平 成 20年 2月 14日 08-15号 カレント・トピックス 独 立 行 政 法 人 石 油 天 然 ガス・金 属 鉱 物 資 源 機 構 金 属 資 源 情 報 センター 電 話 :044-520-8590 FAX:044-520-8750 インドネシア鉱業法改正の行方 その 10 -『12 月上旬までの審議状況:長引く移行期間規定等をめぐる攻防』<ジ ャ カ ル タ 事 務 所 池田 肇報告> Tel: +62-21-522-6640 e-mail: [email protected] はじめに 2007 年 10 月 11 日 付 け カ レ ン ト ト ッ ピ ク ス 「イ ン ド ネ シ ア 鉱 業 法 改 正 の 行 方 -そ の 9『 8 月 9 日 発 行 の 議 会 雑 誌 Parlementaria か ら 見 る 新 鉱 業 法 案 成 立 の 見 通 し 』」で 予 想 し た と お り 、エ ネ ル ギ ー 鉱 物 資 源 省 (ESDM)高 官 が 様 々 な 鉱 業 大 会 、セ ミ ナ ー な ど の 機 会 を 通 じ 、 ま た 新 聞 の イ ン タ ビ ュ ー に 応 え て 鉱 業 法 案 は 2007 年 内 に 成 立 す る と し た 発 言 は ま た も や空振りに終わった。 ユ ド ヨ ノ 政 権 は 、2007 年 4 月 に 新 投 資 法 を 施 行 し 、マ ク ロ 経 済 の 好 転 に よ り 一 部 の 産 業 分 野 で 好 調 な 投 資 を 呼 び 起 こ し て い る が 、鉱 業 投 資 は 依 然 低 迷 し て い る 。鉱 業 法 案 は 、 森林法をはじめとする関連法規との整合性、地方分権化の明記、鉱業許認可の透明性確 保、環境保護の実践、そして鉱業投資の促進を趣旨とする。しかし、最近の非鉄金属価 格の高騰を受けた世界的な資源獲得競争の中で、一次原料の輸出依存体制から高付加価 値製品の輸出体制へシフトしようとする鉱業政策の大転換を掲げ資源ナショナリズムを 意識したものとなっている。 JOGMEC ジ ャ カ ル タ 事 務 所 は 、こ の ほ ど イ ン ド ネ シ ア 鉱 業 協 会 関 係 者 か ら 2007 年 10 月 4 日 付 け 鉱 物 資 源 石 炭 鉱 業 法 案 草 稿 (最 新 草 稿 )を 非 公 式 に 入 手 し 、 併 せ て エ ネ ル ギ ー 鉱 物 資 源 省 Mr. R. Sukhyar 大 臣 顧 問 (Expert Staff Minister of Energy and Mineral Resources for Information and Communication)が 、 11 月 13 日 、 Bandung で 講 演 を 行 っ た 「鉱 業 法 改 正 シ ン ポ ジ ウ ム 」資 料 を 同 氏 よ り 直 接 入 手 し た の で 、 こ れ ら 資 料 を 基 に 、 最 新草稿の概要、インドネシア政府、議会が描く鉱物資源開発の基本的な枠組み及び鉱業 法案審議の本質的問題を紹介する。 1. 鉱 業 法 案 改 正 趣 旨 最新草稿の冒頭、次の改正趣旨が記載されている。 憲 法 第 3 条 33 節 は 、イ ン ド ネ シ ア の 土 、水 、自 然 資 源 は 国 家 が 管 理 し 、国 民 の 幸 福 の ために利用しなければならないと規定している。インドネシアの大地に含まれる自然資 源である鉱物・石炭が非再生資源であることを考えると、それらの利用は、継続して国 民の最大の利益になるように、最適性、効率性、透明性、継続性及び環境に配慮して行 わなければならない。 前 述 の 憲 法 の 規 定 に 従 い 、 1967 年 、 鉱 業 の 基 本 原 則 に 関 す る 法 律 No. 11 が 発 布 さ れ た 。 本 法 律 は 制 定 後 40 年 間 に わ た り 、 国 の 発 展 に 大 い に 貢 献 し て き た 。 しかし、国が発展するにつれ、本法律は内容が中央集権的なため、もはや現在の状況 や未来の課題に十分に対応できなくなった。さらに、鉱山開発は、国内外の戦略的変化 に応じて調整しなければならない。鉱物・石炭開発が直面する主要な課題は、民主化、 地方自治、公民権、環境への配慮、技術情報の発展、知的所有権、官民の躍進的参加を 促すグローバル化の影響である。 1967 年 法 律 No. 11 で は 、 社 会 問 題 、 環 境 問 題 、 一 般 の 人 々 へ の 権 限 付 与 、 土 地 を 巡 る紛争、国家の収入、現地調達、国内労働力、現地雇用などの鉱物・石炭開発に関する 問題を最適に管理できなかった。 これらの問題に対処し、戦略的に環境問題に取り組むためには、鉱物・石炭開発に関 する新しい規程を制定し、鉱物・石炭開発の新しい手法、管理の再編及び事業に法的基 盤を与えなければならない。 1967 年 法 律 No. 11 を 改 正 し 、 完 璧 な も の に す る こ と に よ っ て 、 重 要 な 外 国 取 引 商 品 である鉱物・石炭の開発管理が整備され、国の主要生産物である原材料やエネルギーの 需要、収入源や外国為替、事業機会の確立、雇用の機会及び地域の発展や国民生活の向 上が満たされ、国民の最大の利益に資することができる。 本法律は次の原則の上に成り立っている。 (1) 非再生資源である鉱物・石炭は、国家が管理し、その開発と実践は政府と地方自治体が事 業体と協力して行う。 (2) そ の 後 、中 央 政 府 は 事 業 機 会 を イ ン ド ネ シ ア の 法 人 、個 人 、地 元 の 人 々 の 事 業 所 に 提 供 し 、そ れ ら の 人 々 が 、中 央 政 府 、地 元 行 政 機 関 の 自 治 権 に 従 っ て 発 行 さ れ た ラ イセンスに基づき、鉱物・石炭分野で業務遂行できるようにする。 (3) 自 治 権 は 、鉱 物 ・ 石 炭 開 発 の 管 理 が 、 政 府 及 び 地 方 の 行 政 な ど 、 地 方 分 権 の 原 則 に 基づいていなければならない。 (4) 鉱 山 開 発 は 、イ ン ド ネ シ ア 国 民 の 繁 栄 に 資 す る よ う に 、経 済 的 ・ 社 会 的 に 最 大 の 恩 恵を与えるものでなければならない。 (5) 鉱 山 事 業 は 、そ の 地 域 の 発 展 を 加 速 さ せ 、個 人 ・ 中 小 規 模 事 業 者 の 経 済 活 動 及 び 鉱 山を支える産業の発展を推し進めるものでなければならない。 2. 最 新 草 稿 1967 年 法 律 No. 11 は 12 章 69 条 か ら な る 法 律 で あ っ た が 、 最 新 草 稿 は 23 章 176 条 1 で 構 成 さ れ る 法 律 と な っ て い る 。2005 年 5 月 20 日 の 初 稿 に 比 べ 、8 章 、101 条 項 が 2007 年 3 月 下 旬 以 降 に 追 加 さ れ た 。 JOGMECジ ャ カ ル タ 事 務 所 が こ れ ま で 入 手 で き た 草 稿 を 参 考までに紹介する。 ① 2005 年 5 月 20 日 付 け 草 稿 (初 稿 ) 第 15 章 第 75 条 ② 2006 年 8 月 30 日 付 け 草 稿 第 15 章 第 75 条 ③ 2007 年 3 月 22 日 付 け 草 稿 第 15 章 第 75 条 ④ 2007 年 10 月 4 日 付 け 草 稿 第 23 章 第 176 条 3. 中 央 ・ 地 方 政 府 の 役 割 最新草稿には、鉱物資源石炭開発分野における中央・州・地方政府の役割を次のとお り定義している。 (1) 中 央 政 府 (Government)(第 6 条 ): ① 国 家 鉱 業 政 策 (生 産 、 販 売 、 利 用 、 保 全 、 非 課 税 歳 入 、 高 付 加 価 値 化 )の 策 定 。 法律・規則の制定。国家標準、ガイドライン、基準の作成、指定。 ② 鉱業許認可制度の構築、中央政府所管ライセンスの発行、管理、監督。 ③ 鉱 業 地 域 (WP)、 鉱 業 区 (WUP)、 国 家 保 留 鉱 区 (WPN)情 報 の 管 理 (登 録 簿 の 作 成 )。 (WP& WUP の 概 念 は 詳 述 す る 。 ) ④ 地方政府による鉱業管理の監督及び指導。 ⑤ 州、地方政府の能力強化。 (2) 州 政 府 (Province)(第 7 条 ) ① 法律・規則の制定。 ② 州政府所管ライセンスの発行、管理、監督。 ③ 州レベルの地質情報、鉱物・石炭ポテンシャルデータの管理。 ④ 州、地方政府の人材育成。 ⑤ 中央政府への報告。 (3) 地 方 政 府 (Regency/City)(第 8 条 ) ① 法律・規則の制定。 ② 地方政府所管ライセンスの発行、管理、監督。 ③ 県 /市 レ ベ ル の 地 質 情 報 、 鉱 物 ・ 石 炭 ポ テ ン シ ャ ル デ ー タ の 管 理 。 ④ 地域開発の促進と地域社会の鉱業管理への参画。 4. 鉱 業 事 業 許 可 の 発 給 権 限 改正趣旨の柱の一つである地方分権化(鉱業許認可権の移譲)は、次のとおり整理されている。 (1) 中 央 政 府 (鉱 物 資 源 石 炭 地 熱 総 局 長 ): ① 鉱 業 活 動 の 現 場 (鉱 山 、 選 鉱 場 、 製 錬 所 )が 2 つ 以 上 の 州 に ま た が る 場 合 。 ② 鉱業活動による環境への影響が 2 つ以上の州にまたがる場合。 ③ 沿 岸 か ら 12 マ イ ル 以 上 の 海 域 。 (2) 州 政 府 (州 知 事 ): ① 鉱 業 活 動 の 現 場 が 2 つ 以 上 の 県 /市 に ま た が る 場 合 。 ② 沿 岸 か ら 4 マ イ ル 以 上 12 マ イ ル 未 満 の 海 域 。 (3) 地 方 政 府 (県 知 事 ): ① 鉱 業 活 動 の 現 場 が 単 独 の 県 /市 内 に 位 置 す る 場 合 。 ② 沿岸から 4 マイル未満の海域。 5. 鉱 業 地 域 (第 1 図 参 照 ) 中央政府 議会へ報告 鉱業区(WUP) Mining Work Area 議会と調整 サブカテゴリー:鉱業事業許可鉱区 (WIUP)はWUP内に設定される インドネシアの領土 鉱業地域 (WP) Mining Zone 議会からの提案 市民鉱区 (WPR) People’s Mining Area 国家保留鉱区 (WPN) State Reserve Area 地方議会からの助言 地方政府 第 1図 鉱業地域説明図 (1) 鉱 業 地 域 (WP: Wilayah Pertambangan)(第 9 条 ): ① WP と は 、地 質 、資 源 ポ テ ン シ ャ ル 情 報 な ど 利 用 可 能 な デ ー タ に 基 づ き 、鉱 業 (鉱 物 鉱 業 ・ 石 炭 鉱 業 )活 動 の 可 能 性 が あ る 地 域 と し て 指 定 さ れ る 。 ② WPは 、 国 家 空 間 利 用 計 画 の 一 部 と し て 、 中 央 政 府 が 地 方 政 府 及 び 議 会 と 調 整 し た後に定められる。 ③ WP は 、 鉱 業 区 (WUP : Wilayah Usaha Pertambangan) 、 市 民 鉱 区 (WPR : Wilayah Pertambangan Rakyat)、 国 家 保 留 鉱 区 (WPN: Wilayah Pencadangan Negara)の 3 鉱区から構成される。 ④ WP の 境 界 、 面 積 、 決 定 方 法 は 、 政 府 規 定 で 詳 細 を 定 め る 。 ⑤ WP は 、 地 質 図 (1:250,000)に 明 記 さ れ る 。 ⑥ WP は 、 既 存 の 鉱 業 事 業 契 約 (KK(COW))、 石 炭 鉱 業 事 業 契 約 (KPK2B(CCOW))鉱 区 な ど を 包 括 す る 地 域 と な る 。石 炭 鉱 業 、非 金 属 鉱 業 、砕 石 鉱 業 な ど す べ て の 鉱 業 活 動が含まれる。 ⑦ WP の 決 定 は 、 経 済 、 生 態 系 、 社 会 的 ・ 文 化 的 ・ 環 境 的 被 害 を 考 慮 し て 、 総 合 的 に行う。地方政府の希望を考慮する。 (2) 鉱 業 区 (WUP: Wilayah Usaha Pertambangan)( 第 13 条 ): ① WUP は 、中 央 政 府 及 び 州 政 府 が 地 質 デ ー タ 、鉱 物 資 源 ポ テ ン シ ャ ル 、地 質 デ ー タ などに基づき決定される。 ② WUPは、中央政府が地方行政当局 と調整し、議会に書面にて 報告 した後に定められる。 ③ 上記調整は、中央政府と地方政府が保有するデータと情報に基づき実施される。 ④ 中央政府は、現行の規定のもとで、WUP 制定の権限の一部を州政府に与えることがある。 (3) 鉱 業 事 業 許 可 鉱 区 (WIUP: Wilayah Izin Usaha Pertambangan)(第 16・ 17 条 ) ① WIUP と は 、 鉱 業 事 業 許 可 (IUP)に よ り 定 め ら れ る 地 域 を 言 う 。 ② 金 属 鉱 業 ・ 石 炭 鉱 業 の 採 掘 は 、 WIUP の 中 で 行 わ な け れ ば な ら な い 。 ③ 金 属 鉱 業 ・ 石 炭 の WIUP の 境 界 及 び 範 囲 は 、 中 央 政 府 が 、 中 央 政 府 と 地 方 政 府 が 決めた規定に基づき、地方政府と調整の上、決定される。 ④ 石炭鉱業、金属鉱業の WIUP は、鉱業許認可機関(大臣、州知事、 県知事)による入札 (Bidding & Tender)により決定される。(プロポーザル方式が導入されるかは不明) ⑤ 非 金 属 鉱 業 、 砕 石 業 の WIUP は 、 投 資 家 か ら の 申 請 手 続 き に よ り 地 方 政 府 に よ っ て決定される。 (4) 市 民 鉱 区 (WPR: Wilaya h Pertambangan Rakyat)(第 20 条 ): ① 市 民 の 鉱 業 活 動 は 、 WPR の 中 で 行 わ れ る 。 ② WPR と は 、 WP で 一 般 の 人 々 が 採 鉱 活 動 を 行 う 地 区 の こ と で あ る 。 ③ WPR は 、 県 知 事 が 地 方 の 立 法 議 会 の 助 言 を 得 た 後 に 定 め る 。 ④ WPR の 対 象 事 業 は 次 の と お り 。 (第 23 条 ) ・ 川岸及び河床の二次堆積鉱物 ・ 深 度 25m ま で の 初 成 鉱 床 ・ 段 丘 堆 積 物 、 河 川 堆 積 物 、 古 河 川 堆 積 物 (ancient river precipitation) ・ 最 大 面 積 は 25ha ・ 最 大 15 年 間 (5) 国 家 保 留 鉱 区 (WPN: Wi layah Pencadangan Negara)(第 28 条 ): ① WPN と は 、政 府 の 利 益 、立 法 議 会 の 提 案 及 び 地 元 の 要 望 を 考 慮 し て 、生 態 系 と 環 境の均衡を維持する保護区として定める。 ② 国 民 の 戦 略 的 利 益 の た め に 保 留 さ れ る 鉱 区 で あ る 。 (第 1 条 第 32 項 ) ③ WPN の 留 意 事 項 は 次 の と お り 。 (第 29 条 ) ・ 国内産業における原材料の需要 ・ 国のエネルギー需要 ・ 外国為替財源 ・ 施設、インフラに基づく地域の状況 ・ 経済発展の中心地としての開発の可能性 ・ 環境を支える能力 ④ WPN は 議 会 の 承 認 を 得 た 場 合 は WUP と し て 変 更 で き る 。 6 . 鉱 業 事 業 の 区 分 (第 32 条 ) 最新草稿による鉱業事業の区分は次のとおり。 (1) 鉱 物 鉱 業 (Mineral Mining) ① 放射性鉱物鉱業 * :ウラン、トリウムなど。 ② 金属鉱業 :ニッケル、銅、鉛、亜鉛、ボーキサイトなど。 ③ 非金属鉱業 :大理石、石灰石、岩塩 ④ 砕石業 :岩 (2) 石 炭 鉱 業 (Coa l Minin g) * 放 射 性 鉱 物 鉱 業 は IUPに よ る 。 た だ し 、 原 子 力 労 働 規 則 を 遵 守 し な け れ ば な ら な い 。 7. 鉱 業 事 業 許 可 の 種 類 (第 33 条 ) (1)鉱 業 事 業 許 可 (IUP: Izin Usaha Pertambangan)(第 34∼ 39 条 ) (2)市 民 鉱 業 許 可 (IPR: Izin Pertambangan Rakyat)(第 67∼ 73 条 ) (3)特 別 鉱 業 許 可 (IKP: Izin Khusus Pertambangan)(第 74∼ 78 条 ) 8. 鉱 業 事 業 許 可 と 探 鉱 、 開 発 ス テ ー ジ (1) 探 鉱 鉱 業 事 業 許 可 (Exploration-IUP)( 第 40∼ 43 条 ) 生 産 鉱 業 事 業 許 可 (Production-IUP)(第 44∼ 50 条 ) (2) 特 別 鉱 業 許 可 (IKP: Izin Khusus Pertambangan)(第 74∼ 78 条 )(第 2 図 参 照 ) ① 国 営 鉱 山 企 業 は 、 WPN 内 で 鉱 物 ・ 石 炭 資 源 を 優 先 的 に 採 掘 す る 権 利 を 持 つ 。 ② WPN 内の採掘活動は、エネルギー鉱物資源省大臣が IKP を与えた採掘事業体が実施する。 ③ WPN では、銅、金、鉄、ニッケル、ボーキサイトの採掘及び石炭の深部採掘ができる。 ④ IKP と は 、 所 定 の WPN 内 で 概 査 、 探 鉱 、 環 境 影 響 評 価 調 査 及 び FS 調 査 を 実 施 す ることのできる権利許可である。 ⑤ IKP の 有 効 期 限 は 、 鉱 物 鉱 業 は 8 年 間 、 石 炭 鉱 業 は 7 年 間 と 定 め ら れ て い る 。 (3) 鉱 業 事 業 協 約 (PUP: Perjanjian Usaha Pertambangan)(第 79∼ 98 条 ) ① 必 要 な 要 件 を 満 足 し 鉱 山 開 発 へ 移 行 し よ う と す る IKP 保 持 者 は 、 政 府 が 設 立 し た組織委員会と協約を締結することにより鉱山開発が可能となる。 ② 組織委員会とは国立の事業体である。組織委員会は、議長 1 名と 6 名のメンバ ーから成る。 ③ 組織委員会の議長とメンバーは、エネルギー鉱物資源省大臣の推薦に基づき、 大統領が任命及び解任を行う。 ④ PUP の 前 提 条 件 は 次 の と お り 。 (第 80 条 ) ・ WPN 内 の 事 業 で あ る こ と 。 ・ インフラが未整備な地域であること。 ・ 該 当 地 域 が 、新 し い 経 済 成 長 の 中 心 地 と し て 発 展 の 可 能 性 を も っ て い る こ と 。 ・ 最新技術と多額の投資を必要とすること。 ・ 投 資 期 間 は 20 年 と し 、 10 年 間 、 2 回 の 延 長 を 認 め る 。 ・ 契約地域の面積は、現行の生産 WIUP の必要要件に従い、鉱 物・石炭の種類に基 づき、決められる。 エネルギー鉱物資源大臣 発行 特別鉱業許可(IKP) IKPを申請 IKPを取得 外国投資家 鉱山会社 PUP契約交渉 鉱業事業協約(PUP) 政府設立の組織委員会 と協約を締結 議会の承認 探鉱、 FS、 AMDAL(環境影響分析) PMA 法人設立か? 20%のダイベスト メント義務を負う 鉱山開発、生産 < 注 > PMA: 外 資 設 立 の 現 地 法 人 (Penanaman Model Asing) 第 2図 国 家 保 留 鉱 区 (WPN)に お け る 鉱 業 開 発 プ ロ セ ス 9. 鉱 業 権 の 発 給 条 件 (最 大 面 積 、 有 効 期 間 ) 最新草稿に規定される鉱業権の最大面積と鉱業事業許可の有効期間は第 1 表のとおり。 第 1表 IUP/IKP−EXPLORATION 最大面積 有効期間 最大面積 8年 25.000 ha 鉱物鉱業 金属 100.000 ha 非金属 25.000 ha 砕石 3年 7 年(ダイヤモンド) 3年 5.000 ha 5.000 ha 1.000 ha 7年 石炭 50.000 ha 有効期間 個人 IPR 最大面積 グループ 共同組合 有効期間 20 年 100.000 ha 更新 2 回 x 10 年 10 年 25.000 ha 更新 2 回 x 5 年 5年 更新 2 回 x 5 年 IKP 探鉱 最大面積 有効期間 8年 1 ha 5 ha 10 ha 5年 5.000 ha 10 年 3年 放射性鉱物 石 炭 WP WIUP / WIKP / WPUP 鉱業ライセンス 鉱業権の発給条件 IUP/PUP− PRODUCTION 更新 2 回 x 5 年 15.000 ha 20 年 50.000 ha 更新 2 回 x 10 年 < 注 > WIKP: 鉱 業 特 別 許 可 鉱 区 7年 WPUP: 鉱 業 事 業 協 約 鉱 区 10 . 高 付 加 価 値 化 (間 接 的 鉱 石 輸 出 禁 止 ) 最新草稿中 2 か所の記述が認められる。 ① 生 産 IUP の 保 持 者 は 、 原 料 を 国 内 で 生 産 ・ 精 製 し な け れ ば な ら な い 。 (第 46 条 ) ② 鉱 物 、 石 炭 資 源 の 付 加 価 値 を 拡 大 す る 。 (第 107 条 ) 第 46 条項の説明書きには、国内で行われる加工・精製は、その製品の価値の拡大と最適化、原材 料としての産業での利用価値増大、雇用機会の拡大、国の収入増加のために行うと記載されている。 11 . 鉱 業 収 益 の 利 益 配 当 最 新 草 稿 に よ れ ば 、 鉱 山 会 社 は 鉱 業 活 動 に よ っ て 得 ら れ た 純 利 益 の 6%を 中 央 政 府 に 、 4%を 地 方 政 府 に 寄 付 し な け れ ば な ら な い と 規 定 し て い る 。 (第 95 条 ) 2007 年 7 月 会 社 法 が 施 行 さ れ 、 天 然 資 源 関 連 企 業 に つ い て は 企 業 の 社 会 的 責 任 (CSR) 予算が義務化されたばかりであり新たな利益配分を課す形になっている。 地 方 政 府 の 配 分 は 、 州 政 府 1%、 鉱 山 が 所 在 す る 県 に 2%、 州 内 の そ の 他 の 県 に 1%を 配 分 す る こ と が 明 記 さ れ て い る 。 (第 95 条 第 2 項 ) ま た 、上 記 事 項 と は 別 に 、PUP の 協 約 事 業 体 は 資 本 市 場 を 通 し て 20%の 株 式 売 却 を 行 う 責任を持つ。本件は、何を意図したものかは不明である。 12 . 罰 則 規 定 最新草稿に規定される処罰、罰金は第 2 表のとおり。 第 2表 行政処分の内容 違法採掘事業者 鉱業事業許可者の虚偽報告 無許可探鉱 探鉱IUP保持者の生産活動違反 合法的ライセンスを持たない活動違反 鉱業事業許可者への障害 鉱業権発給者による 不適切な権限の行使 IUP (会社) 10 年 100億 10 年 100億 1年 2億 5年 100億 10 年 100億 1年 1億 2年 2億 IKP (会社) 10 年 100億 10 年 100億 1年 2億 5年 100億 10 年 100億 1年 1億+33%増 2年 2億 IPR (個人) 10 年 100億 10 年 100億 1年 2億 5年 100億 10 年 100億 1年 1億+33%増 2年 2億 13. 暫 定 移 行 期 間 問 題 最 新 草 稿 に は 、 新 鉱 業 法 律 発 効 前 の 鉱 業 事 業 権 (Kuasa Pertambangan)、 鉱 業 事 業 契 約 (KK(COW))、石 炭 鉱 業 事 業 契 約 (PK2PB(CCOW))、地 方 鉱 業 許 可 書 (Surat Izin Pertambangan Daerah)、 住 民 鉱 業 事 業 許 可 書 (Surat Izin Pertambangan Rakyat)は 、 本 法 律 に 従 い 変 更 さ れ な け れ ば な ら な い が 、 有 効 期 間 終 了 ま で (最 長 2 年 間 ) は 有 効 と す る 、 と 2 つ の オ プションが併記されている。 2007 年 5 月 16 日 付 け 作 業 委 員 会 (PANJA)の メ モ と し て 、ゴ ル カ ル 党 は 5 年 、国 民 信 託 党は 3 年、福祉正義党は 4 年、民族覚醒党は 5 年、闘争民主党は 3 年を主張している。 2007 年 7 月 18 日 付 け メ モ は 、 本 法 律 発 効 前 の 鉱 業 に 関 す る 権 利 義 務 は 、 本 法 律 の 制 定後 2 年以内に変更されなければならないとされている。 2007 年 11 月 22 日 付 け メ モ は 、変 更 規 定 に は 、現 在 の 加 工 ・精 製 活 動 が 含 ま れ る 。国 の収入に関する規定も考慮される。規定変更の際には、現在起こっている問題について 話し合われるとある。 14 . お わ り に 鉱 業 事 業 協 約 を 提 案 し た ゴ ル カ ル 党 と 異 な り 、 他 会 派 の 場 合 は 11 月 4 日 か ら 始 ま っ た 会 期 で も 、 「鉱 業 事 業 部 門 で 国 益 及 び 国 民 の 利 益 を 守 る こ と が 新 鉱 業 法 の 目 的 」と い う ような資源ナショナリズム的な発言を続けている。 民 主 党 の ス タ ン・バ ト ゥ ガ ナ (Sutan Bhatoegana)議 員 は 、「新 鉱 業 法 は 、議 会 が 本 当 に 社 会 正 義 と 国 民 の 福 祉 を 守 れ る か ど う か を 試 す た め の 正 念 場 と な る 」と 指 摘 。そ し て 、「国 家と国民の利益を守るための手立ては、外国投資家だけに利益をもたらしてきた従来の 鉱 業 事 業 契 約 (KK(COW))を 鉱 業 事 業 許 可 (IUP)に 変 え る こ と 」と 主 張 し て い る 。 他 の 議 員 か ら も こ れ と 大 同 小 異 の 発 言 が 出 て お り 、こ う し た 発 言 だ け を 聞 い て い る と 、 あ た か も 新 鉱 業 法 そ の も の が 「資 源 ナ シ ョ ナ リ ズ ム の 権 化 」と い う よ う な 印 象 を 与 え る が 、 他 方 で は 同 法 が 「停 滞 し 続 け る こ の 国 の 鉱 業 事 業 を 活 性 化 す る た め の 投 資 誘 致 の 手 立 て 」と の 発 言 も 絶 え な い 。 福 祉 平 和 党 の ハ ス ル ン ガ ン ・ シ マ モ ラ (Hasurungan Simamora)議 員 は 、「新 鉱 業 法 は 既 存 の 鉱 業 事 業 の 活 性 化 の み な ら ず 、新 規 投 資 の 誘 致 に 役 立 た ね ば な ら ず 、鉱 業 事 業 の 投 資 が 増 加 す る こ と に よ り 、 地 方 財 政 及 び 住 民 の 生 活 に も 寄 与 す る こ と が で き る 」と 主 張 する。 こ う し た 相 矛 盾 す る よ う な 発 言 は 2007 年 8 月 以 降 の 議 会 で も 続 出 し て い る 。第 7 委 員 会 関 係 者 の 話 で は 、 「第 7 委 員 会 及 び 鉱 業 法 案 特 別 委 員 会 (PANSUS)の メ ン バ ー の 中 に は 、 資 源 ナ シ ョ ナ リ ズ ム と 投 資 誘 致 の ジ レ ン マ に 悩 ん で い る 議 員 が 少 な く な い 」と い う 。 これはつまり、それぞれの選挙区の地方政府や有権者の声には、外国投資家だけに利 益をもたらすような鉱業制度は変えなければならないと言う要望があるものの、すでに 停滞している鉱業部門での投資を新鉱業法で活性化できるかはきわめて心もとないとい うのが彼らの本音である。 移 行 期 間 を め ぐ っ て 政 府 と 議 会 内 各 会 派 は 対 峙 し て い る が 、2009 年 に 大 統 領 選 挙 、国 民議会選挙を控えゴルカル党は微妙な立場に立たされている。議会最大会派のゴルカル 党は、民間及び外資の要望にもっとも理解を示してきた。そのため、政府がまとめた鉱 業 法 案 か ら 鉱 業 事 業 契 約 (KK(COW))が な く な り 、鉱 業 事 業 許 可 の み に な っ た こ と を 懸 念 し 、 同 党 は 鉱 業 事 業 協 約 (PUP)と い う 概 念 を 提 案 し た 。移 行 期 間 に つ い て も 、当 初 ゴ ル カ ル 党 は 、 「既 存 の 事 業 契 約 の 契 約 期 間 が 終 了 す る ま で 有 効 と 見 な さ な け れ ば な ら な い 」と の 立 場を取ってきたが、9 月に入ってから、他会派に同調する傾向を見せている。 ゴ ル カ ル 党 の ア イ ル ラ ン ガ・ハ ル タ ル ト (Airlangga Hartarto)議 員 は 9 月 5 日 、「税 率 などについては既存の事業契約に従うことも理解できるが、その他については一定の移 行 期 間 を 経 て 鉱 業 法 の 規 定 に 従 う べ き 」と の 見 解 を 明 ら か に し て い る 。移 行 期 間 に つ い て なぜゴルカル党が他会派に同調し始めたかは定かではないが、同党が提案した鉱業事業 協 約 (PUP)に 対 す る 他 会 派 の 支 持 を 得 る た め の 取 引 の 可 能 性 も 否 め な い 。 ま た 、鉱 業 事 業 協 約 が 鉱 業 法 に 盛 り 込 ま れ た 場 合 、現 行 の 鉱 業 事 業 契 約 (K K(COW))に 近 い協業形態が温存される可能性があるため移行期間を限定することを受け入れたとも解 釈できる。 しかし、これら問題に加え、最新草稿に盛り込まれた鉱物資源開発の枠組みを構成す る 鉱 業 地 域 (WP: Wilayah Pertambangan)、 鉱 業 区 (WUP: Wilayah Usaha Pertambangan)、 市 民 鉱 区 (WPR:Wilayah Pertambangan Rakyat)、国 家 保 留 鉱 区 (WPN:Wilayah Pencadangan Negara)、 鉱 業 事 業 許 可 鉱 区 (WIUP: Wilayah Izin Usaha Pertambangan)な ど の 概 念 は 、 森林法による保護林問題を再燃させているほか、法律施行後、直ちに運輸通信省、環境 省、労働移住省、国会、地方議会関係者との協議が不可欠になることから、更に審議を 長引かせるものになると安易に想像することができる。 新鉱業法案に関する報道が最近では極めて限られているため、こうした点について今 後も調査を続行する必要がある。 1 第I章(一般規定[第 1 条])、第Ⅱ章(原則及び目的[第 2∼3 条])、第Ⅲ章(鉱物・石炭の取得[第 4∼5 条])、 第Ⅳ章(鉱物・石炭 管理の 行政当局[第 6∼8 条])、第Ⅴ章 ( 鉱業地域(WP:Wilayah Pertambangan)[第 9 ∼31 条])、第Ⅵ章(鉱業事業[第 32∼33 条])、第Ⅶ章(鉱業事業許可(IUP:Izin Usaha Pertambangan) [第 34∼66 条])、第Ⅷ章(市民鉱業事業許可(IPR:Izin Pertambangan Rakyat)[第 67∼73 条])、第Ⅸ章 (鉱業特別事業許可(IKP:Izin Khusus Pertambangan)[第 74∼98 条])、第Ⅹ章(鉱業データ[第 99∼101 条 ])、第ⅩⅠ章(権利と責任[第 102∼121 条])、第ⅩⅡ章(採掘事業の一時的停止[第 122∼125 条])、第 ⅩⅢ章(許可の終了[第 126∼132 条])、第ⅩⅣ章(鉱業サービス事業[第 133∼136 条])、第ⅩⅤ章(国及 び地元行政当局の収入[第 137∼141 条])、第ⅩⅥ章(鉱業事業のための土地利用[第 142∼146 条])、第Ⅹ Ⅶ章(公共の支援提供、監視、一般人の保護[第 147∼153 条])、第ⅩⅧ章(研究開発、教育、研修[第 154 ∼156 条])、第ⅩⅨ章(監督・調査[第 157∼158 条])、第ⅩⅩ章(行政処分、犯罪規定[第 159∼171 条])、 第ⅩⅩⅠ章(暫定移行期間[第 172 条])、第ⅩⅩⅡ章(雑則[第 173∼174 条])、第ⅩⅩⅢ章(終章[第 175 ∼176 条]) おことわり:本 レポートの内 容 は、必 ずしも独 立 行 政 法 人 石 油 天 然 ガス・金 属 鉱 物 資 源 機 構 としての見 解 を示 すもので はありません。正 確 な情 報 をお届 けするよう最 大 限 の努 力 を行 ってはおりますが、本 レポートの内 容 に誤 りのある可 能 性 もあります。本 レポートに基 づきとられた行 動 の帰 結 につき、独 立 行 政 法 人 石 油 天 然 ガス・金 属 鉱 物 資 源 機 構 及 びレポ ート執 筆 者 は何 らの責 めを負 いかねます。
© Copyright 2024 ExpyDoc