レベルシフト回路の解析 - 群馬大学工学部 電気電子工学専攻

レベルシフト回路の解析
群馬大学 工学部 電気電子工学科
通信処理システム工学第二研究室
96305033 黒岩 伸幸
指導教官 小林 春夫 助教授
1
ー発表内容ー
1.研究の目的
2.レベルシフト回路の原理
3.レベルシフト回路の動作条件
4.レベルシフト回路のダイナミクスの解析
5.まとめ
2
1.研究の目的
3
研究の目的
→信号レベルを変換するレベルシフト回路の
設計法を確立する。
このために、次の事を行う。
〇レベルシフト回路の動作条件式の導出
〇レベルシフト回路のダイナミクスの理論
およびシミュレーションによる解析
4
2.レベルシフト回路の原理
5
レベルシフト回路とは
• 入力波形と相似で
信号を出力する回路
• 振幅レベルが異なる
⇒DCレベル変換回路
( 例:5V)
入力電圧
VddL
時間
VddH
出力電圧
( 例:20V)
時間
●実際の回路への使用例
→チャージポンプ回路等
6
レベルシフト回路の実現法
VddH
•入力 Vin: 0 or VddL
MP1
(例:20V)
MP2
•出力 Vout1、Vout2: 0 or VddH
Vout1
•MP1、MP2の
ポジティブフィードバック
Vin
MN1
Vout2
MN2
Vin(0 orVddL )
(例:5V)
7
回路の動作説明
VddL =5v、VddH =20vとする
20v
20v
0v
20v
0v
⇒
0v
5v
①初期状態
20v
⇒
20v
⇒
⇒
ON
0v
ON
Vout2
ON
③Vout2の電位が下がる
5v
②入力を反転
20v
0v
ON
0v
5v
ON
Vout1
0v
Vout2
ON
5v
④Vout1の電位が上がる
20v
0v
0v
5v
⑤最終状態
8
3.レベルシフト回路の動作条件
9
~問題設定~
⇒レベルシフト回路が動作するための
次のパラメータの関係式を導出する
 W

p
 L
• 出力電圧 VddH
•入力電圧
VddH
VddL
•NMOSのデバイスサイズ
•PMOSのデバイスサイズ
W 
 
 L N
W 
 
 L P
•NMOS,PMOSのモデル及び 0~VddL
デバイスパラメータ値
 W

N
 L
0~V
ddL
10
~レベルシフト回路の動作条件~
→十分な時間の後に
VddH
VddH  Vout 2  Vgs  Vthp
が動作条件
Vgs
↓
線形
ON
Vout 2  VddH  Vthp のとき
I1  I 2  0
I2
I1  I2
・・・①
Vout2(t)
PMOS:線形、NMOS:飽和
I1
MOSの電流式を適用
W 
2
I1  K n   Vin  Vthn  ・・・②
 L n
2
1
W  
I 2  2 K p    Vdd  Vthp  Vthp  Vthp  ・・・③
2
 L p



ON
飽和
Vin
Vout2の電位が下降中
11
②、③→①より、
レベルシフト回路の動作条件
Vin 
W 
K p 
 L p
Vthp 2Vdd  3Vthp  Vthn
W 
Kn 
 L n


回路の最低駆動入力電圧 Vin min は
Vin min

W
K p
 L
W
Kn
 L


p
Vthp 2Vdd  3Vthp  Vthn


n


12
最低駆動電圧とパラメータとの関係
~シミュレーション値の求め方~
PMOS、NMOSの
W/L、
VddH Vthp 、
をそれぞれ変える
↓
VddH
PMOSのW/L
Vthp
NMOSのW/L
SPICEシミュレーションに
より最低駆動電圧の
変化をみる
13
~理論値の求め方~
Ids
回路に使用したMOSの
Vgs-Ids曲線を求める
Vgs
↓
MOSの関係式に代入し、
Kp、Knを算出
↓
↓
導入式に各パラメータ値を
代入
14
導入式の検証方法
①PMOSのW
②電源電圧 VddH
③ PMOSのスレショルド電圧 Vthp
それぞれ変化させて理論値とシミュレーション値を比較
15
①.PMOSのWと最低駆動電圧の関係
• PMOSのWを変化
min Vin(V)
→シミュレーション値・理論値共に Vin min  W p の傾向が一致。
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
シミュレーション値
理論値
0
100
200
300
PMOSのW(μm)
400
500
600
16
②.VddH と最低駆動電圧との関係
•電源電圧 VddH を変化
→理論値とシミュレーション値にずれ
⇒NMOSの電流式を
W 
2
I1  K n   Vin  Vthn  1   Vds  に変更
 L n
→シミュレーション値の傾向に近づく
3.5
3
min Vin(V)
2.5
シミュレーション値
理論値(λ無)
理論値(λ有)
2
1.5
1
0.5
0
0
20
40
60
Vdd(V)
80
100
120
17
③.スレショルド電圧 Vthp と最低駆動電圧の関係
•PMOSのVthp を変化
→ほぼ一致
2.5
min Vin(V)
2
1.5
シミュレーション値
理論値
1
0.5
0
0
5
10
Vthp(V)
15
18
~導入式の検証についてのまとめ~
①.PMOSのW
②.電源電圧 VddH
の三点について、
導入式の正当性を確認
③.スレショルド電圧 Vthp
精度の向上⇒厳密なMOSの電流式が必要
19
4.レベルシフト回路のダイナミクス
の解析
20
~レベルシフト回路のダイナミクスの解析点~
→回路を過渡解析したときの出力の遅延時間が問題
⇒遅延の原因を究明、モデル式を立てる
出力
Vout1
Vout2
Vthp
時間
入力
Vin
Vin
SPICEシミュレーション波形
21
~解析方法~
①. t1~t3をSPICEで測定する
•Vout2の遅延時間
t1: VddH → Vthn
出力
Vout2
Vout1
Vthp
•Vout1の遅延時間
t2:
Vthn → VddH‐
Vthp
Vthn
•全体遅延時間
t3:入力が反転→ VddH ‐Vthp
入 力 Vin
時間
t2
t1
t3
Vin
時間
22
PMOSのWと遅延時間の関係
VddL =5v、W N =50μm、
( VddH =20v、
L =16μm、
P
L
=4.2μm)
N
12
遅延時間(ns)
10
8
立下り遅延
6
立上り遅延
4
全体の遅延
2
0
0
20
40
60
80
PMOSのW(μm)
100
120
PMOSのW→小:Vout2の立下りが早い
→大:Vout1の立上りが早い
⇒最適なWが存在
23
②差動出力ノード間の寄生容量の影響
Vout1の立ち上がり開始が遅い
↓
Vout1
Vout2
ダミー容量:Cm
Vout1、Vout2間の寄生容量が原
因?
↓
ダミー容量:Cmを回路に組み、
出力
その効果を見る
Vout2
予想波形
Vout1
Vthp
シミュレーション波形
24
時間
ダミー容量:Cmを取り付けた時の出力
VddH =20v、VddL=5v、
WP
=10μm、 W=50μm、
N
L=16μm、
P
25
25
20
20
20
15
15
15
10
出力電圧(V)
25
出力電圧(V)
出力電圧(V)
(
10
0
0.00E+00 4.00E-08 8.00E-08 1.20E-07 1.60E-07 2.00E-07
-5
時間(s)
Cp=0
10
5
5
5
LN
=4.2μm)
0
0.00E+00 4.00E-08 8.00E-08 1.20E-07 1.60E-07 2.00E-07
0
0.00E+00 4.00E-08 8.00E-08 1.20E-07 1.60E-07 2.00E-07
-5
-5
時間(s)
Cp=1p
時間(s)
Cp=5p
•Cm→大:Vout1の立ち上がり開始が遅くなる
25
~ダイナミクスのモデル式の導出~
今までの結果を踏まえてモデル式を導く
dVout1
I1  C1
dt
dVout 2
I 2  C 2
dt
dVm
I m  C m
dt
Vdd
I1+Im
I3
Vout1
C1
Vm  Vout 2  Vout1
I1
Vout2
Im
Cm
Im
I2
Vm
I2+I3+Im
Vin
Vin
26
C2
4.まとめ
27
まとめ
○研究成果
•レベルシフト回路の動作条件式を導出した
•レベルシフト回路のダイナミクスの微分方程式を導出した
○今後の課題
•MOSの厳密モデル式を用いて
より高精度な動作条件式の導出
•ダイナミクスを表す微分方程式の解析
28
PMOSのWと遅延時間の関係
( VddH =20v、VddL=5v、W N=50μm、
L=4.2μm)
L =16μm、
N
P
10
9
8
遅延時間(ns)
7
t1
t2
t3
t4
t5
6
5
4
3
2
1
0
0
20
40
60
PMOSのW(μm)
80
100
120
29
シミュレーション結果
Vout2
PMOSのWが小さければ小
さいほど早いわけではない
W→大で傾きは緩やかに
↓
最適なWの設計が必要。
Vout1
W=大で
傾きは
急になる
W=大で長くなる
30
~シミュレーション結果~
ダミー容量と遅延時間の関係を証明
↓
寄生容量がレベルシフト回路の
スピードを遅くしている原因の一つと
いえる
31
まず、回路の片側だけについて、考えてみる。
図1の、抵抗についての
等価回路
→図2のようになる。
Vdd
Vdd
PMOS
Rp
等価回 路
Vom
Vom
Vin
Rn
NMOS
図1
32 図2
レベルシフト回路の動作条件
→右図で十分時間がたったとき、
Vdd
Vdd  Vom  Vthp ・・・①を満たすことである。 MP1
t1  t 2
I2
とすると、Vom t1   Vom t 2  であるから
I1 t1   I 2 t 2  である。
 Vom  Vdd  Vthp のとき I  I ・・・②
1
2
Vom(t)
C
I1  I2
が満たされていれば成り立つ。
MN1は飽和、MN2は線形領域
→
W 
2
I1  K n   Vin  Vthn  ・・・③
 L n
2
1
W  
I 2  2 K p    Vdd  Vthp  Vthp  Vthp  ・・・④
2
 L p


Vin
I1
MN1

33
Vdd
~基本動作②~
MP1
②Vin=Hiのとき
Vin=Hiなので、
MN1=OFF、 MN2=ON
→ MP1 =ON になる
→ Vout1 =Vdd が出力。
→ MP2 =OFF
→ Vout2 =0
ON
MP2
OFF
Vout2=0
Vout1=Vdd
C1
Vin=Lo
C2
MN1
MN2
Vin=Hi
OFF
ON
34
回路の動作条件について
(1)VinがLoからHiに反転すると、MN1はONからOFFに、MN2は
OFFからONになる。
(2)MP1がOFF からONになるためには
V p  Vdd  Vout 2
とすると、
V p  Vth PMOS
を満たせばMP1は反転する。
(3)Vout1が反転すればMP2もONからOFFに反転。
35
レベルシフト回路の実際の回路への使用例
•チャージポンプ回路に使用
36
③、④→②


2
1
W 
W  
2
K n   Vin  Vthn   2 K p    Vdd  Vthp  Vthp  Vthp 
2
 L n
 L p

 Vin  Vthn 
W 
K p 
 L p
Vthp 2Vdd  3Vthp
W
 
Kn 
 L n


・・・⑤
 回路の最低駆動電圧 Vin min の一時近似式は
Vin min 
W 
K p 
 L p
Vthp 2Vdd  3Vthp  Vthn ・・・⑥
W
 
Kn 
 L n


37