X型ゼオライト合成に対するTMA添加の影響

X 型ゼオライト合成に対する TMA 添加の影響
本科 59 期 59083 岩元 美寿々
1.緒 言
フォージャサイト(FAU)型ゼオライトは、Na 形の場
合単位格子組成は、Nan(AlnSi192-nO384)・xH2O で表
され、n = 48~76 を Y 型、n = 77~96 を X 型とよぶ。
Al 含有量の少ない Y 型ゼオライトは、触媒や吸着剤
として多くの工業プロセスに用いられてきたが、X 型
ゼオライトに比べ大きな結晶を得ることは難しく、カ
チオン交換サイトや骨格内の Al の分布などの構造
に関する知見に乏しい。
通常 X 型ゼオライトでは、ソーダライトケージ内に
4 個の Na+が存在する1)が、ソーダライトケージ(内径
約 7 Å)と等しい体積をもつ TMA+(テトラメチルアンモ
ニウム)を加えることによって 1 個の TMA+と 4 個の
Na+が置き換わり、骨格の Al の含有量が減ると予想
される(図)。本研究では、X 型ゼオライト単結晶の合
成条件を元に Al 含有量を減らすことを試み、TMA+
の添加と骨格内の Al 含有量との関係、また X 型ゼ
オライトの合成に与える影響を考察した。
2.実 験
X 型ゼオライトの単結晶は、
xNaOH : yAl : 3.5SiO2 : 454H2O : zTEA : tTMABr
(x = 4.76~9.52、y =1.0~2.0、z = 2.0~8.0、t = 0.0~8.0)
の組成で Warzywoda らの方法2)に基づき 80℃にて
合成した。得られた結晶について粉末 X 線回折
(XRD)を用いて解析を行った。
表 組成比及び生成物質
No
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
x
9.52
9.52
9.52
9.52
9.52
9.52
9.52
9.52
9.52
9.52
9.52
9.52
9.52
8.33
7.14
y
z
t
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
2.0
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
8.0
8.0
4.0
8.0
8.0
6.0
5.0
8.0
8.0
4.0
4.0
6.0
6.0
4.0
4.0
0.0
1.0
1.0
2.0
3.0
3.0
4.0
6.0
8.0
0.0
2.0
3.0
5.0
2.0
2.0
生成物質
X<P
X > CHA
X > CHA
X > CHA
X<P<CHA
X < CHA
X < CHA
X < CHA
CHA
X > CHA
CHA
CHA
CHA
P < CHA
X < CHA
3.結果及び考察
結果を表に示した。
y = 2 のとき、No.1 に示すように t = 0 では X 型ゼ
オライト(X)と GIS 型ゼオライト(P)が生成されたが、
TMA+ を 加 え る と No.2~10 の よ う に チ ャ バ サ イ ト
(CHA)が生成することが確認された。t = 8 では X が
生成しなかったことから、t = 8 以上では X が生成せ
ず CHA になると考えられる。また、実際に Al 自体を
減らして合成を行ったものでは、y = 1 の条件で
TMA+を加えると X 型ゼオライトは生成されなくなっ
た。
Al-O の結合距離と Si-O の結合距離は Al-O の結
合距離のほうが長いため、Al の含有量が減ると格子
定数は小さくなる。No.1 の格子定数は a0(1) = 24.96
Å、No.2、No.3 及び No.4 はそれぞれ a0(2) = 24.76 Å、
a0(3) = 24.75 Å 及び a0(4) = 24.71 Å となり、TMA+を
加えると Al の含有量が減ることが確認された。No.10
の格子定数は a0(10) = 24.76 Å であり、y = 2 の
TMA+添加時と同程度の値であった。しかし、結晶の
大きさは No.4 が約 60 μm、No.10 が約 30~50 μm で
あるうえ、y = 1 のときの収量は y = 2 のときの約半分
になったため、y = 2 で TMA+添加時のほうが良い結
晶ができたと考えられる。
以上のことから 、X 型ゼオライト合成において
TMA+を添加すると、Al の含有量を減らすことができ
るが、TMA+添加量が多いと CHA が生成することが
わかった。また、合成条件としては x = 9.52、y = 2.0、
z = 8.0、t = 2.0 の条件で合成を行うのが最適である
と考えられる。
(a)
(b)
図 ソーダライトケージ中におけるカチオンの状態
(a) Na+
(b) TMA+
4.参考文献
1) T. Frising and P. Laflaive, Microporous and Mesoporous
Materials, 114 (2008) 27.
2) J. Warzywoda et al., J. Crystal Growth, 204 (1999) 539.
指導教官
西
宏二 准教授、 横森
慶信 教授