「くすり通信」No.80 - 近江八幡市立総合医療センター

近江八幡市立総合医療センター 薬剤部 2015.5.15
目次
1.添付文書改訂情報 P.1~
2.院内からの医薬品に関するインシデント報告(4 月) P.2
3.今月のトピックス P.3~
1.添付文書改訂情報
効能効果、用法用量等の変更
※以下の採用薬につきまして、効能・効果、用法・用量の変更等の重要な改訂がありましたので、
臨時報告いたします。
一般名(主な薬品名)
変更箇所
オキサリプラチン(エルプラット注)
効能・効果
改訂内容
「切除不能な進行・再発の胃癌」に適応追加
医薬品・医療機器等安全性情報 322 号
※以下の医薬品につきまして、各種添付文書の変更・追加がありましたので、ご報告いたしま
す。
一般名(主な薬品名)
変更箇所
主な変更点・追記点
掲載ページ
シクロフォスファミド(エンドキサン 重大な副作
横紋筋融解症を追加
注)
用
p.6
シタグリプチンリン(グラクティブ
錠・ジャヌビア錠)
p.9
重大な副作
血小板減少症を追加
用
トリアムシノロンアセトニド(ケナ 重大な副作
コルト‐A 注)
用
健断裂を追加
パゾパニブ塩酸塩(ヴォトリエント 重大な副作
網膜剥離を追加
錠)
用
パニツムマブ(ベクティビックス注)
重大な副作 皮 膚 粘 膜 眼 症 候 群 ( Stevens用
Johnson 症候群)を追加
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p.10
p.14
p.15
詳細および安全性情報バックナンバーにつきましては、院内薬剤部掲示板「医薬品安全性情報」
または医薬品医療機器情報提供 HP(http://www.info.pmda.go.jp/)をご参照ください。
薬剤部 医薬品情報課 安部 美樹子
コリスチンについて
I.コリスチンとは
注射用コリスチンメタンスルホン酸(以下,コリスチン
注射剤)は、国内において 1990 年代の半ばまで臨床
に供されていましたが、その後,他の抗菌薬の開発と
ともに安全性上の問題等もあったため、使用量の減
少に伴い承認削除となっていました。しかし、近年、わ
が国でもアシネトバクター属菌や緑膿菌などの多剤耐
性グラム陰性桿菌による院内感染症の発生が社会的
コリスチン構造式
な話題となり、その治療薬の一つとして諸外国では一
般に使用されているコリスチンのわが国における再承認を求める声が高まっています。某製薬会社がわが
国におけるコリスチン注射剤の再開発を試み申請の予定ではありますが、その承認には今しばらくの時間
を要するものと思われます。
毒性:コリスチンによる静注療法には腎毒性があります。また、口周囲および四肢の知覚異常、全身性そう
痒、眩暈、不明瞭言語、ならびに神経筋遮断に起因する筋肉脱力および呼吸困難が報告されています(特
に腎不全患者において)。よって、神経筋伝導を遮断するか腎毒性を有する他の薬物(例:アミノ配糖体系
またはクラーレ様薬物)との併用は避けるべきです。
Ⅱ、 作用機序
コリスチンは、Bacillus colistinus から得られたサイクリックポリペプチド系の抗菌薬です。本剤は強い陽性
荷電と疎水性を示す抗菌薬であり、細菌の外膜に強く結合し、膜に存在するカルシウム・マグネシウムを置
換することにより抗菌活性を発揮します。コリスチンは、濃度依存的かつ
強力な短時間殺菌作用が特徴で、一部のグラム陰性菌に対して強い抗
菌活性を有します。グラム陰性菌が有するエンドトキシンとの親和性も
高く,その作用を中和することが知られています。
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Ⅲ、抗菌活性
コリスチンメタンスルホン酸は生体内でコリスチンに変換された後、抗菌活性を発揮します。一般にコリスチ
ンは,緑膿菌,アシネトバクター属などのグラム陰性菌に対する抗菌薬として開発されましたが、その他に、
大腸菌、肺炎桿菌、シトロバクター属などに対しても強い抗菌活性を示します。しかし、セラチア属、プロテ
ウス属、プロビデンシア属などに対する抗菌活性は基本的に期待できません。
表1. 各種細菌に対するコリスチンの抗菌効果
コリスチンの抗菌活性が期待できる細菌
コリスチンに自然耐性を示す細菌
緑膿菌
グラム陽性菌
アシネトバクター属
ナイセリア属
大腸菌
プロテウス属
シトロバクター属
セラチア属
エンテロバクター属
嫌気性菌
クレブシエラ属
コリスチンは国内外のガイドラインにおいて、多剤耐性緑膿菌
感染症に対する治療薬の最終救済薬として再評価されている
薬剤なのです。
参考文献
グラクソ・スミスクライン株式会社 プレスリリース
日本化学療法学会ホームページ
薬剤部 医薬品情報課 淵上 尚彦
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