農 環 研 報 Bull. Natl. Inst. Agro Environ. Sci. ISSN 0911−9450 CODEN : NKGHEW 農業環境技術研究所報告 第 34 号 目 次 原著論文 農業環境技術研究所における東京電力福島第一原子力発電所事故関連の2011年の放射能研究 (1)つくば市において観測された東京電力福島第一原子力発電所事故直後から1年間の葉菜, 土壌および降水中の放射性核種濃度の推移 …………………………………大瀨健嗣・木方展治・井上恒久・栗島克明・福囿康志・谷山一郎……… 1 (2)福島第一原発事故直後の関東地方における野菜類の放射性物質濃度 …………………………………………………………………………木方展治・大瀬健嗣・谷山一郎……… 11 (3)福島第一原発事故直後の福島県周辺の農地土壌における放射性物質濃度 …………………………………………………………………………木方展治・大瀬健嗣・谷山一郎……… 23 (4)放射性物質沈着初期の農地土壌からの放射性セシウムの抽出 …………………………………山口紀子・江口定夫・池羽正晴・藤原英司・牧野知之・谷山一郎……… 29 (5)農業環境技術研究所畑圃場における農作業に伴い巻き上がる土壌粒子に含まれる放射性物質 ………………………………………………山口紀子・江口定夫・林健太郎・藤原英司・塚田祥文……… 33 (6) 農地表層土壌中の放射性セシウム濃度分布図作成のための緊急調査 ……高田裕介・神山和則・小原 洋・前島勇治・平舘俊太郎・木方展治・齋藤 隆・谷山一郎……… 43 (7) 東日本の農地表層土壌中の放射性セシウム濃度分布図の作成 ……………………高田裕介・神山和則・小原 洋・前島勇治・石塚直樹・齋藤 隆・谷山一郎……… 53 (8) 2011年高濃度玄米解析のための福島県土壌データ …………………神山和則・小原 洋・高田 裕介・齋藤 隆・佐藤睦人・吉岡邦雄・谷山一郎……… 63 (9) 水を用いた土壌撹拌-吸引排水法による水田からの放射性セシウム除去技術の開発 ……………………牧野知之・赤羽幾子・山口紀子・荒 貴裕・山口 弘・木方展治・藤原英司……… 75 太田 健・石川哲也・村上敏文・江口哲也・神谷 隆・青野克己・齋藤 隆 (10) 2011年の福島県における衛星データを使用した農地の土地被覆状況把握……………石塚直樹……… 81 研究資料 農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 …………………………………………………………………………吉松慎一・中谷至伸・吉武 啓……… 101 独立行政法人 農業環境技術研究所 (平成27年3月) 農業環境技術研究所報告 第34号 審査会 BULLETIN OF NATIONAL INSTITUTE FOR AGRO-ENVIRONMENTAL SCIENCES No.34 EDITORIAL BOARD 委員長 Chairman 副委員長 Vice Chairman 委 員 Editors 井 手 任 Makoto Ide 與 語 靖 洋 Yasuhiro Yogo 廉 沢 敏 弘 Toshihiro Kadosawa 山 本 勝 利 Katsutoshi Yamamoto 坂 爪 栄 二 Eiji Sakatsume 鳥 谷 均 Hitoshi Toritani 大 谷 卓 Takashi Otani 藤 井 毅 Takeshi Fujii 研究統括主幹 Principal Research Director 研究コーディネータ Principal Research Coordinator 広報情報室長 Head, Public Relations and Information Office 企画戦略室長 Head, Research Planning Office 財務管理室長 Head, Accounting Office 生態系計測研究領域長 Director, Ecosystem Infomatics Division 有機化学物質研究領域長 Director, Organochemicals Division 生物生態機能研究領域長 Director, Environmental Biofunction Division 掲載論文等については、 農業環境技術研究所ウェブサイト内でも公開いたしますので、 併せてご利用くだ さるようお願いいたします。 [トップページURL] http://www.niaes.affrc.go.jp/ 序 文 2011 年 3 月 11 日の東日本大震災に伴い、東京電力福島第一原子力発電所で炉心溶融事故が 発生し、多量の放射性物質が外部環境に放出され、福島県を中心に、東日本の広範囲において 農作物や土壌が放射性物質に汚染されました。(独)農業環境技術研究所(以下、農環研)は 60 年以上に渡る環境放射能調査・研究の実績を生かし、事故発生当初から他の農業試験研究機 関等と連携して、農産物や土壌などの汚染実態の把握にあたりました。大気からの降下による 汚染が収まってからは、作物による放射性物質の経根吸収の要因解明に関する研究を実施し、 吸収抑制や除染に関する技術開発を進めてきました。 本報告では、「 農業環境技術研究所における東京電力福島第一原子力発電所事故関連の 2011 年の放射能研究 」 と題して、特に 2011 年、事故直後から農環研で進められた様々な緊急対応研 究等に絞って 10 報の論文を掲載しました。 福島第一原発から南南西約 170km の位置にある茨城県つくば市においても、3 月 15 日に放 射性プルームが通過し、高い線量率が観測されました。論文 1 では、つくば市にある農環研の 圃場における事故直後から 1 年間の、葉菜、土壌及び降水中の放射性核種濃度の推移について 取りまとめています。また、論文 2 及び 3 では、事故直後から県から緊急的に分析を依頼され た関東地方の野菜類の放射性物質濃度の推移や、福島県周辺の農地土壌の放射性物質濃度の分 析結果をとりまとめています。 論文 4 及び 5 では、放射性物質沈着初期の農地土壌を用いた放射性セシウムの抽出結果や、 農作業に伴い巻き上がる土壌粒子に含まれる放射性物質の評価について報告しています。 農環研では文部科学省の航空機モニタリングによる空間線量率マップ、デジタル農地土壌図 および放射性セシウム濃度の実測値に基づいて、農地土壌の放射性セシウム濃度分布図を作成 して公開しました。論文 6 及び 7 では 2011 年度に実施した緊急調査と本調査について取りまと めています。 また、論文 8 及び 10 では、2011 年秋に国の暫定規制値を上回る濃度の放射性セシウムが福 島県産の玄米から検出されたことを受けて取り組んだ、規制値超過要因の解析に関係する調査 を取りまとめました。 除染技術については、事故後に耕作が行われた圃場を対象とした、水を用いた土壌撹拌 - 吸 引排水法について、論文 9 で取りまとめました。 東京電力福島第一原子力発電所の事故から 4 年が経過しました。2014 年産の福島県の玄米の 全袋調査約 1100 万袋のうち基準値を超えたものはなく、カリ肥料の施用などの吸収抑制対策 の効果が確認されています。しかし、福島県の農耕地土壌で放射性セシウム濃度が 5000 Bq/ kg を越えている面積は数千 ha あると推定され、農環研では、今後も農業環境中の放射性セシ ウムの動態と作物吸収に関する実態把握や将来予測研究を進めていきます。 また、2012 年には、「土壌―植物系における放射性セシウムの挙動と要因解明」について過 去の研究をとりまとめた総説を農環研報告第 31 号 (2012) に掲載しました。こちらもご活用下 さい。 1 農環研報 34, 1-9(2015) つくば市において観測された 東京電力福島第一原子力発電所事故直後から1年間の葉菜、 土壌および降水中の放射性核種濃度の推移 Changes in radionuclides concentration in leafy vegetables, soil and precipitation for a year after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident; In case of Tsukuba City, Japan. 大瀨健嗣*・木方展治**・井上恒久***・栗島克明****・福囿康志*****・谷山一郎****** (平成26 年12月2日受理) シノプシス: 東京電力福島第一原子力発電所から南南西およそ 170km の距離にある茨城県つくば市の農業 環境技術研究所圃場において、事故直後から、葉菜、土壌について 1 年間、降水について 8 月間、 それらに含まれる放射性核種(131I、134Cs、137Cs)濃度を調査した。3 月 15 日につくば市を通過し た放射性プルームからの乾性沈着により、葉菜の 131I 濃度は著しく増加したが、事故後の 3 月 21 日から 3 月 23 日にかけての最初の降水による湿性沈着の寄与は比較的小さかった。また、ホウレ ンソウとコマツナとでは各放射性核種濃度の推移に相違があった。一方、土壌中の放射性核種濃 度は最初の降水による湿性沈着による増加がきわめて大きく、最初の降水の前に通過した放射性 プルームによる乾性沈着の寄与は小さかった。 Ⅰ まえがき 福島第一原発)は全交流電源を喪失した。その結果、冷 却機能のほとんどが失われ、翌 3 月 12 日には 1 号建屋で 東北地方太平洋沖を震源とするマグニチュード 9.0 の 水素爆発が発生、さらに 3 月 14 日から 3 月 16 日にかけ 地震が 2011 年 3 月 11 日 14 時 46 分に発生し、これに伴う て、相次いで 2 号建屋、3 号建屋、4 号建屋で爆発や火災 津波によって、東京電力福島第一原子力発電所(以下、 が発生し、大量の放射性核種が大気中に放出された。放 * 元土壌環境研究領域(現福島大学) ** 土壌環境研究領域 *** 元土壌環境研究領域(現日本土壌協会) **** WDB(株) ***** (株)リクルートスタッフィング ****** 元研究コーディネータ 2 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 出された放射性核種により、福島県を始めとする東北地 は、放射能調査研究の一環として、全国各地の定点圃場 方及び関東地方を中心に、東日本の広い範囲で高い放射 から採取した農産物および土壌の放射能モニタリングを 線量が観測されるとともに、農畜産物や土壌の深刻な放 行うとともに、放射能事故等の非常時に対応することを 射能汚染が次々と報告された。福島第一原発から南南西 目的に、研究所内の圃場で常時葉菜を栽培し、速やかに 約 170km の位置にある茨城県つくば市においては、3 月 放射性核種の測定を行う体制を整えている。今回の事故 -1 15 日に放射性プルーム(放射能雲)が通過し、1.27 μSvh においては、緊急時対応として 3 月 12 日から 1 年間葉菜 をピークに高い線量率が観測された(佐波ら, 2011) 。 および土壌を採取するとともに、降雨ごとに降水も採取 大気中に放出された放射性核種は、乾性沈着と降水に し、それらに含まれる放射性核種濃度について経時変化 よる湿性沈着により、植物および土壌に沈着する。植物 を調査したので報告する。 への移行経路には、放射性核種の葉面等植物地上部から Ⅱ 試料および方法 の取り込み及び土壌を経由した根からの吸収が報告され て い る( 津 村 ら, 1984;Zehnder ら , 1995;Singhal ら, 2004)。また、放出された放射性物質は、土壌中におけ 農環研は茨城県つくば市の南部にあり、北緯 36°01′38″、 る挙動や土壌から植物への移行が核種毎に異なることが 東経 140°06′37″、筑波-稲敷台地上の標高約 20 m に位置 報告されている(結田ら, 2002;Ban-nai ら, 2002)。しか する。福島第一原発からは南南西に約 170 km離れている 。 (図 1) しながら、これらの報告の多くは、大気圏内での核実験 葉菜および土壌は、同じ敷地内にある圃場から定期的 に起因する降下放射性核種に関するものか、実験室で得 に採取した。採取した葉菜類は、主としてホウレンソウ られた結果である。 (Spinacia oleracea L.)およびコマツナ(Brassica rapa var. 独立行政法人農業環境技術研究所(以下、農環研)で 200 km 福島市 100 km 福島第一原発 20 km つくば市 図 1 福島第一原発に対するつくば市の位置 大瀨健嗣ら:つくば市において観測された東京電力福島第一原子力発電所事故直後から1 年間の葉菜、土壌および降水中の放射性核種濃度の推移 3 表 1 栽培した葉菜の播種および採取日一覧 作目名 ホウレンソウ 品種名 播種日 採取年月日 年 月日 ソロモン(針葉系) 2010/11/5 2011 3/12,3/13,3/14,3/15,3/16,3/19,3/24,4/1 ソロモン(針葉系) 2010/11/11 2011 4/21,4/28,5/6 ソロモン(針葉系) 2011/3/24 2011 5/12,5/26 アクティブ(針葉系) 2011/4/14 2011 6/24,7/8,7/21 ソロモン(針葉系) 2011/10/6 2011 10/28,11/10,11/25,12/8,12/22 2012 1/5,1/18,2/6,3/13 ソロモン(針葉系) 2011/11/2 2012 3/29 3/15,3/16,3/19,3/22,3/23,3/24,3/25, わかみ 2010/10/18 2011 3/28,3/29,3/30,3/31,4/1,4/4,4/6,4/8, 楽天 2011/3/24 2011 4/11,4/15 5/12,5/26,6/9 コマツナ 楽天 2011/4/14 2011 6/24,7/8,7/21,9/5 ニラ (不明) 2010/3/12 2011 6/9,6/23 チンゲンサイ 夏帝 2011/7/12 2011 9/5 perviridis)であり、両圃場は約 150 m 離れている。さら 落葉等の浮遊物を取り除いた後、そのままマリネリ容器 に、ホウレンソウ栽培圃場に隣接した圃場でチンゲンサ に封入した。ただし、透明性が損なわれる程の浮遊物が イ(Brassica rapa var. chinensis) お よ び ニ ラ(Allium ある試料は、定性ろ紙(No.2)によるろ過を行った。放射 tuberosum)を補足的に採取した。採取した葉菜の播種日 性核種濃度の測定は、ゲルマニウム半導体検出器で行っ と採取日は表 1 に示した。それぞれの試料は、対角線法 た。 により圃場の 5 ヶ所から採取し、混合した。その際、土 Ⅲ 結果および考察 壌の混入が起こらないように、地上部 2 ~ 3 cm より上部 をステンレススチール製の刃で切断した。洗浄は行わず に、1 ~ 2.5 cm 角程度に裁断し、2 L 容のアクリル製マリ 1)放射性プルーム通過による放射能汚染 ネリ容器(以下マリネリ容器)に充填した後、同軸形ゲ 佐波ら(2011)によると、つくば市に原発事故の放射 ルマニウム半導体検出器(セイコ-EG&G 社製、1.33 KeV 性プルームが最初に到達したのは 3 月 15 日の 2 時 13 分 相対検出効率 58%および 55%、以下ゲルマニウム半導 であり、その日の 8 時 38 分に 1.27μSv h-1 の最大値が観 体検出器)で放射性核種濃度を測定した。水による洗浄 測された。つくば市において葉菜類から人工放射性核種 効果を見るために、コマツナの一部は流水で洗浄し、蒸 が検知されたのは、表 2 に示すように、3 月 15 日からで 留水で濯いだ後、水切りをしてから切断しマリネリ容器 あり、放射性プルームの到達時期と合致した。放射性プ に充填した。土壌表層における放射性核種濃度の推移を ルームは測定器の汚染を引き起こし、福島第一原発事故 調べるための土壌試料は、福島第一原発事故時にホウレ 前には 0 と見なすことができたバックグラウンド値が、 ンソウが作付けされていた圃場から採取した。この圃場 2011 年 3 月 15 日以降は認められるようになった。3 月 18 は、事故後から採取していた間には耕起は行わなかっ 日に得たバックグラウンド値は、131I で 2 Bq 相当、134Cs お た。この圃場の土壌は表層多腐植質黒ボク土に分類され よび 137Csで 1.5 Bq相当で、観測した中では最大であった。 た。対角線法により圃場の 5 ヶ所から、土壌物理性測定 2011 年 3 月 15 日~ 31 日までの期間においては、2 L マリネ 用の 0.1 L用ステンレス円筒を用いて、0 ~ 5 cmの深さの リ容器に封入した作物試料の最小値は、131I で 500 Bq、 試料を採取し、混合した。水分を含んだまま厚さ 2 cm、 134 96 ml 容のスチロール製容器に充填した後、ゲルマニウ し引かない場合の誤差は 131I で 0.4%以内、134Cs および ム半導体検出器で放射性核種濃度を測定した。 137 Csおよび 137Csで 25 Bqであり、バックグラウンドを差 Cs で 6%以内にそれぞれ収まると考えられた。この期 降水試料は研究所の敷地内に 90 L 容のポリエチレン 間においては、バックグラウンド値の変動が激しく、正 製容器を設置し、降水ごとに回収した。 採取した降水は、 確な差し引きが困難であったこともあり、バックグラウ 4 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) ンド値の差し引きは行わなかった。なお、表 2 の 3 月 14 99 Mo(2.7 日)が検出され、放射性プルームが多核種によ 日までの試料は、放射性プルーム通過前に測定を開始し る汚染を引き起こしたと考えられた。 ており、各核種のピークも認められなかったことから、 2)降水による放射能汚染 この期間のバックグラウンド値は各核種 0 Bq 相当と考 えられた。 福島原発事故後の降水中の放射性核種濃度および降水 図 2 に、3 月 15 日に採取したコマツナ試料のγ線スペ 量の推移を図 3 に示した。福島第一原発事故後に 1 mm以 「The 8th クトルを示した。人工放射性核種として、 I( 上の降水量が観測された最初の降水イベントは、3 月 21 edition of the Table of Isotopes」による半減期 8.0 日、以 日から 23 日にかけて発生した。同月の 9 日に 23.5 mm の 、 I(0.9 日) 、 Cs 下同じ) 、 I(0.1 日、 Te の娘核種) 降雨があって以来、12 日間 0 mm を超える降雨は発生し 、 Cs(13.2 日) 、 Te(3.2 (30.167 年)、 Cs(2.065 年) ておらず、それまでは大気は乾いた状態が続いていたと 131 132 132 133 134 日) 、 129m 137 136 132 Te(33.6 日) 、 Tc(0.25 日、 Mo の娘核種)、 99m 考えられる。図 4 に、2011 年 3 月 21 日 9 時から 3 月 22 日 99 表 2 地震翌日から放射性プルーム通過までのホウレンソウの放射性物質濃度変化 放射性核種 単位 3 月 12 日 3 月 12 日 試料採取日時 3 月 13 日 3 月 14 日 3 月 15 日 16 時 40 分 < 0.22 9 時 40 分 < 0.22 10 時 40 分 < 0.30 9 時 10 分 10500 ± 10 ** 107 ± 2.6 98.7 ± 4.8 206 ± 5.4 131 Bq kg 7 時 40 分 < 0.30 * 134 Bq kg-1 < 0.17 < 0.21 < 0.21 < 0.28 137 -1 Bq kg < 0.20 < 0.19 < 0.23 < 0.29 放射性 Cs *** Bq kg-1 < 0.37 < 040 < 0.44 < 0.57 -1 I Cs Cs *;<の後の数値は Cooper 法(検出限界計数 3)による定量下限値を示す。 **;±の後の数値は、放射能計数値の標準偏差を示す。 ***;放射性 Cs は 134Cs と 137Cs の合計値を示す。 107 106 カウント/チャンネル 105 104 103 102 101 100 0 (0.1667) 500 (125.60) 1000 (251.02) 1500 (376.43) 2000 (501.82) 2500 (627.20) 3000 (752.57) 3500 (877.92) 4000 (1003.3) チャンネル(エネルギ keV) 図 2 2011 年 3 月 15 日に採取したコマツナの γ 線スペクトル(0 -1000 keV) 当日 10 時採取、10 時 40 分から実測定時間 7234 秒で測定 . 図中の*は Cooper 法(検出限界計数 3)でピークとして 検出されたことを示す。 大瀨健嗣ら:つくば市において観測された東京電力福島第一原子力発電所事故直後から1 年間の葉菜、土壌および降水中の放射性核種濃度の推移 Bq kg-1 5 mm 160 10000 降水量 100 131 I 134 Cs 140 120 100 137 Cs 10 80 60 1 降水量 放射性核種濃度 1000 40 0.1 2011年 2/25 2/29 3/2 3/5 3/9 3/17 3/23 3/31 2/7 2/14 1/21 12/2 11/19 10/22 10/5 10/9 9/21 8/22 8/19 8/26 9/2 7/21 7/29 8/4 7/31 5/11 5/17 5/22 5/29 6/8 6/13 6/17 6/23 7/1 5/13 4/19 4/23 3/1 3/11 3/15 3/22 0.01 20 0 2012年 採 取 日 図 3 つくば市における降水中放射性核種濃度の推移 107 106 カウント/チャンネル 105 104 103 102 101 100 0 (0.5428) 500 (125.81) 1000 (251.09) 1500 (376.37) 2000 (501.65) 2500 (626.94) 3000 (752.23) 3500 (877.53) 4000 (1002.8) チャンネル(エネルギ keV) 図 4 2011 年 3 月 21 日 9 時から 3 月 22 日 21 時に採取した降水試料の γ 線スペクトル(0 -1000 keV) 当日 9 時から 22 日 21 時にかけて採取、21 時 28 分から実測定時間 22554 秒で測定 . 図中の*は Cooper 法(検出限界 計数 3)でピークとして検出されたことを示す。 6 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 21 時にかけて採取した雨水のγ線スペクトルを示し 値が最大値となった(図 5)。その後は時間の経過ととも た。図 2 で示した湿性沈着の影響のないスペクトルと比 に減少し、およそ 1 ヵ月後の 4 月 21 日には 529 Bq kg-1、 べて、検出された核種に相違はないが、事故後 10 日ほど 5 月 26 日には 5.2 Bq kg-1、6 月 23 日には 1 Bq kg-1 未満 が経過し、半減期の短い核種の崩壊が進んだことで 137Cs となった。これに対し、134Csおよび 137Cs濃度は最初の降 および 134Cs のピークが目立ってきていることが明らか 水後は比較的高い値で推移し、かつ変動が大きかった。 である。 2012 年の 3 月 13 日における 134Csと 137Cs濃度はそれぞれ 3 月 21 日から 22 日にかけて採取した降水について、 874 と 1180 Bq kg-1 であり、事故後最初の降水があった I、134Cs および 137Cs 濃度はそれぞれ、3440、203 およ 2011 年 3 月 21 日から 2012 年 3 月 13 日までに採取された 131 と高い値を示した。気象庁によると、こ 土 壌 の 134Cs 濃 度 は 417 ~ 1300 Bq kg-1、137Cs 濃 度 は の 3 日間の降水量の合計が 35.5 mm であることから、こ 429 ~ 1320 Bq kg-1 の範囲であった。このことは耕起を の降水によって地表に降下した放射性核種量は 131I、 行わない場合、土壌に加えられた放射性物質がそのまま -2 高濃度で表層土壌に存在しつづけることを示唆してい となる。次のまとまった降水は 4 月 19 日であったが、こ る。放射性セシウムが畑地の表層土壌から減少する要因 び 207 Bq kg Cs および 134 -1 Cs がそれぞれ 122、7.2 および 7.3 kBq m 137 Cs がそ としては、物理壊変の他に、風雨による浸食や、耕起に と、最初の降水時 よる下層との混合、作物吸収による系外への持ち出しな と比較して大幅に減少していた。半減期の比較的長い どが考えられる。また、土壌の粘土鉱物に特異的に強く Csで比較すると、最初の降水に対して 4 月 19 日の降水 吸着するため(Francis と Brinkley, 1976)、地下への溶脱 では 0.4%に低下していた。また、その 4 日後の 4 月 23 日 は ほ と ん ど な い こ と が 報 告 さ れ て い る(Rosen ら , の降水中の放射性核種濃度は I、 Cs および 131 134 れぞれ 26.2 、31.0 および 29.9 Bq kg -1 137 137 の降水では -1 I 濃度が 0.7 Bq kg 、 Cs と Cs 濃度がと 1999)。農環研では 1950 年代から日本全国の畑地土壌と まで減少し、それ以降に採取された降水 水田土壌の放射能モニタリングを行っている。大気圏核 131 -1 もに 3.1 Bq kg 134 137 -1 未満であっ 実験由来の放射性セシウムの降下量がもっとも高かった た。なお、図 3 では 12 月 3 日以降は、降水量のみを示し 1963 年を基準に滞留半減期を計算すると、畑地では 8 ~ ている。 26 年(平均 18 年)であった(駒村ら , 2006)。したがっ ではいずれの放射性核種濃度も 1 Bq kg て、本調査地における畑地土壌中の 137Cs濃度が事故以前 3 ) 土壌の放射性核種濃度の推移 のレベルまで減少するには数十から百年を要する。 図 5 はモニタリング圃場から採取した表層土壌(0 ~ 5 cm)の 3 月 15 日から 1 年間の放射性核種濃度の推移を 示 し て い る。 濃 度 を 表 す 縦 軸 は 対 数 値 で 表 記 し、 -1 2)葉菜の放射性核種濃度の推移 ホウレンソウについては 1 年間、チンゲンサイについ 0.1 Bq kg 以下の濃度及び検出限界以下の値はすべて ては半年間の測定結果を図 6 に示す。縦軸には対数値を 0.1 としてプロットした。佐波ら(2011)によると、3 月 取り、0.1 Bq kg-1 以下の濃度及び検出限界以下の値はす 15 日にピークがあった空間線量率はその後、一旦低下す べて 0.1 としてプロットした。ホウレンソウの 131I 濃度は るが、3 月 21 日の降水後に再び増加している。我々が採 3 月 16 日に最大値 12900 Bq kg-1 を示し、その後は急速 取した土壌試料では、3 月 15 日の 131I、134Cs および 137Cs に減少した。134Cs 濃度と 137Cs 濃度の合計値(以後、放射 の濃度は、それぞれ 406、28.5、および 28.9 Bq kg-1 で、 性セシウム濃度と称す)の最大値は原発事故発生後、最 -1 初の降水のあった後の 3 月 24 日に採取した試料で検出 およ された 1040 Bq kg-1 であり、その後は徐々に減少した。 び 27.8 ~ 40.2 Bq kg-1 の間で推移していた。しかし、最 半減期の短い 131I だけでなく、比較的半減期の長い 134Cs 初の降水のあった 3 月 22 日には 131I、134Cs および 137Cs 濃 と 137Csも短期的に減少した要因としては、作物自体の生 度がそれぞれ 2780、631、および 640 Bq kg-1 にまで急激 育と放射性物質に直接暴露されていない新しい葉の展葉 に増加した。このことから、最初の降水によって土壌に とによる希釈の効果が大きいと考えられる。また、5 月 大量の放射性核種が沈着したことは明らかであり、降水 12 日以降は、事故後に播種したホウレンソウを採取した 後の空間線量率の増加の原因を降水による放射性物質の が、それらの試料では 131I、134Cs および 137Cs 濃度は検出 の結果と一致する。 沈着によるものとした佐波ら (2011) されないか 5 Bq kg-1 未満であった。ニラの播種は福島 土壌試料では、131I 濃度は最初の降水後の 3 月 24 日の 第一原発以前であったが、採取時期は 2011 年の 6 月 9 日 そ の 後 3 月 19 日 ま で は Cs と 134 I 濃 度 が 374 ~ 675 Bq kg 、 131 Cs の濃度がそれぞれ 18.2 ~ 38.1 Bq kg 137 -1 大瀨健嗣ら:つくば市において観測された東京電力福島第一原子力発電所事故直後から1 年間の葉菜、土壌および降水中の放射性核種濃度の推移 7 1000 100 I-131 Cs-134 Cs-137 2011年 3/1 2/1 1/1 12/1 11/1 10/1 9/1 8/1 7/1 6/1 4/1 1 5/1 10 3/1 放射性核種濃度 3/22 Bq kg-1 乾土3/15 10000 2012年 採 取 日 図 5 表層土壌の放射性核種濃度の推移 放射性核種濃度 Bq kg-1 新鮮重 3/15 100000 3/22 事故前播種ホウレンソウ 10000 事故後播種ホウレンソウ 事故前播種コマツナ 1000 事故後播種コマツナ I 131 100 事故前播種ニラ 10 事故後播種チンゲンサイ 1 11/1 12/1 1/1 2/1 11/1 12/1 1/1 2/1 3/1 10/1 放射性核種濃度 Bq kg-1 新鮮重 3/22 10000 10/1 9/1 8/1 7/1 6/1 5/1 4/1 3/1 0.1 3/15 1000 Cs + 137Cs 134 100 10 1 2011年 採 取 日 3/1 9/1 8/1 7/1 6/1 5/1 4/1 3/1 0.1 2012年 図 6 葉菜類の放射性核種濃度の推移 以降であり、2011 年に播種したチンゲンサイと同様に、 22 日の降水時に 707 Bq kg-1 に急増した。24 日に最大値 131 I は検出されず、放射性セシウム濃度は 2 Bq kg-1 未満 の 898 Bq kg-1 に達した後、減少に転じた。5 月 12 日以 であった。2012 年 3 月 29 日においては、葉菜の 131I 濃度 降の福島第一原発事故後に栽培を開始した試料間の放射 は検出下限値以下となった。一方、放射性セシウム濃度 性セシウム濃度の比較では、ホウレンソウよりもコマツ -1 は 0.3 Bqkg あり、福島第一原発事故以前のレベルには ナで高くなる傾向が見られた。 復していないが、2011 年 3 月のピーク時の 1 / 1000 以 コマツナについては水洗をしない試料と、水洗をした 下であり、事故による汚染の影響は小さくなっていると 試料との比較を行った。2011 年 3 月 21 日の降水より前の いえる。 試料については、131I、134Cs および 137Cs 濃度がそれぞれ コマツナについては、131I 濃度は 3 月 15 日から 3 月 25 日まで 2350 ~ 4480 Bq kg -1 平均で 45.9%、65.1%および 62.0%、水洗により減少し の範囲で推移していたが、 ていた。しかしながら、降水後 2011 年の 3 月 22 日から 4 その後はホウレンソウと同様に急速に減少した。放射性 月 11 日までの試料については 131I、134Cs および 137Cs 濃 セシウム濃度は、3 月 15 日に 99 Bq kg-1 に達し、16 日か 度の減少がそれぞれ平均で 26.6%、31.5%および 31.0% ら 19 日まで 100 ~ 200 Bq kg -1 で推移していたが、3 月 と、水洗による減少率は小さくなった。 8 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 放射性核種の濃度変動における土壌と葉菜類との大き on spinach, radish and beans leaves in a tropical I が最初に放射性プルームがつく region under simulated fallout conditions. Water, Air, な違いは、葉菜類の 131 ば市に到達した時点で非常に高い値を示した点である。 ホウレンソウでは特に顕著で、3 月 14 日採取の試料では -1 1 Bq kg 未満だった I が、放射性プルームがつくば市 131 に到達した 3 月 15 日には 10500 Bq kg -1 になり、翌 3 月 16 日には今回の調査における最大値まで増加した。ま and Soil Pollut., 158, 181-192 7) 津村昭人・駒村美佐子・小林宏信(1984):土壌及 び土壌―植物系における放射性ストロンチウムとセ シウムの挙動に関する研究. 農業技術研究所報告, B, 36, 57-113 た、 Iに関しては降水後の増加は認められなかった。コ 8) 結田康一・駒村美佐子・木方展治・藤原英司・栗島 マツナの場合はホウレンソウと多少異なり、 I、 Cs、 :原子力施設事故等に伴う農作物・土 克明(2002) Cs ともに、まずプルーム到達後に増加し、最初の降水 壌の緊急放射能調査 . 日本土壌肥料学雑誌 , 73, 203- 131 131 134 137 後にも再び増加していた。また、 Csと 134 137 Csの最大値は 210 コマツナとホウレンソウでは同レベルであったが、 I 9) Zehnder H.J.,P.Kopp, J.Eikenberg, U.Feller,and J.J. についてはホウレンソウが 3 倍近く高い値を示した。ホ Oertli(1995):Uptake and transport of radioactive ウレンソウの品種は葉面の形状から針葉系と丸葉系に大 cesium and strontium into grapevines after leaf 別されるが、本試験では針葉系を用いた。コマツナはホ contamination.Radiat,Phys.Chem., 46, 61-69 131 ウレンソウの丸葉系に近い葉面の形状を有しているとも 謝 辞 考えられ、ホウレンソウとコマツナとのこのような違い は、両者の葉面構造の違いが影響したものと考えられ 本調査に使用した葉菜類および土壌の採取について、 る。 農環研研究支援室 荒貴裕氏、山口弘氏並びに阿部勝男 Ⅴ 引用文献 氏にご協力を頂きました。また、独立行政法人農業生物 資源研究所の関係諸氏につきましては、コマツナの採取 1) Ban-nai T,and Y. Muramatsu ( 2002 ):Transfer factors of radioactive Cs, Sr, Mn, Co and Zn from Japanese soils to root and leaf of radish. J. Environ. Radioactivity, 63, 251-264 表します。 なお、本研究は文部科学省放射能調査研究費によって 行われたものです。 2) Francis C.W. and F.S. Brinkley (1976):Preferential adsorption of Cs- 137 to micaceous minerals in contaminated freshwater sediment. Nature, 260 , 511-513 3) Rosen K, I. Oborn, and H. Lonsjo(1999):Migration of radiocaesium in Swedish soil profiles after the Chernobyl accident.J. Envir. Radioactivity, 46, 45-66 4) 駒村美佐子・津村昭人・山口紀子・藤原英司・木方 :わが国の米、小麦および 展治・小平 潔(2006) 土壌における 90Srと 137Cs濃度の長期モニタリングと 変動解析 . 農業環境技術研究所報告 , 24, 1-21 5) 佐波俊哉・佐々木慎一・飯島和彦・岸本祐二・齋藤 :茨城県つくば市における福島第一原子 究・ (2011) 力発電所の事故由来の線量率とガンマ線スペクトル の経時変化 . 日本原子力学会和文論文誌 , 10, 163- 169 6) Singhal R.K., U. Narayanan, and R.P. Gurg(2004): Estimation of deposition velocities for 85Sr, について許可を与えて頂きました。ここに記して謝意を 131 I, 137 Cs 大瀨健嗣ら:つくば市において観測された東京電力福島第一原子力発電所事故直後から1 年間の葉菜、土壌および降水中の放射性核種濃度の推移 9 Changes in radionuclides concentration in leafy vegetables, soil and precipitation for a year after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident;In case of Tsukuba City, Japan. Kenji OHSE, Nobuharu KIHOU, Tsunehisa INOUE, Katsuaki KURISHIMA, Yasushi FUKUZONO and Ichiro TANIYAMA. Summar y Concentrations of radionuclides(131I, 134Cs, 137Cs) in leafy vegetables, soil, and precipitation were investigated in Tsukuba City 170 km away from Fukushima Daiichi nuclear power plant, right after Tokyo Electric Power company's Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident occurred. The concentration of 131 I in leafy vegetables, particularly spinach, significantly increased because of dry deposition caused by radioactive plume passed Tsukuba-city first after the accident. The contribution of wet deposition to the concentration of radionuclides in leafy vegetables was relatively small compared with dry deposition. Changes in the concentration of each radionuclide were different between spinach and komatsuna (Japanese mustard). Concentration of radionuclides in leafy vegetables did not substantially decrease after washing with water following the first precipitation. However, the concentration of radionuclides in soil significantly increased by first precipitation after the accident. 11 農環研報 34, 11-21(2015) 福島第一原発事故直後の関東地方における 野菜類の放射性物質濃度 Concentration of radioactive materials of vegetables in the Kanto area just after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident 木方展治*・大瀬健嗣**・谷山一郎*** (平成26 年12月2日受理) Synopsis: The authors measured 131 I, 134 Cs and 137 Cs radioactive concentration of 56 vegetable samples which was collected in Ibaraki, Tochigi, Gunma and Chiba Prefecture on the basis of the request of the Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries (MAFF) and the prefectural governments just after the accident of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant (FDNPP) from March 18 to 25, 2011 . The prefectural governments put the data of 131 I and radioactive Cs concentration of vegetables on the internet. The MAFF used the data to judge the shipment regulation policy of contaminated vegetables. This paper shows the data of 134 Cs and 137 Cs concentration of vegetables which has been never published. Spinach (Spinacia oleracea) grown outdoors which fecture on March 18 exceeded the provisional regulation value for radioiodine (2000 Bq kg-1). Garland chrysanthemum (Glebionis coronaria) which was collected in Mooka and Sakura City and spinach which was collected in Kaminokawa Town of Tochigi Prefecture on March 24 exceeded the provisional regulation value for radioiodine. Spinach grown outdoors which was collected in Isezaki City of Gunma Prefecture on March 19 exceeded the provisional regulation value of radioiodine. eight green vegetables (including spinach and“Kakina”(Brassica rapa)) exceeded the provisional regulation value of radiocesium (134Cs+137Cs: 500 Bq kg-1). The range of 131I / 137Cs concentration ratio of spinach was from 9.7 to 20.2 in Ibaraki Prefecture in March 18, 9.2 on March 24 in Tochigi Prefecture, from 5.7 to 6.4 on March 19 and from 4.9 to 9.2 on March 22-25 on Gunma Prefecture. The higher ratio was obser ved in Ibaraki Prefecture. However, * I / 137Cs ratio between vegetables at the same location had large differences; from 1.6 131 土壌環境研究領域 ** 土壌環境研究領域、現福島大学 元 *** 元 研究コーディネータ 12 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) of cucumber to 31.8 of garland chrysanthemum on March 24 in Tochigi Prefecture and from 2.2 of water melon (Citrullus lanatus) to 10.1 of“Mitsuba”(Cryptotaenia japonica). As stated above, the radioactive substance concentration and component of vegetables had large range between the area, date, vegetable species or cultivation methods. Ⅰ はじめに ニュアル)ver.1」を付録1に示す。 農環研に持ち込まれた試料は、農林水産省消費・安全 2011 年 3 月 11 日の東日本大震災に伴う東京電力福島 局消費・安全政策課が 3 月 23 日に通知した「分析機関に 第一原子力発電所 (以下福島第一原発) の事故によって、 おける試料の前処理について」および「緊急時における 大量の放射性物質が大気中に放出された。放射性物質は 食品の放射能測定マニュアル」 (厚生労働省、2002)を 風向により大半が太平洋側に放出されたが、3 月 15 日や 参考として、農環研が農林水産省農林水産技術会議事務 3 月 21 日などには陸側に大規模に放射性物質が降下し、 局技術政策課と協議し 2011 年 3 月 23 日に策定した「放 土壌・河川・海洋が汚染され、用水・農畜水産物から放 射能(放射線)事故が起きた場合の作物体放射能濃度測 射性物質が検出された。事故直後、厚生労働省などが 定手順(暫定版)」に従って前処理を行い、マリネリ容器 2011 年 3 月 17 日に定めた放射性物質の暫定規制値を上 に充填した。その前処理方法は作物によって異なるが、 回った農作物は、北は岩手県北部の牧草から、西は静岡 例としてホウレンソウについて付録2に示す。 県の茶葉まで広い範囲に及んだが、2012 年 4 月に定めら なお、洗浄は水道水の流水で行ったが、一時水道水中 れた新たな食品基準値を上回る農作物が 2014 年 3 月時 の 131I 濃度が高くなったために、イオン交換水で洗浄を 点でも検出され、出荷規制が行われている(厚生労働省 , 行うことがあった。測定時間は 1,500 ~ 10,000 秒で、作 2014)。 物の放射性物質濃度は 131I、134Cs および 137Cs 放射能濃度 (独)農業環境技術研究所(以下農環研)は 60 年以上 を生重 1kg 当たりの Bq(Bq kg-1)で示した。 に渡る放射能調査・研究の実績を生かし、事故発生当初 また、野菜類の採取地の住所などについては農環研に から他の農業試験研究機関と連携して、農産物、土壌や は通知されていなかったので、厚生労働省がホームペー 農業用水の汚染の実態把握に対応するとともに、作物の ジ上で公表している分析結果と作物名(厚生労働省 , 放射性物質汚染要因の解明研究を実施し、吸収抑制技術 2011)を参照して、市町村名を推定した。また、農環研 や除染技術の開発に取り組んできた。 で分析した結果がすべて公表されてはおらず、分析数値 そのような中で、農環研は福島第一原発事故直後に農 もわずかに分析値と公表値が異なるものがあったが、農 林水産省や県からの要請を受け、茨城県、栃木県、群馬 環研で分析値としているデータを記載した。地域的・時 I、 Cs お 間的な放射性物質濃度の変化や土壌の放射性物質濃度と 県、千葉県で採取された野菜などの試料の 131 よび 134 134 Cs の比較を可能とするため、放射性物質濃度は 2011 年 4 月 放射能濃度の和である放射性セシウム濃度については各 1 日 0:00 時点の減衰補正を行ったものを表 2 に示した。 137 131 Cs放射能濃度を測定した。 Iおよび Csと 137 県のホームページ上で公開され、出荷規制対策などにも Ⅲ 結果および考察 利用された。各県が公表したデータには農環研以外の分 析機関の分析結果が含まれているが、今回、これまで公 表されていなかった 134Cs および 137Cs 放射能濃度を含め 1) 採取時点の野菜類の放射性物質濃度 表 1 に、採取地点、採取日時、作物名、131I、134Cs およ て、農環研で分析した結果を公開する。 び 137Cs の採取時点での放射能濃度と検出限界、134Cs と Ⅱ 方 法 Cs 放射能濃度の和である放射性セシウム濃度を示 137 す。放射能濃度は有効数字 3 桁または小数点以下 1 桁の 野菜類などの試料 56 点は、2011 年 3 月 23 日に農林水 値で表示する。放射性物質の測定値は検出限界よりも高 産省消費・安全局消費・安全政策課が各県に通知した「食 いものがほとんどであったが、群馬県のトマトの 1 検体 品(農産物等)の採取・送付手順(マニュアル) 」に従っ だけ 137Cs 放射能濃度が検出限界未満であった。また、放 て採取・洗浄を行い、農環研に送付された。ホウレンソ 射性物質濃度が高いと予測された場合は、測定時間を短 ウを対象とした「食品(農産物等)の採取・送付手順(マ くしたため、放射能濃度が高いと検出限界も高くなる傾 13 木方展治ら:福島第一原発事故直後の関東地方における野菜類の放射性物質濃度 表 1 福島第一原発事故直後の関東地方の野菜類の放射性物質濃度 131 No 県名 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 茨城 茨城 茨城 茨城 茨城 茨城 茨城 茨城 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 千葉 地点名 採取日 採取 時刻 日立市 日立市 日立大宮市 日立大宮市 那珂市 那珂市 鉾田市 鉾田市 真岡市 栃木市 高根沢町 那須塩原町 小山市 上三川町 鹿沼市 大田原市 栃木市 小山市 下野市 真岡市 さくら市 高根沢町 佐野市 上三川町 宇都宮市 小山市 伊勢崎市 伊勢崎市 前橋市 前橋市 高崎市 太田市 昭和町 板倉町 太田市 沼田市 前橋市 館林市 渋川市 甘楽町 伊勢崎市 渋川市 榛東村 高崎市 伊勢崎市 高崎市 みどり市 伊勢崎市 藤岡市 太田市 昭和村 昭和村 富岡市 甘楽町 前橋市 野田市 2011/3/18 2011/3/18 2011/3/18 2011/3/18 2011/3/18 2011/3/18 2011/3/18 2011/3/18 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/19 2011/3/19 2011/3/19 2011/3/19 2011/3/19 2011/3/19 2011/3/19 2011/3/19 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/25 2011/3/25 2011/3/25 2011/3/25 2011/3/25 2011/3/25 2011/3/25 2011/3/25 2011/3/25 2011/3/20 19:35 19:35 19:35 19:35 17:25 17:25 17:40 17:40 10:00 10:00 10:00 9:30 10:30 10:30 11:00 9:30 10:00 9:30 9:30 10:00 9:30 10:00 10:00 10:30 10:15 10:00 10:30 11:15 13:50 14:30 10:05 10:20 9:00 9:00 15:30 13:45 12:40 14:30 13:15 14:35 9:30 10:00 10:20 10:00 10:15 10:25 10:00 10:10 11:00 9:30 10:18 10:45 10:20 10:04 10:40 11:45 注:栃木県の栽培形態は不明 134 I 137 Cs 放射性 測定値 検出限界 測定値 検出限界 測定値 検出限界 セシウム -1 (Bq kg-1) (Bq kg-1)(Bq kg-1) (Bq kg-1)(Bq kg-1) (Bq kg-1) (Bq kg ) 作物名 ホウレンソウ(露地) ホウレンソウ(露地) ホウレンソウ(露地) ホウレンソウ(露地) ホウレンソウ(露地) ホウレンソウ(露地) ホウレンソウ(露地) ネギ(露地) イチゴ(不明)注) イチゴ(不明) イチゴ(不明) トマト(不明) トマト(不明) トマト(不明) ニラ(不明) ニラ(不明) ニラ(不明) キュウリ(不明) キュウリ(不明) シュンギク(不明) シュンギク(不明) アスパラガス(不明) カキナ(不明) ホウレンソウ(不明) アスパラガス(不明) レタス(不明) ホウレンソウ(露地) ホウレンソウ(露地) キャベツ(露地) ネギ(露地) カキナ(露地) ネギ(露地) キュウリ(施設) キュウリ(施設) ホウレンソウ(施設) ホウレンソウ(施設) コマツナ(施設) シュンギク(施設) ニラ(施設) ニラ(施設) トマト(施設) ミズナ(施設) チンゲンサイ(施設) イチゴ(施設) ホウレンソウ(露地) カキナ(露地) ミニトマト(施設) ナス(施設) イチゴ(施設) スイカ(施設) ホウレンソウ(施設) アスパラガス(施設) タラノメ(施設) ノザワナ(施設) ミツバ(施設) ホウレンソウ(露地) 54100 25200 19200 17800 16100 13500 7710 356 59.5 68.7 60.0 6.6 16.0 15.0 523 331 511 32.7 26.9 2080 4340 29.5 1970 5230 25.2 23.8 2630 2080 5.9 40.0 1910 81.1 19.2 57.5 973 414 170 1040 54.3 150 6.1 201 39.3 28.4 1440 872 10.3 7.9 6.0 2.9 639 5.9 7.5 236 404 1410 Cs 4 .4 2 .0 1 .9 1 .7 2 .2 1 .4 2 .3 6 .1 0.8 0. 8 0. 8 0.4 0. 6 0. 5 2 .3 2 .3 2 .5 0. 7 0. 7 5 .3 7 .5 0. 7 7 .4 13.4 0. 7 1. 4 9 .0 5 .5 0.2 0. 4 6 .8 0. 9 0. 5 0. 8 4 .0 2 .8 1 .8 4 .2 1. 5 1 .6 5.9 2 .1 1. 1 0. 4 7 .3 5 .2 0. 2 0.5 0.2 0.2 2 .6 0.2 0.3 1 .3 2 .5 4 .5 990 565 524 449 467 484 206 4.4 3.6 6.7 3.5 0.6 2.5 1.8 13.4 34.7 26.5 11.2 6.8 73.8 75.9 1.0 123 328 1.1 5.5 159 133 1.3 5.5 278 5.9 1.5 3.3 57.4 23.1 28.6 59.5 6.0 9.2 0.6 35.9 6.4 1.3 116 75.1 1.3 1.8 0.9 0.8 81.4 1.1 1.6 33.6 24.5 96.5 1.6 1.0 1.2 9.4 1.1 8.7 1.3 0.3 0.5 0.6 0.6 0.4 0.4 0.3 1.3 1.8 1.7 0.6 0.5 2.9 3.6 0.4 5.4 7.4 0.6 1.1 5.2 4.1 0.2 0.3 5.7 0.7 0.4 0.7 2.7 2.0 1.5 2.6 1.1 1.0 0.4 1.9 0.9 0.3 5.3 3.9 0.2 0.4 0.3 0.2 2.4 0.2 0.2 0.9 1.6 3.8 941 540 516 459 444 482 201 4.3 3.7 6.3 3.2 0.8 2.5 1.5 12.2 32.8 25.5 11.4 7.5 74.4 77.3 0.8 129 324 0.9 5.4 151 135 1.0 5.7 277 5.4 1.6 3.8 56.1 21.7 26.1 56.4 7.3 9.6 <0.4 35.9 6.2 1.3 114 73.5 1.3 1.5 0.9 0.8 80.8 1.2 1.6 31.7 24.8 99.2 2.1 1.1 1.1 10.4 1.3 8.7 1.5 0.3 0.6 0.7 0.7 0.4 0.6 0.5 1.7 1.8 1.9 0.6 0.4 2.6 2.8 0.6 5.1 8.4 0.6 1.3 6.2 4.0 0.2 0.4 5.7 0.8 0.5 0.7 2.4 2.0 1.7 2.6 1.1 1.0 0.4 2.2 1.1 0.4 5.3 3.4 0.2 0.6 0.3 0.2 2.6 0.2 0.3 1.3 1.5 3.5 1930 1110 1040 908 911 966 407 8.7 7.3 13.0 6.7 1.4 5.0 3.3 25.6 67.5 52.0 22.6 14.3 148 153 1.8 252 652 2.0 10.9 310 268 2.3 11.2 555 11.3 3.0 7.1 114 44.8 54.7 116 13.3 18.8 <1.0 71.8 12.5 2.6 230 149 2.6 3.3 1.8 1.6 162 2.3 3.2 65.3 49.3 196 14 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 表 2 福島第一原発事故直後の関東地方の野菜類の減衰補正後の放射性物質濃度注 1) No 県名 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 茨城 茨城 茨城 茨城 茨城 茨城 茨城 茨城 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 千葉 地点名 日立市 日立市 日立大宮市 日立大宮市 那珂市 那珂市 鉾田市 鉾田市 真岡市 栃木市 高根沢町 那須塩原町 小山市 上三川町 鹿沼市 大田原市 栃木市 小山市 下野市 真岡市 さくら市 高根沢町 佐野市 上三川町 宇都宮市 小山市 伊勢崎市 伊勢崎市 前橋市 前橋市 高崎市 太田市 昭和町 板倉町 太田市 沼田市 前橋市 館林市 渋川市 甘楽町 伊勢崎市 渋川市 榛東村 高崎市 伊勢崎市 高崎市 みどり市 伊勢崎市 藤岡市 太田市 昭和村 昭和村 富岡市 甘楽町 前橋市 野田市 作物名 ホウレンソウ(露地) ホウレンソウ(露地) ホウレンソウ(露地) ホウレンソウ(露地) ホウレンソウ(露地) ホウレンソウ(露地) ホウレンソウ(露地) ネギ(露地) イチゴ(不明)注 2) イチゴ(不明) イチゴ(不明) トマト(不明) トマト(不明) トマト(不明) ニラ(不明) ニラ(不明) ニラ(不明) キュウリ(不明) キュウリ(不明) シュンギク(不明) シュンギク(不明) アスパラガス(不明) カキナ(不明) ホウレンソウ(不明) アスパラガス(不明) レタス(不明) ホウレンソウ(露地) ホウレンソウ(露地) キャベツ(露地) ネギ(露地) カキナ(露地) ネギ(露地) キュウリ(施設) キュウリ(施設) ホウレンソウ(施設) ホウレンソウ(施設) コマツナ(施設) シュンギク(施設) ニラ(施設) ニラ(施設) トマト(施設) ミズナ(施設) チンゲンサイ(施設) イチゴ(施設) ホウレンソウ(露地) カキナ(露地) ミニトマト(施設) ナス(施設) イチゴ(施設) スイカ(施設) ホウレンソウ(施設) アスパラガス(施設) タラノメ(施設) ノザワナ(施設) ミツバ(施設) ホウレンソウ(露地) 採取日 2011/3/18 2011/3/18 2011/3/18 2011/3/18 2011/3/18 2011/3/18 2011/3/18 2011/3/18 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/19 2011/3/19 2011/3/19 2011/3/19 2011/3/19 2011/3/19 2011/3/19 2011/3/19 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/22 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/24 2011/3/25 2011/3/25 2011/3/25 2011/3/25 2011/3/25 2011/3/25 2011/3/25 2011/3/25 2011/3/25 2011/3/20 採取 時刻 19:35 19:35 19:35 19:35 17:25 17:25 17:40 17:40 10:00 10:00 10:00 9:30 10:30 10:30 11:00 9:30 10:00 9:30 9:30 10:00 9:30 10:00 10:00 10:30 10:15 10:00 10:30 11:15 13:50 14:30 10:05 10:20 9:00 9:00 15:30 13:45 12:40 14:30 13:15 14:35 9:30 10:00 10:20 10:00 10:15 10:25 10:00 10:10 11:00 9:30 10:18 10:45 10:20 10:04 10:40 11:45 注 1:表 1 の放射性物質濃度を 2011 年 4 月 1 日 0 時に減衰補正した値 注 2:栃木県の栽培形態は不明 131 134 I Bq kg Cs -1 19000 8830 6730 6240 5580 4680 2680 124 28.4 32.8 28.6 3.1 7.7 7.2 250 158 244 18.5 15.3 1180 2460 16.7 1120 2980 14.3 13.5 973 769 2.2 15.0 704 29.9 7.0 21.1 474 200 82.0 505 26.2 72.9 3.4 114 22.3 16.1 816 494 6.4 4.9 3.7 1.8 395 3.7 4.6 146 251 570 -1 Bq kg 989 564 523 448 466 483 206 4.4 3.6 6.7 3.5 0.6 2.5 1.8 13.4 34.7 26.5 11.2 6.8 73.7 75.8 1.0 123 328 1.1 5.5 159 133 1.3 5.5 278 5.8 1.5 3.3 57.3 23.1 28.6 59.4 6.0 9.2 0.6 35.9 6.3 1.3 116 75.0 1.3 1.8 0.9 0.8 81 1.1 1.6 33.6 24.5 96.4 137 Cs -1 Bq kg 940 540 516 459 444 482 201 4.3 3.7 6.3 3.2 0.7 2.5 1.5 12.2 32.8 25.5 11.4 7.5 74.4 77.3 0.8 129 324 0.9 5.4 151 135 1.0 5.7 277 5.4 1.6 3.8 56.1 21.7 26.1 56.4 7.3 9.6 < 0.4 35.9 6.2 1.3 114 73.5 1.3 1.5 0.9 0.8 81 1.1 1.6 31.7 24.8 99.1 放射性 セシウム 131 I/137Cs 134 Cs/137Cs -1 Bq kg 1930 1100 1040 907 910 965 407 8.7 7.3 13.0 6.7 1.4 5.0 3.3 25.6 67.4 52.0 22.6 14.3 148 153 1.8 252 651 2.0 10.8 310 268 2.3 11.1 554 11.2 3.0 7.1 114 44.8 54.7 116 13.3 18.7 < 1.0 71.7 12.5 2.6 230 149 2.6 3.3 1.8 1.6 162 2.2 3.2 65.2 49.3 196 20.2 16.4 13.0 13.6 12.6 9.7 13.4 28.8 7.6 5.2 8.8 4.2 3.1 4.7 20.5 4.8 9.6 1.6 2.0 15.9 31.8 20.4 8.7 9.2 16.2 2.5 6.4 5.7 2.2 2.6 2.5 5.6 4.5 5.5 8.5 9.2 3.1 9.0 3.6 7.6 不計算 3.2 3.6 12.5 7.2 6.7 4.8 3.2 4.2 2.2 4.9 3.2 2.9 4.6 10.1 5.8 1.05 1.05 1.02 0.98 1.05 1.00 1.02 1.01 0.96 1.07 1.08 0.81 1.01 1.17 1.10 1.06 1.04 0.98 0.90 0.99 0.98 1.17 0.95 1.01 1.25 1.02 1.05 0.98 1.27 0.96 1.00 1.09 0.93 0.86 1.02 1.06 1.10 1.05 0.82 0.96 不計算 1.00 1.03 1.04 1.02 1.02 0.95 1.17 0.98 0.99 1.01 0.95 1.02 1.06 0.99 0.97 木方展治ら:福島第一原発事故直後の関東地方における野菜類の放射性物質濃度 15 向があった。なお、農環研が分析を担当したのは比較的 ナスおよびキュウリなどの果菜類の放射性物質濃度が低 放射能濃度の高い作物であるため、関東地方全体の傾向 いのは、大気から沈着する際に、果実の平面的な面積が を示すものではないことに注意する必要がある。 小さく単位面積当たりの重量が高いものほど、重量当た 検出された I 放射能濃度は 3 月 25 日に群馬県太田市 131 の施設栽培のスイカの 2 .9 Bq kg -1 りの放射性物質量が少なくなるためと思われる。また、 から 3 月 18 日に茨 果菜類は放射性物質沈着時に換気を行った場合を除き、 城 県日立市で採取された露地栽培のホウレンソウの 放射性物質が内部に侵入する確率が低くなる施設栽培が -1 54100 Bq kg まで幅広い範囲であった。 Cs 放射能濃 多いことや果実が葉の陰にあるため放射性物質が付着し 度は 3 月 22 日の栃木県那須塩原市と 3 月 24 日の群馬県 にくいことも考えられる。さらに、果実と葉の表面構造 134 伊勢崎市の施設トマトの 0.6 Bq kg -1 から 3 月 18 日の茨 -1 が毛やワックスの有無などによって異なるため、放射性 城県日立市の露地ホウレンソウの 990 Bq kg 、 Cs 放 物質が付着しにくい、または水洗によって容易に洗脱さ 射 能 濃度は 3 月 24 日の群馬県伊勢崎市の施設トマトの れるなどの原因も推定される。 137 -1 0.4 Bq kg 未満から 3 月 18 日の茨城県日立市の露地ホウ -1 3 月 21 日前後での放射性物質濃度の変化を、群馬県の の範囲にあった。放射性セシウ 同一市町村における露地のホウレンソウとカキナについ ム濃度は 3 月 24 日採取の群馬県伊勢崎市の施設トマト て見ると、131I 濃度は伊勢崎市の露地ホウレンソウは 3 月 の 1 Bq kg-1 未満から 3 月 18 日の茨城県日立市の露地ホ 19 日が 2630 Bq kg-1 と 2080 Bq kg-1 に対し、3 月 24 日 ウレンソウの 1930 Bq kg-1 まであった。 は 1440 Bq kg-1、高崎市の露地カキナでは 3 月 19 日が レンソウの 941 Bq kg 出 荷 規 制 の 対 象 と な る 131I 濃 度 の 暫 定 規 制 値 1910 Bq kg-1 に対して、3 月 24 日は 872 Bq kg-1 と大幅 2000 Bq kg-1 を超えたのは、3 月 18 日採取の茨城県日立 に低下していた。137Cs 濃度では、伊勢崎市の露地ホウレ 市、日立大宮市、那珂市、鉾田市の露地ホウレンソウ、 ン ソ ウ は 3 月 19 日 が 151 Bq kg-1 と 135 Bq kg-1 に 対 3 月 24 日の栃木県真岡市、さくら市のシュンギクと上三 し、3 月 24 日は 114 Bq kg-1、高崎市の露地カキナでは 3 川町のホウレンソウおよび 3 月 19 日の群馬県伊勢崎市 月 19 日が 277 Bq kg-1 に対して、3 月 24 日は 73.5 Bq kg-1 の露地ホウレンソウであった。放射性セシウムの暫定規 とこれも低下していた。 -1 を超えたのは、3 月 18 日採取の茨城県 茨城県つくば市の農環研圃場で栽培されたホウレンソ 日立市、日立大宮市、那珂市の露地ホウレンソウ、3 月 ウとコマツナの放射性物質濃度の連続分析結果を 4 月 1 日 24 日の栃木県上三川町のホウレンソウおよび 3 月 19 日 に補正したデータ(木方 , 未発表)によれば、洗浄済みの の群馬県高崎市の露地カキナであった。このように食品 コマツナの 131I 放射能濃度は 3 月 19 日までは 500 Bq kg-1 の放射性物質の暫定規制値を超えたものは、茨城県、栃 程度で推移していたが、3 月 24 日には 1340 Bq kg-1 まで 木県および群馬県のホウレンソウ、シュンギクおよびカ 上昇、その後緩やかに減少し、4 月 1 日には 667 Bq kg-1 キナなどの葉菜類であった。 であった。137Cs放射能濃度は 3 月 19 日までは 25 Bq kg-1 制値 500 Bq kg 程度であったが、3 月 24 日には 249 Bq kg-1 まで上昇、 2) 減衰補正した野菜類の放射性物質濃度 その後徐々に低下し、4 月 1 日で 149 Bq kg-1 であった。 これらの放射性物質濃度の野菜の種類、地域間差、時 このように、つくば市では 3 月 21 日の降雨に伴う放射性 間変化および土壌の放射性物質濃度と比較するため、 物質の沈着(木方ら , 未発表)によって作物の放射性物 2011 年 4 月 1 日現在の放射能濃度に補正した結果を表 2 質濃度の上昇が観測された。 -1 に示す。 I 放射能濃度が比較的高い 500 Bq kg を、放 野菜の放射性物質濃度は生長による希釈によって時間 を超えたのは、茨城 とともに減少するが、上記事例ほどの低下は考えにく 県、栃木県、群馬県、千葉県のホウレンソウ、シュンギ い。また、群馬県の前橋市と高崎市のモニタリングポス ク、カキナであり、同じ葉菜類でもネギやニラ、レタス トの空間線量率は 3 月 21 日に上昇した(群馬県 , 2011; やキャベツは低い傾向があった。ネギやニラでは葉が 原研機構 , 2011)ことから、放射性物質の沈着が群馬県 立っていて、平面的な表面積がホウレンソウなどよりも でもあったと思われる。このため、同じ市内であっても 小さく、単位重量当たりの放射性物質濃度が低くなった (同一の圃場かどうかは不明)地域的な偏差があったか、 と考えられる。また、レタスやキャベツさらにはスイカ トンネル被覆の有無など栽培法に違いがあったと考えら では放射性物質濃度の高い外葉や外皮を除去しているこ れる。 131 射性セシウム濃度が 100 Bq kg -1 とによると推定される。また、スイカ、トマト、イチゴ、 16 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 3) 野菜類の 131I / 137Cs 放射能濃度比 および 137Cs が低濃度の試料では測定時間を十分にとっ 放射性物質の発生源や発生日時の指標となる 131I / 137Cs 、3 放射能濃度比をホウレンソウについて見ると(表 2) て、測定精度の向上を図った上で考察を行うことが必要 である。 月 18 日の茨城県では 9.7 ~ 20.2、3 月 24 日の栃木県では 9.2、3 月 19 日の群馬県では 5.7 ~ 6.4、3 月 22 ~ 25 日では 以上の結果、作物の放射性物質濃度または組成は、地 4.9 ~ 9.2 と、茨城県で高い傾向が認められた。さらに、 域、時期、作物種および栽培法によって大きく異なるこ 時間的な変化を見ると、群馬県伊勢崎市のホウレンソウ とが示唆された。 は、3 月 19 日が 5.7 ~ 6.4 に対して 3 月 24 日は 7.2、群馬 摘 要 県高崎市のカキナでは、3 月 19 日が 2.5 に対し、3 月 24 日 は 6.7 と上昇した。作物種間の差も大きく、栃木県の 3 月 24 日ではキュウリの 1.6 からシュンギクの 31.8 まで、群 (独)農業環境技術研究所(農環研)では農林水産省や 馬県の 3 月 25 日ではスイカの 2.2 からミツバの 10.1 まで 県からの要請を受け、茨城県、栃木県、群馬県および千 あった。 葉県において、福島第一原発事故直後の 3 月 18 日から 3 茨城県つくば市の農環研のコマツナの 4 月 1 日補正の 月 25 日にかけて採取された野菜などの試料 56 点の 131I、 131 I/ 137Cs放射能濃度比は 3 月 19 日までは 25 程度であっ 134 たが、3 月 22 日以降は急速に低下し 5 程度で推移してい 関に報告され、131I および放射性セシウム濃度について た(木方ら , 未発表) 。茨城県に 3 月 21 日に沈着した放射 は各県のホームページ上で公開されるとともに、各県の Cs 放射能濃度比がそれまでよりも低 出荷停止指示の根拠となった。今回、これまで公表され かったためと考えられる。また、2011 年 3 月 25 日~ 4 月 ていなかった 134Cs と 137Cs 放射能濃度を含めて、農環研 2 日に採取した土壌の 4 月 1 日補正の 131I/ 137Cs放射能濃 で分析した結果を報告した。 性物質の I/ Csおよび 137Cs放射能濃度を測定した。その結果は各機 131 137 度比の県別平均値は、茨城県が 6.10、栃木県が 2.94、群 馬県が 2.11、千葉県が 4.03 と地域的な違いが認められた (木方ら , 2015)。 I濃 度 が 出 荷 規 制 の 対 象 と な る 暫 定 規 制 値 131 2000 Bq kg-1 を超えたのは、3 月 18 日採取の茨城県日立 市、日立大宮市、那珂市、鉾田市の露地ホウレンソウ、 以上の結果から、茨城県や千葉県では 3 月 20 日以前は 3 月 24 日の栃木県真岡市、さくら市のシュンギクと上三 I/ Cs 濃度比の高い放射性物質が沈着したが、3 月 川町のホウレンソウおよび 3 月 19 日の群馬県伊勢崎市 21 日は I/ Cs濃度比の低い放射性物質が降下した。 の露地ホウレンソウなど 13 点であった。放射性セシウム しかし、栃木県や群馬県では 3 月 21 日前後とも比較的 の暫定規制値 500 Bq kg-1 を超えたのは、3 月 18 日採取 131 I / 137Cs 濃度比の低い放射性物質が沈着し、大きな変 の茨城県日立市、日立大宮市、那珂市の露地ホウレンソ 化が起こらなかった可能性がある。これについては、他 ウ、3 月 24 日の栃木県上三川町のホウレンソウおよび 3 の分析機関が行った福島県の内陸部と海岸部や茨城県の 月 19 日の群馬県高崎市の露地カキナの 8 点であった。こ 3 月 21 日以降の野菜類の I、 Cs および Cs 放射能濃 のように食品の放射性物質の暫定規制値を超えたのは、 度分析値の補正データなどを入手して検証する必要があ 茨城県、栃木県および群馬県のホウレンソウ、シュンギ る。 クおよびカキナなどの葉菜類であった。 131 137 131 137 131 134 137 また、放射性物質の発生源や発生日時の指標となる 4) 野菜類の Cs / 134 Cs 放射能濃度比 137 I / 137Cs 濃度比をホウレンソウについて見ると、3 月 131 Cs / 137Cs 放射能濃度比は 0.82 ~ 1.25 の範囲にあっ 134 Cs / 18 日 の 茨 城 県 で は 9.7 ~ 20.2、3 月 24 日 の 栃 木 県 で は Cs 放射能濃度比が 9.2、3 月 19 日の群馬県では 5.7 ~ 6.4、3 月 22 ~ 25 日では 異なるとの報告もある(小森ら , 2013)が、測定した限 4.9 ~ 9.2 と、茨城県で高い傾向が認められた。しかし、 た。地域によって土壌中の 134 Cs 濃度比に地域的な 作物種間または市町村間の差も大きく、栃木県の 3 月 24 傾向は認められなかった。また、原子炉から放出された 日ではキュウリの 1.6 からシュンギクの 31.8 まで、群馬 りでは関東地方の野菜の 放射性物質の Cs / 134 Cs / 137 134 137 Cs 放射能濃度比は 0.89 ~ 1.04 と 137 の報告があり、それからはずれているのは -1 137 Cs放射能濃 県の 3 月 25 日ではスイカの 2.2 からミツバの 10.1 まで あった。 未満のものであり、低濃度のものでは測 以上のように、野菜の放射性物質濃度または組成は、 定誤差が大きいためと考えられた。このことから、 Cs 地域、時期、作物種および栽培法によって大きく異なる 度が 10 Bq kg 134 木方展治ら:福島第一原発事故直後の関東地方における野菜類の放射性物質濃度 ことが示唆された。 引用文献 1)群馬県(2011)http://www.pref.gunma.jp/05/ e0900020.html(2015 年 1 月 6 日) :つくば市 2)木方展治・大瀬健嗣・谷山一郎(2015) において観測された東京電力福島第一原発事故直後 のから 1 年間の葉菜、土壌および降水中の放射性物 質濃度の推移 , 農環研報 , 34, 1-9 3)小森昌史・小豆川勝見・野川憲夫・松尾基之(2013) : Cs / 137Cs 放射能比を指標とした福島第一原子力 134 発電所事故に由来する放射性核種の放出原子炉別汚 染評価 , 分析化学 , 62, 475-483 4)厚生労働省(2011) :http://www.maff.go.jp/noutiku_ eikyo/news23_3.html(2015 年 1 月 6 日) :http://www.maff.go.jp/noutiku_ 5)厚生労働省(2014) eikyo/mhlw6.html(2015 年 1 月 6 日) :緊 6)厚生労働省医薬局食品保健部監視安全課(2002) 急時における食品の放射能測定マニュアル , p1-39 7)日本原子力研究開発機構(2011)http://seisai-kan. cocolog-nifty.com/blog/files/moniter 110321 .pdf (2015 年 1 月 6 日) 17 18 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 付録1 ② サンプル番号に加え、農産物の採取地の住所、サ 平成 23 年 3 月 18 日 ンプリングを行った職員の氏名を野帳に記録する。 表計算ソフト(エクセル)を用い別添ファイル(様 食品(農産物等)の採取・送付手順 (マニュアル)ver.1 式 2)によりデータを入力する。(※データ入力は農 産物を分析機関に届けたあと、帰庁後に入力しても よい。) サンプリング地点は別途指示する。 (2) サンプルの採取周辺環境の記録 1.持参する用具 ① 試料の前処理に必要なもの ・試料等を洗浄するための水(ポリタンク 1 個分 20L) ① 放射線レベルの予備測定(P) サンプリングに当たっては、可能であれば放射線検 出器を携行し、サンプリングする場所のガンマ線のレ ベルを記録(例えば、地上1メートル地点の大気のガ ・可食部でない根等を除去するためのハサミ等 ンマ線のレベル)するとともに、試料のガンマ線レベ ・試料の重さ測定用の“はかり” ルを予備測定することが望まれる。 ) (2 ㎏以上の重量を測定可能なもの。 ※放射線検出器の準備について調整が必要であるた ・ “はかり”全体が入る大きさの透明なビニール袋: 必要数(サンプリング 1 地点につき 2 袋以上) め、放射線検出器の準備ができるまでは、本手順を 抜かしてよい。 ・ティッシュペーパー 万一、農産物の予備測定の結果、放射線検出器の表 ② 試料の密封に必要なもの ・採取対象とする農産物が2㎏以上入る大きさの透 明なビニール袋:必要数以上(1試料当たり保存 示が 2500 万 cps 以上であった場合、サンプル採取を 中止し、直ちに現場から避難するとともに本省に報告 する。 試料用含め4袋使用) ・ガムテープ <参考>(計算値) 1cps = 0.0000002 マイクロシーベルト/ cm3 ③ 記録に必要なもの 25,000,000cps = 5 マイクロシーベルト/秒= 18 ミリ ・野帳関係(市販ノート及び通常の筆記用具) シーベルト/時間 ・油性サインペン(黒、赤) X 線 CT による撮像 1 回は 7 ~ 20 ミリシーベルト ・デジタルカメラ 一般職国家公務員が 1 日あたり浴びてよい上限 250 ミ リシーベルト/時 2.農地からの農産物の採取方法 (1) 統一的サンプル番号の付与 ② 写真撮影 ① 採取試料には以下の様式1により一連のサンプル デジタルカメラを用い、①圃場全景(圃場の周囲の 番号を設定し、採取時に付与し、包装したサンプル 地形や山や林等の環境が分かるよう東西南北4方 の袋(以下(5)③を参照)に油性サインペン(黒) 向)、②農産物の生育状態(農産物が数株並んでいる様 で大きめの文字で記載する。 子が分かるよう、上から撮影したものと横から撮影し たもの合計 2 点)を撮影する。写真のデータファイル <様式1> はサンプル番号と関連付けて農政事務所で保存する。 都道府県名―地点記号(別途指定する)-連番(1か ら順番。複数日にわたり試料採取する場合は前の日の番 号の次から開始)-年月日(西暦年/月/日)-時刻 (24 時表記。梱包終了時の時刻-農産物名 【例】 ○○県-A-1-2011 / 03 / 17-12:00-ホウレンソウ (3) 農産物の採取 ① 圃場内での採取地点 ア)圃場内 1 か所から農産物を採取する。その際、圃 場の端から最低 2 メートル以上内側から採取する。 また、一番端の列(うね)からは採取しない。 木方展治ら:福島第一原発事故直後の関東地方における野菜類の放射性物質濃度 19 イ)野帳に手書きで良いので圃場の図を書き、どの地 ニール袋に穴があいていた場合などは、 点から採取したか正確な採取ポイントを記録する。 濡らしたティッシュペーパーで上面を 3 ウ)帰庁後、デジタルカメラで撮影した圃場の写真を 回以上拭きとる(バネはかりの場合はこ の操作は不要)。 印刷し、矢印を手書きで付して場所を記録する。 ② 採取量 ② 上記①と同様の手順で、 (4)で前処理した農産物 2 ㎏を別に梱包する。 分析に供する試料は、通常の農産物の出荷時と同程 度になるように洗浄し、非可食部を除去するので、分 ※上記①、②の手順により、同一地点で採取された 析に供する可食部の生重量が合計 4 ㎏以上になると思 農産物について、同じ梱包形態の試料が 2 点作成 われる量を採取する。 されることになる。このうち 1 つを分析試料、1 つ を保存試料とする。 注意:この段階では、土壌による“はかり”の汚染 を避けるため、 “はかり”を使用しない。 ③ 分析試料及び保存試料のビニール袋に、油性サイ ンペン(黒)を用い(1)に基づき同一の試料番号 (4) 試料の前処理 を記入する。さらに、保存試料には、油性サインペ ン(赤)で「保存試料」と記入する。 採取した農産物について、産地から通常出荷される 条件と同様の前処理を行う。具体的には以下のとお り。なお、洗浄及び非可食部の除去は、可能であれば ④ 放射線検出器による予備測定結果の取り扱い(P) 圃場内で行う。 (6) 試料の送付 ① ホウレンソウの場合 圃場から引き抜いた後、市販のホウレンソウと同様 に赤色根部分を残し、ひげ根部分は包丁で切断する。 包装された試料(分析用試料及び保存試料の両方) を段ボール箱に入れ、指定された分析機関に責任を 持って搬送する。 変質した葉が存在する場合は除去する。 通常の収穫時と同様に葉の洗浄は行わないが、根先 <注> を切断した状態において、通常出荷不可能なほど明ら ガソリンの供給等の問題があることから、本省が指示 かに赤色根部分に土が付着している場合は、赤色根部 する期間について、地方農政事務所は(独)農業環境技 分のみ水で洗浄した後、よく水気を切る。 術研究所に搬送する。 (独)農業環境技術研究所は、シンチレーションサーベ (5) 試料の梱包 ① ビニール袋を 2 袋用意し、このうち 1 袋に採取後 イメータで予備測定し、ガンマ線レベルが高いもの上位 8 検体を分析、残りを分析機関に搬送する。 (4)で前処理した農産物のうち 2 ㎏以上を入れる。 袋が大きくふくらまないよう空気を除き、袋の口を 3 回折り曲げた後、ガムテープで密封する。これを (7) データファイルの送付 略 2 個目のビニール袋に入れ、同様の方法により梱包 することにより、2 重に密閉する。 (8) 農産物を採取する者の注意事項 ① 交差汚染の防止 注意1:この段階では“はかり”の使用可。“はか 別の圃場で採取した農産物を汚染することがないよ り”を丸ごと透明なビニール袋(持ち物 う、以下の点に留意する。 として1.①に記載)に入れ、 “はかり” ア)靴底についた圃場の土壌を他の場所に持ち込まな が直接農産物や土壌に触れないようにす いよう、当該圃場で良く土を落とす(必要に応じて る。1採取地点で使用した後のビニール 靴底を水で洗浄する)。 袋は、別のビニール袋に入れ廃棄する。 注意2:使用後の“はかり”について、覆ったビ イ)素手で農産物を取り扱った場合は、石鹸を使い、 以下の方法で 2 度洗いする。 20 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) ・石鹸を泡立て、手首から上を優しく(ゴシゴシ強 付録2 くこすらないで)水で洗い流した後、再び石鹸を 泡立て今度は良く水洗する。 放射能(放射線)事故が起きた場合の作物 体放射能濃度測定手順(暫定版) ② 暴露の防止 土壌・食品に付着した放射性物質の吸引・皮膚への 付着を避ける観点から、可能であれば、使い捨てのゴ ム手袋、マスクを使用することが望ましい。 1.ホウレンソウ ① アイソトープ別棟玄関で、ゴム製もしくはプラス チック製手袋および作業衣を着用し、ポリエチレン 製袋の外から GM サーベイメータでおおよその検査 (10) マニュアルの内容についての問い合わせ 略 をする。3,000 cpm を越えた試料は、アイソトープ 別棟が汚染される恐れがあるので持ち込まない。 ② 布製もしくはプラスチック製手袋および実験衣を 着用する。試料の変質葉を除去し、ザルに広げ、流 水で約 10 秒間洗浄した後、ザルを振とうして水滴 がほとんど落ちなくなるまで水を切る。基部約 2cm を除去し、包丁やはさみ等を用いて、マリネリ容器 に入れる場合は 10×20mm 程度、V 型容器の場合は 5×10mm 程度に裁断を行う。 ③ 試料の混合を行なう。 マリネリ容器の場合 ④ 2L または 0.7L 容のマリネリ容器に標線まで試料 を密に詰め、重量を測定する。2L 容器では生重とし て 500g 程度が充てんの目安となる。 ⑤ マリネリ容器をゲルマニウム半導体検出器の検出 部に搭載する。 ⑥ 試料の放射能濃度や機械の検出効率にもよるが、 1,500 秒以上をかけて放射能測定(I-131、Cs-137、 Cs-134 等)を行う。 V 型容器の場合 ④ 丸形容器にふたが膨らまない程度に試料を密に詰 め、重量を測定する。生重として 30g 程度以上が充 てんの目安となる。 ⑤ シーラーで厚さ 0.03mm のポリエチレン製袋に封 入し、試料を封入したスチロール製容器の底面中央 が、検出器中央に重なるようにして、ゲルマニウム 半導体検出器に密着させる。 ⑥ 試料の放射能濃度や機械の検出効率にもよるが、 5,000 秒以上をかけて放射能測定(I-131、Cs-137、 Cs-134 等)を行う。 ⑦ 測定が終了した試料はポリエチレン製袋に入れ、 密封して冷蔵庫に保存する。試料が不要の場合は、 木方展治ら:福島第一原発事故直後の関東地方における野菜類の放射性物質濃度 廃棄物として処分する。 ⑧ 核 種 の 同 定 お よ び 放 射 能 濃 度 の 計 算 を 行 い、 Bq/kg(生重)で表示する。 ⑨ RI 主任者は計算結果の提出を受け、データ整理を 行い、拡大アイソトープ部会でデータを確認する。 21 23 農環研報 34, 23-28(2015) 福島第一原発事故直後の福島県周辺の 農地土壌における放射性物質濃度 Concentration of radioactive materials of agricultural soil in surrounding area of Fukushima prefecture just after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident 木方展治*・大瀬健嗣**・谷山一郎*** (平成26 年12月2日受理) Synopsis: The authors measured concentration of 131I, 134Cs and 137Cs in agricultural soil (0-15 cm) which were sampled in Miyagi, Ibaraki, Tochigi, Gunma, Saitama, Chiba and Kanagawa Prefecture on the basis of the request of the Ministr y of Agriculture, Forestr y and Fisheries (MAFF) and the prefectural governments just after accident of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant (FDNPP) from March 25 to April 2, 2011. Fukushima Prefecture, where the FDNPP is located, and northern Ibaraki Prefecture were not included. This paper shows the data of including 134 Cs and 137 Cs 131 I which are unpublished. 131 I, The ranges of 134 Cs, Cs, radioactive Cs (134Cs+137Cs) are from 18.1 to 2600 Bq kg-1 , from 137 5.8 to 1980 Bq kg-1, from 7.0 to 2060 Bq kg-1, from 12.8 to 4040 Bq kg-1 , respectively. In general the concentrations are high in southern Miyagi, middle Ibaraki and northern Tochigi Prefecture where are near to the FDNPP. The range of 131 I / 137Cs concentration ratio shows the large difference from 0.76 to 11.9. The averages of the ratio in each prefectures are 3.71 in Miyagi Prefecture, 6.10 in Ibaraki Prefecture, 2.94 in Tochigi Prefecture, 2.11 in Gunma Prefecture, 3.28 in Saitama Prefecture, 4.03 in Chiba Prefecture and 3.50 Kanagawa Prefecture. This results shows the 131 I / 137Cs ratio at the areas is deferent with the time of passing of radioactive plume and the weather at deposition. The average Cs / 137Cs ratio as 0.92 in Tochigi Prefecture is lower than the value as 0.96 and 134 0.97 in Ibaraki and Tochigi Prefecture respectively. However it is difficult to conclude that there is difference 134Cs / 137Cs ratio between the prefectures in low radioactive Cs concentration. * 土壌環境研究領域 ** 土壌環境研究領域、現福島大学 元 *** 元 研究コーディネータ 24 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) Ⅰ はじめに 射性物質濃度は 2011 年 4 月 1 日 0:00 時点の減衰補正し た。 2011 年 3 月 11 日の東日本大震災に伴い東京電力福島 これらデータの一部は、既に 2011 年 4 月上旬に各県の 第一原子力発電所(以下福島第一原発)において炉心溶 ホームページ上で公開された。データは採取日時に補正 融事故が発生し、多量の放射性物質が環境に放出され、 したデータである。なお、各県から公開されたデータに 福島県を中心とした日本の広範囲の農作物や土壌が汚染 は農環研以外の分析機関が行った結果も含まれている。 された。放出された放射性物質の量は 77 万TBqとチェル Ⅲ 結果および考察 ノブイリ原発事故時の約 15%に相当し、国際原子力事故 評価尺度(INES)でレベル 7 の深刻な事故であった(原 。事故直後に厚生労働省などが 子力安全・保安院 , 2011) 表 1 に、採取市町村、131I、134Cs および 137Cs 放射能濃 2011 年 3 月に定めた放射性物質の暫定規制値を上回っ 度と検出限界、134Cs および 137Cs 放射能濃度の和である た農作物は、北は岩手県北部の牧草から、西は静岡県の 放射性セシウム濃度、131I / 137Cs 放射能濃度比および 茶葉まで広い範囲に及んだ。2012 年 4 月に定められた新 134 たな食品基準値を上回る農作物が 2014 年 3 月時点でも 3 桁または小数点以下 1 桁の値で表示する。対象となる放 。 検出され、出荷規制が行われている (厚生労働省, 2014) 射性物質の測定値は全て検出限界よりも高かった。また、 そのような中で、 (独)農業環境技術研究所(以下農環 放射性物質濃度が高い試料は、試料によって測定時間を 研)では福島第一原発事故直後に農林水産省や県からの Cs/ 137Cs放射能濃度比を示す。放射能濃度は有効数字 短くしたため、放射能濃度が高いと検出限界も高い。 要請を受け、宮城県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、 土壌中 131I 濃度は 18.1 ~ 2600 Bq kg-1、134Cs 濃度は 5.8 千葉県および神奈川県で採取された農地土壌試料の ~ 1980 Bq kg-1、137Cs 濃度は 7.0 ~ 2,060 Bq kg-1 および 131 I、134Cs および 137Cs 放射能濃度を測定した。134Cs およ 放 射 性 セ シ ウ ム 濃 度 は 12.8 ~ 4040 Bq kg-1 の 範 囲 で び 137Cs 放射能濃度については各県のホームページ上で あった。一般に宮城県南部、栃木県北部、茨城県中央部 公開されるとともに、農林水産省の 2011 年度の放射性 などが高く、福島第一原発に近い地域ほどそれぞれの放 物質に汚染された農地の作付け制限策定に対する土壌放 射能濃度が高い。 I/ 137Cs濃度比は、0.76 ~ 11.9 の範囲と 1 桁以上に範 射性セシウム濃度の目安にも利用された。ここでは、こ 131 れまで公表されていなかった 131I 放射能濃度を含めて、 囲にあった。採取地点の数や地理的分布に偏りがある 農環研で分析した結果について報告する。 が、宮城県の平均値は 3.71、茨城県は 6.10、栃木県は 2.94、群馬県は 2.11、埼玉県は 3.28、千葉県は 4.03、神 Ⅱ 方 法 。文部 奈川県は 3.50 と地域的な違いが認められる(表 2) 科学省(2011)によると、福島県の 2011 年 6 月 14 日現 土壌は、2011 年 3 月 25 日~ 4 月 2 日に、各県の担当者 在の 131I / 137Cs 濃度比は、福島第一原発の北側の海沿い が採取した。採取方法は、2011 年 3 月 24 日に農林水産省 や内陸部よりも南側の海沿いで高い傾向を示していた。 消費・安全局農産安全管理課が各都道府県に通知した「農 放射性プルームの放出時期や降雨の有無などにより、沈 地土壌の採取・送付手順(マニュアル) 」に従った。その 着時の 131I / 137Cs 濃度比が地域によって異なったと考え 概要は付録に示す。 られるが、詳細については福島県や茨城県北部のデータ 上記マニュアルに従って採取され、ビニール袋に充填 との照合が必要である。 された生土をよく混合し、生土 100 g を V 型容器に充填 Cs / 137Cs 放射能濃度比は 0.57 ~ 1.12 の範囲にあっ 134 し、測定試料とした。放射性物質濃度を「緊急時におけ た。小森ら(2013)によると、2011 年 3 月 11 日時点に るガンマ線スペクトル解析法」 (文部科学省 , 2004)に従 補正した福島第一原発の汚染水の 134Cs / 137Cs 放射能濃 い、農環研のゲルマニウム半導体検出器を用いて 1,000 度比は、一号機が 0.89 ~ 0.93、二号機が 0.96 ~ 1.05、三 ~ 10,000 秒間測定した。また、別に分取した生土試料を 号機が 0.97 ~ 1.04 であり、一号機からの汚染が主であっ 110℃で 24 時間乾燥後土壌水分を測定した。土壌の放射 た宮城県の牡鹿半島沿いの土壌中の 134Cs / 137Cs 放射能 性物質濃度は 131I、134Cs および 137Cs 放射能濃度を乾土 濃度比は 0.91 程度であったが、その他の地域の 134Cs / 1kg あたりの Bq(Bq kg-1)で示した。 137 地域的な放射性物質濃度の比較を可能とするため、放 Cs 放射能濃度比のほとんどは 1.0 程度であった。本報 告では宮城県の平均値 0.92 は、茨城県や栃木県の平均値 25 木方展治ら:福島第一原発事故直後の福島県周辺の農地土壌における放射性物質濃度 表 1 農地土壌の放射性物質濃度(補正日:2011 年 4 月 1 日) 131 I No 県 市町村 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 宮城 宮城 宮城 宮城 宮城 宮城 宮城 宮城 宮城 宮城 宮城 宮城 宮城 宮城 茨城 茨城 茨城 茨城 茨城 茨城 茨城 茨城 茨城 茨城 茨城 茨城 茨城 茨城 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 栃木 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 群馬 埼玉 埼玉 埼玉 埼玉 千葉 千葉 千葉 千葉 千葉 千葉 千葉 千葉 神奈川 神奈川 神奈川 神奈川 神奈川 神奈川 神奈川 登米市 登米市 栗原市 栗原市 美里町 大崎市 大崎市 色麻町 大和町 仙台市泉区 川崎町 柴田町 白石市 丸森町 茨城町 潮来市 行方市 板東市 水戸市 龍ヶ崎市 稲敷市 大子町 つくば市 笠間市 桜川市 筑西市 八千代町 神栖市 小山市 栃木市 上三川町 鹿沼市 日光市 矢板市 那須烏山市 高根沢町 大田原市 大田原市 大田原市 大田原市 大田原市 大田原市 那須塩原市 那須塩原市 那須塩原市 那須塩原市 那須塩原市 那須塩原市 館林市 沼田市 高崎市 伊勢崎市 みどり市 嬬恋村 前橋市 下仁田町 秩父市 鶴ヶ島市 熊谷市 久喜市 香取市 旭市 山武市 千葉市緑区 長生村 館山市 館山市 香取市 平塚市 相模原市緑区 三浦市 小田原市 海老名市 小田原市 小田原市 134 Cs 137 Cs 放射性 測定値 検出限界 測定値 検出限界 測定値 検出限界 セシウム -1 (Bq kg-1) (Bq kg-1)(Bq kg-1) (Bq kg-1)(Bq kg-1) (Bq kg-1) (Bq kg ) 水田 403 4.9 101 4.0 114 3.7 215 水田 350 5.4 91.7 4.2 104 4.0 196 水田 268 6.3 102 4.2 108 4.7 210 水田 466 6.7 257 4.6 254 4.3 511 水田 300 5.0 73.3 3.4 80.3 3.1 154 水田 217 5.3 118 4.5 129 3.9 247 水田 273 4.2 88.9 2.8 99.6 2.5 188 水田 217 5.5 72.8 3.5 73.1 3.3 146 水田 671 6.7 121 4.8 138 4.6 259 水田 374 5.2 44.5 3.2 53.6 3.3 98.1 水田 404 5.0 85.2 3.6 89.4 3.3 175 水田 1720 6.1 336 4.0 357 3.5 693 水田 1690 8.0 335 5.3 349 5.1 684 調整田 1020 5.5 270 3.7 287 3.5 557 水田 1190 6.9 177 5.3 185 5.0 362 水田 418 3.5 80.0 2.9 85.2 2.9 165 水田 545 4.8 115 3.7 112 3.3 227 畑 690 8.2 75.4 4.6 67.3 5.3 143 水田 2310 10.2 180 5.5 194 5.1 374 水田 1400 9.9 545 6.5 553 6.0 1100 水田 738 7.6 178 5.7 200 4.6 378 水田 421 6.1 83.1 3.9 87.9 4.9 171 水田 460 4.9 53.6 3.8 60.6 3.5 114 畑 576 7.3 161 5.0 167 5.0 328 水田 710 4.9 77.4 3.7 82.5 3.8 160 水田 567 4.6 75.9 3.5 79.3 3.3 155 水田 502 4.7 94.5 3.4 98.7 3.3 193 畑 416 4.0 92.2 2.6 100 2.6 192 水田 578 5.6 108 4.9 110 4.5 218 水田 542 4.7 59.7 3.7 66.3 4.2 126 水田 755 6.3 132 5.1 143 5.0 275 水田 642 5.8 123 4.4 123 4.8 246 水田 1660 11.2 512 10.5 525 8.6 1040 水田 1180 9.5 549 8.7 579 8.7 1130 水田 668 5.9 92.2 4.0 89.9 4.2 182 水田 230 3.7 144 3.2 148 3.4 292 水田 1820 11.2 1150 9.8 1160 8.9 2310 水田 725 7.2 338 5.0 350 4.8 688 水田 1160 5.0 741 4.8 755 3.4 1500 水田 865 10.7 240 7.2 247 6.1 487 水田 884 12.2 370 8.1 377 7.6 747 水田 1260 11.1 987 7.3 1030 6.9 2020 水田 879 11.5 494 7.3 511 7.3 1010 水田 1110 11.7 735 7.5 740 6.0 1480 水田 1910 15.0 1560 9.5 1580 8.8 3140 水田 1470 14.7 1180 9.9 1210 8.6 2390 水田 1360 13.9 902 9.0 927 8.6 1830 牧草地 2600 14.0 1980 12.5 2060 11.6 4040 畑 281 4.2 72.9 4.1 77.1 3.4 150 畑 152 4.2 104 3.7 104 3.9 208 畑 188 4.8 117 4.3 119 4.5 236 畑 155 4.4 53.2 3.7 55.5 3.9 109 畑 285 5.0 99.1 4.2 107 3.3 206 畑 187 7.0 240 5.4 245 5.0 485 畑 86.3 2.5 26.7 2.0 31.0 1.8 57.7 畑 351 4.1 281 3.0 288 2.8 569 畑 209 2.8 50.3 3.0 58.7 2.7 109 畑 18.1 1.6 5.8 1.4 7.0 1.9 12.8 畑 45.0 2.2 9.1 1.9 16.0 1.9 25.1 畑 184 2.4 37.7 2.3 44.0 2.0 81.7 畑 607 5.3 129 5.0 133 4.6 262 畑 213 4.2 33.4 3.7 36.5 4.9 69.9 水田 209 3.5 53.1 3.2 60.2 3.4 113 水田 234 3.4 39.9 3.4 50.1 3.1 90.0 畑 90.7 2.3 20.7 2.0 24.6 3.0 45.3 水田 47.9 3.5 17.2 2.5 18.0 2.1 35.2 畑 33.5 1.9 11.7 1.7 12.4 1.9 24.1 水田 592 2.5 120 2.3 127 2.3 247 水田 125 4.3 36.2 5.5 35.1 5.9 71.3 水田 360 1.8 98.6 2.3 103 2.2 202 水田 196 1.5 32.5 11.1 34.3 1.8 66.8 水田 504 8.5 341 10.6 335 9.8 676 水田 237 3.6 65.2 5.0 73.1 4.7 138 果樹 164 2.0 44.7 2.0 52.4 2.1 97.1 果樹 152 1.8 28.0 1.8 39.3 1.7 67.3 土地利用 131 I/137Cs 比 3.54 3.37 2.49 1.84 3.74 1.68 2.74 2.96 4.86 6.98 4.52 4.82 4.84 3.55 6.43 4.90 4.87 10.3 11.9 2.53 3.69 4.79 7.58 3.45 8.60 7.15 5.09 4.16 5.26 8.18 5.28 5.22 3.16 2.04 7.43 1.56 1.57 2.07 1.54 3.50 2.35 1.22 1.72 1.50 1.21 1.21 1.47 1.26 3.64 1.46 1.58 2.79 2.66 0.76 2.78 1.22 3.56 2.58 2.81 4.18 4.57 5.84 3.48 4.67 3.69 2.66 2.71 4.66 3.57 3.49 5.71 1.50 3.24 3.12 3.86 134 Cs/137Cs 比 0.89 0.88 0.94 1.01 0.91 0.91 0.89 1.00 0.88 0.83 0.95 0.94 0.96 0.94 0.96 0.94 1.03 1.12 0.93 0.99 0.89 0.95 0.88 0.97 0.94 0.96 0.96 0.92 0.98 0.90 0.92 1.00 0.98 0.95 1.03 0.97 0.99 0.97 0.98 0.97 0.98 0.96 0.97 0.99 0.99 0.98 0.97 0.96 0.95 1.00 0.98 0.96 0.93 0.98 0.86 0.98 0.86 0.83 0.57 0.86 0.97 0.91 0.88 0.80 0.84 0.95 0.94 0.94 1.03 0.96 0.95 1.02 0.89 0.85 0.71 26 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 表 2 農地土壌の放射性物質濃度のとりまとめ(補正日:2011 年 4 月 1 日) 茨城 栃木 群馬 埼玉 千葉 神奈川 全体 I(Bqkg-1) 131 Cs(Bqkg-1) 134 Cs(Bqkg-1) 137 放射性セシウム (Bqkg-1) 最大 1720 336 357 693 最小 217 44.5 53.6 平均 598 150 160 最大 2310 545 最小 416 平均 782 最大 I/137Cs 比 131 Cs/137Cs 比 134 6.98 1.01 98.1 1.68 0.83 310 3.71 0.92 553 1100 11.9 1.12 53.6 60.6 114 2.53 0.88 142 148 290 6.10 0.96 2600 1980 2060 4040 8.18 1.03 最小 230 59.7 66.3 126 1.21 0.90 平均 1120 620 637 1260 2.94 0.97 最大 351 281 288 569 3.64 1.00 最小 86.3 26.7 31.0 57.7 0.76 0.86 平均 211 124 128 253 2.11 0.95 最大 209 50.3 58.7 109 4.18 0.86 最小 18.1 5.8 7.0 12.8 2.58 0.57 平均 114 25.7 31.4 57.2 3.28 0.78 最大 607 129 133 262 5.84 0.97 最小 33.5 11.7 12.4 24.1 2.66 0.80 平均 254 53.1 57.7 111 4.03 0.91 最大 504 341 335 676 5.71 1.03 最小 125 28.0 34.3 66.8 1.50 0.71 平均 248 92.3 96.0 188 3.50 0.92 最大 2600 1980 2060 4040 11.9 1.12 最小 18.1 5.8 7.0 12.8 0.76 0.57 平均 634 249 258 507 3.77 0.94 1.2 1.1 Cs/137Cs放射能濃度比 宮城 項目 134 県 1.0 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0 500 1000 1500 Cs放射能濃度 137 図1 2000 2500 木方展治ら:福島第一原発事故直後の福島県周辺の農地土壌における放射性物質濃度 27 0.96 や 0.97 よりも低いが、その他の県では埼玉県の 0.78 発電所事故に由来する放射性核種の放出原子炉別汚 や千葉県の 0.91 といった値もある。このため、 Cs 濃度 染評価 , 分析化学 , 62, 475-483 137 と Cs / 134 Cs 放射能濃度比の関係を見ると 137 -1 Cs 濃度が 137 100 Bq kg 以下に低下すると Cs/ Cs放射能濃度比 134 137 。 Cs および のばらつきが大きくなる(図 1) 134 Cs が低 137 濃度の試料では測定時間を十分にとって、測定精度の向 上を図った上で考察する必要がある。 3) 厚生労働省(2014) :http://www.maff.go.jp/noutiku_ eikyo/mhlw6.html(2015 年 1 月 17 日) 4) 文部科学省(2004):緊急時におけるガンマ線スペ クトル解析法 , p1-174 5) 文部科学省(2011):http://radioactivity.mext.go.jp/ ja/contents/6000/5047/24/5600_0921.pdf(2015 年 摘 要 著者らは農林水産省や県からの要請を受け、宮城県、 茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県および神奈川 県において、福島第一原発事故直後の 3 月 25 日から 4 月 2 日にかけて採取された農地土壌試料の 131I、134Cs および Cs 放射能濃度を測定した。今回、これまで公表されて 137 いなかった 131I 放射能濃度を含めて、農環研で分析した 結果を公開する。 福島県周辺 7 県における 131I濃度は 18.1 ~ 2600 Bq kg-1、 Cs 濃 度 は 5.8 ~ 1980 Bq kg-1、137Cs 濃 度 は 7.0 ~ 134 2060 Bq kg-1、放射性セシウム濃度は 12.8 ~ 4040 Bq kg -1 である。各県内の分布を比較すると宮城県南部、栃木 県北部および茨城県中央部などが高く、福島第一原発に 近い地域ほどそれぞれの放射能濃度が高い。 I / 137Cs 濃度比は、宮城県が 3.71、茨城県が 6.10、 131 栃木県が 2.94、群馬県が 2.11、埼玉県が 3.28、千葉県が 4.03、神奈川県が 3.50 と地域的な違いが認めらる。放射 性プルームの放出時期や降雨の有無などにより、沈着時 の 131I / 137Cs 濃度比が地域によって異なったためと考え られる Cs / 137Cs 放射能濃度比は 0.57 ~ 1.12 であり、宮城 134 県の平均値 0.92 は、茨城県や栃木県の平均値 0.96 や 0.97 よりも低い。その他の県では埼玉県の 0.78 や千葉県の 0.91 といった値もあるが、137Cs 濃度が 100 Bq kg-1 以下 になると、濃度が低下するとともに 134Cs / 137Cs 放射能 濃度比のばらつきが大きくなることから、低濃度の試料 では、測定精度を向上させた上で考察する必要がある。 引用文献 1) 原子力安全・保安院(2011) :http://www.meti.go.jp/ press/2011/06/20110606008/20110606008-2.pdf (2015 年 1 月 17 日) 2) 小森昌史・小豆川勝見・野川憲夫・松尾基之(2013) : Cs / 137Cs 放射能比を指標とした福島第一原子力 134 1 月 17 日) 28 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 付録 農地土壌の採取・送付手順(マニュアル) 土壌の採取 (1) ほ場内採取地点の決定 ① ほ場に対角線を引き、その交点 1 点と頂点を結ん だ線の中点 4 カ所の計 5 カ所を採取地点とする。ほ 場が広い場合は中心付近の 10a を対象とする。 ② 農作物が作付されている場合は株間、畝立てされ ている場合は畝間、樹園地の場合は樹間とする。 (2) 試料採取 採土器がある場合、 (1)で定めたほ場内採取地点(5 カ所)において鉛直に耕盤層または耕盤層が 15 cm より も深い場合は 15cm の深さまでの土壌を採取する。表面 に稲わらなどがある場合も取り除かないでそのまま採取 し、ビニール袋に入れる。試料採取後、採土器内をよく 清掃する。 採土器がない場合、30 × 30 × 20cm 程度の穴をあけ、 1断面を垂直にし、そこから上面と底面が同じ面積にな るように耕盤層または 15 cm までブロック状に土壌試料 を採取し、袋に入れる。 5 ヶ所の土壌試料を袋に入れた後、土壌試料をよくほ ぐし、混合する。 土壌試料の量は 1 kg 程度とし、多少の増減は差し支え ない。 29 農環研報 34, 29-32(2015) 放射性物質沈着初期の農地土壌からの 放射性セシウムの抽出 Radiocesium extraction from arable soils at the initial stage after deposition of radionuclides 山口紀子*・江口定夫**・池羽正晴***・藤原英司*・牧野知之*・谷山一郎**** (平成26 年12月2日受理) Synopsis: Ion exchangeable fractions of radiocesium in the arable soils, which were collected within the initial stage after deposition of radionuclides, were analyzed. The percentage of extracted 137Cs by 1 mol L-1 ammonium acetate solution was 36% in average for the soils taken from Ibaraki prefecture. Ⅰ はじめに はない。ところが土壌中のセシウムイオン(Cs+)は、 カルシウム塩やナトリウム塩などではほとんど抽出され つくば市では、土壌中の東京電力福島第一原子力発電 ず、抽出するためにはカリウム塩あるいはアンモニウム 所事故由来放射性核種の大部分は、2011 年 3 月 21 日か 塩が必要である。アンモニウム塩による抽出効率が格段 ら 23 日および 26 日の降雨に伴って負荷された ( 佐波ら , に高いのは、Cs+の特徴である(Takeda et al., 2006)。こ 2011)。土壌中の放射性セシウムが溶脱や植物吸収に れは、土壌中にフレイド・エッジ・サイトとよばれる Cs+ よって土壌から失われていくのか、あるいは長期にわた を保持する能力がきわめて高い負電荷が存在するためで り土壌中に存在し続けるのかは、抽出性の違いにより評 ある。過剰のカルシウムイオンやナトリウムイオンによ 価できる。水で溶出される画分(水溶性画分) 、酢酸カリ るイオン交換反応で抽出された Cs +は、抽出操作の過程 ウムや酢酸アンモニウムなど中性の塩類水溶液によるイ でフレイド・エッジ・サイトに再吸着されてしまう。ア オン交換反応で抽出される画分(交換態画分) 、中性の塩 ンモニウムイオンおよびカリウムイオンは、フレイド・ 類水溶液によっても容易に交換・溶出されない画分(固 エッジ・サイトへの Cs +の吸着を阻害することができる 定態画分)に便宜的に大別すると、水溶性→交換態→固 ため、中性塩のなかでも Cs+の抽出効率が高いものと考 定態の順に土壌中で動きにくい画分となる。一般に、交 えられる ( 山口ら , 2012)。土壌に沈着した放射性セシウ 換性陽イオンを抽出するための溶液としては、十分に高 ムは、時間とともに水溶性→交換態→固定態の順に推移 濃度の中性塩類溶液を用いれば、交換抽出量に大きな差 していく(Roig et al., 2007; Takeda et al., 2013)。このよ 土壌環境研究領域 * ** 物質循環研究領域 *** 茨城県農業総合センター **** 元研究コーディネータ 30 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) うな推移はトレーサー実験では確認されているものの、 無カリ区および慣行区より土壌を採取した。D2 圃場では 放射性セシウムが沈着した現場土壌でのデータは少な 2001 年以降は作物を栽培せず、雑草管理のみがおこな い。 われていた。放射性物質の沈着時は裸地であった。D1 圃 本調査は、放射性物質の沈着初期段階の土壌で、どの 場では耕起前後にサンプルを採取した。土壌は乾燥せ 程度の放射性セシウムがイオン交換反応による抽出が可 ず、2 mm 篩を通過させ、混合した。乾土 12 g 相当の未 能な画分として存在するかを把握することを目的として 風乾土に pH 7 に調整したイオン交換水、pH 7 に調整し おこなった。 た 1 mol/L の酢酸アンモニウム溶液、酢酸カリウム溶液 および酢酸カルシウム溶液 120 mL を添加し、1 時間往復 Ⅱ 試料および方法 振とうした。遠心分離後、ポアサイズ 0.2μm のボトル トップフィルター(Thermo Scientific Nalgene)で濾過 農業環境技術研究所(農環研)内畑圃場(D1、D2 圃 した。ろ液をプラスチック製円筒容器(V3 型、直径 場) 、農環研内および茨城県農業総合センター内水田圃 7.5 cm、高さ 4 cm)に 2 cm の高さになるように満たし 場の土壌を、最表層 0 ~ 0.5 cm は、プラスチック製スク 、137Cs 濃 度 を ゲ ル マ ニ ウ ム 半 導 体 検 出 器 ( 約 90 mL) レーパーで、0 ~ 5 cm は、ステンレス製の 100 cm3 コア (GCW2523S、キャンベラ)で 10,000 ~ 80,000 秒測定し サンプラーで圃場内 5 地点より採取し、混合した。これ た。土壌は 2 mm 篩を通過後、乾燥させずにプラスチッ らの圃場では、放射性物質の沈着以後、耕起などの土壌 ク製円筒容器(V2 型、直径 7.5 cm、高さ 2 cm)に充填 攪乱はされていなかった。各圃場の土壌分類は、表 1 に し、ゲルマニウム半導体検出器で 1,000 ~ 5,000 秒測定し 示した。D1 圃場では、事故以前より毎年トウモロコシお た。各種抽出液による抽出された 137Cs量を抽出前の土壌 よび緑肥用の冬小麦が栽培されていた。つくば市の土壌 中 137Cs 量で除し、抽出率を計算した。また、保存による に原発事故由来の放射性物質が降雨により沈着した 抽出率変化について検討するため、2 mm 篩を通過後に 2011 年 3 月 21 時点では、冬小麦が栽培されており、小麦 風乾状態で保管してあった一部試料(農環研 D2 圃場慣 の 地 上 部 高 さ は 約 15 cm、 被 覆 率 は 60 ~ 70% で あ っ 行区および農環研黒ボク土水田)については、2 年度の た。D2 圃場は D1 圃場の南に隣接した 3 要素連用試験圃 2013 年 10 月 18 日に酢酸アンモニウム抽出率を再測定し 場である。カリウム肥料を 15 年以上施用していなかった た。 表 1 土壌と抽出液中の放射性セシウム濃度および抽出率 Cs 濃度 (Bq/kg) 抽出率 (% ) 137 採取地 土地利用・3 月下旬の 土壌分類 土地被覆状況 茨城県つくば市 黒ボク土 農環研内 D1 畑・小麦被覆・耕起前 畑・小麦被覆・耕起後 畑・無カリ・植被なし 茨城県つくば市 黒ボク土 農環研内 D2 採取深度 0 ~ 0.5 cm 0 ~ 5 cm 0 ~ 0.5 cm 0 ~ 5 cm 茨城県水戸市 黒ボク土 農総センター内 * 水田・慣行・植被なし 2011.4.20 0 ~ 0.5 cm 2011.5.6 土壌 アンモニウム 抽出態 カリウム 抽出態 アンモニウム カリウム 抽出態 抽出態 4,050 1,520 38 368 178 48 410 136 33 307 74.6 24 5,280 1,670 1,390 32 26 797 360 257 45 32 1,600 35 30 5,400 1,910 0 ~ 0.5 cm 5,320 * 1,700 * 0 ~ 5 cm 1,170 282 4,453 1,657 37 2,140 * 45 2,810 1,030 37 1,260 407 32 茨城県つくば市 黒ボク土 水田・慣行・植被なし 0 ~ 0.5 cm 農環研内 低地土 水田・慣行・植被なし 0 ~ 0.5 cm 水田・無カリ・植被なし 2011.4.7 0 ~ 5 cm 0 ~ 0.5 cm 畑・慣行・植被なし 採取日 1 mol/L 酢酸 1 mol/L 酢酸 1 mol/L 酢酸 1 mol/L 酢酸 2011.4.14 4,790 * 0 ~ 0.5 cm 0 ~ 5 cm 0 ~ 0.5 cm 0 ~ 5 cm 風乾状態で保管してあった試料を 2013 年 10 月 18 日に再測定 2011.4.26 32 327 24 451 103 23 1,370 427 31 360 138 38 28 山口紀子ら:放射性物質沈着初期の農地土壌からの放射性セシウムの抽出 31 Ⅲ 結果と考察 謝 辞 1 mol/L 酢酸カルシウム溶液およびイオン交換水に サンプリングに協力いただいた研究技術支援室の山口 よって抽出された Cs濃度は、いずれの土壌においても 137 弘氏、荒貴裕氏に感謝の意を表します。 検出限界 (10 Bq/kg 乾土 ) 以下だった。 Cs の酢酸アン 137 引用文献 モニウム、酢酸カリウム溶液による抽出実験結果を表 1 に示す。耕起前の土壌では、最表層 0 ~ 0.5 cm の方が表 層 0 ~ 5 cmよりも 137Cs濃度が高かった。放射性物質の沈 1) 農林水産省(2013):ほ場環境に応じた農作物への 着後、攪乱されていなかった土壌では、 Cs が表層ほど 放射性物質移行低減対策確立のための緊急調査研究 。 高濃度で蓄積されていたためである。 (山口ら , 2015) の成果について . 報道発表資料 . http://www.s.affrc. 土壌表面から 0 ~ 0.5 cm と 0 ~ 5 cm で、酢酸アンモニウ go.jp/docs/press/130709.htm. (accessed 2015-03- 137 ム溶液および酢酸カリウム溶液による Cs 抽出率に顕 137 04) 著な差がなかった。黒ボク土では、単に土壌と混合する 2) Roig, M., M. Vidal, G. Rauret and A. Rigol.(2007): だけでは、固定化が進行しない可能性がある。青森県の Prediction of radionuclide aging in soils from the Cs は、交換態 Chernobyl and Mediterranean areas. Journal of 黒ボク土では、大気圏内核実験由来の 137 10%、有機物結合態が 20%、固定態が 70%の割合で分配 Environmental Quality, 36, 943-952 。D2 圃場 していたとの報告がある(Tsukada et al., 2008) 3) 佐波俊哉・佐々木慎一・飯島和彦・岸本祐二・齋藤 0 ~ 5 cm より採取した土壌酢酸アンモニウム抽出率は、 究 (2011):茨城県つくば市における福島第一原子力 陸稲を 1 作栽培した後、35%から 10%まで減少した(山 発電所の事故由来の線量率とガンマ線スペクトルの 。また、2012 年に福島県近隣から採取した土 口ら, 2013) 経時変化 . 日本原子力学会和文論文誌 , 10, 163-169 壌の調査でも酢酸アンモニウムによる抽出率が 30%を 4) Takeda, A., H. Tsukada, Y. Takaku, S. Hisamatsu, J. 。セ 超える地点は数点しかなかった(農林水産省 , 2013) Inaba and M. Nanzyo. (2006):Extractability of major シウムは沈着から時間が経過するにつれ、抽出率が減少 and trace elements from agricultural soils using ) 。しかし、 する(Roig et al., 2007;Takeda et al., 2013) chemical extraction methods:Application for 農環研内 D2 圃場の慣行区および黒ボク土水田土壌を風 phytoavailability assessment. Soil Science and Plant 乾状態で 2 年半保存しても、酢酸アンモニウム抽出率に Nutrition, 52, 406-417 変化がなかった ( 表 1)。 5) Takeda A, Tsukada H, Nakao A, Takaku Y & 酢酸カリウム溶液による抽出率は、酢酸アンモニウム Hisamatsu S (2013):Time-dependent changes of による抽出率よりも低い傾向があった。放射性セシウム phytoavailability of Cs added to allophanic Andosols を固定するフレイド・エッジ・サイトへのアンモニウム in laboratory cultivations and extraction tests. Journal イオン親和性は、カリウムイオンの 5 倍であると見積も of Environmental Radioactivity, 122, 29-36 。しかし、酢酸アンモ られている(Wauters et al., 1994) 6 )Tsukada, H., A. Takeda, S. Hisamatsu and J. Inaba. ニウム、酢酸カリウム溶液による抽出率の差は小さく、 (2008):Concentration and specific activity of fallout Cs の大部分は、フレイド・エッジ・サイト Cs-137 in extracted and particle-size fractions of 以外の負電荷に保持されている画分であったと考えられ cultivated soils. Journal of Environmental Radioactivity, た。 99, 875-881 抽出された 137 7) Wauters, J., L. Sweeck, E. Valcke, A. Elsen and A. Ⅳ 結 論 Cremers(1994):Availability of radiocesium in soils A new methodology. Science of the Total Environment, 茨城県内の黒ボク土では、平均 36%の放射性セシウム 157, 239-248 が 1 mol/L 酢酸アンモニウム溶液により抽出された。茨 8) 山口紀子・高田裕介・林健太郎・石川 覚・倉俣正 城県内の土壌では、沈着初期は、放射性セシウムの抽出 人・江口定夫・吉川省子・坂口 敦・朝田景・和穎 率が比較的高かったことが示された。 朗太・牧野知之・赤羽幾子・平舘俊太郎 (2012):土 壌-植物系における放射性セシウムの挙動とその変 32 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 動要因 . 農業環境技術研究所報告 , 31, 75-129 9) 山口紀子・Shahriari Fereshteh・江口定夫・林健太 郎・(2013):イネへの放射性セシウム移行におよぼ す窒素施肥の影響 . 第 50 回アイソトープ・放射線研 究発表会要旨集 , 165 10) 山口紀子・江口定夫・林健太郎・藤原英司・塚田祥 文 (2015):農業環境技術研究所畑圃場における農作 業に伴い巻き上がる土壌粒子に含まれる放射性物質 農業環境技術研究所報告 , 34, 33-41 摘 要 放射性物質の沈着初期段階の土壌において、放射性セ シウムがイオン交換反応による抽出可能な画分としてど の程度存在するかを調査した。茨城県内の黒ボク土で は、平均 36%が 1 mol/L 酢酸アンモニウム溶液により抽 出された。 33 農環研報 34, 33-41(2015) 農業環境技術研究所畑圃場における農作業に 伴い巻き上がる土壌粒子に含まれる放射性物質 Agitation of radioactive substances in soil particles by agricultural practices 山口紀子*・江口定夫**・林健太郎**・藤原英司*・塚田祥文*** (平成26 年12月2日受理) Synopsis: Three weeks after the accident at the Tokyo Electric Power Company's Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant, we determined the activity concentrations of 131 I, 134 Cs and 137 Cs in atmospheric dust fugitively resuspended from soil particles due to soil surface perturbation by agricultural practices. The atmospheric concentrations of 131 I, 134 Cs and 137 Cs increased because of the agitation of soil particles by a hammer-knife mower and a rotary tiller. Coarse soil particles were primarily agitated by the perturbation of the soil surface of Andosols. For dust particles smaller than 10 μm, the resuspension factors of radiocesium during the operation of agricultural equipment were 16-times higher than those under background condition. Ⅰ はじめに 質に汚染されていた場合、内部被ばくもひきおこす。 放射性セシウムは土壌の持つ負電荷に強く捕捉される 土壌の表面を攪乱する農作業は、土壌粒子を巻き上 性質をもつため、大部分が土壌の表層部分にとどまる げ、大気中ダスト濃度を上昇させる。大気中ダストのう ( 山口ら , 2012)。放射性ヨウ素も、畑条件では土壌に収 ち、粒径 10μm 以下のものは、呼吸器に吸入されて、人 着されやすい(Yamaguchi et al., 2010)。表層に放射性物 の健康に影響を及ぼす可能性があり、浮遊粒子状物質 質が多く存在する条件で土壌を攪乱すると、土壌粒子の (SPM, Suspended particulate matter)と定義して環境基 巻き上がりにより大気中ダスト濃度が上昇し、それに伴 。PM2.5 のような粒 準が定められている(環境省 , 2015) い大気中放射性物質濃度が上昇する。このため放射性物 径 10μm よりもさらに微小な粒子は、気管を通過し肺胞 質を含む土壌粒子を吸入することによる農作業者の内部 に到達するため、より健康影響が大きい。ダストの吸入 被ばくが懸念される。 そのものが健康被害の要因となるが、ダストが放射性物 * 土壌環境研究領域 ** 物質循環研究領域 *** 福島大学 地表面の単位面積(m2)あたりに存在する放射性物質 34 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) が、大気 1 m3 にどの程度再浮遊するかを示す指標として 被覆率は 60 ~ 70%であった。風速は、サンプリング地点 次式であらわす再浮遊係数(resuspension factor, RF)が より北西 250 m において観測された「農業環境技術研究 用いられる (IAEA 2010)。 所総合気象観測データ」より得た(農業環境技術研究所 , 大気中放射能濃度(Bq m-3) -1 RF(m )= 土壌表層単位面積あたり放射能濃度(Bq m-2) 再浮遊係数は、土壌水分量 (Wagenpfeil et al., 1999)、 2013)。 2 土壌の巻き上げをともなう農作業 (1) 小麦の刈取り 風速 (Holländer 1994)、放射性物質沈着からの経過時間 2011 年 4 月 7 日、 草 刈 機( ハ ン マ ー ナ イ フ モ ア、 (Rosner and Winker, 2001)といった環境因子により変動 HMB1100、共栄)を用いて緑肥用に栽培していた冬小 する。また、人為的攪乱によっても再浮遊係数は増加す 麦の地上部を刈り取った。刈取り幅は 110 cm、刈取り高 る傾向にある (Nicholeson, 1988)。たとえば Wagenpfeil さは地上部より 2 ~ 3 cmに設定した。作業の様子を図 1a et al (1999)は、農作業に由来する土壌の再浮遊係数は風 に示す。刈取り前に圃場内から均等に 9 スポットを選定 由来の 1000 倍であると報告している。 し、1 m × 1 m のプロットで小麦の収量調査をおこなう 関東地方では、春先の強風により畑から土埃が巻きあ とともに、1 スポットにつき 5 ~ 6 株を採取・混合し、放 がる光景を目にする。Igarashi et al.(2003)は、春先の 射性物質分析用試料とした。土壌の混入を避けるため、 強風により大気中ダスト濃度および Cs 濃度が上昇す 137 ることを示した。原発事故以前の土壌中 地際 5 cm の茎葉は破棄した。 Cs は、大気圏 137 内核実験によるグローバルフォールアウト由来のものが (2) 鋤込み 主体であり、農業環境技術研究所(農環研)内畑土壌の 2011 年 4 月 8 日、ロータリ耕うん部(コバシローター、 Cs 濃度は、2008 年~ 2010 年採取土壌平均値で KJM180T, 小橋工業)をトラクタに装着し、前日に刈り 6.7 ± 1.3 Bq/kg であった(農業環境技術研究所 , 2012)。 取った小麦地上部を根株と共に土壌に鋤きこんだ。耕幅 土壌中濃度が低かった 2005 ~ 2007 年の観測では、大気 は 180 cm、耕うん爪の回転半径は 25 cm、耕起深度は約 作土層 137 中ダスト中の Cs の起源は、巻き上げられた土壌より 137 15 cm であった。作業の様子を図 1b に示す。 も、モンゴルや中国北東部から飛来した風成塵が主体で 。 あった(Fukuyama and Fujiwara, 2008) a) つくば市では、土壌中の原発事故由来放射性核種の大 部分は、2011 年 3 月 21 日から 23 日および 26 日の降雨に 伴って負荷された ( 佐波ら , 2011)。放射性物質の沈着か ら間もない畑土壌で、農作業により再浮遊係数がどの程 度変化するかに関する実測データは貴重である。本研究 は、土壌粒子の巻き上がりに伴う大気中ダスト濃度、ダ スト中 131I、134Cs、137Cs 濃度に農作業がおよぼす影響を 明らかにすることを目的とした。 Ⅱ 試料および方法 b) 1 サンプリング地点 サンプリングは、農環研内畑圃場(D1)でおこなっ た。圃場面積は 944 m2(24.5 × 38.5 m)、土壌はアロフェ ン質黒ボク土(小原ら、2011)である。2010 年 11 月 6 日に、緑肥として冬小麦(Triticum aestivum L.) を条間 20 cm、播種密度 120 kg ha-1 で播種した。つくば市の土 壌に原発事故由来の放射性物質が降雨により沈着した 2011 年 3 月 21 日時点での小麦の地上部高さは約 15 cm、 図 1 刈取り作業 (a) および鋤込み作業 (b) の様子 山口紀子ら:農業環境技術研究所畑圃場における農作業に伴い巻き上がる土壌粒子に含まれる放射性物質 3 大気中ダスト (1) ダストのサンプリング 35 4 土壌 (1) 土壌のサンプリング ベースラインの測定として、2011 年 4 月 7 日の小麦の 刈取り前の 4 月 7 日、および鋤込みから 12 日後の 4 月 (3)の手法により圃場の 刈取り作業の前に以下の(2)、 20 日に土壌を採取した。最表層 0 ~ 0.5 cm をプラスチッ 中心の地上 0.85 m において 4 時間の大気中ダストのサン ク製スクレーパーで、0 ~ 5 cm をステンレス製 100 cm3 プリングを行った。その後の小麦の刈取り作業の際には 円筒コアサンプラーで採取した。刈取り前の土壌サンプ 圃場の中心の地上 1.6 m において刈取り作業に要した時 ルは、対角線上に 5 地点から採取し、それぞれγ線分析 間である 51 分のサンプリングを行った。翌日の鋤込み作 に供した。鋤込み後のサンプルは、同様に 5 地点から採 業の際には圃場の中心の地上 0.85 m において鋤込み作 取したサンプルを混合して分析に供した。 業に要した時間である 31 分のサンプリングを行った。 刈取り前、鋤込み後の作土中の放射性物質濃度の深度 分布を調べるために直径 8 cm、深さ 15 cm のコアサンプ (2) 10μm 以下の大気中ダスト(Dust-10) ルを、アクリル製ライナーつきのハンドサンプラー(HS- 吸引流量を毎分 500 L に設定したハイボリュームエア 30、藤原製作所)を用いて 3 地点より採取した。放射性 サンプラー(HV-500F、柴田科学)を用いて 10μm 以下 物質は土壌の表層に高濃度に存在していることが予想さ の大気中粒子をガラス繊維ろ紙(GB-100R-100A、柴田 れたため、最表層 1 cmをプラスチック製スクレーパーで 科学、0.3μm 以下の粒子捕集効率 99.99%)に収集した。 採取した後、コアサンプルを採取した。深さ 15 cm 分の サンプラーの吸引部に装着した分粒装置により、10 μm 土壌コアは、5 cm の深さまでは 1 cm 間隔、5 ~ 10 cm の 以上の粒子を 100%除去した。以上の方法により採取し 深さは 2.5 cm間隔、10 ~ 15 cmは 5 cm間隔で分析に供し た粒子は、PM10 とは異なり、環境基本法に基づく環境 た。なお、プラスチックライナーとの接触面から内側に 省告示の浮遊粒子状物質(SPM)に相当する。以下、 5 mm 分のサンプルは、上層から崩れた土壌粒子を含む Dust-10 と表記する。 可能性があるため、取り除いた。 (3) PM2.5 (2) 粒径分画 フィルターパック法(EMEP, 2001)に基づき、フィル 採取したダストの粒子径に相当する土壌粒子をバルク ターホルダー(NL-O、NILU)を用いて PM2.5 を捕集し 土壌から分離した。刈取り前に 0 ~ 0.5 cm の深さより採 た。フィルターパックは 2 段とした。大気の吸引口には 取した土壌を 5 地点分混合し、500 μmのふるいを通過さ 流量毎分 20 Lの条件で粗大粒子とPM2.5 を分離するイン せた。ふるいを通過した土壌粒子を蒸留水に懸濁させ、 パクターを取り付け、粗大粒子は上流の 1 段目に収めた 超音波分散をおこなった。土壌粒子濃度が 10 g L-1 にな ドーナツ型テフロン補強ガラス繊維ろ紙 (T60A20-H20、 るよう調整し、ストークス式に基づく沈降法(土壌環境 東京ダイレック)に捕集し、PM2.5 は下流の 2 段目に収 分析法編集委員会、1997)により 10 μm 以下、2.5 μm 以 めたテフロン補強ガラス繊維ろ紙(T60A20、東京ダイ 下の粒子を回収した。80 ~ 100℃のホットプレート上で に捕集した。 レック、0.3μm以下の粒子捕集効率 96.4%) 懸濁液中の水を蒸発させ、土壌粒子を回収した。この方 法では、131I は水への溶解および揮発により損失するた (4) 大気中ダスト濃度 め、評価しなかった。 パーティクルマスモニター(GT-331、柴田科学)を用 、 いて粒径 10 および 2.5μm 以下の粒子(PM10、PM2.5) (3) γ線測定 全粒子状物質の重量濃度を測定した。1 回 4 分の測定を 3 土壌は 2 mm 篩を通過後、乾燥させずにプラスチック 回繰り返して平均値を求めた。なお、パーティクルマス 製円筒容器(V2 型、直径 7.5 cm、高さ 2 cm)に充填し、 モニターにより得られる PM10 および PM2.5 は、粒径 10 ゲルマニウム半導体検出器(BE5025 および BE5065、 あるいは 2.5 μm 以下の粒子の捕集効率が 50%となるよ キャンベラ)により 5000 秒計測した。単位面積あたりの うに、より大きな粒子を除去したものに相当する。 各層の乾燥重量をもとに重量濃度からインベントリーの 換算をおこなった。 小麦地上部は 1 cm の長さに切断し、700 mL マリネリ 容器に充填した。その後、ゲルマニウム半導体検出器 36 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 射能標準溶液 CZ010(日本アイソトープ協会製)を用い (GCW2523S、キャンベラ)により 10000 秒計測した。 ダストを捕集したろ紙は、捕集面を内側として注意深 134 Csの検出効率を求めた。なおウェル型ゲルマニウム半 く折り曲げ、直径 15 mm、高さ 40 mm の円筒容器に充填 導体検出器による測定に際しては、試料の充填高さを考 し試料とした。また 10 μm以下、2.5 μm以下の土壌粒子 慮した効率値を使用した。試料採取日を基準日として減 も同種の容器に充填した。これらをウェル型ゲルマニウ 衰補正し、以上による計測値から試料の放射能濃度を求 ム半導体検出器(GCW2523S、キャンベラ)により 50000 めた。 秒計測した。 Ⅲ 結果と考察 試料の放射能濃度を求めるため、計測により得られた γ線スペクトルから I、 Cs および 131 134 Cs が放出する 137 364、605、662 keV のγ線ピークを判別し、ピーク面積 1 小麦地上部および農作業前の土壌中放射性物質濃度 を集計した。ピーク面積を放射能に換算するには、ピー 鋤込み前の作土中放射性物質の深度分布を図 2a に示 ク検出効率を参照しなければならないが、効率値は使用 す。鋤込み前は、放射性物質の 90%以上が表層 3 cm 以内 する検出器や試料条件に応じて変動する。土壌試料につ に存在していた。単位面積あたりの放射性物質量(インベ いては、放射能標準溶液 MX005(日本アイソトープ協会 ントリー)は、131I で 29.0 kBq m-2、134Cs で 15.0 kBq m-2、 製) を用い 131I の検出効率を求めた。また放射能標準体積 137 線源 MX035SPS(日本アイソトープ協会製)を用い、134Cs は 131I で 2.27 kBq m-2、Cs-134 で 0.484 kBq m-2、137Cs で および 137Cs の検出効率を求めた。一方、小麦、ダスト捕 0.446 kBq m-2 だった。すなわち、単位面積に沈着した 集ろ紙試料および土壌粒子試料については、放射能標準 131 溶液 MX005 を用い 131I および 137Cs の検出効率を求め、放 していたことになる ( 表 1)。 (a) 鋤込み前 0 0 29 kBq m-2 29 kBq m-2 131 深度 深度 (cm) (cm) 131 Csで 15.1 kBq m-2 だった。一方、小麦地上部への沈着量 I の 8%、および 134Cs、137Cs の 3%が小麦地上部に沈着 15 kBq m-2 15 kBq m-2 134 I I 134 15 kBq m-2 15 kBq m-2 137 Cs Cs 137 Cs Cs 5 5 10 10 15 15 0 0 1500 1500 3000 3000 0 0 1000 1000 2000 2000 0 0 1000 1000 2000 2000 (b) 鋤込み後 0 0 131 131 深度 深度 (cm) (cm) 16 kBq m-2 16 kBq m-2 11 kBq m-2 11 kBq m-2 134 I I 134 17 kBq m-2 17 kBq m-2 137 Cs Cs 137 Cs Cs 5 5 10 10 15 15 0 0 100 200 300 100 200 300 0 0 100 200 300 100 200 300 放射能(Bq kg-1) 放射能(Bq kg-1) 0 0 100 200 300 100 200 300 図 2 鋤込み作業前後の作土中放射能濃度の深度分布とインベントリー 基準日は試料採取日 ( 鋤込み前 2011 年 4 月 7 日、鋤込み後 2011 年 4 月 20 日 )。 37 山口紀子ら:農業環境技術研究所畑圃場における農作業に伴い巻き上がる土壌粒子に含まれる放射性物質 鋤込み前の圃場 5 地点の 0 ~ 0.5 および 0 ~ 5 cm の深 作業により、目視でも土埃が舞い上がっていることが明 度から採取した土壌中放射性物質濃度の平均値と標準偏 らかであった。刈取り作業中の全粒子状物質の重量濃度 差を表 2 に示す。5 地点における放射性物質濃度の変動係 はバックグラウンドの 40 倍に上昇した。このうちPM10 数は、 I で 4.3%、 Cs で 9.6%、 Cs で 9.3%であり、 は 42 倍、PM2.5 は 2.5 倍であった。ハイボリュームサン 圃場内での沈着量のばらつきはそれほど大きくなかった プラーでフィルター上に回収された 10 μm 以下の粒子 ことが示された。 Iは 15 cmまでの存在量のうち 61%が である Dust-10 の流量 1m3 あたりの重量も、刈取り時は 0 ~ 0.5 cm に、85%が 0 ~ 5 cm に存在していた。一方、 バックグラウンドの 43 倍であり、全粒子状物質および 131 134 137 131 Cs では 80%が 0 ~ 0.5 cm、82%が 0 ~ 5 cm に Cs で PM10 の増加割合と一致していた。フィルターパック法 は 79%が 0 ~ 0.5 cm、76%が 0 ~ 5 cm に存在していた。 で捕捉した PM2.5 については、捕捉された粒子量が少な I のほうが下層に移行しやすい傾向が く、ダスト回収前後のフィルターの重量の変化からダス みられたものの、いずれも大部分が表層に蓄積していた トの回収重量を求めることができなかった。このように ことが明らかになった。 巻き上がった土壌粒子は粒径 2.5 μm 以上の比較的粗大 134 放射性 Cs に比べ 137 131 な粒子が主体であった。 Dust-10 に含まれる放射性物質の大気濃度は、刈取り 2 刈取り作業中のダスト濃度 4 月 1 日以降、刈取りをおこなった 4 月 7 日までの 6 日 作業中においてバックグラウンドと比較して 131Iで 5 倍、 Cs で 14 倍、137Cs で 16 倍に上昇した ( 図 3)。同様に、 間は降雨がなかった。よって、刈取り作業直前の土壌表 134 、土壌表面の攪乱 面は乾燥しており(水分含量、23%) PM2.5 では、134Csで 6 倍、137Csで 8 倍に上昇した。PM2.5 による土壌粒子の巻き上げが起こりやすい条件であっ 中の 131I濃度は定量限界値以下だった。一方、フィルター た。表 3 に、バックグラウンド、および小麦地上部の刈 に捕集された Dust-10 の重量あたりの放射性物質の濃度 取り作業時の風速およびダスト濃度を示す。刈取り時の はバックグラウンド測定時に捕捉されたダストより刈取 平均風速は、バックグラウンド時より高かったが、最大 り作業時で低く、131I でバックラウンドの 10 分の 1、134Cs 瞬間風速には差がなかった。図 1a に示すように、刈取り および 137Cs は 3 分の 1 だった(表 4)。これは、刈取り作 表 1 緑肥用小麦の地上部収量および放射能濃度 表 2 鋤込み作業前後の土壌中放射能濃度 t ha-1 収量 ( 乾重 )a 放射能濃度 b Bq kg-1 ( 乾重あたり ) kBq m-2 a 1.85 ± 0.5 131 I 12200 2.27 134 鋤込み前 a 鋤込み後 b Bq kg-1 137 Cs Cs 2620 0.484 鋤込み前 a 鋤込み後 b MBq km-2 0 ~ 0.5 cm 2410 0.446 131 I Cs 137 Cs 0 ~ 5 cm 131 I 134 Cs 137 Cs 134 平均±標準偏差,n = 9. 70℃で乾燥した。 圃場内 5 プロットから採取し、コンポジットサンプルとして分析 した。 b a 6320 ± 227 4300 ± 409 4270 ± 395 206 358 377 17800 ± 760 12000 ± 1150 12000 ± 1110 553 963 1020 866 ± 88 438 ± 103 405 ± 100 163 227 231 24600 ± 2470 12400 ± 2830 11500 ± 2720 4390 6110 6210 平均 ± 標準偏差,n=5. 圃場 5 地点から採取したサンプルを混合したサンプルの分析値 b 表 3 風速および大気中粒子重量濃度 サンプリング時間 min. 平均風速 m s-1 最大瞬間風速 m s-1 Dust-10 μg m-3 全粒子状物質 a PM10a PM2.5a a μg m-3 μg m-3 μg m-3 バックグラウンド 刈取り作業中 238 2.0 5.3 167 51 2.5 5.4 7190 43 ± 12 37 ± 9.4 9.3 ± 5.4 1710 ± 2310 1530 ± 2120 23.4 ± 31 鋤込み作業直前 b 鋤込み作業中 31 4.4 9.1 6130 1 回目 1480 863 15 2 回目 1490 797 27 1650 ± 877 1070 ± 694 38 ± 26 平均 ± 標準偏差,n=3. 鋤込み作業直前はパーティクルマスモニター計測のみおこなった。測定は 2 連のため、2 回分の測定値を表示 b 38 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) a)131I 鋤込み作業 刈取り作業 バックグラウンド b)134Cs 鋤込み作業 刈取り作業 バックグラウンド c)137Cs 鋤込み作業 刈取り作業 PM 2.5 バックグラウンド Dust-10 0 0.05 0.10 0.15 放射能(Bq m-3) エラーバーは計数誤差 図 3 大気中ダストの放射能濃度 業中の大気中ダストの組成が 131I、134Cs、137Cs ともに、 4.4 m s-1 だった(表 3)。4 月 8 日の作業前のバックグラウ バックグラウンド測定時と異なったことを反映している ンドとして、パーティクルマスモニターによる PM10、 Cs 濃度は粒径の小 PM2.5 および全粒子状物質の重量濃度を測定したが、 。Tsukada et al. (2008) さい画分ほど大きかった(表 4) フィルターへの粒子の捕集はできなかった。パーティク 青森県内の黒ボク土で、大気圏内核実験由来の Cs濃度 ルマスモニターによる大気中粒子の重量濃度はばらつき が粒径の小さい粘土画分ほど高いことを示しており、放 が大きく、鋤込み作業前後で有意な差がなかった。鋤込 射性Csは、土壌中の粒径の小さい画分に濃集している。 み作業中の大気 1 m3 あたりの Dust-10 に含まれる放射性 すなわち大気中ダストを構成する土壌粒子に粒径の小さ 物質濃度は、4 月 7 日のバックグラウンド値と比較し、 い画分が占める割合が低ければ、放射性Cs濃度が低くな 131 る。パーティクルマスモニターによる観測より、大気中 3)。PM2.5 では、131I で 1.5 倍、134Cs で 5.5 倍、137Cs で 5.7 ダストに占める PM2.5 の割合は、バックグラウンド測定 倍であった(図 3) 。フィルターに捕捉された Dust-10 の 時は 21.5%だったのに対し、刈取り作業時は 1.4%と低 重量あたりの濃度は刈取り作業時と差がなかった(表 。巻き上がった土壌粒子は比較的粗大な粒 かった(表 3) 4)。 と考えられる。土壌中 Cs および 134 137 137 I で 2.6 倍、134Cs で 13 倍、137Cs で 14 倍に上昇した ( 図 子が主体であった結果とも整合する。また、農作業など 鋤込みにより、乾燥した表層土(水分含量、23%)が、 の人為的な攪乱によって増加した大気中の放射性Csは、 水分含量の高い下層土(46%)と混合されたことにより、 粒径の比較的大きい粒子に由来する画分が主体であるこ 作土(0 ~ 15 cm)の水分含量は 36%になった。また、 とを示したチェルノブイリ事故後の観測結果(Garger et 表層 0 ~ 0.5 cm の放射性物質濃度も、鋤込みによる下層 al., 1998, Wagenpfeil et al., 1999)とも一致した。 土との混合で希釈されることにより低下した(表 2、図 2)。表層土の水分含量が低いほど土壌粒子が巻き上がる 。Dust-10 由来の 量は増加する(Wagenpfeli et al., 1999) 3 鋤込み作業のダスト濃度 鋤込み作業をおこなった 4 月 8 日は、作業前から強風 -1 が吹いていた。瞬間最大風速は 9.1 m s 、平均風速は 放射性物質濃度に刈取り作業時と鋤込み作業時で顕著な 差が認められなかったのは、鋤込み作業時に巻き上がる 39 山口紀子ら:農業環境技術研究所畑圃場における農作業に伴い巻き上がる土壌粒子に含まれる放射性物質 表 4 粒子サイズ 10μm 以下の大気中ダスト(Dust-10) およびストークス径 10μm、2.5μm 以下の土壌粒 子中の放射能濃度 131 134 I バックグラウンド測定時の Dust-10 刈取り作業中の Dust-10 鋤込み作業中の Dust-10 Cs Bq g-1 43.7 14.6 15.1 7.29 9.65 178 20.1 12.6 土壌粒子< 10 μm 土壌粒子< 2.5 μm 表 5 農作業中の再浮遊係数 再浮遊係数 a×10-7 (m-1) PM 2.5 Dust-10 137 Cs 131 I バックグラウンド 刈取り作業中 鋤込み作業中 36.9 13.4 13.8 6.70 8.91 17 81 43 (28)b 134 137 131 134 137 6.1 87 77 (66) 5.2 81 71 (60) 12 6.2 39 34 (29) 4.5 36 26 (22) Cs Cs I - 18 (12) Cs Cs 再浮遊係数 (m-1)=大気中放射能濃度 (Bq m-3)/ 表面汚染密度、 (Bq m-2). 表面汚染密度は、表層 0 ~ 0.5 cm の土壌が再浮遊する土壌粒子と して寄与すると仮定して計算した。 b 括弧内の数値は、作土 0 ~ 15 cm の土壌が再浮遊する土壌粒子と して寄与すると仮定して計算した再浮遊係数 a 土壌は、下層土と混合する前の乾燥した表層土由来であ 告している。本研究で実測した放射性 Cs の再浮遊係数 るためである可能性がある。しかし、巻き上げられる土 は、チェルノブイリ事故の影響を受けた都市において観 、強 壌の量は、風速にも依存するため(Holländer, 1994) 測された再浮遊係数の範囲にあった。 本研究で実測した農作業中の Dust-10 の再浮遊係数 風条件下での観測結果からの解釈は困難である。 は、7 ~ 8 × 10-6 m-1 であり、チェルノブイリ事故から数 4 鋤込み後の土壌中放射性物質濃度 年後の実測値と同等かわずかに高かった (2 × 10-6 m-1、 鋤込み作業による表層土壌の混合により、表層 5 cm以 高さ 1 m、Tersaakov et al., 1994; 2×10-9 ~ 5・10-7、高さ 内の土壌中放射性物質濃度は著しく減少し(表 2)、作土 1.5 m、Wagenpfeil et al., 1999)。 ま た、Wagenpfeil et al. 15 cm 以内における深度別濃度分布は、ほぼ均一になっ (1999)は、チェルノブイリ事故から 5 ~ 8 年後における た ( 図 2)。鋤込み後の土壌のインベントリーは 131I で 実測値をもとに、人為的攪乱による再浮遊係数は、風由 -2 11.0、 Cs で 16.4、 Cs で 16.9 kBq m であった。半減 来の再浮遊係数より 1000 倍高いことを示した。本研究に 期が 8 日の おける実測値では、刈取りおよび鋤込み作業時の Dust- 134 137 Iのインベントリーは、鋤込み前土壌の採取 131 日である 4 月 7 日の濃度に換算すると、34 kBq m -2 で 10 中の放射性 Cs の再浮遊係数はバックグラウンド値の あった。放射性ヨウ素、放射性セシウムともに鋤込み前 16 倍、PM2.5 では 8 倍であった。風由来の再浮遊係数は、 後のインベントリーの差は、鋤込み前土壌の圃場内濃度 沈着からの時間経過とともに減少する傾向にある 。Wagenpfeil et al.(1999)の (Rosner and Winkler, 2001) のばらつきの範囲内であった。 実測結果と比較して本研究で実測された再浮遊係数にお 5 再浮遊係数 よぼす農作業の影響が小さかったのは、事故直後のデー 式(1)より算出した再浮遊係数を表 5 に示す。本研究 タであるために風による再浮遊係数への寄与が比較的大 では、再浮遊可能な土壌粒子は表層 0 ~ 0.5 cm に存在す きかったことが関係している可能性がある。再浮遊係数 る土壌粒子であると仮定して、再浮遊係数を見積もっ は、浮遊する放射性物質の起源となる表面が均一であ た。ただし、鋤込み作業時は、耕うん機で攪乱する表層 り、放射性物質の再浮遊と沈着が平衡に達していると仮 15 cm の土壌が再浮遊するとも考えられるため、0 ~ 15 cm 定して求める。このような条件は、農作業のような人為 の放射性物質存在量をもとに算出した再浮遊係数も表 5 的な土壌表面の攪乱には当てはまらない。さらに再浮遊 に括弧書きで示した。農作業を行っていないバックグラ 係数は、風速、水分含量などさまざまな環境因子によっ ウンド時の Dust-10 の再浮遊係数は、放射性ヨウ素で て 大 き く 変 動 す る こ と が 知 ら れ て い る(Holländer, -6 10 -1 -7 m 、放射性セシウムで 10 -1 m であった。チェル ノブイリ事故から 5 ~ 36 日後のドイツで観測された放 -5 射 性 Cs の 再 浮 遊 係 数 は、10 -6 ~ 10 -1 m であった 1994 ;Nicholson, 1988 ; Rosner and W inkler, 2001 ; 。 Wagenpfeil et al., 1999) 表 5 に示した再浮遊係数は、水分含量などの環境因子 (Holländer, 1994)。 一 方、Rosner and Winkler(2001) が異なれば、異なる値となるだろう。本研究で実測対象 は、同じくドイツにおけるチェルノブイリ事故の年の放 とした黒ボク土は、団粒構造が発達している一方、腐植 -9 射性 Cs の再浮遊係数は、月平均 10 m -1 であったと報 物質が多いため仮比重が小さく、風食をうけやすい土壌 40 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) である。表 5 に示した再浮遊係数は、土壌表層に放射性 Asian dust to atmospheric deposition of radioactive 物質が蓄積していた事故直後、土壌が乾燥した条件下、 cesium ((137)Cs). The Science of the total environment, 風食をうけやすい土壌、という土壌粒子が再浮遊しやす 405, 389-395 い条件下での実測値である。今後、土壌分類、土地利用、 4) Garger, E.K., H.G. Paretzke and J. Tschiersch. (1998): 水分等異なる条件下において、気象条件と併せた実測値 Measur ement of r esuspended aer osol in the の蓄積が必要である。 Cher nobyl area. Radiation and Environmental 本研究では、圃場の中央にサンプラーを固定して観測 Biophysics, 37, 201-208 をおこなった。しかし、農作業者が吸引しうるダスト由 5) Hollander, W. (1994): Resuspension factors of Cs- 来放射性物質量を評価するためには、農業機械および農 137 in Hannover after the Cher nobyl accident. 作業者とともに圃場内を移動して大気中ダストを収集す Journal of Aerosol Science, 25, 789-792 6) IAEA (2010): Handbook of Parameter Values for the る必要がある。 Prediction of Radionuclide Transfer in Terrestrial and Ⅳ 結 論 Freshwater Environments. Technical Reports Series. 472. 小麦の刈り取りや鋤込み作業によって増加した大気中 7) Igarashi, Y., M. Aoyama, K. Hirose, T. Miyao, K. ダストの放射性Csは、粒径の比較的大きい粒子に由来す Nemoto, M. Tomita and T. Fujikawa. ( 2003 ): る画分が主体であることが明らかになった。すなわちこ Resuspension: Decadal monitoring time series of the れらの農作業中には、粒径の大きい土壌微粒子を捕捉可 anthropogenic radioactivity deposition in Japan. 能なマスクを着用することにより、放射性物質の吸入を Journal of Radiation Research, 44, 319-328 大幅に軽減できる。また、農作業中の再浮遊係数は、 I 131 -6 で 4 × 10 -1 -6 m 、放射性Csで 7 ~ 8 ×10 -1 m であった。 8) 環境省(2015)大気汚染に係る環境基準.http:// www.env.go.jp/kijun/taiki.html (accessed 2015-03-04) 9) Nicholson, K.W. ( 1988 ): A review of par ticle 本原稿は、Science of the Total Environment(2012)425 巻 128-134 ペ ー ジ 掲 載 論 文、Radiocesium and resuspension. Atmospheric Environment, 22, 2639- 2651 radioiodine in soil par ticles agitated by agricultural 10) 農業環境技術研究所 (2012):主要穀類および農耕地 practices: Field observation after the Fukushima nuclear 土 壌 の 90Sr と 137Cs 分 析 デ ー タ 一 般 公 開 シ ス テ ム accident の内容を日本語で解説したものである。 (accessed 2015-03-04) 11) 農業環境技術研究所 (2013):農業環境技術研究所総 謝 辞 合 気 象 観 測 デ ー タ http://niaesaws.ac.affrc.go.jp/ (accessed 2013-10-10) 農作業、観測に協力いただいた研究支援室の皆様、気 12)小原洋 , 大倉利明 , 高田裕介 , 神山和則 , 前島勇治 , 浜 象データをご提供いただいた大気環境研究領域、石郷岡 崎忠雄 (2011):包括的土壌分類 第 1 次試案 , 農業 康史氏、一部の土壌サンプルの放射性物質濃度を測定い 環境技術研究所報告 , 29, 1-73 ただいた土壌環境研究領域 木方展治氏に感謝の意を表 13) Rosner, G. and R. Winkler. ( 2001 ): Long-term variation (1986-1998) of post-Chernobyl Sr-90, Cs- します。 137, Pu-238 and Pu-239, Pu-240 concentrations in 引用文献 air, depositions to ground, resuspension factors and resuspension rates in south Germany. Science of the 1) EMEP 2001 : EMEP manual for sampling and chemical analysis. EMEP/CCC-Report 1/95. http:// www.emep.int/, (accessed 2015-03-04) 2) 土壌環境分析法編集委員会編(1997):土壌環境分 析法 , p.24-29. 博友社 , 東京 3) Fukuyama, T. and H. Fujiwara. (2008): Contribution of Total Environment, 273, 11-25 14) 佐波俊哉 , 佐々木慎一 , 飯島和彦 , 岸本祐二 , 齋藤究 (2011):茨城県つくば市における福島第一原子力発 電所の事故由来の線量率とガンマ線スペクトルの経 時変化 . 日本原子力学会和文論文誌 , 10, 163-169 15) Tersaakov, A.A., M.V. Glebov, S.K. Gordeev, A.I. 山口紀子ら:農業環境技術研究所畑圃場における農作業に伴い巻き上がる土壌粒子に含まれる放射性物質 Ermakov, Y.L. Luchkin and A.A. Khilov. (1994): An experimental study of the radioactivity associated with soil and dust par ticles in the vicinity of the Chernobyl nuclear-power-plant. Journal of Aerosol Science, 25, 779-787 16) Tsukada, H., A. Takeda, S. Hisamatsu and J. Inaba. (2008): Concentration and specific activity of fallout 137 Cs in extracted and par ticle-size fractions of cultivated soils. Jour nal of environmental radioactivity, 99, 875-881 17) Wagenpfeil, F., H.G. Paretzke, J.M. Peres and J. Tschiersch. (1999): Resuspension of coarse particles in the region of Cher nobyl. Atmospheric Environment, 33, 3313-3323 18) Yamaguchi, N., M. Nakano, R. Takamatsu and H. Tanida. (2010): Inorganic iodine incorporation into soil organic matter: evidence from iodine K-edge X-ray absorption near-edge structure. Journal of environmental radioactivity, 101, 451-457 19) 山口紀子 , 高田裕介 , 林健太郎 , 石川覚 , 倉俣正人 , 江 口定夫 , 吉川省子 , 坂口敦 , 朝田景 , 和穎朗太 , 牧野知 之 , 赤羽幾子 , 平舘俊太郎 (2012):土壌-植物系にお ける放射性セシウムの挙動とその変動要因 . 農業環 境技術研究所報告 , 31, 75-129 摘 要 東京電力福島第一原子力発電所の事故から 3 週間後、 農環研内の圃場において、農作業による土壌攪乱によっ て巻き上げられた土壌粒子をフィルターに捕捉し、放射 性セシウム、放射性ヨウ素濃度を測定した。ハンマーナ イフモアによる幼麦の地上部刈取り及びロータリー耕耘 機による鋤込み作業中、粒子径 10μm 以下の土壌粒子の 再浮遊係数は、バックグラウンド値と比較して放射性セ シウムで 16 倍、放射性ヨウ素で 5 倍に増加した。農作業 による土壌粒子の巻き上げにより増加する大気中放射性 セシウム、放射性ヨウ素の大部分は、2.5 μm よりも大き い粒径画分に由来するものが主体であった。すなわちこ れらの農作業中には、粒径の大きい土壌粒子を捕捉可能 なマスクを着用することにより、放射性物質の吸入を大 幅に軽減できる。 41 43 農環研報 34, 43-51(2015) 農地表層土壌中の放射性セシウム濃度分布図作成 のための緊急調査 Emergency Survey for Spatial Mapping of Radioactive Cesium Concentration in Agricultural Soil 高田裕介*・神山和則*・小原 洋*・前島勇治** 平舘俊太郎***・木方展治**・齋藤 隆****・谷山一郎***** (平成26 年12月2日受理) シノプス Contamination with radioactive substances occurred over a wide area centered around Fukushima Prefecture after the accident at Tokyo Electric Power Company's Fukushima No. 1 nuclear power plant that occurred on March 11, 2011. The contamination status was clarified by measuring the concentration of radioactive substances in soil collected from farmland in Miyagi, Fukushima, Ibaraki, Tochigi, Gunma and Chiba Prefectures, where it is considered that radioactive contamination has occurred; the spatial distribution of such substances was then determined. The concentration of radioactive cesium in Agricultural soil was relatively high in Hama-dori and Nakadori areas in Fukushima Prefecture. There was a positive correlation between the cesium radioactivity in the soil and the air dose rate. The area of agricultural land where the level of cesium radioactivity in soil was estimated to exceed 5,000 Bq/kg oven-dried soil was 8.3 km2, it mainly (more than 95 %) distributed in evacuation directive zone. Ⅰ はじめに 農地は食料を生産する場であり、放射性物質による汚 染状況を把握することは、安全な農産物の供給に不可欠 2011 年 3 月 11 日に発生した東京電力福島第一原子力 発電所(福島第一原発)の事故に伴い、放射性物質によ る汚染が福島県を中心に広範囲に発生した。 * 農業環境インベントリーセンター ** 土壌環境研究領域 *** 生物多様性研究領域 **** 福島県農業総合センター生産環境部 ***** 元研究コーディネータ であるとともに、農地の除染など今後の営農に向けた取 組を進めるために不可欠である。 このため、放射性物質による高度の汚染が発生したと 44 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 考えられる宮城県、福島県、栃木県、群馬県、茨城県お るいは CsI シンチレーションカウンターなどを用いて、 よび千葉県の農地において、土壌を採取し放射性物質の 調査地点の 1 mおよび 1 cm高さにおける空間線量率を測 濃度を測定することにより、汚染状況を明らかにし、放 定した。この他、地目、作付け作物(試料採取時点およ 射性セシウム濃度の面的な分布把握を行った。本研究で びその前作作物)、周辺の遮蔽物の有無、耕起の有無とそ は、福島第一原発の事故で飛散し、土壌の主要な放射性 の時期、マルチの状況、雑草の状況や土壌分類などにつ 汚染物質となっている 報告では 134 Csと Cs および 134 Cs を測定した。本 137 137 Csを合わせて放射性セシウムと記す。 いて、現地観察および聞き取りにより記載した。 土壌試料はライナー付き土壌試料採取器(5 cm 径)を 用いて 30 cm 深まで採取した。レキ層、盤層などにより Ⅱ 調査・研究方法 30 cm まで採取器を挿入できない場合は、採取した深度 までとした。 1.現地調査および土壌試料の採取 採取した土壌試料を深さ別(0 ~ 15 cm、15 ~ 20 cm、 調査対象圃場は水田、普通畑および樹園地とし、これ 20 ~ 25 cm、25 ~ 30 cm)の 4 層に区分した。ただし、 らの圃場について、圃場の対角線の交点となる中心 1 点 樹園地などで作土層がない場合は、0 ~ 5 cm、5 ~ 10 cm、 および中心と圃場の 4 隅を結ぶ線上の中間点 4 点の計 5 10 ~ 15 cm、それ以下の 4 層に区分した。1 地点 5 箇所の 箇所を、土壌採取地点とした(図 1) (土壌環境分析法編 試料を、水田、畑では 0 ~ 15 cm、樹園地では 0 ~ 5 cm、 集委員会 , 1997)。 5 ~ 10 cm、10 ~ 15 cm または 0 ~ 15 cm の層ごとにそれ 宮城県においては 2011 年 7 月 15 日~ 22 日に 51 地点 ぞれ混合し重量を測定した後、篩(8 mm)などを用いて で、福島県においては 2011 年 5 月 23 日~ 8 月 5 日に 199 砂礫や粗大有機物などを取り除いて試料を均一にして放 地点、茨城県においては 2011 年 7 月 1 日~ 15 日に 44 地 射能濃度測定に供した。また、一部を水分測定に用い 点、栃木県においては 2011 年 6 月 20 日~ 24 日に 35 地 た。ただし、樹園地で 0 ~ 5 cm、5 ~ 10 cm、10 ~ 15 cm 点、群馬県においては 2011 年 7 月 29 日に 5 地点、千葉県 に分割した試料については、それぞれを合計して 0 ~ 15 に お い て は 2011 年 7 月 1 日 ~ 13 日 に 20 地 点 で 調 査 を cm 当たりの放射能濃度として示した。 行った。圃場の位置の緯度経度情報はGPS を用いて決定 土壌中の放射性セシウム濃度は「緊急時における食品 した。なお、GPS が使えない場合は、地形図、インター の放射能測定マニュアル」 (厚生労働省医薬局食品保健部 ネット上の地図サービス(国土地理院など)などで緯度 監視安全課、2002)に従い、農環研、日立協和エンジニ 経度を推定した。また、これらの地点に加えて、2011 年 アリング(株)および(財)九州環境管理協会において 4 月に各県(宮城県;14 地点、福島県;165 地点、茨城 ゲルマニウム半導体検出器を用いて測定した。測定時間 県 18 地点、栃木県 13 地点、群馬県 8 地点、千葉県 10 地 は 1,000 ~ 10,000 秒(バックグランド計数値の分散の 10 点)で行った県調査の結果についても本報告でまとめ 倍以上)とし、乾土 1 kg あたりの Bq で表示した。濃度 る。なお、これらの県調査では緯度経度情報を取得しな は試料採取日の濃度に補正するとともに、土壌試料の採 かったことから、調査地点の住所に基づいて緯度経度を 取時期はそれぞれ異なることから、2011 年 6 月 14 日を 推定した。 基準日として補正した値も同時に示した。 現地調査では NaI シンチレーションサーベイメータあ 2.農地表層土壌中の放射性セシウム濃度推定図の作成 実測したデータにより対象地域全域の分布をカバーす ることは困難なため、図 2 に示した手順により放射性セ シウム濃度推定図を作成した。具体的には以下の通りで ある。 5 月以降の調査結果に基づいて、土壌の放射性セシウ ム濃度と空間線量率との回帰直線を作成した。この際 に、耕起の有無、地目(水田、畑、樹園地)、土壌の種類 について考慮した。 図 1 試料採取位置の見取り図 ○:採取位置 空間的分布に関するデータのうち、土壌の種類、地目 については農環研が 2009 年に作成した農耕地のデジタ 高田裕介ら:農地表層土壌中の放射性セシウム濃度分布図作成のための緊急調査 45 Ⅲ 結果および考察 ル土壌図を利用した(図 3a) 。また、空間線量率の分布 は文部科学省原子力災害対策支援本部より提供を受けた 航空機モニタリングデータ(図 3b;基準日 2011 年 9 月 1.調査地域の土壌の分布状況 18 日)を用いた。耕起の有無に関する分布情報がなかっ 図 3aに調査地全域の農耕地土壌図を示した。農環研が たため、旧警戒区域、旧計画的避難区域、旧緊急時避難 作成したデジタル土壌図にはポリゴンごとに土壌分類、 準備区域を「耕起なし」 、それ以外の地域を「耕起あり」 地目といった属性情報が付与されている。平成 22 年度の とした。なお、旧警戒区域、旧計画的避難区域および旧 耕地面積の統計値から、調査地の田および畑(普通畑お 緊急時避難準備区域を一括して旧規制区域とする。 よび樹園地)の面積はそれぞれ 518,000 ヘクタールおよ と表 2 で示した回帰式を用いて、 空間線量率図 (図 3b) び 233,000 ヘクタールである。田に最も広く分布する土 農地グループ別の土壌中の放射性セシウム濃度図を作成 壌 群 は グ ラ イ 土(35%) で あ り、 次 い で 灰 色 低 地 土 した。次いで、農耕地土壌図を用いて農地ポリゴン(同 、多湿黒ボク土(17%) 、黒泥土(4%) 、褐色低 (31%) じ属性を区画した多角形の領域)ごとに農地グループ分 地土(4%)の順である。他方、畑に最も広く分布する土 けを行い、対応する農地グループの土壌中の放射性セシ 壌 群 は 黒 ボ ク 土(57%) で あ り、 次 い で 褐 色 低 地 土 ウム濃度図からポリゴンを抽出した。最後に、これらの 、褐色森林土(10%) 、灰色低地土(7%) 、グラ (10%) ポリゴンを重ね合わせることにより、農地表層土壌中の イ土(6%)の順である。 放射性セシウム濃度図を作成した。 空間分布の解析などにはGISソフトウェアArcView Ver 10(Esri 社)および拡張機能である Spatial Analyst(ESRI 2.農地表層土壌中の放射性セシウム濃度の分布状況 宮城県(65 地点)、福島県(364 地点)、茨城県(62 地 点)、栃木県(48 地点)、群馬県(13 地点)および千葉県 社)を使用した。 (30 地点)の農地表層土壌中の放射性セシウム濃度の最 小値と最大値を表 1 に示した。 土壌調査 ・位置情報 ・空間線量率 ・放射性セシウム濃度 空間線量率分布図 (航空機モニタリングデータ) 空間線量率と放射性セシウム 濃度との関係(回帰式) ・耕起の有無 ・土地利用 ・土壌の種類 農耕地土壌図 土壌種類・土地利用別ポリゴンの作成 ・土地利用(水田・畑、樹園地) ・耕起の有無 ・土壌の種類 (黒ボク土壌群、非黒ボク土壌群) 土壌中の放射性セシウム濃度図 (農地グループ毎の回帰式の適用) 農地グループ別ポリゴン抽出 重ね合わた 農地における放射性セシウム濃度推定図 図 2 農地における放射性セシウム濃度推定図作成手順 耕起の有無:警戒区域、計画的避難区域を耕起なし、その他の地域を耕起ありとした。 46 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 砂丘未熟土 a) b) 1m高さの空間線量率 (μSv/h) 黒ボク土 2.5 < 多湿黒ボク土 黒ボクグライ土 2.0 - 2.5 褐色森林土 1.5 - 2.0 灰色台地土 1.0 - 1.5 グライ台地土 0.75 - 1.0 赤色土 0.5 - 0.75 黄色土 0.25 - 0.5 暗赤色土 0 - 0.25 褐色低地土 灰色低地土 グライ土 黒泥土 泥炭土 図 3 農地土壌図(a)および文部科学省が行った航空機サーベイによる 1 m 高さでの空間線量図 (b;基準日 2011 年 9 月 18 日) 表 1 県別の調査地点数と放射性セシウム濃度の最小値、最大値 県名 宮城県 福島県 茨城県 栃木県 群馬県 千葉県 合計 地点数 合計 水田 普通畑 65 364 62 48 13 30 582 14 183 15 26 1 4 234 49 157 42 22 11 26 307 樹園地 2 24 5 0 1 0 32 放射性セシウム濃度(Bq/kg) 水田 水田以外 最小値 最大値 最小値 最大値 96 670 24 2,200 ND 30,200 ND 24,900 89 480 ND 650 47 4,090 ND 1,860 140 34 240 55 19 690 800 表 2 1 m 高さの空間線量率と土壌中の放射性セシウムの濃度との間の回帰式 全サンプル 未耕起 _ 黒ボク土グループ 耕起 _ 黒ボク土グループ 未耕起 _ 非黒ボク土グループ 耕起 _ 非黒ボク土グループ 樹園地 サンプル数 325 25 69 79 112 26 回帰式 Y = (3.86x10-4)X Y = (3.25x10-4)X Y = (2.92x10-4)X Y = (5.87x10-4)X Y = (3.08x10-4)X Y = (6.84x10-4)X R2 0.84 0.97 0.89 0.91 0.92 0.92 高田裕介ら:農地表層土壌中の放射性セシウム濃度分布図作成のための緊急調査 47 宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県および千葉 境技術研究所が公開している主要穀類および農耕地土壌 県の農地表層土壌中の放射性セシウム濃度はそれぞれ の 90Sr と 137Cs 分析データ一般公開システム(https:// 24 ~ 2,210 Bq/kg、検出限界以下の値から 30,200 Bq/ vgai.dc.affrc.go.jp/vgai-agrip)によると、事故以前(2010 kg、検出限界以下の値から 650 Bq/kg、検出限界以下の 年)の全国の水田作土および畑作土の 137Cs の平均値はそ 値から 4,090 Bq/kg、55 ~ 690 Bq/kg、19 ~ 800 Bq/kg れぞれ 5.9Bq/kg および 6.4Bq/kg である。 の範囲であった。また、検出限界値以上であったサンプ ルの平均値はそれぞれ 312 Bq/kg、2,710 Bq/kg、238 Bq/kg、516 Bq/kg、217 Bq/kg であった。なお、農業環 調査対象全域の農地表層土壌中の放射性セシウム濃度 の実測値の空間的な分布状況を図 5 に示した。 農地表層土壌中の放射性セシウム濃度の実測値は福島 農地 調査地点における農地土壌中の 放射性セシウムの濃度(Bq/kg) 25000 < 10000 - 25000 5000 - 10000 1000 - 5000 0 - 1000 図 5 農地土壌中の放射性セシウム濃度(基準日 2011 年 6 月 14 日)分布図 48 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 県浜通り地方や中通り地方で高く、その空間的な分布状 炭土)に比べて小さいことが一般的に知られている 況は文部科学省が農地および非農地で行っている空間線 (Nanzyo, 1993)。その仮比重の違いによる影響などを受 量率の地上モニタリングの結果や航空機サーベイの結果 けて、同等の土壌中の放射性セシウム濃度であっても空 と類似の傾向が認められた。 間線量率は黒ボク土壌群グループの方が非黒ボク土壌群 福島第一原発から北西方向の旧警戒区域、旧計画的避 グループに比べて高かったと考えられる。さらに、樹園 難区域に 10,000Bq/kg を超える高い放射性セシウム濃度 地では他の地目に比べて同等の土壌中のセシウム濃度で を示す場所が認められる。特に福島第一原発から飯舘村 あっても空間線量率は高い傾向である。樹園地では樹木 に至るラインで顕著である。旧警戒区域、旧計画的避難 の樹冠などに付着している放射性セシウムの影響が無視 区域およびこれ以外の地域については以下のように要約 できないことが示唆された。 できる。福島県中通り地方北部ではこのラインの延長方 耕起・未耕起、土壌の種類および地目をもとに、サン 向で高い値が認められた。また、このライン西側でも プルを次の 5 つの農地グループに分類した。(1) 未耕起 _ 1,000 ~ 5,000Bq/kg の地点が多く分布している。地点数 黒ボク土壌群グループ、 (2)耕起 _ 黒ボク土壌群グルー は減少するものの中通り地方南部から栃木県北部にかけ (4)耕起 _ 非 プ、 (3)未耕起 _ 非黒ボク土壌群グループ、 ても 1,000 ~ 5,000Bq/kg の地点が分布している。一方、 黒ボク土壌群グループ、 (5)樹園地。5 つの農地グルー 福 島 県 境 に 近 い 宮 城 県 南 部 で は 数 地 点 で 1,000 ~ プ毎に土壌中の放射性セシウム濃度を独立変数として、 5,000Bq/kgの地点が認められた。福島県西部の会津地域 空間線量率を従属変数として回帰分析を行った結果を表 で は 全 般 的 に 1,000Bq/kg 以 下 で あ っ た が、1,000 ~ 2 に示した。回帰直線の傾きは、樹園地>未耕起_非黒ボ 5,000Bq/kgの地点が数地点で認められた。宮城県中部~ ク土壌群グループ>耕起 _ 非黒ボク土壌群グループ>未 北部、茨城県、栃木県南部、群馬県および千葉県におい 耕起_黒ボク土壌群グループ>耕起_黒ボク土壌群グルー ては大部分が 1,000Bq/kg 以下であった。 プの順であった。なお、各回帰式の決定係数(R2)は 0.89 ~ 0.97 の範囲であり、グループ分けを行うことで土壌中 3.農地表層土壌中の放射性セシウム濃度と空間線量率 との関係 の放射性セシウム濃度と空間線量率との関係性をより明 確に表すことが可能となった。 土壌中の放射性セシウム濃度と農地表層土壌調査の際 に測定した 1 m高さでの空間線量率との関係を図 4 に示 した。 4.農地表層土壌中の放射性セシウム濃度推定図 農地表層土壌中の放射性セシウム濃度推定図の作成に 土壌中の放射性セシウム濃度(検出限界値以上)と空 おいて、対象地域の農地を耕起している農地と未耕起で 2 間線量率は正の相関関係(R = 0.84、サンプル数 325)が ある農地に分ける必要がある。旧警戒区域、旧計画的避 認められ、土壌中の放射性セシウム濃度が増加すると空 難区域および旧緊急時避難準備区域に位置する農地につ 間線量率が増加することが明らかとなった。この関係性 いては、福島第一原発事故以降の作付けが制限されてい を詳細に検討した結果、福島第一原発事故以降に農地を たため未耕起であると判断した。その他の地域に分布す 耕起した地点と未耕起であった地点とを比較した際に、 る水田および普通畑については全て耕起をしているもの 同等の土壌中の放射性セシウム濃度であっても、空間線 と仮定した。 量率は耕起した地点の方が未耕起であった地点よりも低 くなった。本結果は、未耕起土壌の方が耕起土壌と比較 調査地全域の農地表層土壌中の放射性セシウム濃度推 定図を図 6 に示した。 して最表層部に放射性セシウムが多く分布している(放 図 6 から、福島県では福島第一原発が立地する浜通り 射性セシウムの深度分布の違い)ことにより、空間線量 で農地表層土壌中の放射性セシウム濃度は最も高く、次 率と土壌中濃度との関係性が異なったためと考えられる いで中通りおよび会津地方の順であった。とくに旧警戒 。ま (Alexakhin, 1993, Vovk et al., 1993, EURANOS, 2010) 区域および旧計画的避難区域において農地表層土壌中の た、火山灰が母材である黒ボク土壌群グループ(黒ボク 放射性セシウム濃度は高かった。なお、コメの作付け基 土、多湿黒ボク土、黒ボクグライ土)の仮比重(容積重) 準(平成 23 年度)である土壌中の放射性セシウム濃度が は他の土壌群グループ(岩屑土、砂丘未熟土、褐色森林 5,000 Bq/kg を超えると推定される農地は 83 km2 となり 土、灰色台地土、グライ台地土、赤色土、黄色土、暗赤 、その 95%以上は警戒区域および計画的避難区域 (表 3) 色土、褐色低地土、灰色低地土、グライ土、黒泥土、泥 の両区域に集中していた。中通り地方では、土壌中の放 49 高田裕介ら:農地表層土壌中の放射性セシウム濃度分布図作成のための緊急調査 1.40 (a) 12 1m 高さの空間線量率(μSv/h) 1m 高さの空間線量率(μSv/h) 14 10 8 6 4 2 0 0 10000 20000 30000 1.00 0.80 0.60 0.40 0.20 0.00 40000 (b) 1.20 0 土壌中の放射性セシウム濃度 (Bq/kg) 12.00 (c) 3.00 2.50 2.00 1.50 1.00 0.50 0.00 5000 (d) 8.00 6.00 4.00 2.00 10000 0 土壌中の放射性セシウム濃度 (Bq/kg) 2.50 (e) (c) 1.20 1.00 0.80 0.60 0.40 0.20 0.00 2000 4000 土壌中の放射性セシウム濃度 (Bq/kg) 20000 30000 40000 6000 (f) 2.00 1.50 1.00 0.50 0.00 0 10000 土壌中の放射性セシウム濃度 (Bq/kg) 1m 高さの空間線量率(μSv/h) 1m 高さの空間線量率(μSv/h) 1.40 6000 10.00 0.00 0 4000 土壌中の放射性セシウム濃度 (Bq/kg) 1m 高さの空間線量率(μSv/h) 1m 高さの空間線量率(μSv/h) 3.50 2000 0 1000 2000 3000 4000 土壌中の放射性セシウム濃度 (Bq/kg) 図 4 農地土壌中の放射性セシウム濃度と 1 m 高さの空間線量率との関係; (a)全サンプル(b)耕起 _ 黒ボク土壌群、 (c)耕起 _ 非黒ボク土壌群、 (d)未耕起 _ 黒ボク土壌群、 (e)未耕起 _ 非黒ボク土壌、 (f)樹園地用 50 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 農地土壌中の 放射性セシウムの濃度(Bq/kg) 推定値 実測値 25000 < 10000 - 25000 5000 - 10000 1000 - 50000 0 - 1000 図 6 農地土壌中の放射性セシウム濃度(基準日:2011 年 6 月 14 日) 表 3 農地土壌中の放射性セシウム濃度レンジ別の分布面積 放射性セシウム濃度 (Bq/kg) 0-1,000 1,000-5,000 5,000-10,000 10,000-25,000 > 25,000 水田 [km2] 599.4 391.6 19.58 25.75 16.46 畑 [km2] 220.2 146.6 7.96 7.51 5.81 高田裕介ら:農地表層土壌中の放射性セシウム濃度分布図作成のための緊急調査 射性セシウム濃度が北東から南西方向に帯状に高い傾向 51 引用文献 が認められ、その濃度範囲が 1,000 ~ 5,000 Bq/kgである と推定される農地が多かった。福島県中通り地方で認め 1) Alexakhin, R.M. ( 1993 ):Counter measures in られた帯状の汚染域は宮城県南東部から栃木県の中部に agricultural production as an ef fective means of まで達していた。また、群馬県の中山間地域および茨城 mitigating the radiological consequences of the 県霞ケ浦周辺で農地表層土壌中の放射性セシウム濃度は Chernobyl accident, Sci. Total Environ., 137, 9-20 高い傾向を示した。福島県会津地方に分布する農地の大 2) 土壌環境分析法編集委員会(1997):土壌環境分析 部分については、放射性セシウム濃度は 1,000 Bq/kg 以 法、日本土壌肥料学会監修 , p.427, 博友社 , 東京 3) European approach to nuclear and radiological 下であると推定された。 emergency management and rehabilitation strategies 5.残された問題点 (EURANOS) (2010):Generic handbook for assisting 作成した放射性セシウム濃度推定図は概ね妥当と考え in the management of contaminated food production られるが、推定値の空間的解像度は航空機モニタリング systems in Europe following a radiological 調査の空間解像度 (300 ~ 600 m) により制限される。こ emergency, pp407, Health Protection Agency, UK のため、小面積で分布する地域(ホットスポットなど) 4) 厚生労働省医薬局食品保健部監視安全課(2002) :緊 を表現することは困難である。このような地域において 急時における食品の放射能測定マニュアル http:// は詳細な空間線量率調査を実施するなど、空間解像度の www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001558e- 向上を図る必要がある。 img/2r98520000015cfn.pdf,(accessed 2013-11-5) 5) Nanzyo M, Dahlgren R, Shoji S (1993):Chemical 6.摘要 characteristics of volcanic ash soils, In Volcanic Ash 2011 年 3 月 11 日に発生した東京電力福島第一原子力 発電所(福島第一原発)の事故に伴い、放射性物質によ Soils, S Shoji, M Nanzyo, RA Dahlgren (eds), p145- 207, Elsevier, Amsterdam る高度の汚染が発生したと考えられる宮城県、福島県、 6) Vovk I.F., V.V. Blagoyev, A.N. Lyashenko and I.S. Kovalev 栃木県、群馬県、茨城県および千葉県の農地において、 (1993):Technical approaches to decontamination of 土壌を採取し放射性物質の濃度を測定することにより、 terrestrial environments in the CIS (former USSR). 汚染状況を明らかにした。土壌中の放射性セシウム濃度 Sci. Total Environ., 137, 49-63 と 1 m 高さの空間線量率には正の相関関係(R = 0.84、 2 サンプル数 325)が認められ、土壌中の放射性セシウム 濃度が増加すると空間線量率が増加することが明らかと なった。この関係性は、福島第一原発事故以降の耕起の 有無、土壌の種類、地目の違いにより影響を受けること が明らかとなり、5 つにグループ分けを行ったうえで、 土壌中の放射性セシウム濃度を独立変数として、空間線 量率を従属変数として回帰分析を行った。これら 5 つの 回帰式および文部科学省が行った航空機サーベイによる 空間線量率マップを用いて農地表層土壌中の放射性セシ ウム濃度推定図を作成した。コメの作付け基準である土 壌中の放射性セシウム濃度が 5,000 Bq/kg を超えると推 定される農地は 83 km2 となり、その 95%以上は警戒区 域および計画的避難区域の両区域に集中していた。 53 農環研報 34, 53-61(2015) 東日本の農地表層土壌中の 放射性セシウム濃度分布図の作成 Spatial prediction of radioactive Cs concentration in agricultural soil in East Japan 高田裕介*・神山和則*・小原 洋*・前島勇治**・石塚直樹*** 齋藤 隆****・谷山一郎***** (平成26 年12月2日受理) シノプス Due to the accident at the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Station by Tokyo Electric Power Company (FDNPS), the radioactive cesium (Cs) released into the environment. To determine the distribution pattern of the Cs contamination level in agricultural land, we carried out soil survey at 3461 points in East Japan. We measured radioactive Cs concentration in soil using a germanium semiconductor detector, and it was calculated in Bq of dry soil per 1kg (reference date: 5 November 2011). Soil Cs concentration was ranged from the detection limitation to 203,095 Bq/kg, and there was high contamination level in evacuation directive zone. And, soil Cs concentration had a positive correlation with the radiation dose (R2=0.89, sample number 2199). This linear correlation was af fected to some extent by soil sur face condition, soil groups and land use type. The linear regression analysis was conducted by each land surface condition, soil type and land use type. We delineated soil Cs concentration map using regression-kriging method that combines regression equations with the ordinar y kriging of the regression residuals. The total radioactive Cs concentration in soil was highest in the 20-km evacuation zone surrounding FDNPS, and it tended to be higher in north-west direction from FDNPS than in other direction. Above the contamination level 2 (more than 5,000 Bq/kg) covered about 8,900 ha in Fukushima prefecture, and it mainly distributed in evacuation directive zone. * 農業環境インベントリーセンター ** 土壌環境研究領域 *** 生態系計測研究領域 **** 福島県農業総合センター生産環境部 ***** 元研究コーディネータ 54 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) Ⅰ はじめに であり、調査は 2011 年 10 月から 2012 年 1 月までの間に 行った。 2011 年 3 月 11 日に発生した東京電力福島第一原子力 調査対象圃場の対角線の交点となる中心 1 点および中 発電所(福島第一原発)の事故に伴い、放射性物質によ 心と圃場の 4 隅を結ぶ線上の中間点 4 点の計 5 箇所を土 る汚染が福島県を中心に広範囲に発生した。農地は食料 壌採取地点とした。土壌はライナー付き土壌試料採取器 を生産する場であり、放射性物質による汚染状況を把握 (5 cm 径)を用いて 30 cm 深まで採取した。レキ層、盤 することは、安全な農産物の供給に不可欠であるととも 層などにより 30 cm まで採取器を挿入できない場合は、 に、農地の除染など今後の営農に向けた取組を進めるた その深度までとした。また、NaI シンチレーションサー めに不可欠である。農地の放射性物質の汚染状況(土壌 ベイメータあるいは CsI シンチレーションカウンターな の放射性セシウム濃度)については、前章において宮城 どを用いて、圃場内の土壌採取地点の 1 m および 1 cm 高 県、福島県、栃木県、群馬県、茨城県および千葉県の範 さにおける空間線量率を測定した。 囲で汚染状況の概略について述べた。しかし、短期間で 採取した土壌試料を 0 ~ 15 cm と 15 ~ 30 cm の 2 層に の緊急調査であったため調査点数は約 580 地点であっ 区分し、分析のための試料とした。作土層の厚さにかか た。集中的に調査が行われた福島県においても 361 地点 わらず深さを固定したのは、作土層の厚さが判然としな で、農地面積あたりに換算すると 412 ha に 1 点という密 い場合に放射性物質の下層への混入を避けるためであ 度であった。このため、調査の空白地域も少なからず生 る。1 地点 5 箇所で採取した 0 ~ 15 cm の試料を混合し、 じている。また、広域的な航空機モニタリングの結果か 重量を測定した後、篩などを用いて均一にして放射能濃 ら、調査を行った県以外の都県についても放射性セシウ 度測定に供した。また、一部を水分測定に用いた。 ム沈着量が 10,000 Bq/m 以上の地域が認められたこと 土壌中の放射性セシウム濃度は「緊急時における食品 から、分布調査を行うことが望ましいことが明らかに の放射能測定マニュアル」 (厚生労働省医薬局食品保険部 2 監視安全課 2002)に従い、(財)九州環境管理協会、 なった。 このため、前回調査を行った県に、新たな調査対象都 農環研、福島県農業総合センターにおいてゲルマニウム 県として岩手県、山形県、埼玉県、東京都、神奈川県、 半導体検出器を用いて測定した。測定時間は 1,000 ~ 新潟県、山梨県、長野県、静岡県を加えるとともに、調 10,000 秒とし、乾土 1 kg あたりの Bq(2011 年 11 月 5 日 査対象地点を約 6 倍に増やして、農地における放射性セ を基準日)で表示した。なお、基準日は文部科学省によ シウムの濃度を測定し、詳細な汚染状況の分布の把握を る第 4 次航空機モニタリングの測定結果(文部科学省、 行った。 2011)と比較できるように設定した。 Ⅱ 調査・研究方法 2.2011 年度における湛水田圃場の分布図の作成 地目水田の内、全国で約 1/3 の圃場で水稲を作付して 1.農地土壌の放射性セシウム濃度測定用試料の採取 いないことが知られており(農林水産省、2010)、年々 放射性セシウム濃度測定用農地土壌試料の採取は、前 それら圃場の分布状況は変化している。そのため、2011 章とほぼ同様の方法で行った。前章の結果から火山灰が 年度において湛水した水田圃場(湛水田圃場)の分布状 母材である黒ボク土壌群グループ(黒ボク土、多湿黒ボ 況を把握するため衛星画像を用いた。解析は図 2 に示す ク土、黒ボクグライ土)と他の土壌群グループ(岩屑土、 フローチャートで以下のように行った。本報告では、 砂丘未熟土、褐色森林土、灰色台地土、グライ台地土、 RARDARSAT-2 画像の 4 シーンを用いた。これらの衛星 赤色土、黄色土、暗赤色土、褐色低地土、灰色低地土、 画像は 2011 年 6 月 7 日、9 日、19 日および 26 日に撮影さ グライ土、黒泥土、泥炭土)では、表層土壌中の放射性 。 れた (空間分解能は 10.2-8.2 m×7.7 m、入射角は 31.27 度) セシウム濃度と 1 m 高さの空間線量率との関係性が異な まず、圃場図(水土里ネット , 2006)を用いて農地の ることが明らかになったため、両者を的確に区別する方 抽出を行った。この圃場図には地目情報が入っていない 法として活性アルミニウムテスト(アロフェンテスト) ため、農耕地土壌図(高田ら , 2011)の地目情報を用い を調査項目に加え、呈色程度を-、+、++および++ て抽出した圃場の地目を判定した。幾何補正を行った衛 +の 4 段階に分けて記載し、++以上の呈色で黒ボク土 星画像を用いて、調査地域内の全圃場の平均後方散乱係 壌群グループと判定した。なお、調査地点数は 3461 地点 数を算出した。後方散乱係数の閾値を現地調査の結果を 高田裕介ら:東日本の農地表層土壌中の放射性セシウム濃度分布図の作成 55 衛星画像 (RADARSAT-2) 幾何補正 幾何補正済み 衛星画像 平均後方散乱係数 の算出 圃場図 ポリゴンデータ 圃場図による 後方散乱係数図 のマスキング 農地土壌図 地目情報付 閾値の決定 田圃場の抽出 田圃場図による 後方散乱係数図 のマスキング 閾値の分布図 閾値以下 区分 湛水田圃場 閾値以上 非湛水田圃場 図 2 2011 年度の湛水田圃場の抽出方法 基に設定して 2011 年度における湛水田圃場と湛水をし ング法で図化したものを用いて各回帰図を補正する。本 ていない地目水田圃場を区分した。また、現地踏査を 手法により、高精度で土壌特性値の地図化が可能である 2,597 圃場で行った結果、本操作によって作成した湛水 ことを Lopez-Granados et al. (2002) および Takata et al. 田圃場分布図の正答率は 77.1%であった。湛水田圃場分 (2007) は報告している . 布図の作成は福島県、宮城県および栃木県において行っ 農林水産省は農地の汚染状況に応じた除染技術の開発 た。他の都県については農耕地土壌図(高田ら , 2011)の に取り組んでおり、放射性セシウム濃度を 5,000 Bq/kg 地目情報を用いて、地目水田圃場を抽出し、抽出した全 、5,000 ~ 10,000 Bq/kg( 汚 染 度 2)、 以 下( 汚 染 度 1) ての圃場で 2011 年は水田利用されているものと仮定し 10,000 ~ 25,000 Bq/kg(汚染度 3)および 25,000 Bq/kg た。 以上(汚染度 4)の 4 段階に分けて除染技術の適用の考え 方を示している(農林水産省 , 2011)。そのため、農地表 3.放射性セシウム濃度分布図の作成 層土壌中の放射性セシウム濃度分布図についても、上記 放射性セシウム濃度分布図をより精度高く作成するた 汚染度レベル別に農地を区分し、農耕地土壌図(高田ら , め、本報告では回帰クリギング法を用いた。回帰クリギ 2011)の地目情報を用いて、水田および畑ごとに汚染度 ング法とは、先ず、土壌中の放射性セシウム濃度を独立 レベル別の分布面積を算出した。 変数とし、空間線量率を従属変数とした回帰分析を行 なお、一連の空間分布の解析などには GIS ソフトウェ う。得られた回帰式と文部科学省が作成した航空機サー アである ArcView Ver 10(ESRI 社)およびその拡張機能 ベイによる 1 m 高さの空間線量率図を用いて放射性セシ である Spatial Analyst(ESRI 社)ならびに Geostatistical ウム濃度回帰図を作成し、各調査地点の実測値と回帰に Analyst(ESRI 社)を使用した。 よる予測値との誤差を算出する。この回帰誤差をクリギ 56 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 4.地図化精度評価 比べて回帰直線(独立変数は表層土壌中の放射性セシウ 前章で採取した土壌試料のうち、 Cs および Cs が ム濃度で従属変数は 1 m 高さの空間線量率)の傾きは緩 いずれも検出限界値以上であった 214 地点(図 1c)につ やかであった(図 3b)。また、仮比重が小さいことで知 いては、本章において、地図化精度を評価するための試 られる黒ボク土グループ(N=582, Y=3.7 x 10-4X)の方 料として用いた。これら試料の表層土壌中の放射性セシ が非黒ボク土グループ(N=1395, Y=3.9 x 10-4X)と比 ウム濃度についても基準日を 2011 年 11 月 5 日とした。 較して回帰直線の傾きの値は小さかった。これらの結果 134 137 精度評価用試料を用いて 2 乗平均平方根誤差および平 均誤差を地図化精度評価の指標として算出した。 は前章と一致する結果であった。本報告では更に、水田 と普通畑の回帰直線の傾きの違いにも着目した。回帰直 線の傾きは水田(N=894, Y=3.6 x 10-4X)の方が普通畑 Ⅲ 結果および考察 (N=549, Y=3.9 x 10-4X)と比較して緩やかであった。 土壌の水分含量は水田で高いことが考えられ、水による 1.都県別の農地表層土壌中の放射性セシウム濃度 遮蔽効果の違いが回帰直線の傾きに影響を及ぼしている 研究対象地域である東日本各地の農地表層土壌中(深 と示唆された。そこで本報告では、これらの傾向を考慮 。な さ 0-15 cm)で放射性セシウムが検出された(表 1) して回帰分析を土壌表層の状態毎(耕起と未耕起) 、土壌 お、農地表層土壌中の放射性セシウム濃度が検出限界値 グループ毎(黒ボク土グループと非黒ボク土グループ) 以下の場合は検出限界値の 1/2 の値を採用して、各都県 および土地利用毎(水田、普通畑、牧草地、樹園地)に の最小値および平均値を算出した。最も放射性セシウム 分けて行った。なお、旧規制区域内の水田および普通畑 濃度が高かったのは旧規制区域内(図 1;旧警戒区域、 は全て未耕起圃場であると判断した。 旧計画的避難区域、旧緊急時避難準備区域)であり、次 は 0.40 ~ 0.99 の範囲であり、 回帰分析の決定係数(R2) いで福島県(旧規制区域外) 、栃木県、宮城県の順であっ 旧規制区域内で高く、旧規制区域外で低い傾向であった た。最も高い放射性セシウム濃度 (203,000 Bq/kg) を示 (表 2)。旧規制区域内の圃場は事故後に耕起されておら した地点は大熊町にあり、福島第一原発から約 3 km 南 ず、土壌表層が耕起によるかく乱を受けていないため、 西 に 位 置 し た。 Cs と 137 Cs の 都 県 別 の 平 均 の 比 土壌中の放射性セシウム濃度と空間線量率との関係性を ( Cs/ Cs)の範囲は 0.62 ~ 0.80 であり、概して、調査 より強く示したものと考える。他方、旧規制区域外の樹 134 134 137 対象地域の西側で低い傾向であった。 園地や牧草地において、土壌中の放射性セシウム濃度と 空間線量率との関係性は比較的弱い傾向であった。樹園 2.放射性セシウム濃度と空間線量率との関係 地や牧草地では、水田や普通畑と比較して、植物による 農地表層土壌中の放射性セシウム濃度と 1 m 高さの空 被覆状況の不均一性が大きく、土壌中の放射性セシウム 間線量率との関係性を図 3 に示した。なお、土壌表面か 濃度と空間線量率との関係性が弱かったと推察された。 ら放出されるγ線は雪や圃場に溜まった水の影響を強く 、そのような調査地 受けるため(長岡ら 1992, 藤村 2012) 3.土壌中の放射性セシウム濃度の空間分布予測 点は本解析から除外した。また、 Cs が検出限界値以下 表 2 で示した 10 の回帰式(図 4a)と文科省が作成した の地点についても本解析から除外した。さらに、現地調 空間線量率図(図 4b:2011 年 11 月 5 日を基準日として 査の際に空間線量率の測定がされていない地点などを合 補正)を用いて、10 通りの放射性セシウム濃度分布図を わせると、本解析から除外した地点数は 1,262 地点で 作成した。その後、地目情報付きの農耕地土壌図(図 4c: あった。 高田ら , 2011)および衛星画像から作成した湛水田圃場 134 前章でも述べたように、土壌中の放射性セシウム濃度 の分布図を用いて、10 通りの放射性セシウム濃度分布図 と空間線量率との関係は直線的な関係性(図 3a, R =0.89, から条件分け(“黒ボク土”かつ“普通畑”かつ“旧規制 N=2,199)をもつが、土壌表層の状態、土壌タイプおよ 区域外(耕起圃場)”など)による空間結合を行い、回帰 び土地利用タイプなどの違いによってある程度の影響を 式のみから土壌中の放射性セシウム濃度分布図(図 4d: 受けた。前章と同様に、原発事故後に起耕した圃場と耕 回帰モデル)を作成した。 2 起していない圃場を比較すると、同一の放射性セシウム -4 濃度であっても耕起した圃場(N=1443, Y=3.9 x 10 X) -4 の方が未耕起であった圃場(N=534, Y=4.8 x 10 X)に 回帰モデルによる放射性セシウム濃度分布図(図 4d) から、表層土壌中の放射性セシウム濃度は旧警戒区域で 最も高く、福島第一原発から北西方向にかけて高い値を 57 高田裕介ら:東日本の農地表層土壌中の放射性セシウム濃度分布図の作成 予測図作成のための試料採取地点(N=3461) 地図化精度評価のための試料採取地点(N=214) 農地分布図 a:調査対象地域図 b:福島県拡大図 図 1 土壌調査・試料採取地点 表 1 都県別の農地表層土壌中の放射性セシウム濃度 都県名 地点数 岩手県 宮崎県 山形県 福島県 160 122 63 579 1,706 132 207 99 70 103 43 20 62 5 60 30 214 旧規制区域内 旧規制区域外 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 新潟県 山梨県 長野県 静岡県 精度評価用データセット 最小値 134 Cs 最大値 平均値 5 8 5 11 4 8 29 7 6 4 3 6 5 7 5 4 13 350 1,200 110 91,200 3,370 350 1,290 410 380 340 140 220 66 10 58 11 11,500 69 141 31 4,475 456 98 395 87 40 96 25 31 8 9 13 7 490 最小値 137 Cs 最大値 平均値 (Bq/kg) 5 410 6 1,540 6 170 14 112,000 4 4,230 9 430 45 1,550 9 560 7 460 4 470 6 190 7 240 5 84 7 16 5 79 5 31 26 14,700 92 190 47 5,570 580 130 500 120 56 120 36 42 18 10 19 10 630 134 最小値 Cs+137Cs 最大値 平均値 10 760 13 2,740 14 267 25 203,000 8 7,610 19 760 79 2,850 17 970 14 840 9 800 11 320 13 460 10 150 14 25 11 140 10 39 39 26,200 160 330 79 10,000 1,040 230 900 200 95 220 61 73 26 18 32 18 1,120 134 Cs/137Cs 平均±標準偏差 0.72±0.12 0.74±0.09 0.68±0.09 0.80±0.05 0.77±0.08 0.76±0.12 0.78±0.07 0.75±0.11 0.71±0.14 0.77±0.11 0.77±0.14 0.74±0.14 0.66±0.10 - 0.62±0.10 - 0.74±0.10 放射性セシウム濃度が検出限界値以下の場合は検出限界値の 1/2 の値を採用して、各都府県の最小値および平均値を算出した。 平均 134Cs/137Cs の算出時には 134Cs または 137Cs が検出限界となる地点を除いた。 58 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 2.00 a) 1m 高さの空間線量率(μSv/h) 1m 高さの空間線量率(μSv/h) 90 60 30 b) 1.00 未耕起圃場(規制区域内) 耕起圃場(規制区域外) 0.00 0 2500 5000 土壌中の放射性セシウム濃度(Bq/kg) 0 100000 150000 200000 250000 50000 土壌中の放射性セシウム濃度(Bq/kg) 2.00 c) 1.00 非黒ボク土 1m 高さの空間線量率(μSv/h) 1m 高さの空間線量率(μSv/h) 0 黒ボク土 0.00 0 2500 2.00 d) 1.00 普通畑 水田 0.00 5000 0 土壌中の放射性セシウム濃度(Bq/kg) 2500 5000 土壌中の放射性セシウム濃度(Bq/kg) 図 3 農地表層土壌中(0 ~ 15 cm)の放射性セシウム濃度と 1 m 高さの空間線量率との関係、a) 全サンプルの関係性、 b)未耕起圃場と耕起圃場との比較、c)黒ボク土壌群グループと非黒ボク土壌群グループとの比較、d)水田と普 通畑との比較 表 2 土壌中の放射性セシウム濃度を独立変数として、空間線量率を従属変数とした回帰分析の結果 地域 旧規制区域内 (未耕起) 旧規制区域外 (耕起) 回帰式番号 土地利用 土壌グループ 回帰式 -4 R2 N 1 水田および普通畑 黒ボク土 Y=(2.88 x 10 )X 0.89 99 2 水田および普通畑 非黒ボク土 Y=(4.33 x 10-4)X 0.90 435 -4 3 樹園地 - Y=(3.56 x 10 )X 0.99 14 4 牧草地 - Y=(5.69 x 10-4)X 0.90 27 -4 5 水田 黒ボク土 Y=(3.30x 10 )X+0.050 0.83 264 6 水田 非黒ボク土 Y=(3.79 x 10-4)X+0.027 0.78 630 -4 7 普通畑 黒ボク土 Y=(3.88 x 10 )X+0.015 0.78 219 8 普通畑 非黒ボク土 Y=(4.04 x 10-4)X+0.023 0.79 330 -4 9 樹園地 - Y=(6.19 x 10 )X 0.54 161 10 牧草地 - Y=(9.46 x 10-4)X 0.40 24 Y;1 m 高さの空間線量率(μSv/h)、X;土壌中の放射性セシウム濃度(Bq/kg) 高田裕介ら:東日本の農地表層土壌中の放射性セシウム濃度分布図の作成 a) b) 59 c) (μSv/h) 2.5< 1.0 0.0 d) e) (Bq/kg) 0 - 500 500 - 1000 1000 - 5000 5000 - 10000 10000 - 25000 25000 - 50000 50000< f) 黒ボク土 非黒ボク土 回帰残渣 (Bq/kg) -5000> -5000 - -500 0 - -500 500 - 0 500 - 5000 5000< (Bq/kg) 0 - 500 500 - 1000 1000 - 5000 5000 - 10000 10000 - 25000 25000 - 50000 50000< 図 4 回帰クリギングモデルによる農地表層土壌中の放射性セシウム濃度分布図の作成、a) 土壌グループ、土地利用な どで 10 に分類した 1m 高さの空間線量率と農地表層土壌中の放射性セシウム濃度の回帰式、b)1m 高さの空間線量 、c) 土壌タイプ、d) 回帰モデルによる農地表層土壌中の放射性セシウム濃度分布図、 率(文部科学省 , 2011) e) 回帰残差、f) 回帰クリギングモデルにより補正した農地表層土壌中の放射性セシウム濃度分布。 60 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 表 3 回帰モデル予測残差の空間依存性解析結果 回帰式番号 モデル ナゲット シル 1 指数型 2 指数型 5 6 レンジ(km) Q値 R2 ラグ 3.24 x 10 8 1.32 x 10 0.76 54.6 0.36 有効ラグ;20km、ラグ間隔;2km 6.00 x 106 5.58 x 107 0.89 15.2 0.85 有効ラグ;20km、ラグ間隔;2km 球型 4.30 x 10 5 6.97 x 10 0.94 108 0.98 有効ラグ;70km、ラグ間隔;7km 指数型 2.25 x 105 4.50 x 105 0.50 26.4 0.71 有効ラグ;70km、ラグ間隔;7km 7 指数型 1.94 x 10 5 4.15 x 10 0.53 24.7 0.48 有効ラグ;70km、ラグ間隔;7km 8 指数型 1.91 x 10 5 3.81 x 10 0.50 272 0.78 有効ラグ;70km、ラグ間隔;7km 7 4 5 5 表 4 回帰モデルおよび回帰クリギングモデルの地図化精度評価 N 回帰モデル 回帰クリギングモデル 二乗平均方眼誤差 214 790 760 平均誤差 214 -220 -100 示した。本傾向は文科省が作成した空間線量率分布図と 差の地図をそれぞれ足し合わせることで、新たな放射性 一致した。次に試料採取地点ごとに、回帰モデルの予測 セシウム濃度分布図を作成した。回帰クリギング法で作 。なお、回 残差を実測値と予測値から算出した(図 4e) 成した分布図(回帰式 1,2,5,6,7 および 8)、回帰モ Cs および デルで作成した分布図(回帰式 3,4,9 および 10)、地 帰予測残差の算出は 134 Cs の両方ともが検出 137 限界値以上の値を示した地点のみで行った。 目情報付きの農耕地土壌図および湛水田圃場の分布図を 回帰予測残差は福島第一原発から半径 80 km 圏内にお 用いて条件分けによる空間結合を行い、土壌中の放射性 いて低い値を示した。また、回帰予測残差は調査地域北 セシウム濃度分布図(回帰クリギング法)を作成した。 部で高く、南部で低い傾向を示したが、栃木県北部では 回帰モデルおよび回帰クリギングモデルの予測精度の 回帰予測残差は高い値を示した。回帰予測残差の空間依 評価結果を表 4 に示した。二乗平均平方根誤差(RMSE) 存性を評価するために十分なサンプル数がある回帰式 および平均誤差(ME)は回帰クリギングモデルの方が 1、2、5、6、7 および 8 について、指数タイプか球形タ 回帰モデルよりも絶対値が小さくなった。本結果は回帰 イプのモデル式を当てはめ、セミ・バリオグラムのパラ クリギングモデルの方が回帰モデルと比較して精度良く 。なお、回帰式 3、4、9 および メータを算出した(表 3) 地図化を行えたことを示している。 10 についてはサンプル数が限られていたため、回帰予測 残差の空間依存性の評価は行っていない。 回帰予測残差のナゲットおよびシルは、放射性セシウ ム濃度の高い旧規制区域内の方が旧規制区域外(耕起圃 場)よりも高かった。また、空間依存度を示す Q 値は旧 4.農地土壌除染技術適用の考え方に基づく除染対象農 地の分布面積 農地表層土壌中の放射性セシウム濃度区分ごとの分布 面積を表 5 に示した。 規制区域内の方が旧規制区域外に比べて高かった(回帰 土壌中の放射性セシウム濃度が 5,000 Bq/kg を超える 式 5 を除く)ことから、回帰予測残差は旧規制区域内に と推定される農地の分布面積は 8,900 ha であり、その全 おいて高い空間依存性を示した。予測残差の空間依存性 てが福島県内に分布していた。これは福島県の田畑の総 は現地調査の際に用いたシンチレーション・サーベイ 面積の約 6%を占める結果となった。また、5,000 Bq/kg メータの機種間の違い、航空機モニタリングの実施期間 を超過する農地の 92%は旧規制区域内に分布していた。 の違い、地形要因などによって影響を受けていることが 農林水産省は農地の汚染状況に応じた除染技術の開発 示唆された。 に取り組んでおり、放射性セシウム濃度を 5,000 Bq/kg 算出したセミ・バリオグラムのパラメータを用いたク 、5,000 ~ 10,000 Bq/kg( 汚 染 度 2)、 以 下( 汚 染 度 1) リギング法により、回帰式毎に回帰予測残差の地図化を 10,000 ~ 25,000 Bq/kg(汚染度 3)および 25,000 Bq/kg 行った。そして、回帰モデルによる放射性セシウム濃度 以上(汚染度 4)の 4 段階に分けて除染技術の適用の考え 分布図(回帰式 1,2,5,6,7 および 8)と回帰予測残 方を示している(農林水産省 , 2011)。水による土壌撹 61 高田裕介ら:東日本の農地表層土壌中の放射性セシウム濃度分布図の作成 表 5 放射性セシウム濃度別の農地分布面積と推奨される除染技術(農林水産省 , 2011) 汚染度 放射性セシウム濃度範囲 1 5,000 Bq/kg 以下 水田(ha) 普通地、牧草地、 樹園地(ha) 99,400 528,000 推奨される除染技術 表土はぎ取り、反転耕、作物吸収抑制技術、水を用いた表層細土画分の 除去 畑 2 5,000 - 10,000 Bq/kg 2,100 1,200 3 10,000 - 25,000 Bq/kg 2,000 1,000 4 25,000 Bq/kg 以上 1,800 800 水田 地下水位が高い場合 表土はぎ取り 地下水位が低い場合 表土はぎ取り、反転耕 表土をはぎ取り 水を用いた表層細土画分の除去; 黒ボク土での適用は困難 反転耕; 地下水位が低い場合のみ 表土はぎ取り 表土はぎ取り 表土はぎ取り 表土の飛散防止が必要 表土はぎ取り 表土の飛散防止が必要 参考文献 拌・除去、表土削り取り、反転耕による除染が推奨され る汚染度 2 の田および畑地の面積は、それぞれ約 2,100 ha および約 1,200 ha である。表土の削り取りが必要とされ 1) 藤村恵人(2013):農耕地における耕起および湛水 る汚染度 3 の田および畑地面積はそれぞれ約 2,000 ha お が空間線量率に及ぼす影響 , 福島県農業総合セン よび 1,000 ha あり、固化剤などを用いて土壌飛散防止措 ター研究報告 , 放射性物質対策特集号 , 27-28 置を講じたうえで 5 cm 以上の厚さで表土を削り取るこ 2) Lopez-Granados F., M. Jurado-Exposito, S. Atenciano, とが推奨される汚染度 4 の水田および畑地はそれぞれ約 A. Garcia-Ferrer, M.S. Orden and L. Garcia-Torres 1,800 ha および約 800 ha であると推定される。 ( 2002 ):Spatial variability of agricultural soil parameters in southern Spain. Plant Soil, 246, 97-105. 5.摘要 3) 文部科学省(2011) :文部科学省による第 4 次航空機 東京電力福島第一原子力発電所(福島第 1 原発)の事 モニタリングの測定結果について、http://radioactivity. 故により、放射性セシウムが周辺環境中に放出された。 nsr.go.jp/ja/contents/5000/4901/24/1910_1216.pdf、 このため、セシウムによる農地土壌の汚染状況を明らか (accessed 2015-1-5) にし、農地除染計画の作成に資するため、3,461 点におい 4) 長岡 鋭・坂本隆一・堤 正博・斉藤公明・森内 茂 て調査を実施することで東日本における農地表層土壌中 :積雪による地殻γ線線量率の減衰(II), 保 (1992) のセシウム濃度分布図の作成を行った。土壌中のセシウ ム濃度は調査地点で測定した空間線量率と正の相関関係 。この関係は事故後 が認められた(R =0.89, n=2,199) 2 険物理 , 27, 113-121 5) 農林水産省(2008):土壌保全調査事業成績書,農 林水産省,東京,pp.1-483 の耕転状況、土壌の種類、地目によって影響を受けるこ 6) 農林水産省(2011):農地土壌の放射性物質除去技 とが明らかとなったことから、空間線量率から農地表層 術(除染技術)について、http://www.s.affrc.go.jp/ 土壌中のセシウム濃度を推計するための回帰式を 10 に (accessed 2013-11-5) docs/press/110914.htm、 類型化した。これら回帰式と文部科学省が作成した航空 7) Takata Y., S. Funakawa, K. Akshalov, N. Ishida and T. 機サーベイによる 1 m 高さの空間線量率図を用いて、回 Kosaki ( 2007 ):Spatial prediction of soil organic 帰クリギング法により農地表層土壌中のセシウム濃度分 matter in northern Kazakhstan based on topographic 布図を作成した。土壌中のセシウム濃度は福島第 1 原発 and vegetation information. Soil Sci. Plant Nutr., 53, の 20km 圏内において高く、また、福島第 1 原発の北西方 289-299 向にかけて高セシウム濃度地帯が認められた。表層土壌 8) 高田裕介・小原 洋・中井 信・神山和則(2011): 中のセシウム濃度が 5,000 Bq/kg を超過する汚染度 2 以 1973 年から 2001 年までの地目改変に伴う土壌群分 上の農地の分布面積は 8,900 ha であると推定され、その 布面積の変動特性の解析,日本土壌肥料学雑誌 , 82, ほとんどが旧規制区域内に分布していた。 15-24 63 農環研報 34, 63-73(2015) 2011年高濃度放射性セシウム汚染玄米発生の土壌要因 Soil properties for analyzing cause of high radiocesium concentration in brown rice produced in 2011 in Fukushima prefecture 神山和則*・小原 洋*・高田裕介*・齋藤 隆*** 佐藤睦人***・吉岡邦雄***・谷山一郎** (平成26 年12月2日受理) 2011 年 3 月 11 に発生した東京電力福島第一原子力発電所(福島第一原発)の事故に伴い、放射 性物質が大気中に放出された。農地の汚染も広範囲で起こり、水稲栽培に関しては土壌中の放射 性セシウム濃度が 5,000Bq/kg を超える水田で作付けが制限された。しかしながら 2011 年産で玄 米中の放射性セシウム濃度が暫定規制値(500Bq/kg) を超えるものが一部の水田で生産された。 このためこれらの福島県、農水省は水田における要因解析を実施した。本論文ではこれらの要因 解析に用いられた土壌特性のデータをとりまとめ、土壌特性からみた要因について考察を行った。 二本松市旧小浜町の 5 水田と暫定規制値を超過した放射性セシウムの玄米が検出された水田 (22 カ所)およびその周辺水田(9 カ所)の 31 地点(要因解析調査地点)の合計 36 地点で作土の 土壌試料を採取し分析に供した。作土の放射性セシウム濃度は 2,320 ~ 11,700Bq/kg、玄米中の放 射性セシウム濃度は ND ~ 1,240Bq/kg で、移行係数は 0.02 ~ 0.34 の範囲であった。 小浜町の玄米の放射性セシウム濃度と交換性カリ含量はそれぞれ 92 ~ 453Bq/kg、1.8 ~ 10.1mg/100g の範囲であった。また、要因解析調査地点における交換性カリ含量の平均値は 9.7mg/100gで 2.5 ~ 32.3mg/100gの範囲であった。特に規制値を超えた地点においては交換性カ リの平均値は 6.8mg/100gと低く、10mg/100gを超えた地点は 3 地点にすぎない。以上のように、 土壌の交換性カリ含量が重要な要因の一つであることが明らかになった。一方で、玄米の放射性 セシウム濃度と土壌特性との関係性を明確に特徴づけることはできなかった。また、土壌特性以 外の要因、栽培管理・用水・周辺環境などの影響もあると思われるため、要因解明には多くの課 題が残されている。 * 農業環境インベントリーセンター ** 元研究コーディネータ *** 福島県農業総合センター 64 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) Ⅰ はじめに に、本調査終了後、福島市旧小国村大波地区で暫定規制 値を超える放射性 Cs が検出された。このため、米の放射 2011 年 3 月 11 日に発生した東京電力福島第一原子力 発電所(福島第一原発)の事故に伴い、放射性物質が大 性物質緊急調査(緊急調査)が実施され、23,247 戸の農 家を対象に生産した米の放射性 Cs 濃度が測定された。 気中に放出された。農地の汚染も広範囲に及んだことか これらの結果を受け、二本松市旧小浜町および緊急調 ら安全な農産物の生産に対する対策が検討された。その 査により暫定規制値を超過した水田圃場についてその要 経緯は以下のとおりである。 因解析が行われた(福島県 2011, 福島県 , 農林水産省 水稲栽培に関しては原子力災害対策本部が 2011 年 4 2011)。本報告ではこれらの要因解析に用いられた土壌 月 8 日に「稲の作付けに関する考え方」 (原子力災害対策 特性のデータをとりまとめ、土壌特性からみた要因につ 本部 2011)を示し、水田の土壌から玄米への移行係数を いて考察を行った。 0.1 とし、玄米の放射性セシウム濃度( Cs と Cs の合 134 137 Ⅱ 方法 計値、以後「放射性セシウム」を「放射性 Cs」と記す) が暫定規制値(500 Bq/kg)以下となる土壌中の放射性 Cs 濃度の上限値を 5000 Bq/kg とした。2011 年 3 月下旬 (1) 対象地域 から 4 月上旬にかけて行われた土壌中の放射性Cs濃度の 1) 二本松市旧小浜町 調査結果で規制区域 (当時の警戒区域、計画的避難区域、 調査対象とした水田圃場は二本松市旧小浜町に位置し 緊急時避難準備区域)外は 5000 Bq/kg 未満であったた 、2011 年の予備調査において玄米から 500 Bq/kg (図 1) め、規制区域外では水稲の作付けが認められた(農林水 の放射性Csが検出された圃場を含む 5 圃場である。これ 産省 , 2011)。 らの圃場は周囲を花崗岩質の丘陵に囲まれた狭隘な谷底 同年 8 月以降に、安全な米の供給という観点から玄米 平野の最上流部で、用水は沢水などの天水を利用してい の放射性Cs濃度の調査が収穫前の予備調査、収穫後の本 る。5 圃場(①~⑤)は上流から順に連続し、①から③ 調査の 2 段階で実施された。予備調査では二本松市旧小 は同じ沢水を利用しているが、④、⑤は別の沢水も利用 浜町の玄米で 500 Bq/kgの放射性Csが検出された。さら している。 F D N No F:福島市、 D: 伊達市、N:二本松市、No:二本松市旧小浜町 調査地点がある旧市町村 図1 対象地域 神山和則ら:2011 年高濃度放射性セシウム汚染玄米発生の土壌要因 65 2)要因解析調査地点 測定した。交換性放射性 Cs 濃度は 134Cs と 137Cs の合計値 緊急調査において 38 戸の農家で玄米の放射性 Cs 濃度 を乾土 1 kg あたりの Bq(Bq/kg)で示した。 が暫定規制値を超過していた。これらの農家の水田のう ち、暫定規制値を超過した放射性Csの玄米が検出された 稲は 3 つの部位別に測定した。各部位の放射性濃度は 水分 15%換算の濃度(Bq/kg)で示した。 水田(22 カ所)およびその周辺水田(9 カ所)の 31 地点 2) 土壌の理化学性 を要因解析のための調査対象とした(以後、要因解析調査 土壌を風乾後 2 mm の篩で篩別し、交換性陽イオン 地点という) 。前者は福島市(旧福島市 3 地点、旧小国村 (バッチ法)、塩基交換容量(CEC)、全炭素含量(二本松 13 地点)、伊達市(旧月舘町 1 地点、旧小国村 2 地点、旧 市旧小浜町を除く) 、pH、粒径組成を常法(土壌環境分 、二本松市(旧渋川村 1 地 桂沢村 1 地点、旧富成村 1 地点) 析法編集委員会編 , 1997)により測定した。 交換性陽イ 。 点) 、後者は福島市(旧小国村 9 地点)に位置する(図 1) オンは酸化物ベースの mg/100 g で,全炭素含量は腐植 含量に換算し重量%で示した。 (2) 試料の採取 3) 粘土鉱物 1) 二本松市旧小浜町 二本松市旧小浜町については 5 圃場すべてで分析を 土壌及び稲を 2011 年 10 月 2 日に、隣接する 5 つの圃 行った。要因解析調査地点については採取地点や地質等 場(①~⑤)において水口から水尻にかけてそれぞれ 5 を考慮し福島市旧小国村 2 地点、福島市旧福島市 2 地 カ所(②については水口が 3 カ所あるため 6 カ所)で採 点、伊達市旧月舘町、伊達市旧小国村、伊達市旧桂沢村、 取した。土壌はそれぞれの地点で深さごとに(0-5、 伊達市旧富成村それぞれ 1 地点、二本松市旧渋川村 1 地 5-10、10-15 cm)分けて分析に供した。なお、分析値は 点の分析を行った。 各圃場の 5 または 6 カ所における平均値で示した。また、 有機物分解、DCB 脱鉄処理を行った土壌試料から沈降 稲は玄米、ワラ、籾殻の 3 つの部位に分けて試料を調製 法により粘土画分を採取し、カリウム(K)およびマグ し、分析に供した。 ネシウム(Mg)飽和処理を行い、X 線回折用試料を作成 2)要因解析調査地点 した。粘土鉱物種は、常温の K および Mg 粘土、Mg 粘土 要因解析調査地点 31 圃場においてそれぞれ 5 カ所で の グ リ セ ロ ー ル 処 理、2 段 階 の 加 熱 処 理( 約 350℃、 土壌採取器を用いて作土(表層 15 cm)の土壌を採取し、 550℃)後の X 線回折ピークのパターンおよび相対的強度 これらを混合し試料とした。これとは別に福島市旧小国 に基づいて、-、±、+、++、+++の 5 段階で評価 村の 3 圃場では作土(0-15 cm)に加えて、深さ別(0-5、 した。 5-10、10-15 cm)に試料を採取した。一方、稲について 4) 重回帰分析 は調査時に収穫が終了していたため、圃場における試料 要因解析調査地点 31 圃場のデータから玄米の放射性 採取はできなかった。このため、それぞれの地点におけ Cs 濃度と関係があると考えられる項目を選択し重回帰 る玄米の放射性 Cs 濃度は相当すると考えられる袋の玄 分析を行った。重回帰分析には Microsoft Excel の分析 米の放射性 Cs 濃度とした。 ツールを用いた。 Ⅲ 結 果 (3) 分析方法 土壌試料については、放射性セシウム濃度、交換性放 射性 Cs 濃度(要因解析調査地点のみ) 、一般理化学性、 (1) 二本松市旧小浜町 1) 土壌、稲の放射性 Cs 濃度 粘土鉱物組成の分析を行った。 1) 放射性 Cs 濃度(土壌、稲) 表 1 に作土および稲の部位別の放射性Cs濃度と移行係 土壌中の放射性 Cs 濃度は「緊急時における食品の放射 数を示した。作土の放射性Cs濃度は 3,030 ~ 4,190 Bq/kg 能測定マニュアル」 (厚生労働省 , 2002)に従い、ゲルマ で、いずれの圃場も「稲の作付けに関する考え方」 (原子 ニウム半導体検出器を用いて測定した。測定時間は 力災害対策本部 2011)で示された作付けが制限される値 1,000 ~ 10,000 秒とした。土壌の放射性Cs濃度は Csと (5,000 Bq/kg)未満であった。圃場別には上流の 3 圃場 Csの合計値を乾土 1 kgあたりのBq (Bq/kg) で示した。 (①~③)は下流の 2 圃場(④、⑤)に比べやや低かっ 交 換 性 放 射 性 Cs 濃 度 は 1M 酢 酸 ア ン モ ニ ウ ム 溶 液 た。深さ別には(表 2)、最表層(0-5 cm)で濃度は最も (pH7.0)を用いて抽出し(固液比 1:10 で 1 時間振とう)、 高く、圃場②を除き 5,000 Bq/kg を超えていた。濃度は 134 137 66 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 深 さ と と も に 減 少 し て い た が、10-15 cm に お い て も 2) 土壌の一般理化学性 1,350 ~ 2,430 Bq/kg あり耕耘等により土壌が混和され 深 さ 別 CEC、 交 換 性 カ リ 含 量 は そ れ ぞ れ 9.3 ~ 14.7 cmolc/kg、1.8 ~ 10.1 mgK2O/100g と低く、特に交 ていたと考えられる。 一方、稲の部位別濃度は玄米が 92 ~ 453 Bq/kg、ワラ 。最表 換性カリ含量が低いことが特徴的であった(表 2) が 236 ~ 1,260 Bq/kg、籾殻が 136 ~ 605 Bq/kgの範囲で 層(0-5 cm)の土性は SL または SCL であった(表 3)。 。圃場別には土壌 ワラ>籾殻>玄米の順であった(表 1) 圃場別には①、④、⑤は粒径がやや細かく粘土含量が とは逆に、上流の 3 圃場で下流の 2 圃場より高かった。 15%を超えていた。これらの圃場は、花崗岩質の丘陵に 玄米とワラの濃度比(玄米/ワラ)は 0.36 ~ 0.42 とほぼ 囲まれた狭隘な谷底平野の最上流部に位置することか 同じ値であった。 ら、周辺の丘陵から砂質な土壌粒子の供給を受けている 移行係数は 0.02 ~ 0.15 の範囲で、圃場②において「稲 可能性がある。 の作付けに関する考え方」 で示された 0.1 を超えた。圃場 3) 粘土鉱物組成 ①、③においても 0.09、0.06 と高い値を示した。一方、 粘土鉱物組成はほぼ同じであった(表 4)。この地区は 圃場④、⑤は 0.02、0.03 と低かった。 花崗岩および花崗閃緑岩地帯に位置し、カオリナイトが 優勢で雲母鉱物、バーミキュライト-クロライト中間種 鉱物がこれに続く。 表 1 二本松市旧小浜町における作土(0 ~ 15cm) および作物中の放射性 Cs 濃度 放射性 Cs 濃度(Bq/kg) 圃場番号 玄米 ワラ 籾殻 ① 3,580 322 889 491 0.09 ② 3,030 453 1,260 605 0.15 ③ 3,460 208 495 287 0.06 ④ 4,190 92 236 136 0.02 3,910 116 325 185 0.03 ⑤ 圃場番号 粗砂 (%) 細砂 (%) シルト (%) 粘土 (%) シルト + 粘土 (%) 土性 ① 43.3 26.5 15.2 15.1 30.3 SCL ② 48.5 26.4 12.3 12.7 25.0 SL ③ 44.1 27.0 14.4 14.4 28.8 SL ④ 30.5 30.9 19.3 19.3 38.6 SCL ⑤ 41.9 23.7 15.8 18.6 34.4 SCL 移行係数* 作物 土壌 表 3 二本松市旧小浜町における粒径組成(0-5 cm) * 移行係数 =玄米の放射性 Cs 濃度/土壌の放射性 Cs 濃度 表 2 二本松市旧小浜町における土壌の理化学性 圃場番号 ① ② ③ ④ ⑤ 深さ pH cm 0-5 5-10 10-15 0-5 5-10 10-15 0-5 5-10 10-15 0-5 5-10 10-15 0-5 5-10 10-15 5.4 5.4 5.5 5.5 5.4 5.5 5.4 5.4 5.3 5.4 5.4 5.4 5.5 5.6 5.6 表 4 二本松市旧小浜町における粘土鉱物組成(0-5 cm) 放射性 Cs 濃度 Bq/kg 圃場番号 Sm Vt Ch Vt-Ch It Kt cmolc/kg 交換性 カリ含量 mgK2O/100g ① - ++ + ++ +++ +++ 12.5 11.1 11.0 9.4 9.4 9.3 12.0 11.6 11.3 13.5 13.0 12.6 14.7 13.9 13.7 3.3 2.1 2.1 3.1 1.8 2.2 3.9 2.6 2.6 6.4 4.6 5.4 10.1 6.6 9.0 6,050 3,140 1,560 4,860 2,860 1,350 5,450 3,100 1,850 6,750 3,400 2,430 6,490 3,690 2,090 ② - + ± +++ +++ +++ ③ - + + +++ +++ +++ ④ - ++ ± ++ +++ ++++ ⑤ - + ± ++ ++ ++++ CEC 数値は採取箇所数(5または 6 カ所)の平均値 Sm:スメクタイト、Vt:バーミキュライト、Ch:クロライト、 Vt-Ch:バーミキュライトークロライト中間種鉱物、 It:雲母鉱物、Kt:カオリナイト 67 神山和則ら:2011 年高濃度放射性セシウム汚染玄米発生の土壌要因 (2) 要因解析調査地点 15 cm の濃度が 38 Bq/kg、32 Bq/kg(134Cs は検出下限値 1)土壌の放射性 Cs 濃度 未満)となり、耕耘などによる混和が主に 0-10 cm の深 表 5 に作土の放射性Cs濃度を示した。作土の放射性Cs さまでであったと思われる。なお、どの地点においても 濃度の平均値は 6,090 Bq/kg、範囲は 2,320 ~ 11,700 Bq/kg 作土(0-15 cm)の濃度と深さ別の濃度の平均値はほぼ であった。作付けが制限される値(5,000 Bq/kg)を超え 一致した。 る地点が 31 地点中 23 地点あった。ただし、玄米の放射 比較的作物に吸収されやすい形態である交換性放射性 性Cs濃度が規制値を超えなかった調査地点 (表 5 のNo23 濃度の平均値は 570 Bq/kg、81 ~ 1,900 Bq/kg の範囲で ~ 31)における作土の放射性 Cs 濃度の平均値は 5,350 あった(表 5)。土壌の放射性濃度に対する割合(抽出率) Bq/kg、範囲は 3,840 ~ 7,170 Bq/kg であったので、土壌 は 1.4 ~ 19.6%の範囲であった。抽出率は福島市旧小国村 の高い放射性 Cs 濃度が玄米の放射性 Cs 濃度が規制値を で高い傾向にあること以外に、地域的な特徴は判然とし 超えた主要因とはいえない。 ない。 2) 土壌の一般理化学性 福島市旧小国村で採取した深さ別の放射性 Cs 濃度は いずれの地点においても最表層(0-5 cm)で濃度は最も 表 6 に土壌の一般理化学性を示した。腐植含量は伊達 。 高く、2 地点(A、B)で 10,000 Bq/kgを超えていた(図 2) 、これを除く 市旧月舘町の試料が突出して高く(7.9%) 濃度は深さとともに低下していた。A、B 地点では、10- と 2.4 ~ 4.7%であった。CEC および交換性カリ含量はそ 表 5 要因解析調査地点における放射性 Cs 濃度 No 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 * 採取地 市町村 旧市町村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧福島市 福島市 旧福島市 福島市 旧福島市 伊達市 旧月舘町 伊達市 旧小国村 伊達市 旧小国村 伊達市 旧桂沢村 伊達市 旧富成村 二本松市 旧渋川村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 玄米* Bq/kg 970 ~ 1,060 1,030 ~ 1,270 700 ~ 710 550 ~ 750 550 ~ 980 710 ~ 820 460 ~ 1,110 580 ~ 1,100 970 ~ 1,270 590 ~ 670 530 710 ~ 1,170 760 590 550 510 1,050 580 780 580 1,240 750 ~ 850 ND ~ 240 143 ~ 220 143 ~ 220 35 ~ 85 ND ~ 46 ND ~ 48 ND ~ 25 ND ND ~ 36 代表値* Bq/kg 1,020 1,120 705 436 765 755 780 840 1,120 630 530 940 760 590 550 510 1,050 580 780 580 1,240 800 130 130 130 62 33 34 23 20 28 土壌 Bq/kg 4,100 5,820 8,250 5,380 7,830 9,670 6,720 3,680 5,120 6,250 4,270 5,090 3,850 6,930 6,890 7,130 11,700 6,460 8,970 7,030 7,310 2,320 7,170 3,840 5,890 6,320 5,240 5,100 4,170 4,870 5,540 土壌の交換性 交換性/土壌 Bq/kg % 515 12.5 523 9.0 1,140 13.8 973 18.1 1,420 18.1 1,900 19.6 1,130 16.7 537 14.6 548 10.7 - - 164 3.8 601 11.8 653 17.0 412 5.9 317 4.6 247 3.5 1,020 8.7 92 1.4 123 1.4 220 3.1 252 3.5 81 3.5 1,060 14.8 143 3.7 - - 916 14.5 290 5.5 841 16.5 425 10.2 455 9.3 347 6.3 移行係数 0.25 0.19 0.09 0.08 0.10 0.08 0.12 0.23 0.22 0.10 0.12 0.18 0.20 0.09 0.08 0.07 0.09 0.09 0.09 0.08 0.17 0.34 0.02 0.03 0.02 0.01 0.01 0.01 0.01 0.00 0.01 玄米濃度と代表値:要因解析調査の対象圃場は収穫・袋詰めが終了していたため、放射性セシウム濃度の測定には対象圃場で収穫された可 能性のある袋(場合により複数)から試料を採取した。このため、玄米の放射性セシウム濃度を範囲で示し、各種解析には代表値(一つの 袋の場合は分析した値、複数の袋の場合は平均値)を用いた。 -:分析値なし 68 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 0-5cm 深さ 深さ 0-5cm 5-10cm A 10-15cm 0 4000 8000 5-10cm B 10-15cm 12000 0 放射性 Cs 濃度(Bq/kg) 4000 8000 12000 放射性 Cs 濃度(Bq/kg) 深さ 0-5cm 5-10cm C 10-15cm 0 4000 8000 12000 放射性 Cs 濃度(Bq/kg) 図 2 深さ別の放射性 Cs 濃度(福島市旧小国村) 表 6 要因解析調査地点における土壌の理化学性 採取地 No 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 市町村 旧市町村 福島市 福島市 福島市 福島市 福島市 福島市 福島市 福島市 福島市 福島市 福島市 福島市 福島市 福島市 福島市 福島市 伊達市 伊達市 伊達市 伊達市 伊達市 二本松市 福島市 福島市 福島市 福島市 福島市 福島市 福島市 福島市 福島市 旧小国村 旧小国村 旧小国村 旧小国村 旧小国村 旧小国村 旧小国村 旧小国村 旧小国村 旧小国村 旧小国村 旧小国村 旧小国村 旧福島市 旧福島市 旧福島市 旧月舘町 旧小国村 旧小国村 旧桂沢村 旧富成村 旧渋川村 旧小国村 旧小国村 旧小国村 旧小国村 旧小国村 旧小国村 旧小国村 旧小国村 旧小国村 pH 腐植 CEC 6.3 6.1 5.8 6.1 5.3 5.0 5.6 6.6 6.5 5.8 6.5 5.3 5.1 5.2 5.9 5.4 5.6 5.7 5.4 6.2 5.4 5.2 6.4 6.0 6.0 6.3 6.8 6.0 6.4 6.5 6.6 4.2 4.5 4.3 4.0 3.4 3.4 3.1 3.8 3.3 4.7 2.5 3.7 2.7 3.0 2.8 2.5 7.9 4.3 2.6 4.1 4.6 2.4 3.1 3.8 4.1 3.8 3.5 3.2 3.0 3.0 2.4 % cmolc/kg 43.6 41.6 34.7 40.7 31.3 32.3 37.7 38.9 32.1 32.8 38.6 24.3 20.3 31.7 30.1 32.9 15.2 34.2 9.3 55.5 34.8 16.3 36.9 39.4 43.6 42.3 40.5 33.0 37.1 37.4 33.0 K2O mg/100g 14.7 11.6 5.1 7.6 5.3 6.1 5.7 5.1 6.8 6.0 8.2 5.6 6.4 6.6 7.0 5.6 2.5 8.1 3.5 10.1 7.6 4.0 18.5 10.3 13.1 11.7 17.2 14.7 23.0 32.3 10.6 交換性陽イオン含量 CaO MgO mg/100g mg/100g 697 647 618 689 489 443 629 649 573 453 456 163 98 390 422 439 122 546 101 967 765 133 555 589 676 674 761 551 659 616 560 294 276 128 216 86 89 136 273 192 157 311 50 43 86 102 124 17 139 21 321 106 34 232 236 273 292 247 174 207 229 200 69 神山和則ら:2011 年高濃度放射性セシウム汚染玄米発生の土壌要因 れぞれ平均値が 33.8 cmolc/kgと 9.7 mgK2O/100g、9.3 ~ た。一方、伊達市旧月舘町と伊達市旧小国村の試料はカ 55.5 cmolc/kg と 2.5 ~ 32.3 mgK2O/100g の 範 囲 で あ っ オリナイトが優勢で、バーミキュライト-クロライト中 た。玄米の放射性 Cs 濃度が規制値を超えた 22 地点にお 間種鉱物も認められた。イライト(雲母鉱物)はピーク いては交換性カリの平均値は 6.8 mgK2O/100g と低く、 が小さく痕跡程度と考えられた。二本松市旧渋川村の試 10 mgK2O/100g を超えた地点は 3 地点にすぎない。 料はカオリナイトが優勢で、バーミキュライトも認めら をみると、粘土含量が高く土性が LiC、 粒径組成 (表 7) れた。 SiC、HC といった細粒質の土壌がほとんどであった(分 表層地質との関係を見ると、スメクタイトが優勢な地 。一方、伊達市旧月舘町の 析値のある 29 地点中 26 地点) 点は凝灰岩・凝灰角礫岩地域(凝灰岩、凝灰角礫岩、安 試料は粘土含量が 9.0%と低く土性は SL であった。 山岩質岩石(集塊岩)が分布)に位置していた(福島県 , 3) 粘土鉱物組成 1988)。一方、カオリナイトとバーミキュライト-クロ 表 8 に粘土鉱物組成を示した。福島市旧小国村、福島 ライト中間鉱物が優勢な地点は花崗岩及び花崗閃緑岩地 市旧福島市 2 地点、伊達市旧桂沢村、伊達市旧富成村の 帯に位置していた。二本松市旧渋川村は沖積地に位置 試料はスメクタイトが優勢な粘土鉱物で、カオリナイト し、上流地質(花崗岩及び花崗閃緑岩地帯)の影響を受 も認められた。イライト(雲母鉱物)は認められなかっ けていると思われる。 表 7 要因解析調査地点における土壌の粒径組成 No 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 -:分析値なし 採取地 市町村 旧市町村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧福島市 福島市 旧福島市 福島市 旧福島市 伊達市 旧月舘町 伊達市 旧小国村 伊達市 旧小国村 伊達市 旧桂沢村 伊達市 旧富成村 二本松市 旧渋川村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 粗砂 % 6.1 7.8 10.9 9.4 16.2 13.3 10.1 8.7 21.0 - 22.1 32.4 34.2 15.5 16.1 13.6 57.6 6.1 45.1 4.7 20.4 31.0 6.8 7.1 8.2 8.2 16.6 18.2 11.7 20.3 11.9 細砂 % 18.0 12.8 19.5 22.3 18.3 11.2 18.4 16.7 25.8 - 17.4 13.2 12.2 17.9 16.5 11.5 22.4 18.3 23.6 13.7 14.9 21.6 15.1 13.5 15.9 14.4 15.6 28.9 23.5 20.1 18.4 シルト % 34.4 32.2 41.5 40.4 36.8 45.6 36.6 31.9 24.7 - 30.4 25.6 26.9 39.3 37.9 42.2 10.9 37.7 16.0 35.6 37.5 23.0 33.4 29.9 31.6 41.0 30.3 12.8 30.0 30.5 32.7 粘土 % 41.6 47.2 28.0 27.9 28.7 29.8 34.9 42.7 28.5 - 30.0 28.8 26.7 27.3 29.5 32.7 9.0 37.8 15.4 46.1 27.2 24.4 44.6 49.5 44.3 36.4 37.5 40.1 34.8 29.1 37.1 シルト+粘土 % 75.9 79.3 69.5 68.2 65.5 75.5 71.5 74.6 53.2 - 60.5 54.5 53.6 66.6 67.4 74.9 19.9 75.5 31.4 81.7 64.7 47.4 78.1 79.4 75.9 77.4 67.9 52.9 64.8 59.7 69.8 土性 LiC HC LiC LiC LiC SiC LiC LiC LiC - LiC LiC LiC LiC LiC LiC SL LiC CL HC LiC CL LiC HC LiC LiC LiC LiC LiC LiC LiC 70 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 表 8 要因解析調査地点における土壌の粘土鉱物組成と地質区分 No 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 採取地 市町村 旧市町村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧福島市 福島市 旧福島市 福島市 旧福島市 伊達市 旧月舘町 伊達市 旧小国村 伊達市 旧小国村 伊達市 旧桂沢村 伊達市 旧富成村 二本松市 旧渋川村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 福島市 旧小国村 Sm Vt Vt-Ch It Kt 地質区分* × × × × × × × × × × × × × +++ × +++ - × - +++ +++ - × × × × +++ × × × × × × × × × × × × × × × × × - × - - × - - - ++ × × × × - × × × × × × × × × × × × × × × × × - × - ++ × ++ - - +- × × × × × × × × × × × × × - × - +× +- - +- × × × × - × × × × × × × × - × × × × × × × × × × × × × × × × × ++ × ++ ++ × +++ + + +++ × × × × + × × × × 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 2 2 1 1 3 1 1 1 1 1 1 1 1 1 Sm:スメクタイト、Vt:バーミキュライト、Vt-Ch:バーミキュライトークロライト中間種鉱物、It:雲母鉱物、Kt:カオリナイト * 地質区分:1;凝灰岩・凝灰角礫岩地域、2;花崗岩および花崗閃緑岩地帯、3;沖積地 ×:未分析 Ⅳ 考察 図 3 に交換性カリ含量と移行係数の関係を示した。交 換性カリ含量が高いと移行係数が小さくなることが報告 (1) 二本松市旧小浜町において玄米の放射性Cs濃度が 高かった土壌要因 圃場①~③は圃場④、⑤に比べ土壌の放射性Cs濃度が 低い一方、玄米の放射性 Cs 濃度は高い関係にあった(表 されている(Tsukada et al., 2002)が、本地域においても 同様の関係がみられた。このように交換性カリ含量が低 いことが玄米の放射性 Cs 濃度が高くなった原因の一つ と考えられる。 1)。一方、シルト+粘土割合と土壌の放射性Cs濃度ある 既往の研究において交換性カリ濃度が 25 mgK2O/100g いは玄米の放射性Cs濃度の関係をみると、シルト+粘土 程度になると玄米中の放射性 Cs 濃度の低減に有効とさ 割合が大きい圃場④、⑤で土壌の放射性Cs濃度が高く、 れている(農業・食品産業技術総合研究機構 2012)が、 。また、作物へ 玄米の放射性 Cs 濃度が低かった(表 3) 旧小浜町では交換性カリ含量が 4 mgK2O/100g 未満で移 吸収されやすい形態である交換性放射性 Cs 濃度は圃場 行係数が急激に増加している。この違いについては、土 。以上のことから、本地区では ①~③で高かった(表 1) 性などの要因も考えられるが、詳細な検討が必要であ より砂質な圃場①~③において放射性 Cs の固定が少な る。 く稲に吸収されやすい状態にあったと考えられる。 71 神山和則ら:2011 年高濃度放射性セシウム汚染玄米発生の土壌要因 (2) 要因解析調査地点において玄米の放射性Cs濃度が 21)では玄米の放射性 Cs 濃度は 1,000 Bq/kg を超えてお 高かった土壌要因 り、移行係数も 0.09 ~ 0.22 と高い値を示した。一方、交 対象地域は土壌の放射性Cs濃度も高いことから、この 換性カリ含量 10 mg/100g 以上の地点では 3 地点を除き ことが玄米の放射性 Cs 濃度が高かった一つの要因と考 玄米の放射性Cs濃度は 130 Bq/kg以下であった。なお、 えられるが、土壌と玄米の放射性Cs濃度との間に明確な 玄米の放射性 Cs 濃度を測定した試料はその圃場で収穫 (図 4) 。同様に交換 関係は認められなかった(r=0.238) された玄米ではない可能性がある。交換性カリ含量が高 性放射性 Cs 濃度と玄米の放射性 Cs 濃度との間にも明確 いにもかかわらず玄米の放射性Cs濃度が高い、あるいは 。 な関係は認められなかった(r=0.081) 移行係数が高い 3 地点(表 5 の No. 1、2、20)について 玄米の放射性 Cs 濃度と交換性カリ含量との間にある -1.79 は、要因の解析が必要である。 ;R =0.574) (図 図 6 に地質区分別にみた交換性カリ含量と移行係数の 5)。交換性カリ含量 10 mgK2O/100g未満の地点では玄米 関係を示した。調査地点の大部分はスメクタイトが優勢 の放射性Cs濃度は 400 Bq/kg以上であり、そのほとんど な地質区分 1 であった。バーミキュライト-クロライト (表 5 の No. 9、17、 が暫定規制値を超過していた。3 地点 中間種鉱物が優勢な地質区分 2 は 3 地点のみであるが、 0.20 移行係数 0.15 0.10 Y=0.463x-1.35 R2=0.743 0.05 玄米の放射性Cs濃度(Bq/kg) 程度の関係が見られた(Y=14840x 2 1500 1000 暫定規制値 500 Y=14840x-1.79 R2=0.574 0 0.00 0 2 4 6 8 10 交換性カリ含量10mgK2O/100g 12 交換性カリ含量(mgK2O/100g) 0 10 30 40 交換性カリ含量(mgK2O/100g) 図 3 交換性カリ含量と移行係数との関係 (二本松市旧小浜町) 図5 交換性カリ含量と玄米の放射性 Cs 濃度との関係 (要因解析調査地点) (二本松市旧小浜町のデータを△で示した。 ) 0.4 交換性カリ含量10mgK2O/100g 1500 地質区分1 地質区分2 0.3 地質区分3 1000 暫定規制値 500 移行係数 玄米の放射性Cs濃度(Bq/kg) 20 0.2 Y=1.787x-1.619 R2=0.489 0.1 0.0 0 0 5000 10000 土壌の放射性Cs濃度(Bq/kg) 図 4 土壌と玄米の放射性 Cs 濃度との関係 (要因解析調査地点) (△は二本松市旧小浜町のデータ) 15000 0 10 20 30 40 交換性カリ含量(mgK2O/100g) 地質区分:1;凝灰岩・凝灰角礫岩地域、 2;花崗岩および花崗閃緑岩地帯、3;沖積地 図 6 地質区分別にみた交換性カリ含量と移行係数との 関係(要因解析調査地点) (二本松市旧小浜町のデータを△で示した。旧小浜 町は地質区分 2 に区分される。) 72 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 移行係数はいずれも 0.1 程度であった。一方、二本松市旧 5) 原子力災害対策本部(2011):稲の作付に関する考 渋川村の試料は、カオリナイト、バーミキュライトが優 え方. http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/ine_ 勢な地質区分 3 であるが、他の地点に比べ移行係数が著 sakutuke.html(accessed 2013-10-21) しく高い。これら地質区分 2 および 3 のグループは試料 6) 厚生労働省(2002):緊急時における食品の放射能 測定マニュアル , 1-39 数が少ないので、試料数を増やすことで関係性がより明 確になる可能性がある。 7) 農業・食品産業技術総合研究機構(2012):プレス 土壌の理化学性から玄米の放射性 Cs 濃度(RiceCs)を リリース 玄米の放射性セシウム低減のためのカリ 推定するために重回帰分析を実施した。その結果、土壌 施 用 , http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/ の放射性Cs濃度は有意な説明変数ではなく、交換性カリ (accessed 2013press/laboratory/narc/027913.html 含量(ExK2O)と交換性放射性 Cs 濃度(ExCs)が説明 10-21) 変数となった。特にこれらの変数の対数値を用いること 8) 農林水産省 (2011) :東日本大震災について~東京 。ただし、標 で高い寄与率(R2=0.563)を得た(図 7) 電力福島第一原子力発電所の事故に伴う稲の作付制 準 化 偏 回 帰 係 数 を 見 る と Log(ExK2O) の 係 数 に 比 べ 限 地 域 の 設 定 に つ い て . http://www.maff.go.jp/j/ 、交換性放射性 Log(ExCs) の係数が著しく小さく(表 9) press/seisan/sien/110422.html(accessed 2013-10- Cs 濃度の影響は小さいと考えられた。 21) 9) Tsukada, H., H. Hasegawa, S. Hisamatsu and S. Ⅴ おわりに Yamasaki (2002):Transfer of 137Cs and stable Cs from paddy soil to polished rice in Aomori, Japan. J. 2011 年産玄米の放射性 Cs 濃度が暫定規制値を超えた Environ. Radioactiv., 59, 351-363 水田における土壌の理化学性を調査した結果、土壌の交 なった。一方で、玄米の放射性 Cs 濃度と土壌特性との関 係性を明確に特徴づけることはできなかった。また、土 壌特性以外の要因、栽培管理・用水・周辺環境などの影 響もあると思われるため、要因解明には多くの課題が残 されている。2012 年には玄米を含む一般食品の規制値が 100 Bq/kg に設定されたことから、放射性濃度のより低 い玄米の生産が求められている。今後も調査を行い、よ り体系的に要因を検討することが必要である。 Ⅵ 引用文献 玄米の放射性Cs濃度の実測値(Bq/kg) 換性カリ含量が重要な要因の一つであることが明らかに 10000 1000 100 10 1 2) 福島県(1988):土地分類基本調査 保原 , 47pp 3) 福島県(2011):二本松市旧小浜町の水田における 調査結果 ( 中間報告 ), http://www.pref.fukushima.jp/ 1 4) 福島県 , 農林水産省(2011) :暫定規制値を超過した 放射性セシウムを含む米が生産された要因の解析(中 間 報 告 ), http://www.pref.fukushima.jp/keieishien/ kenkyuukaihatu/gijyutsufukyuu/ 05 gensir yo ku/240112_tyukan.pdf(accessed 2013-10-21) 100 1000 10000 地質区分:1;凝灰岩・凝灰角礫岩地域、 2;花崗岩および花崗閃緑岩地帯、3;沖積地 図 7 重回帰モデルによる玄米の放射性 Cs 濃度の推定値 と実測値の関係(要因解析調査地点) (二本松市旧小浜町のデータを△で示した。旧小浜 町は地質区分 2 に区分される。) 表 9 重回帰分析結果 keieishien/kenkyuukaihatu/gijyutsufukyuu/05gensi ryoku/231017_obama.pdf(accessed 2013-10-21) 10 玄米の放射性Cs濃度の推定値(Bq/kg) 1) 土壌環境分析法編集委員会編(1997):土壌環境分 析法.日本土壌肥料学会監修 . 427pp 博友社 , 東京 地質区分1 地質区分2 地質区分3 旧小浜町 変数 (定数) 偏回帰係数 標準化偏回帰係数 A1 4.125 Log(ExK2O) A2 -1.782 -0.751 Log(ExCs) A3 0.015 0.009 Log(RiceCs)=A1 + A2 × Log(ExK2O) + A3×Log(ExCs) RiceCs:玄米の放射性 Cs 濃度、ExK2O:交換性カリ含量:ExCs: 交換性放射性 Cs 濃度 神山和則ら:2011 年高濃度放射性セシウム汚染玄米発生の土壌要因 73 Soil properties for analyzing cause of high radiocesium concentration in brown rice produced in 2011 in Fukushima prefecture Kazunori KOHYAMA, Hiroshi OBARA, Yusuke TAKATA, Takashi SAITO, Mutsuto SATO, Kunio YOSHIOKA and Ichiro TANIYAMA Summar y The radioactive contamination in farmland occurred by the accident of Tokyo Electric Power Company's Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant in March, 2011. Cultivation of paddy rice was restrained where radiocesium concentration (CsConc) of soil exceeded 5,000 Bq/kg. However, brown rice whose CsConc exceeded provisional regulation value for CsConc in brown rice (500 Bq/kg) was produced in several non-restrained paddy fields. In this paper, we compiled soil properties for analyzing cause of high CsConc in brown rice and deliberated on cause in terms of soil properties. The 36 topsoil samples were collected from 5 paddy fields in Obama, Nihonmatsu city where CsConc in brown rice exceeded 500 Bq/kg were detected, and from 31 paddy fields in Fukushima, Date and Nihonmatsu city to examine factors for high CsConc in brown rice. The CsConc of brown rice and ExK2O in topsoil in Obama (5 sites) ranged from 92 to 453 Bq/kg and from 1.8 to 10.1 mg/100g, respectively. The CsConc of topsoil and brown rice in the other sites (31 sites) was 6,090 Bq/kg in average and ranged from 2,320 to 11,700 Bq/kg and 570 Bq/kg in average and ranged from ND to 1,240 Bq/kg, respectively. As the average of CsConc in topsoil ranged from 3,840 to 7,170 in the sites that CsConc in brown rice showed less than provisional regulation value, the high CsConc in topsoil was not necessarily a cause of high CsConc in brown rice. ExK2O in topsoil was 9.7 mg/100g in average and ranged from 2.5 to 32.2 mg/100g. The average ExK2O in the sites that CsConc in brown rice exceeded provisional regulation value was as low as 6.8 mg/100g. In these cases, low ExK2O was one of the main causes of high CsConc in brown rice. 75 農環研報 34, 75-80(2015) 水を用いた土壌撹拌-吸引排水法による水田からの 放射性セシウム除去技術の開発 Development of stirring cleaning method to remediate radioactive cesium-contaminated paddy fields. 牧野知之*・赤羽幾子*・山口紀子*・荒 貴裕**・山口 弘**・木方展治*・藤原英司*・太田 健*** 石川哲也***・村上敏文***・江口哲也***・神谷 隆****・青野克己****・齋藤 隆***** (平成26 年12月2日受理) Synopsis: We have developed a stir ring cleaning method to remediate radioactive cesium (Cs) contaminated paddy fields. It was comprised of 1) adding water and a dispersive material to the field and stirring water and soil; 2) Drinage of soil suspension in, which containing much amount of radioactive Cs rich soil micro particles; and 3) on-site treatment of wastewater using a portable treatment system. After the decontamination, the decrease rates of 137Cs in soil and brown rice were 62% and 58 % , respectively. Ⅰ はじめに に放射性 Cs が集積しているため表土のはぎ取りが有効 と考えられる。1986 年に起きたチェルノブイリ原子力発 東京電力福島第 1 原子力発電所の放射能漏れ事故に伴 電 所 事 故 後 に は 表 層 は ぎ 取 り が 行 わ れ(Vovk et al., い、放射性セシウム(Cs)で汚染された農用地が広範囲 2004)、環境省による除染ガイドラインでも未耕起圃場 に発生し、汚染地における除染が大きな社会的課題と における主要な除染法の一つとして記載されている(環 なっている。放射性Csは土壌コロイドのフレイドエッジ 境省 , 2013)。しかし、表層はぎ取りは既耕作の圃場には サイトやケイ素六員環に強く吸着する性質を持つため 適用困難であり、既耕作圃場では、反転耕や深耕による ,農耕地に降下した放射性 Cs は、土壌の (山口ら , 2012) 除染が環境省の除染対策事業の助成対象とされる。しか 極表層に留まり、梅雨を経てもほとんど下層に移行しな し、作土層の厚さが不十分、作土直下に礫がある場合な 。このため、放射能漏れ事故 い(Matsunaga et al., 2013) ど、反転耕や深耕の適用困難な事例もある。既耕作ほ場 以後、未耕起の圃場では、土壌の最表層(0 ~ 2 cm 程度) に適用できる新たな除染対策が求められている。 * 土壌環境研究領域 ** 研究技術支援室 *** (独)農業・食品産業技術総合研究機構,東北農業研究センター **** 太平洋セメント株式会社 ***** 福島県農業総合センター 76 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 我が国では農地の多くが圃場に水を貯める事のできる ある。 水田であり、日本全体では 54.3%、福島県では 69.8%を しかし、以上の方法では土壌の分散性を高めていない 。このため、水田に水を貯め 占める(農林水産省 , 2014) ため、土壌微粒子の排出効率ならびに除染効率が低いと て直接圃場で土壌洗浄を行うことが可能である。土壌に いう問題点がある。本研究では水田土壌の主要粘土鉱物 水と薬剤を加えて有害化学物質を除去する土壌洗浄プロ が層状ケイ酸塩であることを鑑み、アルカリ資材を分散 セスは、粒径別分級と汚染物質の抽出処理の 2 つに大き 材として添加して排出効率を高めた除染技術の開発を目 く分けられる。第一は、水を使って土壌を分散させ、沈 的とした。 降速度の違いや孔径の異なるフィルターなどを用いて土 壌粒子をサイズ毎に分級し、浄化土壌と汚染土壌に分別 Ⅱ 試料および方法 。通常、サ して、減容する方法である(Anderson, 1999) イズの小さな土壌粒子ほど、汚染物質の濃度が相対的に 室内試験:現地試験実施予定の福島県内の細粒質普通灰 高く、微細な土壌粒子を分離することで汚染除去が可能 色低地土 ( 作土の土性は LiC)の農家水田から作土を採取 となる。スクリュー分離機、液体サイクロンなどの機器 し、風乾後、2 mm の篩を通し、供試土壌とした。現地 。第二は、汚染土壌に洗浄 が使われる(Anderson, 1993) 土壌の粘土鉱物組成を明らかにするため、粘土画分をピ 薬剤と水を加え、懸濁状態となるように混合して土壌か ペット法で採取し、交換性塩基をマグネシウムおよびカ ら液相に有害化学物質を浸出除去して排水し、汚染物質 リウム型に置換した後、x線回折で粘土鉱物を同定した。 を含む排液を浄化システムで処理する修復技術であり、 供試土壌を用いて pH と土壌分散率の関係を明らかに カドミウム汚染水田の浄化などに適用されている するために、以下の実験を行った。土壌 5 g を 50 mL 遠 。 (Makino, 2007 and 2008) 沈管に秤取し、純水 20ml 添加する。1M 水酸化ナトリウ 奥島ら(2012)は、放射能汚染された未耕起の水田圃 ムを 0、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45 また 場を湛水した後に、表層土壌を撹拌して微粒子を水中に は 0.5 ml加えて 1 時間撹拌後、pHを測定する。純水 30 ml 浮遊させた濁水を強制排水(浅代かき強制排水)し、放 を追加添加する。30 秒間手で振とうして、静置する。30 射性 Cs 濃度が高い微粒子を選択的に排出することによ 分後、水面から深さ 6 cmのところから、懸濁液を 29.8 ml り、水田圃場における効率的な除染に寄与できる可能性 採取する。計量済みの秤量ビンにいれて、105℃で乾燥 があるとの仮定をたて、コンテナ試験で検証した。コン 前後の重量を測定する。別途、遠枕管に残った懸濁土壌 テナ内に土壌を 5 cmの厚さで充填して、土壌表面から水 を遠心分離し、上澄みをろ過する。ろ過液を 10 ml 秤量 深 10 cm として土壌を撹拌し、濁水を排水した。その結 ビンにとり、105℃で乾燥前後の重量を測定する。懸濁 果、 土 壌 の 放 射 性 Cs 濃 度( Cs+ Cs) は 処 理 前 の 液の絶乾重量 - 上澄みの絶乾重量から懸濁液に含まれる 134 -1 137 -1 25,900 Bq kg から処理後には 15,700 Bq kg と低減率 懸濁物質量を算出する。分析は 2 連で行った。また、pH 39%に達した。本法は圃場でも検証され、農林水産省 と土壌粒子の電気的な反発力の関係を明らかにするため (2013)の農地除染対策の技術書概要に引用されてい に、pH の異なる懸濁液中に含まれる土壌粒子のゼータ る。技術書における現地での具体的な工程は、①表層土 ポテンシャルをゼータ電位測定装置(Zeta Sizer Nano ZS, 壌の撹拌段階(浅代かき) 、②オイルフェンスを利用した Malvern)で pH6 ~ 11 の範囲で測定した。 速やかな濁水の排出、③濁水処理からなる。トラクター 走行による放射性Csの深部への拡散を防止するために、 現地試験:福島県内の農家水田において以下の工程を実 土壌撹拌は 1 回としている。オイルフェンスは、本来水 施した。①水田内に約 100m2 の試験区を設定し、赤外線 面に浮いた油の拡散防止に用いるものであるが、濁水の レベルセンサー付きのトラクターで土壌深さ 0-7 cm を 排出に利用している。濁水処理は凝集沈殿法や沈砂池な 耕起した。②用水を導水、耕盤からの水深を 25cm とし どにより行っている。 て水酸化ナトリウム粒剤を加え、代掻き車輪(通称:籠 「水による土壌撹拌+強制排 一方、溝口(2013)は、 車輪)で撹拌、pH8-9 とした。③撹拌後、直ちにポンプ 水」と「天地返し」を組み合わせた工法を提示している。 で水田表面の土壌懸濁水の排水を開始し、凝集沈殿漕に 圃場の一部に穴を掘り、代かき後に上記のオイルフェン 懸濁水を貯留した。④凝集沈殿漕にポリ塩化アルミニウ スと似た器具を用いて泥水を穴に流し込むことで、水田 ムおよび高分子凝集剤を添加し撹拌、土壌微粒子が主体 土壌の浄化と排出土の処理を原位置で行うという手法で の懸濁物質(SS)を凝集沈降させた。⑤凝集沈降した SS 牧野知之ら:水を用いた土壌撹拌 - 吸引排水法による水田からの放射性セシウム除去技術の開発 77 Ⅲ 結果と考察 の沈殿物をタンク等に一時貯留後、フィルタープレスで 固液分離して汚泥として回収した。⑥排水後、再度用水 を導水し、撹拌-排水の工程を合計 4 回実施した。⑦撹 現地試験圃場の主要粘土鉱物は層状ケイ酸塩鉱物であ 拌-排水処理終了後の圃場に塩化第二鉄溶液を施用して るバーミキュライト、スメクタイト、カオリン鉱物であ 。 撹拌し、pH を約 6 に復した(図 4) り、Cs に対する吸着能が高く、アルカリで分散しやすく 現地試験の試料および分析:①排水ポンプから懸濁水を 。土壌懸濁液 pH とゼータポテ なると推定される(図 1) Cs 濃度測定用に供試した。②土 ンシャルの関係では原土の pH 約 6 から pH8 ~ 9 程度ま 壌カラムサンプラーを用いて、除染前後に圃場の 5 か所 で、ゼータポテンシャル(=粒子の流動電位)が pH 上昇 から土壌深 30 cm の土壌カラムサンプルを採取した。カ に伴いマイナス方向に増加しており、表面負電荷の上昇 ラムを切断(土壌表面から 0-2、2-5、5-10、10-15、15 cm が認められる(図 2)。この表面電位の上昇と土壌粒子の 以下) 、深さ別の土壌試料として用いた。③除染前後の空 分散性の挙動はほぼ一致した傾向を示し、pH6 の土壌懸 間線量率をシンチレーションサーベイメーターで、土壌 濁物質量を 100 としたときの相対値でpH7 は 172.4、pH8 および SS の放射性 Cs をそれぞれ NaI シンチレーション は 180.0、pH9 は 191.3、pH10 は 192.7 となり、アルカリ 検出器、ゲルマニウム半導体検出器を用いて測定した。 処理(水酸化ナトリウム添加)に伴う土壌粒子分散性の 水稲栽培:水による撹拌・除去による除染後、塩化第二 向上が認められた(表 1)。以上の結果より、pH8 ~ 9 以 鉄で作土の pH を 6 に戻した後、水稲栽培を行った。除染 上における分散率上昇の頭打ち、圃場における設定 pH を行わない対照区を除染区の両脇に設定した。基肥施肥 と実 pH の相違・変動および粘土への影響等を考慮して現 量は窒素・リン酸・カリすべて 10 kg/10a とした(2 反 地試験における目標 pH を 8 ~ 9 とした。 採水し、SS 量および 137 復、ただし除染区内は反復なし) 。 「まいひめ」を 2012 年 一方、ストークス式から算出した土壌粒子の沈降時間 7 月 2 日に移植し、定期的に生育調査を実施した。成熟期 と分級粒子径の関係は図 3 のようになる。約 8μm 以下 に定法により収量調査を実施し、玄米の放射性 Cs 濃度 (134Cs+137Cs)を測定した。 ① レーザーレベルセンサー付き トラクターによる土壌解砕 ② 水の導入、土壌撹拌 ③ ポンプによる濁水の排水 ④ 濁水の貯留、凝集剤添加に よる粘土の沈殿 ⑤ 加圧ろ過装置(写真矢印の装置) による水と粘土の分離 ⑥ 排出された粘土 図 4 現地試験の工程 78 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 1.80nm 1.02nm 0.72nm 1.43nm 0 K-550 Zeta potential (mV) K-300 K-Air Mg-Gly Mg-Air -10 -20 -30 -40 -50 2 4 6 8 10 12 14 5 6 7 2θ Cu Kα 図 1 X 線回折による土壌中の粘土鉱物の同定 土壌粒子径 (μm) 120 d= 100 18η h g(ρs-ρ1) 80 d :粒子径(m) 60 ρs:粒子の密度(kg m-3) 40 ρl :水の密度(kg m-3) 20 η :水の粘度係数(Pa s) 0 5 10 15 20 25 30 9 10 11 図 2 土壌懸濁液 pH とゼータポテンシャルの関係 140 0 8 pH 16 35 沈降時間(min) 表 1 土壌懸濁液 pH と土壌分散率 の関係 pH 分散率 標準偏差 6 100.0 1.05 7 172.4 0.00 8 180.0 0.10 9 191.3 0.18 10 192.7 0.21 pH:土壌懸濁液の pH 分散率:pH6 の土壌懸濁物質量を 100 とした 時の相対値 図 3 土壌粒子の沈降時間と分級粒子径の関係 (ストークス式から算出:理論値) (シルトの一部と粘土画分) の粒子を分別して排出するた 深 さ 30 cm ま で の 土 壌 を 対 象 に 算 出 し た 137Cs 低 減 量 め、現地試験では土壌撹拌終了後 5 分を目安に懸濁液の 31.3 MBq とほぼ一致し、圃場における 137Cs 収支の整合 排出を開始し、30 分以内に排出完了することを目標とし 性を確認した。粘土を凝集処理した上澄み排水および、 た。 凝集粘土をフィルタープレスで脱水した排水中の放射性 現地試験の状況を図 4 に示す。現地試験の結果、試験 圃 場 に お け る 地 上 1 m の 空 間 線 量 率 は、 除 染 前 の -1 -1 1.77 μSv h から除染後の 1.24 μSv h に減少、低減率 は 30.1%となった。土壌中の Cs 放射能濃度(土壌深 0 137 ~ 15 cm の総計)は 3.06 kBq kg -1 た。 一般的に農耕地は工場跡地などと比べ細粒の粘土 、シルト画分(2 ~ 20 μm)を多く含むた (2 μm 未満) に め、微粒子の分離が難しい場合が多い。黒ボク土以外の 減少、低減率は 61.7%に達した。放射性 Cs 由来の放射能 土壌では、強熱減量で推定される有機物含量と粘土分散 が検出されなくなる深さ 30 cm までの土壌を対象に算出 率に相関が認められ、土壌の腐植物質による分散抑制が Cs 低減量は、試験区(約 100 m )全体で 31.3 MBq 示唆される(赤江ら , 2002)。黒ボク土では粒子間架橋に である。撹拌排水処理 4 回で試験区から 3.05 t の SS が排 よる強い凝集体の形成が示され(久保田 , 1976)、強固で 出された。これは容積重を 1 とした場合、約 3 cm の土厚 安定な団粒構造の階層性が明らかとなっている(Asano Cs 放射能濃度から算出 。従って、黒ボク土などの腐植を多く and Wagai, 2014) Cs 排出量は 34.9 MBq で、上記の 含む土壌では粒子を完全分散させることが困難と推察さ した 137 2 に相当する。排出 SS 量と SS の した試験区当たりの から 1.17 kBq kg -1 セシウム濃度は、検出下限以下(1 Bq L-1 以下)となっ 137 137 牧野知之ら:水を用いた土壌撹拌 - 吸引排水法による水田からの放射性セシウム除去技術の開発 79 れ、水による土壌撹拌・除去を適用するには凝集体の凝 technology, Soil washing / soilflushing, American 集構造を壊し、分散させることが重要となる。 academy of environmental engineers 水稲栽培では茎数・穂数や草丈・稈長は除染区がやや 4) 伊藤健一・宮原秀隆・氏家 享・武島俊達・横山信 劣り、穂長は除染区が有意に短くなった。玄米収量は対 吾・中田弘太郎・永野哲志・佐藤 努・八田珠郎・ 照 区 6.35 t ha- に 対 し、 除 染 区 で は 15% 減 収 し 5.39 t 山田裕久(2012):湿式分級洗浄および天然鉱物等 ha-1 となった。玄米中の放射性Cs濃度は対照区 40 Bq kg による農地土壌等に含まれる放射性セシウム除去方 -1 法の実践的検討 . 日本原子力学会和文論文誌 , 11, 1 -1 に比べ、除染区で 17 Bq kg と 58%低減し、土壌から 水稲への放射性 Cs の移行低減に効果が認められた。(太 255-271 5) 日本原子力技術協会(2012):福島環境修復有識者 田ら、2013)。 なお、本法は、撹拌深度を調整することで耕起済みの 検討委員会による除染技術等の調査検討 , Ⅱ土壌修 復技術 , p. 11-14 水田に適用可能である。 6) 環境省 2013. 除染関係ガイドライン. http://josen. Ⅳ 結論 env.go.jp/material/ 7)久保田徹(1976):火山灰土壌の界面化学的研究 , 農 表土の削り取りや反転耕では除染が困難な農地のう ち、水田において「水による土壌撹拌・除去技術」によ り除染したときの放射性Cs濃度等の低減効果について、 実証試験を行った。この実証試験では、①土壌中の放射 性 Cs 濃度は除染前の 38%に低減した。②生産された玄 米中の放射性Cs濃度も、除染を行っていない水田で生産 された玄米の 42%に低減した。 技研報告 B-28, 1-74 8) 農林水産省(2014):農林水産統計平成 26 年耕地面 積 http://www.maf f.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/ menseki/index.html 9) 環境省(2014) :除染技術探索サイト . https://www2. env.go.jp/ 水による土壌撹拌・除去は、除染関係ガイドライン(環 10)Maki, A. and Wagai R.(2014):Evidence of aggregate 境省 , 2013)や農地除染対策の技術書概要(農林水産省 , hierarchy at micro- to submicron scales in an 2013)に除染法の一つとして記載されている。 allophanic Andisol. Geoderma, 216, 62-74 11)Makino, T., Kamiya, H. Takano, T. Ito, N. Sekiya, 謝 辞 K. Sasaki, Y. Maejima and K. Sugahara( 2007 ): Remediation of cadmium-contaminated paddy soils 本研究は農林水産省委託プロジェクト・農地・森林等 の放射性物質の除去・低減技術の開発・高濃度汚染地域 by washing with calcium chloride: verification of onsite washing. Environ. Pollut. 147, 112-9 における農地土壌除染技術体系の確立(農地の物理的除 12)Makino, T., H. Takano, T. Kamiya, T. Ito, N. Sekiya, 染技術体系の確立)の研究助成を受けた。記して感謝す M. Inahara and Y. Sakurai(2008):Restoration of る。 cadmium-contaminated paddy soils by washing with ferric chloride: Cd extraction mechanism and bench- 引用文献 scale verification. Chemosphere 70, 1035-43 13)Matsunaga, T., J. Koarashi, M. Atarashi-Andoh, 文 献 S. Nagao, T. Sato, and H. Nagai(2013):Comparison 1) 赤江剛夫・後藤光喜・石黒宗秀(2002):農地土壌 of the vertical distributions of Fukushima nuclear の分散凝集特性とその影響要因について . 219, 357- accident radiocesium in soil before and after the first 364 rainy season with physicochemical and mineralogical 2) Anderson, R., Rasor, E., and Ryn, F. V. (1999):Particle size separation via soil washing to obtain volume reduction. Journal of Hazardous Materials, 66, 89- 98. 3) Anderson, W. C. (1993):Innovative site remediation interpretations, Science of the Total Environment, 447, 301-314 14)溝口 勝(2013):農家自身でできる農地除染法の 開発.三輪睿太郎,宮崎毅,金子真司,坪山良夫, 大谷義一,佐藤睦人,根本圭介,塩沢昌,森敏,中 80 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 尾淳,宮下清貴,溝口 勝,松本 聰,大西 隆. 放射能除染の土壌科学 -森・田・畑から家庭菜園 ) ,p. 135-151(財)日 まで- ,(学術会議叢書(20) 本学術協力財団,東京 15)農林水産省(2013):農地除染対策の技術書概要 . http://www.maf f.go.jp/j/nousin/seko/josen/pdf/ gaiyou.pdf 16)奥島修二・塩野隆弘・石田 聡・吉本周平・白谷栄 作・濵田康治・人見忠良・樽屋啓之・今泉眞之・中 :浅代かき強制排水による水田土壌中 達雄(2012) の放射性物質除染法の有効性に関する事前検討 . 土 壌の物理性,121, 43-48 17)椿淳一郎(2013):放射能汚染土壌減容化のキーテ クノロジーは固液分離技術 . 粉体技術,5, 789-793 18)Vovk, I. F., Blagoyev, V. V., Lyashenko, A. N., and Kovalev, I. S(1993): Technical Approaches to Decontamination of Terrestrial Environments in the CIS (former USSR). Science of the Total Environment, 137, 49-63 19)山口紀子・高田裕介・林健太郎・石川 覚・江口定 夫・吉川省子・坂口 敦・朝田 景・牧野知之・赤 :土壌-植物系におけ 羽幾子・平舘俊太郎(2012) る放射性セシウムの挙動とその変動要因 . 農環研 報,31, 75-129 摘 要 土壌撹拌法による放射性セシウム汚染水田の浄化方法 を開発した。本法は、1)水田に水と分散剤を加えて撹 拌、2)土壌懸濁液中に分散した放射性セシウムを多く含 む細かい土壌粒子を排水、3)可搬型の処理装置による排 水処理で構成される。除染により、土壌と玄米中の放射 性セシウム低減率はそれぞれ 62%と 58%となった. 81 農環研報 34, 81-100(2015) 衛星データを使用した2011年の福島県における 農地の土地被覆状況把握 The understanding of land cover situation on the farmland in 2011 using satellite data at Fukushima 石塚直樹* (平成26 年12月2日受理) Synopsis: In this study, I tried the understanding of the environment state of the farmland in Fukushima and neighbor prefectures in 2011 to contribute to an evaluation of the radioactive substance pollution of the farmland by the accident of Fukushima daiichi nuclear power plant which occurred with East Japan great earthquake disaster of March 11, 2011 with a satellite remote sensing technology. At first I was done interpretation of the paddy fields approximately one month after the accident by using an optical high resolution satellite image. I could interpret the state of rice straw, tilling and difference of water condition, Using large scale satellite image of 50cm high spatial resolution used. In addition, I estimated timings of the tilling and rice strawusing ALOS images just after the accident and SPOT-5 image in the summer. Next, I carried out GIS analysis using DEM data. Paddy fields where fit condition, for example distance from forest and the slope, were distinguished. On the other hand, I detected the water logging paddy fields from satellite images in 2011 to use the fields for a soil pollution evaluation with the radioactive substances in NIAES. Water logging paddy fields distinguished and mapped approximately 3,200,000 over agricultural parcels at Fukushima, Ibaraki, Tochigi and Gunma prefecture. Overall accuracy of detection is 77.0% (n=2,597), Producer's accuracy is 89.6% . It is consider that the accuracy reduced by influence of East Japan earthquake disaster, the accident at Fukushima daiichi nuclear power plant. Result and accuracy is good and enough for purpose. This result was used as one of the input data for the making of the radioactive substance pollution density distribution map in the farmland soil. * 生態系計測研究領域 82 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) Ⅰ まえがき するための湛水圃場把握は、福島県および隣接する宮 城、栃木、茨城、群馬県のほぼ全域を対象とした。今回 2011 年 3 月 11 日の東日本大震災にともない発生した マップ化したのは湛水圃場であるため、厳密には 2011 福島第一原発の事故により、放射性物質による汚染が福 年産の水稲作付圃場とは同じではない。しかし、田と畑 島県を中心に広範囲に発生した。国は 2011 年産の水稲の における地表面状態の最大の違いは湛水であり、空間線 作付けについて、収穫される玄米が当時の食品の暫定規 量計測値に最も影響を与えると考えられる。さらに、田 制値 500 Bq/kg を超えないよう、土壌の放射性セシウム における水稲以外の湛水作物(ハス、マコモなど)や調 濃度 5,000 Bq/kg を基準とした作付制限を実施した。さ 整水田の面積は全体からすればわずかなものであるた らに福島県は、収穫後のコメのサンプル調査結果にもと め、無視できるものと考えた。 づき、2011 年 10 月 12 日に安全宣言を行った。しかし、 2011 年 11 月 16 日、福島市の大波地区で収穫されたコメ 2 使用したデータ から、国の暫定規制値を上回る濃度の放射性セシウムが 暫定規制値超えの圃場の環境把握に関しては、圃場 1 検出されたとの発表が行われ、その後、暫定規制値超の 筆単位での評価が必要なこと、さらに中山間地域の狭小 玄米が次々と発見された。そこで、本研究では暫定規制 な水田が多いことから、空間分解能に優れた光学高分解 値超のコメが生産された圃場を中心に、2011 年の福島 能衛星画像を利用することとした。しかし、東日本大震 県における農地の土地被覆状況の把握を、衛星リモート 災の発生以来、津波による沿岸被害および福島第一原発 センシングを使用して試みた。 に注目が集まり、多くの衛星が太平洋沿岸域の観測を 放射性物質による土壌汚染を広域で評価する作業が 行ったため、今回対象とする内陸域の観測が非常に少な (独)農業環境技術研究所で行われ、航空機観測による空 くなっていた。そのような状況の中、米国 GeoEye 社の 間線量マップをもとに土壌汚染を推定する方法がとられ GeoEye-1 衛星が 2011 年 4 月 10 日に対象地域の観測を た。その際、田と畑では土地被覆状態・農地環境が大き 。 行っており、データを購入し利用した。(図 1) く異なるため、区分分けを行う必要がある。しかし、現 また、空間分解能は不十分であるが、地震発生直後の 在、日本の田の約 1/3 は転作・耕作放棄などにより水稲 状況を知るために、2011 年 3 月 12 日に観測した日本の が作付けされていない。さらに、個々の農家が自分の圃 ALOS 衛星(Advanced Land Observing Satellite(陸域観 場内でコムギ・ダイズ等の転作作物を作付けしている場 測技術衛星「だいち」))の AVNIR-2(the Advanced Visible 合や、集落単位でブロックローテーションが行われる地 and Near Infrared Radiometer type 2(高性能可視近赤外 域もあるため、水稲作付地の分布は毎年変化している。 放射計 2 型))および PRISM(the Panchromatic Remote- そこで、広域の農地土壌の放射性物質汚染評価(高田 , sensing Instrument for Stereo Mapping(パンクロマチッ 2011)に利用するため、福島県および隣接県における 。その後、 ク立体視センサ) )データを利用した(図 2) 2011 年度産の水稲作付が行われたと考えられる湛水圃 ALOS が運用停止したため、夏季の状況を把握するため 場を衛星画像から検出し、分布状態の把握を行った。 の画像として ALOS 同様の空間分解能を持つフランスの 衛星 SPOT-5 の画像を利用した(図 3)。利用した光学衛 Ⅱ 調査・研究方法 星の諸元を表 1 に示す。 一方、広域の湛水圃場の把握には、農林水産省の事業 1 対象地域 において水稲作付地判別で実績のある(農林水産省 対象地域は、圃場の土地被覆状態の把握については、 2010)、 全 天 候 型 の 合 成 開 口 レ ー ダ ー(Synthetic 暫定規制値を超えた放射性セシウム濃度の玄米が発見さ Aperture Radar:SAR)を利用した。利用した SAR 衛星 れた福島市を中心とした地域である。放射性セシウム濃 の諸元を表 2 に示す。 度が暫定規制値を超えた対象圃場は、農林水産省生産局 衛星データの前処理および地形解析において、国土地 より情報提供されたものである。ただし、収穫されたコ 理院の提供している数値標高モデル(Digital Elevation メは農家によっては混合された状態であるため、生産圃 Model:DEM)である「10 m メッシュ(標高)」を利用 場 1 筆と玄米中の放射性セシウム濃度との対応はついて した。また、衛星データと組み合わせて解析を行うため、 いない。 DEM 以外にも様々な地理情報システム(GIS)データを 一方、広域の放射性物質による土壌汚染把握の資料と 利用した。一覧を表 3 に示す。圃場耕区ポリゴンは、一 83 石塚直樹:衛星データを使用した 2011 年の福島県における農地の土地被覆状況把握 ©GeoEye distribution JSI 図 1 GeoEye-1 画像(パンシャープン済み) 2011 年 4 月 10 日観測 (R:G:B=赤:緑:青) 対象地の一部(福島市東部) 。 ©JAXA distribution RESTEC 図 2 ALOS/AVNIR-2+PRISM パンシャープン画像 2011 年 3 月 12 日観測 (R:G:B=赤:緑:青) 福島県中通り地域。画像中程にある暗い丸は猪苗 代湖。 表 1 使用した光学衛星データの諸元 空間 分解能 衛星 / センサ バンド GeoEye-1 モノクロ カラー(近赤外、赤、緑、青) 0.5 m 2011/4/10 2m ALOS/PRISM ALOS/AVNIR-2 モノクロ カラー(近赤外、赤、緑、青) 2.5 m 2011/3/12 10 m SPOT-5 撮影日 モノクロ 2.5 m 2011/7/16 カラー(中間赤外、近赤外、緑、青) 10 m 表 2 使用した SAR 衛星データの諸元 衛星 includes material ©CNES (2011),Distribution Spot Image S.A., France, all rights reserved 図 3 SPOT-5 画像(パンシャープン済み) 2011 年 7 月 16 日観測 (R:G:B=近赤外:赤:緑) 福島県中通り地域北部。中央の白っぽい所が福島 市の市街地。 バンド RADARSAT-2 C バンド 空間分解能 観測日 対象地 宮城 2011年6月7日 15.2~8.2 m×7.7 m 2011年6月9日 茨城・栃木 (Wide Fine Mode)2011年6月19日 福島 2011年6月26日 群馬・栃木 84 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 表 3 利用した GIS データの諸元 データ データ提供元 10m メッシュ(標高) 国土地理院 国土地理院 国土地理院 農業環境技術研究所 農業環境技術研究所 福島県土連 茨城県土連 栃木県土連 群馬県土連 千葉県土連 道路縁 市町村境界 農業的土地利用 土壌 Cs 濃度マップ 圃場耕区ポリゴン 圃場耕区ポリゴン 圃場耕区ポリゴン 圃場耕区ポリゴン 圃場耕区ポリゴン 筆ごとのすべての農地圃場を地理座標付きのポリゴン 備考 縮尺レベル25000 縮尺レベル25000 デジタル土壌図で公開のもの 整備済み市町村のみ(1,753,658ポリゴン) 整備済み市町村のみ(1,210,460ポリゴン) 田のみ(478,380ポリゴン) 整備済み市町村のみ(741,655ポリゴン) 整備済み市町村のみ(749,999ポリゴン) 面状態について画像判読を行った。 (多角形)として GIS データ化しているものであり、各県 この判読作業を実施した後、暫定規制値超え玄米の発 土地改良事業団体連合会(県土連)から貸与を受けた。 生についてさらに多くの要因からなることが判明し、稲 また、SAR 画像を用いた湛水圃場抽出には、農林水産省 藁と玄米濃度との関係のみから読み解くことは困難と 大臣官房統計部が 2009 年度~ 2010 年度に行った「水稲 なった。そこで、衛星画像から判読可能なその他の要素 作付面積調査における衛星画像活用事業」において開発 について検討を行った。 した「水稲作付地判別・面積求積システム」の貸与を受 け、利用した。 一方、広域の湛水圃場の把握は、農林水産省大臣官房 統計部によって開発された「水稲作付地判別・面積求積 システム」を用いて湛水圃場を抽出した。 3 方法 (1) 全体の流れ なお、一連の処理に以下のソフトウェアを使用した。 汎 用 リ モ ー ト セ ン シ ン グ 画 像 処 理 と し て、TNTmips 放射性物質による農地土壌汚染の評価に資する情報を (Microimages 社)と ERDAS IMAGINE(ERDAS 社)を、 広域にわたって把握することを目的として本研究を実施 SAR 画像データ処理として、The Next Generation SAR したが、コメの放射性物質汚染対策に対応した研究のた Toolbox(NEST(ヨーロッパ宇宙機関 (ESA))を使用し、 め、一貫した研究方針で実施したのではなく、放射性物 また GIS 関連については ArcGIS(ESRI 社)を使用した。 質汚染の実態把握の進展と共に研究内容が変化した。 暫定規制値超えの圃場の環境要因として、暫定規制値 (2) 谷津圃場の抽出 超の玄米が発見された当初には、この事象は谷津田のよ 国土地理院の 1 ピクセルサイズが 10 m の DEM を用い うな水の集まるところで、かつ林地に接しているような て、簡易的な谷津圃場の抽出を試みた。具体的には、 圃場で発生すると想定した。そこで、谷津にある圃場(以 DEM データの各ピクセルに対して 8 近傍ピクセルを参 下、谷津圃場と称する)および山からの水が流入する可 照することにより、傾斜度、傾斜方向などを求め、傾斜 能性のある圃場を DEM から抽出した後、土地利用デー 10 度以下の地域を抽出した。続いて抽出した地域に 3× タを重ねることでその中から水田を抽出した。さらに、 3 のウィンドウサイズでクランプと呼ばれるモロホロジ 衛星データから森林域を抽出し、森林域から一定の距離 カル処理を行い、DEM の 3 × 3 ピクセルの塊以下、つま にある圃場を抽出することで、全ての条件の当てはまる り約 45 m 幅以下の谷地形を抽出した。また、傾斜度が 圃場を抽出した。 10 度以上から 10 度以下に変化する地形屈曲地点(点が その後、暫定規制値超えの玄米が次々と発見され、 列状に集合しているため、その多くは線状となってい 様々な調査が進行するにつれ、前述の条件のみで説明で る)の抽出を行った。続いて圃場耕区ポリゴンデータを きないことが明らかとなった。またこの時点で提示され 用い、前述の地形データより抽出された谷地形領域およ た暫定規制値超え玄米が収穫された圃場情報と衛星画像 び地形屈曲地点を含む圃場を谷津圃場として抽出を行っ を比較した際、一定数の圃場で収穫後に耕起されず稲藁 た。 がそのまま残されている圃場と高い関係性が確認された ことから、衛星データを用いて事故発生時の圃場の地表 石塚直樹:衛星データを使用した 2011 年の福島県における農地の土地被覆状況把握 (3) 森林域の抽出と隣接水田の抽出 85 水面で鏡面散乱することを利用しており、基礎的な部分 森林域の抽出には表 1 で示した衛星画像を用いた。ま は、石塚(2006)で報告されている。また、貸与を受け ず前処理として、GeoEye-1 画像は DEM データと RPC たシステム開発には筆者も携わった。2011 年度の湛水圃 (Rational Polynomial Coefficients) モデルデータを用いて 場分布図は、広域の放射性セシウムによる農地土壌汚染 幾何補正を行った。それ以外のALOSおよびSPOT-5 デー マップ作成に利用され、このマップは農林水産省より公 タは圃場耕区ポリゴンに合わせ込む精密幾何補正を行っ 。 表されている(農林水産省,2012) た。 続 い て そ れ ぞ れ の 衛 星 デ ー タ の 4 バ ン ド づ つ を K-means 法(Hartigan, 1979)で 20 項目に教師無し分類 Ⅳ 結果および考察 を行い、画像判読をもとに森林域を抽出した。先に抽出 した谷津圃場および地形屈曲地点の圃場に対して土地利 1 谷津圃場の抽出 用データを重ねて水田のみを対象とし、抽出した森林域 福 島 市 付 近 の 結 果 を 例 と し て 示 す。 国 土 地 理 院 の より 10 m のバッファーを発生させ、谷津および地形屈 10 mDEM から傾斜度を計算し(図 4)、傾斜 10 度未満の 曲点の水田が森林域から 10 m以内か以上かを判定した。 地域を抽出した(図 5)。続いて約 45 m 幅以下の谷、お よび傾斜度が 10 度以上から 10 度未満に変化する地形屈 (4) 稲藁などの地表面状態の判読 曲地点の抽出結果を図 6 に示した。続いてこの結果に圃 GeoEye-1 衛星画像は 50 cm という高い空間分解能を 場耕区ポリゴンデータを重ね合わせ、前述の地形データ 有し、航空写真に近いレベルで画像判読が可能である。 より抽出された領域を含む圃場の抽出を行った(図 7)。 そこで撮影時における稲藁などの農地地表面の状態の判 結果としては、平地部の圃場が抽出されることはなく、 読を行った。判読に用いるため、それぞれの衛星データ 概ね良好な結果といえる。大局的には、ここで抽出され において解像度の高いモノクロ画像と解像度の低いカ た谷津圃場や地形屈曲地点の圃場は周辺の水が流入しや ラー画像を組み合わせ、モノクロ画像の高い解像度に合 すい圃場といえる。ただし、DEM のピクセルサイズが わせ込むパンシャープン画像を作成した。パンシャープ 10 mであるため、圃場レベルでの評価が十分にできてい ン処理の手法としてParisを用いた。その後、農林水産省 るとまでは言えない。また、今回抽出した地形屈曲地点 生産局より提供された放射性セシウム調査圃場の周辺画 (線状) は隣接する傾斜度の差までは考慮していないため、 例えば傾斜 10 度付近の長い斜面なども抽出される可能 像を作成し、情報提供した。 性があり、急激な変化のある地点でない場合もあること (5) 玄米中の放射性セシウム濃度と衛星画像との関係 解析 にも注意が必要である。また、抽出した圃場と後背地と の間に道路や河川がある場合、それらが分水界となって 放射性セシウム濃度が暫定規制値を越えた玄米が収穫 された圃場における衛星画像のピクセル値と、玄米中の 放射性セシウム濃度との間に何らかの関係があるか、解 水が流入する可能性は低くなるが、今回は道路や河川 データを組み込んでいないため、評価されていない。 前述のように、今回解析に利用した DEM のピクセル サイズは 10 m であり、発生している事象に対して十分 析を行った。 な解像度を有しているとは言えない。対象地域の一部に (6) 広域の湛水圃場の抽出 おいて、2012 年 3 月 28 日に 5 m の DEM が国土地理院よ 前 処 理 と し て RADARSAT-2 デ ー タ を NEST に よ り り公開されたため、今後、この DEM を利用することに DEM を用いて地図座標と合わせるオルソ補正を行った より精度向上が図れると考えられる。今回の条件で抽出 後、ピクセル値を後方散乱係数(γ )に変換した。その された圃場数は、福島県全体で全圃場数の約 1/3 となる データと圃場耕区ポリゴンデータを組み合わせ、 「水稲 約 55 万筆となった。数値のみを見ると過大抽出かと思わ 作付地判別・面積求積システム」を用いて湛水か否かを れるが、この結果には中山間地域の圃場は一筆が小さい 判定した後、当時の避難区域(避難指示区域、計画的避 ため数が多くなることが影響している。 0 難区域等)にマスク処理を行うことで 2011 年度の湛水圃 場分布図を作成した。対象領域における宮城県を除く 4 2 森林域と隣接水田の抽出 県の合計で 320 万筆以上の農地を対象に湛水判別を行っ ここでは森林域の抽出が目的であるため、それ以外の た。なお、湛水圃場の抽出方法は、SAR のマイクロ波が カテゴリー分けを考慮せずに処理を行った。GeoEye-1 画 86 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 傾斜度(度) 50 0 図 4 DEM データより計算された傾斜度 (福島市東部) 図 5 傾斜度 10 度未満の地域 (10 度未満:白、10 度以上:黒) 圃 場 谷津圃場 および 地形屈曲地点 周辺の圃場 非圃場 図 6 抽出された幅約 45 m 以下の谷および 傾斜 10 度の屈曲地点(白) 図 7 抽出された谷津圃場および傾斜の地形屈曲地点周 辺の圃場(オレンジ色) 森林 タイプ 1 森林 タイプ A 森林 タイプ 2 森林 タイプ B 森林 タイプ 3 森林 タイプ C 森林 タイプ 4 森林 タイプ D or 水稲 圃場 タイプ 1 裸地 or 雲 圃場 タイプ 2 圃場 タイプ A 圃場 タイプ 3 圃場 タイプ B 図 8 GeoEye-1 画像による森林域抽出のための分類結果 (2011 年 4 月 10 日観測) 図 9 SPOT-5 画像による森林域抽出のための分類結果 (2011 年 7 月 16 日観測) 87 石塚直樹:衛星データを使用した 2011 年の福島県における農地の土地被覆状況把握 像の土地被覆分類結果を図 8 に示した。GeoEye-1 画像は ると推定される。 パンシャープン画像で 50 cm と解像度が高いため、森林 今後、広葉樹の落葉期と緑葉期の衛星の結果を組み合 域のテクスチャを判読することが可能であり、専門家で わせ、現地調査を行うことによって、森林域を針葉樹と あれば森林の樹種判定がある程度可能である。今回、初 広葉樹に分類することは可能である。福島第一原発事故 期の計算結果において森林域を針葉樹、広葉樹などいく により放射性セシウムが沈着した際、針葉樹は葉があっ つかのカテゴリーに分類することが可能であったため、 たのに対し、冬期落葉広葉樹はまだ葉が無かったと考え 森林を一つのカテゴリーとはせず、分けたままにした。 られる。また、両者は秋のリター量も違うため、放射性 ただし、現地調査を行っていないため、カテゴリーが違 セシウムの動態が異なっていると考えられる。このこと うことは衛星から判読できるが、個々のカテゴリーが何 から、今後、森林域の分類についても進める必要がある。 であるかは同定できなかった。図 8 において、緑系統の 先に抽出した谷津圃場および地形屈曲地点の圃場に 色となっている所は森林である。森林以外も 3 つのカテ 「農業的土地利用データ」を重ねて、水田のみを対象と し、今回求められた森林域より 10 m のバッファーを発 ゴリーに区分して茶系統で示した。 一 方、ALOS と SPOT の 画 像 の 場 合、 解 像 度 が パ ン 生させ、対象水田が森林域から 10 m 以上離れているか シャープン処理後で 2.5 m のため、個々の樹木まで判読 どうかを判定した結果を図 11 に示した。図中の灰色部分 することは不可能である。しかし、SPOT-5 画像の分類 は、非圃場であり、森林域などが含まれる。その結果を 結果(図 9)においても森林域が 3 ~ 4 カテゴリーに分類 図 4 の傾斜角と合わせてみると、傾斜の大きい地域の谷 可能であると判断したため、統合せずにそのままとし 津圃場のほとんどは森林域から 10 m 以内に存在してい た。 る(図 11 では赤い圃場)ことがわかった。谷津田は、両 ALOS 画像の分類結果を図 10 に示す。ALOS 画像の空 側を森林域に挟まれた狭幅な谷間の水田であることか 間分解能はSPOT-5 画像と同等であるため、SPOT-5 画像 ら、ほとんどは森林域から 10 m 以内に存在していると の結果のように分類が可能と思われるが、森林域のカテ 判定されたが、解析により地域による差が現れている場 ゴリーを分けることができなかった。これは、① ALOS 所も抽出された。例えば、図 11 中の破線部分は、森林か 画像の撮影が 3 月とまだ植生が活性化する前であるこ ら 10 m 以内でない青色の圃場が多く分布しているのに と、② ALOS 特有のバンド間のズレ(JAXA, 2009)の影 対し、実線部分は森林から 10 m 以内赤色の圃場が占め 響、③画像の半分以上を雪が覆っている(図 2)などが ており、地域性があるといえる。 理由と考えらえる。ただし、今回の森林域抽出という意 今回、森林域から 10 m という距離は衛星のマルチバ 味では十分な結果であり、さらに撮影時期から考える ンドの分解能などから決めた数値である。今後、リター と、広葉樹は落葉しており針葉樹林を中心に抽出してい による影響が及ぶ距離や流入水の影響など放射性セシウ 圃場 谷津圃場 および 地形屈曲地点 周辺の圃場 森林 非森林 森林から 10m 以内にある 谷津田 および 地形屈曲地点 周辺の水田 森林から 10m 以上離れた 谷津田 および 地形屈曲地点 周辺の水田 非圃場 図 10 ALOS 画像による森林域抽出結果 (2011 年 3 月 12 日観測) 図 11 谷津田および傾斜の地形屈曲地点周辺の水田の 森林隣接判定結果 88 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) ムの動態について研究が進めば、それらの成果を基にし チャが圃場 B より薄いことからディスク等で圃場 B より た数値で評価を行うことが可能である。 は細かく耕起されていることがわかる。ALOS画像より、 稲藁が地表面にある色に見えないことから、3 月 12 日時 3 稲藁などの地表面の状況把握 今回、農林水産省生産局より提供された放射性セシウ 点で耕起されていることがわかる。また、SPOT-5 画像 より 2011 年度産水稲作付けが行われたと判読できる。 ム調査圃場について、対象圃場の地表面状況を知るた 圃場 D(図 15)は、GeoEye-1 画像より、収穫後に耕 め、周辺を含めて衛星画像を切り出し、資料として提供 起されていることがわかる一方、ロータリー式砕土機跡 した。各衛星データを用いて、稲藁などの状態がどのよ またはコンバイン跡と思われる幅広い帯状の筋が認めら うになっていたか等の地表面の状況について推察したの れ、稲藁残渣が圃場内にかなりムラのある状態で確認で で、いくつか代表的な例を説明する。 きる。このことから、軽い耕起作業が行われたと考えら なお、全ての衛星画像でパンシャープン処理を行って れる。ALOS 画像からはテクスチャも稲藁も明確に確認 いる。GeoEye-1 と ALOS の画像については、R:G:B に できないことから、細かい状況は不明であるが、周辺圃 それぞれ赤:緑:青のバンドを割り当て、人間が目で見 場との比較から類推すると、3 月 12 日から 4 月 10 日まで る場合と同じ色合いになるカラー合成を行っている。一 の間に何らかの農作業はなかったと思われる。SPOT-5 方、SPOT-5 の画像については、衛星に青のバンドがな の画像において、圃場が乳白色となっており地表面が湛 いため、R:G:B に近赤外:赤:緑のバンドをそれぞれ 水していないことから、2011 年度は水稲の作付けが行 割り当てている。この組み合わせはフォールスカラーと われなかったと判読できる。 呼ばれ、近赤外の反射が高い植生は赤く表示される特徴 図 16 の圃場 E は、GeoEye-1 画像が撮影された時に、 がある。なお、いずれのカラー合成においても水域は光 北東部分に明るい部分があるが、その内側に暗い帯がみ を吸収するため黒く見える。 られ、さらに南西側は少し明るくなっている。人為的な 図 12 に示した圃場 A は、GeoEye-1 画像において稲藁 作用でこのような模様が作られるとは考えにくく、おそ で明るいコンバインの刈り跡が筋上に確認できること らく圃場内にある傾斜によって、このような模様となっ と、稲藁残渣で圃場が乳白色に見えることから、4 月 10 ているものと考えられる。単に乾燥具合の差とも考えら 日時点で昨年の水稲収穫後何もしていない状態と判断で れるが、たとえば、雨などにより、稲藁が北東に吹き寄 きる。3 月 12 日の ALOS 画像より、テクスチャは不明だ せられているなどという状況も考えられ、この画像のみ が、圃場内が乳白色に明るく表示され、稲藁が地表面に から判断するのは困難である。ALOS 画像では、解像度 残っていると判読できることから、3 月 12 日も 4 月 10 日 の関係もあるが、同様の模様は確認できないためこの と同じ状況であり、この 1 ケ月の間に目立った作業は行 1 ヶ月に何らかの農作業が行われたかを判読することは われていないと考えられる。7 月 16 日の SPOT-5 の画像 困難である。SPOT-5 の画像からは、2011 年度産の水稲 を見ると、圃場内が暗くなっており湛水していることが 作付けが行われたと思われるものの、圃場の北と南で色 確認できることから、2011 年度産の水稲作付圃場と判 が違うため、一部分のみ作付けされた(部分的に作付け 読できる。 がされなかった)可能性もある。 図 13 に示した圃場 B は、GeoEye-1 の画像から、圃場 図 17 に示した圃場 F は、GeoEye-1 画像から圃場中央 A とは異なり、全体的に暗く表示され、収穫後に耕起が 付近になんらかのものが集められていることがわかる。 行われていることがわかる。また、筋状のテクスチャも 色情報的には稲藁と思われるが、このように見えるには 見られることから、プラウで粗く起こされていると考え どのような状態で地表面に存在したかまでの判読は難し られる。ALOS 画像では空間分解能の限界から 3 月 12 日 い。一方、それ以外の部分は暗くなっていることから、 時点で耕起されていたかどうか判断が難しいが、暗い色 収穫後に一度耕起されたことがわかる。中央部を避けて になっていることから、圃場 A ほど稲藁が残っていない 耕起作業としたとは考えにくいことから、収穫後、一度 と考えられる。SPOT-5 画像において湛水していること 耕起作業を行った後に圃場中央部に稲藁らしきものが置 から、2011 年度産の水稲作付けは行われたと判読でき かれたと考えられる。また、ALOS 画像においても、同 る。 様に中央付近に明るい部分がみられることから 3 月 12 圃場 C(図 14)は、GeoEye-1 画像から収穫後に耕起さ 日時点において 4 月 10 日撮影の GeoEye-1 で確認された れている状態であることがわかる。また、筋状のテクス 状況と同様の状態になっていたと考えられる。SPOT-5 石塚直樹:衛星データを使用した 2011 年の福島県における農地の土地被覆状況把握 ©GeoEye distribution JSI ©JAXA distribution RESTEC includes material ©CNES (2011), Distribution Spot Image S.A., France, all rights reserved GeoEye-1 2011 年 4 月 10 日 (R:G:B=赤:緑:青) ALOS/AVNIR-2+PRISM 2011 年 3 月 12 日 (R:G:B=赤:緑:青) SPOT-5 2011 年 7 月 16 日 (R:G:B=近赤外:赤:緑) 50m 図 12 圃場 A の衛星画像(パンシャープン済み) ©Geo Eyedistribution JSI ©JAXA distribution RESTEC includes material ©CNES (2011), Distribution Spot Image S.A., France, all rights reserved GeoEye-1 2011 年 4 月 10 日 (R:G:B=赤 : 緑 : 青) ALOS/AVNIR-2+PRISM 2011 年 3 月 12 日 (R:G:B=赤:緑:青) SPOT-5 2011 年 7 月 16 日 (R:G:B=近赤外:赤:緑) 50m 図 13 圃場 B の衛星画像(パンシャープン済み) 89 90 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) ©GeoEye distribution JSI ©JAXA distribution RESTEC includes material ©CNES (2011), Distribution Spot Image S.A., France, all rights reserved GeoEye-1 2011 年 4 月 10 日 (R:G:B=赤:緑:青) ALOS/AVNIR-2+PRISM 2011 年 3 月 12 日 (R:G:B=赤:緑:青) SPOT-5 2011 年 7 月 16 日 (R:G:B=近赤外:赤:緑) 50m 図 14 圃場 C の衛星画像(パンシャープン済み) ©GeoEye distribution JSI ©JAXA distribution RESTEC includes material ©CNES (2011), Distribution Spot Image S.A., France, all rights reserved GeoEye-1 2011 年 4 月 10 日 (R:G:B= 赤 : 緑 : 青) ALOS/AVNIR-2+PRISM 2011 年 3 月 12 日 (R:G:B= 赤 : 緑 : 青) SPOT-5 2011 年 7 月 16 日 (R:G:B= 近赤外 : 赤 : 緑) 50m 図 15 圃場 D の衛星画像(パンシャープン済み) 91 石塚直樹:衛星データを使用した 2011 年の福島県における農地の土地被覆状況把握 ©GeoEye distribution JSI ©JAXA distribution RESTEC includes material ©CNES (2011), Distribution Spot Image S.A., France, all rights reserved GeoEye-1 2011 年 4 月 10 日 (R:G:B=赤:緑:青) ALOS/AVNIR-2+PRISM 2011 年 3 月 12 日 (R:G:B=赤:緑:青) SPOT-5 2011 年 7 月 16 日 (R:G:B=近赤外:赤:緑) 50m 図 16 圃場 E の衛星画像(パンシャープン済み) ©GeoEye distribution JSI ©JAXA distribution RESTEC includes material ©CNES (2011), Distribution Spot Image S.A., France, all rights reserved GeoEye-1 2011 年 4 月 10 日 (R:G:B=赤:緑:青) ALOS/AVNIR-2+PRISM 2011 年 3 月 12 日 (R:G:B=赤:緑:青) SPOT-5 2011 年 7 月 16 日 (R:G:B=近赤外:赤:緑) 50m 図 17 圃場 F の衛星画像(パンシャープン済み) 92 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) の画像からは、2011 年度産の水稲作付けが行われたと 入れが行われた跡と判読できる。これは、圃場が暗く見 考えられる。 えることと、それぞれの圃場の南西部分に、乳白色の稲 図 18 に示した圃場 G は、GeoEye-1 画像の取得時には 藁が残っていることから、湛水によるものでなく、刈り 耕起されていることがわかる。圃場北西部分が暗めに見 株を焼いたものおよび焼け残りと判断できるためであ えるのは、その部分の稲藁残渣が少ないか、水分が多い る。3 月 12 日の ALOS 画像では火が入れられた様子がな と考えられる。また、集めた稲藁を燃やして黒くなって いことから、3 月 12 日から 4 月 10 日の間に行われたと考 いること等も否定できない。3 月 12 日の ALOS 画像では えられる。またこのことは、収穫後から 3 月 12 日までに 圃場全体に稲藁が残されているように見える。ALOS の 耕起が行われていないということも示唆している。圃場 分解能では刈跡などを確認できないため、収穫後そのま J、K ともに、SPOT-5 画像から 2011 年度産の水稲作付け まの状態であるのか、耕起しているが稲藁が全面に多く が行われたと考えられる。 残されている状態であるのが、判読不能である。SPOT-5 続いて、図 11 において赤で示された、地形屈曲点周辺 の画像において湛水状態の特徴を示していないことか や森林から 10 m 以内にある狭い谷の谷津圃場がほとん ら、この圃場では 2011 年産の水稲は生産されていない どとなるような中山間地域の例として、図 21 を示し ことがわかる。 た。中山間地域になると、ALOS画像やSPOT-5 画像の解 圃場 H(図 19)は、GeoEye-1 画像より耕起作業が行 像度では判読が困難となる。圃場群Aは、GeoEye-1 の画 われていることがわかる。筋状のテクスチャが確認でき 像より、4 月 10 日時点で、南端の一部の圃場を除き、耕 ることからプラウ等で粗めに耕起されていると思われ 起されていることがわかる。ALOS 画像においても暗く る。また、圃場左端部分に稲藁と思われるものが確認で 見えることから稲藁はほとんどなく、SPOT-5 画像よ きる。ALOS 画像においても圃場 H は周囲の圃場より暗 り、2011 年度産の作付けも行われたと考えられる。圃場 く見え、且つ、圃場左端部分の稲藁も確認できることか 群 B もほぼ圃場群 A と同じ状態であると思われる。 ら、3 月 12 日時点で耕起作業は完了しており、4 月 10 日 圃場群 C は、GeoEye-1 画像のテクスチャや、ALOS、 までの間に何の作業も行われなかったと思われる。 SPOT-5 画像での変化を加味すると、耕作放棄地と考え SPOT-5 画像より、2011 年度産の水稲作付けが行われた られる。耕作圃場に隣接する不攪乱の耕作放棄地も、森 と考えられる。 林域同様に放射性セシウムの負荷源となる可能性がある 圃場 I(図 19)は、GeoEye-1 画像より耕起作業が行わ ことから、福島第一原発事故の時点で耕作放棄されてい れたと判読できる。圃場の長手方向北側に沿って筋状に たか否かといった情報について、今後マッピングやモニ 稲藁の集合が認められる。これは、稲藁の畜産利用のた タリングが必要になる可能性がある。 めに人為的に集められていると考えられる。圃場 G 同様 圃場群 D は畑地であると思われるが、3 月 12 日、4 月 に、3 月 12 日の ALOS 画像では圃場全体に稲藁が残され 10 日に確認できなかった施設が、7 月 16 日の SPOT-5 画 ているように見える。ALOS の分解能では刈跡などを確 像では確認できる。農業施設と考えられるが、原発事故 認できないため、収穫後そのままの状態であるのか、耕 当時、地表面は曝露されていたと言える。 起した後に、全面に稲藁残渣が多く残されている状態な さらにここでは、圃場以外の部分、森林にも注目して のかは不明である。しかしながら耕起後全面に稲藁が み る。 森 林 域 の 抽 出 の 項 で も 触 れ た が、 図 21 の 残っている可能性は低く、3 月 12 日の時点では収穫後そ GeoEye-1 画像では林相を判読することが可能である。 のままであった可能性が高い。 ABC 圃場群の西側は樹冠が確認できることから針葉樹 圃場 G,H,I を比較すると、圃場 H では GeoEye-1 の画像 であることがわかる。一方、東側は樹冠がそれほど多く と ALOS 画像で色の変化があまりないのに対し、圃場 G 確認できず、4 月 10 日では緑葉の展開前のように見える および圃場 I では GeoEye-1 の画像と ALOS の画像で大き ことから広葉樹が主体であることがわかる。また、北東 く変化していることから、3 月 12 日から 4 月 10 日の間に 部には針葉樹があり、東南部には四角に伐採された跡が 何らかの作業が行われたと考えられる。さらに、圃場Iに 認められる。ALOS画像では、林班は確認できるものの、 ついては、その作業後に畜産利用のため稲藁が並べられ ABC 圃場群の東西での違いはほとんど確認できない。 た可能性が高い。SPOT-5 画像より、2011 年度産の水稲 SPOT-5 画像は季節が夏であり、針葉樹も広葉樹も葉が 作付けが行われたと考えられる。 あるため、いずれも近赤外が強く(赤く)なっている。 図 20 に示した圃場 J、K は、GeoEye-1 画像において火 しかし、GeoEye-1 画像と見比べてみると、針葉樹と広葉 石塚直樹:衛星データを使用した 2011 年の福島県における農地の土地被覆状況把握 93 ©JAXA distribution RESTEC ©GeoEye distribution JSI GeoEye-1 2011 年 4 月 10 日 (R:G:B=赤:緑:青) ALOS/AVNIR-2+PRISM 2011 年 3 月 12 日 (R:G:B=赤:緑:青) 50m includes material ©CNES (2011), Distribution Spot Image S.A., France, all rights reserved SPOT-5 2011 年 7 月 16 日 (R:G:B=近赤外:赤:緑) 図 18 圃場 G の衛星画像(パンシャープン済み) 樹の違いがあると思われる部分で色が若干違っている。 ただし、森林の場合、樹種の違いのみでなく、斜面方位 4 玄米中の放射性セシウム濃度と衛星画像との関係解 析 の違いなども色調の違いに影響するため 1 対 1 で対応す 玄米への放射性セシウムの移行メカニズムは当初考え るわけではない。また、草が繁茂するため、作業跡の林 られていたものよりかなり複雑であり、現時点ではまだ 班との差が小さくなっていることも判読できる。今後、 明らかになっていない。当初想定されていた隣接する森 水やリターを介した森林から農地への放射性セシウムの 林からの移入なども、玄米への移行が高まる要因の一つ 移入について明らかになった場合、谷の東側の圃場と西 として考えられるが、これだけで今回の事象を説明でき 側の圃場では影響の受け方が変わる可能性があることか ないことも明らかになってきている。現在検討が進めら ら、このようなデータを取得・整備しておくことも重要 れている要因としては、土壌中のカリウム含量、根張り である。 および作土深など衛星データから直接読み取れない要因 へ移ってきている。玄米中の放射性セシウム濃度の最高 値と、圃場の GeoEye-1 衛星データ観測値について近赤 外波長や植生指数などとの比較を行ったが、明確な関係 94 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) H I GeoEye-1 2011 年 4 月 10 日 (R:G:B=赤:緑:青) ©GeoEye distribution JSI ALOS/AVNIR-2+PRISM 2011 年 3 月 12 日 (R:G:B=赤:緑:青) ©JAXA distribution RESTEC SPOT-5 2011 年 7 月 16 日 (R:G:B=近赤外:赤:緑) includes material ©CNES (2011), Distribution Spot Image S.A., France, all rights reserved 図 19 圃場 H、圃場 I の衛星画像(パンシャープン済み) 50m 石塚直樹:衛星データを使用した 2011 年の福島県における農地の土地被覆状況把握 J K ©GeoEye distribution JSI ©JAXA distribution RESTEC GeoEye-1 2011 年 4 月 10 日 (R:G:B=赤:緑:青) ALOS/AVNIR-2+PRISM 2011 年 3 月 12 日 (R:G:B=赤:緑:青) 50m includes material ©CNES (2011), Distribution Spot Image S.A., France, all rights reserved SPOT-5 2011 年 7 月 16 日 (R:G:B=近赤外:赤:緑) 図 20 圃場 J、圃場 K の衛星画像(パンシャープン済み) 95 96 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) D C A B ©JAXA distribution RESTEC ©GeoEye distribution JSI ALOS/AVNIR-2+PRISM 2011 年 3 月 12 日 (R:G:B=赤:緑:青) GeoEye-1 2011 年 4 月 10 日 (R:G:B=赤:緑:青) includes material ©CNES (2011),Distribution Spot Image S.A., France, all rights reserved SPOT-5 2011 年 7 月 16 日 (R:G:B=近赤外:赤:緑) 図 21 地域(3)の衛星画像(パンシャープン済み) 97 石塚直樹:衛星データを使用した 2011 年の福島県における農地の土地被覆状況把握 が見られたものはほとんど無かった。例として、近赤外 要因が複合的に作用していると考えられ、水分条件また 波長の DN(Digital Number)と玄米中の放射性セシウム は土壌のいずれかの条件を整えなければ統計的に有意な 濃度の最高値との散布図を図 22 に示す。 相関までは見られないと思われる。要因を分離するだけ 様々な波長について関係性を検討した結果、統計的に のデータがないためこれ以上の解析はできないが、圃場 有意な数値は得られなかったものの、現在考えられてい における観測時の水分状態や土壌特性の違い、耕起具合 る要因を説明する結果が一つだけ見られた。図 23 は、土 など様々な要因によって圃場間の差が発生し、赤の波長 地被覆分類の結果、稲藁が集められたりした形跡が見ら において最も差が現れたのではないかと考えられる。 れなかった裸地および収穫後不耕起のままの水田とされ た圃場について、赤の波長の DN と玄米中の放射性セシ 5 広域の湛水圃場把握 ウム濃度の最高値をプロットした図である。この図にお 図 24B に示したのは、福島県の須賀川市、天栄村付近 いて、暫定規制値を超える玄米が収穫されたような圃場 の分類結果の拡大図である。赤色が主に水稲の作付けに は、2011 年 4 月 10 日に撮影された GeoEye-1 画像におい よって湛水した圃場、黄色が畑地・樹園地・草地そして て赤の波長の反射が低くなっていた。圃場の土壌自体の 生産調整によって湛水されなかった圃場を示す。A の 反射に差がないとした場合、反射が小さいほど水分が多 SAR 画像と比較すると、SAR 画像の暗い部分が赤い部分 いことになるため、暫定規制値超えの玄米が収穫された にほぼ対応しており、精度良く湛水地と非湛水地を判別 ような圃場は水分が多かったことになる。アメダスデー できている。また、中央部には黄色い非湛水地の塊(破 タによると、前日の 2011 年 4 月 9 日に福島市で 5.5 mm、 線部分)が確認できるが、圃場耕区ポリゴンが存在して 飯舘で 7.5 mmの降水を観測している。この降水によって いることから何らかの農地である一方、湛水はしていな 圃場がどの程度水分を含んだかが、赤の波長の反射の差 い農地と判別できている。広域で把握した湛水圃場全体 となって見えていると考えられる。これは圃場内のムラ を図 25 に示した。ここでは見やすさを考慮し湛水圃場の として見られる場合もあり、その一例は図 16 の圃場 E に みを赤で示した。 おいて見られる。ただし、実際には降雨は均一でなく、 茨城、栃木や群馬で行った現地調査のデータおよび土 土壌の違いも存在しているはずであり、この現象は水分 壌サンプリング時に記録された福島県の作付情報を用い の違いのみではなく、土壌の違いも加味されていると考 て精度検証を行ったところ、サンプル数 2,597 圃場で えられる。土壌の有機物が多い場合、黒ボク土にみられ SAR データにより正しく湛水および非湛水と分類された るように暗い色になり、酸化鉄が多ければ赤が強くな 割合のOverall accuracy(総合分類精度)は 77.0%、SARに る。したがって、水分条件が一定と仮定するならば、暫 より正しく湛水地と分類されたサンプルと実際の湛水地 定基制値を超えたような水田の土壌は、衛星から見て赤 サンプルの割合である Producer's accuracy(作成者精度) の波長の反射の小さい土壌ということになる。このこと のみを見ると 89.6%という数字が得られた。県別にみる は、先に示した図 22 において近赤外波長との間に明ら と、福島県の精度が最も低く、Overall accuracy は 68.1% かな関係が見られなかったことも、水分のみの影響でな となった。福島県の精度が最も低くなったのは、福島第 いことを裏付けている。したがって、実際にはこれらの 一原発事故の影響により、各農家が当該年度に作付けを 1400 1400 1200 y=-0.091 x+639.547 R²=0.014 1000 800 600 1000 800 600 400 400 y=-0.242 x+972.333 R2=0.267 200 200 0 赤波長のDN 近赤外波長のDN 1200 0 0 200 400 600 800 1000 1200 玄米中の放射性セシウム濃度(Bq/kg) 1400 図 22 GeoEye-1 画像の近赤外波長の DN と玄米中の放 射性セシウム濃度の最高値 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 玄米中の放射性セシウム濃度(Bq/kg) 図 23 GeoEye-1 画像の赤波長の DN と玄米中の放射性 セシウム濃度の最高値 98 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 湛水地 非湛水地 RADARSAT-2 Data and Products (c)MacDONALD, DETTWILER AND ASSOCIATES LTD. 2011- All Rights Reserved A)RADARSAT-2 画像 (2011 年 6 月 19 日観測) B)湛水地・非湛水地の分類結果 図 24 福島県須賀川市、天栄村付近における湛水地・非湛水地の分類結果例 湛水地 RADARSAT-2 Data and Products (c) MacDONALD, DETTWILER AND ASSOCIATES LTD. 2011- All Rights Reserved 図 25 広域の湛水地検出結果 石塚直樹:衛星データを使用した 2011 年の福島県における農地の土地被覆状況把握 99 謝 辞 してよいかどうかの判断に迷い、例年どおりに作業を行 う農家と、育苗~移植までの作業が遅くなる農家があ り、作付時期が大きく分散したためと考えられる。全体 農林水産省大臣官房統計部が「水稲作付面積調査にお 的には、2011 年度は東日本震災・福島第一原発事故の影 ける衛星画像活用事業」で開発した「水稲作付地判別・ 響などがあったことも加味して判断すると、満足できる 面積求積システム」によって、膨大な量の作業を効率良 高い制度であると言える。 く処理することができた。また、福島県、茨城県、栃木 県、群馬県、千葉県の各土地改良事業団体連合会には、 Ⅳ むすび 水土里情報の提供を受けた。ここに謝意を表す。 引用・参考文献 本研究では、衛星リモートセンシング技術を用い、 2011 年 3 月 11 日の東日本大震災にともない発生した福 島第一原発の事故による農地の放射性物質汚染の評価に 1) 石塚直樹 (2006):水稲作付面積計測への合成開口 資するため、2011 年の福島県および隣接県における農 レーダ (SAR) の利用 . 農業環境技術研究所報告 , 24, 地の環境状態の把握を試みた。 95-151 まず、光学高分解能衛星画像を用いることで、事故後 2) Hartigan, J. A. and Wong, M. A. (1979).“Algorithm AS 約 1 ヶ月を経た農地の地表面状態を判読した。解像度が 136:A K-Means Clustering Algorithm". Journal of the 50cm と高い衛星画像を用いたため、耕起の状態や稲藁 Royal Statistical Society, Series C 28 (1). pp.100-108 の存在、水分ムラなどを判読できた。また、事故直後に 3) JAXA(2009):リサンプリング法に依存するバンド 撮影された ALOS 画像や夏季に取得された SPOT-5 衛星 間の位置ずれについて.センサの特性等に起因する 画像を組み合わせて判読を行うことで、耕起や稲藁の処 事 象 に つ い て , http://www.eorc.jaxa.jp/hatoyama/ 理のタイミングなどを推定した。合わせて DEM を用い satellite/data_tekyo_setsumei/alos_tyui/gazourenraku た GIS 解析を組み合わせ、圃場の周囲の森林域からの距 _13_j.html(accessed 2013-10-10) 離や、傾斜度などの条件が重なる圃場の抽出などを行っ 4) 農林水産省 (2012):「農地土壌の放射性物質濃度分 布図」の作成について,平成 24 年 3 月 23 日報道発 た。 表,http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/120323.htm さらに、 (独)農業環境技術研究所で取り組まれた、広 (accessed 2013-10-10) 域の放射性物質による土壌汚染評価に用いるため、 2011 年度の湛水圃場を衛星画像から検出し、分布状態 5) 農林水産省(2010) : 「水稲作付面積調査における衛 星活用事業務実績業報告書」 を把握した。ここでは、天候に左右されずに確実に観測 可能な SAR を用いて湛水期に観測を行うことで、福島、 6) 高田裕介(2011):農地土壌の放射性物質濃度分布の 茨城、栃木、群馬、宮城という広域の約 320 万筆以上の 把握.農業環境技術研究所 平成 23 年度 研究成果 農地に対し湛水判別を行い、湛水地分布図を作成した。 情 茨城、栃木、群馬で行った現地調査のデータおよび土壌 result28/result28_02.html (accessed 2013-10-10) 報,http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/result/ サンプリング時に記録された福島県の作付情報を用いて 摘 要 精度検証を行ったところ、サンプル数 2,597 圃場で総合 分類精度は 77.0%、湛水地の Producer' s accuracy のみを 見ると 89.6%という数字が得られた。全体的には、2011 本研究では、衛星リモートセンシング技術を用い、 年度は東日本震災・福島第一原発事故の影響などがあっ 2011 年 3 月 11 日の東日本大震災にともない発生した福 たことも加味して判断すると十分に良い制度であると考 島第一原発の事故による農地の放射性物質汚染の評価に えられる。この結果は、農地土壌における放射性物質濃 資するため、2011 年の福島県および隣接県における農 度分布図の作成にインプットデータの 1 つとして利用さ 地の環境状態の把握を試みた。光学高分解能衛星画像を れた。 用いることで、事故後約 1 ヶ月を経た農地の地表面状態 を判読した。 また、2011 年度産の湛水圃場を衛星画像から検出し、 分布状態を把握した。ここでは、天候に左右されずに確 100 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 実に観測可能な SAR を用いて湛水期に観測を行うこと で、福島、茨城、栃木、群馬、宮城という広域の約 320 万筆以上の農地に対し湛水判別を行い、湛水分布図を作 成した。この結果は、農地土壌における放射性物質濃度 分布図を作成する上で利用された。 101 農環研報 34, 101-142(2015) 農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科 (昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 A list of specimens of Pyraloidea (Insecta: Lepidoptera) of Dr. Hiroshi Inoue preserved in the National Institute for Agro-Environmental Sciences 吉松慎一*・中谷至伸*・吉武 啓* (平成26 年10月31日受理) 農業環境技術研究所に保管されている井上寛博士により寄贈されたパラタイプ標本を含む日 本産メイガ上科 463 点(216 属 433 種)の標本目録を作成した。和名、学名に加えて標本ラベルに 記載されている採集場所・採集日・採集者の情報を報告するとともに一部の種については標本情 報や分類学的扱い等に関するコメントを付した。また、特筆するべき種として 7 種をあげ、種の 解説と全形写真を掲載した。 目 次 Ⅰ はじめに(Introduction)………………………… 101 Ⅳ 引用文献(References) ………………………… 138 Ⅱ 標本目録(List of specimens)…………………… 102 Ⅴ 図(Figures)……………………………………… 140 Ⅲ 特筆すべき種 (Remarkable species with their information) … 137 Ⅰ はじめに(Introduction) 究室長の服部伊楚子氏が、博士の専門とする限定的なグ ループの一部だけでも農環研へ寄贈してほしいと依頼し 井上寛博士(1917 ~ 2008 年)は世界的に著名な蛾類 たため、博士が直接同定されたメイガ類(メイガ上科) の分類学者で、長年にわたって大妻女子大学で教鞭をと とシャクガ科の標本(一部海外で採集された標本を含む) られた。博士が研究のために収集されたタイプ標本 800 が農環研に寄贈された。 点余りを含む約 20 万点に及ぶ膨大な蛾類コレクション これらは、井上ほか(1982)による「日本産蛾類大図 は 1992 年夏にロンドンのイギリス自然史博物館に寄贈 鑑」のカタログ番号順に学名と和名のラベルを付して並 された。ところが、吉松ほか(2011)で詳しく報告した べられている(Fig. 2)。このうちシャクガ科に関しては ように、博士のコレクションのごく一部が農業環境技術 1979 年に寄贈されたとの記録が残っている。メイガ類に 研究所(以下、農環研)に残されている。博士がロンド 関しては、寄贈年の記録は残っていないが、標本から判 ンに標本を寄贈する以前に、当時の農環研・昆虫分類研 断すると 1985 年頃に寄贈されたようである。本コレク * 農業環境インベントリーセンター 102 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) Ⅱ 標本目録(List of specimens) ションは、これらのグループの世界的な権威である博士 が 直 接 同 定 さ れ た オ ー セ ン テ ィ ッ ク 標 本(authentic specimens)であり、同定の信頼度が非常に高く、比較 Pyralidae メイガ科 標本としての利用価値はとても高い。さらに、博士が新 Galleriinae ツヅリガ亜科 Galleriini ツヅリガ族 種記載時に指定したパラタイプ標本も含まれている。 この内メイガ類のコレクションは 「日本産蛾類大図鑑」 1. Galleria mellonella (Linnaeus, 1758) におよそ従って 1985 年頃に同定されているので、当然 ハチノスツヅリガ(大図鑑 Cat. No. 1832、標準図鑑 その後の分類学的扱いの変遷は反映されていない。そこ p. 314) で、2013 年に発行された「日本産蛾類標準図鑑」の新し 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/7/20, H. Inoue い分類学的扱いを取り入れ、一部の種については、交尾 (29 - 0104548). 器を含む形態を観察し、今回新たに同定し直した。本報 告では、メイガ上科について標本情報を取りまとめ、 「日 本産蛾類標準図鑑」の掲載順に並べ替えた。 メイガ上科はメイガ科とツトガ科の 2 科からなる。世 2 . Achroia innotata obscurevittella Ragonot, 1901 ウスグロツヅリガ日本産の亜種(大図鑑 Cat. No. 1833: コハチノスツヅリガ、標準図鑑 p. 315) 界からこれまで約 16,000 種が記載され、ヤガ上科とシャ 1 ex., Kojaku, Kitakyushu, Fukuoka, Japan, 1965/10/2 , T. クガ上科につぐ大群である。日本からはメイガ科 278 種 Kawamura (29 - 0104549). とツトガ科 536 種の合計 814 種が知られている(那須ほ 。農林有害動物・昆虫名鑑 増補改定版(2006) か , 2013) 3 . Cathayia obliquella Hampson, 1901 によるとその内、メイガ科 62 種とツトガ科 65 種の合計 チャマダラツヅリガ(大図鑑 Cat. No. 1834、標準図鑑 127 種が日本産害虫として知られており、農業上も非常 p. 315) に重要なグループである。 井上ほか(1982)による「日本産蛾類大図鑑」では、 1 ex., Sato, Suibara, Niigata, Japan, 1975/7/29, A. Seino (29 - 0104550). 当時の分類体系に基づきメイガ科とツトガ科とは分離さ れておらず、メイガ科としてまとめて扱われている。約 30 年後に発刊された那須ほか(2013)による「日本産蛾 Tirathabini キイロツヅリガ族 4 . Tirathaba irrufatella Ragonot, 1901 類標準図鑑」では従来のメイガ科がメイガ科とツトガ科 キ イロ ツ ヅ リガ( 大 図 鑑 Cat. No. 1837、 標 準 図 鑑 に分離され、全体はメイガ上科としてまとめられてい p. 315) る。この間、上位分類群の変更とともに和名や学名も多 1 ex., Omuroyama, Izu Pen., Shizuoka, Japan, 1960/7/24 , 数変更された。現在農環研に保管されている井上博士の H. Inoue (29 - 0104553). メイガ上科の標本は寄贈された当時の配列順のまま (Fig. 1, Fig. 2)今後も保管していきたいと考えているの で、標本利用に関して便宜を図るためもあって、以下そ 5. Melissoblaptes zelleri de Joannis, 1932 オオツヅリガ(大図鑑 Cat. No. 1838、標準図鑑 p. 316) れぞれの種については、和名の後に「日本産蛾類大図鑑」 1 ex., Kugenuma, Fujisawa, Kanagawa, Japan, 1960/9/10, でのカタログナンバーを“大図鑑 Cat. No.”で示し、旧和 H. Inoue (29 - 0104554); 1 ex., Futatsuyama, Shibecha, 名がある場合はその後に示し、さらにその後ろに「日本 Kushiro, Hokkaido, Japan, 1980/ 8 / 1 , K . Ijima ( 29 - 産蛾類標準図鑑」で扱われたページを“標準図鑑 p. ”で 0104555). 示した。標本データの末尾には( “29”+ 7 桁の数字)で 備考:大図鑑では Aphomia zelleri (Joannis, 1932) と扱わ 農環研所蔵昆虫標本番号を示した。 れた。 標本写真を撮影いただいた農業環境技術研究所の松岡 寿興氏に紙面を借りてお礼申し上げる。 6 . Aphomia sapozhnikovi (Krulikowski, 1909) フタテンツヅリガ(大図鑑 Cat. No. 1839、標準図鑑 p. 316) 1 ex., Murakagi, Anancho, Ina, Nagano, Japan, 1985/6/14, H. Inoue (29 - 0104556). 吉松慎一ら:農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 7. Doloessa viridis Zeller, 1848 ミ ド リ ツ ヅ リ ガ( 大 図 鑑 Cat. No. 1841、 標 準 図 鑑 103 1 ex., Lake Nukumizawa, 700 m, Uemura, Kumagun, Kumamoto, Japan, 1970/8/1, H. Fukuda (29 - 0104551). p. 316) 1 ex., Onoaida (B), Yakushima , K agoshima, Japan, 1972/7/28 , T. Watanabe (29 - 0104558). 15. Eulophopalpia pauperalis (Leech, 1889) フタスジツヅリガ(大図鑑 Cat. No. 1836、標準図鑑 p. 318) 8 . Doloessa ochrociliella (Ragonot, 1893) クロモンツヅリガ(大図鑑 Cat. No. 1840、標準図鑑 1 ex., Takao-san, Tokyo, Japan, 1961/7/12 , H. Inoue (290104552). p. 317) 1 ex., Funaura, Iriomote I., Okinawa, Japan, 1978/9/30, S. Pyralinae シマメイガ亜科 Azuma, (29 - 0104557). Pyralini シマメイガ族 16 . Aglossa dimidiata (Haworth, 1809) 9. Lamoria glaucalis Caradja, 1925 アカフツヅリガ (大図鑑 Cat. No. 1842、標準図鑑 p. 317) コメノシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1870: コメシマメ イガ、標準図鑑 p. 319) 2 exs., Omuroyama, Izu Pen., Shizuoka, Japan, 1960/7/24, 1 ex., Kugenuma, Fujisawa, Kanagawa, Japan, 1962/6/21, H. Inoue (29 - 0104559, 29 - 0104560). S. Ogura (29 - 0104586). 備考:大図鑑の本種の記載年 1810 年は間違いで、1809 10. Lamoria adaptella (Walker, 1863) 年が正しい。 ウスモンツヅリガ(大図鑑 Cat. No. 1843、標準図鑑 掲載なし) 17. Hypsopygia regina (Butler, 1879) 1 ex., Omotodake, Ishigaki I., Okinawa, Japan, 1981/3/26, トビイロシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1873、標準図 K. Deguchi (29 - 0104561). 鑑 p. 319) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1979/7/2 , H. Inoue 11. Lamoria infumatella Hampson, 1898 (29 - 0104587). ハネナガツヅリガ(大図鑑 Cat. No. 1844、標準図鑑 p. 317) 18 . Hypsopygia kawabei Yamanaka, 1965 1 ex ., A ikodake, Yakushima I ., K agoshima , Japan, ウスモンマルバシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1874、 1972/8/18 , T. Watanabe (29 - 0104562). 標準図鑑 p. 320) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/6/7, H. Inoue 12 . Paralipsa gularis (Zeller, 1877) (29 - 0104588). ツヅリガ(大図鑑 Cat. No. 1846、標準図鑑 p. 317) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/6/12 , H. Inoue (29 - 0104563). 19. Herculia pelasgalis (Walker, 1859) アカシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1891、標準図鑑 p. 320) 13 . Thalamorrhyncha isoneura Meyrick, 1933 シマモンツヅリガ(大図鑑 Cat. No. 1847、標準図鑑 1 ex., Kugenuma, Fujisawa, Kanagawa, Japan, 1958/6/23, H. Inoue (29 - 0104605). p. 318) 1 ex., Kanpire, Iriomote I., Okinawa, Japan, 1974/3/21, H. Endô (29 - 0104564). 20. Herculia jezoensis Shibuya, 1928 エゾシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1892、標準図鑑 p. 320) Megarthridiini ヒロバツヅリガ族 14 . Cataprosopus monstrosus Butler, 1881 マエグロツヅリガ(大図鑑 Cat. No. 1835、標準図鑑 p. 318) 1 ex., Sakasamaki, Niigata, Japan, 1960/8/1, H. Muraki (29 - 0104606). 104 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 21. Herculia orthogramma Inoue, 1960 28 . Pyralis farinalis (Linnaeus, 1758) オオバシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1893、標準図鑑 カシノシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1875、標準図鑑 p. 320) p. 322) 1 ex., Uchiyama, Tsushima, Nagasaki, Japan, 1973/11/5, 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1981/6/6 , H. Inoue T. Watanabe (29 - 0104607). (29 - 0104589). 22 . Herculia drabicilialis Yamanaka, 1968 29. Pyralis pictalis (Curtis, 1834) アカヘリシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1894、標準図 ネグロシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1876、標準図鑑 鑑 p. 321) p. 322) 1 ex., Mitsune, Hachijo I., Izu, Tokyo, Japan, 1968/6/12 , 1 ex., Nago, Okinawa I., Okinawa, Japan, 1965/8/25, K. H. Inoue (29 - 0104608). Kanmiya (29 - 0104590). 23 . Herculia igniflualis (Walker, 1859) 30. Pyralis regalis Denis & Schiffermüller, 1775 コナフキアカシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1890、標 ギンモンシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1877、標準図 準図鑑 p. 321) 鑑 p. 323) 1 ex., Hirakubo, Ishigaki I., Okinawa, Japan, 1977/4/25, S. 1 ex., Futatsuyama, Shibecha, Kushiro, Hokkaido, Japan, Kondo (29 - 0104604). 1980/8/13 , K. Ijima (29 - 0104591). 備考:大図鑑の Orthopygia glauculalis Yamanaka, 1980 は 本種のシノニム。 31. Pyralis albiguttata Warren, 1891 シロモンシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1878、標準図 24 . Orthopygia glaucinalis (Linnaeus, 1758) 鑑 p. 323) フタスジシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1886、標準図 1 ex., Takao-san, Tokyo, Japan, 1949/7/30, H. Inoue (29- 鑑 p. 321) 0104592). 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1979/10/9, H. Inoue (29 - 0104600). 32 . Stemmatophora valida (Butler, 1879) トビイロフタスジシマメイガ (大図鑑Cat. No. 1880、 25. Orthopygia nannodes (Butler, 1879) 標準図鑑 p. 323) ツマアカシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1887、標準図 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/7/26 , H. Inoue 鑑 p. 321) (29 - 0104594). 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1982/6/30, H. Inoue (29 - 0104601). 33 . Stemmatophora albifimbrialis (Hampson, 1906) ニセマエモンシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1881、標 26 . Orthopygia repetita (Butler, 1887) 準図鑑 p. 323) クロスジキシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1889、標準 1♂, paratype of Stemmatophora tsushimensis Inoue, 1982 , 図鑑 p. 321) Are, Tsushima, Nagasaki, Japan, 1973/7/7, T. Watanabe 1 ex., Shuri, Okinawa, Japan, 1959/6/7, S. Higashihirachi (29 - 0104595). (29 - 0104603). 備考:大図鑑の Stemmatophora tsushimensis Inoue, 1982 は本種のシノニム。本個体には“PARATYPE”のラベル 27. Orthopygia placens (Butler, 1879) がついていたので、大図鑑のStemmatophora tsushimensis ツマキシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1888、標準図鑑 Inoue, 1982 の原記載(井上 , 1982)を見たところ、パラ p. 322) タイプの一部標本として、7-8 月に採集された対馬御岳 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1981/7/16 , H. Inoue の 2♂と阿連の 2♂が指定されており、採集者および詳 (29 - 0104602). 細な採集日は掲載されていないが、パラタイプに間違い ないと考えた。 吉松慎一ら:農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 34 . Arippara indicator Walker, 1863 105 40. Sacada fasciata (Butler, 1878) ツマグロシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1899、標準図 オオクシヒゲシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1897、標 鑑 p. 324) 準図鑑 p. 326) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/7/25, H. Inoue 1♂, Odaru Spa., Izu Pen., Shizuoka, Japan, 1961/6/21, H. (29 - 0104612). Inoue (29 - 0104611). 備考:大図鑑の記載年 1964 年は間違いで、1863 年が正 備考:大図鑑では Datanoides fasciatus Butler, 1878 と扱わ しい。 れた。 35. Tegulifera bicoloralis (Leech, 1889) 41. Tamraca torridalis (Lederer, 1863) マエモンシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1883、標準図 ナカアカシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1882、標準図 鑑 p. 324) 鑑 p. 326) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1981/7/26 , H. Inoue 1 ex., Takao-san, Tokyo, Japan, 1961/7/12 , H. Inoue (29- (29 - 0104597). 0104596). 36 . Scenedra umbrosalis (Wileman, 1911) 42 . Orybina regalis (Leech, 1889) ムラサキシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1879、標準図 キンボシシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1900、標準図 鑑 p. 324) 鑑 p. 326) 1 ex., Takao-san, Tokyo, Japan, 1959/6/28 , H. Inoue (29- 1 ex., Akeno, Yamanashi, Japan, 1981/ 7/14 , Y. Kishida 0104593). (29 - 0104613). 37. Bostra nanalis (Wileman, 1911) ヒメアカシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1885、標準図 鑑 p. 325) 1 ex., Kugenuma, Kanagawa, Japan, 1957/7/18 , H. Inoue (29 - 0104598). Endotrichini トガリメイガ族 43 . Endotricha consocia (Butler, 1879) ウスオビトガリメイガ(大図鑑 Cat. No. 1901、標準 図鑑 p. 327) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1979/8/15, H. Inoue (29 - 0104614). 38 . Bostra mirifica Inoue, 1985 ヒトスジシマメイガ(大図鑑なし、標準図鑑 p. 325) 1♀, paratype, Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1978/8/12 , 44 . Endotricha costaemaculalis formosensis Hampson, 1916 H. Inoue (29 - 0104599). シロスジトガリメイガ台湾産の亜種(大図鑑 Cat. No. 備考:本個体には“PARATYPE”のラベルが付いていた 1909、標準図鑑 p. 327) ので、Inoue (1985) の原記載を見たところ、パラタイプ 1 ex., Alishan, 2200 m, Chiayi, Taiwan, 1964/7/9 -11, H. の内の 1 個体に間違いないことが確認できた。 Inoue (29 - 0104625). 39. Sacada approximans (Leech, 1889) 45. Endotricha minialis (Fabricius, 1794) クシヒゲシマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1896、標準図 キベリトガリメイガ(大図鑑 Cat. No. 1907、標準図 鑑 p. 325) 鑑 p. 327) 1♀, Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1981/7/17, H. Inoue 1 ex., Yuwandake, Amami-oshima, Kagoshima, Japan, ( 29 - 0104610); 1 ♂, Bushi, Ir uma , Saitama , Japan, 1963/7/16-17, H. Inoue (29-0104622); 1 ex., Nishinakama, 1982/7/15, H. Inoue (29 - 0104609). Amami-oshima, Kagoshima, Japan, 1963/ 7/19 -20 , H. 備考:大図鑑では Sybrida approximans (Leech, [1889]) と Inoue (29 - 0104621). 扱われた。 備考:大図鑑の Endotricha portialis Walker, 1859 は本種 のシノニム。 106 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 46 . Endotricha olivacealis (Bremer, 1864) 準図鑑 p. 329) ウスベニトガリメイガ(大図鑑 Cat. No. 1908、標準 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1973/6/4 , H. Inoue 図鑑 p. 327) (29 - 0104581). 1♂, Nashimoto, S. Izu, Shizuoka, Japan, 1959/8/10 -12 , H. 備考:大図鑑では Craneophora ficki Christoph, 1881 と扱 Inoue (29 - 0104623); 1♀, Odaru Spa., S. Izu, Shizuoka, われた。 Japan, 1960/5/15, H. Inoue (29 - 0104624). 53 . Lepidogma kiiensis Marumo, 1920 47. Endotricha icelusalis (Walker, 1859) オオウスベニトガリメイガ(大図鑑 Cat. No. 1905、 標準図鑑 p. 328) キイフトメイガ(大図鑑 Cat. No. 1850:クロテンア オフトメイガ、標準図鑑 p. 330) 1♂, Kumanotaira, Gunma, Japan, 1959/ 7/27, H. Inoue 1 ex., Nashimoto, S. Izu, Shizuoka, Japan, 1959/7/13 , H. (29 - 0104567). Inoue (29 - 0104619). 備考:標準図鑑によると、大図鑑の Jocara ruf escens (Hampson, 1896) は本種の誤同定である。 48 . Endotricha kuznetzovi Whalley, 1963 キモントガリメイガ(大図鑑 Cat. No. 1903、標準図 鑑 p. 328) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1975/8/31, H. Inoue 54 . Lepidogma melanobasis Hampson, 1906 コネアオフトメイガ(大図鑑 Cat. No. 1851、標準図 鑑 p. 330) (29 - 0104618) ; 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1983/8/8 , H. Inoue 1979/9/3 , H. Inoue (29 - 0104615). (29 - 0104568). 備考:大図鑑では Jocara melanobasis (Hampson, 1906) と 49. Endotricha ruminalis (Walker, 1859) 扱われた。 アカオビトガリメイガ(大図鑑 Cat. No. 1906、標準 図鑑 p. 329) 55. Stericta kogii Inoue & Sasaki, 1995 1 ex . , Hung yeh Spa . , 2 0 0 m , Huali Hsien , Ta iwa n , ネグロフトメイガ(大図鑑 Cat. No. 1849、標準図鑑 1984/3/29 -30, A. Kawabe (29 - 0104620). p. 330) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1985/8/25, H. Inoue 50. Endotricha theonalis (Walker, 1859) (29 - 0104566). カバイロトガリメイガ(大図鑑 Cat. No. 1902、標準 備考:大図鑑では Lepidogma atribasalis (Hampson, 1900) 図鑑 p. 329) と扱われたが、その本文中では属名の綴りが間違ってお 1♀, Shuri, Okinawa, Japan, 1958/8/30, S. Higashihirachi り、Lipidogma となっている。種名の変遷については、 (29 - 0104617); 1♂, Shuri, Okinawa, Japan, 1965/9/2 , S. 標準図鑑に詳しく書かれている。 Kuniyoshi (29 - 0104616). 56 . Lamida obscura (Moore, 1888) Epipaschiinae フトメイガ亜科 51. Noctuides melanophius Staudinger, 1892 ウスグロフトメイガ(大図鑑 Cat. No. 1862、標準図 鑑 p. 331) ツマグロフトメイガ(大図鑑 Cat. No. 1848、標準図 1 ex., Takao-san, Tokyo, Japan, 1950/6/17, H. Inoue (29- 鑑 p. 329) 0104579). 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1978/9/14 , H. Inoue (29 - 0104565). 57. Termioptycha nigrescens (Warren, 1891) 備 考: 大 図 鑑 で は Anartula melanophia (Staudinger, クロフトメイガ(大図鑑 Cat. No. 1856、標準図鑑 1892) と扱われた。 p. 331) 1 ex., Bijodaira, Toyama, Japan, 1960/8/29, H. Yamanaka 52 . Lista ficki (Christoph, 1881) ナカムラサキフトメイガ(大図鑑 Cat. No. 1864、標 ( 29 - 0104574); 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1981/7/17, H. Inoue (29 - 0104575). 吉松慎一ら:農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 58 . Termioptycha eucarta (Felder & Rogenhofer, 1875) マエアカフトメイガ(大図鑑 Cat. No. 1859、標準図 107 備考:大図鑑では Teliphasa albifusa (Hampson, 1896) と 扱われた。 鑑 p. 332) 1 ex., Funaura, Iriomote Is., Okinawa, Japan, 1976/8/22 , 64 . Epilepia dentata (Matsumura & Shibuya, 1927) M. Kinjo (29 - 0104576). ハスジフトメイガ(大図鑑 Cat. No. 1861、標準図鑑 備考:大図鑑での Termioptycha distantia Inoue, 1982 は本 p. 333) 種のシノニム。 1 ex., Yunotani, Mt . K irishima , K agoshima , Japan, 1977/7/14 , Y. Takemura (29 - 0104578). 59. Termioptycha margarita (Butler, 1879) ナカジロフトメイガ(大図鑑 Cat. No. 1860、標準図 鑑 p. 332) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1977/5/27, H. Inoue (29 - 0104577). 65. Orthaga euadrusalis Walker, 1859 クロモンフトメイガ(大図鑑 Cat. No. 1865、標準図 鑑 p. 333) 1♂, Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1978/8/26 , H. Inoue (29 - 0104582). 60. Salma amica (Butler, 1879) オオフトメイガ(大図鑑 Cat. No. 1852、標準図鑑 p. 332) 1 ex., Nashimoto, South Izu, Shizuoka, Japan, 1957/7/29- 66 . Orthaga achatina (Butler, 1878) ナカトビフトメイガ(大図鑑 Cat. No. 1868、標準図 鑑 p. 333) 31, H. Inoue (29 - 0104569). 1♀, Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1977/6/30 , H. Inoue 備考:大図鑑では Teliphasa amica (Butler, 1879) と扱わ (29 - 0104585). れた。 67. Orthaga onerata (Butler, 1879) 61. Salma elegans (Butler, 1881) ナカアオフトメイガ(大図鑑 Cat. No. 1853、標準図 鑑 p. 332) 1 ex., Shizugawa, Miyagi, Japan, 1969/7/26 , T. Watanabe ネアオフトメイガ(大図鑑 Cat. No. 1866、標準図鑑 p. 334) 1 ex., Takao-san, Tokyo, Japan, 1959/6/28 , H. Inoue (290104583). ( 29 - 0104570); 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1978/7/21, H. Inoue (29 - 0104571). 68 . Orthaga olivacea (Warren, 1891) 備考:大図鑑では Teliphasa elegans (Butler, 1881) と扱わ アオフトメイガ(大図鑑 Cat. No. 1867、標準図鑑 れた。 p. 334) 1 ex., Odaru Spa., Izu Pen., Shizuoka, Japan, 1961/7/21, H. 62 . Salma sakishimensis (Inoue & Yamanaka, 1975) Inoue (29 - 0104584). サキシマフトメイガ(大図鑑 Cat. No. 1855、標準図 鑑 p. 333) 69. Locastra muscosalis (Walker, 1866) 1 ex., Funaura, Iriomote I., Okinawa, Japan, 1976/8/21, S. トサカフトメイガ(大図鑑 Cat. No. 1863、標準図鑑 Azuma (29 - 0104573). p. 334) 備考:大図鑑ではTeliphasa sakishimensis Inoue & Yamanaka, 1 ex., Kugenuma, Fujisawa, Kanagawa, Japan, 1958/6/27, 1975 と扱われた。 H. Inoue (29 - 0104580). 63 . Salma albifusa (Hampson, 1896) Phycitinae マダラメイガ亜科 オオナカジロフトメイガ(大図鑑 Cat. No. 1854、標 準図鑑 p. 333) Phycitini マダラメイガ族 70. Acrobasis squalidella Christoph, 1881 1 ex., Mitake, Tsushima, Nagasaki, Japan, 1973/7/1, T. ツツマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1961、標準図鑑 Watanabe (29 - 0104572). p. 335) 108 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 1 ex., Mitsuminesan, 900 m, Saitama, Japan, 1984/8/26 , 77. Acrobasis rufilimbalis (Wileman, 1911) H. Inoue (29 - 0104660). ヒメトビネマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1962、標 備考:大図鑑の Acrobasis tokiella (Ragonot, 1893) は本種 準図鑑 p. 339) のシノニム。 1 ex., Nangu Spa., Ina, Nagano, Japan, 1985/6/14, H. Inoue (29 - 0104661). 71. Acrobasis frankella (Roesler, 1975) オオアカオビマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 2002、 標準図鑑 p. 336) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1985/7/4 , H. Inoue 78 . Acrobasis bellulella (Ragonot, 1893) ナシモンクロマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1965、 標準図鑑 p. 339) (29 - 0104686). 1 ex., Yunotaira Spa., Gunma, Japan, 1968/7/26, H. Inoue 備考:大図鑑では Conobathra frankella Roesler, 1975 と扱 (29 - 0104664). われた。 79. Acrobasis rubrizonella (Ragonot, 1893) 72 . Acrobasis ferruginella Wileman, 1911 アカフマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1966、標準図 鑑 p. 336) ギンマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1982、標準図鑑 p. 339) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/8/27, H. Inoue 1 ex., Yunotaira Spa., Gunma, Japan, 1968/7/26, H. Inoue (29 - 0104675). (29 - 0104665). 備考:標準図鑑によると、大図鑑の Eurhodope heringii (Ragonot, 1888) は本種の誤同定である。 73 . Acrobasis injunctella (Christoph, 1881) シロオビマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1968、標準 図鑑 p. 337) 1 ex., Asama-Sanso, Komoro, Nagano, Japan, 1959/7/29, T. Maenami (29 - 0104666). 80. Acrobasis rufizonella Ragonot, 1887 ホソアカオビマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1998、 標準図鑑 p. 340) 1♂, Tateiwa , S a k iha ma , Murotoshi , Kochi , Japa n , 1981/9/5 (29 - 0104685). 74 . Acrobasis encaustella Ragonot, 1893 備考:大図鑑の Conobathra rubiginella Inoue, 1982 は本種 ウスアカマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1964、標準 のシノニム。本個体は井上により Conobathra tricolorella 図鑑 p. 338) Inoue, 1982 フタテンアカオビマダラメイガと同定され 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1978/7/24 , H. Inoue ていたが、第一著者の吉松が交尾器を解剖して調べたと (29 - 0104663). ころ、それは誤同定で、上記の種に同定されることが分 かった。四国初記録。 75. Acrobasis birgitella (Roesler, 1975) ヒメアカオビマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 2000、 標準図鑑 p. 338) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/7/26 , H. Inoue 81. Furcata pseudodichromella (Yamanaka, 1980) コフタグロマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1984、標 準図鑑 p. 341) (29 - 0104684). 1 ex., Kugenuma, Kanagawa, Japan, 1957/7/23 , H. Inoue 備考:大図鑑では Conobathra birgitella Roesler, 1975 と扱 (29 - 0104676). われた。 備考:大図鑑ではEurhodope pseudodichromella Yamanaka, 1980 と扱われた。 76 . Acrobasis obrutella (Christoph, 1881) オオトビネマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1963、標 準図鑑 p. 339) 1 ex., Norikura, 1500 m, Nagano, Japan, 1978/ 7/26 , H. Inoue (29 - 0104662). 82 . Furcata hollandella (Ragonot, 1893) トビネマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1986、標準図 鑑 p. 341) 1 ex., Kurodake, Oita, Japan, 1981/ 7/5 , H. Inoue (29 - 吉松慎一ら:農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 109 0104677). 備 考: 標 準 図 鑑 に よ る と、 大 図 鑑 の Euzophera bigella 備考:大図鑑では Eurhodope hollandella Ragonot, 1893 と (Zeller, 1848) フタモンマダラメイガは本種の誤同定で 扱われた。 ある。 83 . Didia striatella (Inoue, 1959) 88 . Mussidia pectinicornella (Hampson, 1896) マルバスジマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1949、標 クシヒゲマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1953、標準 準図鑑 p. 342) 図鑑 p. 345) 1 ex., Nashimoto, S. Izu, Shizuoka, Japan, 1959/7/13 , H. 1♀, Nashimoto, S. Izu, Shizuoka, Japan, 1959/6/ 7, H. Inoue (29 - 0104654). Inoue (29 - 0104655). 備考:大図鑑では Apomyelois striatella Inoue, 1959 と扱わ れた。本個体には“PARATYPE”のラベルが付いていた 89. Ceroprepes patriciella Zeller, 1867 が、Inoue(1959) の原記載を確認したところ、パラタイ ウスアカネマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 2008、標 プには含まれていなかったので、ここではそのような表 準図鑑 p. 346) 示はしなかった。 1 ex., Mikaboyama, Gunma, Japan, 1969/ 7/ 5 , Y. Saito (29 - 0104692). 84 . Apomyelois bistriatella subcognata (Ragonot, 1887) フタスジクロマダラメイガ旧北区産の亜種(大図鑑 Cat. No. 1994、標準図鑑 p. 343) 1 ex., Karushunai, Sounkyo, Hokkaido, Japan, 1982/7/26, 90. Ceroprepes ophthalmicella (Christoph, 1881) ウスアカモンクロマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 2006、標準図鑑 p. 346) I. Tateyama (29 - 0104682). 1 ex., Rupeshinai, Sounkyo, Hokkaido, Japan, 1982/8/13 , 備考:大図鑑では Pyla subcognata (Ragonot, 1887) と扱わ H. Ogi (29 - 0104690). れた。 91. Ceroprepes nigrolineatella Shibuya, 1927 85. Aurana vinaceella (Inoue, 1963) コクロモンマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1979、標 準図鑑 p. 344) 1 ex., Nagata (C), Yakushima I., Kagoshima, Japan, スジグロマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 2007、標準 図鑑 p. 346) 1 ex., Sakasamaki Spa., Nakauonuma, Niigata, Japan, 1983/7/2-3 , H. Inoue (29 - 0104691). 1972/6/16 , T. Watanabe (29 - 0104673). 備考:大図鑑では Longiculcita vinaceella (Inoue, 1963) と 扱われた。 92 . Selagia spadicella (Hübner, 1796) フタクロテンマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1971、 標準図鑑 p. 346) 86 . Kaurava ardentella (Ragonot, 1893) トビマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1972、標準図鑑 1 ex., Shimizu, Tomakomai, Hokkaido, Japan, 1982/9/10, H. Ogi (29 - 0104667). p. 344) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/7/29, H. Inoue 93 . Addyme confusalis Yamanaka, 2006 (29 - 0104668). ウスアカムラサキマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 備考:大図鑑では Samaria ardentella Ragonot, 1893 と扱 1977、標準図鑑 p. 348) われた。 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1985/6/1, H. Inoue (29 - 0104672). 87. Glyptoteles leucacrinella Zeller, 1848 備考:標準図鑑によると、大図鑑の Calguia defigualis ウスオビクロマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1916: Walker, 1863 は誤同定で、その後、本学名のもとに記載 フタモンマダラメイガ、標準図鑑 p. 344) された。 1♀, Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1978/8/ 7, H. Inoue (29 - 0104631) 110 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 94 . Etielloides curvellus Shibuya, 1928 100. Ortholepis infausta (Ragonot, 1893) イタヤマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 2011:ナシハ シロスジクロマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1989、 マキマダラメイガ、標準図鑑 p. 349) 標準図鑑 p. 352) 1 ex., Kiyosato, Yamanashi, Japan, 1981/6/14 , H. Inoue 1 ex., Sakasamaki Spa., Nakauonuma, Niigata, Japan, (29 - 0104695). 1983/7/2-3 , H. Inoue (29 - 0104679). 備考:大図鑑では Metriostola infausta (Ragonot, 1893) と 95. Etielloides bipartitellus (Leech, 1889) 扱われた。 ネアカマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1954、標準図 鑑 p. 349) 101. Sciota maenamii (Inoue, 1959) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1985/4/27, H. Inoue マエナミマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1938、標準 (29 - 0104656). 図鑑 p. 352) 備考:大図鑑では Elasmopalpus bipartitellus Leech, 1889 1 ex., Mitsumine, 900 m, Chichibu, Saitama, Japan, と扱われた。 1983/8/27, H. Inoue (29 - 0104645). 備考:大図鑑では Nephopterix maenamii Inoue, 1959 と扱 96 . Etiella zinckenella (Treitschke, 1832) われた。 シロイチモジマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 2009: シロイチモンジマダラメイガ、標準図鑑 p. 350) 102 . Sciota vinacea (Inoue, 1959) 1♀, Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1978/8/23 , H. Inoue オオクロモンマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1947、 (29 - 0104693). 標準図鑑 p. 352) 1 ex., Mitsuminesan, 900 m, Saitama, Japan, 1984/8/26 , 97. Etiella walsinghamella Ragonot, 1888 H. Inoue (29 - 0104652). キオビマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 2010、標準図 備考:大図鑑では Salebria vinacea Inoue, 1959 と扱われ 鑑 p. 350) た。 1♀, Chigasaki, Kanagawa, Japan, 1956/8/31, H. Inoue (29 - 0104694). 103 . Sciota mikadella (Ragonot, 1893) ミカドマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1942、標準図 98 . Protoetiella bipunctella Inoue, 1959 鑑 p. 353) マルモンマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 2012、標準 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1977/7/2 , H. Inoue 図鑑 p. 351) (29 - 0104647). 1 ex., Nippara, Oku-tama, Tokyo, Japan, 1962/6/2 , T. 備考:大図鑑では Nephopterix mikadella (Ragonot, 1893) Maenami (29 - 0104696). と扱われた。 備考:本個体には“PARATYPE”のラベルが付いていた が、Inoue(1959) の原記載を確認したところ、パラタイ 104 . Sciota manifestella (Inoue, 1982) プには含まれていなかったので、ここではそのような表 アカグロマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1993、標準 示はしなかった。 図鑑 p. 353) 1 ex., Yunotaira Spa., Gunma, Japan, 1968/7/26, H. Inoue 99. Salebriopsis monotonella (Caradja, 1927) (29 - 0104681). ハイイロマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1996、標準 備考:大図鑑では Pyla manifestella Inoue, 1982 と扱われ 図鑑 p. 351) た。 1 ex., Aotani, Kanazawa, Ishikawa, Japan, 1981/8/20, I. Togashi (29 - 0104683). 105. Sciota adelphella (Fischer von Röslerstamm, 1836) 備考:大図鑑では Sacculocornutia monotonella (Caradja, ヒメアカマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1937、標準 1927) と扱われた。 図鑑 p. 353) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1982/6/10, H. Inoue 吉松慎一ら:農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 (29 - 0104644). 111 112 . Morosaphycita maculata (Staudinger, 1876) 備 考: 大 図 鑑 で は Nephopterix adelphella(Fischer von ヒトテンクロマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1945、 Röslerstamm, 1838) と扱われたが、この記載年は誤りで 標準図鑑 p. 356) ある。 1 ex ., Or io, Yahat a , Fukuoka , Japan, 19 60 / 8 /4 , T. Kawamura (29 - 0104649). 106 . Sciota intercisella (Wileman, 1911) ヤマトマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1944、標準図 備考:大図鑑の Salebria morosalopsidis Roesler, 1975 は本 種のシノニム。 鑑 p. 354) 1 ex., Mt.Takao, Tokyo, Japan, 1956/7/29 (29 - 0104648). 113 . Epicrocis hilarella Ragonot, 1888 備考:大図鑑では Nephopterix intercisella Wileman, 1911 フサヒゲマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1948、標準 と扱われた。 図鑑 p. 356) 1 ex . , Miya noura , Ya k ushima , K agoshima , Japa n , 107. Dioryctria abietella (Denis & Schiffermüller, 1775) 1971/9/28 , T. Watanabe (29 - 0104653). マツノマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1974、標準図 鑑 p. 354) 114 . Sandrabatis crassiella Ragonot, 1893 1 ex., Nukabira, Tokachi, Hokkaido, Japan, 1967/7/16 , H. ハラウスキマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1935、標 Ono (29 - 0104670). 準図鑑 p. 357) 1 ex., Mikaboyama, 750 m, Gunma, Japan, 1970/6/17, Y. 108 . Dioryctria sylvestrella (Ratzeburg, 1840) Saito (29 - 0104642). マツノシンマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1973、標 準図鑑 p. 355) 115. Stenopterix bicolorella (Leech, 1889) 1 ex., Kugenuma, Fujisawa, Kanagawa, Japan, 1960/9/22 , ナカアカスジマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1936、 H. Inoue (29 - 0104669). 標準図鑑 p. 357) 1 ex., Takao, Tokyo, Japan, 1951/6/23 , T. Haruta (29 109. Dioryctria pryeri Ragonot, 1893 0104643). マツアカマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1976、標準 備考:大図鑑では Nephopterix bicolorella (Leech, 1889)と 図鑑 p. 355) 扱われた。標準図鑑では、開張は 23 ~ 25mm とされてい 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/7/17, H. Inoue るが、本個体の開張は 28mm とやや大きかった。 (29 - 0104671). 116 . Oncocera semirubella (Scopoli, 1763) 110. Volobilis chloropterella (Hampson, 1896) カバイロマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1955、標準 図鑑 p. 355) アカマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1946、標準図鑑 p. 358) 1 ex., Takao-san, Tokyo, Japan, 1957/8/17, T. Maenami 1 ex . , A i koda ke , Ya k ush i m a , K a gosh i m a , Jap a n , (29 - 0104650); 1 ex., Futatsuyama, Shibecha, Kushiro, 1974/7/26 , H. Inoue (29 - 0104657). Hokkaido, Japan, 1980/7/21, K. Ijima (29 - 0104651). 備考:大図鑑では Salebria semirubella (Scopoli, 1763) と 111. Pempelia formosa (Haworth, 1811) 扱われた。 ウスチャマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1940、標準 図鑑 p. 356) 117. Oncocera bitinctella (Wileman, 1911) 1 ex . , Momonok i S p a . , 9 5 0 m , Ya ma nash i , Japa n , テンクロトビマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1958、 1979/6/15, H. Inoue (29 - 0104646). 標準図鑑 p. 358) 備考:大図鑑の Nephopterix exotica Inoue, 1959 は本種の 1 ex., Bannaguro, Ishikari-machi, Hokkaido, Japan, シノニム。 1980/9/6 , H. Ogi (29 - 0104658). 備考:大図鑑では Oligochroa bitinctella (Wileman, 1911) 112 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) と扱われた。 のシノニム。 118 . Oncocera faecella (Zeller, 1839) 124 . Assara terebrella (Zincken, 1818) シモフリマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1991:シモ シロスジマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1912、標準 フ リ マ ダ ラ メ イ ガ Pyla griseosparsella (Ragonot, 図鑑 p. 360) 1893)と大図鑑Cat. No. 1992:クロマダラメイガPyla 1 ex., Nukabira, Tokachi, Hokkaido, Japan, 1963/7/26, H. japonica Inoue, 1959 とを併合、標準図鑑 p. 358) Ono (29 - 0104627). 1 ex., Yunotaira Spa., Gunma, Japan, 1968/6/29, H. Inoue (29 - 0104680). 125. Assara funerella (Ragonot, 1901) 備考:大図鑑のPyla griseosparsella (Ragonot, 1893)とPyla マエジロクロマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1914、 japonica Inoue, 1959 はいずれも本種のシノニム。 標準図鑑 p. 360) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/6/10, H. Inoue 119. Spatulipalpia albistrialis Hampson, 1912 (29 - 0104629). ヒゲブトマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1988、標準 図鑑 p. 359) 126 . Assara hoeneella Roesler, 1965 1 ex., Nashimoto, South Izu, Shizuoka, Japan, 1960/5/15, チビマエジロホソマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. H. Inoue (29 - 0104678). 1913、標準図鑑 p. 361) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1979/9/23 , H. Inoue 120. Cryptoblabes loxiella Ragonot, 1887 (29 - 0104628). カラマツマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 2003、標準 図鑑 p. 359) 127. Assara korbi (Caradja, 1910) 1 ex., Jizo Pass., 1600 m, Nagano, Japan, 1972/ 7/1, H. フタシロテンホソマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. Inoue (29 - 0104687). 1915、標準図鑑 p. 361) 備 考: 標 準 図 鑑 に よ る と、 大 図 鑑 の Cryptoblabes 1 ex . , S h i r at a n i , Ya k ush i m a , K a gosh i m a , Jap a n , angustipennella Ragonot, 1888 は本種の誤同定である。 1974/7/25, H. Inoue (29 - 0104630). 121. Psorosa taishanella Roesler, 1975 128 . Euzophera batangensis Caradja, 1939 モモノハマキマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 2005、 フタモンマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1917:クロ 標準図鑑 p. 359) フタモンマダラメイガ、標準図鑑 p. 362) 1 ex., Niitsu, Niigata, Japan, 1964/7/13 , S. Sakurai (29 - 1♂, Moribe, Tanushimarumachi, Ukihagun, Fukuoka, 0104689). Japan, 1966/4/22 , N. Gyotoku (29 - 0104632). 備 考: 標 準 図 鑑 に よ る と、 大 図 鑑 の Euzophera bigella 122 . Pseudacrobasis nankingella Roesler, 1975 (Zeller, 1848) フタモンマダラメイガは本報告の No. 87 マエジロギンマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1981、 で述べたように、Glyptoteles leucacrinella Zeller, 1848 ウ 標準図鑑 p. 360) スオビクロマダラメイガの誤同定である。 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1973/7/5, H. Inoue (29 - 0104674). 129. Euzophera watanabei Roesler & Inoue, 1980 マエジロオオマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1918、 123 . Quasipuer colon (Christoph, 1881) 標準図鑑 p. 362) キバネチビマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1911、標 1♀, parat y pe, Mit ake, Tsushima , Nagasaki, Japan, 準図鑑 p. 360) 1973/6/1, T. Watanabe (29 - 0104633). 1 ex., Ikezawa, Ikusaka, Nagano, Japan, 1983/9/3 , N. 備考:本個体には“PARATYPE”のラベルが付いていた Hirano (29 - 0104626). ので、Roesler and Inoue (1980)の原記載を見たところ、 備考:大図鑑の Quasipuer infamella Roesler, 1973 は本種 パラタイプの内の 1 個体に間違いないことが確認できた。 吉松慎一ら:農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 130. Pseudocadra cuprotaeniella (Christoph, 1881) 113 136 . Euzopherodes oberleae Roesler, 1973 ナカキチビマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1920、標 シロマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1921、標準図鑑 準図鑑 p. 362) p. 366) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1979/5/22 , H. Inoue 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1979/9/24 , H. Inoue (29 - 0104634). (29 - 0104635). 備考:大図鑑の Pseudocadra micronella (Inoue, 1959) は 本種のシノニム。 137. Edulicodes inoueellus Roesler, 1972 マエジロマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 2004、標準 131. Nyctegretis triangulella Ragonot, 1901 図鑑 p. 366) サンカクマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1922、標準 1 ex., Yona, Okinawa, Japan, 1981/4/4 , K. Deguchi (29 - 図鑑 p. 363) 0104688). 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1978/8/13 , H. Inoue (29 - 0104636). 138 . Plodia interpunctella (Hübner, 1813) 備考:標準図鑑の Nyctegretis trigangulella Ragonot, 1901 ノシメマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1930、標準図 の種名はミススペル。 鑑 p. 366) 1 ex., Tokyo, Japan, 1974/7, H. Inoue (29 - 0104641). 132 . Boeswarthia oberleella Roesler, 1975 フタスジアカマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1960、 標準図鑑 p. 364) 1 ex., Tobira Spa., 1400m, Nagano, Japan, 1980/6/14 , H. Inoue (29 - 0104659). Peoriini シマホソメイガ族 139. Hypsotropa solipunctella Ragonot, 1901 ヒトホシホソメイガ(大図鑑 Cat. No. 2015、標準図 鑑 p. 368) 1 ex., Ikeizumi, Takefu City, Fukui, Japan, 1965/7/28 , H. 133 . Phycitodes subcretacellus (Ragonot, 1901) Fukuda (29 - 0104697). マエジロホソマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1925、 備考:大図鑑の属名は Hypsotropha となっているが、これ 標準図鑑 p. 364) は綴り間違い。 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1974/4/26 , H. Inoue (29 - 0104640). 140. Enosima leucotaeniella (Ragonot, 1888) ヒエホソメイガ(大図鑑 Cat. No. 2018:シロホソメ 134 . Phycitodes matsumurellus (Shibuya, 1927) マツムラマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1923、標準 図鑑 p. 364) イガ、Cat. No. 2019:ニイシマホソメイガ、標準図 鑑 p. 369) 1 ex., Kugenuma, Kanagawa, Japan, 1957/7/16 , H. Inoue 1 ex., Naka-karuizawa, Nagano, Japan, 1962/ 9/ 1 , T. (29 - 0104699). Maenami (29 - 0104637). 備考:大図鑑の Rhinaphe neesimella (Ragonot, 1901) ニイ 備考:大図鑑では Homoeosoma matsumurellum Shibuya, シマホソメイガは本種のシノニム。 1927 と扱われた。 141. Emmalocera venosella (Wileman, 1911) 135. Patagoniodes nipponellus (Ragonot, 1901) トビスジマダラメイガ(大図鑑 Cat. No. 1924、標準 図鑑 p. 365) 1 ex., Mikaboyama, Gunma, Japan, 1969/ 7/ 5 , Y. Saito マエジロホソメイガ(大図鑑 Cat. No. 2023、標準図 鑑 p. 371) 1 ex., Nishihama , Ishikarimachi, Hokkaido, Japan, 1981/8/27, H. Ogi (29 - 0104700). (29 - 0104638); 1 ex., Futatsuyama, Shibecha, Kushiro, Hokkaido, Japan, 1980/8/12 , K. Ijima (29 - 0104639). 142 . Paraemmalocera gensanalis (South, 1901) オオマエジロホソメイガ(大図鑑 Cat. No. 2022、標 準図鑑 p. 371) 114 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 1 ex., Mitsumine, 900 m, Chichibu, Saitama, Japan, 1♀, Na ida i z i n , Mema r u , Yabe , K uma moto, Japa n , 1983/8/27, H. Inoue (29 - 0104698). 1980/7/31, I. Ohtsuka (29 - 0104270). 備考:大図鑑では Emmalocera gensanalis South, 1901 と 備考:大図鑑では Euchromius expansus (Butler, 1881) と 扱われた。 扱われた。大図鑑には、本種は日本からは本州(伊豆半 島以西)、四国、九州、対馬から知られていると書かれて Crambidae ツトガ科 いるが、その後、佐々木(2009)、佐々木(2012)によ Crambinae ツトガ亜科 り 他 に 近 縁 な 3 種 が 日 本 に 分 布 す る こ と が 分 か り、 143 . Glaucocharis exsectella (Christoph, 1881) Miyakea 属各種の分類学上の混同、新種発見の経緯と分 シロエグリツトガ(大図鑑 Cat. No. 1449、標準図鑑 布などが詳しく報告された。標準図鑑に同属のこれら 4 p. 374) 種の交尾器が図示・解説されている。外見での識別が困 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1978/6/24 , H. Inoue 難なグループであるので、今回、本個体の交尾器を第一 (29 - 0104265). 著者の吉松が新たに解剖し、上記の種に同定した。標準 備考:大図鑑では Pareromene exsectella (Christoph, 1881) 図鑑には本種の国内での分布は、四国とだけ記されてい と扱われた。 るので、九州からの分布は今回改めて確認されたことに なる。 144 . Glaucocharis moriokensis (Okano, 1962) ハイイロエグリツトガ(大図鑑 Cat. No. 1450、標準 図鑑 p. 374) 1 ex., Tochio City, Niigata, Japan, 1970/5/26 , H. Muraki 149. Pseudargyria interruptella (Walker, 1866) ホソスジツトガ(大図鑑 Cat. No. 1456、標準図鑑 p. 377) (29 - 0104266). 1 ex . , Na ka isa mura i S t at ion , I na , Naga no, Japa n , 備考:大図鑑では Pareromene moriokensis (Okano, 1962) 1985/6/14 , H. Inoue (29 - 0104271). と扱われた。 150. Pseudocatharylla simplex (Zeller, 1877) 145. Glaucocharis vermeeri (Bleszynski, 1965) ミヤマエグリツトガ(大図鑑 Cat. No. 1451、標準図 鑑 p. 375) 1 ex., Kurodake, Oita, Japan, 1981/ 7/5 , H. Inoue (29 - マ エ キ ツ ト ガ( 大 図 鑑 Cat. No. 1466、 標 準 図 鑑 p. 379) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1979/6/29, H. Inoue (29 - 0104272). 0104267). 備考:大図鑑では Pareromene vermeeri Bleszynski, 1965 と扱われた。 151. Pseudocatharylla duplicella (Hampson, 1895) ウスチャツトガ(大図鑑 Cat. No. 1468、標準図鑑 p. 380) 146 . Microchilo inouei Okano, 1962 チビツトガ(大図鑑 Cat. No. 1454、標準図鑑 p. 377) 1 ex., Funaura, Iriomote I., Okinawa, Japan, 1980/10/810, K. Deguchi (29 - 0104273). 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1978/6/18 , H. Inoue (29 - 0104268). 152 . Calamotropha paludella purella (Leech, 1889) シロツトガ日本・台湾・中国・ロシア南東部・モン 147. Microchilo inexpectellus Bleszynski, 1965 モンチビツトガ(大図鑑 Cat. No. 1455、標準図鑑 p. 377) ゴ ル 産 の 亜 種( 大 図 鑑 Cat. No. 1469、 標 準 図 鑑 p. 380) 1 ex., Iwagami, Miura City, Kanagawa, Japan, 1973/9/20 1 ex., Funakoshi, Yokosuka, Kanagawa, Japan, 1952/6/22 , (29 - 0104274); 1 ex., Nanokamachi, Niitsu City, Niigata, H. Inoue (29 - 0104269). Japan, 1962/6/12 , S. Sakurai (29 - 0104275). 148 . Miyakea expansa (Butler, 1881) 153 . Calamotropha fulvifusalis (Hampson, 1900) ソトモンツトガ(大図鑑Cat. No. 1453、標準図鑑 p. 376) ヒメキテンシロツトガ(大図鑑 Cat. No. 1470、標準 吉松慎一ら:農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 図鑑 p. 380) 1 ex., Futatsuyama, Shibecha, Kushiro, Hokkaido, Japan, 115 1 ex., Tanigawa Spa, Gunma, Japan, 1974/8/23, Y. Kishida (29 - 0104283). 1978/7/3 , K. Ijima (29 - 0104276). 160. Chrysoteuchia culmella ussuriella (Bleszynski, 1962) 154 . Calamotropha aureliella fulvilineata Okano, 1958 ツマスジツトガ日本・ロシア南東部産の亜種(大図 フタキスジツトガ日本産の亜種(大図鑑 Cat. No. 1471、標準図鑑 p. 380) 1 ex., Senzu, Izuoshima, Tokyo, Japan, 1962/ 8/ 7, A . 鑑 Cat. No. 1479、標準図鑑 p. 382) 1 ex., Futatsuyama, Shibecha, Kushiro, Hokkaido, Japan, 1980/7/9, K. Ijima (29 - 0104285). Kawabe (29 - 0104277). 161. Chrysoteuchia diplogramma (Zeller, 1863) 155. Calamotropha shichito (Marumo, 1931) ウスクロスジツトガ(大図鑑 Cat. No. 1480、標準図 イツトガ(大図鑑 Cat. No. 1475、標準図鑑 p. 380) 鑑 p. 382) 1 ex., Yoshii, Ukihagun, Chikugo, Fukuoka , Japan, 1♀, Hottai-Falls, Chokai Village, Akita, Japan, 1979/7/23, 1966/6/15, N. Gyotoku (29 - 0104281). M. Takahashi (29 - 0104284). 156-1. Calamotropha yamanakai yamanakai Inoue, 1958 162 . Chrysoteuchia moriokensis (Okano, 1958) フタオレツトガ屋久島以北産の亜種(大図鑑 Cat. モリオカツトガ(大図鑑 Cat. No. 1482、標準図鑑 No. 1472、標準図鑑 p. 380) p. 383) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1976/9/10, H. Inoue 1 ex., Takano, Tazawako-machi, Akita, Japan, 1980/7/12 , (29 - 0104279). A. Sasaki (29 - 0104286). 156-2 . Calamotropha yamanakai owadai Inoue, 1982 163 . Chrysoteuchia distinctella (Leech, 1889) フタオレツトガ徳之島・沖縄島・石垣島・西表島 テンスジツトガ(大図鑑 Cat. No. 1483、標準図鑑 産の亜種(大図鑑 Cat. No. 1472、標準図鑑 p. 380) p. 383) 1♀, parat y pe, Komi, Iriomote Is ., Ok inawa , Japan, 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1979/6/6 , H. Inoue 1973/10/24-26 , M. Owada (29 - 0104278). (29 - 0104287). 備考:本個体には“PARATYPE”のラベルが付いていた ので、大図鑑の原記載(井上 , 1982)を見たところ、パ 164 . Chrysoteuchia porcelanella (Motschulsky, 1860) ラタイプの内の 1 個体に間違いないことが確認できた。 ナ カ モ ン ツ ト ガ( 大 図 鑑 Cat. No. 1484、Cat. No. 1485:クロマダラツトガ、標準図鑑 p. 383) 157. Calamotropha okanoi Bleszynski, 1961 1 ex . , Jyoza nkei , Hok ka ido, Japa n , 1955 / 7/ 29 , H . サ ツ マ ツ ト ガ( 大 図 鑑 Cat. No. 1473、 標 準 図 鑑 Yamanaka (29 - 0104288); 1 ex., Shinshiro, Aichi, Japan, p. 381) 1962/8/9, H. Inoue (29 - 0104289) 1 ex., Yoshiimachi, Ukihagun, Fukuoka, Japan, 1958/6/8 , 備考:Chrysoteuchia atrosignata (Zeller, 1877) クロマダ N. Gyotoku (29 - 0104280). ラツトガは標準図鑑では本種のシノニムとして扱われ た。 158 . Calamotropha brevistrigella (Caradja, 1932) ヒメキスジツトガ(大図鑑 Cat. No. 1476、標準図鑑 p. 381) 1 ex., Mt.Kiyozumi, Chiba, Japan, 1959/7/2 , T. Maenami (29 - 0104282). 165. Chrysoteuchia daisetsuzana (Matsumura, 1927) ダイセツツトガ(大図鑑 Cat. No. 1486、標準図鑑 p. 383) 1 ex., Summit of Mt. Muine, Hokkaido, Japan, 1977/7/21, Y. Kusunoki (29 - 0104290). 159. Calamotropha nigripunctella (Leech, 1889) キスジツトガ(大図鑑 Cat. No. 1477、標準図鑑 p. 382) 116 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 166 . Crambus pascuellus (Linnaeus, 1758) 173 . Agriphila aeneociliella (Eversmann, 1844) ギントガリツトガ(大図鑑 Cat. No. 1487、標準図鑑 シロフタスジツトガ(大図鑑 Cat. No. 1499、標準図 p. 383) 鑑 p. 386) 1 ex., Shibecha, Kushiro, Hokkaido, Japan, 1981/7/24 , K. 1 ex., Futatsuyama, Shibecha, Kushiro, Hokkaido, Japan, Ijima (29 - 0104291). 1980/9/3 , K. Ijima (29 - 0104299). 167. Crambus silvellus (Hübner, 1813) 174 . Catoptria permiaca (Petersen, 1924) ヒメギンスジツトガ(大図鑑 Cat. No. 1488、標準図 ヒシモンツトガ(大図鑑 Cat. No. 1510、標準図鑑 鑑 p. 384) p. 386) 1 ex., Akanuma, Tsuruimura, Kushiro, Hokkaido, Japan, 1 ex., Kiyosato, 1300m, Yamanashi, Japan, 1975/8/2-3, H. 1982/8/15, K. Ijima (29 - 0104292). Inoue (29 - 0104303). 備考:大図鑑の記載年 1834 は間違い。 168 . Crambus argyrophorus Butler 1878 シロスジツトガ(大図鑑 Cat. No. 1493、標準図鑑 p. 384) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1985/6/5, H. Inoue (29 - 0104296). 175. Catoptria munroeella Bleszynski, 1965 オオヒシモンツトガ(大図鑑 Cat. No. 1505、標準図 鑑 p. 387) 1 ex., Nakabusa Spa, Nagano, Japan, 1961 / 8/ 23 , H. Yamanaka (29 - 0104305). 169. Crambus pseudargyrophorus Okano, 1960 ニセシロスジツトガ(大図鑑 Cat. No. 1494、標準図 鑑 p. 385) 1 ex., Norikura Hights, 1500m, Nagano, Japan, 1978/7/26, H. Inoue (29 - 0104297). 176 . Catoptria montivaga (Inoue, 1955) フタテンツトガ(大図鑑 Cat. No. 1501、標準図鑑 p. 387) 1 ex ., Kura igaha ra , Mt . Nor ikura , Naga no, Japa n, 1980/8/11, K. Jinbo (29 - 0104304). 170. Crambus virgatellus Wileman, 1911 ナカグロツトガ(大図鑑 Cat. No. 1496、標準図鑑 p. 385) 1 ex., Uwanodai, Kawabe Town, Akita, Japan, 1980/8/31, A. Sasaki (29 - 0104298). 177. Catoptria nana Okano, 1959 シロモンツトガ(大図鑑 Cat. No. 1508、標準図鑑 p. 387) 1 ex., Akadani, Niigata, Japan, 1965/9/5 , R. Sato (29 0104306). 171. Crambus sibiricus Alphéraky, 1897 ホソエダツトガ(大図鑑 Cat. No. 1489、標準図鑑 p. 385) 1 ex ., Eboshidake, 20 0 0 m, Iide, Yamagat a , Japan, 1968/8/1, K. Jinbo (29 - 0104293). 178 . Catoptria harutai Okano, 1958 タ カ ネ ツ ト ガ( 大 図 鑑 Cat. No. 1507、 標 準 図 鑑 p. 388) 1♂, paratype, Mt. Arakawa, 3080m. South Alps, Shizuoka, Japan, 1958/8/2 , T. Haruta (29 - 0104300). 172 . Crambus perlellus kirinellus Bleszynski, 1965 備考:本個体には“PARATYPE”のラベルが付いていた ウスギンツトガ中国東北部、ロシア南東部、サハリ ので、Okano (1958) の原記載を見たところ、パラタイプ ン、日本産の亜種(大図鑑 Cat. No. 1492、標準図鑑 の内の 1 個体に間違いないことが確認できた。 p. 385) 1 ex., Shiitakegoya, 800 m, Mt. Hanna, Quelpart Island, 179. Catoptria persephone Bleszynski, 1965 Korea , 19 6 8 / 7/ 13 , T. Sh i roz u & Y. Nish ida ( 29 - ナカオビチビツトガ(大図鑑 Cat. No. 1511、標準図 0104294); 1 ex., Mt.Ashibetsu, 1700 m, Hokkaido, Japan, 鑑 p. 389) 1976/8/5, K. Jinbo (29 - 0104295). 1 ex., Onuma spa, Hachimantai, Akita, Japan, 1974/8/9 - 吉松慎一ら:農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 10, R. Sato (29 - 0104302). 117 メイガ、標準図鑑 p. 391) 1 ex., Kurio (A), Yakushima I., K agoshima , Japan, 180. Catoptria satakei (Okano, 1962) 1971/9/27, T. Watanabe (29 - 0104328). ダイセツチビツトガ(大図鑑 Cat. No. 1513、標準図 鑑 p. 389) 1 ex., Rupeshinai, Sounkyo, Hokkaido, Japan, 1982/8/13 , H. Ogi (29 - 0104301). 187. Ancylolomia japonica Zeller, 1877 ツトガ(大図鑑 Cat. No. 1521、標準図鑑 p. 391) 1 ex., Hananoego, Yakushima I., Kagoshima, Japan, 1974/7/26 , T. Watanabe (29 - 0104313). 181. Flavocrambus striatellus (Leech, 1889) クロスジツトガ(大図鑑 Cat. No. 1514、標準図鑑 p. 389) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/9/2 , H. Inoue (29 - 0104307). 188 . Ancylolomia westwoodi bituberosella Amsel, 1959 リュウキュウツトガ日本の南西諸島と東南アジア 産の亜種(大図鑑 Cat. No. 1522、標準図鑑 p. 391) 1 e x . , G i n a m a , K u n i g a m i- s on , Ok i n a w a , Ja p a n , 1980/8/12-13 , A. Seino (29 - 0104314). 182 . Xanthocrambus lucellus (Herrich-Schäffer, 1848) ウスグロツトガ(大図鑑 Cat. No. 1517、標準図鑑 p. 390) Scopariinae ヤマメイガ亜科 189. Scoparia nipponalis Inoue, 1982 1 ex., Sekiyahama 315 , Niigata, Japan, 1958/6/ 14 , H. オオヤマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1434、標準図鑑 Muraki (29 - 0104308). p. 392) 1 ex., Shibecha, Kushiro, Hokkaido, Japan, 1982/7/20, K. 183 . Neopediasia mixtalis (Walker, 1863) Ijima (29 - 0104254). クロフタオビツトガ(大図鑑 Cat. No. 1518、標準図 鑑 p. 390) 190. Scoparia congestalis Walker, 1859 1 ex., Shibecha, Kushiro, Hokkaido, Japan, 1981/8/26, K. ホソバヤマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1436、標準図鑑 Ijima (29 - 0104309). p. 393) 1 ex., Takao-san, Tokyo, Japan, 1963/9/28 , E. Jinbo (29184 . Parapediasia teterrella (Zincken, 1821) シバツトガ(大図鑑 Cat. No. 1519、標準図鑑 p. 390) 0104255); 1 ex., A kigami Spa, 1000 m, Gifu, Japan, 1982/6/26 , H. Inoue (29 - 0104257) [ クロモン型 ]. 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1978/6/14 , H. Inoue 備考:大図鑑の Scoparia isochroalis Hampson, 1907 は本 ( 29 - 010 4311); 1♀, Bushi , I r uma , Sa it a ma , Japa n , 種のシノニム。また、大図鑑ではクロモン型は「Scoparia 1978/7/30, H. Inoue (29 - 0104310). の名が melanomaculosa Inoue, 1982 クロモンヤマメイガ」 備考:大図鑑のシノニミックカタログでは命名者名は正 あったが、本種のシノニムとされており、上記の [ クロ しく表記されているが、その本文中の命名者名Zellerは間 モン型 ] がそれに当たる。標準図鑑の本種の解説文中の 違いで、Zinckenが正しい。また、標準図鑑の種名teterella クロモン型の図版番号が間違っており、4-55-50 ~ 52 が は綴り間違い。 正しい。 185. Platytes ornatella (Leech, 1889) 191. Scoparia spinata Inoue, 1982 ナガハマツトガ(大図鑑 Cat. No. 1520、標準図鑑 ノリクラヤマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1437、標準図 p. 391) 鑑 p. 393) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/8/31, H. Inoue 1♂, paratype, Norikura Heights, 1500 m, Nagano, Japan, (29 - 0104312). 1978/7/26 , H. Inoue (29 - 0104256). 備考:本個体には“PARATYPE”のラベルがついていた 186 . Gargela xanthocasis (Meyrick, 1897) シロチビツトガ(大図鑑 Cat. No. 1528: シロチビノ ので、大図鑑の原記載(井上 , 1982)を見たところ、パ ラタイプの一部標本として、長野県乗鞍高原(1500m) 118 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) の♂が指定されており、採集日・採集者は掲載されてい の一部標本として、長野県の個体が指定されており、採 ないが、パラタイプに間違いないと考えた。 集者は掲載されていないが、6-10 月に山地で多産すると 記述されており(他の全部のパラタイプも含む)、パラタ 192 . Scoparia submolestalis Inoue, 1982 イプに間違いないと考えた。 ウスモンヤマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1440、標準図 鑑 p. 393) 196 . Eudonia alpina (Curtis, 1850) 1 ex., Kisojihara, 1200 m, Nagawamura, Nagano, Japan, アルプスヤマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1446、標準図 1983/7/1, H. Inoue (29 - 0104258). 鑑 p. 395) 1♀, Kitadake-koya, S. Alps, Yamanashi, Japan, 1962/8/6193 . Scoparia yakushimana Inoue, 1982 7, K. Jinbo (paratype of Eudonia. japanalpina Inoue, 1982) ヤクシマクロヤマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1441、標 (29 - 0104263). 準図鑑 p. 394) 備考:大図鑑の Eudonia japanalpina Inoue, 1982 は本種 1♀, paratype, Shiratani, Yakushima I., Kagoshima, Japan, のシノニム。 1972/9/15, T Watanabe (29 - 0104259). 備考:本個体には“PARATYPE”のラベルがついていた 197. Eudonia microdontalis (Hampson, 1907) ので、大図鑑の原記載(井上 , 1982)を見たところ、パ スジボソヤマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1444、標準図 ラタイプの一部標本として、屋久島白谷の個体が指定さ 鑑 p. 395) れており、採集者は掲載されていないが、5 月と 9-10 月 1 ex . , Nor i k u r a Height s , 15 0 0 m , Na ga no, Japa n , にとれていると記述されており(他の全部のパラタイプ 1978/7/26 , H. Inoue (29 - 0104262). も含む) 、パラタイプに間違いないと考えた。 198 . Micraglossa aureate Inoue, 1982 194 . Scoparia tohokuensis Inoue, 1982 トウホクヤマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1442、標準図 鑑 p. 394) キンバネヤマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1448、標準図 鑑 p. 396) 1♀, paratype, Shiratani, Yakushima, Kagoshima, Japan, 1♀, paratype, Shinzan Park, Honjoh City, Akita, Japan, 1974/7/25, H. Inoue (29 - 0104264). 1976/9/19, A. Sasaki (29 - 0104260). 備考:本個体には“PARATYPE”のラベルがついていた 備考:本個体には“PARATYPE”のラベルがついていた ので、大図鑑の原記載(井上 , 1982)を見たところ、パ ので、大図鑑の原記載(井上 , 1982)を見たところ、パ ラタイプの一部標本として、屋久島白谷の個体が指定さ ラタイプの一部標本として、秋田県本庄市新山公園の個 れており、採集者は掲載されていないが、6-7 月と 10 月 体が指定されており、採集者は掲載されていないが、9 にとれていると記述されており(他の全部のパラタイプ 月の中・下旬にとれていると記述されており(他の全部 も含む)、パラタイプに間違いないと考えた。 のパラタイプも含む) 、パラタイプに間違いないと考え た。 Schoenobiinae オオメイガ亜科 199. Leechia sinuosalis South, 1901 195. Eudonia truncicolella (Stainton, 1849) ヒラノヤマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1443、標準図鑑 p. 394) 1♀, Asama-Sanso, Komoro, Nagano, Japan, 1959/7/29, T. フタスジシロオオメイガ(大図鑑 Cat. No. 1420、標 準図鑑 p. 397) 1 ex . , S h i r at a n i , Ya k ush i m a , K a gosh i m a , Jap a n , 1974/7/25, H. Inoue (29 - 0104239). Maenami (paratype of Eudonia hiranoi Inoue, 1982) (29- 0104261). 200. Patissa fulvosparsa (Butler, 1881) 備考:大図鑑で記載された Eudonia hiranoi Inoue, 1982 キボシオオメイガ(大図鑑 Cat. No. 1423、標準図鑑 は本種のシノニム。本個体には“PARATYPE”のラベル p. 397) が つ い て い た の で、 大 図 鑑 の Eudonia hiranoi Inoue, 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1976/6/25, H. Inoue 1982 の原記載(井上 , 1982)を見たところ、パラタイプ (29 - 0104241). 吉松慎一ら:農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 201. Scirpophaga lineata (Butler, 1879) 119 1968/7/12 , S. Sakurai (29 - 0104250). ヒトスジオオメイガ(大図鑑 Cat. No. 1424、標準図 鑑 p. 397) 208 . Schoenobius sasakii Inoue, 1982 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1985/7/27, H. Inoue クロフキオオメイガ(大図鑑 Cat. No. 1432、標準図 (29 - 0104242). 鑑 p. 399) 1♂1♀, paratypes, A-40 area, Ohgata Village, Akita, Japan, 202 . Scirpophaga xanthopygata Schawerda, 1922 1979/7/20, A. Sasaki (♂:29 - 0104251, ♀:29 - 0104252). ニセムモンシロオオメイガ(大図鑑 Cat. No. 1426、 備考:雌雄とも“PARATYPE”のラベルがついていたの 標準図鑑 p. 398) で、大図鑑の原記載(井上 , 1982)を見たところ、採集 1♂, Banna, Ishigaki I., Okinawa, Japan, 1974 /10/4 , S. 日・採集者は掲載されていないが、パラタイプの一部標 Azuma (29 - 0104243); 1♀, Sonai, Yonaguni Is., Okinawa, 本に間違いないと考えた。ところで、大図鑑ではタイプ Japan, 1965/5/25, S. Azuma (29 - 0104244). 産地は秋田県大畑村となっているが、標準図鑑でも述べ 備 考: 雌 雄 と も 解 剖 さ れ て お り、 本 種 で あ る と の られているように、これは誤記で、正しくは大潟村であ “Lewanich det. 1977”の同定ラベルが付いている。 り、上記のラベルからもこのことが正しいことが分か る。 203 . Scirpophaga excerptalis (Walker, 1863) シロオオメイガ(大図鑑 Cat. No. 1427、標準図鑑 p. 398) 1 ex., Shikinejima, Izu IsIs., Tokyo, Japan, 1966/6/16-17, T. Maenami (29 - 0104245); 1 ex., Banna, Ishigaki I., Okinawa, Japan, 1965/7/23 , H. Inoue (29 - 0104246). 209. Catagela subdodatella Inoue, 1982 フタテンオオメイガ(大図鑑 Cat. No. 1433、標準図 鑑 p. 400) 1♂, paratype, Nanokamachi, Niigata, Japan, 1962/8/30, S. Sakurai (29 - 0104253). 備考:本個体には“PARATYPE”のラベルがついていた 204 . Scirpophaga parvalis (Wileman, 1911) ので、大図鑑の原記載(井上 , 1982)を見たところ、採 マエウスグロオオメイガ(大図鑑 Cat. No. 1428、標 集日・採集者は掲載されていないが、パラタイプの一部 準図鑑 p. 398) 標本に間違いないと考えた。 1 ex., Kitanokawa, Kochi, Japan, 1957/9/17, S. Nakamura (29 - 0104247). Acentropinae ミズメイガ亜科 210. Elophila interruptalis ezoensis Yoshiyasu, 1985 205. Scirpophaga nivella (Fabricius, 1794) ツマキオオメイガ(大図鑑 Cat. No. 1429、標準図鑑 p. 399) マダラミズメイガ北海道産の亜種(大図鑑 Cat. No. 1803、標準図鑑 p. 400) 1 ex., Shimizu, Tomakomai, Hokkaido, Japan, 1982/8/13 , 1♂, Sonai, Yonaguni Is., Okinawa, Japan, 1965/5/23 , S. H. Ogi (29 - 0104539). Azuma (29 - 0104248). 備考:大図鑑では Nymphula interruptalis (Pryer, 1877) と 扱われた。標準図鑑によると、日本の本州以南には名義 206 . Scirpophaga virginia Schultze, 1908 タイプ亜種が分布する。 コガタシロオオメイガ(大図鑑 Cat. No. 1430、標準 図鑑 p. 399) 211. Elophila fengwhanalis (Pryer, 1877) 1 ex., Niitsu City, Niigata, Japan, 1962/8/25, S. Sakurai ネジロミズメイガ(大図鑑 Cat. No. 1805、標準図鑑 (29 - 0104249). p. 401) 1 ex., Naganuma, Tennoh-Town, Akita, Japan, 1978/7/20, 207. Scirpophaga gotoi Lewvanich, 1981 M. Takahashi (29 - 0104540). ウスキシロオオメイガ(大図鑑 Cat. No. 1431a、標 備考:大図鑑では Nymphula fengwhanalis (Pryer, 1877) 準図鑑 p. 399) と扱われた。 1 ex . , Na nok a mach i , Ni it su Cit y, Ni igat a , Japa n , 120 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 212 . Elophila turbata (Butler, 1881) S. Azuma (29 - 0104546). ヒメマダラミズメイガ(大図鑑 Cat. No. 1806、標準 図鑑 p. 402) 218 . Nymphicula saigusai Yoshiyasu, 1980 1♀, Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1978/9/26 , H. Inoue アトモンミズメイガ(大図鑑 Cat. No. 1825、標準図 (29 - 0104541). 鑑 p. 407) 備考:Yoshiyasu (1985) によると、大図鑑の Nymphula 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1979/8/10, H. Inoue responsalis (Walker, 1866) は本種の誤同定である。 (29 - 0104547). 213 . Parapoynx fluctuosalis (Zeller, 1852) イネミズメイガ(大図鑑 Cat. No. 1814、標準図鑑 p. 404) 1 ex., Nishinakama, Amami-oshima, Kagoshima, Japan, Cybalomiinae モンメイガ亜科 219. Hendecasis apiciferalis (Walker, 1866) ツマグロモンメイガ(大図鑑 Cat. No. 1547:マエク ロモンシロノメイガ、標準図鑑 p. 410) 1963/7/19 -20, H. Inoue (29 - 0104544). 1 ex., Niitsu City, Niigata, Japan, 1963/7/10, S. Sakurai 備考:大図鑑では本属名を Paraponyx と扱っているが、 ( 29 - 010 433 4 ), 1 ex . , Ni it su Cit y, Ni igat a , Japa n , これは綴り間違い。 1975/6/8 , S. Sakurai (29 - 0104340). 備考:大図鑑ではNeohendecasis apiciferalis (Walker, 1866) 214 . Paracymoriza prodigalis (Leech, 1889) と扱われた。 ゼニガサミズメイガ(大図鑑 Cat. No. 1811、標準図 鑑 p. 405) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1983/7/25, H. Inoue (29 - 0104542). 220. Trichophysetis cretacea (Butler, 1879) フタオビモンメイガ(大図鑑 Cat. No. 1554: フタオ ビノメイガ、標準図鑑 p. 410) 備考:大図鑑の Nymphula bifurcalis (Wileman, 1911) は本 1 ex . , Nor i k u r a Height s , 15 0 0 m , Na ga no, Japa n , 種のシノニム。 1978/7/26 , H. Inoue (29 - 0104341). 215. Paracymoriza nigra (Warren, 1896) クロバミズメイガ(大図鑑 Cat. No. 1813、標準図鑑 p. 406) 1 ex . , S h i r at a n i , Ya k ush i m a , K a gosh i m a , Jap a n , Evergestinae ニセノメイガ亜科 221. Evergestis forficalis (Linnaeus, 1758) ナニセノメイガ(大図鑑Cat. No. 1523: ナノメイガ、 標準図鑑 p. 411) 1974/7/25, H. Inoue (29 - 0104543). 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1984/9/24 , H. Inoue 備考:大図鑑では Nymphula nigra Warren, 1896 と扱われ (29 - 0104315). た。 222 . Evergestis extimalis (Scopoli, 1763) 216 . Potamomusa midas (Butler, 1881) キオビミズメイガ(大図鑑 Cat. No. 1823、標準図鑑 p. 406) 1 ex., Miyanoura (C), Yakushima, Kagoshima, Japan, ウスベニニセノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1524: ウス ベニノメイガ、標準図鑑 p. 411) 1 ex., Shibecha, Kushiro, Hokkaido, Japan, 1955/7/13 , K. Ijima (29 - 0104316). 1972/8/11, T. Watanabe (29 - 0104545). 備考:大図鑑では Cataclysta midas Butler, 1881 と扱われ た。 223 . Evergestis junctalis junctalis (Warren, 1892) フタモンキニセノメイガ北海道・サハリン産の亜種 (大図鑑Cat. No. 1525: フタモンキノメイガ、標準図 217. Eoophyla inouei Yoshiyasu, 1979 鑑 p. 411) ヨツクロモンミズメイガ(大図鑑 Cat. No. 1824、標 1 ex . , Peipa nya ma , A sa h i k awa , Hok k a ido, Japa n , 準図鑑 p. 407) 1983/7/12 , Y. Kusukawa (29 - 0104317). 1 ex., Shirahama, Iriomote I., Okinawa, Japan, 1971/8/23, 吉松慎一ら:農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 224 . Evergestis holophaealis (Hampson, 1913) 121 準図鑑 p. 415) ヘリジロカラスニセノメイガ (大図鑑Cat. No. 1526: 1 ex., Funaura, Iriomote I., Okinawa, Japan, 1978/10/1, S. ヘリジロカラスノメイガ、標準図鑑 p. 412) Azuma (29 - 0104444). 1 ex., Hōshi-onsen, Gunma, Japan, 1984/6/23 , H. Inoue (29 - 0104319). 230. Torulisquama evenoralis (Walker, 1859) セスジノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1685、標準図鑑 Odontiinae クルマメイガ亜科 225. Clupeosoma pryeri (Butler, 1881) p. 416) 1 ex., Nangu Spa, Ina, Nagano, Japan, 1985/6/14, H. Inoue ナカアカクルマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1548: ナカ (29 - 0104445). アカノメイガ、標準図鑑 p. 412) 備考:大図鑑では、Sinibotys evenoralis (Walker, 1859) と 1 ex., Nashimoto, S. Izu, Shizuoka, Japan, 1959/7/13 , H. 扱われた。 Inoue (29 - 0104335). 231. Torulisquama obliquilinealis (Inoue, 1982) 226 . Hemiscopis cinerea Warren, 1892 ウスムラサキクルマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1549: ウスムラサキスジノメイガ、標準図鑑 p. 413) ヒメセスジノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1686、標準図 鑑 p. 416) 1 ex., Akigami Spa, 1000 m, Gifu, Japan, 1982/6/26 , H. 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1981/6/25, H. Inoue Inoue (29 - 0104446). (29 - 0104336). 備考:大図鑑では、Sinibotys obliquilinealis Inoue, 1982 と 備考:大図鑑では、Clupeosoma cinereum (Warren, 1892) 扱われた。 と扱われた。 232 . Circobotys heterogenalis gensanalis (South, 1901) 227. Hemiscopis purpurea (Inoue, 1982) ムラサキクルマメイガ(大図鑑 Cat. No. 1550: ムラ サキスジノメイガ、標準図鑑 p. 413) 1♂, paratype, Are, Tsushima, Nagasaki, Japan, 1973/7/7, キホソノメイガ本州、四国、九州、朝鮮半島南部産 の亜種(大図鑑 Cat. No. 1687、標準図鑑 p. 416) 1 ex., Sakasamaki Spa., Nakauonuma, Niigata, Japan, 1983/7/2-8 , H. Inoue (29 - 0104447). T. Watanabe (29 - 0104337). 備考:大図鑑では、Clupeosoma purpureum Inoue, 1982 と 233 . Circobotys nycterina Butler, 1879 扱われた。本個体には“PARATYPE”のラベルが付いて カギバノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1689、標準図鑑 いたので、大図鑑の原記載(井上 , 1982)を見たところ、 p. 417) パラタイプの一部標本として、対馬阿連の個体も含まれ 1♂, Shirahone Spa., 1700m, Nagano, Japan, 1980/6/15, H. ており、採集日・採集者は掲載されていないが、パラタ Inoue (29 - 0104449). イプに間違いないと考えた。 234 . Circobotys aurealis (Leech, 1889) Glaphyriinae ハイマダラノメイガ亜科 228 . Hellula undalis (Fabricius, 1781) キベリハネボソノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1690、標 準図鑑 p. 417) ハイマダラノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1527、標準図 1♂1♀, Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1982/6/13, H. Inoue 鑑 p. 414) (♂:29 - 0104450, ♀:29 - 0104451). 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1975/10/10, H. Inoue (29 - 0104318). 235. Circobotys cryptica Munroe & Mutuura, 1969 ミナミホソバノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1688、標準 Pyraustinae ノメイガ亜科 Pyraustini ノメイガ族 229. Hyalobathra illectalis (Walker, 1859) チャバネトガリノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1682、標 図鑑 p. 417) 1♂, Aikodake, Yakushima, Kagoshima, Japan, 1974/7/26, H. Inoue (29 - 0104448). 122 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 236 . Sitochroa palealis (Denis & Schiffermüller, 1775) 図鑑 p. 419) ウラグロシロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1715、標準 1 ex., Odaru Spa., Izu Pen., Shizuoka, Japan, 1961/5/31, 図鑑 p. 418) H. Inoue (29 - 0104486); 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, 1ex., Nashimoto, South Izu, Shizuoka, Japan, 1960/7/3, H. Japan, 1977/5/28 , H. Inoue (29 - 0104487). Inoue (29 - 0104474). 244 . Paranomis sidemialis Munroe & Mutuura, 1968 237. Sitochroa verticalis (Linnaeus, 1758) クロミャクノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1716、標準図 鑑 p. 418) 1 ex., Futatsuyama, Shibecha, Kushiro, Hokkaido, Japan, キタホシオビホソノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1739、 標準図鑑 p. 420) 2 exs., Futatsuyama, Shibecha, Kushiro, Hokkaido, Japan, 1980/8/10, K. Ijima (29 - 0104488 , 29 - 0104489) 1980/7/13 , K. Ijima (29 - 0104475). 245. Algedonia luctualis diversa (Butler, 1881) 238 . Sitochroa umbrosalis (Warren, 1892) マエキシタグロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1717、標 準図鑑 p. 418) 1 ex., Kanabe Spa, S. Izu, Shizuoka, Japan, 1960/5/30, H. ヨツメクロノメイガ本州、九州、朝鮮半島、中国産 の亜種(大図鑑 Cat. No. 1741、標準図鑑 p. 420) 1 ex., Tobira Spa., 1400m, Nagano, Japan, 1980/6/14 , H. Inoue (29 - 0104490). Kobayashi (29 - 0104476). 246 . Phlyctaenia stachydalis (Germar, 1821) 239. Callibotys wilemani Munroe & Mutuura, 1969 キベリスカシノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1793、標準 図鑑 p. 418) クロマダラキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1742、標準 図鑑 p. 421) 1 ex., Futatsuyama, Shibecha, Kushiro, Hokkaido, Japan, 1 ex., Nashimoto, S. Izu, Shizuoka, Japan, 1959/8/10 -12 , 1968/7/18 , K. Ijima (29 - 0104491) H. Inoue (29 - 0104530). 備考:大図鑑の Phlyctaenia coronatoides (Inoue, 1960) は 本種のシノニム。 240. Margaritia sticticalis (Linnaeus, 1761) ヘリキスジノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1719、標準図 鑑 p. 418) 1 ex., Shiretoko Pass, E. Hokkaido, Hokkaido, Japan, 1982/8/12 , K. Ijima (29 - 0103583). 247. Phlyctaenia perlucidalis (Hübner, 1809) クシガタノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1743、標準図鑑 p. 421) 1 ex., Futatsuyama, Shibecha, Kushiro, Hokkaido, Japan, 1980/7/30, K. Ijima (29 - 0104492) 241. Sclerocona acutella (Eversmann, 1842) タテシマノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1735、標準図鑑 p. 419) 1 ex., Kugenuma, Kanagawa, Japan, 1957/5/20, H. Inoue (29 - 0104484). 248 . Mutuuraia terrealis (Treitschke, 1829) スジマガリノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1744、標準図 鑑 p. 421) 1 ex., Futatsuyama, Shibecha, Kushiro, Hokkaido, Japan, 1969/7/12 , K. Ijima (29 - 0104493) 242 . Prodasycnemis inornata (Butler, 1879) キムジノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1736、標準図鑑 249 -1. Perinephela lancealis pryeri (Munroe & Mutuura, p. 419) 1968) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/5/27, H. Inoue キイロノメイガ北海道産の亜種(大図鑑 Cat. No. (29 - 0104485). 1745、標準図鑑 p. 421) 1♂, Rupeshinai, Sounkyo, Hokkaido, Japan, 1982/7/25 , 243 . Nomis albopedalis Motschulsky, 1861 ホシオビホソノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1738、標準 H. Ogi (29 - 0104494). 吉松慎一ら:農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 249 -2 . Perinephela lancealis honshuensis (Munroe & 123 1983/8/27, H. Inoue (29 - 0104502). Mutuura, 1968) キイロノメイガ本州、四国、九州産の亜種(大図 鑑 Cat. No. 1745、標準図鑑 p. 421) 1♂, Akigami Spa, 1000 m, Gifu, Japan, 1982/6/ 26 , H. Inoue (29 - 0104495). 256 . Paratalanta jessica (Butler, 1878) ウスオビキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1794、標準図 鑑 p. 424) 1 ex., Shirahone Spa., 1700m, Nagano, Japan, 1980/6/15, H. Inoue (29 - 0104531). 250. Paliga minnehaha (Pryer, 1877) マエベニノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1747、標準図鑑 備考:大図鑑では Microstega jessica (Butler, 1878) と扱わ れた。 p. 422) 1 ex., Nashimoto, S. Izu, Shizuoka, Japan, 1960/5/15, H. Inoue (29 - 0104497). 257. Demobotys pervulgalis pervulgalis (Hampson, 1913) トガリキノメイガ日本産の亜種(大図鑑 Cat. No. 1777、標準図鑑 p. 424) 251. Paliga auratalis (Warren, 1895) ヘリジロキンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1749、標準 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1978/6/13 , H. Inoue (29 - 0104519). 図鑑 p. 422) 1 ex., Mitsumine, 900 m, Chichibu, Saitama, Japan, 1983/8/27, H. Inoue (29 - 0104498). 258 . Crypsiptya coclesalis (Walker, 1859) タケノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1773、標準図鑑 p. 424) 1 ex., Shuri, Okinawa I., Okinawa, Japan, 1960/4/25 , S. 252 . Opsibotys perfuscalis Munroe & Mutuura, 1969 Azuma (29 - 0104516). ミヤマウスグロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1751、標 備考:大図鑑では、Coclebotys coclesalis (Walker, 1859) と 準図鑑 p. 423) 扱われた。 1 ex . , A rash iya ma , A sa h i k awa , Hok k a ido, Japa n , 1983/7/15, Y. Kusunoki (29 - 0104500). 259. Xanthopsamma genialis (Leech, 1889) キンバネスジノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1775、標準 253 . Proteurrhypara ocellalis (Warren, 1892 ) 図鑑 p. 425) ナカミツテンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1746、標準 1 ex., Tobira Spa., 1400m, Nagano, Japan, 1980/6/14 , H. 図鑑 p. 423) Inoue (29 - 0104517). 1 ex., Karuizawa, Nagano, Japan, 1958/6/1, T. Haruta (290104496). 260. Nascia cilialis virgatalis (Christoph, 1881) 備考:標準図鑑によると亜種はあまり明確ではなく、将 スジモンカバノメイガ日本、ロシア南東部産の亜 来多数の個体を集めて再検討する必要があるとされてい 種(大図鑑 Cat. No. 1776、標準図鑑 p. 426) るので、ここでは特に亜種は設けなかった。 1 ex., Futatsuyama, Shibecha, Kushiro, Hokkaido, Japan, 1980/7/21, K. Ijima (29 - 0104518). 254 . Paratalanta ussurialis (Bremer, 1864) フチグロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1752、標準図鑑 備考:大図鑑で適用された日本の亜種 kumatai Munroe & Mutuura, 1968 は、本亜種のシノニム。 p. 423) 1♂, Tokatta, Miyagi, Japan, 1969/6/16, T. Watanabe (290104501). 261. Pyrausta panopealis (Walker, 1859) ベニフキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1778、標準図鑑 p. 426) 255. Paratalanta taiwanensis sasakii Inoue, 1982 キイロフチグロノメイガ日本、ロシア南東部産の 亜種(大図鑑 Cat. No. 1754、標準図鑑 p. 424) 1♀, M it sum i ne , 9 0 0 m , Chichibu , S a it a ma , Japa n , 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1978/8/13 , H. Inoue (29 - 0104520). 124 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 262 . Pyrausta neocespitalis Inoue, 1982 鑑 p. 429) コチャオビノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1779、標準図 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1978/8/16 , H. Inoue 鑑 p. 426) (29 - 0104533). 1 ex., Hikosan, Buzen, Fukuoka, Japan, 1959/ 7/28 , H. Kuroko (29 - 0104521). 270. Anania egentalis (Christoph, 1881) クロヒメトガリノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1799、標 263 . Pyrausta tithonialis Zeller, 1872 準図鑑 p. 429) ウスベニキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1782、標準図 1 ex., Nangū Spa., Ina, Nagano, Japan, 1985/6/14, H. Inoue 鑑 p. 427) (29 - 0104535). 1 ex., Tobira Pass., 1400m, Nagano, Japan, 1978/7/28 , H. 備考:大図鑑の Anania fuscoverbascalis Mutuura, 1955 は Inoue (29 - 0104523). 本種のシノニム。また、この記載年は誤りで、正しくは 1954 年である。 264 . Pyrausta unipunctata Butler, 1881 ヒトモンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1784、標準図鑑 p. 427) 1 ex., Omuroyama, Izu Pen., Shizuoka, Japan, 1960/7/24 , H. Inoue (29 - 0104524). 271. Anania albeoverbascalis Yamanaka, 1966 ウスヒメトガリノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1798、標 準図鑑 p. 429) 1 ex., Mitsumine, 900 m, Chichibu, Saitama, Japan, 1983/8/27, H. Inoue (29 - 0104534). 265. Pyrausta limbata (Butler, 1879) トモンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1787、標準図鑑 p. 427) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1978/8/28 , H. Inoue (29 - 0104526). 272-1. Anania funebris astrifera (Butler, 1879) シロモンクロノメイガ本州、四国、朝鮮半島南部 産の亜種(大図鑑 Cat. No. 1800、標準図鑑 p. 430) 1 ex., Kamikochi, Nagano, Japan, 1951/ 7/28 , H. Inoue (29 - 0104536). 266 . Pyrausta fuliginata Yamanaka, 1978 ウスオビクロチビノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1785、 標準図鑑 p. 427) 272-2 . Anania funebris assimilis (Butler, 1879) シロモンクロノメイガ千島列島国後島、色丹島、 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/7/17, H. Inoue 北海道産の亜種(大図鑑 Cat. No. 1800、標準図鑑 (29 - 0104525). p. 430) 1 ex., Shibecha, Kushiro, Hokkaido, Japan, 1965/7/2 , K. 267. Pyrausta chrysitis Butler, 1881 Ijima (29 - 0104537). カクモントビノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1790、標準 図鑑 p. 428) 273 . Psammotis orientalis Munroe & Mutuura, 1968 1 ex., Kanzaki, Izumi City, Miyagi, Japan, 1967/8/19, T. ウスジロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1801、標準図鑑 Watanabe (29 - 0104527). p. 430) 1 ex., Shibecha, Kushiro, Hokkaido, Japan, 1964/8/12 , K. 268 . Pyrausta mutuurai Inoue, 1982 Ijima (29 - 0104538). キオビトビノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1791、標準図 鑑 p. 428) 274 . Ostrinia palustralis memnialis (Walker, 1859) 1 ex., Agero, Ōmimachi, Niigata, Japan, 1960/6/4, R. Sato ユウグモノメイガ日本、朝鮮半島、中国東部産の亜 (29 - 0104528). 種(大図鑑 Cat. No. 1757、標準図鑑 p. 430) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/8/31, H. Inoue 269. Anania verbascalis (Denis & Schiffermüller, 1775) ヒメトガリノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1797、標準図 (29 - 0104503). 吉松慎一ら:農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 275. Ostrinia latipennis (Warren, 1892) ウスジロキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1758、標準図 鑑 p. 430) 1 ex., Jizo Pass., 1600 m, Nagano, Japan, 1972/ 7/1, H. Inoue (29 - 0104504). 125 Spilomelini ヒゲナガノメイガ族 279. Acropentias aurea (Butler, 1878) クロスジキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1422: クロス ジキオオメイガ、標準図鑑 p. 433) 1 ex., Mikaboyama, 750 m, Gunma, Japan, 1969/6/20, Y. Saito (29 - 0104240). 276-1. Ostrinia scapulalis pacifica Mutuura & Munroe, 1970 280. Cirrhochrista brizoalis (Walker, 1859) アズキノメイガ北海道産の亜種(大図鑑 Cat. No. モンキシロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1529、標準図 1762: フキノメイガ、標準図鑑 p. 432) 鑑 p. 433) 1♂, Shibecha, Kushiro, Hokkaido, Japan, 1964/7/27, K. 1 ex . , S h i r a ha m a , I r iomot e Is . , Ok i n aw a , Ja p a n , Ijima (29 - 0104505). 1968/11/14 , H. Inoue (29 - 0104320). 備考:標準図鑑によるといくつか亜種があるが、明確な 区別は困難だそうである。 281. Cirrhochrista kosemponialis Strand, 1919 コウセンポシロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1530、標 276-2 . Ostrinia scapulalis subpacifica Mutuura & Munroe, 1970 準図鑑 p. 433) 1 ex., Yona, Okinawa Is., Okinawa, Japan, 1973/10/18-21, アズキノメイガ本州、四国、九州、対馬産の亜種 (大図鑑 Cat. No. 1762: フキノメイガ、標準図鑑 p. 432) M. Owada (29 - 0104321). 備考:大図鑑ではCirrhochrista bracteolalis Hampson, 1891 と扱われた。 1♂, Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1978/5/19, H. Inoue (29 - 0104506). 282 . Pelena sericea (Butler, 1879) モンキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1534、標準図鑑 277-1. Ostrinia zaguliaevi honshuensis Mut uura & Munroe, 1970 フ キ ノ メ イ ガ 本 州 産 の 亜 種( 大 図 鑑 Cat. No. p. 434) 1 ex., Nashimoto, S. Izu, Shizuoka, Japan, 1959/7/13 , H. Inoue (29 - 0104324). 1763、標準図鑑 p. 432) 1♂, Norikura Heights, 1500m, Nagano, Japan, 1978/7/26, 283 . Tatobotys janapalis (Walker, 1859) H. Inoue (29 - 0104507). ウスグロハラナガノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1535、 備考:標準図鑑によるといくつかある亜種の区別は困難 標準図鑑 p. 434) だそうである。 1♀, Shirahama, Iriomote I., Okinawa, Japan, 1971/8/18 , S. Azuma (29 - 0104325). 277-2 . Ostrinia zaguliaevi ryukyuensis Mutuura & Munroe, 1970 284 . Tatobotys biannulalis (Walker, 1866) フキノメイガ南西諸島産の亜種(大図鑑 Cat. No. キバネハラナガノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1536、標 1763、標準図鑑 p. 432) 準図鑑 p. 434) 1♂, Shuri, Okinawa I., Okinawa, Japan, 1966/ 8/ 9 , S. 1♂, Nago, Okinawa I.. Okinawa, Japan, 1965/8/25 , K. Azuma (29 - 0104508). Kanmiya (29 - 0104326). 278 . Ostrinia zealis centralis Mutuura & Munroe, 1970 285. Tatobotys aurantialis Hampson, 1897 ゴボウノメイガ本州産の亜種 (大図鑑 Cat. No. 1764、 キオビハラナガノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1537、標 標準図鑑 p. 432) 準図鑑 p. 434) 1♂, Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1978/8/17, H. Inoue 1♀, Miyako I., Okinawa, Japan, 1964/2/10, S. Azuma (29- (29 - 0104509). 0104327). 126 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 286 . Diathrausta brevifascialis (Wileman, 1911) シロテンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1538、標準図鑑 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1974/8/17, H. Inoue (29 - 0104342). p. 435) 1 ex., Yudomari, Yakushima, Kagoshima, Japan, 1954/8/7, K. Ishizuka (29 - 0104329). 294 . Mabra nigriscripta Swinhoe, 1895 ヒメミツテンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1557、標準 図鑑 p. 437) 287. Piletocera aegimiusalis (Walker, 1859) クビシロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1540、標準図鑑 1 ex., Miyanoura (B), Yakushima, Kagoshima, Japan, 1972/9/25, T. Watanabe (29 - 0104343). p. 435) 1♀, Amboo, Yakushima, Kagoshima, Japan, 1950/7/15, T. Shirozu (29 - 0104330). 295. Pycnarmon lactiferalis (Walker, 1859) ゴマダラノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1559、標準図鑑 p. 437) 288 . Piletocera sodalis (Leech, 1889) コガタシロモンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1541、標 1 ex., Nashimoto, S. Izu, Shizuoka, Japan, 1959/7/5 , H. Inoue (29 - 0104344). 準図鑑 p. 435) 1 ex., Nashimoto, South Izu, Shizuoka, Japan, 1957/7/2931, H. Inoue (29 - 0104331). 296 . Pycnarmon pantherata (Butler, 1878) クロオビノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1560、標準図鑑 p. 437) 289. Camptomastix hisbonalis (Walker, 1859) ハナダカノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1542、標準図鑑 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1983/6/18 , H. Inoue (29 - 0104345). p. 435) 1 ex., Misakubo, Iwata-gun, Shizuoka, Japan, 1966/8/26, K. Watanabe (29 - 0104332). 297. Eurrhyparodes accessalis (Walker, 1859) アヤナミノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1563、標準図鑑 p. 438) 290. Cangetta rectilinea Moore, 1886 シロオビナカボカシノメイガ (大図鑑Cat. No. 1544、 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/8/31, H. Inoue (29 - 0104346). 標準図鑑 p. 436) 1 ex., Kurio, Yakushima I., Kagoshima, Japan, 1974/8/1, T. Watanabe (29 - 0104333). 298 . Charitoprepes lubricosa Warren, 1896 クロモンハイイロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1564、 標準図鑑 p. 438) 291. Diplopseustis perieresalis (Walker, 1859) 1 ex., Kōnokiyama, Tsushima, Nagasaki, Japan, 1973/9/1, エグリノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1551、標準図鑑 T. Watanabe (29 - 0104347). p. 436) 備考:大図鑑の Heterocnephes apicipicta Inoue, 1963 は本 1 ex., Wakkanai, Hokkaido, Japan, 1974/8/ 7, Y. Kusui 種のシノニム。 (29 - 0104338). 299. Agrotera nemoralis (Scopoli, 1763) 292 . Sufetula sunidesalis Walker, 1859 シロスジエグリノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1552、標 準図鑑 p. 436) 1 ex., Mt.Yuwan-dake, Is. Amami-oshima, Kagoshima, ウスムラサキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1565、標準 図鑑 p. 439) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1977/6/6 , H. Inoue (29 - 0104348). Japan, 1977/8/15-17, A. Seino (29 - 0104339). 300. Agrotera posticalis Wileman, 1911 293 . Mabra charonialis (Walker, 1859) ミツテンノメイガ (大図鑑Cat. No. 1555、標準図鑑p. 436) クロウスムラサキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1566、 標準図鑑 p. 439) 吉松慎一ら:農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 127 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1977/6/12 , H. Inoue 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1977/6/6 , H. Inoue (29 - 0104349). (29 - 0104357). 備考:大図鑑では Marasmia limbalis Wileman, 1911 と扱 301. Agrotera basinotata Hampson, 1891 われた。 オオムラサキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1567、標準 図鑑 p. 439) 308 . Cnaphalocrocis pilosa (Warren, 1896) 1 ex . , A i koda ke , Ya k ush i m a , K a gosh i m a , Jap a n , ハネナガコブノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1577、標準 1972/8/18 , T. Watanabe (29 - 0104350). 図鑑 p. 441) 1 ex . , S h i r at a n i , Ya k ush i m a , K a gosh i m a , Jap a n , 302 . Pagyda arbiter (Butler, 1879) 1974/7/25, H. Inoue (29 - 0104358). フタマタノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1568、標準図鑑 備 考: 大 図 鑑 で は Marasmia latimarginata (Hampson, p. 439) 1891) と扱われた。 1 ex., Nashimoto, S. Izu, Shizuoka, Japan, 1959/6/7, H. Inoue (29 - 0104351). 309. Cnaphalocrocis poeyalis (Boisduval, 1833) チビコブノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1578、標準図鑑 303 . Pagyda quinquelineata Hering, 1903 p. 441) マタスジノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1569、標準図鑑 1 ex., Omotodake, Ishigaki I., Okinawa, Japan, 1981/3/27, p. 440) K. Deguchi (29 - 0104359). 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1981/9/13 , H. Inoue 備考:大図鑑では、Marasmia poeyalis (Boisduval, 1833) (29 - 0104352). と扱われた。 304 . Pagyda quadrilineata Butler, 1881 310. Cnaphalocrocis suspicalis (Walker, 1859) ヨスジノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1570、標準図鑑 コブナシノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1579、標準図鑑 p. 440) p. 441) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/9/4 , H. Inoue 1 ex., Khao Yai, Thailand, 1966/7/19 -20, H. Inoue (29 - (29 - 0104353). 0104360). 備考:大図鑑では、Marasmia suspicalis (Walker, 1859) 305. Daulia afralis Walker, 1859 と扱われた。 キンスジノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1571、標準図鑑 p. 440) 311. Syngamia falsidicalis (Walker, 1859) 1 ex., Nashimoto, S. Izu, Shizuoka, Japan, 1960/7/25, H. マエキモンクロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1580、標 Inoue (29 - 0104354). 準図鑑 p. 441) 1 ex ., L ushan Spa , 120 0 m, Nantou Hsien, Taiwan, 306 . Hydriris ornatalis (Duponchel, 1832) 1983/7/27-29, A. Kawabe (29 - 0104361). ナカオビノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1573、標準図鑑 p. 440) 312 . Aethaloessa calidalis tiphalis (Walker, 1859) 1 ex., Shimokoshiki I., Kagoshima, Japan, 1965/10/10, K. キンモンノメイガ日本、台湾からマレーシア、フィ Kanmiya (29 - 0104356). リピン、オーストラリア産の亜種(大図鑑 Cat. No. 備考:大図鑑では、Antiercta ornatalis (Duponchel, 1832) 1581、標準図鑑 p. 441) と扱われた。 1 ex., Nishinakama, Amami-oshima, Kagoshima, Japan, 1960/7/8 , T. Kikuchi (29 - 0104362). 307. Cnaphalocrocis stereogona (Meyrick, 1886) ハカジモドキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1576、標準 図鑑 p. 441) 313 . Bocchoris inspersalis (Zeller, 1852) シロモンノメイガ(大図鑑Cat. No. 1582、標準図鑑p. 442) 128 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/9/6 , H. Inoue Haruta (29 - 0104374). (29 - 0104363). 320. Nacoleia commixta (Butler, 1879) 314 . Ategumia adipalis (Lederer, 1863) マエトビノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1583、標準図鑑 p. 442) 1 ex., Juisui, Hualien, Taiwan, 1974/8/3 , Y. Shibata (29 - シロテンキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1598、標準図 鑑 p. 444) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1977/9/6 , H. Inoue (29 - 0104375). 0104364). 備考:大図鑑では、Bocchoris adipalis (Lederer, 1865) と 扱われたが、この記載年 1865 年は間違いである。 321. Nacoleia sibirialis (Millière, 1879) クロフキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1599、標準図鑑 p. 444) 315. Chabula telphusalis (Walker, 1859) 1 ex., Nashimoto, South Izu, Shizuoka, Japan, 1960/7/25, オオシロモンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1586、標準 H. Inoue (29 - 0104376). 図鑑 p. 442) 備考:大図鑑では、Nacoleia maculalis South, 1901 と扱 1 ex., Nashimoto, S. Izu, Shizuoka, Japan, 1959/7/13 , H. われた。 Inoue (29 - 0104366). 322 . Nacoleia inouei Yamanaka, 1980 316 . Analthes semitritalis Lederer, 1863 シロヒトモンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1589、標準 図鑑 p. 443) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1981/8/6 , H. Inoue イノウエノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1600、標準図鑑 p. 444) 1 ex., Kokurobe, 700 m, Toyama, Japan, 1965/8/27, H. Inoue (29 - 0104377). (29 - 0104368); 1 ex., same locality, 1983/8/6 , H. Inoue (29 - 0104369). 323 . Nacoleia satsumalis South, 1901 サツマキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1601、標準図鑑 317. Tyspanodes striatus (Butler, 1879) p. 444) クロスジノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1593、標準図鑑 1 ex ., Kosugidani, Yakushima , K agoshima , Japan, p. 443) 1954/8/4 , K. Ishizuka (29 - 0104378). 1 ex., Takao-san, Tokyo, Japan, 1958/5/22 , K. Ishizuka (29 - 0104370). 324 . Nacoleia charesalis (Walker, 1859) 備考:大図鑑では Tyspanodes striata (Butler, 1879) と扱 カクモンミスジノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1606、標 われたが、これは語尾変化の間違いである。 準図鑑 p. 445) 1 ex., Komi ~ Ōtomi, Is. Iriomote, Okinawa, Japan, 318 . Nevrina procopia (Stoll, 1781) 1974/3/22 , Y. Fujimaki (29 - 0104381). ハグルマノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1595、標準図鑑 p. 444) 325. Metoeca foedalis (Guenée, 1854) 1 ex., Nishinakama, Amami-oshima, Kagoshima, Japan, クロミスジシロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1605、標 1963/7/19 -20, H. Inoue (29 - 0104371). 準図鑑 p. 445) 備考:大図鑑では、Euglyphis procopia (Stoll, 1781) とし 1 ex., Nago, Okinawa I., Okinawa, Japan, 1965/8/25, K. て扱われた。 Kanmiya (29 - 0104380). 備考:大図鑑では、Nacoleia foedalis (Guenée, 1854) とし 319. Rehimena surusalis (Walker, 1854) て扱われた。 カクモンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1597、標準図鑑 p. 444) 1 ex., Nashimoto, S. Izu, Shizuoka, Japan, 1957/7/5- 6 , H. 326 . Dolicharthria bruguieralis (Duponchel, 1833) ハイイロホソバノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1608、標 吉松慎一ら:農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 準図鑑 p. 446) 129 て扱われた。 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1977/6/29, H. Inoue (29 - 0104382). 332 . Omiodes noctescens (Moore, 1888) 備考:大図鑑で適用された Metasia coniotalis Hampson, キバラノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1613、標準図鑑 1903 は、本種のシノニム。 p. 447) 1♂, Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1983/5/27, H. Inoue 327. Omiodes diemenalis (Guenée, 1854) (29 - 0104387). キオビノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1604、標準図鑑 備考:大図鑑では、Charema noctescens Moore, 1888 とし p. 446) て扱われた。 1 ex., Yamagoya, Iriomote I., Okinawa, Japan, 1969/9/16 , S. Azuma (29 - 0104379). 333 . Preneopogon catenalis (Wileman, 1911) 備考:大図鑑では、Nacoleia diemenalis (Guenée, 1854) ナカキトガリノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1614、標準 として扱われた。 図鑑 p. 448) 1 ex., Nagata (B), Yakushima I., Kagoshima, Japan, 328 . Omiodes tristrialis (Bremer, 1864) 1972/5/11, T. Watanabe (29 - 0104388). シロアシクロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1609、標準 図鑑 p. 446) 334 . Goniorhynchus exemplaris Hampson, 1898 1 ex., Mitsumine, 900 m, Chichibu, Saitama, Japan, クロズノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1615、標準図鑑 1983/8/27, H. Inoue (29 - 0104383). p. 448) 備考:大図鑑では、Hedylepta tristrialis (Bremer, 1864) と 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1982/6/11, H. Inoue して扱われた。 (29 - 0104389). 329. Omiodes miserus (Butler, 1879) 335. Goniorhynchus butyrosus (Butler, 1879) ヒメクロミスジノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1610、標 クロヘリキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1616、標準図 準図鑑 p. 447) 鑑 p. 448) 1♀, Nashimoto, S. Izu, Shizuoka, Japan, 1959/ 7/ 5 , H. 1 ex . , Funa koshi , Ya k ushi ma , K agoshi ma , Japa n , Inoue (29 - 0104385). 1954/5/6 , H. Inoue (29 - 0104390). 備考:大図鑑では、Hedylepta misera (Butler, 1879) とし 備考:大図鑑では、Goniorhynchus butyrosa (Butler, 1879) て扱われた。 として扱われた。 330. Omiodes indicatus (Fabricius, 1775) 336 . Goniorhynchus clausalis (Christoph, 1881) マエウスキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1611、標準図 トビヘリキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1617、標準図 鑑 p. 447) 鑑 p. 448) 1♀, Yoshii, Ukiha-gun, Fukuoka, Japan, 1954/11/20, N. 1 ex., Shibecha, Kushiro, Hokkaido, Japan, 1959/7/22 , K. Gyotoku (29 - 0104384). Ijima (29 - 0104391). 備考:大図鑑では、Hedylepta indicata (Fabricius, 1775) 備考:大図鑑では、Goniorhynchus explicatalis (Christoph, として扱われた。 1881) として扱われた。 331. Omiodes similis (Moore, 1885) 337. Ceratarcha umbrosa Swinhoe, 1894 クロミスジノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1612、標準図 シャクトリノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1618、標準図 鑑 p. 447) 鑑 p. 449) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1979/5/17, H. Inoue 1 ex., Kurio, Yakushima, Kagoshima, Japan, 1956/8/6, K. (29 - 0104386). Ishizuka (29 - 0104392). 備考:大図鑑では、Hedylepta similis (Moore, 1885) とし 130 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 338 . Botyodes asialis Guenée, 1854 345. Pleuroptya sabinusalis (Walker, 1859) アカヘリオオキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1620、標 ミナミウコンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1627、標準 準図鑑 p. 449) 図鑑 p. 450) 1 ex., Doi Suthep, E. Thailand, Thailand, 1966/7/8-10 , 1 ex., Kurio (B), Yakushima I ., K agoshima , Japan, Inoue & Okagawa (29 - 0104394). 1974/7/30, T. Watanabe (29 - 0104400). 339. Botyodes principalis Leech, 1889 346 . Pleuroptya dificiens (Moore, 1887) オオキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1621、標準図鑑 シロハラノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1628、標準図鑑 p. 449) p. 450) 1 ex., Befu, Matsuyama-mura, Kochi, Japan, 1954/8/30, 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1978/6/8 , H. Inoue T. Inoue (29 - 0104395). (29 - 0104401). 340. Botyodes caldusalis (Walker, 1859) 347. Pleuroptya iopasalis (Walker, 1859) ウスカバイロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1619、標準 アマミキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1629、標準図鑑 図鑑 p. 449) p. 451) 1 ex., Juisui, Hualien, Taiwan, 1967/8/9, M. Saikawa (29- 1♂, Kurio, Yakushima, Kagoshima, Japan, 1956/8/6 , K. 0104393). Ishizuka (29 - 0104402). 備考:大図鑑では、Endocrossis caldusalis (Walker, 1859) として扱われた。 348 . Pleuroptya inferior (Hampson, 1898) コヨツメノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1631、標準図鑑 341. Pleuroptya balteata (Fabricius, 1798) p. 451) クロスジキンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1623、標準 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/7/3 , H. Inoue 図鑑 p. 449) (29 - 0104403). 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1981/7/25, H. Inoue (29 - 0104396). 349. Pleuroptya quadrimaculalis (Kollar, 1844) ヨツメノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1632、標準図鑑 342 . Pleuroptya punctimarginalis (Hampson, 1896) p. 451) ウスイロキンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1624、標準 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1981/6/25, H. Inoue 図鑑 p. 450) (29 - 0104404). 1♂, Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/8/19, H. Inoue (29 - 0104397). 350. Pleuroptya harutai (Inoue, 1955) オオキバラノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1634、標準図 343 . Pleuroptya brevipennis Inoue, 1982 鑑 p. 452) ヒメウコンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1626、標準図 1♂, Kumanotaira, Gunma, Japan, 1959/ 7/27, H. Inoue 鑑 p. 450) (29 - 0104405). 1♂, Sakasamaki Spa., Nakauonuma, Niigata, Japan, 1983/7/2-3 , H. Inoue (29 - 0104399). 351. Pleuroptya chlorophanta (Butler, 1878) ホソミスジノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1636、標準図 344 . Pleuroptya ruralis (Scopoli, 1763) 鑑 p. 452) ウコンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1625、標準図鑑 1♂, Nashimoto, S. Izu, Shizuoka, Japan, 1959/6/ 7, H. p. 450) Inoue (29 - 0104407). 1♂, M itsum i ne , 9 0 0 m , Chichibu , S a it a ma , Japa n , 1983/8/27, H. Inoue (29 - 0104398). 352 . Pleuroptya characteristica (Warren, 1896) ハングロキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1637、標準図 吉松慎一ら:農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 鑑 p. 452) 131 準図鑑 p. 454) 1 ex., Yona, Okinawa, Japan, 1981/3/3 , K. Deguchi (29 - 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1979/8/15, H. Inoue 0104408). (29 - 0104412). 備考:大図鑑では、Sylepta が適用されたが、現在では 353 . Pleuroptya ultimalis (Walker, 1859) ウグイスノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1638、標準図鑑 Syllepte が適格名とされており、この後の 5 種に関しても 同様である。 p. 452) 1 ex., Yomitan, Okinawa, Japan, 1981/4/8 , K. Deguchi 359. Syllepte fuscomarginalis (Leech, 1889) (29 - 0104409). クロヘリノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1642、標準図鑑 備考:大図鑑の本文中にある Cat. No. 1637 は間違いで、 p. 454) シノニミックカタログの中にある Cat. No. 1638 が正し 1 ex., Kokurobe, 700 m, Toyama, Japan, 1965/8/27, H. い。 Inoue (29 - 0104413). 354 . Pleuroptya expictalis (Christoph, 1881) 360. Syllepte segnalis (Leech, 1889) ウスキモンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1635、標準図 モンシロクロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1640、標準 鑑 p. 453) 図鑑 p. 455) 1 ex., Noboribetsu Spa., Hokkaido, Japan, 1981/7/23 , H. 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/6/12 , H. Inoue Ogi (29 - 0104406). (29 - 0104411). 355. Haritalodes derogatus (Fabricius, 1775) 361. Syllepte invalidalis (South, 1901) ワタノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1639、標準図鑑 p. 453) ツチイロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1643、標準図鑑 1 ex., Matsudo, Chiba, Japan, 1973/7/14, A. Kawabe (29- p. 455) 0104410). 1♀, Mikaboyama, Gunma, Japan, 1969/ 7/ 18 , H. Fuse 備考:大図鑑では、Notarcha derogata (Fabricius, 1775) (29 - 0104414). と扱われた。 362 . Syllepte cissalis Yamanaka, 1987 356 . Conogethes punctiferalis (Guenée, 1854) コツチイロノメイガ(大図鑑掲載なし、標準図鑑 モモノゴマダラノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1596、標 準図鑑 p. 453) p. 456) 1♀, Kurodake, Oita, Japan, 1981/ 7/ 5 , H. Inoue (29 - 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1981/9/11, H. Inoue 0104415). (29 - 0104372). 備考:Syllepte fuscoinvalidalis (Yamanaka, 1959) オオツチ イロノメイガと井上博士により同定されていたが、交尾 357. Conogethes pinicolalis Inoue & Yamanaka, 2006 マツノゴマダラノメイガ(大図鑑 Cat. No. なし : 器を解剖して調べたところ、上記の種に間違いなかっ た。 Conogethes sp.、標準図鑑 p. 454) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1982/6/24 , H. Inoue 363 . Sylepta pallidinotalis (Hampson, 1912) (29 - 0104373). ホソオビツチイロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1645、 備考:同日同場所で採集された 4♀が Inoue & Yamanaka 標準図鑑 p. 456) (2006)によりパラタイプに指定されているが、本個体は “PARATYPE”のラベルは付いていないのでパラタイプ 1 ex., Mt. Iwamuro, E. Izu, Shizuoka, Japan, 1968/7/9, H. Inoue (29 - 0104416). ではないと考えられる。 364 . Togabotys fuscolineatalis Yamanaka, 1978 358 . Syllepte taiwanalis (Shibuya, 1928) タイワンモンキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1641、標 ウンモンシロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1792、標準 図鑑 p. 456) 132 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 1 ex., Toishizawa, Mt. Zao, Yamagata, Japan, 1974/6/15, H. Inoue (29 - 0104529). 371. Diaphania indica (Saunders, 1851) ワタリヘリクロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1651、標 準図鑑 p. 458) 365. Lygropia yerburii nipponica Inoue, 1986 1 ex., Kugenuma, Fujisawa, Kanagawa, Japan, 1958/9/24, ウスグロヨツモンノメイガ日本産の亜種(大図鑑 H. Inoue (29 - 0104422). Cat. No. 1646、標準図鑑 p. 456) 備考:大図鑑の命名者名 Saunder は綴り間違い。 1♂, Futatsuyama, Shibecha, Kushiro, Hokkaido, Japan, 1980/8/9, K. Ijima (29 - 0104417). 備考:標準図鑑によると、大図鑑の Lygropia poltisalis (Walker, 1859) は本種の誤同定である。 372 . Cydalima perspectalis (Walker, 1859) ツゲノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1652、標準図鑑 p. 458) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1979/6/13 , H. Inoue (29 - 0104423). 366 . Agathodes ostentalis (Geyer, 1837) ベニモンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1647、標準図鑑 備考:大図鑑では、Glyphodes perspectalis (Walker, 1859) と扱われた。 p. 457) 1 ex., Doi Suthep, N. Thailand, Thailand, 1966/7/8-10, H. Inoue (29 - 0104418). 373 . Glyphodes stolalis Guenée, 1854 シロスジオオスカシノメイガ (大図鑑Cat. No. 1665、 標準図鑑 p. 459) 367. Palpita nigropunctalis (Bremer, 1864) マエアカスカシノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1648、標 1 ex., Doi Suthep, N. Thailand, Thailand, 1966/7/8-10, H. Inoue (29 - 0104434). 準図鑑 p. 457) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/5/30, H. Inoue (29 - 0104419). 374 . Glyphodes pulverulentalis Hampson, 1896 マダラシロモンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1664、標 準図鑑 p. 459) 368 . Palpita munroei Inoue, 1996 オオモンヒメシロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1650、 1 ex., Doi Suthep, N. Thailand, Thailand, 1966/7/8-10 , Inoue & Okagawa (29 - 0104433). 標準図鑑 p. 457) 1♀, Funaura, Iriomote I., Okinawa, Japan, 1976/8/25, S. 375. Glyphodes actorionalis Walker, 1859 Azuma (29 - 0104421). ミツシロモンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1654、標準 備 考: 標 準 図 鑑 に よ る と、 大 図 鑑 の Palpita annulata 図鑑 p. 459) (Fabricius, 1794) は本種の誤同定である。 1 ex., Nashimoto, S. Izu, Shizuoka, Japan, 1959/7/13 , H. Inoue (29 - 0104425). 369. Palpita inusitata (Butler, 1879) ヒメシロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1649、標準図鑑 p. 458) 1♀, Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/8/22 , H. Inoue (29 - 0104420). 376 . Glyphodes pryeri Butler, 1879 スカシノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1655、標準図鑑 p. 459) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/8/19, H. Inoue (29 - 0104426). 370. Hodebertia testalis (Fabricius, 1794) シロムジノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1780、標準図鑑 p. 458) 1 ex., Kusukawa , Yakushima I., K agoshima , Japan, 377. Glyphodes duplicalis Inoue, Munroe & Mutuura, 1981 チビスカシノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1657:クワノ メイガ、標準図鑑 p. 460) 1971/10/31, T. Watanabe (29 - 0104522). 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/5/14 , H. Inoue 備考:大図鑑の Pyrausta incoloralis (Guenée, 1854) は本 (29 - 0104427). 種のシノニム。 吉松慎一ら:農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 378 . Glyphodes pyloalis Walker, 1859 133 384 . Talanga nympha (Butler, 1880) クワノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1658:チビスカシノ ヒメムツテンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1572: ムツ メイガ、標準図鑑 p. 460) テンノメイガ、標準図鑑 p. 461) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1981/6/26 , H. Inoue 1 ex., Shuri, Okinawa, Japan, 1959/5/7, S. Higashihirachi (29 - 0104428). (29 - 0104355). 備考:井上(1988)に基づき、本種と前種の和名を大図 備考:標準図鑑によると、大図鑑の Talanga sexpunctalis 鑑とは入れ替えた。 (Moore, 1877) は、本種の誤同定である。 379. Glyphodes bivitralis Guenée, 1854 385. Talanga quadrimaculalis (Bremer & Grey, 1853) アコウノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1662、標準図鑑 ヨツボシノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1653、標準図鑑 p. 460) p. 462) 1 ex., Funaura, Iriomote I., Okinawa, Japan, 1976/8/24, S. 1 ex., Futatsuyama, Shibecha, Kushiro, Hokkaido, Japan, Azuma (29 - 0104431). 1980/7/21, K. Ijima (29 - 0104424). 備考:大図鑑では、Glyphodes quadrimaculalis (Bremer & 380. Glyphodes bipunctalis Leech, 1889 Grey, 1853) と扱われた。 フタホシノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1660、標準図鑑 p. 460) 386 . Pygospila tyres (Cramer, 1780) 1 ex., Yudomari, Yakushima, Kagoshima, Japan, 1956/8/7, シロフクロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1669、標準図 K. Ishizuka (29 - 0104429). 鑑 p. 462) 1 ex., Doi Suthep, N. Thailand, Thailand, 1966/7/8-10 , 381. Glyphodes onychinalis (Guenée, 1854) Inoue & Okagawa (29 - 0104435). シロマダラノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1587、標準図 鑑 p. 461) 387. Polythlipta liquidalis Leech, 1889 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1981/7/19, H. Inoue ツマグロシロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1670、標準 (29 - 0104367). 図鑑 p. 463) 備考:大図鑑では、Chabula onychinalis (Guenée, 1854) 1 ex., Mitsumine, 900 m, Chichibu, Saitama, Japan, として扱われた。標準図鑑の種名onycinalisはミススペル 1983/8/27, H. Inoue (29 - 0104436). である。 388 . Leucinodes apicalis Hampson, 1896 382 . Agrioglypta eurytusalis (Walker, 1859) コブヒゲシロモンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1663、 標準図鑑 p. 461) 1 ex., Doi Suthep, N. Thailand, Thailand, 1966/7/8-10 , ヒメツマグロシロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1672、 標準図鑑 p. 463) 1 ex., Gogayama, Okinawa I., Okinawa, Japan, 1969/9/18 , S. Azuma (29 - 0104437). Inoue & Okagawa (29 - 0104432). 備考:大図鑑では、Glyphodes eurytusalis Walker, 1859 と して扱われた。 389. Sameodes cancellalis (Zeller, 1852) アミモントガリノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1675、標 準図鑑 p. 463) 383 . Agrioglypta itysalis (Walker, 1859) イカリモンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1661、標準図 1 ex., Doi Suthep, N. Thailand, Thailand, 1966/7/8-10, H. Inoue (29 - 0104438). 鑑 p. 461) 1 ex., Hsitou, Nantou, Taiwan, 1970/8/1, Y. Shibata (29 - 390. Sameodes aptalis (Walker, 1866) 0104430). ナカキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1584、標準図鑑 備考:大図鑑では、Glyphodes itysalis Walker, 1859 として p. 464) 扱われた。 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1981/8/18 , H. Inoue 134 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) (29 - 0104365). (29 - 0104322). 備考:大図鑑では、Bocchoris aptalis (Walker, 1866) と扱 われた。標準図鑑では、インド産と日本産との区別は明 397. Prophantis adusta Inoue, 1986 確ではないとされているので、ここでは特に亜種を分け ヤツボシノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1681、標準図鑑 なかった。 p. 466) 1♀, pa rat y pe, Mt .Yuwa nda ke, A ma mi-Oshima Is . , 391. Protonoceras capitale (Fabricius, 1794) Kagoshima, Japan, 1968/7/6 , Y. Kishida (29 - 0104443). ミスジノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1677、標準図鑑 備考:標準図鑑によると、大図鑑の Prophantis octoguttalis p. 464) (Felder & Rogenhofer, 1875) は、本種の誤同定である。 1 ex., Shirahama, Iriomote I., Okinawa, Japan, 1972/2/26, 本個体には“PARATYPE”のラベルが付いていたので、 S. Azuma (29 - 0104439). Inoue (1986) の原記載を見たところ、パラタイプの内の 備考:大図鑑では、Protonoceras capitalis (Fabricius, 1794) 1 個体に間違いないことが確認できた。 と扱われた。 398 . Maruca vitrata (Fabricius, 1787) 392 . Terastia subjectalis Lederer, 1863 オオエグリノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1678、標準図 鑑 p. 464) マ メ ノ メ イ ガ( 大 図 鑑 Cat. No. 1692、 標 準 図 鑑 p. 466) 1 ex., Takao-san, Tokyo, Japan, 1961/5/14, H. Inoue (29- 1♂, Shuri, Okinawa Is., Okinawa, Japan, 1976/4 /9, H. 0104452). Sunakawa (29 - 0104440). 備考:大図鑑では、Maruca testulalis (Hübner, 1832) と 備考:標準図鑑によると、大図鑑の Terastia meticulosalis 扱われたが、この命名者名は間違いで Geyer が正しい。 Guenée, 1854 は、本種の誤同定である。 ただし、この種は本種のシノニムである。 393 . Sinomphisa plagialis (Wileman, 1911) 399. Maruca amboinalis (Felder & Rogenhofer, 1875) キササゲノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1680、標準図鑑 アンボイナノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1693、標準図 p. 464) 鑑 p. 466) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1983/6/18 , H. Inoue 1 ex., Kuantauchi, Nantou, Taiwan, 1972/8/10, S. Yamane (29 - 0104442). (29 - 0104453). 394 . Omphisa anastomosalis (Guenée, 1854) 400. Pachynoa sabelialis (Guenée, 1854) サツマイモノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1679、標準図 チャモンキイロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1694、標 鑑 p. 465) 準図鑑 p. 466) 1 ex . , Yuwa n , A ma mi-oshima , K agoshima , Japa n, 1♂, Naze, Amami-oshima, Kagoshima, Japan, 1961/8/5, 1961/8/14 , A. Kawazoe (29 - 0104441). A. Kawazoe (29 - 0104454). 備 考: 大 図 鑑 で は、Polygrammodes sabelialis (Guenée, 395. Cotachena alysoni Whalley, 1961 1854) と扱われた。 クロスカシトガリノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1533、 標準図鑑 p. 465) 401. Nomophila noctuella (Denis & Schiffermüller, 1775) 1 ex., Yunotani, Kirishima, Kagoshima, Japan, 1965/5/18, ワモンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1695、標準図鑑 Y. Takemura (29 - 0104323). p. 466) 1♀, Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1977/10/14 , H. Inoue 396 . Cotachena pubescens (Warren, 1892) (29 - 0104455). スカシトガリノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1532、標準 図鑑 p. 465) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1981/6/22 , H. Inoue 402 . Bradina atopalis (erectalis Yamanaka, 1984) シロテンウスグロノメイガ日本産の亜種(大図鑑 吉松慎一ら:農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 Cat. No. 1696、標準図鑑 p. 467) 135 407. Herpetogramma rude (Warren, 1892) 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1981/8/26 , H. Inoue マエキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1701、標準図鑑 (29 - 0104456). p. 468) 1♀, Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1980/10/1, H. Inoue 403 . Bradina trigonalis Yamanaka, 1984 (29 - 0104462). ヒメアカウスグロノメイガ(大図鑑 Cat. No. なし、 備考:大図鑑では、Herpetogramma rudis (Warren, 1892) 標準図鑑 p. 467) と扱われた。 1♀, Aikodake, Yakushima, Kagoshima, Japan, 1972/6/8 , T. Watanabe (29 - 0104461). 408 . Herpetogramma stultale (Walker, 1859) ケナガチビクロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1702、標 404-1. Bradina angustalis pryeri Yamanaka, 1984 準図鑑 p. 470) アカウスグロノメイガ本州、伊豆諸島、四国、九 1♀, Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1981/9/10 , H. Inoue 州、対馬、屋久島、ロシア南東部産の亜種(大図 (29 - 0104463). 鑑 Cat. No. なし、標準図鑑 p. 467) 備 考: 大 図 鑑 で は、Herpetogramma stultalis (Walker, 1♀, Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1978/8/3 , H. Inoue 1859) と扱われた。 (29 - 0104459). 備考:本個体には“PARATYPE”のラベルは付いていな 409. Herpetogramma cynarale (Walker, 1859) いが、Yamanaka (1984) の原記載に同じデータの個体が ヘリグロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1705、標準図鑑 パラタイプ標本に含まれているので、パラタイプの可能 p. 470) 性がある。 1 ex., Yakushimachi, Kagoshima, Japan, 1960/10/10, H. 404-2 . Bradina angustalis ryukyuensis Yamanaka, 1984 備 考: 大 図 鑑 で は、Herpetogramma cynaralis (Walker, Tanaka (29 - 0104464). アカウスグロノメイガ南西諸島産の亜種(大図鑑 1859) と扱われた。 Cat. No. なし、標準図鑑 p. 467) 1♀, Funaura, Iriomote I., Okinawa, Japan, 1978/10/1, S. 410. Herpetogramma submarginale (Swinhoe, 1901) Azuma (29 - 0104460). ヘリグロキイロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1706、標 備考:前亜種と同様に、本個体には“PARATYPE”のラ 準図鑑 p. 471) ベルは付いていないが、Yamanaka (1984) の原記載に同 1♀, Komi, Iriomote I., Okinawa, Japan, 1973/10/24-26 , じデータの個体がパラタイプ標本に含まれているので、 M. Owada (29 - 0104465). パラタイプの可能性がある。 備考:大図鑑では、Herpetogramma submarginalis (Swinhoe, 1901)と扱われた。 405. Bradina geminalis Caradja, 1927 モンウスグロノメイガ(大図鑑 Cat. No.1697、標準 図鑑 p. 467) 1 ex., Shirahama, Iriomote I., Okinawa, Japan, 1971/8/18 , S. Azuma (29 - 0104457). 411. Herpetogramma fuscescens (Warren, 1892) ウスオビクロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1707、標準 図鑑 p. 471) 1 ex., Kumanotaira, Gunma, Japan, 1959/7/27, H. Inoue (29 - 0104466). 406 . Bradina erilitoides Strand, 1919 オオウスグロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1698、標準 図鑑 p. 468) 1♂, Gogayama, Okinawa I., Okinawa, Japan, 1969/8/18 , S. Azuma (29 - 0104458). 412 . Herpetogramma yaeyamense Yamanaka, 2003 ヤエヤマクロノメイガ(大図鑑 Cat. No. なし、標準 図鑑 p. 471) 1 ex., Shirahama, Iriomote I., Okinawa, Japan, 1973/3/26, S. Azuma (29 - 0104472). 備考:大図鑑では Herpetogramma sp. と扱われた。 136 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 413 . Herpetogramma magnum (Butler, 1879) 418 . Paranacoleia lophophoralis (Hampson, 1912) キモンウスグロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1709、標 ヒロバウスグロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1713、標 準図鑑 p. 471) 準図鑑 p. 473) 1♂, M itsum i ne , 9 0 0 m , Chichibu , S a it a ma , Japa n , 1 ex., Komi, Iriomote Is., Okinawa, Japan, 1973/10/24-26, 1983/8/27, H. Inoue (29 - 0104468). M. Owada (29 - 0104473). 備考:大図鑑では、Herpetogramma magna (Butler, 1879) と扱われた。 419. Diasemia reticularis (Linnaeus, 1761) シロアヤヒメノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1720、標準 414 . Herpetogramma pseudomagnum Yamanaka, 1976 図鑑 p. 473) コキモンウスグロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1710、 1 ex., Nangū Spa, Ina, Nagano, Japan, 1985/6/14, H. Inoue 標準図鑑 p. 472) (29 - 0104477). 1♀, paratype, Aikodake, Yakushima, Kagoshima, Japan, 備考:大図鑑の Diasemia litterata (Scopoli, 1763) は本種 1974/7/26 , H. Inoue (29 - 0104469). のシノニム。 備考:大図鑑では、Herpetogramma pseudomagna Yamanaka, 1976 と扱われた。本個体には“PARATYPE”のラベルが 付いていたので、Yamanaka (1976) の原記載を見たとこ 420. Uresiphita flavalis (Denis & Schiffermüller, 1775) キノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1727、標準図鑑 p. 474) ろ、パラタイプの内の 1 個体に間違いないことが確認で 1 ex., Inakogoya, 1400 m, Mt. Yatsu, Nagano, Japan, きた。 1952/8/10, K. Ishizuka (29 - 0104478). 備考:大図鑑のUresiphita luteofluvalis (Mutuura, 1955)は 415. Herpetogramma moderatale (Christoph, 1881) 本種のシノニムであるが、記載年は 1954 が正しい。 クロフキマダラノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1708、標 準図鑑 p. 472) 421. Uresiphita tricolor (Butler, 1879) 1 ex., Mitake, Tsushima, Nagasaki, Japan, 1973/7/1, T. モンシロルリノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1728、標準 Watanabe (29 - 0104467). 図鑑 p. 474) 備考:大図鑑では、Herpetogramma moderatalis (Christoph, 1 ex., Bushi, Iruma, Saitama, Japan, 1979/6/6 , H. Inoue 1881) と扱われた。 (29 - 0104479). 416 . Herpetogramma ochrimaculale (South, 1901) 422 . Uresiphita gracilis (Butler, 1879) キマダラクロノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1711、標準 ウラジロキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1731、標準図 図鑑 p. 472) 鑑 p. 474) 1♂, M itsum i ne , 9 0 0 m , Chichibu , S a it a ma , Japa n , 1 ex., Naka-karuizawa, Nagano, Japan, 1962/ 9/ 1 , T. 1983/8/27, H. Inoue (29 - 0104470). Maenami (29 - 0104482). 備考:大図鑑では、Herpetogramma ochrimaculalis (South, 1901) と扱われた。 423 . Uresiphita fusei Inoue, 1982 イタクラキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1732、標準図 417. Herpetogramma luctuosale zelleri (Bremer, 1864) モンキクロノメイガ日本、ロシア南東部産の亜種 (大図鑑 Cat. No. 1712、標準図鑑 p. 472) 鑑 p. 475) 1♀, paratype, Itakura T., Gunma, Japan, 1974/6/12 , H. Fuse (29 - 0104483). 1 ex., Funakoshi, Yokosuka, Kanagawa, Japan, 1952/6/2 , 備考:本個体には“PARATYPE”のラベルが付いていた H. Inoue (29 - 0104471). ので、大図鑑の原記載(井上 , 1982)を見たところ、パ 備 考: 大 図 鑑 で は、Herpetogramma luctuosalis zelleri ラタイプの内の 1 個体に間違いないことが確認できた。 (Bremer, 1864) と扱われた。 424 . Carminibotys carminalis iwawakisana Munroe & Mutuura, 1971 吉松慎一ら:農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 ヘリアカキンノメイガ日本産の亜種(大図鑑 Cat. No. 1796、標準図鑑 p. 475) 1 ex., Gozaishodake, Mie, Japan, 1963/6/20 -21, H. Inoue (29 - 0104532). 137 430. Udea stigmatalis (Wileman, 1911) チャモンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1767、標準図鑑 p. 477) 1 ex., Shirahone Spa., 1700m, Nagano, Japan, 1980/6/15, H. Inoue (29 - 0104511). 425. Hemopsis dissipatalis (Lederer, 1863) オオモンシロルリノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1729、 標準図鑑 p. 475) 1 ex ., A ikodake, Yakushima I ., K agoshima , Japan, 431. Udea lugubralis (Leech, 1889) ウスマルモンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1769、標準 図鑑 p. 477) 1972/6/8 , T. Watanabe (29 - 0104480). 1 ex., Mitsumine, 900 m, Chichibu, Saitama, Japan, 備考:大図鑑では、Uresiphita dissipatalis (Lederer, 1863) 1983/8/27, H. Inoue (29 - 0104513). と扱われた。 432 . Udea stationalis Yamanaka, 1988 426 . Hemopsis quinquigera (Moore, 1888) ハネナガルリノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1730、標準 図鑑 p. 475) チビマルモンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1771、標準 図鑑 p. 478) 1♂, Takao-san, Tokyo, Japan, 1961/5/14 , H. Inoue (29 - 1 ex., Kannabara, Iriomote, Okinawa, Japan, 1975/8/25, 0104515). S. Azuma (29 - 0104481). 備 考: 標 準 図 鑑 に よ る と、 大 図 鑑 の Udea exigualis 備考:大図鑑では、Uresiphita quinquigera (Moore, 1888) (Wileman, 1911) は誤同定で、後に上記の種として新種 と扱われた。 記載された。Yamanaka (1988) の原記載を参考にして、 上記標本の雄交尾器形態を観察したところ、本種と同定 427. Pseudebulea fentoni Butler, 1881 できた。 モンスカシキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1750、標準 図鑑 p. 476) 433 . Udea montensis Mutuura, 1954 1 ex., Sakunami, Miyagi, Japan, 1969/7/21, T. Watanabe コマルモンノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1770、標準図 (29 - 0104499). 鑑 p. 478) 1 ex., Tobira Spa., 1400m, Nagano, Japan, 1980/6/14 , H. 428 . Aurorobotys aurorina (Butler, 1878) フチムラサキノメイガ(大図鑑 Cat. No. 1765、標準 Inoue (29 - 0104514). 備考:大図鑑の記載年 1955 は間違いで、1954 が正しい。 図鑑 p. 476) 1 ex., Daitōmachi, Ohara-gun, Shimane, Japan, 1968/5/29, H. Kadowaki (29 - 0104510). Ⅲ 特筆すべき種 (Remarkable species with their information) 429. Udea grisealis Inoue, Yamanaka & Sasaki, 2008 1. Lamoria adaptella (Walker, 1863) ハイイロルリノメイガ(大図鑑掲載なし、標準図鑑 p. 477) ウスモンツヅリガ(Fig. 3:本文中 No. 10) 国内では屋久島、奄美大島、沖縄本島、石垣島、西表 1♂, Hoppo-onsen, 1600m, Nagano, Japan, 1952/7/23-24, 島に、海外ではインド―マレーに分布する。標準図鑑に H. Inoue (29 - 0104512). は掲載されていないので、ここで図示しておく。 備考:Udea orbicentralis (Christoph, 1881) と同定されて いたが、Inoue et al. (2008) の原記載を参考にして、交尾 器を解剖して、近縁種と比較したところ、本種と同定で きた。 2 . Salma sakishimensis (Inoue & Yamanaka, 1975) サキシマフトメイガ(Fig. 4:本文中 No. 62) 石垣島で 4 ~ 5 月に、西表島で 3 ~ 8 月に得られている が少ない。海外では台湾から記録がある。日本産の標本 は少ないので、ここで図示しておく。 138 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) 3 . Acrobasis rufizonella Ragonot, 1887 ホソアカオビマダラメイガ(Fig. 5:本文中 No. 80) 国内では北海道、本州、九州、対馬に、海外では朝鮮 半島南部、ロシア南東部に分布するが、あまり多くな い。今回、四国から初めて記録される。 4) Inoue, H. ( 1986 ):A new species of the genus Prophantis from Indo-Australian Region (Pyralidae, Pyraustinae). Tyo Ga 36:157-161 5) 井上 寛(1988):クワノメイガという和名につい て , 蛾類通信(149):378 6) 井上 寛・杉 繁郎・黒子 浩・森内 茂・川辺 4 . Miyakea expansa (Butler, 1881) ソトモンツトガ(Fig. 6:本文中 No. 148) 湛・大和田守 , 1982. 日本産蛾類大図鑑 . Vol. 1:1-968; Vol. 2: 1-556, pls 1-392. 講談社 , 東京 国内では四国に分布するとされており、海外の朝鮮半 7) Inoue, H. and Yamanaka, H. (2006):Redescription of 島南部の記録については再検討が必要だそうである。今 Conogethes punctiferalis (Guenée) and descriptions 回井上コレクションに基づいて、九州から本種を確認し of two new closely allied species from Easter n たのでここで図示しておく。 Palaearctic and Oriental Regions (Pyralidae, Pyraustinae). Tinea 19:80-91 5. Prophantis adusta Inoue, 1986 ヤツボシノメイガ(Fig. 7:本文中 No. 397) 近畿地方以西から南西諸島にかけてと海外では台湾、 東南アジア等に分布する。ここで示した個体はパラタイ プである。成虫は 4 ~ 8 月に出現するが少ないので図示 8) Inoue, H., Yamanaka, H. and Sasaki, A. ( 2008 ): Revision of Udea orbicentralis-complex from Japan, with descriptions of four new species (Pyralidae, Pyraustinae). Tinea 20:85-94 9) 那須義次・広渡俊哉・岸田泰則(編)(2013):日本 産蛾類標準図鑑 IV. 552 pp. 学研教育出版 , 東京 しておく。 10) 日本応用動物昆虫学会(編) (2006) :農林有害動物・ 6 . Herpetogramma submarginale (Swinhoe, 1901) ヘリグロキイロノメイガ(Fig. 8:本文中 No. 410) 九州、小笠原諸島、南西諸島および国外ではインドか ら太平洋の島嶼に分布する。成虫は 5 ~ 7 月に得られる 昆虫名鑑 増補改定版 . 387 pp. 国際文献印刷社 , 東京 . 11) Okano, M. (1958):Three new species of the Japanese Crambinae (Lepidoptera, Pyralididae). Tinea 4:259- 262 がきわめて少ない。記録が少ないのは本種が海岸のクサ 12) Roesler, U. and Inoue, H. (1980):Euzophera watanabei トベラに依存しており、このような場所での採集例が少 sp. nov., eine neue trifine Phycitinae aus Japan. Tinea ないことも一因だと思われる。 10:315-319 13) 佐 々 木 明 夫(2009): 日 本 の ソ ト モ ン ツ ト ガ 属 7. Uresiphita fusei Inoue, 1982 イタクラキノメイガ(Fig. 9:本文中 No. 423) 日本固有種で群馬県と千葉県から得られている。成虫 は 6 月に得られているがまれである。ここで示した個体 はパラタイプである。 (Miyakea)の種とその分布について , 誘蛾燈(195) : 11-16 14) 佐々木明夫(2012):日本産ソトモンツトガの再検 討と 1 新種の記載 , 蛾類通信 (264):337-340 15) Ya m a n a k a , H . ( 1 9 7 6 ):T w o n e w s p e c i e s o f Herpetogramma from Japan, with a note of the known Ⅳ 引用文献(References) species (Lepidoptera, Pyralidae). Tinea 10:1-6 16) Yamanaka, H. ( 1984 ):Revisional study of some 1) Inoue, H. (1959):One new genus and eleven new species of the Japanese Phycitinae. Tinea 5:293-301 species of Bradina Lederer from Japan, China and Taiwan. Tinea 11:161-176 2) 井上 寛(1982):メイガ科 . 井上寛ほか , 日本産蛾 17)Yamanaka, H. (1988):Revision of Udea lugubralis- 類大図鑑 1:307-404, 2:223-254, pls 36-48, 228, 296- complex (Lepidoptera: Pyralidae) from Japan, with 314 descriptions of a new species. Tinea 12:105-112 3) Inoue, H. (1985):A new species and synonymic notes 18) 吉松慎一・中谷至伸・吉武 啓(2011):農業環境 on two taxa of the Pyralinae from Japan (Lepidoptera: 技術研究所・標本シリーズ 8:井上寛コレクション , Pyralidae). Akitu new series (72):1-4 インベントリー (9):55-56, 農業環境技術研究所・ 吉松慎一ら:農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 農業環境インベントリーセンター 19 )Yoshiyasu, Y. ( 1985 ):A systematic study of the Nymphulinae and the Musotiminae of Japan (Lepidoptera: Pyralidae). Scientific Repor ts of the Kyoto Prefectural University. Agriculture 37:1-162 139 140 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) Ⅴ 図(Figures) Fig. 1 Boxes in which the specimens of Pyraloidea of Dr. Hiroshi Inoue Collection are kept. 井上寛博士のコレクションのメイガ上科標本の入った標本箱 Fig. 2 Specimens of Pyraloidea of Dr. Hiroshi Inoue Collection arranged in a box. 井上寛博士のコレクションのメイガ上科標本が並べられた標本箱 吉松慎一ら:農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 Fig. 3 Lamoria adaptella (Walker, 1863) ウスモンツヅリガ Fig. 5 Acrobasis rufizonella Ragonot, 1887 ホソアカオビマダラメイガ Fig. 7 Prophantis adusta Inoue, 1986 ヤツボシノメイガ Fig. 9 Uresiphita fusei Inoue, 1982 イタクラキノメイガ 141 Fig. 4 Salma sakishimensis (Inoue & Yamanaka, 1975) サキシマフトメイガ Fig. 6 Miyakea expansa (Butler, 1881) ソトモンツトガ Fig. 8 Herpetogramma submarginale (Swinhoe, 1901) ヘリグロキイロノメイガ 142 農業環境技術研究所報告 第 34 号(2015) A list of specimens of Pyraloidea(Insecta: Lepidoptera)of Dr. Hiroshi Inoue preserved in the National Institute for Agro-Environmental Sciences Shin-ichi YOSHIMATSU, Yukinobu NAKATANI and Hiraku YOSHITAKE Summar y Dr. Hiroshi Inoue donated a part of his collection of Pyraloidea (Insecta: Lepidoptera) to the Insect Museum of the National Institute for Agro-Environmental Sciences around 1985. It includes 433 species (463 individuals) belonging to 216 genera, including paratypes of some species. The specimens were identified and arranged by himself mainly according to “Moths of Japan”published in 1982. However, the moths were identified nearly 30 years ago and a taxonomic revision is necessary. Therefore, here we give recent scientific names mainly depending on“The Standard of Moths in Japan IV” published in 2013. We also observe the genitalia of some species to confirm their identifications. 独立行政法人農業環境技術研究所報告投稿要領 20農環研040120号 平成20年4月1日 (目的) 第1条 この要領は、独立行政法人農業環境技術研究所(以下「研究所」という。)が発行する農業 環境技術研究所報告(以下「報告」という。)に投稿する論文に関し、その取扱いを定める。 (掲載論文等の定義) 第2条 報告に掲載することができる論文は、別に定める独立行政法人農業環境技術研究所図書・刊 行部会運営要領第4条に定める審査会で掲載が承認された以下のものとする。 一 原著論文 未発表の原著論文 二 学位論文 学位論文を主体とした論文。学位論文である旨を付記する。 三 資料 農業環境に係わる解説・総説、調査、海外の有益情報の翻訳等 (著者) 第3条 論文の筆頭著者(以下「著者」という。)は、研究所職員(元研究所職員を含む。)に限 る。ただし、共著者は、研究所外の者を含めることができる。 (言語) 第4条 論文は、原則として日本語又は英語とする。 (著作権) 第5条 論文の著作権については、独立行政法人農業環境技術研究所知的財産権基本方針により、研 究所に帰属するものとする。 (電子化) 第6条 掲載論文は、電子媒体に変換の上、外部に提供を行うものとする。 (提出) 第7条 論文を提出する場合は、原稿(紙媒体に出力したもの)に表題、著者等名、所属及び柱を記 載した表紙に投稿票(別紙様式)を付し、著者の所属する又は所属した研究領域又はセンターの長等の 校閲を受けたうえ、審査会事務局(以下「事務局」という。)に提出するものとする。 なお、提出に当たっての出力は以下に準ずるものとする。 和文 25字×22行 又は 25字×44行×2段 英文 41行(フォント10p 一段組) (論文の執筆) 第8条 論文の執筆に当たっては、原則として一般的に使用されるワードプロセッサを用いることと し、電子ファイルの事務局への提出は、査読が終了し、審査会において正式受理されてからとす る。 なお、執筆に当たっては別に定める独立行政法人農業環境技術研究所報告執筆要領による。 (論文の査読) 第9条 事務局は、審査会において選定した査読者に、論文等の査読を依頼する。 2 査読を依頼する場合は、独立行政法人農業環境技術研究所謝金支出基準(13農環研第81号)に基 づき謝金を支払うことができる。 (論文受理年月日) 第10条 論文の受理年月日は、査読が終了し審査会が掲載を承認した日とする。 (校正) 第11条 校正は、原則として三校まで行うこととし、著者校正は初校ないし二校までとする。 (別刷の印刷) 第12条 著者が別刷を希望するときは、あらかじめ事務局に連絡することとする。なお、印刷に必要 な経費は、研究領域等で負担する。 附 則 この要領は、平成20年4月1日から施行する。 本誌から転載・複写する場合は、当所の許可を得てください。 農業環境技術研究所報告第34号 平成27年3月31日発行 発行 独立行政法人 農業環境技術研究所 発行者 理事長 宮下 淸貴 〒305-8604 茨城県つくば市観音台3-1-3 電話 029-838-8192(広報情報室) 印刷 株式会社いなもと印刷 〒300-0007 茨城県土浦市板谷 6丁目28-8 BULLETIN OF NATIONAL INSTITUTE FOR AGRO-ENVIRONMENTAL SCIENCES (Nogyo Kankyo Gijutsu Kenkyusho Hokoku) No. 34 March, 2015 CONTENTS RESEARCH PAPER Kenji Ohse, Nobuharu Kihou, Tsunehisa Inoue, Katsuaki Kurishima, Yasushi Fukuzono and Ichiro Taniyama (1) Changes in radionuclides concentration in leafy vegetables, soil and precipitation for a year after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident;In case of Tsukuba City, Japan. ……………………………………………………………………………………………………… 1 Kenji Ohse, Nobuharu Kihou and Ichiro Taniyama (2) Concentration of radioactive materials of vegetables in the Kanto area just after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident …………………………………………… 11 Nobuharu Kihou, Kenji Ohse and Ichiro Taniyama (3) Concentration of radioactive materials of agricultural soil in surrounding area of Fukushima prefecture just after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident ………………… 23 Noriko Yamaguchi, Sadao Eguchi, Masaharu Ikeba, Hideshi Fujiwara,Tomoyuki Makino and Ichiro Taniyama (4) Radiocesium extraction from arable soils at the initial stage after deposition of radionuclides ……………………………………………………………………………………………………… 29 Noriko Yamaguchi, Sadao Eguchi, Kentaro Hayashi, Hideshi Fujiwara and Hirofumi Tsukada (5) Agitation of radioactive substances in soil particles by agricultural practices ……………………………………………………………………………………………………… 33 Yusuke Takata, Kazunori Kohyama, Hiroshi Obara, Yuji Maejima, Syuntaro Hiradate, Nobuharu Kihou, Takashi Saito and Ichiro Taniyama (6) Emergency Survey for Spatial Mapping of Radioactive Cesium Concentration in Agricultural Soil ……………………………………………………………………………………………………… 43 Yusuke Takata, Kazunori Kohyama, Hiroshi Obara, Yuji Maejima, Naoki Ishitsuka, Takashi Saito and Ichiro Taniyama (7) Spatial prediction of radioactive Cs concentration in agricultural soil in East Japan ……………………………………………………………………………………………………… 53 Kazunori Kohyama, Hiroshi Obara, Yusuke Takata, Takashi Saito, Mutsuto Sato, Kunio Yoshioka and Ichiro Taniyama (8) Soil properties for analyzing cause of high radiocesium concentration in brown rice produced in 2011 in Fukushima prefecture …………………………………………………… 63 Tomoyuki Makino, Ikuko Akahane, Noriko Yamaguchi, Takahiro Ara, Hiroshi Yamaguchi, Nobuharu Kihou, Hideshi Fujiwara, Takeshi Ota, Tetsuya Ishikawa, Toshifumi Murakami, Tetsuya Eguchi,Takashi Kamiya, Katsumi Aono and Takashi Saito (9) Development of stirring cleaning method to remediate radioactive cesium-contaminated paddy fields. ……………………………………………………………………………………… 75 Naoki Ishitsuka (10) The understanding of land cover situation on the farmland in 2011 using satellite data at Fukushima ……………………………………………………………………………………… 81 RESEARCH NOTE Shin-ichi Yoshimatsu, Yukinobu Nakatani and Hiraku Yoshitake A list of specimens of Pyraloidea (Insecta: Lepidoptera) of Dr. Hiroshi Inoue preserved in the National Institute for Agro-Environmental Sciences ……………………………………………… 101 National Institute for Agro-Environmental Sciences Kannondai, Tsukuba, Ibaraki 305-8604 JAPAN
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