日本消化器病学会関東支部第334回例会 プログラム・抄録集 当番会長:東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 消化器・肝臓内科 教授 相 澤 良 夫 〒125-8506 東京都葛飾区青戸6-41-2 TEL 03-3603-2111/FAX 03-3838-9944 期 日:平成27年5月23日 (土) 会 場:海運クラブ 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-6-4 TEL 03-3264-1825 http://kaiunclub.org/ <発表者,参加者の皆様へ> 1.発表者は日本消化器病学会の会員に限ります。 2.発表はすべてPCでのプレゼンテーションとなります。 口演30分前までに,PC受付にてデータ登録・動作チェックを済ませてください。 1)会場 に 用 意 す るPCの ア プ リ ケ ー シ ョ ン は,Microsoft PowerPoint 2007/2010/ 2013となります。発表データはUSBメモリにてお持ちください。また, 事前に必ず, 作成したPC以外のPCでも正常に動作することを確認してください。 ※データ作成の際は,文字化けを防ぐため次の標準フォントをご使用ください。 日本語:MSゴシック,MS Pゴシック,MS明朝,MS P明朝 英語:Arial,Century,Century Gothic,Times New Roman ※スライド作成時の画面サイズはXGA(1024×768)であることをご確認の上, 作成してください。 2)Macintosh使用,及びWindowsでも動画を含む場合は,必ずPC本体をお持込みく ださい。データでのお持込みには対応いたしかねますのでご注意ください。なお, 液晶プロジェクタへの接続はMini D-SUB 15pinにて行います。変換コネクタを必 要とする場合は必ずご自身でお持込みください。また,バッテリのみでの稼動はト ラブルの原因となるため,外部電源用アダプタを必ずお持ちください。 3)音声出力には対応いたしません。 4)発表は枚数ではなく時間で制限させていただきます。 5)発表時は,演台に置かれたモニタを見ながらご自身で操作して画面を進めていただ きます。なお,発表者ツールの使用はできませんのでご注意ください。 3.発表に際しては,患者さんのプライバシーの保護(日付の記載は年月までとする,等)に 十分配慮してください。 4.演題発表時には,利益相反状態の開示が必要になります。開示基準・規定の書式に従って 利益相反の有無を必ず開示してください。 5.演者は前演者の口演開始後,直ちに「次演者席」へご着席ください。 6.専修医セッション,研修医セッション及び一般演題は,1題口演4分,追加討論2分です。 時間厳守でお願いします。 7.質問される方は,所属と氏名を明らかにしてからお願いします。 8.専修医・研修医セッションの発表者あるいは同施設の方は,奨励賞表彰式に出席してくだ さい。(第1会場 12:50 ~) 9.当日の参加費は2,000円です。 10.当日はこのプログラム・抄録集をご持参ください。なお当日ご希望の場合は,1部1,000 円にて販売いたします。(数に限りがございますので予めご了承ください) 11.会場1階ロビーにAED(自動体外式除細動器)を設置しております。緊急の際はご利用 ください。 会 場 案 内 図 海 運 ク ラ ブ 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-6-4 海運ビル TEL 03-3264-1825 JA共済 ビル 旧赤坂 プリンス ホテル (再開発中) 赤坂エクセルホテル 東急 地下鉄 有楽町線,半蔵門線,南北線:永田町駅4,5,9番出口 2分 銀座線,丸ノ内線:赤坂見附駅D (弁慶橋)出口 5分 ― 1 ― 日本消化器病学会関東支部第334回例会 平成27年5月23日(土) 8:25~8:30 開 会 の 辞(第1会場) 第1会場(午前の部) 第2会場(午前の部) 演 題 時 間 座 長 演 題 時 間 (1) 専修医Ⅰ(食道)1~4 8:30~8:54 大野亜希子 (14)研修医Ⅰ(上部消化管)48~51 8:30~8:54 (2) 専修医Ⅱ(食道・胃)5~7 8:54~9:12 櫻澤 信行 (15)研修医Ⅱ(小腸・大腸1)52~55 8:54~9:18 (3) 専修医Ⅲ(小腸)8~10 9:12~9:30 水谷 知裕 (16)研修医Ⅲ(小腸・大腸2)56~58 9:18~9:36 (4) 専修医Ⅳ(大腸)11~13 9:30~9:48 谷田恵美子 (17)研修医Ⅳ(大腸)59~62 9:36~10:00 9:48~9:58 休憩 10:00~10:10 休憩 (5) (18) 専修医Ⅴ(肝1)14~16 9:58~10:16 藤永 秀剛 研修医Ⅴ(肝) 63~66 10:10~10:34 (6) 専修医Ⅵ(肝2)17~19 10:16~10:34 稲見 義宏 (19)研修医Ⅵ(胆・膵)67~69 10:34~10:52 (7) 専修医Ⅶ(肝3)20~22 10:34~10:52 野村 憲弘 (20)研修医Ⅶ(その他)70~73 10:52~11:16 (8) 専修医Ⅷ(胆・膵)23~26 10:52~11:16 今泉 弘 (9) 専修医Ⅸ(膵) 27~30 11:16~11:40 伊藤 裕幸 12:00~12:30 評議員会 12:05~12:50 ランチョンセミナー(第1会場) 座 長 髙木 浩一 正岡 建洋 東山 正明 坂本 博次 柴 浩明 有住 俊彦 添田 敦子 IBDの治療アルゴリズムを考える 司会 慶應義塾大学医学部 内視鏡センター 緒方 晴彦 先生 「カプセル内視鏡を中心としたクローン病の診療アルゴリズム」 東京女子医科大学 消化器内科 大森 鉄平 先生 「潰瘍性大腸炎の治療アルゴリズム」 昭和大学医学部内科学講座 消化器内科学部門 竹内 義明 先生 共催:アッヴィ合同会社/エーザイ株式会社 12:50~13:05 専修医・研修医奨励賞表彰式(第1会場) 13:05~14:00 特 別 講 演(第1会場) C型肝炎の最新治療 山梨大学医学部 第一内科 教授 榎本 信幸 先生 司会 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 消化器・肝臓内科 教授 相澤 良夫 第1会場(午後の部) 第2会場(午後の部) 演 題 時 間 座 長 演 題 時 間 座 長 (10) 上部消化管31~35 14:05~14:35 牧野 洋知 (21)胆 74~77 14:05~14:29 平原 和紀 (11) (22) 大腸1 36~39 14:35~14:53 小川 匡市 膵・その他 78~81 14:29~14:53 会田 雄太 (12) 大腸2 40~43 14:53~15:17 吉竹 直人 (13) 肝 44~47 15:17~15:41 忠願寺義通 15:41~15:46 閉 会 の 辞(第1会場) 専修医・研修医セッションの発表者あるいは同施設の方は,奨励賞表彰式に出席してください。 (第1会場 12:50 ~) ― 2 ― 特 別 講 演 (第1会場 13:05~14:00) 「C型肝炎の最新治療」 山梨大学医学部 第一内科 教授 榎本 信幸 先生 司会 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 消化器・肝臓内科 教授 相澤 良夫 ・・・・・・演者の先生ご紹介・・・・・ 榎本 信幸 先生 山梨大学医学部 第一内科 教授 学歴 昭和59年3月 東京医科歯科大学医学部卒業 職歴 昭和59年(1984)6月 東京医科歯科大学 第2内科 医員(研修医) 昭和62年(1987)7月 金沢医科大学 消化器内科 助手 平成5年(1993)4月 東京医科歯科大学 第2内科 助手 平成13年(2001)4月 東京医科歯科大学 消化器内科 講師 平成15年(2003)9月 山梨大学医学部 第1内科 教授 平成25年(2013)4月 山梨大学医学部附属病院 副病院長 学会・社会活動等 (所属学会) 日本内科学会 (評議員、専門医、指導医) 日本肝臓学会 (理事、専門医、指導医) 日本消化器病学会 (評議員、専門医、指導医) 消化器内視鏡学会 (評議員、専門医、指導医) ― 3 ― ランチョンセミナー (第1会場 12:05~12:50) IBDの治療アルゴリズムを考える 司会 慶應義塾大学医学部 内視鏡センター 緒方 晴彦 先生 「カプセル内視鏡を中心としたクローン病の診療アルゴリズム」 東京女子医科大学 消化器内科 大森 鉄平 先生 「潰瘍性大腸炎の治療アルゴリズム」 昭和大学医学部内科学講座 消化器内科学部門 竹内 義明 先生 共催:アッヴィ合同会社/エーザイ株式会社 ・・・・・・演者の先生ご紹介・・・・・ 大森 鉄平 先生 東京女子医科大学 消化器内科 平成15年 3月 埼玉医科大学医学部 卒業 平成15年 4月 東京女子医科大学消化器内科学教室に入室 平成21年 4月 同 助教 平成24年 11月 博士号取得 平成26年 3月 現在に至る 資格 日本内科学会認定内科医 日本内視鏡学会専門医・指導医 関東支部評議員 日本消化器病学会専門医 日本カプセル内視鏡学会暫定認定医(指導医申請中) 賞罰 2014JDDWポスター優秀演題賞(日本内視鏡学会) 竹内 義明 先生 昭和大学医学部内科学講座 消化器内科学部門 昭和63年 3月 平成4年 3月 平成5年 12月 平成9年 1月 平成18年 1月 平成26年 3月 昭和大学医学部卒業 昭和大学大学院修了(医学博士) 米国ミシガン大学内科研究留学 内科学講座消化器内科部門助手 内科学講座消化器内科部門講師 内科学講座消化器内科部門准教授 現在に至る 所属学会 日本内科学会、日本消化器病学会、米国消化器病学会等 専門分野 炎症性腸疾患、機能性消化管疾患 ― 4 ― 第6回ハンズオンセミナー (ホワイエ 10:00~12:00) インストラクター 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 内視鏡部 診療医員 川原 洋輔 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 内視鏡部 診療医員 阿部 孝広 <ご案内> 研修医向けに上部消化管内視鏡シミュレータを用いたハンズオンセミナーを 開催いたします。 希望者はメールにて下記アドレスまでお申込みください。 定員になり次第〆切といたします。 本学会の会員でない研修医も受講できます。 子育て中の女性医師も受講できます。 お問合せ・お申込先 関東支部事務局:[email protected] 記入事項 1.所属 2.氏名 3.希望する時間帯(第3希望まで) ①10:00 ~ ②10:20 ~ ③10:40 ~ ④11:00 ~ ⑤11:20 ~ ⑥11:40 ~ ※10:00 ~ 12:00を予定しております。 参加費:無料 共催:ガデリウス・メディカル株式会社 受講の時間帯は決定次第ご連絡いたします。 ― 5 ― 第1会場(午前の部) 8:25∼8:30 ―開会の辞― 専修医セッション評価者 日本医科大学千葉北総病院 北里大学医学部 消化器内科学 東京慈恵会医科大学 ( 1 )専修医Ⅰ(食道) 消化器内科 消化器・肝臓内科 8:30∼8:54 座長 厚川 正則 横山 薫 松岡 美佳 杏林大学医学部 消化器内科 大 野 亜希子 1.半年で急速に進行した食道内分泌細胞癌の一例 東京慈恵会医科大学第三病院 消化器・肝臓内科 ○荒井麻衣子,今井 那美,上田 薫,岩久 章 直 小林 剛,木下 晃吉,小林 裕彦,伏谷 木島 洋征,小池 和彦,西野 博一 2.分類不能型結合組織病と IgG4 陽性の皮疹を合併した未分化食道癌の一例 東京都済生会中央病院 消化器内科 ○星野 舞,酒井 西井まみか,阿部 同 皮膚科 慶應義塾大学病院 同 東京都済生会中央病院 同 消化器内科 船越 信介,中澤 陳 科栄 松崎潤太郎,水野 リウマチ内科 安岡 秀剛 消化器内科 病理診断科 向井 清 歩,田沼 浩太 義彦,三枝慶一郎,岸野 元,小川 竜平 敦,塚田 信廣 慎大 3.後頸部の皮膚転移が契機で診断された食道癌の一例 東京労災病院 消化器内科 ○小嶋 啓之,大場 信之,吉峰 尚幸,小山 洋平 武田 悠希,植木 紳夫,平野 直樹,伊藤 謙 西中川秀太,児島 辰也 4.原発巣と転移巣で主要な組織所見が異なる,扁平上皮癌と小細胞癌混在食道癌の1例 板橋中央総合病院 消化器内科 ○天目 陽,藤村 赤澤希宝香,神野 彰,金子 浩明,根岸 正隆,佐々木 大久保沙恵,青木いずみ,大井 市川 同 ( 2 )専修医Ⅱ(食道・胃) 病理診断科 福田 悠 藤野 雅之 座長 展章 至,田和 良行 武 蓮根ロイヤルクリニック 8:54∼9:12 良充 洋,町田 日本医科大学千葉北総病院 外科 櫻 澤 信 行 5.NG tube によるインナードレナージが有効であった、医原性頸部食道穿孔の1例 群馬大学大学院 病態総合外科学 ○斉藤 本城 ―6― 秀幸,酒井 裕章,原 真,宗田 真,宮崎 達也 圭吾,横堀 武彦,桑野 博行 6.緩和的放射線照射にて腫瘍出血がコントロール可能となった切除不能進行胃癌の1例 公立学校共済組合関東中央病院 消化器内科 ○鈴木 辰典,磯村 好洋,瀬戸 元子,大澤由紀子 大山 博生,中村 知香,西畠 瑞希,三井 達也 渡邉 健雄,後藤絵理子,外川 修,小池 幸宏 玲子,三好 正人 7.胃軸捻転症発症の経過中に急性膵炎を合併した一例 横須賀共済病院消化器病センター 内科 ○大坪 加奈,森川 松田 浩紀,小島 幾世橋 新井 ( 3 )専修医Ⅲ(小腸) 9:12∼9:30 亮,石井 直紀,山本奈穂子,小馬瀬一樹 佳,上田 春菜,田邊 陽子,渡邉 秀樹 勝春,鈴木 秀明,小林 史枝,池田 隆明 座長 東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器内科 水 谷 知 裕 8.パテンシーカプセルが診断の契機になった小腸悪性リンパ腫の1例 東京慈恵会医科大学 消化器・肝臓内科 ○沼田 友希,河村 筒井 加藤 仁也,北原 拓也 佳苗,菰池 信彦,三戸部慈実,有廣 誠二 智弘,田尻 久雄 同 腫瘍・血液内科 高原 忍 同 消化器外科 根木 快,三森 同 同 消化器・肝臓内科 病理学講座 三石 篤,石田 教雄,矢永 勝彦 雄大 9.蛋白漏出性胃腸症を呈し、小腸内視鏡が診断に有用であった小腸原発悪性リンパ腫の1例 群馬大学医学部附属病院 消化器・肝臓内科 群馬大学大学院医学系研究科 翔,野中 真知,橋本 悠,植原 大介 中山 哲雄,富澤 琢,安岡 秀敏,栗林 志行 大山 達也,堀口 昇男,水出 雅文,山崎 勇一 下山 康之,佐藤 賢,柿崎 暁,河村 修 洋子,市原 明子 病態制御内科学 ○大澤 草野 元康 山田 正信 10.高齢者の癒着性イレウスの手術決定時期の検討 練馬総合病院 ( 4 )専修医Ⅳ(大腸) 外科 9:30∼9:48 ○竹内 優志,栗原 直人,加嶋 松浦 芳文,井上 聡,飯田 座長 町田市民病院 消化器内科 修平 谷 田 恵美子 11.回盲部腫大を呈し、診断に苦慮した盲腸憩室炎の一例 国立国際医療研究センター 消化器内科 ○張 萌琳,渡辺 一弘,木平 英里,城間 翔 畑 昌宏,久田 裕也,守安 志織,岡原 昴輝 高崎 祐介,島田 高幸,三島 沙織,大久保栄高 関根 一智,忌部 航,櫻井 横井 千寿,小早川雅男,秋山 同 外科 三宅 大 同 中央検査科 猪狩 亨 ―7― 俊之,永田 純一 尚義 12.アメーバ赤痢の治療後に瘢痕狭窄を来たし、腸管穿通およびイレウスを発症した一例 慶應義塾大学医学部 消化器内科 ○奥隅 真一,金井 隆典,久松 海老沼浩利,岩崎 栄典,ちょ 同 一般消化器外科 北川 雄光,長谷川博俊,鶴田 雅士 同 病理診断部 下田 将之,佐々木 香織 文,亀山 理一,長沼 誠 柏松,志波 俊輔 13.関節リウマチ治療中に発症した Campylobacter jejuni による敗血症の1例 厚木市立病院 内科 ○白壁 和彦,小幡 伊藝 秀一,横山 田尻 久雄 東京慈恵会医科大学附属病院 消化器・肝臓内科 ( 5 )専修医Ⅴ(肝1) 9:58∼10:16 座長 和彦,佐々木知也,松平 寛,間嶋 東京大学医学部附属病院 浩 志保 消化器内科 藤 永 秀 剛 14.急性肝障害を契機に発見され,複数回の肝生検にて診断し得た原発性胆汁性肝硬変の1例 東京慈恵会医科大学 内科学講座 消化器・肝臓内科 同 ○佐藤 優子,石田 仁也,天野 克之,上竹慎一郎 有廣 誠二,穂苅 厚史,石川 智久,田尻 病理学講座 原田 久雄 徹 15.好酸球増多症を伴う肝機能障害を契機に診断された IgG4 関連肝障害の一例 さいたま赤十字病院 消化器内科 ○高田 勇登,甲嶋 洋平,前田 土井 浩達,熊谷純一郎,高橋 笹島 圭太 隆宏,大津威一郎 正憲,鎮西 亮 16.Telaprevir 3剤療法により HCV 持続陰性化後に HTLV-1関連脊髄症を発症した C 型慢性肝炎の 1例 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 消化器肝臓内科 ○遠藤 大輔,堀内 宏倫,富田 陽一,永野 智久 關 伸嘉,杉田 知典,会田 雄太,板垣 宗徳 宏,須藤 訓,相澤 安部 ( 6 )専修医Ⅵ(肝2) 10:16∼10:34 座長 順天堂大学医学部 良夫 消化器内科 稲 見 義 宏 17.外科的治療を要した感染性肝嚢胞の2例 町田市民病院 消化器内科 ○加藤 由理,益井 芳文,土谷 稲垣由起子,小川まい子,松井 吉澤 同 外科 金井 海,和泉 元喜,金崎 一泉,大熊 幹二 寛昌,谷田恵美子 章 秀樹,篠原万里枝 18.Tolvaptan 無効の1型肝腎症候群に対し TIPS が著効した1例 日本医科大学千葉北総病院 消化器内科 ○恩田 毅,新井 泰央,大久保知美,中川 愛 星野慎太郎,小高 康裕,鈴木 将大,糸川 典夫 近藤 正則,米澤 真興,岩切 勝彦 ―8― 千紗,厚川 19.肝細胞癌、食道胃静脈瘤、胸腹水貯留を合併した C 型肝硬変に対する集学的治療を行った一例 新松戸中央総合病院 消化器・肝臓科 土浦協同病院 消化器内科 新松戸中央総合病院 消化器・肝臓科 同 ○栗原 正道 塙 紀子,米澤 清水 晶平 外科 松尾 亮太 肝病態制御学 坪田 昭人 新松戸中央総合病院 消化器・肝臓科 東京慈恵会医科大学 肝病態制御学 加藤 慶三 東京慈恵会医科大学 ( 7 )専修医Ⅶ(肝3) 10:34∼10:52 座長 昭和大学江東豊洲病院 健,佐藤 祥之,井家麻紀子 消化器センター 野 村 憲 弘 20.肝障害で発見された肝細胞癌の1例 千葉労災病院 内科 ○渡邉由芙香,吉田 直樹,太田 佑樹,宮村 達雄 久我 明司,桝谷 佳生,菰田 文武,田中 武継 大,草塩 同 外科 白銀 大二,鈴木 同 病理科 尾崎 大介 消化器内科 ○菅沼 公彦 21.肝細胞癌自然壊死が疑われた1例 筑波大学附属病院 大輔,今西真実子,長谷川直之,小玉 夏美 瀬山 侑亮,田島 大樹,江南ちあき,遠藤 壮登 寺崎 正彦,山田 武史,山本 和紀 森脇 俊和,金子 剛,福田 祥之,石毛 邦明,安部井誠人 兵頭一之介 同 病理診断科 佐藤 泰樹 同 消化器外科 橋本 真治 22.球状塞栓物質 (ディーシービーズ)による肝動脈化学塞栓術後に発症した壊疽性胆嚢炎の1例 日本医科大学付属病院 消化器外科 同 放射線科 ( 8 )専修医Ⅷ(胆・膵) 10:52∼11:16 ○日下部 誠,神田 知洋,真々田裕宏,水口 谷合 信彦,中村 慶春,吉岡 清水 哲也,内田 英二 小野澤志郎,村田 智 座長 北里大学医学部 義昭 消化器内科 正人,松下 今 晃 泉 弘 23.ステロイドセミパルス療法により早期の胆管狭窄の改善が得られた IgG4 関連硬化性胆管炎の1例 北里大学医学部 消化器内科 ○湊 尚貴,奥脇 興介,山内 松本 高明,三島 孝仁,金子 岩井 知久,今泉 弘,木田 浩史,長谷川力也 亨,宮澤 志朗 光広,小泉和三郎 24.胆嚢穿孔による腹腔内膿瘍に対しドレナージ施行によって改善を得た一例 関東労災病院 ○柳澤 金子 ―9― 文人,小川 正純,中崎奈都子,嘉戸 麗奈,金 民日,草柳 聡,佐藤 慎一 譲 25.大量の膵性胸水および膵仮性嚢胞感染に対してオクトレオチド、経副乳頭的嚢胞ドレナージなどの保 存的治療が奏功した1例 都立墨東病院 ○松岡 愛菜,小林 克誠,池 真実,木村 元 飯塚 泰弘,間野 真也,古本 洋平,堀内 亮郎 徹,佐崎なほ子,忠願寺義通,藤木 和彦 淺野 26.慢性膵炎の急性増悪に併発した仮性膵嚢胞と十二指腸間に認めた消化管瘻が自然閉鎖した一例 東京都教職員互助会 三楽病院 ○宮本 孝英,加藤 深川 ( 9 )専修医Ⅸ(膵) 11:16∼11:40 礼子,藤江 肇,与田 武徳 一史,佐久間信行,永尾 清香,和田 友則 座長 東海大学医学部付属八王子病院 消化器内科 伊 藤 裕 幸 27.肝障害を契機に発見された膵尾部原発悪性リンパ腫の1例 東邦大学医療センター大森病院 消化器内科 ○吉峰 尚幸,篠原 正夫,松清 松井 哲平,大塚 隆文,和久井紀貴,篠原 佐藤 真司,岡野 直樹,池原 永井 英成,渡辺 同 消化器外科 前田 哲也 同 病院病理部 根本 哲生 靖,原 精一 美絵 孝,中野 茂 学,五十嵐良典,住野 泰清 28.流出静脈早期濃染像を認めた膵 paraganglioma の一例 NTT 東日本関東病院 消化器内科 ○三角 宜嗣,藤澤 松橋 信行 聡郎,香川 同 病理診断部 橋本 浩次,堀内 啓 同 外科 野家 環,針原 康 肝胆膵消化器病学 窪田 横浜市立大学病院 幸一,久富勘太郎 賢輔 29.頻回の嘔吐で発症し、膵頭部微小動脈瘤出血の一症例 北里研究所病院 胃腸センター 同 放射線科 同 病理診断科 ○永久 太一,梅田 智子,中野 雅,小林 拓 清水 清香,常松 令,渡辺 憲明,芹沢 宏 矢内原 久 森永正二郎 30.メタリックステントにて減黄困難であった粘液産生性膵癌胆管穿破の一例 多摩総合医療センター ○津川 直也,小倉 祐紀,並木 伸,堀家 秀之 肱岡 悠子,井上 大,中園 綾乃,戸田 晶子 ― 10 ― 第1会場(午後の部) 13:05∼14:00 特別講演 C 型肝炎の最新治療 山梨大学医学部 司会 東京慈恵会医科大学 (10)上部消化管 第一内科 教授 榎本 信幸 先生 飾医療センター 消化器・肝臓内科 14:05∼14:35 座長 教授 藤沢市民病院 相 澤 外科 牧 良 野 夫 洋 知 31.食道癌に対する開胸食道切除術後における術後合併症と全身性炎症の関連に関する検討 慶應義塾大学医学部 外科学教室 (一般・消化器) ○松田 諭,竹内 中村理恵子,高橋 裕也,川久保博文,福田 和正 常浩,和田 雄光 則仁,北川 32.遠隔リンパ節転移を伴った HER2 陽性食道胃接合部癌に対して S-1+ CDDP + Trastuzumab に よる化学療法が奏効した一例 聖路加国際病院 消化器一般外科 ○渡辺 武田 貴之,久保田啓介,関戸 崇志,鈴木 悠紀,藤川 葵 元,大東 誠司 研裕,嶋田 柵瀬信太郎,太田惠一朗 同 腫瘍内科 扇田 信 同 消化器内科 髙木 浩一 33.維持透析施行中の消化管間質腫瘍 (GIST)患者に通常量のイマチニブ療法を安全に施行し得た一例 東京大学医学部附属病院 同 消化器内科 光学診療部 ○新倉 量太,山田 篤生,芹澤多佳子,中田 小林 由佳,平田 喜祐,小池 史子 和彦 吉田俊太郎 34.保存的加療後に DIC をきたし、外科的治療により救命し得た化膿性胃炎の1例 川崎市立多摩病院 同 消化器・肝臓内科 消化器・一般外科 同 聖マリアンナ医科大学 ○鈴木 碧,大石 嘉恭,近江 亮介,佐藤 望 平石 哲也,福田 安伸,馬場 哲,奥瀬 千晃 有宏,鈴木 秀行 鈴木 通博 朝倉 武士 病理診断科 小池 淳樹 消化器・肝臓内科 伊東 文生 35.十二指腸に嵌入し ball valve 症候群を来した胃過形成性ポリープが自然脱落した一例 原町赤十字病院 内科 ○田中 竹澤 二郎 群馬大学大学院医学系研究科 病態制御内科 山田 正信 ― 11 ― 秀典,平野 裕子,木村 (11)大腸1 14:35∼14:53 座長 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 外科 小 川 匡 市 36.(演題取り下げ) 37.Pagetoid spread を伴う早期直腸癌の一例 JCHO 群馬中央病院 消化器内科 ○岸 遂忠 同 病理診断科 櫻井 信司 同 外科 加藤 寿英,内藤 浩 38.経直腸的 EUS-FNA が有用であった横行結腸癌術後ダグラス窩再発の一例 君津中央病院 消化器科 同 ○藤本 竜也,吉田 有,菅原 今井 雄史,西尾 匡史,高橋 幸治,稲垣 千晶 内藤 裕史,矢挽 眞士,石井 清文,大部 誠道 藤森 基次,駒 嘉宏,畦元 亮作,鈴木 紀彰 福山 悦男 柳澤 真司,海保 優海,中島 淳 外科 徳瑛,泉水美有紀 隆 39.外科治療が奏功した結腸通過遅延型便秘症の1例 横浜市立大学医学部 板橋中央総合病院 (12)大腸2 肝胆膵消化器病学 ○冬木 外科・腹腔鏡手術センター 黒崎 哲也 座長 獨協医科大学 14:53∼15:17 晶子,大久保秀則,稲生 消化器内科 吉 竹 直 人 40.抗凝固療法中に発症した横行結腸腸間膜内血腫の1例 東海大学医学部 消化器外科 ○斉藤 剛太,鈴木 俊之,岡田 和丈,田中 中郡 聡夫,小澤 壯治,安田 聖栄,貞廣荘太郎 彰 41.5-aminosalicylic acid(5-ASA)(pH 依存性徐放剤)投与により間質性肺炎を発症した潰瘍性大腸炎 の1例 横浜市立みなと赤十字病院 同 消化器内科 呼吸器内科 ○池宮城秀和,安田 圭吾,渡辺 翔,浅川 剛人 金城 美幸,高浦 健太,鈴木雄一郎,小橋健一郎 深見 裕一,永山 和宜,先田 片 佑樹 信哉,有村 明彦 秀樹,岡部ゆう子,入村 峰世 42.大腸癌による腸閉塞を契機に診断した Gardner 症候群の一例 東京女子医科大学東医療センター 内科 同 外科 同 病理診断科 ○木村 綾子,大野 高橋 彩,齋藤 壽仁 中山 真緒,吉松 和彦 藤林真理子 43.大腸内視鏡的粘膜切除術の翌日に急性胆嚢炎を発症した一例 国立病院機構西埼玉中央病院 東京慈恵会医科大学 消化器科 消化器・肝臓内科 ○宮崎 亮佑,菅原 一朗,及川紘太郎,中尾 吉田 幸永,根岸 道子,二上 田尻 久雄 ― 12 ― 敏樹 裕 (13)肝 15:17∼15:41 座長 東京都立墨東病院 消化器内科 忠願寺 義 通 44.肝実質に多数の comet tail artifact を認めた先天性肝線維症の一例 千葉大学医学部附属病院 消化器内科 ○清野宗一郎,丸山 検査部 桑野美智子,野村 関本 同 紀史,小林 匡,横須賀 和史,近藤 孝行 岳龍,浅野 史雄 隆太郎,松山 隆生 收 文夫 45.肝細胞癌と副腎癌の重複癌の一切除例 横浜市立大学 消化器・腫瘍外科 ○澤田 雄,熊本 大田 洋平,本間 武田 和永,遠藤 同 内分泌・糖尿病内科 小西 裕美 同 病理部 澤住 知枝,山中 宜文,中山 祐樹,森 格 正二 46.悪性下大静脈症候群に対して下大静脈ステント留置が奏効し ADL の改善に寄与した1例 東金九十九里地域医療センター 東千葉メディカルセンター 内科 ○亀崎 同 地域医療機能推進機構千葉病院 秀宏 消化器内科 大山 広,石原 消化器内科 黒澤 浄 東金九十九里地域医療センター 東千葉メディカルセンター 放射線科 雑賀 厚至 千葉大学医学部附属病院 東出 高至 放射線科 武 47.術前診断が困難であった乳頭状発育を示す腫瘤形成性肝内胆管癌の1例 慶應義塾大学病院 一般・消化器外科 ○下田 啓文,日比 泰造,板野 理,阿部 雄太 篠田 昌宏,北郷 実,八木 洋,皆川 卓也 北川 雄光 ― 13 ― 第2会場(午前の部) 研修医セッション評価者 東京女子医科大学東医療センター がん研究会有明病院 千葉徳洲会病院 (14)研修医Ⅰ(上部消化管) 内科 消化器内科 消化器内科 8:30∼8:54 座長 大野 秀樹 藤崎 順子 島田 紀朋 聖路加国際病院 消化器内科 髙 木 浩 一 48.Upside down stomach を呈する食道裂孔ヘルニアに対しメッシュを用いて腹腔鏡下手術を施行した 2例 獨協医科大学 臨床研修センター ○飯田 第一外科 中島 同 山口 茉李 政信,百目木 泰,高橋 悟,佐々木欣郎,加藤 雅一,横山 悠 広行 49.腹膜播種により経口摂取不能となった切除不能進行胃癌に対して SOX 療法が奏功した1例 筑波記念病院 消化器内科 ○沼田るり子,添田 敦子,小林真理子,越智 杉山 弘明,本橋 筑波大学附属病院 消化器内科 山本 祥之,兵頭一之介 東京慈恵会医科大学第三病院 消化器・肝臓内科 ○石川 耕平,今井 小林 剛,木下 木島 洋征,小池 歩,中原 大介 朗,池澤 和人 那美,上田 薫,岩久 章 晃吉,小林 裕彦,伏谷 直 和彦,西野 博一 康太,中川 和也,高橋 50.十二指腸原発明細胞肉腫の一例 51.出血性ショックで緊急手術を施行した十二指腸粘膜下腫瘍の一例 横浜市立市民病院 消化器外科 ○宮本 石井 (15)研修医Ⅱ(小腸・大腸1) 8:54∼9:18 座長 麻美,佐原 正純 洋介 慶應義塾大学病院 消化器内科 正 岡 建 洋 52.全消化管を検索し得た Cronkhite-Canada 症候群の一例 防衛医科大学校病院 同 内科2 光学医療診療部 ○西村 弘之,安江 千尋,内田 なみ,露木 和彬 冨岡 明,中山 花奈,杉原 奈央,塙 芳典 和田 晃典,堀内 和樹,吉松亜希子,高城 丸田 紘史,安武 優一,好川 健 謙一,渡辺知佳子 冨田 謙吾,穂苅 量太,三浦総一郎 高本 俊介,永尾 重昭 53.小腸内視鏡で長期経過を観察しえた腸管症型 T 細胞リンパ腫の一例 筑波大学附属病院 消化器内科 ○竹上 直毅,遠藤 壮登,金子 江南ちあき,小玉 夏美,瀬山 侑亮,今西真美子 寺崎 正彦,奈良坂俊明,溝上 裕士,兵頭一之介 同 消化器外科 橋本 真治 同 病理部 中野 雅之,野口 ― 14 ― 雅之 剛,田島 大樹 54.H.pylori 除菌治療により退縮した大腸原発 MALT リンパ腫の1例 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 消化器肝臓内科 ○岸本 勇将,遠藤 大輔,堀内 宏倫,富田 陽一 永野 智久,關 信嘉,杉田 知典,会田 雄太 板垣 宗徳,安部 宏,須藤 訓,相澤 良夫 55.UFT/UZEL 内服中に発症した、著明な腸管壁肥厚と腸の拡張が遷延した偽膜性腸炎の1例 大森赤十字病院 (16)研修医Ⅲ(小腸・大腸2) 9:18∼9:36 ○辻 座長 大典,須藤 拓馬 芦苅 健太郎,関 圭一,河野 志帆子,栗原 直哉,鶴田 晋佑,高橋 昭裕 千葉 秀幸,井田 智則,諸橋 大樹,後藤 亨 防衛医科大学校病院 消化器内科 東 山 正 明 56.術前に診断し得た虫垂憩室炎の1例 大森赤十字病院 外科 ○鎌倉 大輔,佐々木 愼,石丸 和寛,寺井 学,中山 洋,渡辺 俊之 金子 同 検査部 坂本 恵美 穆彦 57.巨大憩室で形成された腸石の脱落によりイレウスを引き起こした一例 順天堂大学 消化器内科 ○伊志嶺洋平,浅岡 柿原千絵子,田島 斉藤 紘昭,青山 大介,廣本 貴史,大久保捷奇 譲,竹田 努,村上 敬 友則,長田 太郎,渡辺 純夫 祐樹,小林亜也子 58.餅による食餌性イレウスに対し保存的治療で軽快した1例 東京女子医科大学 (17)研修医Ⅳ(大腸) 9:36∼10:00 消化器内科 ○笠間 江莉,児玉 和久,新田 赤尾 潤一,大森 鉄平,小木曽智美,徳重 克年 座長 自治医科大学 内科学講座消化器内科学部門消化器内科 坂 本 博 次 59.胃未分化癌の家族歴を有し SMAD 4 の変異を伴う若年性ポリポーシス/遺伝性出血性末梢血管拡張 症複合症候群の1例 東京慈恵会医科大学附属柏病院 消化器・肝臓内科 ○神岡 善翔,斎藤 恵介 寛子,金井 友哉,松本 喜弘,高倉 一樹 小田原俊一,湯川 豊一,梶原 幹生,内山 幹 小井戸薫雄,大草 敏史 世,荒川 廣志 小林 同 内視鏡部 小山 洋,高見信一郎,伊藤 誠太,月永真太郎,安達 60.クローン病の治療中に腫瘍マーカー上昇を契機にみつかった横行結腸癌の1例 杏林大学医学部外科学教室 消化器・一般外科 ○中山 快貴,正木 忠彦,小嶋幸一郎,高安 甲平 吉敷 智和,渡邉 武志,鈴木 弘芳 阿部 展次,森 俊幸,杉山 政則 ○建石 奈緒,青沼 映美,末松 聡史,鎌田 常人 裕,松岡 61.大腸脂肪腫上に認めた IIc 型早期大腸癌の一例 草加市立病院 同 東京医科歯科大学 消化器内科 吉田 玲子,矢内 外科 小野 千尋 消化器内科 渡辺 守 ― 15 ― 和明 62.日本住血吸虫症が偶発的に発見された Rs 直腸癌の一例 東京逓信病院 外科 ○新井 絢也,織畑 光一,長谷川智彦,寺下 勇祐 和田由美恵,竹島 雅子,下里あゆ子,佐藤 兼俊 永吉実紀子,村田祐二郎,奥田 寺島 同 (18)研修医Ⅴ(肝) 病理科 10:10∼10:34 元 裕夫 岸田由紀子,田村 座長 純一,津久井 浩一 東京慈恵会医科大学 肝胆膵外科 柴 浩 明 63.肝生検で beads-on-a-string pattern を認めたサイトメガロウイルス単核球症の一例 東京逓信病院 消化器科 同 ○小幡 病理科 勇,光井 洋,田顔夫佑樹,水谷 浩哉 大久保政雄,小林 克也,関川憲一郎,橋本 直明 岸田由起子,田村 浩一 64.伝染性単核球症に併発した脾梗塞の一成人症例 社会医療法人社団順江会 江東病院 ○竹内 雄一,三好由里子,鈴木麻衣子,橋本周太郎 小島 拓人,林 康博,太田 黒田 博之,渡辺 純夫 一樹,小林 修 65.IgG4 関連疾患による非代償性肝硬変が疑われた生体間肝移植の一例 獨協医科大学 第二外科 同 病理部 ○鈴木 隆志,礒 幸博,多胡 和馬,櫻岡 佑樹 白木 孝之,松本 尊嗣,加藤 正人,下田 貢 青木 琢,窪田 山岸 敬一 秀嗣 66.直腸静脈瘤出血に対して経皮経肝的塞栓術を施行した1例 昭和大学江東豊洲病院 消化器センター ○柴田 悠樹,野村 佐藤 松川 (19)研修医Ⅵ(胆・膵) 10:34∼10:52 座長 憲弘,坂上 雅,三田村圭太郎,江口 正明,井上 聡志,佐久間 潤一,出口 大 義雄 晴洋 帝京大学医学部 消化器内科 有 住 俊 彦 67.EUS ガイド下膵仮性嚢胞ドレナージが有効であった膵癌の1例 埼玉医科大学総合医療センター 消化器・肝臓内科 ○生駒 千晶,高林英日己,山本 龍一,石橋 朗 徹郎 須田健太郎,寺井 悠二,荒井 亮士,藤田 細見英里子,高橋 正朋,小林 泰輔,林 青山 徹,知念 克哉,可児 和仁,長船 靖代 宮城 直也,大野 志乃,加藤 真吾,名越 澄子 貴彦,川嶌 洋平 健次郎 屋嘉比康治 68.肝動脈瘤による胆管狭窄、胆管への破裂による胆道出血を来たした一例 東海大学医学部付属病院 臨床研修部 ○植木 小川 ― 16 ― 健太,川口 義明,矢野 真実,峯 徹哉 69.腹部刺創による胆管損傷に対して、超音波内視鏡下胆道ドレナージを施行した症例 横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター 横浜市立大学医学部 (20)研修医Ⅶ(その他) 消化器内科学 ○長島 10:52∼11:16 周平,杉森 一哉,竹田 石井 寛裕,金子 卓,沼田 三輪 治生,亀田 英里,前田 座長 筑波記念病院 彩子,石井ゆにば 和司,田中 克明 愼 消化器内科 添 田 敦 子 70.胃癌術後経過観察中に生じた後腹膜腫瘍の1例 東京慈恵会医科大学外科学講座 消化器外科 ○竹澤 章裕,二川 康郎,古川 賢英,阿部 恭平 鈴木 文武,恩田 真二,兼平 卓,船水 尚武 坂本 太郎,柴 浩明,藤岡 秀一,保谷 芳行 石田 祐一,岡本 友好,矢永 勝彦 71.腹部超音波ガイド下腹膜生検で確定診断できた腹膜中皮腫の1例 板橋中央総合病院 消化器内科 蓮根ロイヤルクリニック 板橋中央総合病院 病理診断科 ○盛島 美弥,青木いづみ,藤村 彰,金子 浩明 良充,赤澤希宝香,神野 正隆 天目 陽,根岸 佐々木 洋,大久保沙恵,町田 大井 至,田和 藤野 雅之 福田 悠 展章,市川 武 良行 72.周期的な腹痛・発熱を主訴とし MEFV 遺伝子変異を認めた非定型家族性地中海熱の1例 東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器内科 ○三代 博之,井上 恵美,藤井 俊光,斎藤 詠子 井津井康浩,岡田英里子,大島 茂,松岡 克善 中川 美奈,岡本 隆一,土屋輝一郎,柿沼 晴 東 正新,大岡 真也,永石 宇司,中村 長堀 正和,荒木 昭博,大塚 和郎,朝比奈靖浩 芳郎,松井 郁一,鈴木 渡辺 哲也 守 73.当院における PTP(press through package)誤飲症例の検討 千葉中央メディカルセンター ○島田 松田 ― 17 ― 悠希,松葉 充宏 洋一 第2会場(午後の部) (21)胆 14:05∼14:29 座長 一般演題 埼玉医科大学 消化器内科・肝臓内科 平 原 和 紀 74.体外式超音波が診断・経過観察に有用であった IgG4 関連硬化性胆管炎の一例 獨協医科大学越谷病院 消化器内科 ○小堀 郁博,片山 裕視,中元 明裕,須田 季晋 北濱 彰博,草野 祐実,豊田 紘二,玉野 正也 祐司,細野 邦広,窪田 賢輔 75.EUS 下ドレナージ術における ES ダイレータの使用成績 済生会横浜市南部病院 横浜市立大学附属病院 消化器内科 肝胆膵消化器病学 ○渡邉誠太郎 関野 雄典,藤田 中島 淳 76.亜全胃温存膵頭十二指腸切除術(SSPPD)後の胆管空腸吻合部より胆管内に迷入した膵管ロストステ ントを経皮的胆道鏡下に回収した1例 キッコーマン総合病院 内科 ○大西 秋本 和彦,三上 繁,丸野 綾子,清水 史郎 政秀 77.診断に苦慮した下部胆管癌の一例 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 内視鏡部 ○阿部 孝広,川原 洋輔,林 依里,加藤 正之 伸嘉,杉田 知典,会田 雄太 同 消化器・肝臓内科 永野 智久,關 同 外科 薄葉 輝之 (22)膵・その他 14:29∼14:53 座長 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 消化器・肝臓内科 会 田 雄 太 78.AIDS 治療中に発症した自己免疫性膵炎、IgG4 関連疾患の一例 日本私立学校振興・共済事業団東京臨海病院 消化器内科 ○大池 翼,市川 櫻井 則男,山田 欧子,小黒 雅子,金野 朗 俊夫 79.脾臓のうっ血腫大を呈した自己免疫性膵炎疑診の1女性例 昭和大学医学部内科学講座 消化器内科学部門 ○本間 直,三井 佑太,山宮 知,石井 優 佐藤 悦基,岩田 朋之,野本 朋宏,北村 勝哉 池上 覚俊,吉田 仁 80.EUS-FNA 検体の免疫組織学的診断が有用であった SPN の1例 埼玉医科大学国際医療センター 消化器内科 ○岩野 博俊,良沢 昭銘,田場久美子,佐藤 洋子 谷坂 優樹,須藤 晃佑,新井 晋,真下 由美 克也,宮澤 光男 同 消化器外科 岡田 同 病理診断科 山口 浩 81.動脈塞栓術が有効であった右胃大網動脈瘤破裂の1症例 総合病院土浦協同病院 消化器内科 ○鈴木 快,市田 崇,久保田洋平,吉行 綾子 渡邉 剛志,柴田 勇,江頭 雅博 草野 史彦,酒井 義法,田沢 ― 18 ― 徹哉,鈴木 潤一 平成27・28年度 日本消化器病学会関東支部例会開催期日 例会回数 335 336 337 338 339 当 番 会 長 玉 野 正 也 (獨協医科大学越谷病院 消化器内科) 小 泉 和三郎 (北里大学医学部 消化器内科学) 神 澤 輝 実 (がん感染症センター都立駒込病院 内科) 渡 辺 勲 史 (東海大学医学部付属八王子病院) 國 崎 主 税 (横浜市立大学附属市民総合医療センター) 開 催 日 7月18日(土) 9月26日(土) 12月5日(土) 平成28年 2月6日(土) 5月21日(土) 会 場 演題受付期間 東 京 4月15日 海運クラブ 〜 5月13日予定 東 京 6月17日 海運クラブ 〜 7月22日予定 東 京 8月26日 海運クラブ 〜 9月30日予定 東 京 10月28日 海運クラブ 〜 12月2日予定 東 京 2月17日 海運クラブ 〜 3月16日予定 演題の申込はインターネットにてお願いいたします。 詳細につきましては「URL:http://jsge.or.jp/member/meeting/shibu/kanto」をご覧ください。 平成27年度 日本消化器病学会関東支部教育講演会開催期日 講演会回数 26 27 当 番 会 長 開 催 日 会 場 申込締切日 山 口 武 人 東 京 (千葉県がんセンター 消化器内科) 6月21日(日) シェーンバッハ・サボー 5月29日(金) 東 京 山 本 雅 一 未 定 (東京女子医科大学 消化器外科) 11月1日(日) シェーンバッハ・サボー 次回(第335回)例会のお知らせ 期 日:平成27年7月18日(土) 会 場:海運クラブ 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-6-4 TEL 03-3264-1825 【交通のご案内】地下鉄 有楽町線・半蔵門線・南北線「永田町駅」5番出口…徒歩2分 銀座線・丸ノ内線「赤坂見附駅」……徒歩7分 特別講演:「消化器病診療におけるInterventional EUS」 演者:福島県立医科大学会津医療センター 消化器内科学講座 教 授 入澤 篤志 司会:獨協医科大学越谷病院 消化器内科 教 授 玉野 正也 ランチョンセミナー: 「食道運動機能から診たGERDの治療―酸分泌抑制剤のリスク・ベネフィットを含めて―」 演者:日本医科大学消化器内科 教 授 岩切 勝彦 司会:群馬大学医学部附属病院 消化器・肝臓内科 診療教授 草野 元康 当番会長:玉野 正也(獨協医科大学越谷病院 消化器内科 教授) 〒343-8555 埼玉県越谷市南越谷2-1-50 TEL 048(965)8295 /FAX 048(965)1169 E-mail: [email protected] 連絡先:片山 裕視(獨協医科大学越谷病院 消化器内科) ◆研修医・専修医セッションについて◆ 研修医(例会発表時に卒後2年迄)および専修医(例会発表時に卒後3~5年迄)セッションを設け,優秀演 題を表彰する予定です。演題申込時,講演形態は【研修医セッション】または【専修医セッション】から選び, 会員番号は,学会未入会の場合は,番号(99)で登録してください。なお,応募演題数が多い場合は,規定の 受付期間内で先着順とし,一般演題に変更させていただく場合がございます。また研修医・専修医セッション への応募は,各々1施設(1診療科),1演題に制限させていただきます。 お問い合せについて 次回例会については,上記の当番会長の先生へ,その他の事務上のことは,下記関東支部事務局 へお願いいたします。 〒181-8611 東京都三鷹市新川6-20-2 杏林大学医学部外科学教室(消化器・一般外科) 日本消化器病学会関東支部事務局 TEL 0422(71)5288 FAX 0422(47)5523 E-mail:[email protected] 日本消化器病学会関東支部 支部長 峯 徹哉 ― 19 ― 日本消化器病学会関東支部 第26回教育講演会ご案内 (日本消化器病学会専門医制度:18単位) 日 時:2015年6月21日(日) 9:25 〜 16:45 会 場:シェーンバッハ・サボー(〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5 電話:03-3261-8386) 会 長:山口 武人(千葉県がんセンター) 主 題: 「消化器疾患 診断と治療の最前線」 ◆会長挨拶◆山口 武人(千葉県がんセンター) ◆モーニングセミナー◆ 「消化器癌における分子標的薬の進歩」 講師:石岡千加史(東北大学加齢医学研究所 臨床腫瘍学分野) 司会:傳田 忠道(千葉県がんセンター 消化器内科) ◆講演1◆「Barrett腺癌の内視鏡診断と治療」 講師:郷田 憲一(東京慈恵会医科大学 内視鏡科) 司会:門馬久美子(がん・感染症センター都立駒込病院 内視鏡科) ◆講演2◆「早期胃癌の診断・治療の進歩」 講師:田辺 聡(北里大学医学部 新世紀医療開発センター) 司会:光永 篤(東京女子医科大学八千代医療センター 内視鏡科) ◆講演3◆「膵・消化管NETの診断と治療」 講師:工藤 篤(東京医科歯科大学 肝胆膵・総合外科) 司会:遠藤 格(横浜市立大学大学院医学研究科・腫瘍外科学) ◆ランチョンセミナー◆ 「わかりやすい機能性ディスペプシア(FD)診療の提案-FD診療ガイドラインが伝えたいこと-」 講師:永原 章仁(順天堂大学医学部附属静岡病院 消化器内科) 司会:峯 徹哉(東海大学医学部 消化器内科) ◆講演4◆「切除不能膵癌最新の治療戦略」 講師:石井 浩(国立病院機構四国がんセンター) 司会:古瀬 純司(杏林大学医学部 内科学腫瘍内科) ◆講演5◆「治療方針決定に必要な急性腹症の画像診断」 講師:船曵 知弘(済生会横浜市東部病院 救命救急センター) 司会:杉山 政則(杏林大学医学部 外科学) ◆アフタヌーンセミナー◆ 「肝硬変の腹水貯留機序と今後の治療戦略-バソプレシンV2受容体拮抗薬の登場-」 講師:泉 並木(武蔵野赤十字病院 消化器科) 司会:横須賀 收(千葉大学大学院医学研究院 消化器・腎臓内科) ◆講演6◆「小腸疾患最新の診断」 講師:山本 博徳(自治医科大学 消化器内科) 司会:平石 秀幸(獨協医科大学 消化器内科) ◆閉会の辞◆山口 武人(千葉県がんセンター) 参加方法:事 前登録制となりますので、2015年5月29日(金)までに関東支部ホームページの参加登録から、 お申し込みください。 参加費(5,000円、テキスト代含む)は事前振込となります。 なお一度お振込いただいた参加費は原則的にはご返金いたしませんので予めご了承ください。 ※定員になり次第、締め切らせていただきます。(定員500名) 更新単位:18単位 ※専門医更新単位登録票への確認印の押印は、開会の辞から閉会の辞までご参加いただいた方に限 ります。 なお、専門医更新単位登録票確認印の受付は、閉会の辞終了後から開始いたします。 問合せ先:日本消化器病学会関東支部第26回教育講演会 運営事務局 (株)サンプラネット内 担当:高橋 〒112-0012 東京都文京区大塚3-5-10 住友成泉小石川ビル6F TEL 03-5940-2614 FAX 03-3942-6396 E-mail: [email protected] ― 20 ― 1 3 半年で急速に進行した食道内分泌細胞癌の一例 後頸部の皮膚転移が契機で診断された食道癌の一例 東京慈恵会医科大学第三病院 消化器・肝臓内科 荒井麻衣子,今井那美,上田 薫,岩久 章,小林 剛,木下晃吉, 小林裕彦,伏谷 直,木島洋征,小池和彦,西野博一 東京労災病院 消化器内科 小嶋啓之,大場信之,吉峰尚幸,小山洋平,武田悠希,植木紳夫, 平野直樹,伊藤 謙,西中川秀太,児島辰也 症例】76歳女性【主訴】食物のつかえ感【既往歴】50歳、糖尿 病。51歳、高血圧。71歳、狭心症で冠動脈バイパス術施行。71 歳、大動脈弁狭窄症で大動脈弁置換術施行。76歳、糖尿病性腎 症による慢性腎臓病(G5)のため血液透析導入。【家族歴】母は 心筋梗塞にて死亡。兄は糖尿病。癌の家族歴はなし。【生活歴】 喫煙、飲酒歴はなし。【現病歴】2014年4月上部内視鏡検査では 食道に異常所見は認めなかった。同年10月、急性胆嚢炎にて当 科入院中、食物のつかえ感を自覚し、上部内視鏡検査を施行し たところ、切歯より3cmから3cmにかけて半周性の隆起性病変 を認めた。病変部は狭窄しており、細径内視鏡のみ通過した。 隆起性病変より生検し、クロマチン増加を伴う異型腫大核を有 するN/ C比の高い腫瘍細胞を認めた。免疫組織化学染色にて、 CD56陽性、Synaptophysin陽性、ChromorganinA陰性、CAM5. 2陽 性(ドット状)、S100陰性の形質発現を呈し、神経内分泌系への 分化を認めた。造影CT検査では胸部中部から下部食道内に長 径約60mm大の隆起性病変を認め、造影効果は不均一であった。 胃噴門部にリンパ節転移を認めたが、肺転移、肝転移は認めな かった。以上より食道内分泌細胞癌T2N2M0 stage3と診断した。 PS 2-3 で あ り、通 過 障 害 改 善 目 的 で、放 射 線 療 法 60. 0Gy/ 30fr/ 6weeksを選択した。治療前は、水分の通過も困難で あったが、放射線治療後、水分摂取は可能となった。2015年1月 以降、心窩部痛、肝逸脱酵素の上昇を認めたため、腹部造影CT 施行し、多発肝転移、リンパ節転移の増大を認めた。その後状 態悪化し、診断から4か月の経過で永眠された。【結語】食道内 分泌細胞癌はまれな疾患であり、極めて予後不良な疾患である。 今回、半年の経過で進行癌として発見され、急速に進行した一 例を経験したため文献的考察を加えて報告する。 症例は58歳、男性。後頸部中央の腫瘤のため皮膚科を受診した。 腫瘤は約33mm大の弾性硬、可動性不良な炎症性粉瘤が考えら れ切除術を受けた。しかし切除病理結果では病巣の主座が皮下 脂肪織内にある中∼低分化型扁平上皮癌であり皮膚転移と診断 された。精査のCTでは上位胸椎レベル背側に68×30mm境界不 明瞭な浸潤性病変と頸部食道傍リンパ節腫大が認められた。内 視鏡では門歯27∼32cmの中部食道に一部潰瘍形成を伴う粘膜 下腫瘍様隆起の形態をとった扁平上皮癌を認められ食道癌によ るリンパ節および皮膚転移と診断された。このため高容量FP 療法が開始されたが、2クール時に皮膚転移部が増大しており、 仰臥位で腫瘍圧迫感が強く側臥位での睡眠を余儀なくされてい た事や易出血性で浸出液も伴っておりQOLが低下していたた めに緩和治療も含めて局所に放射線外照射( 51Gy/ 17回) を併用 された。現在4クール終了しており、主病変のサイズには著変 ないがリンパ節および皮膚転移は縮小中でStable Diseaseと判定 され現在も化学療法を受け通院中である。内臓悪性腫瘍の皮膚 転移頻度は0. 7∼9%と諸家の報告により異なる。原発臓器は肺 癌、乳癌、胃癌の順で多いとされ、ほとんどが腺癌であり、扁 平上皮癌である食道癌の皮膚転移はその中でも比較的稀で2% と報告されている。皮膚の転移経路としては連続浸潤性、リン パ行性、血行性に分けられ、部位は頭頸部、胸部、腹部の順で 多いとされ、原発巣を覆う皮膚に出現しやすいといわれる。食 道癌は血行性が最も考えられており、血管に富む頭部や顔面が 多く約70%を占めると報告があるが、本症例の様な頸部は稀で ある。皮膚転移の確認時には原発巣はすでに進行しており根治 的治療の対象となるものは非常に少なく、食道癌の皮膚転移後 の生命予後は不良とされ6か月以内である事が多いと報告され ている。本症例は皮膚転移診断後7か月が経過し生存中で化学 療法を継続中である。 食道内分泌細胞癌,急速に進行 2 分類不能型結合組織病とIgG4陽性の皮疹を合併し た未分化食道癌の一例 東京都済生会中央病院 消化器内科1) ,同 皮膚科2) , 同 病理診断科3) ,慶應義塾大学病院 消化器内科4) , 同 リウマチ内科5) 星野 舞1) ,酒井 元1) ,松崎潤太郎4) ,小川 歩1) ,田沼浩太1) , 西井まみか1) ,阿部義彦1) ,三枝慶一郎1) ,水野慎大4) ,岸野竜平1) , 船越信介1) ,中澤 敦1) ,陳 科栄2) ,向井 清1, 3) ,安岡秀剛5) , 塚田信廣1) 症例】61歳男性。生来健康であったが2012年8月より皮疹、2013年1月 より嗄声、筋力低下、易疲労感、体重減少および胃酸逆流症状が出現 した。同年3月に皮疹精査目的で他院皮膚科を受診し、抗核抗体強陽 性を指摘された。嗄声精査目的で実施された体幹部CT検査にて食道 癌が疑われ、精査を勧められたが拒否していた。同年4月頃より呼吸 苦、動悸の増悪を認め、歩行困難となったため当院緊急入院となった。 入院後、上部消化管内視鏡検査にて中部食道に進行食道癌を認め、病 理組織検査の結果は食道未分化癌であった。造影CT検査で縦隔リン パ節転移、肝転移、腹部リンパ節転移を認めたことから、食道癌 c-Stage4b( T3N3M1) の診断となった。また入院時の身体所見で全身皮 疹、レイノー現象、ばち指を認め、血液検査にて抗RNP抗体>500U/ ml、 抗Jo-1抗体14. 1U/ ml、抗Scl抗体 12. 3U/ mlと自己抗体の上昇があり、 心臓超音波検査で軽度の肺高血圧症を認めたことから、分類不能型結 合組織病( undifferentiated connective tissue disease; UTCD) と診断した。 尚、皮疹は頭頂部、両上肢、前胸部、背部、両大腿部に分布し、性状は 痂皮を伴う約2cm大の扁平なもので、掻痒感は無いが軽度の疼痛を認 めた。上肢の皮疹に対し皮膚生検を施行した所、IgG4陽性の形質細胞 の高度浸潤を認めた。患者本人、家族と相談した結果、全身化学療法 等の積極的な加療は希望されず、長期療養型の病院へ転院となった。 【考察】膠原病が腫瘍随伴性に発症する例はよく知られているが、IgG4 陽性の皮疹を伴った症例は本報告が初めてである。IgG4は腫瘍随伴性 に増殖するとの報告もあり、食道未分化癌、IgG4、UTCDの関連性につ いて文献的考察を加えて報告する。 食道癌,皮膚転移 4 原発巣と転移巣で主要な組織所見が異なる,扁平上 皮癌と小細胞癌混在食道癌の1例 板橋中央総合病院 消化器内科1) ,同 病理診断科2) , 蓮根ロイヤルクリニック3) 天目 陽1) ,藤村 彰1) ,金子浩明1) ,根岸良充1) ,赤澤希宝香1) , 神野正隆1) ,佐々木洋1) ,町田展章1) ,大久保沙恵1) ,青木いずみ1) , 大井 至1) ,田和良行1) ,市川 武1) ,福田 悠2) ,藤野雅之3) 症例】74歳男性【主訴】ふらつき【既往歴】終末期腎不全(腎硬 化症),大動脈弁狭窄症,狭心症(大動脈弁置換術後,冠動脈バイ パス術後),高血圧症【現病歴】平成25年8月下旬より,徐々に歩行 時のふらつきを自覚し,同年9月上旬に当院外来に受診した.黒色 便と貧血の進行を認め,上部消化管出血を疑い,同日上部消化管 内視鏡検査を施行した.EGJ直上から,門歯より38cmにかけて半 周性の2型腫瘤を認め,同日精査加療目的に入院となった.【入院 後経過】食道病変からの生検での病理組織では,中分化型扁平上 皮癌を認め,腹部造影CT検査では肝右葉後区域に転移巣を認めた. 下部食道扁平上皮癌(cT2N1M1 StageIVb)の診断で,放射線化学療 法(5-FU500mg/ m2RT60Gy)を行った.1コース施行し,原発巣の 縮小は認めたが,肝転移巣の急速な増大を認めProgressive disease と判断した.骨髄抑制の遷延,敗血症を合併し,化学療法は中止 となった.その後,敗血症増悪,DIC( 播種性血管内凝固症候群) を 合併し,治療開始から約2ヶ月の経過にて永眠された.剖検では, 食道に中等度の治療反応性をしめす中分化扁平上皮癌細胞が,固 有筋層上層まで散在性に認められた.転移巣である肝,肺,副腎, リンパ節では,増殖,浸潤能が強い小細胞癌を認めたが,一部で扁 平上皮癌を含み食道原発と判断された.【考察】食道原発巣は剖検 所見で扁平上皮癌であったが,転移巣の大部分に小細胞癌細胞を 認めたことから,食道原発巣では,扁平上皮癌,小細胞癌の混在が 疑われた.主要な組織所見が,原発巣では扁平上皮癌であったに もかかわらず,転移巣は小細胞癌だったことは,小細胞癌の悪性 度,転移能の高さを示唆する可能性がある.【結語】原発巣と転移 巣で主要な組織所見が異なる,扁平上皮癌と小細胞癌を混在した 食道癌の1例を経験したので,文献的考察を交えて報告する. 食道未分化癌,IgG4 ― 22 ― 食道扁平上皮癌,食道小細胞癌 5 NG tubeによるインナードレナージが有効であった、 医原性頸部食道穿孔の1例 群馬大学大学院 病態総合外科学 斉藤秀幸,酒井 真,宗田 真,宮崎達也,本城裕章,原 横堀武彦,桑野博行 圭吾, 背景】近年のESD等の内視鏡治療の進歩に伴い、内視鏡治療に関 連した医原性損傷の報告も少なからず散見される。今回、内視鏡 治療の際のオーバーチューブに起因すると考えらえる医原性頸部 食道穿孔に対して、NG tubeを用いたインナードレナージによる治 療を施行した症例を経験したので報告する。【症例】70歳代女性。 食道表在癌に対して前医でESDを施行予定であったが、オーバー チューブ挿入時に食道穿孔疑われ、同日当科へ救急搬送となった。 来院時の身体所見では、頸部痛、背部痛と軽度の呼吸苦を訴えて おり、血液生化学検査では、WBC20500、CRP6. 9と炎症反応の上昇 を認めた。CTで頸部食道後壁に穿孔部を認め、穿孔部から気管分 岐部下まで食道周囲に著明な縦隔気腫および液体貯留を認めた。 また左肺の一部にESD中の誤嚥によると思われる浸潤影を認めた が、気胸や胸水貯留は認められなかった。vita signは安定していた ため、透視下に経鼻的にNG tubeを穿孔部より縦隔内へ挿入留置し 間欠的持続吸引を開始。ICU入室の上、IVH管理および広域抗生剤 を使用しながら厳重に保存的加療を行った。13病日に施行した、 チューブ造影では縦隔内スペースが消失しCT上も縦隔気腫の改善 を認めたため、穿孔部よりNG tubeを抜去、食道内に留置した。さ らにドレナージを継続し、食道造影で縦隔内への造影剤の漏出が ないことを確認した後、15病日にNG tube抜去。16病日に施行した 上部消化管内視鏡では、頸部食道左側に瘢痕を認めたが明らかな 瘻孔形成なく治癒しており、経口摂取を再開した。その後一時退 院した後、36病日に食道癌、Mt、type 0-IIc、cT1aN0M0、cStage0の 診断に対して、全身麻酔下ESD施行。特に合併症なく、退院となっ た。【総括】食道穿孔治療においては常に手術を念頭におく必要が あるが、本症例のように穿孔腔が縦隔内に限局する場合は適切な ドレナージにより治療可能な場合があり、またその際NG tubeを用 いたインナードレナージは有効な治療選択枝の一つと考えられ た。 7 横須賀共済病院消化器病センター 内科 大坪加奈,森川 亮,石井玲子,三好正人,松田浩紀,小島直紀, 山本奈穂子,小馬瀬一樹,幾世橋佳,上田春菜,田邊陽子, 渡邉秀樹,新井勝春,鈴木秀明,小林史枝,池田隆明 症例】84歳、女性。【主訴】上腹部痛、嘔吐。【既往歴】混合型 食道裂孔ヘルニアを指摘されていた。【現病歴】201X年1月、夕 食中に嘔吐を伴う上腹部痛が出現、症状が持続するため当科受 診。膵アミラーゼの上昇、CTスキャン上での膵周囲の浸出液 貯留状態によりgrade1の急性膵炎と診断し入院となった。 【入 院時身体所見】上腹部に圧痛を認めた。【検査成績】WBC 9600 / μl、膵アミラーゼ 175 U/ l、リパーゼ 519 U/ l。【入院後経過】 軽症急性膵炎として治療を開始した。入院後CTを検討すると、 胃幽門前庭部は左頭側に偏位し、心臓背側かつ食道腹側を前庭 部及び球部が縦走している所見が認められた。このため短軸型 胃軸捻転症の並存と診断、本症例は胃軸捻転発症の経過中に急 性膵炎を合併した症例と考えた。以前にも同様の症状での受診 歴があり、間欠型胃軸捻転症症例と診断した。入院翌日には絶 食を含めた保存的治療のみで自覚症状、CT上の軸捻転所見は 改善し、第4病日には膵アミラーゼ値も正常化した。本人の希 望もあり手術は施行せずに慎重に経過観察を行っている。本例 は胃軸捻転症発症の経過中に急性膵炎を合併したと考えられる 一例であり、その病態が示唆に富むと考え報告する。 食道穿孔,保存的治療 6 緩和的放射線照射にて腫瘍出血がコントロール可能 となった切除不能進行胃癌の1例 公立学校共済組合関東中央病院 消化器内科 鈴木辰典,磯村好洋,瀬戸元子,大澤由紀子,大山博生,中村知香, 西畠瑞希,三井達也,渡邉健雄,後藤絵理子,外川 修, 小池幸宏 症例】症例は66歳男性。虚血性心疾患、冠動脈バイパス術後、 ペースメーカー留置、心房細動、慢性腎不全にて循環器内科通 院され、抗血栓薬2剤内服中であった。新鮮血を2回吐血し当院 救急搬送となった。ショックバイタル、重度の貧血にて緊急上 部内視鏡検査を施行したところ、胃体部後壁に広がる3型腫瘍 を認め、腫瘍表面より湧出する静脈性出血をきたしていた。 CTでは広範な肝転移、門脈腫瘍塞栓、周囲リンパ節転移を認め た。抗血栓薬の休薬による自然止血を期待するも、その後も貧 血進行のために輸血を繰り返した。止血目的の姑息的胃切除も 考慮されたが、基礎疾患や腫瘍塞栓による門脈圧亢進よりリス クが高いと考えられた。IVRによる左胃動脈塞栓を試みるもカ テーテルの選択的アプローチ困難で断念した。出血コントロー ル目的に第22病日から40Gy/ 20Frの姑息的放射線照射を開始し たところ、貧血は進行しなくなり輸血は不要となった。第32病 日よりTS-1単剤内服による化学療法を開始し、原発巣は著明に 縮小、肝転移巣や門脈腫瘍塞栓も改善している。今後白金製剤 追加による化学療法強化を検討している。【考察】切除不能進 行胃癌ではしばしば持続的な腫瘍出血の対応に苦慮することが ある。多くは自然止血が得られることが多いが、コントロール 困難な場合には姑息的腫瘍摘出術やIVRが考慮される。本症例 では姑息的放射線照射により腫瘍出血をコントロールすること が可能となり、速やかに化学療法を開始することで良好な治療 効果をあげている。緩和的放射線治療は腫瘍出血に対する有効 な選択肢の1つと考えられ、若干の文献的考察を含めて報告す る。 胃軸捻転症発症の経過中に急性膵炎を合併した一例 胃軸捻転症,急性膵炎 8 パテンシーカプセルが診断の契機になった小腸悪性 リンパ腫の1例 東京慈恵会医科大学 消化器・肝臓内科1) , 同 腫瘍・血液内科2) ,同 消化器外科3) ,同 病理学講座4) 沼田友希1) ,河村 篤1) ,石田仁也1) ,北原拓也1) ,筒井佳苗1) , 三石雄大1, 4) ,菰池信彦1) ,三戸部慈実1) ,有廣誠二1) ,加藤智弘1) , 田尻久雄1) ,高原 忍2) ,根木 快3) ,三森教雄3) ,矢永勝彦3) 症例】70歳代、女性【主訴】血便、腹痛【現病歴】以前より慢性 頭痛症に対してNSAIDsを常用していた。2ヵ月前より腹痛が、1ヵ 月前より血便が出現したため近医を受診した。受診時Hb 6. 6g/ dl と高度の貧血があり、精査加療目的に当科紹介受診された。上部 消化管内視鏡検査では出血源となる病変を認めなかったため、小 腸病変を含めた下部消化管病変の精査目的に経肛門的小腸内視鏡 検査を施行した。大腸および回盲弁から70 cmまでの回腸に病変は 認めなかった。さらに小腸の評価のため、カプセル内視鏡検査の 前に、パテンシ―カプセルによる開存性の確認を行った。パテン シーカプセル内服数時間後より腹痛が出現したため、内服30時間 後に腹部CT検査を施行した。CTでは骨盤腔の小腸内にパテンシ ―カプセルが滞留し、腸閉塞の所見であった。イレウス管による 治療を行い、イレウス管造影により狭窄病変が疑われたため、経 口的小腸内視鏡を施行した。Treitz靭帯より約570 cmの回腸に、高 度の狭窄を伴う3/ 4周を占める小腸腫瘍を認め、同部位にパテン シーカプセルが滞留していた。病変部より生検し、パテンシ―カ プセルを回収し終了した。diffuse large B cell lymphomaと診断し、 狭窄病変に対し外科的に小腸部分切除術が施行され、化学療法が 行われた。その後、経過は良好である。【考察】カプセル内視鏡は 小腸疾患の診断に非常に重要な手段である。しかし、狭窄病変に 対しては滞留・嵌頓のリスクがあり、開存性の確認は、パテンシ― カプセルが推奨される。しかしながら、病変によってはパテンシ ―カプセル自体が腸閉塞を併発することもある。本症例ではパテ ンシーカプセルによる滞留により病変の存在が示唆された興味深 い症例と考え、若干の文献考察を含め報告する。 胃癌,緩和的放射線照射 ― 23 ― パテンシーカプセル,小腸悪性リンパ腫 9 蛋白漏出性胃腸症を呈し、小腸内視鏡が診断に有用 であった小腸原発悪性リンパ腫の1例 群馬大学医学部附属病院 消化器・肝臓内科1) , 群馬大学大学院医学系研究科 病態制御内科学2) 大澤 翔1) ,野中真知1) ,橋本 悠1) ,植原大介1) ,中山哲雄1) , 富澤 琢1) ,安岡秀敏1) ,栗林志行1) ,大山達也1) ,堀口昇男1) , 水出雅文1) ,山崎勇一1) ,下山康之1) ,佐藤 賢1) ,柿崎 暁1) , 河村 修1) ,山田正信2) ,草野元康1) 症例】61歳、女性【主訴】腹部膨満、食欲不振【現病歴】2011 年の検診で甲状腺機能低下を指摘され、当院内分泌内科で加療 されていた。2014年6月頃より便秘と下痢を繰り返すようにな り、当科紹介となった。大腸内視鏡検査で直腸に粘膜下腫瘍を 認め、内視鏡的切除術を施行し、病理結果は神経内分泌腫瘍 ( G1) であった。しかし、その後も食欲不振や腹部膨満などの症 状がみられ、低アルブミン血症( 2. 3 g/ dl) が出現したため、精査 目的に入院となった。【既往歴】甲状腺機能低下、器質化肺炎、 炎症性リンパ節炎、薬剤性無顆粒球症、直腸神経内分泌腫瘍( カ ルチノイド) 【経過】入院前に施行したCTで空腸壁の肥厚と多 発する腸間膜リンパ節腫大を認めた。低蛋白血症の原因として 蛋白漏出を疑い、99mTc-HSA-DTPAシンチグラフィを施行し たところ、腹部全体に集積が認められた。パテンシーカプセル で消化管の開存性を確認したところ、パテンシーカプセルの排 出が確認できなかったため、ダブルバルーン小腸内視鏡検査を 行った。小腸内視鏡検査では空腸に散在性の潰瘍や褪色調を呈 する領域を認め、生検を行ったところ、悪性リンパ腫( Diffuse large B-cell lymphoma) と診断された。【結語】小腸からの蛋白 漏出を呈し、小腸内視鏡検査で診断に有用であった小腸原発悪 性リンパ腫を経験した。小腸からの蛋白漏出の原因としては、 炎症性腸疾患やアレルギー疾患、膠原病などが知られているが、 悪性リンパ腫も鑑別すべき疾患と考える。 11 国立国際医療研究センター 消化器内科1) ,同 外科2) , 同 中央検査科3) 張 萌琳1) ,渡辺一弘1) ,木平英里1) ,城間 翔1) ,畑 昌宏1) , 久田裕也1) ,守安志織1) ,岡原昴輝1) ,高崎祐介1) ,島田高幸1) , 三島沙織1) ,大久保栄高1) ,関根一智1) ,忌部 航1) ,櫻井俊之1) , 永田尚義1) ,横井千寿1) ,小早川雅男1) ,三宅 大2) ,猪狩 亨3) , 秋山純一1) 背景】憩室炎は大腸憩室症の8∼10%に生じる。腫瘤や狭窄を来し診断に難渋する 例が報告されているが、今回我々は特異な形態の回盲部腫大を呈し、腫瘍性疾患な どとの鑑別に苦慮した一例を経験したので報告する。【症例】52歳男性。10歳時、虫 垂炎の手術歴あり。【経過】20XX年2月下旬より下痢、血便、右下腹部痛を自覚。近 医でCT撮像し、回腸末端から上行結腸に壁肥厚を指摘された。その後一旦症状改善 したため経過観察としていたが、同年6月5日に下腹部痛が再発。食事摂取困難とな り入院した。造影CTでは回盲部から上行結腸の腫瘤様の壁肥厚、周囲脂肪織混濁、 リンパ節腫大を認めた。下部消化管内視鏡検査では、回盲弁が局所的な発赤を伴い ながら浮腫状に腫大し、一部はポリープ状に突出していた。狭窄のため回腸末端部 への挿入は困難であった。周囲の盲腸、上行結腸には多発する憩室が認められるも のの、粘膜面に異常所見は認めなかった。肥厚した回盲弁からの生検では炎症細胞 浸潤を認めるのみであった。感染性腸炎を疑い保存的治療を行い、腹部症状は改善 したものの1ヶ月間の経過で回盲部壁肥厚に改善がみられなかった。下部消化管内 視鏡を再検したが回盲部の所見に改善が得られず、難治性の憩室炎、結核などの感 染性腸炎、クローン病、回盲部癌、悪性リンパ腫などを疑い、診断的治療として手術 の方針となった。右半結腸切除、D3郭清を施行。切除検体は回盲部の8×4×4cm大 の腫瘤で、回腸から盲腸の壁外には約8cm長の瘻孔を認めた。組織学的には炎症細 胞浸潤を伴う線維化病変であり、背景に多数の憩室が認められた。ポリープ状隆起 は炎症性偽ポリープの所見であった。以上から憩室炎に起因すると思われる盲腸周 囲炎の診断となった。【考察】本症例では著明な回盲部の壁肥厚にも関わらず、内視 鏡的には炎症性偽ポリープを伴った特異な形態の回盲弁腫大を認めるのみで、術前 診断に難渋した。回盲部腫瘤の鑑別として回盲部癌、悪性リンパ腫、結核などが一 般的であるが、憩室炎に起因するものを考慮に入れる必要がある。 蛋白漏出性胃腸症,悪性リンパ腫 10 練馬総合病院 外科 竹内優志,栗原直人,加嶋洋子,市原明子,松浦芳文,井上 飯田修平 憩室炎,診断 12 高齢者の癒着性イレウスの手術決定時期の検討 聡, はじめに】血行障害のない癒着性イレウスに対してはイレウス管 を用いた保存的加療が第一選択となるが、高齢者の場合、手術適 応の判断が問題となる。今回、70歳以上の高齢者における癒着性 イレウスに対する手術決定の因子および時期ついて検討した。 【対象・方法】2011年6月から2015年3月までに、イレウス管を留置 した開腹術既往のある70歳以上の癒着性イレウス25例を対象とし た。イレウス管挿入後24時間以内に改善した症例や腸管の血行障 害を伴う例、緊急手術、悪性腫瘍など他の原因によるイレウス症 例は除外した。手術施行群(n=8) (A群), 手術非施行群(n=17) (B 群)の2群に分けて背景因子、炎症反応、過去の手術部位、イレウ ス発症から挿入するまでの期間、排液量等を比較した。【結果】対 象患者の背景因子は平均年齢82. 2±7. 9歳、男女比10:15、術後平均 期間20. 2±9. 9日であった。手術の有無による2群間の比較では、 平均年齢、男女比、はA群81. 5±8. 0歳、男:女=2:6、B群で81. 0±8. 1歳、男:女=8:9であり、両群間に有意差は認めなかった。来院時の WBC10000/ μl以上の割合はA群1例( 12. 5%) , B群11例( 64. 7%) で あった。イレウス症状が出現してからイレウス管を入れるまでの 期間はA群で72. 3±70. 4時間、B群で32. 9±33. 7時間であったが、 両群間で有意差は認めなかった( p=0. 06) 。イレウス管挿入から手 術施行までの期間は12. 5日( 4-19日) であり、術式は癒着剥離術6 例、小腸部分切除術2例( 25%) であった。術後生存率は100%であっ た。一方、B群はイレウス管挿入後平均4. 7日( 2-12日) で症状の改 善を認めた。入院期間はA群で28. 3±10. 9日であり、B群が16. 3± 6. 6日と比較し有意に長期間であった( p=0. 003) 。【考察】保存的治 療が可能と判断した術後癒着性イレウス症例はイレウス管の減圧 による保存的治療により比較的短期間に約70%は改善する。一方、 イレウス管からの排液が多く改善までの期間を有する場合は手術 が必要となるが、待機手術のため今回の検討では術後の合併症は 認めておらず、積極的に手術を検討すべき可能性がある。 回盲部腫大を呈し、診断に苦慮した盲腸憩室炎の 一例 アメーバ赤痢の治療後に瘢痕狭窄を来たし、腸管穿 通およびイレウスを発症した一例 慶應義塾大学医学部 消化器内科1) ,同 一般消化器外科2) , 同 病理診断部3) 奥隅真一1) ,金井隆典1) ,久松理一1) ,長沼 誠1) ,海老沼浩利1) , 岩崎栄典1) ,ちょ柏松1) ,志波俊輔1) ,北川雄光2) ,長谷川博俊2) , 鶴田雅士2) ,下田将之3) ,佐々木文3) ,亀山香織3) 症例】65歳、男性。【主訴】発熱、腹痛。【既往歴】虫垂炎穿孔、2型糖 尿病、閉塞性動脈硬化症。【現病歴】某年12月より腹痛を伴わない水様 下痢が持続し、近医で止痢薬を処方されるも改善せず、脱水と衰弱が 進行してきたため当院を受診し感染性腸炎の診断で入院し、抗菌薬投 与を開始した。しかし、下部消化管内視鏡検査においてS状結腸から 下 行 結 腸 に か け て 潰 瘍 形 成 が あ り、生 検 で 粘 膜 内 に Entamoeba histolyticaの栄養体が認められた。アメーバ赤痢としてメトロニダ ゾールの内服投与を開始して、画像での腸管の炎症所見の改善、糞便 検査で虫体が陰性であることを確認し退院とした。しかし退院2日後 に再度来院し、その際38℃台の発熱と強い腹痛を訴えたため緊急にCT を撮影して下行結腸脾彎曲部の腸管膜への穿通がみられたため再度緊 急入院した。入院後に下行結腸外側に膿瘍が出現したが禁食、メトロ ニダゾールを含めた抗菌薬投与で消失し、発熱や炎症反応も10日程度 で改善した。流動食から経口摂取を開始するも三分粥まで上げた時点 で再度腹痛が出現し、腹部X線で鏡面形成がみられイレウスと診断し た。再度下部消化管内視鏡検査を行い、直腸に新規の潰瘍病変と下行 結腸脾彎曲部に全周性の潰瘍および高度狭窄の所見を認め、アメーバ 赤痢の瘢痕狭窄による大腸イレウスと考えられた。大腸の部分切除が 必要と考えられたが脾彎曲部より口側に内視鏡を進めることができ ず、その他の部位を評価することができなかったため、小腸に人工肛 門を一時的に造設した。今後大腸の狭窄範囲を評価し、狭窄部位の切 除と人工肛門閉鎖を行う方針である。【考察】アメーバ赤痢の治療後 に瘢痕狭窄を来たし、腸管穿通およびイレウスを発症した一例を経験 した。Adamsらの報告によれば本疾患による瘢痕狭窄の頻度は0. 8% 程度と稀であるが本症例のように重症化することもあるため治療後も 経時的に評価する必要があると考えた。 イレウス,手術 ― 24 ― アメーバ赤痢,イレウス 13 関節リウマチ治療中に発症したCampylobacter jejuni による敗血症の1例 厚木市立病院 内科1) , 東京慈恵会医科大学附属病院 消化器・肝臓内科2) 白壁和彦1) ,小幡和彦1) ,佐々木知也1) ,松平 浩1) ,伊藝秀一1) , 横山 寛1) ,間嶋志保1) ,田尻久雄2) 症例】69歳、女性。【主訴】発熱。【現病歴】2014年11月29日よ り発熱、下痢、血便を自覚し、徐々に意識が混濁してきたため 当院に救急搬送となり、同日緊急入院となった。【現症】体温38. 8℃、血圧171/ 91mmHg、脈拍98回/ 分、呼吸数20回/ 分、眼瞼結 膜貧血なし、項部硬直なし、腹部に軽度圧痛あり、腸蠕動音亢 進あり、腹膜刺激症状なし【血液検査】WBC13000/ μg、CRP9. 96mg/ dl、Hb12. 6g/ dl、PLT15. 9万/ dl、Fib376mg/ dl、FDP55. 2μ g/ ml、プロカルシトニン10. 90ng/ dL【入院後経過】入院時現症、 および検査より感染性腸炎を第一に疑った。関節リウマチに対 してステロイドを内服中であったことから、Compromised host と判断し、抗緑膿菌作用のあるCeftazidimeで治療を開始した。 第2病日より37℃台に解熱したが、下痢回数や腹痛改善に乏し く炎症反応も遷延していた。また右胸部痛の訴えがありCTで 胸膜肥厚を認めたため敗血症に伴う胸膜炎の合併が強く疑われ た。第1病日に提出した便培養、血液培養よりCampylobacter jejuniを検出したため、第4病日よりImipenem / Cilastatinに変更 した。第5病日から解熱し、第6病日には腹痛、下痢は消失しそ の後も経過良好であった。【考察】膠原病、悪性腫瘍、糖尿病な どの基礎疾患を有する患者がCampylobacter jejuniに罹患した場 合、敗血症の発症リスクが上昇すると言われている。このよう な患者には、入院時に血液培養を提出し、陽性であれば速やか に適切な抗生剤を選択することが重要である。今回我々は関節 リウマチ加療中に発症したCampylobacter jejuniによる敗血症の 1例を経験した。 15 さいたま赤十字病院 消化器内科 高田勇登,甲嶋洋平,前田隆宏,大津威一郎,土井浩達, 熊谷純一郎,高橋正憲,鎮西 亮,笹島圭太 はじめに】IgG4関連疾患とは、血清IgG4高値とIgG4陽性形質 細胞の浸潤と線維化を主体とした腫瘤性・肥厚性病変を呈する 慢性疾患の総称である。全身性の疾患であり、共通した臨床 的・病理組織学的特徴を有する多彩な臓器病変から構成されて いる。今回IgG4関連疾患における肝障害の一例を経験したの で報告する。【症例】71歳、女性、肝炎ウイルス感染はなく飲酒 歴もない。鼻炎や気管支喘息やその他アレルギー症状はない。 【現病歴および経過】2年前より甲状腺機能低下症にて前医で フォローされていた。前医初診時の血液検査にて好酸球28%と 増多を認めていた。無症状ではあったがその後も好酸球増多が 持続していたため201X年9月に当院血液内科を紹介受診した。 血液検査にてAST 74IU/ l、ALT 64IU/ l、γ−GTP 179IU/ l、T-bil 0. 6mg/ dl と 胆 道 系 優 位 の 肝 酵 素 上 昇 が あ り、さ ら に IgG4 341mg/ dl高値を認めたため精査目的に当科で入院となった。 CT、EUSでは膵実質に明らかな異常所見はなく、膵管内腔も保 たれていた。胆道系に壁の肥厚や内腔狭小化も認めなかった。 ERCPも行い乳頭は腫大なく正常であった。胆管造影も正常胆 管像であった。自己免疫性膵炎やIgG4関連硬化性胆管炎は否 定的であったため経皮的肝生検を行った。病理診断では門脈域 の好酸球浸潤と形質細胞の混在がみられていた。IgG4陽性形 質細胞浸潤の基準を満たしていたが胆管障害は認めなかった。 これらを踏まえIgG4関連肝障害と診断しプレドニゾロン内服 を開始したところ速やかに肝機能は正常化した。また、好酸球 増多も改善が得られた。 【結語】IgG4関連硬化性胆管炎による 肝機能障害は周知されているが、胆管障害以外にも肝実質へ障 害が起こる症例も存在することが明らかとなってきた。これら はIgG4関連肝障害として報告されている。今回胆管障害を伴 わないIgG4関連肝障害を経験したので文献的考察を加え報告 する。 Campylobacter jejuni,敗血症 14 急性肝障害を契機に発見され,複数回の肝生検にて 診断し得た原発性胆汁性肝硬変の1例 東京慈恵会医科大学 内科学講座 消化器・肝臓内科1) , 同 病理学講座2) 佐藤優子1) ,石田仁也1) ,原田 徹2) ,天野克之1) ,上竹慎一郎1) , 有廣誠二1) ,穂苅厚史1) ,石川智久1) ,田尻久雄1) 緒言】原発性胆汁性肝硬変( primary biliary cirrhosis:PBC) は,病理学 的に肝内小葉間胆管の障害・破壊を呈する慢性非化膿性破壊性胆管炎 ( chronic non-suppurative destructive cholangitis:CNSDC) を特徴とする 慢性の肝疾患である.近年では健診などの普及により,軽度の肝胆道 系酵素の上昇を契機に診断される例が多い.今回我々は急性肝障害を 契機に発見され,複数回の肝生検にて診断し得た原発性胆汁性肝硬変 の1例を経験したので報告する.【症例】症例は41歳男性.10年前より 健診にて肝機能障害を指摘されていたが放置していた.2014年2月, 全身倦怠感を主訴に近医受診,黄疸を認めたため,精査加療目的にて 当院紹介受診,入院となった.血液検査ではAST 1213 IU/ L,ALT 2628 IU/ L,T-Bil 9. 0 mg/ dl,ALP 570 IU/ L,γ-GTP 838 IU/ Lと高値を 認めたが,各種ウイルスマーカーは陰性であった.自己抗体は抗核抗 体 40倍,抗ミトコンドリアM2抗体 35. 8 indexと陽性であった.肝障 害,黄疸が遷延したため,急性発症した自己免疫性肝炎と考えPSL 60mg/ dayより投与を開始した.肝生検では門脈域の軽度の線維性拡 大,interface hepatitis,小葉内の壊死炎症反応,胆汁うっ滞を認めたが, 組織所見による鑑別は困難であった.PSL投与開始後よりトランスア ミナーゼ値の改善を認め,正常範囲に改善して退院とし,外来にて PSLを漸減,中止した.その後再び肝胆道系酵素上昇傾向となったた め,前回の肝生検から1年後の2015年2月に再度肝生検を施行した.組 織所見では,前回と異なるCNSDC,肉芽腫の形成を認め,PBCと診断 した.現在Ursodeoxycholic acid( UDCA) 投与にて経過観察中である. 【考察】急性肝障害の鑑別診断では,ウイルスや薬剤,アルコールの関 与が否定された場合,自己免疫性肝疾患の可能性を考慮し,診断に苦 慮する場合には複数回の肝生検が有用であると考えられた.【結語】 急性肝障害を契機に発見され,複数回の肝生検にて診断し得た原発性 胆汁性肝硬変の1例を経験した.比較的稀な症例と考え報告した. 好酸球増多症を伴う肝機能障害を契機に診断された IgG4関連肝障害の一例 IgG4関連疾患,IgG4関連肝障害 16 Telaprevir 3 剤 療 法 に よ り HCV 持 続 陰 性 化 後 に HTLV-1関連脊髄症を発症したC型慢性肝炎の1例 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 消化器肝臓内科 遠藤大輔,堀内宏倫,富田陽一,永野智久,關 伸嘉,杉田知典, 会田雄太,板垣宗徳,安部 宏,須藤 訓,相澤良夫 症例】49歳女性【主訴】両上下肢疼痛,下肢つっぱり感,痺れ,排尿 障害【既往歴】妊娠時HTLV-1抗体陽性【輸血歴】幼少期( 詳細不明) 【出生地】宮城県【現病歴】2008年健診にてHCV陽性指摘され,当院紹 介受診.C型慢性肝炎(Genotype1b, 5. 9 LogIU/ mL)の診断で,同年に Peginterferon+Ribavirin併用療法, 2011年にPeginterferon単独療法行うも HCV持続陰性化( SVR) は得られなかった. 2013年5月よりTelaprevir3剤 併用療法24週施行し,SVRが得られた.2014年1月から両上下肢に疼 痛を自覚し,近医にて鎮痛剤処方されるも改善乏しく, 4月上旬より下 肢のつっぱり感,歩行障害,排尿障害が出現し,当院神経内科受診と なった.【身体所見】意識清明, 血圧;165/ 99mmHg, 脈拍;95bpm, 体温; 37. 0℃, 頭頚部・胸腹部;異常なし. 神経学的所見;両下肢痙性不全麻痺, 両側Babinski徴候陽性, 四肢腱反射全て亢進, 下肢振動覚低下を認めた 【血液生化学所見】WBC 4200/ μl, Hb 11. 8g/ dL, Plt 32. 1×104 / μL, AST 16 U/ l, ALT 12 U/ l, CRP 0. 1mg/ dl, HCV RNA検出せず, HTLV-1 抗体;陽性【髄液検査】蛋白定量;69. 0mg/ dL, 細胞数;42. 4/ μL, ネオプ テリン 24pmol/ ml, HTLV-1抗体;32倍以上【頭部MRI】T2, FLAIRにて 大脳白質に高信号域を認める. 【胸腰椎MRI】T2, 拡散強調画像にて灰 白質, 胸髄全域に連続して高信号を認める. 【経過】緩徐進行性の両下 肢痙性不全麻痺などの臨床所見に加え,血清・髄液HTLV-1抗体が陽 性であることからHTLV-1関連脊髄症( 以下HAM) と診断した. 活動性 の指標である髄液ネオプテリンが高値であり, ステロイドパルス療法 を開始し, 神経所見の改善が得られた. なお, 精査にて成人T細胞白血病 の合併は否定的であった.【考察】HAMはHTLV-1感染が一義的に原因 ではあるが、感染者のごく一部にのみ発症する機序はわかっていない. 本症例はHAMの自然経過の可能性も考えられるが,長期間HCVと HTLV-1が共存し, HCVRNA陰性後にHAMの神経症状が出現した経過 から, Interferon治療およびHCVの陰性化がHAM発症に関与した可能性 も考えられ,若干の文献的考察を加え報告する. 原発性胆汁性肝硬変,急性肝障害 ― 25 ― HTLV-1関連脊髄症,C型慢性肝炎 17 19 外科的治療を要した感染性肝嚢胞の2例 町田市民病院 消化器内科1) ,同 外科2) 加藤由理1) ,益井芳文1) ,土谷一泉1) ,大熊幹二1) ,稲垣由起子1) , 小川まい子1) ,松井寛昌1) ,谷田恵美子1) ,吉澤 海1) ,和泉元喜1) , 金崎 章1) ,金井秀樹2) ,篠原万里枝2) 今回我々は,経皮的ドレナージで効果不十分であり,外科的治療を要 した感染性肝嚢胞の2例を経験したので,報告する.【症例1】68歳,女 性.3日前からの発熱と右上腹部痛を主訴に,当院外来を受診した. 腹部CTで肝右葉に18cm大の感染性肝嚢胞を認め,同日入院した.経 皮的肝嚢胞穿刺ドレナージ術を施行し,茶褐色の内溶液を900ml排出 した後に,ドレナージチューブを留置した.穿刺液培養検査からは Bacteroides fragilisが検出された.洗浄ドレナージおよび抗生剤投与, チューブ交換を行うも十分な改善を得られず,外科転科となった.第 31病日に腹腔鏡下嚢胞開窓術,洗浄ドレナージ術を施行し,大量の壊 死組織を摘除した.その後,合併症なく経過し,術後9日で退院した. 【症例2】67歳,女性.2ヶ月前からの右上腹部痛を主訴に,当院を紹介 受診した.腹部CTで肝右葉に16cm大の嚢胞を認め,ドレナージ目的 で翌月入院した.第1病日に経皮的肝嚢胞穿刺ドレナージ術を施行し, 淡黄色透明の内溶液を600ml排出した後に,ドレナージチューブを留 置した.帰室後より排液が徐々に血性となり,血圧低下を認めた.腹 部CTで嚢胞内出血を認めたため,同日,血管塞栓術を施行した.その 後,肝嚢胞感染を合併したため,抗生剤投与を開始した.第4病日に提 出した穿刺液培養検査からEscherichia coliが検出された.第4病日の腹 部CTで嚢胞は増大していたことから,ドレナージ不十分と判断してド レナージチューブのサイズアップを行ったが,発熱と血清CRP値の高 値が持続した.また,第8病日の血液検査で貧血の進行があり,輸血を 行った.感染性肝嚢胞および嚢胞内出血に対し,内科的ドレナージ術 では効果不十分であると判断し,外科転科となった.第16病日に嚢胞 開窓術,洗浄ドレナージ術を施行し,大量の壊死組織を摘除した.そ の後,合併症なく経過し,術後10日で退院した.【考察】サイズの大き い感染性肝嚢胞では,チューブでドレナージできる液体成分のみでは ない.抗菌薬の併用で感染が制御しきれない場合には,早期の外科的 治療を行うことで,合併症も少なく,入院期間の短縮につながる可能 性がある. 新松戸中央総合病院 消化器・肝臓科1) , 土浦協同病院 消化器内科2) ,新松戸中央総合病院 外科3) , 東京慈恵会医科大学 肝病態制御学4) 栗原正道1, 2) ,加藤慶三1, 4) ,塙 紀子1) ,米澤 健1) ,佐藤祥之1) , 井家麻紀子1) ,清水晶平1) ,松尾亮太3) ,坪田昭人4) C型肝硬変は肝細胞癌(HCC)の根治後もHCCの発生母地となるため高頻度に 再発する.抗ウイルス治療によるHCV RNA持続陰性化( SVR) の獲得がHCCの 再発率を低下させるが,肝硬変の様々な合併症のため治療が困難となることが ある.HCC,食道胃静脈瘤,胸腹水を合併したC型肝硬変に対して集学的治療 を行い,SVRが得られた症例を経験したため報告する.症例は64歳男性.検診 にて肝機能異常を指摘され近医にてC型肝硬変と診断された.造影CTにて HCCが疑われ,上部消化管内視鏡検査( GS) にて胃静脈瘤( GV) を指摘され,精 査加療目的で当科に紹介となった.受診時Child Pugh 7点,grade Bであった. 造影CTとEOB-MRIでは腹水はなく,肝S7に13mmのHCCを認め,GSでは Lg-cfF2CwRC1のGVを認めた.HCCに対しては肝動脈化学塞栓術( TACE) とラ ジオ波熱凝固療法( RFA) を施行し,十分なablative marginが得られた.その後血 小板数の増加と門脈血流量の減少を目的に部分的脾動脈塞栓術( PSE) を施行 し,脾臓の約60%の梗塞域が得られた.その後GVに対してバルーン下逆行性 経静脈的塞栓術( BRTO) を施行し,供血路の後胃静脈,GV,胃腎シャントを閉 塞させた.血小板数はPSEにより7. 0万/ μlから11. 0万/ μlまで増加し,イン ターフェロンの導入が可能となった.HCV genotype 2a,HCV RNA 4. 0 log IU/ mlであり,ペグインターフェロンα-2a単独療法を行った.投与1週にて HCV RNAは検出感度以下となり,重大な副作用もなく24週完遂した.ペグイ ンターフェロン終了後に胸腹水が大量に貯留したが,アルブミンと利尿剤投与 に て 胸 腹 水 は 軽 快 し,SVR が 得 ら れ た.BRTO 施 行 15 か 月 後 の GS に て LmF3CbRC3と食道静脈瘤( EV) を認め、食道静脈瘤硬化療法( EIS) を予定した が,待機中に破裂したため,緊急EISを行い,止血が得られEVは閉塞された. 以後1年2か月経過したが,静脈瘤の再発やHCCの再発,胸腹水の再増悪は認め られない.多岐にわたる合併症のあるC型肝硬変に対して集学的治療を行い、 合併症の管理をしてSVRが達成されたことにより,予後の改善が期待される症 例を経験したため報告する. 感染性肝嚢胞,経皮的肝嚢胞ドレナージ術 18 Tolvaptan無効の1型肝腎症候群に対しTIPSが著効し た1例 日本医科大学千葉北総病院 消化器内科 恩田 毅,新井泰央,大久保知美,中川 愛,星野慎太郎, 小高康裕,鈴木将大,糸川典夫,近藤千紗,厚川正則,米澤真興, 岩切勝彦 背景】肝腎症候群(HRS)は肝硬変末期に合併する機能的腎不全であ り,急速に腎機能障害が進行する1型肝腎症候群の生存期間は約2週間 と予後不良である. これまでに1型肝腎症候群に対してTIPSを施行し, 腹水の軽減, 生存期間の延長を得られたという報告はあるが, 相反する 報告もあり, 不明な点が多い. 今回, 我々は1型肝腎症候群の症例にTIPS を施行し著効した1 例を経験したので報告する. 【症例】65歳, 女性. 当 院にてNASHによる肝硬変, 2型糖尿病で通院中であった. フロセミド 20mg, スピロノラクトン25mgで当初肝硬変に伴う腹水コントロールは 良好であったが, その後徐々に腹水増加による腹満感と腎機能の悪化 も認めたため精査加療目的で入院となる. 【検査所見】血液検査所見: ALB2. 5g/ dl, T-Bil2. 5mg/ dl, Cre1. 27mg/ dl, PT58. 4%, 尿 蛋 白: 150mg/ 日【臨床経過】入院後, 腹水穿刺を施行し, 塩分制限としアルブ ミン静注を施行したが腹水の軽快と腎機能の改善を得られなかった. また既存の利尿剤にトルバプタン7. 5mgを加えたが効果は乏しかっ た. その後2週間で血清Cre3. 03mg/ dlの段階的な上昇を認め, CARTな どの対症療法に努めるも腎機能の改善乏しく1型肝腎症候群の診断と なった. その後十分な説明と同意のもと、難治性腹水の治療として TIPSを施行した. 直径8mmのステントを留置, TIPS前後で門脈下大静 脈圧較差( PSG) は210mmH2Oから80mmH20に低下した. 術中合併症な く終了した. 術前500ml程の尿量は術後1300ml程に増加, 腎機能も改善 傾向であり術後2週間で血清Cre1. 4mg/ dlまで改善した. 腹水穿刺の回 数も術前少なくても週1回は必要であったが, 術後2週間で1回のみで経 過している. 術後合併症としては, 肝性脳症が出現したが対症療法にて コントロール良好である. 【結語】1型肝腎症候群にTIPSが著効した症 例を経験した. 1型肝腎症候群は非常に予後が不良であるがTIPSが治療 の選択肢の1つになり得ることが示された. 本邦における報告は少な く, 今後症例数の蓄積が必要であると考えられた. 肝細胞癌、食道胃静脈瘤、胸腹水貯留を合併した C型肝硬変に対する集学的治療を行った一例 肝細胞癌,C型肝硬変 20 肝障害で発見された肝細胞癌の1例 千葉労災病院 内科1) ,同 外科2) ,同 病理科3) 渡邉由芙香1) ,吉田直樹1) ,太田佑樹1) ,宮村達雄1) ,久我明司1) , 桝谷佳生1) ,菰田文武1) ,田中武継1) ,白銀大二2) ,鈴木 大2) , 草塩公彦2) ,尾崎大介3) 症例は75歳男性。肝機能障害精査で当科受診。血液検査では AST 49IU/ L、ALT 65IU/ Lと軽度の肝障害を認めた。HBs抗原 陰性、HCV抗体陰性、抗核抗体陰性、抗ミトコンドリアM2抗体 陰性であった。腹部超音波検査で肝S8に境界不明瞭な30× 19mm の 低 エ コ ー 腫 瘤 を 認 め た。腫 瘍 マ ー カ ー は AFP、 PIVKA-2ともに陰性であった。精査のため、腹部造影CT検査 施行したところ、動脈相・門脈相・静脈相ともに腫瘍は確認さ れなかった。EOB-MRI検査施行し、肝細胞相でS8に10mmと 20mmの腫瘍が確認された。同腫瘍は造影早期相で辺縁のみが 造影された。画像検査では質的診断が困難であり、腫瘍生検を 行ったが、病理検査では非常に高分化の肝細胞癌とatipical adenomatous hyperplasiaの鑑別が困難だった。悪性腫瘍を完全 に否定出来ないため、患者様に説明し、同意を得た上で肝S8亜 区域切除術を施行した。切除検体は中分化細胞癌で、背景肝は F3-4の肝硬変だった。今回我々は肝に明らかな基礎疾患を指 摘できず、また血液検査、画像検査、腫瘍生検でも診断に至ら なかった肝細胞癌の一例を経験したので、文献的考察を加えて 報告する。 肝腎症候群,TIPS ― 26 ― 肝細胞癌,EOB-MRI検査 21 23 肝細胞癌自然壊死が疑われた1例 筑波大学附属病院 消化器内科1) ,同 病理診断科2) , 同 消化器外科3) 菅沼大輔1) ,今西真実子1) ,長谷川直之1) ,小玉夏美1) ,瀬山侑亮1) , 田島大樹1) ,江南ちあき1) ,遠藤壮登1) ,寺崎正彦1) ,山田武史1) , 山本祥之1) ,石毛和紀1) ,森脇俊和1) ,金子 剛1) ,福田邦明1) , 佐藤泰樹2) ,橋本真治3) ,安部井誠人1) ,兵頭一之介1) 背景】肝細胞癌は自然壊死に陥りやすい腫瘍の一つと言われ ており、腫瘍壊死率90%以上の高度壊死症例は肝細胞癌の2%に 見られると報告されている。今回我々は、2病変の肝細胞癌と 診断し手術を施行したところ病理結果が1病変は肝細胞癌で あったが、他方の病変は壊死組織であり肝細胞癌の自然壊死が 疑われた1例を経験したので報告する。【症例】60歳男性。アル コール多飲歴あり。20年以上前よりC型慢性肝炎で通院中だっ た。経過中にS8に30mmと外側区に70mmの腫瘍が出現したた め、本院を紹介受診した。腹部造影CTでS8の病変は乏血性で、 内部に11mm程度の早期濃染する部位が混在しており、脱分化 した肝細胞癌と診断した。一方、外側区の病変は辺縁から緩徐 に造影され、門脈腫瘍栓が認められたことから、混合型肝癌が 疑われた。S8部分切除、左葉切除を施行した。病理でS8の腫瘍 は肝細胞癌と診断された。外側区の腫瘍には肝細胞が認められ ず、壊死組織と線維化のみで構成され、門脈内血栓が認められ た。また病理標本上の腫瘍は40mm大であり、CT評価後の42日 間の経過で縮小していた。【考察】外側区の腫瘍は経時的に見 ると自然に縮小しており、腫瘍マーカーも術前に自然低下して いた。この経過と病理結果から肝細胞癌の自然壊死が疑われ た。肝細胞癌が自然壊死に至る原因として、肝循環障害やサイ トカインの上昇による抗腫瘍効果、禁酒、漢方薬の使用などが 報告されている。当症例はアルコール多飲歴のある患者だが、 術前に禁酒していた。禁酒が腫瘍の自然壊死の一因となった可 能性が考えられる。しかしS8の病変の病理組織は典型的な肝 細胞癌の像を呈しており、2病変の病理像に乖離のある稀な症 例と考えられたため、文献的考察を加えて報告する。 北里大学医学部 消化器内科 湊 尚貴,奥脇興介,山内浩史,長谷川力也,松本高明,三島孝仁, 金子 亨,宮澤志朗,岩井知久,今泉 弘,木田光広, 小泉和三郎 症例】75歳女性.数か月前から心窩部痛を自覚していた.検 診の腹部超音波で膵腫大を指摘され紹介受診した.既往は2型 糖尿病と高脂血症.初診時の身体所見は異常なし.血液検査で は肝胆道系酵素の上昇と高IgG4血症を認め,CTでは膵のびま ん性腫大と肝内胆管が拡張していた.ERCPでは下部胆管と肝 門部に限局性の胆管狭窄を認め,IDUSでは非狭窄部を含めて 全周性・対称性の壁肥厚を呈した.主膵管は不整狭細像であっ た.以上より,自己免疫性膵炎(AIP)及びIgG4関連硬化性胆管 炎(IgG4-SC)と診断し,ステロイドセミパルス療法(メチルプ レドニゾロン500mg/日,3日間×2.総投与量;3g)を施行し た.その後血清IgG4値は速やかに低下し,4週間後に行った ERCPでは胆管狭窄の改善が得られた.2015年3月1日現在,約 6ヶ月の無再発経過観察中である. 【考察】IgG4-SCの治療は高率に合併するAIPの治療に準じステ ロイドが投与され,一般に良好な反応が得られることが多い. 通常は,経口プレドニゾロン0. 6mg/ kg/ dayから開始し,2-4週 間の継続投与後,5mgずつ減量,2-3ヶ月を目安に維持量である 5mg/ dayまで漸減,その後約3年間の維持療法を行う.維持療法 を行った場合は再燃率が低いとの報告もあるが,実臨床では再 燃例も少なからず経験し,またステロイドの長期連用による多 彩な副作用を強いられる可能性も高まる.当施設では,高齢者 や糖尿病患者等,ステロイド長期連用のハイリスク患者に対し ては,ステロイドパルス(あるいはセミパルス)単独療法をし ばしば行っている.本例もセミパルス単独療法で良好な経過が 得られているが,長期成績に関しては今後前向き研究で明らか にする必要がある. 肝細胞癌,自然壊死 22 球状塞栓物質 ( ディーシービーズ) による肝動脈化 学塞栓術後に発症した壊疽性胆嚢炎の1例 日本医科大学付属病院 消化器外科1) ,同 放射線科2) 日下部誠1) ,神田知洋1) ,真々田裕宏1) ,水口義昭1) ,谷合信彦1) , 中村慶春1) ,吉岡正人1) ,松下 晃1) ,清水哲也1) ,小野澤志郎2) , 村田 智2) ,内田英二1) 症例は70歳代男性。肝障害の精査目的で当院を受診し、腹部造 影CTにて肝内側区域( S4) に30mm大の腫瘤影、血管造影検査に て微小な腫瘍濃染の多発が認められた。B型肝炎に伴う肝硬変 および多発肝細胞癌の診断にて、以降7か月間の間に肝動脈化 学塞栓術( TACE) を合計5回施行されており、Stable diseaseで あ っ た。6 回 目 の TACE に て epirubicin お よ び 球 状 塞 栓 物 質 ( ディーシービーズ) を使用して動脈塞栓を施行したが、手技終 了後より徐々に増悪する腹痛および嘔吐を認めた。塞栓後の腹 部単純CTにて胆嚢壁に一致して造影剤の停滞を示唆する高吸 収域が認められた。胆嚢動脈の塞栓に伴う急性胆嚢炎と判断 し、翌日に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した。胆嚢壁は壊死して おり、周囲に腹水の貯留を認めた。手術時間は1時間52分、出血 量は少量であった。経過は良好で術後8日目に退院した。病理 所見にて組織の浮腫および変性壊死の他に、壁内の血管に球状 物 質 に よ る 塞 栓 が 認 め ら れ、壊 疽 性 胆 嚢 炎 と 診 断 さ れ た。 ディーシービーズ使用後の壊疽性胆嚢炎の報告は稀であり、若 干の文献的考察を加えて報告する。 ステロイドセミパルス療法により早期の胆管狭窄の 改善が得られたIgG4関連硬化性胆管炎の1例 IgG-4関連硬化性胆管炎,ステロイドパルス療法 24 胆嚢穿孔による腹腔内膿瘍に対しドレナージ施行に よって改善を得た一例 関東労災病院 柳澤文人,小川正純,中崎奈都子,嘉戸慎一,金子麗奈,金 草柳 聡,佐藤 譲 民日, 症例】79歳 男性【主訴】右季肋部痛 食思不振 全身倦怠感【現病 歴】平成27年2月初旬より右季肋部痛、全身倦怠感を自覚。経過をみて いたが、食事摂取困難となり近医受診。採血上、炎症反応高値であり 当院当科紹介となった。【入院後経過】来院時の採血で炎症反応高値 ( WBC:20800、CRP:35. 65) を認め、造影CTを施行。胆嚢壁に線状増 強効果像、周囲に液体貯留を認め、さらに胆嚢粘膜の破錠が疑われた。 また、右上腹部の腹壁直下・肝背側に液体貯留を認め、胆嚢穿孔によ る腹腔内膿瘍が疑われた。超音波では胆嚢が縮小しており、腸管ガス により抽出困難であり、CTでは胆石が認められずCA19-9高値であり 悪性疾患が否定できず保存的治療を開始するため、絶食・補液・抗生 剤( TAZ/ PIPC:4. 5g×3回/ day) で治療開始。腹痛・発熱等の症状は改 善傾向を示したが、採血上、炎症反応の改善に乏しく、第10病日に再 度CTを施行。腹壁直下、及び、肝背側の膿瘍は増大傾向であり同日超 音波下に21GのPEIT針を使用しアスピレーション施行。腹壁直下の膿 瘍は用手的にドレナージ可能であったが、肝背側の膿瘍は粘稠性が高 く用手的にドレナージ出来ず、7FrのPTCD チューブを挿入し約100cc の乳白色の膿瘍を採取。培養の結果、citrobacter braakiiが検出された。 細胞診ではclass2であった。処置後経過良好であったが、血圧低下、呼 吸状態の悪化を認め胸膜炎の可能性を考えCTを施行し胸膜炎の診断 で胸腔ドレーン挿入。その後、経過良好であり第26病日に造影CTを施 行し膿瘍の縮小と胸水の改善を確認後、胸腔ドレーン抜去。また、膿 瘍ドレナージチューブ抜去。抜去後も経過良好であり第37病日に退院 となった。【考察】本症例は胆嚢炎による胆嚢穿孔を認め、肝側へ穿破 し肝被膜下膿瘍を形成し、さらに首座となる胆嚢から離れた腹壁直下 に孤立する膿瘍を形成していた。CA19-9軽度高値であり、明らかな 胆石が確認できず悪性疾患も否定できず保存的に治療を開始するも改 善に乏しく、超音波下ドレナージを施行することで速やかな改善を認 めた症例を経験したため文献学的考察を含め報告する。 腹腔鏡下胆嚢摘出術,急性胆嚢炎 ― 27 ― 胆嚢炎,腹腔内膿瘍 25 大量の膵性胸水および膵仮性嚢胞感染に対してオク トレオチド、経副乳頭的嚢胞ドレナージなどの保存 的治療が奏功した1例 都立墨東病院 松岡愛菜,小林克誠,池 真実,木村 元,飯塚泰弘,間野真也, 古本洋平,堀内亮郎,淺野 徹,佐崎なほ子,忠願寺義通, 藤木和彦 症例】44歳男性。アルコール性慢性膵炎で通院中、飲酒を継続 しており心窩部痛で来院。大量の右胸水および膵尾部から横隔 膜裂孔を介して縦隔まで連続する仮性嚢胞を認めた。膵性胸水 と診断し、胸腔ドレーン留置、メシル酸ガベキサート、ウリナ スタチン、抗生剤、オクトレオチドなどで保存的治療を開始し た。胸水は消失したが膵尾部の仮性嚢胞は残存、嚢胞感染を併 発した。MRCPで膵管と嚢胞の交通を確認し、経乳頭的嚢胞ド レナージを試みたが主膵管がループを形成しており断念。経副 乳頭的に嚢胞腔まで何とかステント挿入が可能となり、白色混 濁した膿が排出された。その後感染は沈静化、嚢胞は著明に縮 小。7か月経過の時点で膵管狭窄は残存し、ステント留置を継 続している。【考察】縦隔内膵仮性嚢胞の成因は膵管破裂によっ て後腹膜へ漏出した膵液が仮性嚢胞を形成し、横隔膜裂孔を介 して縦隔にまで達することとされる。膵性胸水は縦隔内膵仮性 嚢胞の胸腔への穿破が原因と考えられ、発生頻度は慢性膵炎の 約1%程度である。これまで膵性胸水に対しては外科的治療が 中心だったが、近年ステント留置やオクトレオチドによる治療 報告がみられ、本例もオクトレオチド、胸腔ドレナージなどで 膵性胸水は消失した。仮性嚢胞に対しては主膵管と嚢胞の交通 がある際は経乳頭的ドレナージが一般的であるが、本例のよう に経副乳頭的ドレナージを施行した報告は稀である。これら保 存的治療の長期成績は不明であり、本例でも治療が奏功したも のの膵管狭窄は残存し、定期的な膵管評価、ステント交換を継 続している。今後も慎重な経過観察の方針である。 27 東邦大学医療センター大森病院 消化器内科1) , 同 消化器外科2) ,同 病院病理部3) 吉峰尚幸1) ,篠原正夫1) ,松清 靖1) ,原 精一1) ,松井哲平1) , 大塚隆文1) ,和久井紀貴1) ,篠原美絵1) ,佐藤真司1) ,岡野直樹1) , 池原 孝1) ,中野 茂1) ,前田哲也2) ,根本哲生3) ,永井英成1) , 渡辺 学1) ,五十嵐良典1) ,住野泰清1) 今回我々は,術前に確定診断に至らず,開腹手術により確定診断を得 た膵尾部原発悪性リンパ腫の症例を経験したので報告する.【症例】 70歳台男性.肝障害精査目的で近医から紹介され,2014年8月に当科 受診.アルコール性肝硬変と診断したが,造影CT検査で膵尾部に腹側 に突出する28mm大の造影効果に乏しい腫瘤性病変を認めた.US検査 では,同腫瘍は内部に壊死を伴う低エコー腫瘤として描出された. CA19-9 42. 5,DUPAN-2 1700と腫瘍マーカーが高値であることから 膵癌が疑われたが,腫瘍の尾側膵管の拡張を認めないことから悪性リ ンパ腫も否定できず,超音波内視鏡下穿刺吸引術(EUS-FNA)を施行 した。病理結果はClass 5であったが,低分化な癌腫と悪性リンパ腫の 鑑別が困難で確定診断には至らず,開腹手術を選択した.手術直前に 施行した造影CT検査では腫瘤は40mm 大と増大傾向にあり,胃壁との 境界も不明瞭で胃壁への浸潤が疑われた.2015年2月に膵尾部切除術 を施行.胃および結腸への直接浸潤を認めたため,胃・結腸合併切除 を行い,B細胞リンパ腫と診断した.【結語】膵原発悪性リンパ腫は, 腹部臓器に発生する稀な節外性悪性リンパ腫で,その発生頻度は膵悪 性腫瘍の0. 16∼4. 9%,節外性非ホジキンリンパ腫の0. 6∼2. 2%とされ ている.病変部位は頭部側に多く,膵尾部原発の悪性リンパ腫は非常 に稀である.膵悪性リンパ腫の確定診断は画像診断のみでは不十分 で,組織診断が必須である.近年EUS-FNAの有用性が示されている が,診断不能な場合には開腹生検や場合によっては手術を行わざるを 得ない.悪性リンパ腫を疑いながらも膵癌との鑑別が困難であり,手 術を行った膵尾部原発悪性リンパ腫の1例を経験した.膵尾部原発悪 性リンパ腫は非常に稀ではあるが,腫瘍の尾側膵管の拡張がない場合 には考慮すべき疾患と考えられ報告した. 膵性胸水,膵仮性嚢胞 26 慢性膵炎の急性増悪に併発した仮性膵嚢胞と十二指 腸間に認めた消化管瘻が自然閉鎖した一例 東京都教職員互助会 三楽病院 宮本孝英,加藤礼子,藤江 肇,与田武徳,深川一史,佐久間信行, 永尾清香,和田友則 症例】79歳男性【現病歴】40歳よりアルコール性急性膵炎を繰り返し ていたが, 1日1合程度の飲酒を継続し, 60歳で膵石を認め慢性膵炎の 診断となった. 2013年5月より腹痛が出現し徐々に増悪を認め, 6月に 近医を受診した. 近医の腹部単純CTで慢性膵炎の急性増悪が疑われ当 院を紹介受診した. 心窩部痛と血液検査における炎症反応の上昇およ び腹部造影CTで膵頭部周囲の脂肪識の混濁を認め慢性膵炎の急性増 悪の診断で同日緊急入院となった. 【入院後経過】入院同日よりナファ モスタットメシル 20mg/ 日とタジバクタム・ピペラシリン 13. 5g/ 日 で加療開始した. 第2病日の上部消化管内視鏡検査にて十二指腸に消 化管瘻を認め, 白色の濃汁排出を認めた. 前日の腹部造影CTと比較 し, 仮性膵嚢胞と十二指腸間の消化管瘻と判断した. 消化管瘻より仮 性膵嚢胞からの十二指腸への濃汁排泄を認めており経過観察を行う方 針となった. 膵炎に関しては入院時よりアミラーゼの上昇は認めず病 勢を腹痛にて評価しており, 第8病日から腹痛が消失したため第9病日 にナファモスタットメシルを終了した. また, 第13病日に炎症反応の 改善を認め, 第14病日の腹部造影CTで膵頭部周囲の脂肪織混濁と仮性 膵嚢胞の消失を認めたため第15病日に抗菌薬を終了した. 第21病日に 上部消化管内視鏡検査を施行し, 十二指腸に認めた消化管瘻は消失し しており自然閉鎖したと判断した. 消化管瘻の閉鎖を確認した後の第 22病日より脂肪制限食から食事を再開し徐々に普通食まで戻した. そ の間に腹痛の再発は認めないため第43病日に退院となった.【考察】仮 性膵嚢胞と十二指腸間の消化管瘻をきたした症例報告は少ない. ま た, 自験例を含め消化管瘻を介し排濃を認め仮性膵嚢胞が消失した報 告は少数認められ, ドレナージ効果による嚢胞および膵管の内圧の減 少が瘻孔閉鎖を促すという報告がある. 自験例は排濃による自然閉鎖 を認めたが, 嚢胞内出血や破裂などの合併症が知られており, 腹部超 音波検査や腹部CTで経過観察を行い, 必要であれば内瘻術または手術 を行う必要があると考えられる. 肝障害を契機に発見された膵尾部原発悪性リンパ腫 の1例 膵原発悪性リンパ腫,尾部 28 流出静脈早期濃染像を認めた膵paragangliomaの一例 NTT 東日本関東病院 消化器内科1) ,同 病理診断部2) , 同 外科3) ,横浜市立大学病院 肝胆膵消化器病学4) 三角宜嗣1) ,藤澤聡郎1) ,香川幸一1) ,橋本浩次2) ,久富勘太郎1) , 野家 環3) ,窪田賢輔4) ,堀内 啓2) ,針原 康3) ,松橋信行1) 特に既往の無い49歳女性。自覚症状はなく、検診での腹部超音 波にて膵頭部に20mm大の境界明瞭な低エコー腫瘤を指摘さ れ、紹介受診となった。Dynamic CTでは内部均一で早期相で非 常に強く造影され、遅延相まで淡く造影された。MRIでは胆管、 膵管に明らかな異常は認めず、腫瘤はT1WI low intensity 、T2WI high intensity、DWI high intensity を 示 し た。超 音 波 内 視 鏡 の Doppler像では拡張した多数の腫瘍血管を認め、血流豊富な腫 瘤と認識された。以上の所見より膵神経内分泌腫瘍と診断し、 膵頭十二指腸切除術を施行した。手術標本において腫瘤は粘膜 面および漿膜面から肉眼的に視認することは不可能であったが 触知することは可能であった。病理検査ではHE染色にて典型 的 な Zellballen 様 構 造 を 呈 し、免 疫 染 色 に お い て S-100 ( +) 、 synaptophysin( +) 、chromograninA( +) 、CD56( +) を示し、最終的 に膵paragangliomaと診断した。Paragangliomaは副腎外性に発生 する比較的稀な腫瘍であるが、膵を原発とする報告は極めて稀 である。本疾患は手術やEUS-FNAなどの検査の刺激により高 血圧クリーゼを起こす可能性があるため正確な診断が重要であ る。特に膵神経内分泌腫瘍との鑑別が困難な場合が多いが、腫 瘍からの流出静脈の早期濃染像が同疾患に特徴的であったとす る過去の報告もある。本症例でも遡るとDynamic CTにおいて 同所見を認めており、術前に鑑別できる可能性があったと考え た。 消化管瘻,仮性膵嚢胞 ― 28 ― paraganglioma,流出静脈早期濃染像 29 頻 回 の 嘔 吐 で 発 症 し、膵 頭 部 微 小 動 脈 瘤 出 血 の 一症例 北里研究所病院 胃腸センター1) ,同 放射線科2) , 同 病理診断科3) 永久太一1) ,梅田智子1) ,中野 雅1) ,小林 拓1) ,清水清香1) , 常松 令1) ,渡辺憲明1) ,芹沢 宏1) ,矢内原久2) ,森永正二郎3) 主訴】嘔吐【症例】43歳男性【経過】頻回の嘔吐と食欲不振の ため紹介来院.高度脱水と腎前性腎不全(BUN49. 9 mg/ dl, Cr3. 42 mg/ dl)を認め,同日緊急入院となった.腹部単純CTにて著 明な胃拡張と十二指腸水平脚から下行脚にかけての壁肥厚を認 め、上部消化管内視鏡検査にて同部位は高度の浮腫状粘膜を呈 していた.補液および抗生剤投与により,症状および腎機能障 害は改善したが、その後に施行した腹部造影CTにて,膵頭部背 側に約17mm大の濃染域を認め,動脈瘤が疑われた.同部位か らの出血及び血腫による十二指腸圧排が嘔吐の原因と考えられ た.腹部血管造影にて下膵十二指腸動脈の分枝に微小動脈瘤が 確認されたが、カテーテル挿入が困難であり,近位端のみの塞 栓術を施行した.動脈瘤近傍の下膵十二指腸動脈は広狭不整が 著しく,SAM( Segmental Arterial Mediolysis) の可能性も示唆さ れた.症状軽快し退院,2ヶ月後に施行した腹部造影CTでは腹 部動脈瘤の消失が確認された.【考察および結語】膵頭部微小 動脈瘤からの出血により血腫を形成し,十二指腸に通過障害を 来した一例である.頻回の嘔吐症状の鑑別に腹部動脈瘤ならび に血腫形成を念頭に置く必要性を示唆する興味深い症例として 報告する。 31 慶應義塾大学医学部 外科学教室 ( 一般・消化器) 松田 諭,竹内裕也,川久保博文,福田和正,中村理恵子, 高橋常浩,和田則仁,北川雄光 目的】食道癌において,術後合併症が予後不良因子となると報告 されている.その要因として,術後合併症により惹起された全身 性炎症が関与していると考えられるが,術後合併症と術後全身性 炎症の関連はあきらかではない.われわれは,食道癌術後におけ る全身性炎症を術後C-reactive protein(CRP)の推移を用いて評価 し,術後合併症との関連を検討した.【方法】2004年から2012年ま でに当院において右開胸食道切除術を施行し根治を得た食道癌患 者を対象とした.サルベージ手術施行例は除外した.術後急性期 の炎症の評価指標として,術後CRP peakが遅く( 14PODまでの期間 で,CRP peakが3POD以降であること) ,かつ術後CRP高値期間が長 い( CRP>10mg/ dlである日数が10PODまでに6日間以上あること) 群 を 術 後 高 度 炎 症 群 ( Intense postoperative inflammatory response: IIR) と定義した.患者背景,臨床病理学的因子,術後合併症(肺炎, 縫合不全,創感染)を集積し,IIRとの関連を検討した.【結果】対 象患者216例のうち215例で14PODまでの血清CRP値の変化を観察 し得た.pStag0/ I/ II/ III/ IVは5/ 70/ 58/ 66/ 16例であった.術後合併 症については,肺炎が20%,縫合不全が15%,表層性SSIが10%で あった.術後CRP peakが3POD以降であったのは88例( 41%) ,術後 CRP高値が6日以上であったのは49例( 23%) であり,31例( 14%) が, IIR群に分類された.IIRの有無と臨床病理学的因子に有意な関連 はなかった.術後合併症とIIRの関連について,肺炎群と縫合不全 群において,有意にIIRの発生の頻度が高かった(肺炎,p=0. 004; 縫合不全,p=0. 003).一方で,SSIの発生とIIRには有意な関連は 見られなかった.【結論】食道癌に対する開胸食道切除術におい て,肺炎と縫合不全の発生は,術後急性期の全身性の炎症を惹起 していると考えられた.術後高度炎症は,微小転移の増殖などを 介して,がんの再発転移を促進する可能性もあり,術後合併症の 発生予防に加え,それにより惹起される炎症を最小限に抑える取 り組みが重要であると考えられた. 腹部動脈瘤,広狭不整像 30 メタリックステントにて減黄困難であった粘液産生 性膵癌胆管穿破の一例 多摩総合医療センター 津川直也,小倉祐紀,並木 中園綾乃,戸田晶子 伸,堀家秀之,肱岡悠子,井上 大, 症例は70歳女性。2014年9月より背部痛が出現し、整形外科 を受診したが異常なしといわれていた。11月に糖尿病、高血圧 にて通院中の内科医院にて腹部超音波検査を施行されたところ 腹部腫瘤を指摘され、当科に紹介となった。入院、精査にて粘 液産生性膵癌、肺転移の診断となった。患者本人は積極的治療 を希望されず、疼痛コントロールのみにて外来通院の方針と なった。2015年2月全身倦怠感、食欲不振にて当科救急外来を 受診し、採血にてT. Bil 6. 1 mg/ dLと黄疸あり、腹部CTにて肝内 胆管の拡張を認めたため、膵癌による閉塞性黄疸の診断にて緊 急入院となった。入院当日ERCPを施行したところ中部胆管に 閉塞を認め、メタリックステントを留置した。その後、黄疸は 軽快しつつあったが再び増悪した。膵癌の進行による十二指腸 浸潤のためERCP困難となったため、PTCDによる減黄方針と なった。PTCDを施行したところ、排液は粘液性であり、粘液 産生性膵腫瘍の胆管穿破による閉塞性黄疸と診断した。粘液の 効率的な排液を図るためメタリックステントをside by sideで3 本留置したが、減黄は不良で頻回のPTCD洗浄を必要とした。 現病の進行のため入院後一か月にて永眠された。粘液産生性膵 癌はまれに他臓器に穿破することが知られているが、胆管に穿 破した場合、減黄に難渋する報告が散見される。今回我々は複 数本のメタリックステントを留置し、粘液の排液を図ったが効 果が得られなかった。EUSガイド下の減黄術などの検討を要す ると考えられた。 食道癌に対する開胸食道切除術後における術後合併 症と全身性炎症の関連に関する検討 食道癌,食道切除 32 遠隔リンパ節転移を伴ったHER2陽性食道胃接合部 癌に対してS-1+CDDP+Trastuzumabによる化学療法 が奏効した一例 聖路加国際病院 消化器一般外科1) ,同 腫瘍内科2) , 同 消化器内科3) 渡辺貴之1) ,久保田啓介1) ,扇田 信2) ,髙木浩一3) ,関戸悠紀1) , 藤川 葵1) ,武田崇志1) ,鈴木研裕1) ,嶋田 元1) ,大東誠司1) , 柵瀬信太郎1) ,太田惠一朗1) 症例は70歳代、男性。検診の上部消化管内視鏡検査で胃癌を指 摘された。食道胃接合部に2型進行癌を認め、腹部造影CT検査 では小彎リンパ節および大動脈周囲リンパ節が著明に腫大して おり、cT3N3M1、cStage4と診断した。生検組織診断では低分化 型腺癌で、HER2陽性(IHC法で3+)であった。そこでS-1+ CDDP+ Trastuzumabの3剤併用による化学療法を開始した。3 コース施行後のCT検査では原発巣は著明に縮小し、小彎リン パ節および大動脈周囲リンパ節も著明に縮小し、PRと判断し た。化学療法継続中にGrade1の食欲低下および下腿浮腫がみら れたため、10コース目よりCDDPは20%減量、14コース目より CDDPは40%減量したが、19コース施行後のCT検査では原発巣 は同定困難となりCRと判断した。現在治療開始から23ヶ月経 過し、S-1+CDDP+ Trastuzumabの3剤併用による化学療法を計 29コース施行したがCRを維持している。HER2陽性進行食道胃 接合部癌に対してS-1+CDDP+ Trastuzumabによる化学療法が 奏効した一例を経験したので、当院での過去のTrastuzumab使用 胃癌症例5例と文献的考察を含め報告する。 粘液産生性膵癌,閉塞性黄疸 ― 29 ― HER2陽性胃癌,Trastuzumab 33 維持透析施行中の消化管間質腫瘍 ( GIST) 患者に通 常量のイマチニブ療法を安全に施行し得た一例 東京大学医学部附属病院 消化器内科1) ,同 光学診療部2) 新倉量太1) ,山田篤生1) ,芹澤多佳子1) ,中田史子1) ,小林由佳1) , 吉田俊太郎2) ,平田喜祐1) ,小池和彦1) はじめに】維持透析施行中の消化管間質腫瘍gastrointestinal stromal tumor( GIST) 患者に通常量のイマチニブ療法を施行し、 有害事象が起こらなかった症例を経験したので報告する。 【症 例】75歳男性。2008年に十二指腸GISTを診断されていたが、本 人の希望により加療を行っていなかった。2014年4月腎機能の 増悪で透析導入目的に入院となり、入院後5日目に無痛性の多 量な黒色便が出現した。【既往歴】慢性腎不全、2型糖尿病、前 立腺癌、虚血性心疾患【生活歴】喫煙歴:7本/ 日×40年間、飲 酒歴:日本酒0. 5合/ 日【経過】消化管出血時はヘモグロビン6. 3g/ dlと著明な貧血を認め、ショック状態であった。濃厚赤血 球輸血を行い、循環動態を改善させた後、腹部造影CT検査を施 行し、十二指腸に14 cm大腫瘤、多発肝腫瘤、多発骨腫瘤を認め た。緊急上部消化管内視鏡検査を施行し、十二指腸下行脚に 1/ 4周性、露出血管を伴う粘膜下腫瘤を認め、同部位が出血源と 診断した。露出血管径が太いため、内視鏡的止血を断念し、緊 急外科手術にて止血を得た。腫瘍部はCD117陽性の紡錘形細胞 を認めGISTと診断された。MIB-1 indexは10%であった。術後 は、GISTの多発肝・骨転移巣に対して、400 mg/ 日のイマチニブ 療法を開始した。この間、週3回の維持透析を継続した。イマ チニブ療法開始後、4か月間に骨髄抑制、肝機能障害、うっ血性 心不全、間質性肺炎、皮膚障害などの有害事象は一切認めなかっ た。イマチニブ療法開始後第136病日に原病の進行にて死亡し た。【結語】通常量のイマチニブ療法は維持透析施行中の患者 に対しても、安全である可能性が示唆された。維持透析施行中 の消化管悪性腫瘍患者に対する化学療法について文献的考察を 加えて報告する。 35 十二指腸に嵌入しball valve症候群を来した胃過形成 性ポリープが自然脱落した一例 原町赤十字病院 内科1) , 群馬大学大学院医学系研究科 病態制御内科2) 田中秀典1) ,平野裕子1) ,木村有宏1) ,鈴木秀行1) ,竹澤二郎1) , 山田正信2) 症例】85歳男性【現病歴】2014年11月、嘔気、黒色便、胸焼け を主訴に受診。Hb8. 8g/ dlと貧血を認め上部消化管内視鏡検査 ( EGD) を施行したところ、湧出性出血を伴う逆流性食道炎( ロ サンゼルス分類Grade D) を認めた。また、胃前庭部大弯に約2. 5cm大の有茎性の過形成性ポリープを認めた。ポリープは幽門 輪を越え十二指腸に嵌入していたが、胃の蠕動運動により容易 に胃内に自然整復された。逆流性食道炎は胃過形成性ポリープ によるball valve症候群による嘔吐が原因であると考え、後日内 視鏡的切除を行う目的に入院した。しかし、治療当日のEGDで は前回認めたポリープは消失し潰瘍を認めるのみであった。検 査時には症状は軽快しており、経過からball valve症候群を来し た胃過形成性ポリープが自然脱落したと考えられた。 【考察】 胃過形成性ポリープによるball valve症候群の報告は比較的稀 で、1978年から2013年までの報告で5例であった。治療として は内視鏡手技による整復、内視鏡的切除、困難例では外科的切 除が行われる。我々が検索した範囲ではball valve症候群を来し た胃過形成性ポリープが自然脱落した症例は本例のみであり希 少な症例と考えられた。 イマチニブ,維持透析 34 保存的加療後にDICをきたし、外科的治療により救 命し得た化膿性胃炎の1例 川崎市立多摩病院 消化器・肝臓内科1) , 同 消化器・一般外科2) ,同 病理診断科3) , 聖マリアンナ医科大学 消化器・肝臓内科4) 鈴木 碧1) ,大石嘉恭1) ,近江亮介1) ,佐藤 望1) ,平石哲也1) , 福田安伸1) ,馬場 哲1) ,奥瀬千晃1) ,小池淳樹3) ,朝倉武士2) , 鈴木通博1) ,伊東文生4) ball valve症候群,自然脱落 36 (演題取り下げ) 症例】82歳、女性【現病歴】数日前から上腹部痛、嘔気、嘔吐が出現し当院受 診。受診時には腹部症状は軽度であったが、血液検査で炎症反応は高値であり 急性腹症の精査、加療目的に即日入院となった。【既往歴】高血圧、変形性膝関 節症【入院後経過】入院時の腹部単純CT検査では壁内気腫を認めたが、血液検 査ではCRP値の上昇を認めるのみで壊死を疑う所見はなかった。vital signsの異 常はなく、軽度の圧痛を認めるのみであったことから、保存的加療を行なった。 EGDでは胃前庭部大彎側に約15mm大の深い潰瘍性病変を認め、NSAIDsの内服 があったことからNSAID潰瘍と診断した。第13病日にはCRP値は低下し、EGD では潰瘍は治癒過程で腹部単純CT検査では壁内気腫は消失していたことから 経口摂取を開始した。経口摂取を継続していたが、第19病日に微熱が出現し、 腹部症状、所見はなく、血液検査では軽度の炎症反応の上昇を認めるのみであっ た。腹部造影CT検査では胃前庭部の壁肥厚を認めたが壁内気腫や遊離ガスは 認められなかったが、その後高熱が出現し、第20病日にはDICをきたした。 EGDでは胃の拡張は不良で潰瘍の治癒は遅延しており、胃内に白色調の粘稠性 の胃液が貯留していた。その後も発熱以外の症状は認めなかったがDICは進行 し、その他の検査でDICを来すような疾患は診断されなかったため化膿性胃炎 の疑いに対して第21病日に緊急広範胃切除術となった。採取した胃液培養から はCorynebacterium spが検出され、病理組織検査では全層性の炎症細胞浸潤を認 めたため化膿性胃炎の診断となった。術後の経過は良好で転院となる。【考察】 化膿性胃炎は瀰漫性または限局性に胃壁粘膜下層を中心に全層に広がる非特異 的化膿性炎症疾患である。術前の確定診断は困難であり、死亡率は40∼60%程 度と高い。保存的加療にて改善する症例の報告もあるが本症例のようにDICを きたし外科的手術を必要とする症例もあり、外科手術を念頭に経過をみること が重要である。【結語】今回我々は外科的治療により救命し得た化膿性胃炎の1 例を経験したので文献的考察を含めて報告する。 化膿性胃炎,治療 ― 30 ― 37 39 Pagetoid spreadを伴う早期直腸癌の一例 JCHO 群馬中央病院 消化器内科1) ,同 病理診断科2) , 同 外科3) 岸 遂忠1) ,櫻井信司2) ,加藤寿英3) ,内藤 浩3) 外科治療が奏功した結腸通過遅延型便秘症の1例 横浜市立大学医学部 肝胆膵消化器病学1) , 板橋中央総合病院 外科・腹腔鏡手術センター2) 冬木晶子1) ,大久保秀則1) ,稲生優海1) ,中島 淳1) ,黒崎哲也2) 症例】70歳台女性。排便時出血のため前医を受診し直腸腫瘍 と診断され、当院に紹介された。直腸診をすると、発赤した病 変は肛門外に脱出しており、隆起性病変とその周囲に扁平隆起 性病変が広がっていた。下部消化管内視鏡検査を行うと、直腸 ( Rb) に首座をおく結節を有する隆起性病変( I s) と、I sから連続 して肛門外に広がる扁平隆起性病変(Ⅱa) を認めた。RbのI sに は粘液が強固に付着していた。Ⅱa病変を拡大観察すると、異型 腺管はいくら様構造で、異型腺管内には拡張、蛇行を示すルー プ様異常血管を認めた。造影CT検査では、直腸病変は指摘で きず、遠隔転移やリンパ節転移を認めなかった。以上の検査か ら、早期直腸癌( Rb-P、0- I s+Ⅱa、SM, N0H0P0M0 cStage I) と診 断し腹会陰式直腸切断術を行った。切除標本の肉眼所見は、肛 門管歯状線付近にI sを認め、I sから連続して肛門側重層扁平上 皮内に広範なⅡa病変を認めた。病理組織学的所見は、I sは管状 絨毛状高分化型腺癌、Ⅱaは低分化型腺癌からsignet-ring cell carcinomaであり、切除断端は陰性であった。以上より直腸癌の 皮膚浸潤によるPagetoid spreadと診断した。最終診断は早期直 腸癌(Rb-P-E, 0- I s+Ⅱa, 60mm, SM, N0H0P0M0, fStage I)で、 術後補助化学療法は行わず経過観察中である。【考察】適切な 治療法選択のために、Pagetoid spreadを伴う直腸癌の術前範囲 診断は重要と考える。 背景】 結腸通過遅延型便秘症( Slow Transit Constipation : STC) は、腸蠕 動運動の低下や結腸通過時間の遅延が原因となって引き起こさ れ、多くは薬物治療に抵抗性を示し、QOLの著しい低下を伴う 難治性疾患である。内科治療が無効の場合、最終的に外科治療 を余儀なくされるケースも少なくない。今回我々は、STCの診 断で結腸亜全摘術に至った1例を経験したので報告する。 【症例】 39歳女性。8年前より便秘、腹部膨満を自覚。腹部手術歴や精 神疾患の既往はなく、画像検査では器質的異常は指摘されな かった。薬物治療が行われたが奏功せず、腸管洗浄液6Lを週1 回内服し排便を得ている状態であった。難治性便秘症と考えら れ、消化管機能精査目的に当院へ紹介となった。 X線不透過マーカーを用いた結腸通過時間測定では、7. 0日以上 と著明に延長を認めた。シネMRIで小腸の蠕動障害や病的拡張 は認められず、胃排出能検査も異常を認めなかったことから、 病変は結腸に限局していると考えられた。 STCの診断で矛盾なく、内科治療に抵抗性を示すことから、手 術適応症例と考えられ、腹腔鏡補助下結腸亜全摘術が施行され た。術後、排便回数が15回/ 日と増加する時期もあったが、薬物 加療でコントロール可能であった。病理では異常所見は認めら れなかった。 【考察】 STCでは、内科治療が奏功しない場合、結腸亜全摘術が選択肢 となりうる。しかし結腸全摘術は患者への侵襲が非常に大き く、また小腸が罹患している場合、術後高率に増悪することが 報告されているため、消化管機能を十分に評価した上で手術適 応を慎重に判断することが重要であると考えられる。また今回 の病理では異常所見は得られなかったが、実態解明のため今後 症例を集積して解析を行う必要がある。 難治性便秘症,外科治療 Pagetoid,直腸癌 38 経直腸的EUS-FNAが有用であった横行結腸癌術後 ダグラス窩再発の一例 君津中央病院 消化器科1) ,同 外科2) 藤本竜也1) ,吉田 有1) ,菅原徳瑛1) ,泉水美有紀1) ,今井雄史1) , 西尾匡史1) ,高橋幸治1) ,稲垣千晶1) ,内藤裕史1) ,矢挽眞士1) , 石井清文1) ,大部誠道1) ,藤森基次1) ,駒 嘉宏1) ,畦元亮作1) , 柳澤真司2) ,海保 隆2) ,鈴木紀彰1) ,福山悦男1) 緒言】EUS-FNAは低侵襲的な病理診断法として有用であり、 本邦において広く施行されている。しかしながら、経直腸的な EUS-FNAについての報告は限られたものである。今回、横行 結 腸 癌 術 後 の 経 過 観 察 中 に ダ グ ラ ス 窩 に 腫 瘤 が 出 現 し、 EUS-FNAにてダグラス窩再発と診断し切除し得た一例を報告 する。【症例】66才女性。貧血のため2008年10月に近医より紹 介となり、精査にて横行結腸癌と判明。当院外科で横行結腸切 除を施行され、T3N1M0 StageIIIaの最終診断となった。術後化 学療法を施行され経過観察されていたが、2012年10月の腹部 CTにてダグラス窩に約13mm大の腫瘤を認め、同部はPET-CT にてFDG異常集積像が見られた。ダグラス窩再発が疑われた が、切除を念頭に組織学的裏付けを得る目的で当科を紹介受診。 下部消化管内視鏡では直腸Raに軽度陥凹した発赤を伴う粘膜 下腫瘍様の隆起性病変を認めたが、生検では悪性所見は得られ なかった。十分な説明のもと経直腸的EUS-FNAを施行。施行 後には合併症を認めず、細胞診・組織診ともにadenocaricinoma の診断に至り切除が施行された。病理学的には、中分化管状腺 癌が大腸粘膜下層から漿膜下層に見られ、粘膜内での進展がな いことから、再発として矛盾しない所見であった。【結論】大腸 EUSは細径プローブでの施行が一般的であり、コンベックスを 用いたEUSは特にS状結腸から口側の病変には施行困難である。 経直腸観察であっても病変のオリエンテーションが付きにくく CT画像との対比が重要となり、また、FNAを行う際には感染の リスクをより考慮しなければならない。経直腸的EUS-FNAは 限られた状況での適応となるが、今回治療方針の決定に有用で あった症例を経験したので報告する。 40 抗凝固療法中に発症した横行結腸腸間膜内血腫の 1例 東海大学医学部 消化器外科 斉藤剛太,鈴木俊之,岡田和丈,田中 安田聖栄,貞廣荘太郎 彰,中郡聡夫,小澤壯治, 症例は79歳男性. 3日前からの右下腹部痛, 食思不振を主訴に前医 受診. 腹部単純CT検査, 腹部超音波検査にて右下腹部巨大腫瘤を 指摘され, 精査加療目的に当院紹介受診となった. 来院時, 腹部 は著明に膨隆し, 右腹部に軽度圧痛を伴う小児頭大の弾性硬の腫 瘤を触知し, 血液検査上はHb 5. 0g/ dlと高度貧血を認めた. 腹部造 影CT検査で, 辺縁のみに造影効果を伴う, 右腎腹側から膀胱右上 方にかけて広がる径約12cmの腫瘤性病変を認め, 腫瘤内部は濃度 が不均一であり血腫・壊死の併存が疑われた. 慢性心房細動, 僧房 弁逆流症に対する心臓手術の既往があり, ワーファリン内服によ る凝固異常(PT-INR 7. 08)を認めた. 血行動態は安定し, 腹膜刺 激症状はなかったことから, 入院とし保存的治療を開始した. 下 部消化管内視鏡検査で, 横行結腸肝弯曲部寄りに, 中心に深ぼれ の陥凹を伴う半周性の粘膜下腫瘍様病変を認めた. 陥凹部からの 生検では正常大腸粘膜と肉芽組織のみであった. 触診上, 腫瘤は 徐々に縮小した. 第20病日の腹部CT検査では腫瘤径は約6cmと縮 小を認めた. 下部消化管造影検査では腫瘤内部に造影剤の流出が あり, 腸管内腔と交通していたため, 手術を施行した. 開腹時, 腹 腔内には中等量の血性腹水を認め, 上行結腸から横行結腸右側の 腸間膜内に後腹膜と強固に癒着した腫瘤を触知した. 悪性腫瘍が 否定できなかったため, 右半結腸切除術およびD2郭清を施行し た. 切除標本で, 腫瘤の腸管内腔面は正常粘膜に覆われ, 割面で は薄い被膜を有し, 内部は黄白色調の部分と暗赤色調の部分とが 混在しており, 明らかな充実性成分は認められなかった. 病理学 的には肉芽腫, 血管炎, 血管閉塞, 憩室などの出血の原因となる 病変は認められず, 悪性所見もなかった. 以上から, ワーファリ ン内服に伴う凝固異常により何らかの原因で腸間膜内に血腫を形 成し管腔に穿破したものと考えられた. 抗凝固療法が原因とされ る大腸腸間膜内血腫は比較的まれであり, 文献的考察を加え報告 する. FNA,直腸 ― 31 ― 大腸腸間膜内血腫,抗凝固療法 41 5-aminosalicylic acid( 5-ASA) (pH依存性徐放剤)投 与により間質性肺炎を発症した潰瘍性大腸炎の1例 43 大腸内視鏡的粘膜切除術の翌日に急性胆嚢炎を発症 した一例 横浜市立みなと赤十字病院 消化器内科1) ,同 呼吸器内科2) 池宮城秀和1) ,安田圭吾1) ,渡辺 翔1) ,浅川剛人1) ,金城美幸1) , 高浦健太1) ,鈴木雄一郎1) ,小橋健一郎1) ,深見裕一1) ,永山和宜1) , 先田信哉1) ,有村明彦1) ,片 佑樹2) 国立病院機構西埼玉中央病院 消化器科1) , 東京慈恵会医科大学 消化器・肝臓内科2) 宮崎亮佑1) ,菅原一朗1) ,及川紘太郎1) ,中尾 裕1) ,吉田幸永1) , 根岸道子1) ,二上敏樹1) ,田尻久雄2) 症例】60歳代、男性【既往歴】胃潰瘍、逆流性食道炎【常用薬】 オメプラゾール【喫煙歴】30本/ day【現病歴】H26年9月血便を 主訴に当科外来を初診。下部消化管内視鏡で直腸より連続する 不整形びらんを全結腸に認め、病理所見で陰窩膿瘍と高度の炎 症細胞浸潤を認めたため潰瘍性大腸炎と診断された。9月下旬 より5-aminosalicylic acid( 5-ASA、pH依存性徐放剤) 3000mg/ day 内服が開始となったが、11月初旬に乾性咳嗽が出現。近医で抗 菌薬内服で加療されたが改善なく当院呼吸器内科を紹介受診と なった。胸部CTで両側肺野にスリガラス陰影を認め、酸素化 不良を伴っていたため間質性肺炎の精査加療目的に同科に緊急 入院となった。入院時の血液所見で白血球24100/ mm3、白血球 分画で好酸球が41%と著明な上昇を認めていた。5-ASA内服後 の好酸球上昇のため、薬剤性の間質性肺炎が疑われ入院後より 5-ASA内服が中止となった。内服中止のみで症状は速やかに改 善を認めたため第7病日で退院となった。退院後に5-ASAによ るリンパ球幼若化試験(DLST)を施行したところ陽性であり、 臨床経過と併せて5-ASAによる間質性肺炎と診断された。【ま とめ】5-ASAは炎症性腸疾患に最も使用されている薬剤の一つ である。5-ASAはsalazosulfapyridine(SASP)の副作用発現部位 と考えられているsulfapyridineを除いた薬剤で副作用は少ない とされている。今回、5-ASA投与により薬剤性間質性肺炎を発 症した潰瘍性大腸炎の一例を経験したため文献的考察を加えて 報告する。 症例】78歳男性【既往歴】高血圧、高脂血症、胃食道逆流症【現 病歴】前医における腹痛精査の下部消化管内視鏡検査でポリー プを指摘され、当院へ紹介となった。腹痛は受診の約1ヶ月前 に2回認められ、数時間続くも自然に消失した。前医では上部 消化管内視鏡検査や腹部CTが行われたが、軽度の食道裂孔ヘ ルニアと逆流性食道炎( LA分類 grade M) を認めるのみであっ た。受診時は腹部症状なく、採血での炎症所見もみられなかっ た。初診日の約3週間後に大腸内視鏡的粘膜切除術( endoscopic mucosal resection; EMR) を施行することとなった。【入院後経 過】上行結腸に径10mmのIsp病変、上行結腸( 肝彎曲寄り) に径 5mmのIsp病変が認められ、それぞれEMRを行い、創部はクリッ プにて縫縮した。とくに問題なく治療を終えた。EMR翌日の 昼過ぎに突然、上腹部の非常に強い痛みが出現した。腹部CT を施行したところ、胆嚢腫大と壁肥厚および胆嚢壁漿膜側の輪 郭不明瞭所見が確認された。採血では白血球数とCRP値の上昇 が み ら れ た。以 上 か ら 急 性 胆 嚢 炎 と 診 断 し、禁 食・補 液・ SBT/ CPZ 2g/ 日による治療を開始した。同日夕には悪寒につづ いて39℃台の発熱も出現した。EMR2日後の腹部超音波検査で は、急性胆嚢炎の所見と胆泥が検出された。保存的加療にて EMRから12日後に退院となった。 【考察】大腸EMR翌日に激し い腹痛が出現したことから、大腸穿孔を疑ったが、急性胆嚢炎 であることが判明した症例。急性胆嚢炎発症の原因が大腸 EMRであるのか、たまたまEMR後に急性胆嚢炎が発症したの かを確定することは難しい。しかし、EMR部位からの炎症波及 などの可能性は否定できず、また、Colonoscopy後の急性胆嚢炎 発症例に関する国内外からの報告も散見される。本症例は比較 的まれと考えられ、文献的考察を加えて報告する。 大腸EMR,急性胆嚢炎 5-ASA,間質性肺炎 42 大腸癌による腸閉塞を契機に診断したGardner症候 群の一例 東京女子医科大学東医療センター 内科1) ,同 外科2) , 同 病理診断科3) 木村綾子1) ,大野秀樹1) ,岡部ゆう子1) ,入村峰世1) ,高橋 彩1) , 齋藤壽仁1) ,中山真緒2) ,吉松和彦2) ,藤林真理子3) はじめに】大腸癌の中には若年発症や他臓器の重複癌合併などの 特徴を有する遺伝性大腸癌が含まれているが、日常診療で遭遇す る頻度は低く、広く認知されているとは言い難い。今回当科にて 大腸癌による腸閉塞を契機に診断した若年者のGardner症候群の1 例を経験したため報告する。 【症例】24歳、男性。既往歴としては、12歳時に歯牙腫切除、18歳 時にてんかんを発症しバルプロ酸内服中であった。家族歴として は父に糖尿病、狭心症、母に甲状腺腫瘍があり、祖母が78歳で大腸 癌のため死亡していた。今回、上腹部痛、嘔吐、水様性下痢などを 主訴に当院救急外来を受診した。胃腸炎に準じた加療にて一旦改 善を認めたが、3日後に腹痛及び頻回嘔吐が出現し、消化器外来を 受診した。腹部X線写真及び造影CT施行したところ、大腸イレウ スの所見を認めたため緊急入院となった。イレウス管を留置し症 状が改善した後、下部消化管内視鏡検査を施行した。その結果、 横行結腸肝弯曲付近に2型の腫瘍性病変と観察範囲内の大腸に約 100個以上のポリープを認め、家族性大腸腺腫症及び横行結腸癌と 診断した。さらに全身の精査を進めたところ、多発性胃底腺ポ リープ、甲状腺腫瘍、また多発性皮下軟部腫瘍、頭蓋骨や下顎骨の 多発骨腫、歯牙異常を合併しておりGardner症候群と診断した。全 身状態改善後に外科転科し、結腸亜区域切除術+胃局所切除+リ ンパ節郭清を施行した。術後診断はT4N2M1 ( H0, P2, lym#206) , pStage IVであった。その後、術後化学療法としてXELOX 計8コー スを行ない経過観察となった。 【考察】本症例の家族歴は典型的ではなかったが、内視鏡検査所見 及びその他の全身所見と併せGardner症候群と診断した。若年者の 大腸癌では常に遺伝性大腸癌を念頭に置き、全身の合併症の検索 を進めることが重要である。 44 肝実質に多数のcomet tail artifactを認めた先天性肝線 維症の一例 千葉大学医学部附属病院 消化器内科1) ,同 検査部2) 清野宗一郎1) ,丸山紀史1) ,小林和史1) ,近藤孝行1) ,関本 桑野美智子2) ,横須賀收1) ,野村文夫2) 匡1) , 先天性肝線維症は、常染色体劣性遺伝による稀なびまん性肝 疾患である。Ductal plateの形成異常を病因とし、胆管の嚢状拡 張を特徴としたCaroli病の合併を認めることもある。今回我々 は、超音波検査で肝実質に多数のcomet tail artifactを認め、非嚢 状拡張を呈する胆道異常を合併した先天性肝線維症を経験した ので報告する。 症例は36歳、男性。2009年、前医での胃透視検査で食道静脈 瘤を指摘された。原因不明の肝疾患と診断され、内視鏡的硬化 療法を施行されたが治療効果に乏しく、静脈瘤治療ならびに肝 疾患の精査目的にて当院へ紹介となった。入院時の超音波検査 では、肝縁に軽度の鈍化を認めたが、肝表面は平滑で、肝実質 に多数のcomet tail artifactを認めた。肝生検組織では、門脈域に 高度な線維増生が認めたが、結節形成を伴わず先天性肝線維症 と 診 断 さ れ た。一 方、入 院 時 の 血 液 検 査 で ALP 737IU/ L、 γ-GTP 97IU/ Lと胆道系酵素の上昇がみられたため、精査目的 で MRCP を 施 行 し た。胆 石 の 合 併 や 胆 管 炎 の 既 往 は な く、 Caroli病に特徴的な嚢状胆管像は認められなかったが、肝内胆 管に多発性狭窄や口径不同像が観察された。肝生検での組織像 にも末梢胆管の拡張や増生所見を認めたことから、超音波上で のcomet tail artifactは末梢胆管異常に対応したものと考えられ た。 ここで一般に、超音波で肝に多数のcomet tail artifactが観察さ れた場合、von Meyenburg complexesが代表的な疾患として知ら れるが、本例では組織所見などからその関与は考えにくいと思 われた。一方、Caroli病で非嚢状拡張例の報告もあることから、 本例では先天性肝線維症に合併したCaroli病の可能性も念頭に おいて診療を継続している。今回の経験例の診断については、 同様の症例のさらなる蓄積が必要と考えられた。 家族性大腸腺腫症,Gardner症候群 ― 32 ― 先天性肝線維症,comet tail artifact 45 47 肝細胞癌と副腎癌の重複癌の一切除例 横浜市立大学 消化器・腫瘍外科1) ,同 内分泌・糖尿病内科2) , 同 病理部3) 澤田 雄1) ,熊本宜文1) ,中山岳龍1) ,浅野史雄1) ,大田洋平1) , 本間祐樹1) ,森隆太郎1) ,松山隆生1) ,武田和永1) ,小西裕美2) , 澤住知枝3) ,山中正二3) ,遠藤 格1) 症例は40歳台の男性。B型肝硬変のためのスクリーニングのCT 検査で、肝S6および右副腎に腫瘤を認め、精査加療目的に当科 紹介受診となった。血液生化学検査では、血小板9. 2万/ μl、と 低下、AST 39 IU/ μl、ALT 46 IU/ μlと 肝逸脱酵素の上昇を認 めた。腫瘍マーカーは、AFP 3093 ng/ ml、 CEA 10. 1 ng/ ml、 CA19-9 67 U/ mlと上昇を認めた。腹部造影CT検査では、肝S6 に3cm大、右副腎に4cm大の動脈相で淡く造影され平衡相で wash-outする腫瘤を認めた。内視鏡検査では、消化管に悪性腫 瘍は認めなかった。ホルモン検査では褐色細胞腫は否定された が、デキサメタゾン1mgの投与でコルチゾール産生が抑制され るものの、デキサメタゾン8mgの投与ではコルチゾール産生が 抑制されなかったため、クッシング症候群は否定できなかった。 以上より、肝細胞癌T2N0M0 Stage 2(原発性肝癌取扱い規約第 5版)および機能性副腎腫瘍の重複腫瘍と術前診断し、手術の方 針とした。肝腫瘤に対しては肝S6/ 1部分切除を施行、右副腎腫 瘤は肝実質に浸潤する所見を認めたため、右副腎摘出・肝S6部 分合併切除を施行し、周術期はステロイドカバーを行った。術 後病理診断で、肝腫瘍はAFP陽性、Glypican-3陽性であり、肝細 胞癌と診断した。副腎腫瘤は、細胞異型は比較的強くないもの の肝被膜に浸潤する腫瘍であり、MelanA陽性、Hepatocyte陰性 で あ る こ と か ら 副 腎 癌 と 診 断 し た。以 上 よ り、肝 細 胞 癌 (T2N0M0 Stage 2)と副腎癌の重複癌と最終診断した。また非 腫瘍部肝は、肝硬変であった。肝細胞癌に副腎病変を認めた場 合は、肝細胞癌の副腎転移が最も疑われる。しかし、肝細胞癌 と副腎癌の重複癌はまれではあるが、切除によって根治が期待 できる可能性もあり、念頭に置くべきと考えられた。 慶應義塾大学病院 一般・消化器外科 下田啓文,日比泰造,板野 理,阿部雄太,篠田昌宏,北郷 八木 洋,皆川卓也,北川雄光 悪性下大静脈症候群に対して下大静脈ステント留置 が奏効しADLの改善に寄与した1例 東金九十九里地域医療センター 東千葉メディカルセンター 内科1) , 同 消化器内科2) , 地域医療機能推進機構千葉病院 消化器内科3) , 東金九十九里地域医療センター 東千葉メディカルセンター 放射線科4) , 千葉大学医学部附属病院 放射線科5) 亀崎秀宏1) ,大山 広2) ,黒澤 浄3) ,石原 武2) ,雑賀厚至4) , 東出高至5) 背景】大静脈症候群は、大静脈狭窄・閉塞により静脈環流障害が引き起こされ ることに起因する症候群である。肝臓癌などに伴う悪性下大静脈症候群は、下 肢の浮腫や腹水によるADLの著しい低下が問題とはなるものの、緊急性に乏し いことが多い。また、低下したADLを理由に積極的治療の適応外と判断され、 保存的治療の方針となっていることも多い。【目的】当院において、肝臓癌に伴 う悪性下大静脈症候群に対して下大静脈ステント留置が奏効しADLの改善に 寄与した1例を経験したので報告・検討する。【症例】82歳女性。もともとは Performance Status(PS)2であった。某年5月下旬より下肢浮腫の増悪を自覚さ れADLは徐々に低下していった。6月7日、歩行困難(PS 4)となり近医より紹 介され当院緊急入院となった。精査の結果、肝臓癌、その圧排に伴う下大静脈 狭小化、遠隔リンパ節転移を指摘された。全身検索にて他臓器に腫瘍は指摘さ れず、腫瘍は肝原発と考えられた。癌治療は困難と判断され、緩和治療の方針 となった。下肢浮腫の原因として悪性下大静脈症候群が考えられ、下大静脈ス テント留置術が検討された。腹部超音波検査にて、下大静脈の狭窄長は6cm、 壁外性に圧排され、最小内腔径は2. 5mmに狭小化していた。左肝静脈は温存さ れ血流方向は順流であった。門脈本幹の血流方向も順流であった。心肺腎機能 も保たれており、6月20日、下大静脈ステント留置術を施行した(day 1)。静脈 用に市販されたステントは無いため、気管用スパイラルZステント(φ18mm× 6cm)を留置した。本症例では、永続的な抗血栓療法は施行しなかった。体重 は67. 0kg(day 1)→52. 4kg(day 8)→44. 0kg(day 15)と順調に減少、下肢浮腫 は消失、ADLも室内歩行可能なレベル(PS 3)まで回復、退院可能な状態となっ た。その後、day 34に死亡されたが下肢浮腫の再燃は無かった。死後肝生検の 標本の検討では、背景に肝硬変のある混合型肝癌が疑われた。【結語】悪性下大 静脈症候群に対する下大静脈ステント留置術は、治療の選択肢として考慮し得 るものであると考える。 実, 症例は39歳女性.以前より自覚していた上腹部膨満感の増悪・ 腹痛を主訴に近医を受診.画像上巨大肝腫瘍を認め当院紹介受 診となった.造影CT・SPIO-MRIで肝S4を中心とした内部造影 不良,辺縁多血性の約10cm大の巨大な腫瘍を認めた.中心部壊 死を伴う多血性腫瘤であり,悪性疾患が否定できなかったため 術前PTPEを行い,手術の方針となった.術中迅速生検では腺 癌が疑われ,肝左3区域切除,肝外胆管切除,胆管空腸吻合術を 施行した.腫瘍は肝S4からS5に相当する領域を首座とし,肝漿 膜面に向かって粗大顆粒状・結節状に突出する被膜形成を伴わ ない弾性硬の大きな腫瘤であった.病理所見では,腫瘍中心部 に一部壊死を伴う線維性瘢痕様構築を認め,辺縁領域に斑状の 出血を介在させたやや粘稠な灰白色を呈していた.組織学的に は腫瘍は粘液産生性を示し,CK7+,CK19+,hepatocyte-であり 肝内胆管癌の診断となった.本腫瘍は腫瘤形成性でありなが ら,乳頭状構築を主体とした増殖形態を示していた.取り扱い 規約では乳頭状腺癌が存在しないため高分化腺癌となったが、 若年者に発生したことに加えてこのような形態をとる肝内胆管 癌についての報告例は極めて稀であり,文献的考察を加えて報 告する. 肝細胞癌,重複癌 46 術前診断が困難であった乳頭状発育を示す腫瘤形成 性肝内胆管癌の1例 肝内胆管癌,診断 48 Upside down stomachを呈する食道裂孔ヘルニアに対 しメッシュを用いて腹腔鏡下手術を施行した2例 獨協医科大学 臨床研修センター1) ,同 第一外科2) 飯田茉李1) ,中島政信2) ,百目木泰2) ,高橋雅一2) ,横山 山口 悟2) ,佐々木欣郎2) ,加藤広行2) 悠2) , 背景】近年、胃食道逆流症に対する腹腔鏡下手術が標準化され つつあるが、軸捻転を起こした胃が縦隔内に逸脱する、いわゆ るupside down stomachに対する腹腔鏡下手術の報告は比較的少 ない。今回我々は、upside down stomachを呈する食道裂孔ヘル ニアに対してメッシュを使用した腹腔鏡下手術を行い、良好な 経過を得た2例を経験したので報告する。【症例1】62歳、女性。 平成26年12月に腹痛が出現し、近医を受診。上部消化管造影検 査( UGI) 、上部消化管内視鏡検査( EGD) 、注腸造影およびCTを 施行され、横行結腸の脱出を伴うupside down stomachを呈する 食道裂孔ヘルニアと診断された。その後手術目的に当科を紹介 され、平成27年3月 腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア修復術を施行。 ヘルニア嚢を可及的に切除し、胃を腹腔内に環納。腹部食道周 囲を剥離してtapingしたのち食道裂孔周囲を露出した。その後 横 隔 膜 脚 を 縫 縮 し、そ の 上 に Paritex(TM) Hiatal Mesh 3D ( PCO2H3) を逢着した、さらに術中内視鏡で腹部食道の通過性 の確認を行いながら、Nissen法にて噴門形成を施行した。術後 第2病日より経口摂取を開始し、経過良好にて第11病日に軽快 退院した。【症例2】58歳、女性。平成24年ごろから時々嘔吐症 状が出現。平成26年12月近医を受診しUGI、EGDおよびCTを施 行され、upside down stomachを呈する食道裂孔ヘルニアと診断 された。その後手術目的に当科を紹介され、平成27年3月 腹 腔鏡下食道裂孔ヘルニア修復術を施行。症例1と同様に腹腔鏡 下食道裂孔ヘルニア修復術(Nissen法)を施行した。術後第3病 日より経口摂取を開始。その後の経過は問題なく、第7病日に 軽快退院した。【考察】upside down stomachの治療は手術が第一 選択であるが、滑脱型食道裂孔ヘルニアと比較して手術難易度 が高く、腹腔鏡下手術の報告は比較的少ない。当科で経験した 2手術例について文献的考察を交えて報告する。 悪性下大静脈症候群,Budd-Chiari症候群 ― 33 ― 食道裂孔ヘルニア,腹腔鏡下手術 49 腹膜播種により経口摂取不能となった切除不能進行 胃癌に対してSOX療法が奏功した1例 筑波記念病院 消化器内科1) , 筑波大学附属病院 消化器内科2) 沼田るり子1) ,添田敦子1) ,小林真理子1) ,越智大介1) ,杉山弘明1) , 本橋 歩1) ,山本祥之2) ,中原 朗1) ,池澤和人1) ,兵頭一之介2) 背景】切除不能進行胃癌の生存期間は、化学療法の進歩により 13ヶ月前後に延長したが、腹膜播種による大量腹水やイレウス があった場合の予後は悪く、QOLの低下も著しい。腹膜播種に より大量腹水・麻痺性イレウスをきたしたが、SOX療法によっ て腹水の減少および麻痺性イレウスの改善が得られ、経口摂取 可能となった症例を経験したので報告する。【症例】60代男性 【主訴】大量腹水【経過】前医より腹水を主訴に紹介、腹水穿刺 の細胞診でclass V adenocarcinomaが認められ、上部消化管内視 鏡では体上部後壁に2. 5cm大のtypeIV病変が認められた。病理 所見はsignet ring cell carcinoma(HER2 score 0)であった。胃癌 stage IVと診断し化学療法の方針となった。麻痺性イレウス・ 腎障害もあったため,初回化学療法はSP療法ではなくnab-PTX を 選 択 し た。2 コ ー ス を 行 っ た が 効 果 に 乏 し か っ た た め、 Weekly PTXに変更3コース施行したところ、改善を得られ退院 となった。しかし再度大量腹水・麻痺性イレウスが出現したた めPDと診断、FLを導入し2コース施行したが、改善を認めなかっ た。ご家族・ご本人に説明し、経口摂取不能であったが、SOX 療法を開始した。貧血が出現し輸血を少量行ったものの、その 他の有害事象は見られなかった。2コース後に経鼻胃管を抜去 し 食 事 を 開 始 し た。胸 腹 部 CT で は 腹 水 の 減 少 が 認 め ら れ, SOX療法が部分奏効したと考えられた。全身状態良好で昼・夕 2食の3分粥が安定して摂取可能となったため,3コース開始後 に退院,現在外来でSOX療法を継続している。【結語】胃癌腹膜 播種に対してSOX療法を導入し、経口摂取可能となった症例を 経験した。腹膜播種をきたした胃癌の患者の症状・QOLの改善 を目的として、SOX療法が選択肢になりうると考えられた。 51 横浜市立市民病院 消化器外科 宮本麻美,佐原康太,中川和也,高橋正純,石井洋介 症例は73歳男性. 既往歴,10年前に直腸癌及び肝転移に対して 低位前方切除術と拡大外側区域切除術を施行され,再発なく経 過した.黒色便を主訴に当院消化器内科を受診.血液検査上で BUN64,Hb10, 5と脱水と貧血を認め,消化管出血が疑われ,上 部消化管内視鏡で十二指腸下行脚に中心性潰瘍を伴う粘膜下腫 瘍を認めた.アルゴンプラズマ凝固法による焼灼後にクリップ で止血された.腹部CT検査では十二指腸下行脚の外側壁に均 一な造影効果のある腫瘤を認め十二指腸GIST( gastrointestinal stromal tumor) が疑われた.術後2日目,多量の下血を認め,Hb6, 8,収縮期血圧80mmHg台と出血性ショックの状態であり,内視 鏡的治療では止血困難なため緊急手術の方針となった.手術所 見では腫瘍は40mm大で十二指腸下行脚の右前壁に存在し,壁 外性に発育していた.十二指腸乳頭部とは離れていたため十二 指腸部分切除術を施行し横方向に層々縫合にて閉創した.肉眼 的に腫瘍は大きさ33×21×20mmで灰白色の充実性腫瘤で,病 理組織学的結果は軽度異型を示す紡錘形の細胞増殖を示し,免 疫組織学的染色ではCD64( +)とc-kit( +) ,desmin( −) ,S-100 ( −) で,核分裂像が明らかではないlow -gradeGISTと診断され た.GISTは,消化管間葉性腫瘍で最も頻度の高い腫瘍である. 発症部位は胃(50∼70%),十二 指腸・小腸(20∼30%),大腸 (5∼10%),食道(<5%) の順であり,自験例のような十二指 腸原発のGISTは 全体の約4, 5%と比較的稀である.さらに十 二指腸に おける発症部位は下行部が最も多く,以下水平部,球 部,上行部の順で多いとされる.医中誌で十二指腸粘膜下腫瘍 を検索すると過去5年間(2010∼2013年7月)で34例あり,その 内「十二指腸粘膜下腫瘍」+「出血」で検索すると5例と比較的 稀である.さらに出血を契機に発見された症例は5例中2例で あった.十二指腸GISTは比較的稀ではあるものの,出血性 ショックを来すことがあり,厳重な管理が必要であると思われ る. 胃癌,腹膜播種 50 出血,GIST 52 十二指腸原発明細胞肉腫の一例 東京慈恵会医科大学第三病院 消化器・肝臓内科 石川耕平,今井那美,上田 薫,岩久 章,小林 剛,木下晃吉, 小林裕彦,伏谷 直,木島洋征,小池和彦,西野博一 症例】76歳男性。【現病歴】生来健康であった。2014年10月ター ル便を認め、前医を受診した。上部内視鏡検査( GIF) にて十二 指腸癌が疑われ、当院に精査加療目的で転院となった。GIFで は十二指腸に中心潰瘍を伴う3型病変を認めた。病変部位より 生検し、十二指腸上皮間にクロマチン増加を伴う異型腫大核を 有する短紡錘形腫瘍細胞があり、免疫染色ではS-100、NSE、 Vimentin、CD10、c-kit陽性であった。免疫組織学的に明細胞肉 腫と診断した。胸腹部造影CTでは右心房内、左心室に造影欠 損、両副腎に造影効果に乏しい結節を認め、十二指腸原発の明 細胞肉腫、心・副腎転移T3N0M1 stage4と診断した。化学療法を 検討したが、患者が希望されないため、積極的治療を行わずに 経過観察している。【考察】明細胞肉腫は軟部組織より発生す る悪性黒色腫であり、消化管原発は非常にまれである。十二指 腸原発の腫瘍性病変自体頻度は低く、今回経験した十二指腸原 発明細胞肉腫は、大変貴重な症例と考え、文献的考察を加えて 報告する。 出血性ショックで緊急手術を施行した十二指腸粘膜 下腫瘍の一例 全 消 化 管 を 検 索 し 得 た Cronkhite-Canada 症 候 群 の 一例 防衛医科大学校病院 内科 21) ,同 光学医療診療部2) 西村弘之1) ,安江千尋1) ,内田なみ1) ,露木和彬1) ,冨岡 明1) , 中山花奈1) ,杉原奈央1) ,塙 芳典1) ,和田晃典1) ,堀内和樹1) , 吉松亜希子1) ,高城 健1) ,丸田紘史1) ,安武優一1) ,好川謙一1) , 渡辺知佳子1) ,高本俊介2) ,冨田謙吾1) ,穂苅量太1) ,永尾重昭2) , 三浦総一郎1) 症例】60歳台男性。平成26年1月頃より1日10行以上の水様性下痢が 出現し、半年間で約8kgの体重減少を認めた。4月に入ると爪甲の萎縮 や脱毛・味覚異常も見られるようになった。近医を受診し、止痢剤を 処方されるも改善なく7月に当科を受診された。血液検査では炎症反 応高値・低アルブミン血症・低ガンマグロブリン血症を認め、精査加 療目的で入院となった。【経過】爪甲の萎縮変形、頭皮脱毛、手指の皮 膚色素沈着等の外胚葉系の異常を認め、上下部消化管内視鏡検査では 胃・十二指腸・大腸にいくら状・発赤調の無茎性ポリープを大小多数 認めたため、Cronkhite-Canada症候群( CCS) と診断した。胃・十二指腸 粘膜から採取した検体の病理組織学的所見では浮腫状の間質変化・慢 性炎症細胞浸潤を伴う過誤腫性ポリープおよび腺管の嚢胞状拡張を認 め、CCSに矛盾しないものであった。α1アンチトリプシンクリアラ ンス陽性でタンパク漏出性胃腸症も合併していた。カプセル内視鏡・ 経口小腸内視鏡検査も行い、空腸はポリープの増生は認めなかったも のの浮腫状・白色顆粒状の粘膜を呈し、深部回腸には大小ポリープの 密生を認めた。経口小腸内視鏡検査後、bacterial translocationから敗血 症を合併してしまったため、免疫グロブリン製剤・抗菌薬投与を行い 軽快した。敗血症離脱後にCCSに対しPSL 40mgを投与開始した。PSL 投与後より下痢は著明に改善し血清アルブミン値も徐々に上昇傾向と なり、食事開始後の症状再燃は認めなかった。PSL開始後2週間で 30mgに漸減し、9月に退院となった。現在外来経過観察中だが、下痢 は消失し体重は増加、毛髪や爪甲の委縮変形は改善しており、PSL漸 減に伴う再燃は認めていない。全消化管を検索し得たCCSの1例を経 験したので若干の文献的考察を加え報告する。 明細胞肉腫,十二指腸原発 ― 34 ― タンパク漏出性胃腸症,ポリポーシス 53 小腸内視鏡で長期経過を観察しえた腸管症型T細胞 リンパ腫の一例 筑波大学附属病院 消化器内科1) ,同 消化器外科2) , 同 病理部3) 竹上直毅1) ,遠藤壮登1) ,金子 剛1) ,田島大樹1) ,江南ちあき1) , 小玉夏美1) ,瀬山侑亮1) ,今西真美子1) ,寺崎正彦1) ,奈良坂俊明1) , 溝上裕士1) ,兵頭一之介1) ,橋本真治2) ,中野雅之3) ,野口雅之3) はじめに】消化管原発悪性リンパ腫は全消化管悪性腫瘍のうち0. 5% とされる。このうち大部分はB細胞性であり、T細胞リンパ腫(腸管症 型T細胞リンパ腫・EATL)は極めて稀な疾患である。過去の報告では EATLの術前診断は困難で、その多くは進行例であり、先行するイレウ スなどの緊急手術にて診断される場合がほとんどである。今回我々は 病初期から長期経過観察が可能であったEATL症例を経験したので、 その臨床的特徴、内視鏡学的特徴につき報告する。【症例】64歳男性。 既往に膀胱がん、陽子線+BCG治療歴。20XX年10月より発熱、下血に て近医入退院を繰り返す。精査目的にて施行された内視鏡検査・造影 CTにて多発する深掘れ潰瘍からの小腸出血と判断した。潰瘍の形態 学的特徴から、ベーチェット病(BD)もしくはクローン病(CD)を疑 い、5ASA製剤・ステロイドにて加療を始め、下血・発熱は軽快した。 しかし翌1月に3度目の大量下血を認め転院。内視鏡的止血術、血管塞 栓術にて止血しえず、小腸部分切除が2度にわたり施行された。肉芽 種等の特異的所見は認められないものの、ステロイドによる治療を継 続して行った。その後、小腸内視鏡で経過観察したところ、潰瘍病変 はKerckling襞に沿った輪状の潰瘍瘢痕から、一部は円形の浅い潰瘍へ 変化し、徐々に不整形の深掘れ潰瘍に増悪していった。同年8月に再 度大量の下血を認め、3度目の小腸部分切除が施行された。その切除 検体にて核異型を呈するリンパ球が全層性に浸潤する像を認め、悪性 リンパ腫が疑われた。免疫組織化学染色でCD3陽性であり、EATLと 診断された。以降、化学療法導入し、治療継続している。【考察】全消 化管のうち小腸に好発するとされるEATLは、小腸内視鏡やカプセル 内視鏡の普及により増加が予想される疾患である。本症は初発症状か らの長期経過を小腸内視鏡など各種検査にてフォローアップできた貴 重な症例である。 55 大森赤十字病院 辻健太郎,関志帆子,栗原大典,須藤拓馬,芦苅圭一,河野直哉, 鶴田晋佑,高橋昭裕,千葉秀幸,井田智則,諸橋大樹, 後藤 亨 症例は86歳男性。Stage4のS状結腸癌の術後化学療法として、 平 成 25 年 1 月 よ り テ ガ フ ー ル・ウ ラ シ ル・ホ リ ナ ー ト 療 法 (UFT/ UZEL)を継続中であった。平成26年12月下旬に感冒で 近医を受診し、抗生剤を処方された。その後多量の水様性下痢 が出現し、腹部膨満感と全身性浮腫を伴ったため、精査加療目 的に当科入院となった。腹部CTにて上行結腸から直腸にかけ て連続した著明な腸管壁肥厚と腸管拡張を認めた。Clostridium difficile(以下CD)毒素陽性で、下部消化管内視鏡検査にて直腸 に偽膜を認めたことから、偽膜性腸炎と診断した。入院後は全 ての内服薬を中止し、偽膜性腸炎の診断後から経口バンコマイ シン、乳酸菌製剤の投与を開始した。治療開始後、下痢や熱型、 炎症反応は改善傾向にあったが、腸管拡張による腹部膨隆は持 続し、治療開始5日目に嘔吐が出現し経口摂取不可能となった。 胃管からバンコマイシンを投与し、治療開始8日目からバンコ マイシンと乳酸菌製剤を増量し、計14日間投与した。投与終了 後、経口腸管洗浄薬にて腸管洗浄し下部内視鏡検査を施行した ところ、大腸粘膜の偽膜は消失しており、腸管内ガスを吸引し て減圧を行った。その後腹部膨隆は徐々に改善し、またCTに て腸管壁肥厚も消失しており、60日目に軽快退院となった。本 症例は、抗生剤投与にて発症した偽膜性腸炎が、抗癌剤の影響 で重篤化したものと考えられた。 偽膜性腸炎,UFT/ UZEL T細胞リンパ腫,小腸内視鏡 54 H. pylori除菌治療により退縮した大腸原発MALTリ ンパ腫の1例 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 消化器肝臓内科 岸本勇将,遠藤大輔,堀内宏倫,富田陽一,永野智久,關 信嘉, 杉田知典,会田雄太,板垣宗徳,安部 宏,須藤 訓, 相澤良夫 症例】83歳女性【主訴】下腹部痛【既往歴】20歳虫垂炎手術, 45歳 子宮筋腫手術【現病歴】2013年12月より間欠的な下腹部痛を自覚 し,改善を認めないため、2014年1月に当院受診となった.【身体所 見】BP;137/ 83mmhg, HR;115bpm, BT;36. 2度, 身長;149cm, 体重55. 0kg, 眼瞼結膜貧血なし, 表在リンパ節触知せず, 胸部;異常なし, 腹 部;軟, 下腹部に軽度圧痛認める. 腫瘤触知無し. 【検査所見】WBC 7800/ μ l, Hb 12. 4g/ dL, Plt 18. 6 × 104 / μ L, AST 28IU/ l, ALT 18IU/ l, LDH 221IU/ L, CRP 0. 1mg/ dL, S-IL2R 339U/ ml【経過】受 診時, 下腹部痛以外に下痢, 嘔吐などの消化器症状は認めず, 採血, 腹部単純CTでも有意な所見は認めなかった. 下部内視鏡検査( 以下 CS) を施行したところ, 盲腸に8mm, 20mm, 下部直腸に5mm, 12mm の黄白色調の粘膜下隆起病変を認めた. それぞれ生検を施行した ところ、centrocyte-like cellの浸潤性増殖, lymphoepitherial lesionを 認め, 免疫染色ではCD20( +) , CD79α( +) , CD45RO( +) , CD3( ±) , CD5( -) , CD10( -) , bcl2( +) であり, MALTリンパ腫の診断に至っ た. 上部内視鏡検査ではMALTリンパ腫を疑う所見は認めなかった が, opened typeの萎縮性胃炎を認め, 胃生検組織による迅速ウレ アーゼ試験にて陽性であった. よって, 十分な説明と同意の上, 2014年2月よりH. pylori除菌治療を施行し, 尿素呼気試験で陰性を 確認した. 除菌1ヶ月後, 4ヶ月後のCSでは粘膜下隆起の縮小は認め なかったが, 10ヶ月後CSでは盲腸、下部直腸の粘膜下隆起は全て消 失した.【考察】大腸原発MALTリンパ腫は大腸悪性腫瘍の1%未満, 消化管原発悪性リンパ腫の3-15%と比較的稀な疾患である. 本邦 では大腸原発MALTリンパ腫に対しては手術療法、化学療法が中 心であったが, 近年, 胃MALTリンパ腫と同様に, 除菌治療の有効性 が報告されている. 今回, 我々は除菌治療により著明な退縮を認め た大腸原発MALTリンパ腫の1例を経験したので、若干の文献的考 察を加えて報告する. UFT/ UZEL内服中に発症した、著明な腸管壁肥厚と 腸の拡張が遷延した偽膜性腸炎の1例 56 術前に診断し得た虫垂憩室炎の1例 大森赤十字病院 外科1) ,同 検査部2) 鎌倉大輔1) ,佐々木愼1) ,石丸和寛1) ,寺井恵美1) ,金子 中山 洋1) ,渡辺俊之1) ,坂本穆彦2) 学1) , 症例は生来健康な41歳、男性。心窩部痛を主訴に当院救急外来 受診した。バイタルサインは体温36. 3℃、血圧93/ 64mmHg、脈 拍56回/ 分、経皮的動脈血酸素飽和度99%(室内気)と安定して おり、検査所見は、WBC10400/ μl、CRP0. 08mg/ dlと軽度の炎 症所見がみられた。腹部所見では平坦・軟で右側腹部に圧痛・ 反跳痛を認めた。明らかなMurphy徴候やMuBurney点の圧痛は なかった。腹部CT検査では10mm大に腫大した虫垂を認め、周 囲の脂肪織濃度上昇を伴っていたが明らかな穿孔所見は認めな かった。また虫垂を含めて盲腸∼上行結腸にかけて多数の憩室 を認めた。以上より憩室を伴う急性虫垂炎の診断で同日緊急手 術を施行した。まず腹腔鏡で開始し、内部を観察してみると多 数の憩室を伴う盲腸は確認できたが外側との癒着の影響により 可動性が悪く虫垂の同定が困難であり、開腹手術に移行した。 盲腸から回腸末端にかけて授動を行った。虫垂は盲腸から上行 結腸に癒着しつつ先端は肝下面の方まで伸びていた。摘出した 虫垂を観察すると3箇所の仮性憩室を認め、うち1箇所は穿孔し ていた。術後経過は軽症の麻痺性イレウスを生じたがその他は 問題なく12PODに軽快退院した。虫垂憩室の穿孔率は高く有症 状のある虫垂憩室では手術を選択すべきであると考えられてい る。しかし、画像上その診断率は難しい。今回我々は本症例の 経験を踏まえ、虫垂憩室の診断について文献的な考察を踏まえ て報告する。 MALTリンパ腫,除菌治療 ― 35 ― 虫垂炎,虫垂憩室 57 巨大憩室で形成された腸石の脱落によりイレウスを 引き起こした一例 順天堂大学 消化器内科 伊志嶺洋平,浅岡大介,廣本貴史,大久保捷奇,柿原千絵子, 田島 譲,竹田 努,村上 敬,斉藤紘昭,青山友則,長田太郎, 渡辺純夫 症例】72歳男性【主訴】腹痛【既往歴】急性冠症候群に対し冠 動脈バイパス術,腹部大動脈瘤ステント留置術【現病歴】以前 よりCTで盲腸近傍に腸石を認めていた.2013年11月下旬頃か ら腹部の違和感を自覚し始め,2日後から腹痛の出現,排便の消 失を認めた.1週間後より排ガスも消失したため,自宅にて浣 腸施行するも排便認めず近医受診し,イレウスの診断となり当 院救急外来受診し精査加療目的に入院となった.【経過】腹部 造影CT施行し,下行結腸に4cmの腸石,口側腸管の拡張を認め た.以前のCTと比較し,盲腸の巨大憩室で形成された腸石が 脱落し下行結腸で嵌頓したと考え,同日緊急下部消化管内視鏡 施行した.下行結腸に腸石を認め,鉗子・スネアを用いて破砕 し除石した.閉塞部位には浅い潰瘍を認めていたが検査後より 排便認め腹部症状も改善したため,翌日より食事開始したが症 状の再燃も認めず,腹部X線所見でも腸管ガス貯留像の改善を 認めた.第4病日に注腸検査施行し盲腸に巨大憩室を認めた. 第7病日に再度,下部消化管内視鏡施行し盲腸に巨大憩室を認 め,以前認めた潰瘍の部位から生検施行したが,炎症所見のみ であり悪性所見は認めなかった.その後経過良好であり第9病 日に退院となった.【考察】3cmを超える巨大大腸憩室は,開口 部が比較的大きなものでは憩室内に貯留した腸石や便塊の落下 によるイレウスをきたしうることも念頭に置き,腸石による腸 閉塞と診断した場合には速やかに内視鏡による除石を行うべき であると思われた.本邦での巨大憩室の報告は28例であり,そ のうちイレウスを生じた症例は3例のみで,内訳は上行結腸が2 例,S状結腸が1例であった.巨大憩室で形成された腸石の脱落 によりイレウスを引き起こした一例を経験したので文献的考察 を加え報告する. 腸石,巨大憩室 58 餅による食餌性イレウスに対し保存的治療で軽快し た1例 59 胃未分化癌の家族歴を有しSMAD4 の変異を伴う若 年性ポリポーシス/ 遺伝性出血性末梢血管拡張症複 合症候群の1 例 東京慈恵会医科大学附属柏病院 消化器・肝臓内科1) , 同 内視鏡部2) 神岡 洋1) ,高見信一郎1) ,伊藤善翔1) ,斎藤恵介1) ,小林寛子1) , 金井友哉1) ,松本喜弘1) ,高倉一樹1) ,小田原俊一1) ,湯川豊一1) , 梶原幹生1) ,内山 幹1) ,小山誠太2) ,月永真太郎2) ,安達 世2) , 荒川廣志2) ,小井戸薫雄1) ,大草敏史1) 症例】22歳、女性。幼少期から鼻出血を繰り返していた。2014年9月、咳 嗽及び生理不順にて当院呼吸器内科・産婦人科外来受診。気管支喘息、続 発性無月経と診断されたが、その際の採血にてHb4. 9g/ dlと著明な貧血を 認 め、血 便 を 認 め て い た こ と か ら 精 査 目 的 で 当 科 に 入 院 と な っ た。 RCC-LR輸血・鉄剤・止血剤投与にて貧血は改善を認めた。第4病日に施行 した下部消化管内視鏡検査にて全大腸に易出血性の多発ポリープを認め た。同病変からの出血、および頻回の鼻出血による貧血と診断した。また 第5病日に施行した上部消化管内視鏡検査では血管拡張症と胃幽門前庭に 2個の小ポリープが認められた。消化管ポリポーシスが疑われ、第11病日 に小腸造影検査、第14病日にカプセル内視鏡検査を施行するも、小腸内に は特記すべき所見は指摘されなかった。家族歴として父が45歳時に遺伝 性出血性末梢血管拡張症(HHT) ・肺動静脈奇形・多発脾動脈瘤を伴う進行 胃癌(リンパ節・小脳転移、髄腔内播種)にて他界しており、大腸ポリー プ治療歴もあったことから遺伝性が疑われた。家族歴・頻回の鼻出血・上 部消化管内視鏡検査で胃内に血管拡張症を認め、Curacao基準に基づき本 症例もHHTと診断した。HHTに合併する消化管ポリポーシスとしては、 SMAD4遺伝子の変異を伴う若年性ポリポーシス( JP) が報告されている。 本症例もSMAD4の遺伝子解析を行ったところ、exon8, codon361にc. 1081C >T, p. R361Cのミスセンス変異が認められ、JP/ HHT合併症候群と確定診 断された。【考察】若年性ポリポーシスと遺伝性出血性末梢血管拡張症は それぞれが比較的稀な遺伝性疾患であるが、近年SMAD4遺伝子変異によ り生じるJP/ HHT合併症候群の疾患概念が確立され、海外で約40家系が報 告されている。本邦では2013年に1例が報告されているのみの希少な疾患 であり、文献的考察を加え報告する。 若年性ポリポーシス/ 遺伝性出血性末梢血管拡張症複合症候群, SMAD4 60 クローン病の治療中に腫瘍マーカー上昇を契機にみ つかった横行結腸癌の1例 東京女子医科大学 消化器内科 笠間江莉,児玉和久,新田祐樹,小林亜也子,赤尾潤一,大森鉄平, 小木曽智美,徳重克年 杏林大学医学部外科学教室 消化器・一般外科 中山快貴,正木忠彦,小嶋幸一郎,高安甲平,吉敷智和,渡邉武志, 鈴木 裕,松岡弘芳,阿部展次,森 俊幸,杉山政則 症例】65歳、女性。糖尿病・高血圧合併あり、内服加療中であっ た。某年1月上旬、義歯を装着せずに、餅5個を摂取した。翌日 より臍周囲の腹痛が出現し、10回ほど嘔吐した。症状改善を認 めないため救急要請、当院へ搬送となった。来院時の血圧は 166/ 72mmHg、その他のバイタルサインに異常は認めなかった。 腹部は膨隆、腸蠕動音は亢進、腹部全体に圧痛を認めたが腹膜 刺激症状は認めなかった。血液検査では白血球14900 / μL、 CRP 0. 05mg/ dLと炎症反応の上昇を認め、腹部レントゲンにて ニボー像、腹部CTにて骨盤内小腸に閉塞起点、その口側腸管の 拡張を認めた。閉塞起点と考えられる部位はCT上、均一な高 吸収域として認められ、病歴と画像所見より餅による食餌性イ レウスの診断で当科緊急入院となった。同日、イレウス管を挿 入し、絶飲食・補液・抗生剤投与で保存的加療を開始した。イ レウス管挿入後より腹部症状改善傾向となり、翌日の血液所見 や腹部レントゲン上も改善を認めた。第4病日に消化管造影検 査を施行し、小腸に通過障害がないことを確認。第5病日より 食事開始したが、経過良好で第12病日退院となった。【考察】餅 による気道閉塞はよく認知されているが、餅によるイレウスに 関しては認知度が低い。餅イレウスの診断には問診による食餌 内容の確認に加えてCT検査が有用である。CTにて餅は均一な 高吸収域として描出され診断が容易につけられるため、救急疾 患として留意する必要があると認識させられた症例である。 はじめに】クローン病に合併した消化管癌の報告は増加の一 途を辿る. 一方で狭窄により内視鏡挿入困難症例も多く確立さ れた癌サーベイランス法が存在しないのが現状である. 【症例】 49歳男性. 29歳時に小腸型クローン病を発症し, 39歳時に小腸癌 に対し腹腔鏡下回盲部切除術を受けた. 病理診断では, 2型腫瘍 の周囲に細胞異型の比較的低い腫瘍腺管が広く伸展する5型腫 瘍であり、周囲に潰瘍瘢痕を伴っていた. 背景粘膜に類上皮性 肉芽腫は認められなかったが低異型度の癌であることから, ク ローン病を背景に発生した癌の可能性が示唆された.この間、 腫瘍マーカーの上昇は認めていない. 以後メサラジンにより病 状は安定していた. 経過中にCA19-9の緩徐な上昇を認め, 精査 にて横行結腸癌と診断され、腹腔鏡補助下横行結腸切除術を施 行された.病理診断では, 亜全周性の2型腫瘍を認め, 周囲に線 状潰瘍をみとめた. 背景粘膜には類上皮性肉芽腫を疑う細胞が みられ, クローン病に合併した大腸癌が示唆された. 術後8か月 経過しているが、腫瘍マーカーは正常化し再発兆候も認めてい ない.【考察・まとめ】本症例はクローン病に小腸癌と横行結腸 癌を異時性に合併した稀な症例である.小腸癌の既往があった ため、定期的に腫瘍マーカーの測定が行われていたことにより, 横行結腸癌をStage2の段階で発見することが出来たともいえ る。クローン病長期経過症例における癌サーベイランス法が確 立されていない現状において、腫瘍マーカーを継続的に測定す ることが大腸癌の早期診断に寄与する可能性が示唆された. 食餌性イレウス,餅 ― 36 ― クローン病,大腸癌 61 63 大腸脂肪腫上に認めたIIc型早期大腸癌の一例 草加市立病院 消化器内科1) ,同 外科2) , 東京医科歯科大学 消化器内科3) 建石奈緒1) ,青沼映美1) ,末松聡史1) ,鎌田和明1) ,吉田玲子1) , 矢内常人1) ,小野千尋2) ,渡辺 守3) 症例】79歳男性【現病歴】腹痛のスクリーニングのため, 他院 で施行した下部消化管内視鏡検査で, 肛門縁から約40cmのS状 結腸に粘膜下腫瘍とその頂部に陥凹性病変を認めた。陥凹部か らの生検結果でGroup4と診断され, 粘膜下腫瘍様の深部浸潤大 腸癌を疑い当科に紹介となった。当科で再度内視鏡精査をした ところ, 前医で指摘された病変は, やや黄色調で20mm大の可動 性良好な腫瘍であり, その口側に7-8mm大の境界明瞭な陥凹性 病変を認めた。前医での生検施行時に粘膜下の脂肪組織が露出 したことも併せて, 粘膜下腫瘍は大腸脂肪腫と診断した。陥凹 性 病 変 部 の NBI 拡 大 観 察 で は Capillary pattern は 佐 野 分 類 TypeIIIAであり, クリスタルバイオレット拡大観察ではTypeIIIs 主体で一部にVi軽度不整を認めた。以上の所見から, 大腸脂肪 腫上に認めたIIc型早期大腸癌と診断した。内視鏡的治療を検 討したが, 病変付近に前医で施行されたEMR後の瘢痕があり, 外科手術の方針となった。切除検体の組織学的所見では, 粘膜 下層に15mm大の脂肪腫を認め, その頂部の陥凹部に一致して 腫瘍を認めた。病理診断はWell differentiated adenocarcinoma, 0-IIc, 7×7mm, tub1, depth M, ly0, V0, margin negativeであり, 術 前診断と一致した。【考察】早期大腸癌IIc病変の発生は比較的 稀とされ, 深達度診断には注意を要することが知られている。 本症例では粘膜下腫瘍上に陥凹性病変が存在しており, 病変自 体の診断も困難であったが, 通常内視鏡や拡大内視鏡を組み合 わせることで, 術前に正診することが可能であった。大腸上皮 性腫瘍と大腸脂肪腫の併存例は過去にも報告があるが, 本症例 のように脂肪腫上に病変が存在する症例は2例のみであった。 貴重な症例と考えられ, 若干の文献的考察を加えて報告する。 東京逓信病院 消化器科1) ,同 病理科2) 小幡 勇1) ,光井 洋1) ,田顔夫佑樹1) ,水谷浩哉1) ,大久保政雄1) , 小林克也1) ,関川憲一郎1) ,橋本直明1) ,岸田由起子2) , 田村浩一2) 症例】43歳男性【主訴】発熱・倦怠感【臨床経過】生来健康で あったが、2015年1月初旬38℃の発熱があり、近医を受診し解熱 薬・抗生剤を処方された。しかしその後も解熱せず、血液検査 上肝酵素上昇を認め、薬剤は中止。さらに倦怠感も加わったた め、第14病日当科に紹介された。初診時の血液検査で、AST, ALT, γ-GTP, LDH 各140, 335, 371, 469 IU/ l と上昇し、白血 球数9600/ μl 異型リンパ球18 %, CRP 1. 69 mg/ dl であった。精 査加療目的に翌日入院となった。四肢から体幹にかけて発赤し た皮疹を認め、CT検査にて頚部と肝門部のリンパ節腫大と脾 腫が存在した。データ上、A , B型肝炎ウイルスと後に C, E型 ウイルスによる肝炎は否定され、薬物性やアルコール性肝障害 も考えにくかった。EBウイルスは既感染のデータであったが、 サイトメガロウイルスの抗体価はIgM 5. 6, IgG 10. 8と高値で感 染の可能性が示唆された。その後サイトメガロウイルス抗原が 陽性と判明し、急性感染による単核球症と診断した。入院第5 病日におこなった肝生検の病理結果は、小葉内に小型リンパ球 がbeads-on-a-string patternを取って類洞内に広がる像が目立ち、 単核球症に矛盾しない所見であった。患者は免疫抑制状態では なく、全身状態も安定していたため抗ウイルス薬は投与せずに 経過を観察した。その後、肝障害もpeakoutし、症状も改善した ため退院となった。一般に、サイトメガロウイルスは健康成人 に感染しても発症することはまれとされてきた。しかし、最近 は乳幼児期の感染が減り、成人の初感染による単核球症の症例 が増加してきているとされる。本例のような健康な成人であっ ても、発熱を伴う肝障害をきたした場合は、サイトメガロウイ ルスによる単核球症の可能性を考える必要がある。 サイトメガロウイルス,単核球症 早期大腸癌,大腸脂肪腫 62 日本住血吸虫症が偶発的に発見されたRs直腸癌の 一例 東京逓信病院 外科1) ,同 病理科2) 新井絢也1) ,織畑光一1) ,長谷川智彦1) ,寺下勇祐1) ,和田由美恵1) , 竹島雅子1) ,下里あゆ子1) ,佐藤兼俊1) ,永吉実紀子1) , 村田祐二郎1) ,奥田純一1) ,津久井元1) ,寺島裕夫1) ,岸田由紀子2) , 田村浩一2) 症例】77歳、男性【主訴】便秘【現病歴】X年9月より便量の減少 を自覚し、同年10月当院消化器内科受診。精査の結果、直腸癌の 診断で手術目的に当院外科入院。【生活歴】佐賀県鳥栖市出身【家 族歴】母:癌(詳細不明)姉:子宮癌 肝臓癌、大腸癌の家族歴な し【入院時現症】バイタルサイン、一般診察上、特記事項なし【入 院時検査所見】WBC 8700 / μl, ALP 220 IU/ l, AST 19 IU/ l, ALT 16 IU/ l, γ -GTP 37 IU/ l, CRP 0. 41 mg/ dl, CEA 3. 2 ng/ ml, CA19-9 23. 5 IU/ ml。下部消化管内視鏡:肛門縁から約15 cmに2/ 3 周性の2型病変(中分化腺癌)および横行結腸に25 mm大のtype IIa の側方発育型腫瘍(中等度異型性腺腫)を認めた。造影CT:S状結 腸に造影効果を伴う全周性の壁肥厚、SRA領域のリンパ節腫大あ り。明らかな遠隔転移なし。肝臓は正常。【入院後経過】横行結腸 の病変部も手術適応と考え、低位前方切除術(IMA根部温存)及び 横行結腸部分切除術施行したが、術中に下行結腸-直腸吻合部の結 腸側の血流が不良となり、血流不良部の結腸を追加切除し、拡大 左半結腸切除術に変更とした。最終病理結果は、pT4a( SE) N1 M0 Stage IIIaとなった。手術検体より日本住血吸虫の虫卵を粘膜下に 多数認め、血管内塞栓を示唆する所見もあり。虫卵は石灰化して おり、症状無く、便からも虫卵認めないことから、陳旧性感染と考 えられ、治療適応はないと判断した。【考察】日本住血吸虫症は、 現在では中間宿主であるミヤイリガイが駆除されたことにより本 邦で新たな発症例をみる事はなくなったが、本症例の如く手術検 体等で偶然的に陳旧性感染が発見された報告は散見される。日本 住血吸虫と発癌に関しては、肝臓癌と関係は知られているが、大 腸癌との関係は現在も議論されている。今回、日本住血吸虫が偶 発的に発見されたRs直腸癌の一例を経験したため、若干の文献的 考察を加えて報告する。 肝生検でbeads-on-a-string patternを認めたサイトメ ガロウイルス単核球症の一例 64 伝染性単核球症に併発した脾梗塞の一成人症例 社会医療法人社団順江会 江東病院 竹内雄一,三好由里子,鈴木麻衣子,橋本周太郎,小島拓人, 林 康博,太田一樹,小林 修,黒田博之,渡辺純夫 要旨】Epstein-Barrウイルス(EBV)による思春期以後の初感染の約半 数において発熱, 扁桃咽頭炎, 頸部リンパ節腫脹, 肝脾腫などを伴う伝 染性単核球症が引き起こされる.今回, 左季肋部痛を主訴とした伝染 性単核球症に伴う巨脾に脾梗塞を合併した症例を経験した.伝染性単 核球症に合併した脾腫が脾破裂を来す症例はしばしば認められている が, 脾梗塞を呈した例は少ないため, 今回報告する. 【背景】脾臓は異物や老化赤血球を除去するフィルターとして機能す る臓器であり, リンパ球の成熟も担っていることが知られているが, そ の詳細は不明である.EBVは2歳までに約半数が, 30歳までに90%以上 のヒトが感染することが知られているが, 若年成人での初感染は約半 数において発熱, 扁桃咽頭炎, 頸部リンパ節腫脹, 肝脾腫などを伴う伝 染性単核球症を引き起こす.EBVはおもにB細胞, 上皮細胞にCD21を 介して感染する.急性期にはB細胞の10%近くがEBVに感染し, こう したEBV感染B細胞への過剰な免疫反応が本症を引き起こすと考えら れている. 【症例】症例は36歳の男性.来院2週間前から微熱と咽頭痛を自覚し近 医受診し抗生剤処方をうけたが症状改善認めなかった.来院前日深夜 に突然の激烈な左季肋部持続痛を自覚し,翌朝まで改善しないため当 院当科受診した.入院時身体所見で扁桃咽頭に小水疱を伴う発赤を認 め, 頸部から顎下にかけてのリンパ節腫脹を認めた.黄疸,貧血は認 められなかった.左季肋部に脾臓を触知し,同部位に圧痛を認めた. 腹部造影CTにて造影不良域を伴う脾腫を認め,脾梗塞と診断され緊急 入院となった.血液検査でVCA-IgM抗体陽性, VCA-IgG抗体陽性,5% の異型リンパ球を認め, 伝染性単核球症と診断された.抗凝固薬投与 と安静にて加療され,現在経過観察中である. 【結語】今回伝染性単核球症に脾梗塞を合併した珍しい症例を経験し た.脾腫に伴う脾破裂はしばしば認められるが, 脾梗塞を合併する例 は少ない.主訴はともに左季肋部痛であるが治療は異なるため, 両者 の鑑別は臨床的に重要である.また, 脾臓の生体内での機能は未知の 部分が多く,その解明の一助になると考える. 直腸癌,日本住血吸虫 ― 37 ― 肝脾腫,脾梗塞 65 IgG4関連疾患による非代償性肝硬変が疑われた生 体間肝移植の一例 獨協医科大学 第二外科1) ,同 病理部2) 鈴木隆志1) ,礒 幸博1) ,多胡和馬1) ,櫻岡佑樹1) ,白木孝之1) , 松本尊嗣1) ,加藤正人1) ,下田 貢1) ,山岸秀嗣2) ,青木 琢1) , 窪田敬一1) 症例は57歳男性。うつ病にて精神科通院中であった。2004年7月 に肝機能障害を指摘され肝生検が施行されるも原疾患の確診に至 らず、肝庇護療法と減量指導で経過観察されていた。2014年11月 より黄疸、体重増加が進行し、精査にて原病の進行と門脈血栓に よる肝機能増悪と診断された。抗凝固療法、利尿剤、アルブミン 製剤等にて加療されたが改善に乏しく、生体肝移植の希望があり 当科を紹介受診した。血液検査では肝炎ウィルス陰性、抗核抗体 は低力価で陽性、血清IgGは4242と基準上限値の3. 03倍、IgG4は 1060と高値、その他の自己抗体は陰性だった。(AIH国際診断基準 スコア8点)腫瘍マーカーではDCPが24213と高値であった。造影 CTで肝は尾状葉の腫大とその他の区域の萎縮をみとめ全体にいび つな形状であり、側副血行路の発達と脾腫を伴っていた。胆道の 評価目的にMRCPを施行したが、腹水によるartifactが強く評価困難 であった。以上からCryptogenic liver cirrhosis, MELD 24点の評価に て、2015年2月、次男をドナーとする左葉グラフトを用いた生体間 部分肝移植術が施行された。術中胆道造影で二次分枝の帯状狭 窄、左肝管の長い狭窄、遠位胆管の拡張と狭窄、透亮像を認め、肝 外胆管に強い炎症を伴っており胆道再建は胆管空腸吻合とした。 病理学的に、肝実質は完成した胆汁性肝硬変の状態で、中型から 大型の胆管周囲性の線維化と高度のリンパ球および形質細胞浸潤 を認め、PSCに合致する組織像であった。一方で免疫組織学的検 討ではIgG陽性細胞及びIgG4陽性細胞を多数認め、IgG4関連硬化性 胆管炎を背景とする病態が考えられ追加検討中である。また、左 葉に10mmのHCCを1個認めた。術後は大きな合併症無く順調に回 復している。自己免疫性膵炎や、Sjoegren症候群などでIgG4関連疾 患という概念が確立されつつある。今回我々は術前診断が困難で あった非代償性肝硬変に対し肝移植を施行し、臨床病理学的に IgG4関連疾患も否定できない1例を経験したので報告する。 67 埼玉医科大学総合医療センター 消化器・肝臓内科 生駒千晶,高林英日己,山本龍一,石橋 朗,須田健太郎, 寺井悠二,荒井亮士,藤田徹郎,細見英里子,高橋正朋,小林泰輔, 林健次郎,青山 徹,知念克哉,可児和仁,長船靖代,宮城直也, 大野志乃,加藤真吾,名越澄子,屋嘉比康治 膵癌による閉塞性膵炎から巨大な膵仮性嚢胞を形成する報告は 散見される。今回われわれは、膵癌による膵管閉塞から急性膵 炎を生じ巨大な膵仮性嚢胞を形成しEUSガイド下ドレナージが 有効であった症例を経験したので文献的考察を加え報告する。 症例は58歳 男性。主訴は心窩部痛、黄疸。入院時採血所見で は WBC 12200/ mm3、T-Bil 11. 5mg/ dl、P 型 amylase 706U/ L、 CRP 5. 8mg/ dlであり、腹部造影CTでは膵頭部に径2cm大の腫瘤 を認め、腫瘤による膵管閉塞が原因の膵炎所見及び膵体尾部周 囲の巨大な仮性嚢胞を認めた。又、大動脈周囲リンパ節腫大認 めPET-CTにおいても同部位は集積しておりリンパ節転移が考 えられた。閉塞性黄疸に対しては内視鏡的に8. 5Fr7cmのPlastic Stentを下部胆管に留置した。胆管の擦過細胞診はClass IIIで あった。経乳頭的膵管造影は不可であり、嚢胞増大による腹痛、 胃十二指腸の通過障害認めたため胃体部より5Fr 経鼻胆管 drainage tubeを用いて EUS下嚢胞ドレナージ( EUS-CD) を施行 した。後日6Fr pig tail型胆管drainage tubeにて内瘻化した。嚢胞 液の細胞診はClass Vであった。嚢胞縮小し、黄疸も改善したた め第64病日よりFOLFILINOX療法を開始した。現在腫瘍増大な く化学療法継続中である。今回われわれは、膵癌による仮性嚢 胞に対しEUS-CDを行い膵炎症状の軽快とともに化学療法を開 始し得た1例を経験した。症例によっては膵癌による膵仮性嚢 胞に対するEUS-CDは有用であると考え報告する。 膵癌,仮性嚢胞 肝硬変,IgG4関連疾患 66 直腸静脈瘤出血に対して経皮経肝的塞栓術を施行し た1例 EUSガイド下膵仮性嚢胞ドレナージが有効であった 膵癌の1例 68 肝動脈瘤による胆管狭窄、胆管への破裂による胆道 出血を来たした一例 昭和大学江東豊洲病院 消化器センター 柴田悠樹,野村憲弘,坂上聡志,佐久間大,佐藤 雅, 三田村圭太郎,江口潤一,出口義雄,松川正明,井上晴洋 東海大学医学部付属病院 臨床研修部 植木健太,川口義明,矢野貴彦,川嶌洋平,小川真実, 峯 徹哉 症例】83歳男性【既往歴】アルコール性肝硬変、食道静脈瘤、 難治性腹水、肝性脳症【現病歴】H27年1月12日便秘に対し下剤 を大量内服したことで下痢便を発症。その後、症状治まらず下 血合併し止まらないため20日に当院を受診した。緊急下部内視 鏡検査を施行したところ直腸潰瘍からの出血を認め、止血鉗子 にて凝固止血を行った。同時に直腸静脈瘤も認めたが、出血部 位との関連は不明であった。同日他院へ入院となったが、翌日 下血再燃したため緊急内視鏡を施行。直腸静脈瘤からの出血を 認めたため、同院でEVL止血した。今後の出血予防加療目的と し て 23 日、当 院 へ 転 院 と な っ た。 【入 院 時 検 査 所 見】WBC 5390/ mm^3, Hb 11. 1g/ dL, Plt 2. 1万/ mm^3, PT 54. 2%, Alb 3. 2g/ dL, T-Bil 4. 0mg/ dL, D-Bil 1. 6mg/ dL, AST 43IU/ L, ALT 45IU/ L, LDH 185IU/ L, ALP 635IU/ L, γ-GTP 38IU/ L, AMY 168U/ L, Na 137mEq/ L, K 3. 4mEq/ L, Cl 96mEq/ L. 腹部骨盤造 影CTで肝硬変、門脈圧亢進症による直腸静脈瘤、右副腎静脈門 脈シャントを認めた。【入院後経過】直腸静脈瘤に対する治療 としてIVRによる硬化療法を考慮した。末期肝硬変であり凝固 機能も低く出血の高リスク症例であったため、直腸静脈瘤への アプローチとしてCTを参考に内頸静脈からシャント経由ルー トをトライしたが困難であった。27日に超音波下で経皮的穿刺 行い右肝門脈より経皮経肝的塞栓術(PTO)を施行した。バルー ン閉塞下で直腸静脈瘤に対し5%EO 13ccで硬化療法行い、穿刺 部位はコイル、スポンジで止血処置を行った。以降、Hb, Plt値 は依然として低値ではあったが、状態は安定しており危機的な 状態を脱したと判断し、同年2月27日にリハビリ目的で転院と なった。【結語】今回、直腸静脈瘤出血に対してPTOを行った1 例を経験したので報告する。 症例】74歳 男性【既往歴】脳出血( 右片麻痺) ,高血圧,心房細動、 腹部手術歴・外傷歴なし【内服歴】リバーロキサバン、ラベプラ ゾールナトリウム、トリアゾラム、ジマチコン【嗜好歴】喫煙:5 本/ 日 55年間、飲酒:ビール1本/ 日 55年間【現病歴】腹部違和感、 皮膚黄染、黒色便を主訴に前医受診。総肝動脈瘤による胆管狭窄・ 閉塞性黄疸の診断に至り、EBD留置。胆道出血などの消化管出血 は認められなかった。精査・加療目的に当院紹介となった。ERCP 施行し、ERCにて上部から肝門部胆管に狭窄を認めた。IDUSでは 動脈瘤による圧排狭窄を確認。EBD( 7Fr 10cm Pigtale type) 再留置 した。胆道出血は認められず、動脈瘤の原因精査を行いながら外 来経過観察中であったが、意識消失を認め救急受診。その後吐血 したため、緊急上部消化管内視鏡検査を施行し、十二指腸乳頭か らの血液流出を確認し胆道出血と診断。その他の部位からの出血 は認められなかった。来院時の腹部造影CTにて総肝動脈瘤から胆 管への穿破、総胆管拡張/ 胆嚢腫大を認め、総肝動脈瘤破裂に伴う 胆道出血、胆管炎を疑い緊急入院とした。胆道出血に伴う胆管炎 改善目的に緊急ERCPを施行した。ERCにて胆道内に凝血塊貯留を 示唆するdefectを認めENBD留置した。出血に関しては、リバーロ キサバン休薬、輸血・補液にて保存的に経過を見ていたが、第2病 日、大量下血後にshock状態となり、気管挿管を行った後に緊急血 管造影施行した。血管造影ではCHA遠位からRHAにかけて紡錘状 の動脈瘤を認め、RHA近傍より胆管内へのextravasationを認めた。 同部位に対してCoil embolizationを行い止血に至った。術後、貧血 の進行は認められず、肝胆道系酵素の一過性の上昇が認められた が自然軽快した。第12病日より経口摂取開始したが出血等の再燃 なく、第24病日退院となった。【考察】肝動脈瘤による胆管狭窄、 さらに胆管への破裂による胆道出血を来たした稀な症例を経験し た。胆管狭窄に対しては、内視鏡的ドレナージ、肝動脈瘤破裂に 対してはコイル塞栓術が奏功した。 直腸静脈瘤,肝硬変 ― 38 ― 肝動脈瘤,胆道出血 69 腹部刺創による胆管損傷に対して、超音波内視鏡下 胆道ドレナージを施行した症例 横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター1) , 横浜市立大学医学部 消化器内科学2) 長島周平1) ,杉森一哉1) ,竹田彩子1) ,石井ゆにば1) ,三輪治生2) , 亀田英里2) ,石井寛裕1) ,金子 卓1) ,沼田和司1) ,田中克明1) , 前田 愼2) 症例】61歳女性【主訴】腹部刺創、頚部・左前腕切創【現病歴】 自殺目的で自傷し、倒れているところを家人に発見され、当院 救命救急センター受診。腹部に1cm大の刺創を2か所認め、CT で十二指腸近傍でのextravasationと腹水の貯留を認めた。止血 目的で開腹術施行。右胃大網動静脈周囲の高度挫滅あり、縫合 止血。十二指腸球部から下行脚に2cmの穿孔・挫滅あり、大網 充填術を行った。術後経過は順調であったが、十二指腸穿孔部 ドレーンからの排液が減少せず、ドレーン造影を行うと逆行性 に総胆管・胆嚢が造影されたが、十二指腸乳頭部への流出はな く、当科紹介受診。【経過】内視鏡的逆行性胆道造影検査を行っ たが、十二指腸乳頭部から総胆管は造影されなかった。総胆管 の完全断裂が考えられたため、胆管空腸吻合術の適応について 外科と協議したが、初回手術時に局所の挫滅が著しかったこと より再手術は困難と判断された。経皮的アプローチで、胆管断 裂部を突破・内瘻化できなかった場合、長期外瘻を免れないと 考え、一期的内瘻化が可能な超音波内視鏡下胆道ドレナージ術 を行う方針とした。十二指腸球部から総胆管を穿刺、プラス チックステントを留置したところ、ドレーンからの排液は減少 した。1週間後にプラスチックステントを抜去し、十二指腸胆 管瘻孔部からのアプローチでランデブー法を試みたが、やはり ガイドワイヤーで胆管断裂部を突破できず、瘻孔部にメタリッ クステントを留置した。ドレーン抜去が可能となり、退院した。 【結論】再手術困難な胆管断裂症例に対して、超音波内視鏡下胆 道ドレナージ術施行により、退院可能になった症例を経験した。 本例にとって、超音波内視鏡下胆道ドレナージはとても有用で あったが、本治療の長期成績は明らかではないため、今後も厳 重な経過観察が必要である。 71 板橋中央総合病院 消化器内科1) ,蓮根ロイヤルクリニック2) , 板橋中央総合病院 病理診断科3) 盛島美弥1) ,青木いづみ1) ,藤村 彰1) ,金子浩明1) ,天目 陽1) , 根岸良充1) ,赤澤希宝香1) ,神野正隆1) ,佐々木洋1) ,大久保沙恵1) , 町田展章1) ,市川 武1) ,大井 至1) ,藤野雅之2) ,福田 悠3) , 田和良行1) 症例】60歳代後半男性。 【主訴】腹部膨隆、食事摂取量減少。 【職歴】16歳より24年間塗装工として就業(アスベスト曝露歴あ り)。【既往歴】40歳気管支喘息、64歳心原性脳梗塞。【現病歴】 脳梗塞後後遺症による左片麻痺と高次機能障害のため、寝たき り状態で発語は片言程度、施設入所中であった。H26年11月に 入り食事摂取量が減少し、同月中旬頃より腹部膨隆に職員が気 付き、精査加療目的で12月紹介入院となった。腹部造影CTで は、大量腹水と右横隔膜下の腹膜を中心とする腫瘤状肥厚、腸 間膜の不整な肥厚を認めたが、腹腔内に腹膜播種を来すような 消化管病変は認められなかった。腹水は淡黄色軽度混濁、比重 1. 034、リ バ ル タ 陽 性 の 滲 出 性 で あ り、ヒ ア ル ロ ン 酸 112000ng/ mlと上昇していたので腹膜中皮腫を疑った。腹水細 胞診を3回提出したが、腫瘍細胞塊を認め悪性を考える所見で はあったが、腺癌と中皮腫の鑑別ができず、確定診断には至ら なかった。腹部超音波で腹膜肥厚部を描出できたので、超音波 ガイド下腹膜生検を施行した。病理組織学的には、腫瘍成分は 乳頭状で管腔を形成しながら増生しており、免疫染色では Calretinin陽性、CEA陰性であったので悪性腹膜中皮腫上皮型と 診断した。全身状態からBSCを選択、KM−CARTを含めた対症 療法を行ったが、診断より2ヶ月後に永眠された。【結語】腹膜 中皮腫の診断に関しては、石綿救済法が組織生検を重視してい る点からも、生検により確定診断を行う事が望ましいと考える。 最近では腹腔鏡下生検で確定診断を得た症例の報告が増加して いるが、今回超音波ガイド下生検で確定診断に至る事ができた ので、文献的考察を加えて報告する。 胆道ドレナージ,超音波内視鏡 70 腹膜中皮腫,腹部超音波ガイド下腹膜生検 72 胃癌術後経過観察中に生じた後腹膜腫瘍の1例 東京慈恵会医科大学外科学講座 消化器外科 竹澤章裕,二川康郎,古川賢英,阿部恭平,鈴木文武,恩田真二, 兼平 卓,船水尚武,坂本太郎,柴 浩明,藤岡秀一,保谷芳行, 石田祐一,岡本友好,矢永勝彦 症例は61歳男性。胃癌で幽門側胃切除術(StageIIB)の術後5年 半経過時、腹部CTで肝下部下大静脈背側に3cm大の腫瘤を認め た。1年半で6cm大と増大、精査加療目的にて当科紹介となっ た。胃癌術後リンパ節再発、後腹膜由来の肉腫との鑑別を要し たが、精査で血中カテコールアミン軽度上昇、MIBGシンチグ ラフィーで腫瘤に高度集積を認め、無症候であったが、パラガ ングリオーマと診断した。腫瘍圧排による術中カテコールアミ ン過剰症状を防ぐよう愛護的操作に留意しながら腫瘍摘出術を 施行した。病理学的診断は、後腹膜原発のパラガングリオーマ あった。術後経過は良好で術後第11病日に退院した。今回、無 症候であっても術前診断が重要である比較的稀なパラガングリ オーマの1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。 腹部超音波ガイド下腹膜生検で確定診断できた腹膜 中皮腫の1例 周期的な腹痛・発熱を主訴としMEFV遺伝子変異を 認めた非定型家族性地中海熱の1例 東京医科歯科大学医学部附属病院 消化器内科 三代博之,井上恵美,藤井俊光,斎藤詠子,井津井康浩, 岡田英里子,大島 茂,松岡克善,中川美奈,岡本隆一, 土屋輝一郎,柿沼 晴,東 正新,大岡真也,永石宇司,中村哲也, 長堀正和,荒木昭博,大塚和郎,朝比奈靖浩,渡辺 守 症例】20歳男性【主訴】発熱、腹痛【現病歴】小学生の頃に腹痛 を生じ、近医で虫垂炎を疑われたが原因不明のまま軽快した。 2009年以降、1週間以内に軽快する腹痛と発熱を年に3-4回繰り返 していた。2014年8月に発熱、腹痛が出現したため近医で抗生剤処 方されるも症状は改善せず当院受診。38℃台の発熱、腹膜刺激徴 候、CRP上昇、CTにて回結腸リンパ節腫大と周囲の脂肪織濃度上 昇を認め、腹膜炎の診断で緊急入院となった。【臨床経過】下部消 化管内視鏡検査では回腸末端、結腸の粘膜に異常所見は認められ ず、小腸造影やMRenterocolonographyでも異常所見はなく炎症性腸 疾患は否定的であった。同様に、各種培養の結果も併せ腸管感染 症の存在も否定的であり、Malignat lymphomaなどの悪性腫瘍の可 能性も考え骨髄穿刺も施行したが、明らかな異常所見は指摘でき なかった。入院後頭痛の併発を認め、腰椎穿刺を施行したところ 無菌性髄膜炎が同定された。周期的に繰り返す発熱・腹痛発作と 漿膜炎の存在より自己炎症性疾患を疑った。本例では有熱期間が 2、3日∼2週間と幅があり、入院後も2週間以上症状が持続してい たため、非定型家族性地中海熱( FMF variant) や類縁疾患である TNF受容体関連周期性症候群の可能性が考えられた。診断的治療 目的にコルヒチンの投与を開始したところ、症状は改善傾向とな り第30病日に退院となった。遺伝子検索にて、後日MEFV(Familial Mediterranean Fever gene)遺伝子のSNP変異が同定された。【考察】 家族性地中海熱は、遺伝性周期性発熱症候群に分類される疾患で あり責任遺伝子としてMEFV遺伝子が同定されている。本例にお いては、exon10の変異は認めなかったもののexon2であるE148Q、 L110P、G304Rのヘテロ変異を認めた。今回我々は非定型家族性地 中海熱と考えられる1例を経験したため、文献的考察を加えて報告 する。 パラガングリオーマ,胃癌 ― 39 ― 家族性地中海熱,MEFV遺伝子 73 当院におけるPTP( press through package) 誤飲症例の 検討 千葉中央メディカルセンター 島田悠希,松葉芳郎,松井郁一,鈴木洋一,松田充宏 当 院 に お け る 2010 年 8 月 か ら 現 在 ま で の PTP ( press through package) 誤飲症例9例を検討した。平均年齢は76. 3歳、男女比 は4:5、受診時の異物の部位は9例中7例が食道、小腸が1例、大 腸が1例であった。4例は救急車で搬送され、内視鏡的に治療し た7症例は受診から平均69分で摘出した。摘出による合併症は 認めなかった。小腸に存在した症例は腹部症状もなく、保存的 にPTPの移動をCTで確認でき、約1日半の経過で自然排泄をみ た。われわれの症例ではPTP内の錠剤はすべて押し出される前 の状態で誤飲されており、CTを施行した症例は全例でPTPを同 定できた。もっとも重篤な合併症は大腸穿孔であり、腹膜炎に 対して緊急手術を必要とした。S状結腸多発憩室による大腸狭 窄が要因として関与した。PTP誤飲の原因はテレビをみながら 注意力散漫な状態での内服や、内服薬を準備する際のうっかり ミスが多かった。人口の高齢化や認知症患者の増加により、 PTP異物の症例は今後もなくならないと考えられる。更なる啓 蒙の必要性と診断・治療の重要性が再認識された。 75 済生会横浜市南部病院 消化器内科1) , 横浜市立大学附属病院 肝胆膵消化器病学2) 渡邉誠太郎1) ,関野雄典2) ,藤田祐司2) ,細野邦広2) ,窪田賢輔2) , 中島 淳2) 目的】Interventional EUS技術の開発により,EUSガイド下ドレ ナージ術が安全な治療法としての地位を確立してきた.穿刺後 の瘻孔拡張に関して,通電ダイレーターの使用は,拡張手技を 簡略化できる可能性があるが,一方で出血リスクに注意を要す る.ESダイレータ( ゼオンメディカル) は拡張手技を安全かつ 簡略的に実行できる可能性がある.その使用経験と成績を, stepwiseに瘻孔拡張する従来法と比較して報告する. 【方法】 2013年1月∼2014年10月に関連2施設でESダイレータを用いて EUSドレナージ術を行った症例( ES群) 16例と,ESダイレータを 用いなかった( 対照群) 15例について,穿刺から1本目のステン ト留置までの時間( T1) ,全検査時間( Tt) ,有害事象について後 ろ向きに検討した.【結果】手技内訳はES群で膵嚢胞ドレナー ジ( EUS-CD) 11例,胆管十二指腸吻合( EUS-CDS) 2例,肝胃吻 合( EUS-HGS) 1例,膵管ドレナージ( EUS-PD) 1例,膿瘍ドレ ナージ( EUS-AD) 1例.対照群ではEUS-CD7例,EUS-CDS4例, EUS-HGS4 例.手 技 成 功 率 は ES 群,対 照 群 そ れ ぞ れ 100% ( 16/ 16) ,86. 7%( 13/ 15) であった( p=0. 225) .T1はES群と対照 群でそれぞれ,18. 3分と29. 1分( p=0. 012) ,Ttは44. 2分と53. 7分 ( p=0. 339) であった.検査関連の有害事象は,ES群では瘻孔出 血を1例認めたのみであった.対照群では軽症の胆汁性腹膜炎 を1例認め,3例で拡張困難のため通電ダイレーターを使用した. 市中病院である当院に限って比較すると,T1はES群と対照群 でそれぞれ,29分と35. 7分,Ttは52. 5分と61分であった.【結論】 ESダイレータはstepwiseに瘻孔拡張する従来法と比較して,1本 目までのステント留置時間を有意に短縮した.また,手技成功 率改善,手技時間短縮,合併症減少に寄与する可能性があり, 市中病院においても今後のEUSガイド下ドレナージ術における 標準的なデバイスとして期待される. PTP,消化管異物 74 体外式超音波が診断・経過観察に有用であったIgG4 関連硬化性胆管炎の一例 獨協医科大学越谷病院 消化器内科 小堀郁博,片山裕視,中元明裕,須田季晋,北濱彰博,草野祐実, 豊田紘二,玉野正也 症例】72歳男性【主訴】黄疸【既往歴】尿管結石、右第2指・ 4指切断(事故)【内服薬】なし【生活歴】飲酒:なし、アレルギー: なし【現病歴】2014年11月中旬頃より黄疸を自覚。近医を受診 し、MRCPで閉塞性黄疸を指摘され、精査加療目的に当科入院 となった。【経過】入院時採血ではAST 88U/ L、ALT 71U/ L、 T-Bil 6. 6mg/ dlと肝胆道系酵素上昇を認め、造影CTでは中部か ら下部胆管にかけての閉塞と膵頭部から膵体部の軽度腫大を認 めた。体外式超音波では肝門部胆管に層構造の保たれた壁肥厚 を認め、IgG4 508mg/ dlと高値を認めた。以上より膵癌や胆管 癌などの悪性腫瘍の他に、鑑別としてIgG4関連硬化性胆管炎に 自己免疫性膵炎が合併した病態が考えられた。内視鏡的直接膵 管造影では膵頭部から膵体部にかけて主膵管の限局性狭細像を 認めた。胆管造影では胆管は完全閉塞しており、胆管生検を施 行したが、組織学的に腫瘍性病変は否定的であった。形質細胞 の採取不充分によりIgG4の免疫組織染色は施行不能であった が、総合的にIgG4関連疾患を強く疑いPSL30mg/ 日から治療を 開始した。PSL開始後速やかにIgG4値は改善し、体外式超音波 では肝門部胆管の壁肥厚は著明に改善していた。同時期に施行 したMRCPでも胆管閉塞の所見は改善しており、PSLに良好に 反応したと考えられた。 【考察】IgG4関連硬化性胆管炎では胆 管狭窄部以外の胆管壁にも肥厚所見を認めるのが特徴であり、 体外式超音波における肝門部胆管壁肥厚は、IgG4関連硬化性胆 管炎の活動性を反映できる所見になり得ると考えられた。 【結 語】体外式超音波での肝門部胆管壁肥厚が診断・経過観察に有 用であったIgG4関連硬化性胆管炎の一例を経験した。体外式 腹部エコーは被爆することなく低侵襲な検査であるため、IgG4 関連硬化性胆管炎の診断・経過観察に有用になり得ると考えら れた。 EUS下ドレナージ術におけるESダイレータの使用 成績 EUSドレナージ,ESダイレータ 76 亜全胃温存膵頭十二指腸切除術(SSPPD)後の胆管 空腸吻合部より胆管内に迷入した膵管ロストステン トを経皮的胆道鏡下に回収した1例 キッコーマン総合病院 内科 大西和彦,三上 繁,丸野綾子,清水史郎,秋本政秀 症例は69歳男性。2009年8月前医にて下部胆管癌疑いに対して SSPPD施行(病理検査結果は良性狭窄)。Child変法で再建し膵 腸吻合は膵管空腸粘膜吻合で行い6Frの膵管ステントをロスト ステントとして留置した。術後5年目に発熱、肝機能障害を認 め、精査の結果ロストステントの胆管内迷入および胆汁うっ滞 による胆管炎と診断された。前医にて経内視鏡的なステント回 収を試みたが、回収困難であったため当院紹介受診。入院後右 肝内胆管よりPTBDを施行した。胆道造影では両側肝内胆管の 拡張を認め、左肝内胆管内にロストステントの迷入を認めた。 吻合部から腸管内への造影剤の排出は認められたが胆管空腸吻 合部の狭窄を認めた。以上より膵管ロストステント胆管内迷入 および胆管空腸吻合部狭窄による胆汁うっ滞と診断した。段階 的に瘻孔を拡張し胆管空腸吻合部の狭窄に対しバルーン拡張を 施行。その後経皮的胆道鏡にて直視下にロストステントの回収 を行った。術式の改善や手技の工夫により膵頭十二指腸切除術 後の長期生存例が増加している。それに伴い、晩期合併症とし て胆管空腸吻合部狭窄やステントの迷入などの問題点が散見さ れるようになってきた。近年小腸内視鏡の登場により、胆管空 腸吻合部へのアプローチが比較的容易になり腹部手術の既往が あり、従来経乳頭的なアプローチが困難とされていた症例にお いても内視鏡下での経乳頭的治療が主体となっている。今回内 視鏡的治療が困難な症例に対して経皮的胆道鏡下の治療が有用 であった症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告す る。 IgG4関連硬化性胆管炎,腹部超音波検査 ― 40 ― 膵管ステント,胆管内迷入 77 79 診断に苦慮した下部胆管癌の一例 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 内視鏡部1) , 同 消化器・肝臓内科2) ,同 外科3) 阿部孝広1) ,川原洋輔1) ,林 依里1) ,永野智久2) ,關 伸嘉2) , 杉田知典2) ,会田雄太2) ,薄葉輝之3) ,加藤正之1) 症例】65歳女性【主訴】心窩部痛【現病歴】心窩部痛、閉塞性黄疸で 近医から紹介受診され、精査目的で入院となった。【既往歴】重度うつ 病【経過】入院後、施行した造影CTでは下部胆管の壁肥厚があり、胆 管が比較的急峻に狭小化する所見を認めたため、下部胆管癌もしくは 乳頭部癌を疑い内視鏡的逆行性胆道造影( ERC) を施行した。胆管造影 でも同様に下部胆管に不整な狭窄を認めた。Vater乳頭に異常所見は 認めなかった。非露出型Vater乳頭部癌を考え内視鏡的乳頭切開後に、 X腺透視下で生検および胆汁細胞診を提出したが、いずれも炎症細胞 のみで悪性細胞の診断には至らなかった。後日超音波内視鏡下穿刺吸 引術(EUS-FNA)を施行したが、炎症細胞のみであり確定診断は得ら れなかった。以上の結果より、胆管炎による良性胆管狭窄と考え、プ ラスチックステント(PS)を胆管内に留置し経過観察とした。画像所 見から悪性腫瘍を完全に否定できなかったため、発症4カ月後のPS交 換の際に下部胆管の狭窄部位から再度生検を施行したが炎症性変化の みであった。黄疸発症から10カ月で本人の強い希望でPSを抜去した。 抜去当日から発熱、腹痛を生じ2日後に当院救急受診し、急性化膿性胆 管炎( AOSC) と診断された。DIC、敗血症性ショックでありICU管理と なり、PSを胆管内に留置した。その後AOSCは軽快したがステントフ リーの状態では胆管炎のリスクがあり当院外科へコンサルトし、待機 的に胆管空腸吻合術を行う予定となった。しかし手術予定3週間前に、 再度胆管炎を発症した。PS閉塞を疑い、ERCを施行した。内視鏡画像 ではVater乳頭は以前と比べて乳頭状に増大しており、悪性腫瘍が疑わ れた。同部位から生検したところadenocarcinoma の診断に至った。黄 疸出現から1年で組織結果を得られ膵頭十二指腸切除術を施行された。 最終診断は下部胆管癌(管状腺癌)、pT3aN1Mx StageIIbであった。画 像では下部胆管癌を疑う所見だったが、生検で悪性所見を認めず確定 診断に苦慮した一例を文献的考察を含め報告する。 昭和大学医学部内科学講座 消化器内科学部門 本間 直,三井佑太,山宮 知,石井 優,佐藤悦基,岩田朋之, 野本朋宏,北村勝哉,池上覚俊,吉田 仁 症例】52歳女性. 2014年夏頃より胸やけが持続したため, 近医を受 診. 腹部超音波検査所見上, 膵腫大が疑われ, 総合病院を紹介受診 するも経過観察の方針となった. 秋に近医で再度, 超音波検査を施 行したところ, 膵腫大・肝内外胆管の拡張所見を認めたため, 当院 当科を紹介受診. 血液検査所見でIgG高値かつCT上, びまん性膵腫 大・鎖骨下∼鼠径の多発リンパ節腫大を認め, IgG4関連疾患による 自己免疫性膵炎が疑われた. 黄疸出現のため, 精査・加療目的で入 院となった. 初診時のCT所見は, 膵頭部から尾部までのびまん性腫 大・総胆管拡張・左鎖骨上から大動脈周囲リンパ節腫大・鼠径部の リンパ節腫大に加え, 膵腫大に伴う脾静脈閉塞および脾うっ血に よる脾腫大を認めた. 入院後、乳頭生検・下部胆管狭窄部に対し擦 過細胞診・胆管生検を施行したが, 明らかなIgG4陽性所見は得られ なかった. EUS-FNAを施行し, 腫大した膵頭部より穿刺(30スト ローク×3検体)したが, やはり病理所見は, リンパ球や形質細胞を 主体とする軽度の炎症細胞浸潤を認めたが, 有意なIgG4陽性所見 は得られなかった. 一方,悪性所見も認められなかった. 病理学的 診断には至らなかったが, 悪性所見を認めず, びまん性膵腫大・高 IgG4血症・膵外病変も示唆され, 自己免疫性膵炎を疑い, 診療ガイ ドラインに則し, PSL(経口プレドニゾロン) 0. 6mg/ kg/ 日より投 与開始となった. 開始1ヶ月後の造影CTで, 膵腫大は著明に軽快し, 腫大リンパ節も縮小傾向にあった. 脾静脈の描出も改善しうっ血 も改善の傾向にあった. PSLによる寛解療法開始3ヶ月後より維持 療法開始となった. CT画像所見上も脾静脈の閉塞および脾腫も軽 快していた. 本例は, 自己免疫性膵炎(疑診)による膵腫大の過程 において, 脾静脈を圧排し, 脾うっ血を呈し, PSL投与により軽快し た. 重症急性膵炎の炎症の波及による脾静脈閉塞と自己免疫性膵 炎による膵腫大に伴う脾静脈閉塞の過程の違いに関して考察を含 め検討した. 稀な症例と考えられ, 文献的考察を加え報告する. 下部胆管癌,ERCP 78 AIDS治療中に発症した自己免疫性膵炎、IgG4関連 疾患の一例 日本私立学校振興・共済事業団東京臨海病院 消化器内科 大池 翼,市川欧子,小黒雅子,金野 朗,櫻井則男, 山田俊夫 病歴】60歳代男性。40代でAIDSを発症し、HAART治療により コントロール良好だった。50代で腸管アメーバ症になった。1 年前には頸部22mm大の腫瘤を認め、切除標本により反応性リ ンパ濾胞過形成と診断され、AIDS関連リンパ節症と考えられ た。今回、腹痛、背部痛を生じ、血液検査で肝障害、黄疸を認 めたため、当科を受診した。 【検査所見】腹部造影CT検査で膵 にびまん性腫大、総胆管狭窄、肝内胆管拡張を認めたため、自 己 免 疫 性 膵 炎 を 疑 っ た。IgG4 は 1160mg/ dl と 高 値 で あ っ た。 EUSでは膵はびまん性に腫大し粗造であった。ERCPでは総胆 管は中部で狭窄し、末梢胆管は拡張していた。膵管には拡張は 認めず、自己免疫性膵炎に矛盾しない所見だった。【経過】内視 鏡的胆管膵管ドレナージを行い、肝機能は改善傾向を示した。 経過中に両上眼瞼腫脹を認め、IgGは4114mg/ dlと上昇した。 IgG4関連疾患の病勢が増悪したと考え、プレドニゾロン(PSL) 40mg(0. 6mg/ kg)投与を開始し、眼瞼腫脹、膵腫大は改善し、 IgG4は低下傾向となり、IgGは正常化した。胆管生検の免疫染 色ではIgG4陽性細胞は20個/ HPF認め、間質の線維化傾向およ びリンパ球・形質細胞浸潤を認めることからIgG4関連疾患と考 えた。前年に行われた左頚部リンパ節腫脹も同時に免疫染色を 行 っ た と こ ろ、IgG4 陽 性 細 胞 は 100 個 / HPF を 超 え て お り、 IgG4/ IgG陽性細胞率も40%以上のためIgG4関連病変と思われ た。またシェーグレン症候群の合併も疑われた。 【考察】自己 免疫性膵炎はIgG4関連疾患として位置づけられ、近年、報告例 が増えてきているが、AIDS経過観察中の報告はきわめて少な く、興味深い症例と考えられたため、文献的考察を加えて報告 する。 脾臓のうっ血腫大を呈した自己免疫性膵炎疑診の 1女性例 自己免疫性膵炎,脾静脈閉塞 80 EUS-FNA検体の免疫組織学的診断が有用であった SPNの1例 埼玉医科大学国際医療センター 消化器内科1) , 同 消化器外科2) ,同 病理診断科3) 岩野博俊1) ,良沢昭銘1) ,田場久美子1) ,佐藤洋子1) ,谷坂優樹1) , 岡田克也2) ,宮澤光男2) ,山口 浩3) ,須藤晃佑1) ,新井 晋1) , 真下由美1) 症例は41歳、男性。検診の腹部超音波検査で膵体部腫瘤を指摘され、前医 の腹部CTで膵体部腫瘤を認めたため、精査加療目的で当院紹介受診となっ た。腹部症状はなく、腹部理学所見も特記すべき所見は認めなかった。既 往歴は交通外傷による右膝ボルト挿入、飲酒歴はビール350ml/ 日×20年で あった。造影CTでは、膵体部に12mm大の早期相で低吸収、遅延相で不明 瞭となる腫瘤を認めた。腫瘤は脾静脈と接していたが、静脈径の狭小化は 認めなかった。腫瘤の尾側主膵管の拡張は認めなかった。明らかな腫大 リンパ節や遠隔転移は認めなかった。PET-CTでは、膵体部に限局性の集 積(SUVmax 4. 3)を認めたが、ほかの部位には異常集積を認めなかった。 EUSでは膵体部に15mm大の境界やや不明瞭な低エコー腫瘤を認め、尾側 の主膵管拡張は認めなかった。脾静脈との境界高エコーは保たれており、 血管浸潤は認めなかった。確定診断目的で引き続きFNAを施行した。細 胞診はclass I、組織診は血腫と腺房細胞を認めるものの、異型細胞は認め なかった。2週間後に再度EUS-FNAで得られた検体でも、細胞診はclass I、 組織診でも明らかな悪性所見を認めなかった。炎症性腫瘤を疑い、経過観 察の予定としていたが、念のために行った免疫染色でβカテニンの核内発 現を認め、初回FNA検体を含めて再度検討した結果、腺房細胞でも膵管細 胞でもない帰属不明瞭な細胞集塊、中心部無核帯を伴う偽ロゼット様配 列、細胞質空胞が目立つ部があり、βカテニンがびまん性に核陽性、CD10 陽性であった。以上よりsolid-pseudopapillary neoplasm(SPN)と診断し、 膵体尾部切除を施行した。術後標本では、膵体部の14×10mm大の境界や や不明瞭な結節状腫瘍であり、被膜形成は認めなかった。組織学的には腫 瘍は周囲膵実質内に、間質反応などを伴うことなく島状、skip状に進展す るSPNであった。今回、診断に難渋したものの、FNA検体の詳細な検討に より確定診断しえた小さなSPNの1例を経験したので、若干の文献的考察 を加えて報告する。 自己免疫性膵炎,AIDS ― 41 ― solid-pseudopapillary neoplasm,EUS-FNA 81 動脈塞栓術が有効であった右胃大網動脈瘤破裂の1 症例 総合病院土浦協同病院 消化器内科 鈴木 快,市田 崇,久保田洋平,吉行綾子,渡邉剛志,柴田 江頭徹哉,鈴木雅博,草野史彦,酒井義法,田沢潤一 勇, 症例】73歳、男性【主訴】腹痛【既往歴】心房細動、僧房弁閉 鎖不全、慢性腎臓病【現病歴】20XX年4月急激な腹痛を主訴に 近医を受診し、単純CTにて当初腹腔内腫瘤破裂を疑われ当院 紹介となった。当院で施行した造影CTで胃大弯側に5cm大の血 腫を疑う腫瘤影、中等量の高吸収域を示す腹水、右胃大網動脈 の紡錘状動脈瘤を認めた。動脈瘤破裂による腹腔内出血と診断 し緊急で血管造影を同日施行した。右胃大網動脈末梢に拡張を 認め同部位にコイル塞栓術を施行した。数日安静にて経過観察 したが、明らかな貧血進行、症状増悪等認めず、第8、19病日の CTで経時的に血腫、腹水の縮小を認め退院した。 【考察】腹部 内臓動脈瘤は比較的まれな疾患であり、その中でも胃大網動脈 瘤は0. 4%と報告されている。医学中央雑誌にて「胃大網動脈 瘤」をキーワードに検索したところ31症例を認めた。塞栓術に て治療された症例は10例であった。今回動脈塞栓術が有効で あった1症例を経験したので若干の文献的考察を踏まえ報告す る。 大網動脈瘤,動脈塞栓術 ― 42 ―
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