平成26年度 業 務 概 要 国土交通省九州地方整備局 下関港湾空港技術調査事務所 (URL : http://pa.qsr.mlit.go.jp/gityou/) Ⅰ.事務所の概要 下関港湾空港技術調査事務所は、港湾・空港・海岸・船の技術センターとして「地域と組織に信頼 される事務所」を目指しています。 主な業務 ① 港湾、海岸、空港の整備などに係る各種調査研究及び技術開発 ② 直轄の港湾施設、海岸保全施設、空港(2種)に係る調査設計 ③ 船舶の建造、改造及び修理 ④ 港湾・海岸に係る助成事業の技術的指導及び助言 担当区域 担当区域は、九州 7 県 1 市(福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、下関 市)です。重要港湾 28 港(うち国際拠点港湾 3 港) 、2 種空港 7 港。 管内図 山口県 万関瀬戸航路 下関市 厳原港 下関港 関門航路 蟐蛾ノ瀬戸航路 北九州港 新北九州空港 福岡空港 苅田港 博多港 郷ノ浦港 平戸瀬戸航路 福岡県 唐津港 周防灘 大分空港 中津港 大分県 別府港 佐賀県 大分港 伊万里港 津久見港 有明海 三池港 佐世保港 長崎空港 熊本港 佐伯港 熊本県 長崎県 福江港 熊本空港 長崎港 細島港 三角港 八代港 宮崎県 日向灘 本渡瀬戸航路 鹿児島県 宮崎港 鹿児島空港 宮崎空港 川内港 鹿児島港 鹿児島湾 油津港 志布志港 ■凡例 特定重要港湾 国際拠点港湾 重要港湾 西之表港 開発保全航路 第二種空港 1 名瀬港 Ⅱ.平成 26年度の各課業務 ● 調査・設計 九州管内の港湾・空港は、周防灘・有明海周辺に広がる軟弱地盤、南九州太平洋沿岸に代表される長 周期・高波浪海域、別府湾・鹿児島湾における大水深海域等の多様で過酷な自然条件下に置かれ、また 近年では南海トラフ巨大地震による津波が想定されています。設計室では、それぞれの港湾・空港の抱 える技術的課題を解決しながら、港湾・空港の設計に取り組んでいます。 ○調査部門 ①港湾・海岸等施設の水理特性把握 港湾・海岸等の設計に資するため、シミュレーションや数値解析では解明できない海の現象をより 的確に把握し、技術的課題を克服するために水理模型実験を行います。 長水路における実験イメージ ◆ 平成26年度 水理模型実験案件(予定を含む) ・指宿港海岸・・・海岸浸食対策施設の安定性の検討 ・宮崎港防波堤等・・・防波堤の安定性の検討 ②地震・津波対策の検討 東日本大震災を受けて見直された各県の地域防災計画等に基づき、津波及び地震に対する防波堤の 安定性の確認、洗掘・越流対策の検討を行います。また、津波対策の断面は水理模型実験等により被 災状況、メカニズムを確認し、対策断面を決定していきます。 2 ○設計部門 平成 19 年 4 月 性能設計を取り入れた港湾の技術基準が導入されたことより、性能設計をもと に近年の新たな知見を取り入れながら設計を進めています。 ①港湾・空港施設の設計(平成26年度) □防波堤では、別府港(石垣地区)および大分港(西大分地区)の防波堤の設計を行います。 □岸壁では、港湾施設の維持管理・更新のため、下関港・長崎港等の岸壁(改良)設計を行います。 別府港(石垣地区)防波堤 設計位置図 大分港(西大分地区)防波堤 設計位置図 ②海岸保全施設の設計(平成26年度) □下関港海岸では、平成 11 年に発生した大規模な高潮被害をはじめ、越波による国道の通行禁 止、高潮による家屋の浸水など台風による被害から防護するため、道路事業と連携して既設護 岸の嵩上げ等海岸防護機能の確保を目的とした高潮対策について検討を行っています。 長府壇ノ浦地区の整備状況 下関港海岸の被災状況(T9918) 山陽地区(東護岸)の設計断面 山陽地区(東護岸)の整備状況 3 ●技術開発 九州地域の港湾・空港整備における技術的課題を解決するため技術開発を進めています。特に平成 22 年 12 月に策定した「九州港湾・空港技術開発ビジョン」に基づき必要な技術開発に取り組んでいます。 ① 埋没対策の高度化 トレンチによる航路埋没抑制イメージ 有明海や周防灘においては、土砂の流入・堆積に よる航路・泊地の埋没を防ぐのに苦慮していますが、 航路・泊地の機能を維持するため、シルテーション による埋没予測の精度向上を図るとともに、埋没対 策として、トレンチの機能維持効果について検討を 行い、ライフスタイルコスト縮減の観点にたった対 トレンチ 策に取り組んでいます。 ②浚渫土砂を活用した高強度構造体の開発 航路・泊地の埋没を防ぐための維持浚渫を行っていますが、 新たな土砂処分場の確保が困難な状況にあるため、浚渫土砂を 港湾構造物の材料として有効活用し、土砂処分場の延命化を図 る必要があります。 これまで、小型モールドでの浚渫土砂の高強度化技術の検討 環境に配慮した潜堤のイメージ を行ってきましたが、今後は、港湾構造物等の大型構造体の開 発に取り組んでいます。 ③港湾における防災対策のための技術研究 高圧脱水成型装置 九州は、勢力を維持したまま上陸・接近する台風が多く、地球温暖化にともなう災害リスクの増加 の可能性が指摘されています。港湾では、防波堤や堤防等の外郭施設は波高の増大による安全性の低 下や越波による港内静穏度の維持が困難となり、岸壁等の係留施設は荷役に障害が生じる恐れがあり ます。このため、各港湾における水位変動・気象・海象状況を把握するとともに、地理的な特性に留 意し、長期的な潮位等の経年変化や起こり得る津波・高潮・高波規模の想定、解析を行い、九州管内 における港湾及び海岸施設の被害軽減、及び対応策に関する技術研究に取り組んでいます。 ④気象・海象データの収集・公開 九州管内の港湾施設の調査・計画・設計及び工事の実施並びに施設の管理・保全や利用の促進を図る ため、九州沿岸域の波浪、潮位、風向・風速を観測し、これら気象・ 海象データの処理・解析を行っています。なお、情報は、リアルタ イム・ナウファス情報において、『有義波実況・周期帯波浪実況・ 登録技術内訳 (平成18年度~平成25年度) 潮位実況・毎分沖平均水面』をリアルタイムで提供しています。 (HP:http://www.mlit.go.jp/kowan/nowphas/) ⑤新技術情報提供システム(NETIS) 新 技 術 情 報 提 供 シ ス テ ム ( New Technology Information System:NETIS)とは国土交通省が新技術の活用のため、新技術 に関わる情報の共有及び提供を目的として整備した国土交通省の インターネットで運用されるデータベースシステムです。技術開発 13件 その他 8件 浚渫工 5件 付属工 (車止め等) 3件 4件 地盤改良工 3件 本体工 4件 3件 環境 地盤 測量調査 対策工 改良工 課では港湾空港に関する新技術の申請受付や相談業務を行っています。 (HP アドレス:http://www.netis.mlit.go.jp/NetisRev/NewIndex.asp) ●環境 港湾は物流・産業の場としての役割を担っていますが、開発や生活様式の変化で失われた海域環境を 改善するため、自然回復力促進技術や海生生物との共生技術について検討を行っています。 ① 海域環境改善のための技術 有明海・八代海及び豊前海等の海域においては 浚渫土を有効利用した人工 干潟造成のイメージ のイメージ 浚渫土を有効利用した人工干潟造成 近年、様々な環境問題が生じており、総合的な海 域環境の保全・再生等が求められています。この ため、浚渫土砂の有効利用と海域環境の改善を目 的に、4 海域(八代海湾奥、三池港、大浦港、中 津港)で担当事務所と連携し干潟実証実験、学識 経験者等の参画による評価・検討を行い、「海域 悪化した底質 環境の保全・再生に資する泥質干潟造成」の技術 泥質土(浚渫土砂と砂の混合土) 的成果を得ました。これらの成果を踏まえ、浚渫 浚渫土砂の再利用 土砂やリサイクル材の活用効果、浮泥対策につい ての検討を行い、海域環境改善に向けて取り組み ます。 ② 防災・減災対策への環境付加技術 防波堤や護岸に大津波や高潮に対しての防 災・減災機能を向上させるためには、従来の構造 に基礎の嵩上補強を行うことがあるため、海底に 光が届き易くなるなど、海草等の生物生息環境に も変化が生じます。海草が繁殖する藻場は産卵や 幼稚魚生育の場となり水質浄化機能も持つこと から、これらの変化に対してさらに藻場等の形成 条件を整えるための付加技術の適用に取り組み ます。 ③ 環境学習 環境情報の共有化と環境教育支援のため、「環 境学習支援プログラム」を活用した「みなとの 環境学習」を行います。 5 ●施工技術 当局で保有する船舶や機械の建造、改造、修理や施工技術に関する技術開発に取り組んでいます。 ① 舶及び機械の建造・改造・修理 九州管内で保有する11隻の作業船の内、ドラグサクション浚渫兼油回収船「海翔丸」、清掃兼油回 収船「がんりゅう」、調査観測兼清掃船「海輝」、「海煌」の改造・定期的修理を実施しています。 調査観測兼清掃船「海煌」 ドラグサクション浚渫兼油回収船「海翔丸」 ②施工技術に関する技術開発 施工技術課では、港湾工事における効率的な施工や品質向上、および安全性の向上を目的とした技 術開発を行っています。常に新しい施工方法や新技術を導入し、港湾工事が効率よく安全に施工出来る よう創意工夫、新たな発想を心がけて取り組んでいます。今年度からは海洋環境整備船の高度化に着手 すると共に、過年度に開発した非接触式鋼構造物板厚計測技術、ユニット式余水処理装置の普及にも取 り組んでいます。 海洋環境整備船の高度化 凝集剤 深層ろ過装置 土砂処分場 外海 混合槽 汚泥貯槽 ユニット式余水処理装置 非接触式鋼構造物板厚計測技術 6 Ⅲ.各種技術支援等 1)技術情報の提供 (1) ホームページによる情報提供 ホームページにより、管内港湾の波浪観測情報の提供や、各種技術情報、各種調査成果及び 技術開発成果の公表を行います。 (2) 広報誌・業務報告書の発行、論文発表 各種技術情報、各種調査成果及び技術開発成果の公表を広報誌、業務報告書の発行、論文発 表等で行います。 2)技術支援等 (1) 技術基準等の作成 本省が行う港湾の技術基準等のマニュアル類作成に積極的に参画していくとともに、新しい 港湾の技術基準の円滑な導入を図ります。 (2) 港湾管理者や港湾立地企業への設計支援 港湾施設の設計に関する情報の提供や相談等の技術的支援を行います。 (3) 技術研修の開催 管内職員等を対象とした設計研修等を開催します。 ※平成26年度 研修名 11月 設計実務研修 (係船岸) 研修計画 開催場所 開催期間 参加人数 対象者 下関合庁 3日 20 設計実務者 3)民間等新技術の活用推進 平成 18 年 8 月より本格運用された公共工事等における新技術活用システム(NETIS)の更なる 有効活用を図りつつ、現場ニーズに対応した新技術を広く民間等から収集し、政策ニーズ・現場ニ ーズ情報の提供を行います。 7 Ⅳ.トピックス等 ○平成25年度に実施した主な活動内容 1)「九州建設技術フォーラム2013」 福岡国際会議場において開催し、基調講演、プレゼンテーション等がありました。当事務所は、フ ォーラム実行委員会の事務局として参加し、プレゼンテーション1課題の発表及び新技術相談ブース において、新技術(NETIS)に関する登録等の相談を受けました。 情報提供(プレゼンテーション) 新技術相談の様子 2)水理実験センター見学会 水理実験センターの見学会をホームページ等を通じて受け付け、申し込みのあった団体・機関等 に模型実験の様子、港湾整備等の説明を行います。 平面実験の見学風景 大学生の実験見学 小学生による液状化実験 生涯学習受講風景 8 Ⅴ.保有施設 港湾空港水理実験センター 1. 潮流・波浪実験場 2.波浪実験場 9 3.船舶修理ドック ・ ドック設備 種 類 / ドライドック兼実験水槽 規 模 / 幅 17m×長さ 50m×深さ 6.0m 排水ポンプ / 軸流ポンプ ゲ / 導船装置 ー ト 25m3/min 37kw 他二台 2.8 吊門型クレーン付計測台車 10
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