適合性をはじめと する、いかなる類の表明も保証も行いません。 マイクロ チップ社は、本書の情報およびその使用に起因する一切の 責任を否認します。マイクロチップ社デバイスを生命維持 および / または保安のアプリケーションに使用することは デバイス購入者の全責任において行うものとし、デバイス 購入者は、デバイスの使用に起因するすべての損害、請 求、訴訟、および出費に関してマイクロチップ社を弁護、 免責し、同社に不利益が及ばないようにすることに同意す るものとします。暗黙的あるいは明示的を問わず、マイク ロチップ社が知的財産権を保有しているライセンスは一 切譲渡されません。 商標 Microchip の社名とロゴ、Microchip ロゴ、Accuron、 dsPIC、KEELOQ、KEELOQ ロゴ、MPLAB、PIC、 PICmicro、PICSTART、rfPIC、SmartShunt、UNI/O は、 米国およびその他の国における Microchip Technology Incorporated の登録商標です。 FilterLab、Linear Active Thermistor、MXDEV、MXLAB、 SEEVAL、SmartSensor、The Embedded Control Solutions Company は、米国における Microchip Technology Incorporated の登録商標です。 Analog-for-the-Digital Age、Application Maestro、 CodeGuard、dsPICDEM、dsPICDEM.net、dsPICworks、 dsSPEAK、ECAN、ECONOMONITOR、FanSense、 In-Circuit Serial Programming、ICSP、ICEPIC、Mindi、 MiWi、MPASM、MPLAB Certified ロゴ、MPLIB、 MPLINK、mTouch、PICkit、PICDEM、PICDEM.net、 PICtail、PIC32 logo、PowerCal、PowerInfo、PowerMate、 PowerTool、Real ICE、rfLAB、Select Mode、Total Endurance、WiperLock、ZENA、は米国およびその他の 国における Microchip Technology Incorporated の商標です。 SQTP は米国における Microchip Technology Incorporated のサービスマークです。 その他、本書に記載されている商標は、各社に帰属します。 © 2008, Microchip Technology Incorporated, Printed in the U.S.A., All Rights Reserved. 再生紙を使用しています。 マイクロチップ社では、Chandler および Tempe ( アリゾナ州 )、 Gresham ( オレゴン州 ) の本部、設計部およびウエハ製造工場そして カリフォルニア州とインドのデザイン センターが ISO/TS-16949:2002 認証を取得しています。マイクロチップ社の品質システム プロセス および手順は、PIC® MCU および dsPIC® DSC、KEELOQ® コード ホッ ピング デバイス、シリアル EEPROM、マイクロペリフェラル、不揮 発性メモリ、アナログ製品に採用されています。また、マイクロ チップ社の開発システムの設計および製造に関する品質システムは、 ISO 9001:2000 の認証を受けています。 © 2008 Microchip Technology Inc. DS01156A_JP - ページ 15 世界各国での販売およびサービス 北米 アジア / 太平洋 アジア / 太平洋 ヨーロッパ 本社 アジア太平洋支社 インド - バンガロール オーストリア - ヴェルス 2355 West Chandler Blvd. Chandler, AZ 85224-6199 Tel: 480-792-7200 Fax: 480-792-7277 テクニカル サポート : http://support.microchip.com ウェブ アドレス : www.microchip.com Suites 3707-14, 37th Floor Tower 6, The Gateway Harbour City, Kowloon Hong Kong Tel: 852-2401-1200 Fax: 852-2401-3431 Tel: 91-80-4182-8400 Fax: 91-80-4182-8422 Tel: 43-7242-2244-39 Fax: 43-7242-2244-393 インド - ニューデリー デンマーク - コペンハーゲン Tel: 91-11-4160-8631 Fax: 91-11-4160-8632 Tel: 45-4450-2828 Fax: 45-4485-2829 オーストラリア - シドニー インド - プネ フランス - パリ Tel: 91-20-2566-1512 Fax: 91-20-2566-1513 Tel: 33-1-69-53-63-20 Fax: 33-1-69-30-90-79 日本 - 横浜 ドイツ - ミュンヘン Tel: 81-45-471- 6166 Fax: 81-45-471-6122 Tel: 49-89-627-144-0 Fax: 49-89-627-144-44 韓国 - 大邱 イタリア - ミラノ Tel: 82-53-744-4301 Fax: 82-53-744-4302 Tel: 39-0331-742611 Fax: 39-0331-466781 韓国 - ソウル オランダ - ドリューネン Tel: 82-2-554-7200 Fax: 82-2-558-5932 または 82-2-558-5934 Tel: 31-416-690399 Fax: 31-416-690340 マレーシア - クアラルンプール Tel: 34-91-708-08-90 Fax: 34-91-708-08-91 アトランタ Tel: 61-2-9868-6733 Fax: 61-2-9868-6755 Duluth, GA Tel: 678-957-9614 Fax: 678-957-1455 中国 - 北京 ボストン 中国 - 成都 Westborough, MA Tel: 774-760-0087 Fax: 774-760-0088 シカゴ Itasca, IL Tel: 630-285-0071 Fax: 630-285-0075 ダラス Addison, TX Tel: 972-818-7423 Fax: 972-818-2924 デトロイト Tel: 86-10-8528-2100 Fax: 86-10-8528-2104 Tel: 86-28-8665-5511 Fax: 86-28-8665-7889 中国 - 香港 SAR Tel: 852-2401-1200 Fax: 852-2401-3431 中国 - 南京 Tel: 86-25-8473-2460 Fax: 86-25-8473-2470 中国 - 青島 Tel: 86-532-8502-7355 Fax: 86-532-8502-7205 Farmington Hills, MI Tel: 248-538-2250 Fax: 248-538-2260 中国 - 上海 ココモ 中国 - 瀋陽 Tel: 86-21-5407-5533 Fax: 86-21-5407-5066 Kokomo, IN Tel: 765-864-8360 Fax: 765-864-8387 Tel: 86-24-2334-2829 Fax: 86-24-2334-2393 ロサンゼルス Tel: 86-755-8203-2660 Fax: 86-755-8203-1760 Mission Viejo, CA Tel: 949-462-9523 Fax: 949-462-9608 サンタクララ 中国 - 深川 中国 - 武漢 Tel: 86-27-5980-5300 Fax: 86-27-5980-5118 Santa Clara, CA Tel: 408-961-6444 Fax: 408-961-6445 中国 - 厦門 トロント 中国 - 西安 Mississauga, Ontario, Canada Tel: 905-673-0699 Fax: 905-673-6509 Tel: 86-592-2388138 Fax: 86-592-2388130 Tel: 86-29-8833-7252 Fax: 86-29-8833-7256 Tel: 60-3-6201-9857 Fax: 60-3-6201-9859 マレーシア - ペナン Tel: 60-4-227-8870 Fax: 60-4-227-4068 スペイン - マドリッド 英国 - ウォーキンガム Tel: 44-118-921-5869 Fax: 44-118-921-5820 フィリピン - マニラ Tel: 63-2-634-9065 Fax: 63-2-634-9069 シンガポール Tel: 65-6334-8870 Fax: 65-6334-8850 台湾 - 新竹 Tel: 886-3-572-9526 Fax: 886-3-572-6459 台湾 - 高雄 Tel: 886-7-536-4818 Fax: 886-7-536-4803 台湾 - 台北 Tel: 886-2-2500-6610 Fax: 886-2-2508-0102 タイ - バンコク Tel: 66-2-694-1351 Fax: 66-2-694-1350 中国 - 珠海 Tel: 86-756-3210040 Fax: 86-756-3210049 01/02/08 DS01156A_JP - ページ 16 © 2008 Microchip Technology Inc.
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