第28回 長崎県母性衛生学会総会・学術集会 プログラム 長崎大学医学部 良順会館 専斎ホール(理事会) ボードインホール(総会・学術集会) 2015年6月14日(日) 長崎大学医学部 良順会館 長崎県母性衛生学会 会長 増崎英明 事務局:長崎大学医学部産科婦人科学教室 第28回 長崎県母性衛生学会学術集会 期日 会場 会長 2015年6月14日(日) 良順会館(長崎大学医学部構内) 増崎英明 長崎大学病院病院長 大学院産婦人科教授 理事会 長崎大学 医学部 良順会館 専斎ホール Ⅰ.全理事会(11:30-12:00) 総会・学術集会 長崎大学 医学部 良順会館 ボードインホール Ⅰ.総会(12:05-12:15) Ⅱ.学術集会 開会の挨拶(12:15-12:20) 長崎県母性衛生学会会長 増崎英明 Ⅲ.一般演題1(12:20-13:10) 座長 長崎大学病院 6 階西病棟師長 赤星衣美 1-1.ハイリスク産科医療施設における母体搬送の実態調査 赤松利笑 1)、中村千佳子 1)、川村由香子 1)、松﨑菜美 1)、赤星衣美 1)、江藤宏美 2) 1)長崎大学病院、2)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 1-2. CTG モニター波形の学習の必要性 ∼医師への報告のタイミングを逃さないために∼ 森美咲、峰原奈緒子、小林利津子 佐世保市立総合病院 1−3.NCPR 講習会受講後の実践への取り組み 山口沙織、峰原奈緒子、小林利津子 佐世保市立総合病院 1-4. 脳性麻痺児の母親への助産ケアに関する研究 森田真理子 1)、坪田幸子 2)、佐々木規子 3)、宮原春美 3) 1)九州大学病院、2)長崎大学病院、3)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 1-5. 父性の向上を支援する∼立会い出産の現状∼ 前田富美子、森田久美子、溝道エミ子、山津満喜子、大串美智子、芝田久美子 島田市子、中尾美香、中山聡子、大瀬良侑乃、岩永キミ子、久保和代 小林恵美子、小川真弓、三浦佳由子、三浦紀子、三浦成陽、梶村秀雄、三浦清巒 医療法人社団 清巒会 三浦産婦人科 2 Ⅳ.ワークショップ(13:15 14:40) 「長崎県周産期医療支援システム『すくすく』の現状報告と今後の展望」 座長 長崎大学産婦人科 准教授 吉田敦 WS1.「長崎県周産期医療支援システム『すくすく』の現状報告と今後の展望」 長崎地域医療連携ネットワークシステム協議会 長崎県教育委員会委員 医療法人 おび産婦人科医院 院長 小尾重厚 WS2.「妊婦健診のデータはどこへ行く?」 医療法人翔南会 山崎産婦人科医院 院長 山崎健太郎 WS3.「周産期医療支援システム「すくすく」の当院および県北地区での現状」 医療法人佐世保晩翠会 村上病院 院長 村上俊雄 WS4.「周産期支援システムを利用した紹介例について」 医療法人藤田クリニック 院長 藤田晃 WS5.「周産期センターにおける活用法」 長崎みなとメディカルセンター市民病院 産婦人科 主任診療部長 小寺宏平 Ⅴ.特別講演 (14:50 15:50) 座長 長崎大学産婦人科 教授 増崎英明 「診療ガイドラインの考え方・使い方 −早産予防を中心に− 」 順天堂大学 教授 板倉敦夫 3 Ⅵ.一般演題2(16:00 17:10) 座長 佐世保市立総合病院 4 階西病棟師長 小林律子 2-1. 妊娠糖尿病患者の妊娠中から分娩後までの支援について 神近瞳、平野真理、田川悦子、烏山万子、芦塚二葉、村上京子、村上俊雄 医療法人佐世保晩翠会 村上病院 2-2. 既往 PIH 患者の妊娠管理 ∼管理栄養士との連携した指導が奏効した一例∼ 佐野聡美、平野真理、芦塚二葉、村上俊雄、村上京子 医療法人佐世保晩翠会 村上病院 2−3.妊娠中の子宮収縮の生理的周期について∼第 2 報∼ 大瀬良侑乃、中山聡子、中尾美香、溝道エミ子、山津満喜子、森田久美子 大串美智子、芝田久美子、前田富美子、島田市子、岩永キミ子、久保和代 小林恵美子、小川真弓、三浦佳由子、三浦紀子、三浦成陽、梶村秀雄、三浦清巒 医療法人社団 清巒会 三浦産婦人科 2-4. マタニティヨガの分娩時リラックス効果の検証 松尾佳奈 1)、山口晴子 1)、宮原春美 2)、宮本正史 1)、犬塚邦彦 1)、浜崎哲史 1) 1)花みずきレディースクリニック 2)長崎大学医歯薬学総合研究科 2-5. 理学療法施設における「マタニティ外来」の創設 村田広志1)、下田真太郎 1)、宮本正史 2)、上窪幸子 2)、田嶋智子 2)、山口由紀 2) 山口晴子 2)、犬塚邦彦 2)、濱崎哲史 2) 1)長崎百合野病院リハビリテーション科 2)花みずきレディースクリニック 2-6. 理学療法の有用性について 帝王切開後の歩行障害が著しく改善した症例 下田真太郎 1)、村田広志 1)、宮本正史 2)、上窪幸子 2)、田嶋智子 2)、山口由紀 2) 山口晴子 2)、犬塚邦彦 2)、濱崎哲史 2) 1)長崎百合野病院リハビリテーション科 2)花みずきレディースクリニック 2-7. 当院の分娩におけるドクターコール 内野令子、川良聖子、池田恵、前田かおり、真倉さなえ、水尾幸、東 愛 石川潤子、赤木君枝、中村真由美、山口千恵子、松尾美佐子、内山彩子 溝口奈津子、宮崎明子、奥園麻里、宮本沙綾香、瀬尾啓子、高柳初美 久玉博美、井上哲朗 井上産科婦人科医院 Ⅶ.閉会の挨拶(17:10 17:15) 長崎県母性衛生学会会長 増崎英明 4 参加者への案内 (1)総会・学術集会の受付は 6 月 14 日(日)11:00 から良順会館1階で行います。 (2)学術集会参加費 会員・・・・・・・1,000 円 一般参加者・・・・3,000 円 学生・・・・・・・無料(学生証の提示が必要です。大学院生は除きます) ※お支払方法は現金のみです 発表について ※一般演題演者の方へ 発表時間は 7 分、質疑応答は 3 分です。 ※ ワークショップ演者の方へ 発表時間は 10 分、質疑応答は 4 分、総合討論は 15 分です。 ※発表方法について 本学術講演会は PC 発表のみで、講演開始前にメディア媒体(USB メモリ、CD-R)を PC 受付にお持ちになり試写を行ってください。 プレゼンテーションソフトは以下のものをご使用ください。 Windows 版 PowerPoint2003/2007/2010 Macintosh 版 PowerPoint をご使用の方は事前にご連絡いただくか、PC をお持ち込 みください。 動画ファイルをご使用の方は PC をお持ち込みください。 学術集会に関する問い合わせは下記にお願いいたします 長崎大学産婦人科 東島 愛 TEL 095-819-7363 FAX 095-819-7365 5 ワークショップ抄録 WS1.長崎県周産期医療支援システム『すくすく』の現状報告と今後の展望 長崎地域医療連携ネットワークシステム協議会 長崎県教育委員会委員 医療法人 おび産婦人科医院 院長 小尾重厚 2004年大村から運用開始された「あじさいネット」は全県下に展開され、日本 有数のIT連携ネットワークになりました。 このネットワークを利用し当初から運用している病診連携での利用に加え、セキュ リティの高いこのVPNネットワークを利用した、離島医療・救急医療支援システム、 高品質遠隔画像診断システム、周産期医療支援システム、テレビ会議・カンファレン ス中継システム、糖尿病疾病管理システム等々が、長崎県、長崎県医師会等の関係機 関と協同して運営されています。 長崎県周産期登録システム「すくすく」は3年前ごろから構想され昨年7月 試験運用、今年1月から本格的な運用が開始されています。 県内4周産期センターと産婦人科医院・病院で登録されたデータはNTTデータセ ンター広島に保存されます。妊婦のデータを登録しておくことによって、災害時や妊 婦に緊急事態が発症したときに、スムーズに診療情報を共有することができます。今 年の4月からは「診・診」連携が可能となり、県内で妊婦が転院するときなどにも簡 便迅速に紹介ができます。またこのビッグデータをレトロスペクティブに解析するこ とで多くの病態の分析が可能になると思われます。 まだ1年にも満たなく、症例もそれほど多くありませんが、「すくすく」を使用し ての感想を述べたい。 6 WS2.妊婦健診のデータはどこへ行く? 医療法人翔南会 山崎産婦人科医院 院長 山崎健太郎 妊婦健診で計測した、体重、腹囲、子宮底長、血圧、尿検査の結果は自院のカルテ と母子手帳、そして妊婦健診受診票に記入しています。これに加えて、「すくすく」 へ入力しなければいけないのは、面倒と思われるかもしれません。 自院のカルテには、その医療機関で妊婦健診を行った記録のためであり、また、診 療が必要な妊婦さんを見つけていくために記録しています。母子手帳では、妊婦さん 自身が、自身の妊娠記録、育児記録として活用しています。では、妊婦健診受診票は どのように活用されているかご存知ですか? 記入された妊婦健診受診票は、最終的に市町村へ行くのですが、実はそのデータは 有効に活用されていません。これを市町村単位でなく、県全体で集め、さらに小児の 定期健診までデータを集め、長崎県全体の周産期医療の向上と、小児の健全な発育の ために何をすれば良いかを知ることが「すくすく」の目的です。 利用施設が増えることにより、市町村での初期登録を始めたり、お母さんたちの電 子母子手帳となっていくことでしょう。当院での実際の使用例を参考に使い方のコツ を紹介しようと思います。 7 WS3.周産期医療支援システム「すくすく」の当院および県北地区での現状 医療法人佐世保晩翠会 村上病院 院長 村上俊雄 県北地区で周産期医療支援システム「すくすく」が現在、稼動している病院および 診療所は現在の所ない。その原因としては、地域周産期センターの佐世保市立総合病 院および佐世保共済病院が稼動しておらず、紹介あるいは母体搬送するといってもそ の周産期データがすぐ転送することがまだできないことがひとつにある。また、県北 の開業の周産期医療施設は10施設あるが、長崎地区の先生に比し「すくすく」の説 明をまだ十分聞いておられない先生もおられるので、今後情報提供を医療機関にして いく必要があると思う。ただし、県北の周産期医療施設の先生は高齢化が進み、なか なか新しいものへの抵抗があることもひとつの原因と考えられる。 私どもの病院に関しては医師、助産師間でそれぞれの意見があり、「すくすく」に 対し十分理解しているものは少なく、メリットがまだぼんやりとしてわかりづらく、 実行していくまでもいかないのが現状である。また、昨年5月より外来の電子カルテ を導入また今年の5月から病棟の電子カルテを導入している。電子カルテに現在よう やく慣れ始めたのが現状であり、カルテの記載、データの入力に精一杯で「すくすく」 までは手がまわらないというのが偽らざる所である。 現在、電子カルテと「すくすく」との連携が問題になっている。電子カルテから出 力したデータの本システムへの取り込みができないことや「すくすく」のシステムか ら電子カルテへの取り込むためのデータを出力できないのが問題になっている。現在 「すくすく」の開発会社と当院の電子カルテのメーカーが協議中である。また、検査 データの連携を対応している検査会社はBML、CRC、NCK、SRCの4社であ り、県北地区はほとんどの周産期医療施設がラボテックと取引しており、ラボテック が対応できないのも障害になっている。 県北地区では「すくすく」をセットアップしている施設は、現在開業周産期医療施 設2施設で、受入れ側は地域周産期医療センターの佐世保市立総合病院1施設であり、 いまだ稼動までにはいたっていない。今後、県の周産期医療支援システムを構築して いく上では「すくすく」が少しずつ改良され、周産期医療支援システムへの参加が増 え、送る側と受入れ側にとってより良いシステムに開発されることが望まれる。 8 WS4.周産期支援システムを利用した紹介例について 医療法人藤田クリニック 院長 藤田晃 周産期支援システムを 2014 年 10 月より 2015 年 3 月以降の分娩予定妊婦を対象に 登録をおこなった。2015 年 3 月末より合併症妊娠などを長崎みなとメディカルセンタ ー市民病院および長崎大学病院へ 16 例紹介した。16 例中 12 例は外来受診時、4 例は 分娩第 1 期に紹介した。外来紹介は妊娠 19 週∼38 週におこない、胎児発育不全 4 例、 感染症 2 例、妊娠高血圧症候群、前置胎盤、胎児奇形、前期破水、頸管無力症および 癒着胎盤疑いがそれぞれ1例ずつであった。 一方、分娩第 1 期紹介 4 例は、すべて 正期産で出血量増加、胸痛、痙攣および遷延一過性徐脈であった。送信時間は、外来 からの紹介例では前期破水の1例を除いて 13 例は時間内であったが、分娩第1期紹 介は全例時間外であった。データーの受け入れ状況は、12 例が受け入れられており、 外来紹介は 3 例、分娩第1期紹介は1例が依頼中となっている。 以上の紹介例を中心に今後の周産期支援ソフトの利用方法について検討する。 9 WS5. 周産期センターにおける活用法 長崎みなとメディカルセンター市民病院 産婦人科 主任診療部長 小寺宏平 クリニックから周産期センターへの紹介には、外来紹介と母体搬送があります。地 域連携室を使った予約や当日の状態の変化による外来紹介の場合、持参されたクリニ ックからの紹介状のデータを、当院の周産期システムにドクタークラークが入力して います。その時間を短縮することができ、胎児発育不全では、クリニックとセンター での超音波計測値を同じグラフでみることができます。 また母体搬送の場合は、重要事項は電話で確認しますが、搬送中にクリニックのデ ータを把握することができます。特に市外に搬送することになった場合は、その間に 妊婦さんの情報を詳細にみることができます。4つの周産期センターでは、同じ周産 期部門システムがはいっていますが、それ以外の総合病院にはありません。しかし、 「すくすく」を導入することで、クリニック間紹介機能を用いて、センター以外の病 院でもクリニックとの連携を同様に活用することができます。今後は早期に周産期セ ンターや総合病院の新規妊婦登録を進めていくことはもちろん、全クリニックが参加 されることが重要と思われます。 10 一般演題 抄録 1-1. ハイリスク産科医療施設における母体搬送の実態調査 赤松利笑1)、中村千佳子1)、川村由香子1)、松﨑菜美1)、赤星衣美1)、江藤宏美2) 1)長崎大学病院 6 階西病棟 2)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 【はじめに】 長崎大学病院は地域周産期母子医療センターとして県の周産期医療を担っており、 特に母子の生命に危機が及ぶ可能性がある産科救急疾患は原則すべて受け入れてい る。 本研究の目的はハイリスク産科医療施設において、母体搬送に関するデータを収 集・蓄積し母体搬送の実態について明らかにすることである。 【方法】 対象は地域周産期母子医療センター1 施設とし、過去 4 年間の医療記録から母体搬 送に関するデータを後方視的に抽出した。データは 2011 年∼2014 年に母体搬送入院 となった 365 件と他病院へ転出した 136 件を分析対象とした。本研究は長崎大学大 学院医歯薬学総合研究科倫理委員会の承認を得て開始した。 【結果】 母体搬送された対象は 2011 年 115 件、2012 年 82 件、2013 年 87 件、2014 年 81 件の合計 365 件であった。クリニックからの搬送が 332 件(91.2%)を占めていた。重 症度は、超緊急 59 件(16.2%)、緊急 144 件(39.5%)、管理 44 件(12.1%)、その他 118 件(32.3%)となっていた。要因は、母体要因 336 件(92.1%)、胎児要因 29 件(7.9%) であった。搬送された時間帯は、日勤帯 201 件、準夜帯 102 件、深夜帯 62 件であっ た。 他病院へ転出した対象は 2011 年 49 件、2012 年 27 件、2013 年 25 件、2014 年 35 件の合計 136 件であった。転出先は長崎県下の周産期母子医療センター87 件 (64.0%)、クリニック 38 件(27.9%)、その他 11 件(8.1%)となっていた。転出地域は、 市内 60 件(44.1%)、県内 66 件(48.5%)、県外 10 件(7.4%)であった。転出時期は妊娠 期 104 件(76.5%)、産褥期 32 件(23.5%)であった。 【考察】 ハイリスク病院に勤務する助産師は、緊急時に備えて心身の準備を整えるとともに 自己研鑚に努めることが必要不可欠である。また、医師との連携をはかりながら、適 切な状況報告できる能力が必要である。 11 1-2. CTG モニター波形の学習の必要性 ∼医師への報告のタイミングを逃さないために∼ 森美咲、峰原奈緒子、小林利津子 佐世保市立総合病院 【背景】 胎児の Well-being を評価する方法として、胎児心拍数モニターは不可欠である。 CTG を使用し、胎児状態の評価を入院中または外来での妊婦に対し行っているが、 CTG の判読方法として、多くの助産師・看護師がまだ波形レベルの分類で学習が十 分ではないことが現状としてあり、判断に迷う場合もある。このような時に、推奨さ れている胎児心拍数のレベル分類に沿って、観察・報告できるようになることは、新 生児の生命の良いスタートにたつことができる援助において重要である。 【CTG モニターの学習会の実施】 産科医師を中心とし、助産師・看護師でモニターの波形や産科医療補償制度事例の モニターの判読会を 3 月から実施している。また、胎児心拍数のレベル分類に関して の視覚的に訴えるようにナースステーション、分娩室に掲示することで医師への報告 のタイミングをのがすことがないように看護者でも取り組むようにしている。 【学習会の意義】 新生児の予後を胎内にいる状態で判断するということは大きな責任を伴うととも に周産期看護が担う重要な役割となってくる。分娩時のアセスメントを行うためにも、 分娩ごとにしっかり分娩時モニターの波形について学習を行っていくことは、母児と もに良い状態、さらに新しい家族の良いスタートをつくる重要な意義がある。 【展望】 現在は、助産師のみがモニターの判読を行っている。看護教育においてもモニター については学習を行っているため、病棟全体で看護師も判読ができ、異常時により早 期に対応できるようにリアルな教材をもとに学習を継続していきたい。 12 1-3. NCPR 講習会受講後の実践への取り組み 山口 沙織 峰原 奈緒子 小林 利津子 佐世保市立総合病院 【背景】 2007 年より日本周産期・新生児医学会が新生児蘇生法(以下 NCPR)普及事業を 「すべての分娩に新生児蘇生法を習得した医療スタッフが新生児の担当者として立 ち会うことができる体制の確立」を目指し、スタートした。 【NCPR 講習会の受講について】 2015 年当院でコースを開催した。以前は院外での受講を行っていた。スタッフ 30 名に対して NCPR 受講に関して質問紙にて調査した。 【結果】 スタッフの職種として、看護師 10 名、助産師 20 名で構成された病棟であり、受講 したスタッフは 24 名 80%、まだ受講していないスタッフが 6 名であった。受講の理 由として、「出生直後の新生児のケアに自信がない」「分娩がある病棟なので」「新生 児のより良いスタートがきることができるように」の順であった。受講できない理由 は「日程があわない」であった。メリットとしてアルゴリズムに沿うことで統一した ケアができる、自信につながるとの多くの意見があげられた。デメリットとしては感 じていないが継続的なシミュレーションの必要性、いつ新生児仮死に直面するかわか らないため定期的なシミュレーションの学習の必要性があげられた。 【考察】 本事業が始まり、産科スタッフから資格を取得することをはじめ、徐々に病棟で知 識は浸透している。初期処置以上の人工呼吸においての実践に至ることはローリスク では昨年度は 2 例であった。質問紙の結果より、受講者は増加しているが、蘇生に遭 遇することは少なく、また、いつ遭遇するかわからないためにシミュレーション学習 の必要性を感じているスタッフが多かった。そのため、シミュレーション学習も行い、 4 月より開講されたスキルアップコースを医療チームで開催し、学習を重ねていくこ とで、蘇生に遭遇した場合の適切な質の高い処置を新生児に行うことができると考え る。 【結論】 受講のみにとどまらず、継続した学習が蘇生に遭遇した場合は有効であるため、S コース開催を行っていく。 13 1-4. 脳性麻痺児の母親への助産ケアに関する研究 森田真理子 1)、坪田幸子 2)、佐々木規子 3)、宮原春美 3) 1)九州大学病院、2)長崎大学病院、3)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 【はじめに】 脳性麻痺の発生率は医療技術の進歩により一旦減少したものの、明確な減少傾向を 示すには至っておらず、脳性麻痺児の母親の出産時の経験やそれに対する助産師ケ アに関する研究はほとんど見当たらない。そこで本研究では脳性麻痺児の母親がお 産をどのように捉えているか、助産師の対応はどうであったか等を分析し、母親へ の具体的な助産ケアについて検討した。 【方法】 研究協力者は妊娠期または分娩期のトラブルが障害の原因である可能性が高いと 考えられる A 市内の障害児デイサービスを利用する脳性麻痺児の母親のうち、同意 が得られた母親とその母親らからのスノーボールサンプリングにて承諾の得られた 脳性麻痺児の母親 8 名である。母親に 1 回 60 分程度の半構成的インタビューを実施 し、録音したデータを逐語録におこして質的帰納的に分析した。本研究は長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻倫理委員会の承認を得て行った(承認番号 13111464)。 【結果】 母親のお産の捉え方では、 「早産兆候の自覚の困難さ」、 「身体的・心理的苦痛」、 「母 子分離に対する辛さ」、「児の誕生への喜び」、「分娩に対する実感のなさと後悔」、助 産師の実際の関わりと求める支援では、「サポーティブな助産ケア」、「助産師のモニ タリングケアの少なさ」、 「助産師のエモーショナルケアの少なさ」、 「助産師の役割の 分かりにくさ」 、 「助産師の支援への期待」というカテゴリーが抽出された。障害受容 では、「障害の自然な受け容れ」 、「障害への悲嘆、不安と児の発達への願い」、「不明 確な障害の告知」 、社会資源では、 「社会資源利用の困難性」、 「専門職者からの情報提 供の乏しさ」が抽出された。 予期せぬ分娩が生じた際はモニタリングケアを実施すると共にエモーショナルな関 わりを行い,産褥早期には分娩の想起や母乳を中心とした育児支援が有用であること が明らかになった。 14 1-5. 父性の向上を支援する∼立会い出産の現状∼ 前田富美子、森田久美子、溝道エミ子、山津満喜子、大串美智子、芝田久美子 島田市子、中尾美香、中山聡子、大瀬良侑乃、岩永キミ子、久保和代 小林恵美子、小川真弓、三浦佳由子、三浦紀子、三浦成陽、梶村秀雄、三浦清巒 医療法人社団 清巒会 三浦産婦人科 【緒言】当院では、妊娠中から母性を育み、出産時のみならず、出産後も前向きに育 児に取り組んでいけるように支援している。昨今では、父親も育児や家事に協力して いる傾向にある。わが子の誕生に立会うことが、父性の向上を図るきっかけになるの ではないかと考え、当院における立会い出産の現状を調査したので報告する。 【方法】 期 間 H26.11 月∼H27.2 月 対 象 当院で経膣分娩した産婦 179 名、およびその夫 118 名 方 法 独自に作成した自記式質問紙を夫は立会い出産直後、産婦 は産後 1 目に配布する。 【結果】 ⑴75.3%が夫の立会い出産で最も多く、次いで実母だった。里帰り出産のうち、54.8% の夫が立会い出産だった。夫が立会いしなかった 24.7%には、里帰りや仕事でどうし てもできなかった人も含まれる。環境面では職場に気を使いながら休んだという人は 少なかった。 ⑵立ち会うきっかけは、妻の希望より夫の意志が圧倒的に多かった。立ち会い時は、 手を握る・励ますなど精神的援助が多く次いで食事・水分補給、腰部や背部のマッサ ージなどを行っていた。 ⑶感想は、妊娠・出産の大変さが分かった、出産の感動を分かち合えた、協力して子 育てを行う土台となった等の意見が聞かれた。 ⑷両親学級の参加者は 27.6%で、立会い出産に役立ったと約半数が答えていた。また、 複数回答ではあるが立会い場面における看護師や助産師のアドバイスや家族・友人の アドバイスも役立ったと感じている。 ⑸産婦の 93%が出産に満足と答えていた。 【まとめ】 ⑴当院における立会い出産の現状を把握し、育児への協力を自覚する等夫の率直な意 見を聞くことができた。 ⑵夫の積極的な姿勢で立会い出産を希望し、産婦も立会い出産に満足していた。 ⑶妊婦健診の同席や両親学級の受講などを勧め、育児への協力が得られるよう支援し ていくことが大切である。 15 一般演題 2 2-1. 妊娠糖尿病患者の妊娠中から分娩後までの支援について 神近瞳、平野真理、田川悦子、烏山万子、芦塚二葉、村上京子、村上俊雄 医療法人佐世保晩翠会 村上病院 【目的】 GDMの診断を受けた妊婦に対し妊娠中から分娩後に至るまでの継続支援の効果 を確認し今後の支援に繋げる事を目的とした。 【方法】 H24 年 1 月∼H26 年 6 月までの当院で分娩したGDM妊婦 36 名(1 ポイント異常 32 名、2 ポイント異常 4 名、初産婦 19 名、経産婦 17 名)を対象とした。なおBMI ≧25 は 15 名、BMI<18.5 は 3 名、18.5≦BMI<25 は 18 名であった。妊娠 20 週未 満、20∼30 週、30 週以降に分け平均体重増加をBMI別に算出し分娩 6 週後の受診 率とアンケートを実施した。 【結果】 母体平均体重増加量と児の平均出生体重はBMI≧25 では妊娠 20 週未満で 1.5k g、20∼30 週 1.7kg、30 週以降で 3.1kg増であり児体重は 3109gであった。BM I<18.5 では 20 週未満 2.2kg、20∼30 週 0.4kg、30 週以降で 1.9kg増であり 児体重は 2679gであった。18.5≦BMI<25 では 20 週未満 2.9kg、20∼30 週 3.5kg、 30 週以降 3.8kg増であり児体重 3080gであった。分娩 6 週後の受診率は 92%であ りアンケートを回収できたのは 23 名(64%)であった。妊娠中指導により行動変化 があったかの質問に対し、あるが 21 名、ないが 2 名でその内容は分割食 20 名、食事 の見直し 19 名であった。産後の関心では将来の糖尿病発症について 18 名、定期検診 の必要性 12 名であった。 【考察】 BMI<18.5 の体重増加量はその他の群に比し 20 週以降の母体平均体重と児の出 生体重が少ない傾向にあった。今後は更なる指導効果を上げる関わりとして日々の血 糖値の推移を妊婦と振り返りながら精神面、栄養面を考慮した指導を目指していきた い。 16 2-2.既往 PIH 患者の妊娠管理 ∼管理栄養士との連携した指導が奏効した一例∼ 佐野聡美 平野真理 芦塚二葉 村上俊雄 村上京子 佐世保晩翠会 村上病院 【緒言】 妊娠高血圧症候群(以後 PIH という)の既往は PIH のハイリスク因子である。PIH、 早産既往が 2 回ある患者が、今回の妊娠では軽症 PIH で経過し正期産での分娩に至っ た。外来からの管理栄養士を含めた継続的指導が奏効した一例について報告する。 【症例】 27 歳 2 妊 2 産。非妊時 BMI26.5。第 1 子 2009 年妊娠 35 週 3 日 2284g 経腟分娩。PIH 合併。第 2 子 2010 年妊娠 28 週 3 日 1340g 経腟分娩。PIH 合併。実父高血圧。 第 3 子妊娠の初診時血圧 145/87 ㎜ Hg。毎日の自宅血圧を測定しその記録を外来受 診時に持参するよう患者に指導した。自宅血圧はおおむね 110/70 ㎜ Hg 台。外来受診 時は「病院に来ると緊張する」と血圧 140/90 ㎜ Hg 台で推移した。非妊時の推定塩分 量 10∼15g。減塩をすすめ、食事内容を記録するよう指導した。妊娠 35 週 3 日に頸管 長短縮、血圧上昇のため管理入院となるまでの計 14 回の外来受診のうち 7 回、管理 栄養士による栄養指導や状況確認のための面談を行った。妊娠中の尿蛋白は( ) (連 日でない)が計 3 回であった。管理入院中の 2015 年 3 月 21 日 37 週 3 日自然陣痛発 来し 2968g の生児を経腟分娩した。妊娠中、分娩経過中の降圧剤や抗痙攣剤の使用は なかった。産褥 4 日目に血圧上昇ありアダラート CR10 ㎎ 1 日 1 錠の内服開始、産褥 5 日目に退院した。産後の尿蛋白陰性。児の経過は良好であった。入院中の妊娠期は 1600kcal、塩分 6g、産褥期は 1800kcal、塩分 6g にて食事を提供し各期 1 回ずつ管理 栄養士による面談を行った。 非妊時から分娩時までの体重増加は 3.3 ㎏であった。 【結語】 患者から「上子の妊娠中は自宅での血圧測定もしていなかった。今回のように何度 も指導されなかったので、自分も頑張って管理しようとしていなかった。」 (上子はい ずれも他院分娩)との発言があった。患者の行動変容を促すために医療者側が連携し 継続した指導を行うことが疾患の増悪を抑える一助となることが示唆された。 17 2-3. 妊娠中の子宮収縮の生理的周期について∼第 2 報∼ 大瀬良侑乃、中山聡子、中尾美香、溝道エミ子、山津満喜子、森田久美子 大串美智子、芝田久美子、前田富美子、島田市子、岩永キミ子、久保和代 小林恵美子、小川真弓、三浦佳由子、三浦紀子、三浦成陽、梶村秀雄、三浦清巒 医療法人社団 清巒会 三浦産婦人科 【緒言】 切迫早産により入院すると、妊婦とその家族は心身ともに負担を強いられる。当院 では昨年から、妊婦の「子宮収縮の程度とその時の行動」を調べ、時間における生理 的周期性があるかについて調査を実施している。その結果を踏まえ、切迫早産予防の 生活指導について考察したので報告する。 【対象と方法】 期間:平成 26 年 11 月∼平成 27 年 2 月 対象:妊娠 22 週∼37 週未満の外来通院中の妊婦 初産婦:95 名、経産婦 161 名(計 256 名) 方法:(1)子宮収縮を自覚した時の時間帯と行動、強さを 3 段階に分けて記録し てもらう。 (2)調査日は、特別なイベントがない日を妊婦の任意で設定してもらう。 【結果】 (1)妊娠 26 週以降は 9 割以上の妊婦が子宮収縮を自覚していた。 (2)子宮収縮を自覚する時間帯は、7 時頃から 22 時頃までが多く、0 時頃から 5 時頃までは少ない傾向だった。 (3)子宮収縮を自覚した時の行動では「横になった時、座った時」が一番多く、 19 時から 22 時までに特に感じていた。 (4)切迫早産で入院中の妊婦では、7 時頃と 22 時頃に子宮収縮が増強してウテメ リンを増量することが多かった。 (5)分娩開始を時間帯別にみると、正常の妊婦では日中に比べ夜間が多い傾向が 見られたが、日中では 16 時頃が最も多かった。一方、切迫早産の既往歴のあ る正常妊婦では、5 時∼7 時頃の朝の時間帯に集中していた。 【まとめ】 (1)26 週以降は子宮収縮が増えやすいため、旅行や引っ越し等の特別なイベン トは、無理のない計画を立て早目にできるよう生活指導を行う。 (2)昼間の子宮収縮は家事や仕事などの生活行動によって個人差があるため、 それぞれが自分の子宮収縮を把握してそれを踏まえた生活を心がける様、 個別の指導が必要である。 (3)切迫早産で入院中の妊婦は、7 時頃と 22 時頃に子宮収縮の有無を確認する ことが望ましいと思われる。 (4)分娩開始の時間帯は夕方から夜間にかけて多く、それに備えて心身の準備 を行うことが大切である。 18 2-4. マタニティヨガの分娩時リラックス効果の検証 松尾佳奈 1)、山口晴子 1)、宮原春美 2)、宮本正史 1)、犬塚邦彦 1)、浜崎哲史 1) 1) 花みずきレディースクリニック 2) 長崎大学医歯薬学総合研究科 【目的】 妊娠中にマタニティヨガを実践した産婦における分娩時のリラックス効果を客観 的および主観的に検討する。 【対象および方法】 リラックスの客観的指標として唾液アミラーゼを、主観的評価には RE 尺度を使用 した。単胎頭位で妊娠経過が正常の初産婦全員に、妊娠 36 週の妊婦健診時に書面お よび口頭で研究の参加を依頼した。研究の同意を得た妊婦からニプロ唾液アミラーゼ モニターにて唾液を採取し、基礎値として測定した。分娩時は分娩極期の陣痛間欠時 に唾液アミラーゼおよび RE 尺度を測定した。 【結果】 平成 26 年 5 月から 9 月までに分娩した対象を統計解析ソフト SPSSver.22 で分析 し、年齢において有意差がみられたため年齢調整を行った。唾液アミラーゼの基礎値 はヨガ参加群 52.0 57.1KU/L(n=10)、ヨガ非参加群 41.0 35.0KU/L(n=42)で有意 差はなかった。分娩極期はヨガ参加群 17.0 29.5KU/L(n=10)、ヨガ非参加群 31.0 30.6KU/L(n=42)で有意差はなかった。各群の基礎値と分娩極期の変化は、ヨガ参加 群で分娩極期に有意に低下した(p=0.047)。RE 尺度得点は、ヨガ参加群 25.0 4.8 点 (n=9)、ヨガ非参加群 18.0 7.0 点(n=21)で有意差を認めた (p=0.005)。RE 尺度得点 とマタニティヨガ教室参加および自宅練習の回数に正の相関があった (r=0.513,p=0.001)。 【考察】 唾液アミラーゼは両群で基礎値から分娩極期に低下する傾向があり、ヨガ参加群で は有意な低下がみられ、分娩時の方がリラックスしていた。妊娠 36 週は妊娠末期で 身体的にも精神的にもストレスが高まる時期であり、基礎値が高くなったことが考え られるが、マタニティヨガに取り組み、積極的に分娩準備してきたことで分娩時のリ ラックスにつながったのではないかと考える。RE 尺度得点はヨガ参加群の方が有意 に高く、RE 尺度得点とマタニティヨガ教室参加および自宅練習の回数に正の相関が みられたことから、マタニティヨガは主観的リラックスにつながっていることが示唆 された。妊娠中のマタニティヨガの実践は、産婦において分娩時に客観的および主観 的ともにリラックス効果があると検証された。 尚、この研究は平成 26 年度長崎看護学同窓会の助成を受けている。 19 2-5. 理学療法施設における「マタニティ外来」の創設 村田広志1)、下田真太郎 1)、宮本正史 2)、上窪幸子 2)、田嶋智子 2)、山口由紀 2) 山口晴子 2)、犬塚邦彦 2)、濱崎哲史 2) 1)長崎百合野病院リハビリテーション科 2)花みずきレディースクリニック 【はじめに】 当院は整形外科およびリハビリテーション科を有する総合病院であり、多くの理学 療法管理を行っているが、産婦人科は標榜していない。腰痛をはじめとした整形外科 的症状は一般患者のみならず妊産褥婦にも認められる。理学療法士が行う運動療法や 徒手療法がこれらの症状の解決につながるよう、理学療法施設において「マタニティ 外来」を創設したので報告する。 【実践内容】 「マタニティ外来」創設) 平成 26 年 5 月より妊産褥婦への理学療法を開始した。平 成 27 年 1 月からは「マタニティ外来」と名称を決め、専属の医師および理学療法士に よる治療を行っている。 理学療法の流れ) ①当院リハビリテーション科への外来紹介。②整形外科医からの 治療処方。③妊産褥婦の身体や症状に対する専門的な知識と経験を基にした理学療法 評価と治療。 地域との連携強化) 「マタニティ外来」への理解を深める目的で、他施設の看護師、 助産師あるいは地域の保健師を対象とした勉強会を定期的に行い、妊産褥婦に対する 理学療法についての現状を紹介している。 【結果】 平成 26 年 5 月から平成 27 年 4 月までに、妊婦 5 例と産褥婦 22 例に理学療法評価 と治療を行った。腰痛、股関節痛、尾骨痛、恥骨痛あるいは歩行障害などの整形外科 的症状の改善に効果を認めている。他施設との連携を図って以降、地域の助産師や近 隣の分娩施設、役場あるいは子育て支援センターからの問い合わせが増加している。 【考察】 「マタニティ外来」受診者、そして他施設からの問い合わせも徐々に増えており、症 状に悩む妊産褥婦は少なくないと思われる。しかし、看護師、助産師、保健師あるい は産科医などの理学療法に対する認知度はまだ低いと言える。今後も他職種との関わ りそして病院間での連携を深め、妊産褥婦に対する理学療法が浸透するように活動し ていきたい。 【倫理的配慮】 本調査・報告は当院の倫理委員会での承諾を得ている。 20 2-6. 理学療法の有用性について 帝王切開後の歩行障害が著しく改善した症例 下田真太郎 1)、村田広志 1)、宮本正史 2)、上窪幸子 2)、田嶋智子 2)、山口由紀 2) 山口晴子 2)、犬塚邦彦 2)、濱崎哲史 2) 1)長崎百合野病院リハビリテーション科 2)花みずきレディースクリニック 【目的】 妊娠・産褥期に腰痛や関節痛などの整形外科的症状を訴える女性は多い。しかし、 分娩施設と整形外科の連携は確立されておらず、妊産褥婦のトラブルに対する理学療 法士の介入は少ないのが現状である。今回、理学療法により帝王切開後の歩行障害が 著しく改善した症例を、動画を供覧して報告する。 【倫理的配慮・説明と同意】 本症例報告は当院の倫理委員会で承諾されており、供覧について症例の同意も得て いる。 【対象と結果】 41 歳、専業主婦、第 3 子帝王切開。家族構成:夫、第 1 子 6 歳、第 2 子 2 歳、第 3 子生後 1 ヶ月。 主訴) 帝王切開後に増悪した腰痛および動作制限(鎮痛剤投与するが効果なし)。 初診時の症状) 仰臥位:股関節が抜ける感じと脱力感がある。起居動作:股関節が可 動すると股関節が抜ける感じが増悪する。ADL(日常生活動作):左足に力が入らず歩 きにくい、炊事や洗濯などの家事を行うと腰痛、左大腿痛が出現し継続が困難となり、 その後約 3 時間の仰臥位により改善する。 理学療法評価) 疼痛検査:腰痛および左下肢痛あり、帝王切開創部の動作時痛なし。 触診:下部腹筋の筋緊張低下。active straight leg raise(ASLR)test:左下肢挙上 困難。歩行:左下肢への荷重困難により足を引きずるように歩行。 理学療法アプローチ) ストレッチと腹筋エクササイズを実施し、状態に合わせたセル フエクササイズを指導した。加えて育児動作を含めた動作指導を行った。 治療頻度と効果) 週 1 回の頻度で 4 回の介入により股関節の抜ける感じと脱力感、腰 と左大腿の痛み、ASLR および歩行が著しく改善した。 【考察】 今回の症例では、理学療法が症状の改善に極めて有効であった。現在当院では、地 域の助産師や近隣の分娩施設からの紹介を受け、妊産褥婦のトラブルに対して理学療 法士が積極的に介入を行っている。今後、地域との連携を強化するとともに、妊産褥 婦をはじめ産科医、助産師あるいは看護師などに理学療法への理解を深めていきたい。 21 2-7. 当院の分娩におけるドクターコール 内野令子、川良聖子、池田恵、前田かおり、真倉さなえ、水尾幸、東 愛 石川潤子、赤木君枝、中村真由美、山口千恵子、松尾美佐子、内山彩子 溝口奈津子、宮崎明子、奥園麻里、宮本沙綾香、瀬尾啓子、高柳初美 久玉博美、井上哲朗 井上産科婦人科医院 当院は平成元年に開業し、WHO(世界保健機構)ユニセフ(国連児童基金) から認定を受けている『赤ちゃんにやさしい病院』(BFH)である。妊婦検診 時には個別で妊娠週数に応じた産前の説明を、母乳育児支援を中心とした産後 検診を実施している。分娩でも、バースプランの提案をし、できる限り自然分 娩を行っている。分娩の方針として自然分娩・フリースタイル分娩を病院の理 念に掲げており、産婦の傍に寄り添い、安心して分娩に臨めるように心がけて いる。 分娩時(特に急変時)には助産師・看護師と医師によるチーム医療が重要であるこ とは周知の事だが、通常の経過においてもこまめに報告・連絡・相談を行うことで産 婦の情報共有と異常の早期発見および対応ができるようにしている。 当院では、入院時から分娩後まで何度もドクターコールをして院長が分娩のすべて を把握することでこれまで多くの分娩を安全に経験してきた。産婦と院長の接する機 会は他院に比べ断然多く、産婦や家族に安心感を与えるとともに助産師・看護師の注 意喚起の場となっている。 今回は当院の分娩における助産師・看護師と医師の連携を紹介するとともに、分娩 の入院時から出産後 2 時間までのドクターコール(報告・相談も含める)について報 告し、今後のドクターコールについて再考する機会としたい。 22 賛助会員 施設名 郵便番号 住所 奥田産婦人科 奥田 倫子 852-8117 長崎市平野町 11-9 三浦産婦人科 三浦 清巒 851-2104 西彼杵群時津町野田郷 25-1 佐藤医院 佐藤 公泰 859-1303 南高来群国見町神代丙 414-1 東島レディースクリニック 東島 博 857-0841 長崎県佐世保市大宮町17‐13 出口医院レディースクリニック 出口 晴彦 854-0014 長崎県諫早市東小路町 14-33 医療法人 中山レディースクリニック 中山 吉則 859-4502 長崎県松浦市志佐町里免 297 医療法人 光善会 長崎百合野病院 江崎 辰夫 851-2103 長崎県西彼杵郡時津町元村郷 1155-2 医療法人 協生会 品川病院 品川 晃一郎 811-5132 長崎県壱岐郡郷ノ浦町東触 854-2 ぎょう徳レディースクリニック 行徳 豊 851-2126 長崎県西彼杵郡長与町嬉里郷 662 島原マタニティ病院 吉田 至誠 855-0803 長崎県島原市新町2丁目 278 医療法人 安永産婦人科医院 宮下 昌子 854-0003 長崎県諫早市泉町 17-22 倉田医院内科婦人科 倉田 須和子 852-8125 長崎県長崎市小峰町 3-6 安日ウイメンズヘルスクリニック 安日 泰子 850-0841 長崎県長崎市銅座町 2-15 NK イリスビル 5F 医療法人翔南会 山崎産婦人科医院 山崎 裕允 855-0823 長崎県島原市湊町 350 医療法人 いその産婦人科 磯野 潔 859-2200 長崎県南高来郡西有家町中須川 159 産婦人科 宮村医院 宮村 庸剛 852-8114 長崎県長崎市橋口町 22-10 平井産婦人科医院 平井 雅直 857-0341 長崎県北松浦郡佐々町羽須和免 780-5 医療法人誠美会 荒木産婦人科診療所 荒木 純夫 857-0805 長崎県佐世保市光月町4‐4 医療法人佐世保晩翠会 村上病院 村上 俊雄 859-3215 長崎県佐世保市早岐1丁目 6-22 小濱産婦人科医院 小濱 正美 850-0902 長崎県長崎市丸山町 1-5 医療法人 醇仁会 西産婦人科医院 西 醇夫 854-0074 長崎県諫早市山川町 2-8 松尾産婦人科医院 松尾 剛 859-3605 長崎県東彼杵郡川棚町百津郷 452 松本産婦人科医院 松本 勝 852-8155 長崎県長崎市中園町 20-15 医療法人哺仁会 一瀬診療所 一瀬 宏 857-0871 長崎県佐世保市本島町 1-11 医療法人平成会 女の都病院 永田 陽平 851-2127 長崎県西彼杵郡長与町高田郷 849 池田産科-YOU‐婦人科医院 池田 裕一郎 852-0133 長崎県長崎市矢上町 486-6 後藤産婦人科医院 後藤 英夫 856-0813 長崎県大村市西大村本町 364 医療法人松角会 マムレディースクリニック 松角 雅夫 854-0071 長崎県諫早市永昌東町 20-23 井上産科婦人科 井上 哲朗 858-0913 長崎県佐世保市新田町 707-5 医療法人鶴泉会牟田産婦人科 牟田 郁夫 850-0852 長崎県長崎市万屋町 6-32 医療法人 藤田クリニック 藤田 晃 850-0031 長崎県長崎市桜町 7-2 医療法人仁和会 下村病院 下村 守 850-0851 長崎県長崎市古川町 8-11 23
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