PDF - KAKEN - 科学研究費助成事業データベース

様式 C-19
科学研究費補助金研究成果報告書
平成21年 4月 1日現在
研究種目:若手研究(B)
研究期間:2006∼2008
課題番号: 18791394
研究課題名(和文) 口腔領域の侵襲に対する術前鎮痛剤投与効果の免疫組織化学的検討
研究課題名(英文)
The immunohistochemical study of the preoperative analgetic effect
for the invasion of the oral field
研究代表者
菊地 和泉(KIKUCHI IZUMI)
東京医科歯科大学・歯学部附属病院・医員
研究者番号:00396988
研究成果の概要:今回、正常歯髄および炎症歯髄の抜髄時における痛みの相違について、c-Fos
タンパクの発現量を指標として下記実験を行った。6 週齢 Wistar 雄性ラットを用い、上顎第一
臼歯の歯髄に LPS を貼付した群と無処置の群を作成した。その結果、LPS にて炎症を惹起し
た後に抜髄を行った群では c-Fos タンパクの発現が著しく増加している像が観察された。この
結果より、炎症が惹起されている状況での抜髄処置は c-Fos タンパク発現を誘導しやすいこと
が明らかになった。
交付額
(金額単位:円)
2006年度
2007年度
2008年度
年度
年度
総 計
直接経費
1,400,000
1,000,000
600,000
3,000,000
間接経費
合
0
0
180,000
計
1,400,000
1,000,000
780,000
180,000
3,180,000
研究分野:医歯薬学
科研費の分科・細目:歯学・保存治療系歯学
キーワード:歯内治療・歯髄炎・免疫組織染色・c-Fos タンパク
1.研究開始当初の背景
歯痛はしばしば歯痛はしばしば日常生活
を妨げる程に激しく、かつ体験する可能性が
高い痛みである。歯内治療は歯科治療の一分
野であり、歯痛からの解放と咀嚼機能の回復
をもたらすものである。しかし、症例によっ
ては、適切な処置がなされたにもかかわらず、
術後に疼痛が遷延し患者の生活の質を著し
く低下させることがある。こうした現象への
対応は現在のところ対症療法のみであり、発
現機序および対応策の解明が急務となって
いる。また、痛みは極めて主観的なものであ
り、患者のなかには非常に強く痛みを訴える
者もいれば、明確な意味もなく鎮痛剤の服用
を拒否する者もいる。こうした現象に対し、
我々は客観的な科学的根拠を示し、対処しな
ければならない。
2.研究の目的
実験的に痛みのレベルを評価することは
容易ではない。その多くは、電気生理学的手
法あるいは臨床治検であるが、前者は基礎的
な研究となり臨床に反映され難く、後者は実
験条件が限定されるうえ、患者の主観的な要
素が入り客観的な評価が難しいという欠点
がある。FOS タンパクは、感覚神経の一次ニ
ューロンが興奮すると、それを受けて二次ニ
ューロン内に(ラットでは約 2 時間後に)発
現することが知られている。このことから、
FOS タンパクを測定すれば、痛みの定量的な
評価が可能になると言える。本実験の目的は、
正常歯髄および炎症歯髄の抜髄時における
痛みの相違について、c-Fos タンパクの発現
量を指標として痛みを定量的に評価するこ
とである。
3.研究の方法
(1) 6 週齢 Wistar 雄性ラット(n=24)をエ
ーテル麻酔後、ペントバルビタールナトリウ
ム(ネンブタール)の腹腔内投与による全身
麻酔を施した。次いで、コントラアングルに
装着したラウンドバー(#1/2)にて上顎第一
臼歯を咬合面から露髄させた後、歯髄に LPS
(E Coli 055:B5, Sigma)を貼付した群と K
ファイル(25 号)を用いて抜髄のみを行った
群を作成した。
(2) LPS を貼付した群は 1 時間経過後、歯
髄組織を K ファイル(25 号)を用いて除去
した。抜髄処置を行わなかった群をコントロ
ールとした。3 つの実験群はそれぞれ n=8 と
した。
(3) それぞれ露髄処置から 2 時間経過後、
4%PFA/PBS にて環流固定を行った。
その後、
侵害受容経路の中継核である三叉神経脊髄
路核尾側亜核相当部位を観察部位として摘
出した。すなわち閂上方 2mm の部位から下
方 2mm の部位まで計 4mm の延髄を摘出し、
さらに同じ固定液で浸漬固定した(4 度、
Overnight)。
(4) PBS にて洗浄、30%Sucrose に浸漬し
た後、OCT コンパウンドにて包埋、凍結した。
凍結切片は 20μm にて作成し、抗 c-Fos 抗体
(Oncogenge)を用いて ABC 法にて免疫組
織染色を行った。
4.研究成果
LPS にて炎症を惹起した後に抜髄を行っ
た群では c-Fos タンパクの発現が著しく増加
している像が観察された。一方、健全歯髄に
抜髄処置のみを行った群においては若干の
c-Fos 発現を認め、コントロール群において
は c-Fos タンパクの発現はほとんど認められ
なかった。以上の結果より、炎症が惹起され
ている状況での抜髄処置は c-Fos タンパク発
現を誘導しやすいことが明らかになった。す
なわち、炎症歯髄の抜髄時には強い痛みが誘
発されていると考えられる。
臨床において、急性の歯髄炎が惹起してい
る状態での抜髄処置の際には、術前の鎮痛剤
服用は有効であると示唆された。
5.主な発表論文等
(研究代表者、研究分担者及び連携研究者に
は下線)
〔雑誌論文〕
(計 8 件)
① 吉岡隆知、石村瞳、菊地和泉、小林千尋、
須田英明、根尖に適合するファイルサイ
ズの決定、日本歯内療法学会雑誌、30 巻、
2009、査読有
② 石村瞳、福元康恵、吉岡隆知、高橋英和、
菊地和泉、須田英明ガンマ線照射が根管
治療に及ぼす影響一根管洗浄効果および
根管充填の封鎖性について、日本歯科保
存学雑誌、51 巻、147-155、2008、査読
有
③ 菊地和泉、和達礼子、吉岡隆知、須田英、
3 種の根管用水酸化カルシウム材の除去
性について、日本歯科薬物療法学会雑誌、
26 巻、14-18、2007、査読有
④ 吉岡隆知、花田隆周、萩谷洋子、佐々木
るみ子、菊地和泉、福元康恵、須田英明、
大林尚人、歯科用小照射野 X 線 CT およ
び歯科用実体顕微鏡による検査を併用し
た逆根管充填法における根尖病変の治癒
経過、日本歯科保存学雑誌、50 巻、17-22、
2007、査読有
⑤ 新井敦子、萩谷(川村)洋子、菊地和泉、
吉岡隆知、小林千尋、須田英明、歯科用
小照射野 X 線 CT および歯科用実体顕微
鏡による検査を併用した逆根管充填法に
おける根尖病変の治癒経過、日本歯内療
法学会雑誌、28 巻、20-23、2007、査読
有
⑥ 中野生和子, 萩谷(川村)洋子、金子実弘、
菊地和泉、吉岡隆知、須田英明歯根破折
の診断におけるメチレンブルー染色の効
果日本歯内療法学会雑誌 28 巻、16-19、
2007、査読有
⑦ Yoshitsugu Terauchi、Le O’Leary, Izumi
Kikuchi, Mami Asanagi, Takatomo
Yoshioka, Chihiro Kobayashi, Hideaki
Suda、Evaluation of the Efficiency of a
New File Removal System in
Comparison with Two Conventional
Systems.、Journal of Endodontics、33
巻、585-588、2006、査読有
⑧ Fukumoto Y 、 I.Kikuchi, Yoshioka T,
Kobayashi C, Suda H 、 An ex vivo
evaluation of a new root canal
irrigation technique with intra-canal
aspiration 、 International Endodontic
Journal、39 巻 2 号、93-99、2006、査
読有
〔学会発表〕
(計 18 件)
① 石村瞳、花田隆周、菊地和泉、吉岡隆知、
小林千尋、須田英明、18 ヶ月水中保管さ
れた根管充填歯における歯根破折につい
て、
第 129 回日本歯科保存学会春季大会、
2008/11/7、富山国際会議場
② 和達礼子、菊地和泉、須田英明、インシ
デントの経験の有無が次亜塩素酸ナトリ
ウム水溶液およびラバーダムの使用に及
ぼす影響、第 28 回日本歯科薬物療法学会、
2008/6/28、文京シビックホール
③ 吉岡隆知、石村瞳、菊地和泉、須田英明、
大林尚人、上顎骨唇頬側面から歯根尖が
突出した症例の診断と対応、第 128 回日
本歯科保存学会春季大会、2008/6/6、新
潟コンベンションセンター
④ 吉岡隆知、花田隆周、石村瞳、萩谷洋子、
菊地和泉、小林千尋、須田英明垂直性歯
根 破 折 、 第 29 回 日 本 歯 内 療 法 学 会
2008/5/25、東京歯科大学千葉校舎
⑤ 菊地和泉、吉岡隆知、須田英明、大林尚
人、フェネストレーションからの根尖突
出の出現率、第 127 回日本歯科保存学会
秋季大会、2007/11/9、岡山コンベンショ
ンセンター
⑥ 福元康恵、石村瞳、菊地和泉、吉岡隆知、
須田英明、高橋英和、高線量放射線照射
を受けたウシ象牙質における根管洗浄の
効果、第 127 回日本歯科保存学会秋季大
会、2007/11/8、岡山コンベンションセン
ター
⑦ Kikuchi Izumi, Yoshioka Takatomo,
Suda Hideaki、 Diagnosis of extruded
root ends through bone fenestration by
cone beam computerized tomography、
13th Biennial Congress of the
European Society of Endodontology、
2007/9/8、イスタンブール
⑧ 菊地和泉、吉岡隆知、和達礼子、須田英
明、木下淳博、大林尚人、倉林 亨、医
歯学シミュレーション教育システムの歯
科用 CT 操作マニュアルへの応用、第 26
回日本歯科医学教育学会総会・学術大会、
2007/7/7、長良川国際会議場
⑨ 菊地和泉、塚越 香、和達礼子、吉岡隆
知、須田英明、根管貼薬後の薬剤投与に
ついてのアンケート、第 27 回日本歯科薬
物療法学会、2007/6/22、日本大学会館
アルカディア市ヶ谷(歯学会館)
⑩ 吉岡隆知、武田美里、後藤早智、花田隆
周、石村瞳、萩谷(川村)洋子、菊地和泉、
小林千尋、須田英明垂直性歯根破折の原
因に関する基礎的検討、日本歯科保存学
会、2007/6/7、大宮ソニックシティ
⑪ 吉岡隆知、花田隆周、石村瞳、萩谷(川村)
⑫
⑬
⑭
⑮
⑯
⑰
⑱
洋子、菊地和泉、小林千尋、須田英明、
大林尚人、倉林亨、歯内療法における歯
科用 CT の有用性、第 28 回日本歯内療法
学会、2007/5/27、広島国際会議場
福元康恵、石村瞳、麻薙万美、菊地和泉、
吉岡隆知、須田英明、高橋英和、放射線
照射が根管壁象牙質の洗浄効果に与える
影響、第 124 回日本歯科保存学会秋季大
会、2006/11/10、鹿児島市民文化ホール
佐々木るみ子、菊地和泉、吉岡隆知、須
田英明、歯科用実体顕微鏡および 3DX に
よる検査を行った根周囲外科手術につい
て、
第 124 回日本歯科保存学会秋季大会、
2006/11/10、鹿児島市民文化ホール
中野生和子、萩谷(川村)洋子、金子実弘、
菊地和泉、吉岡隆知、須田英明、歯根破
折の診断におけるメチレンブルー染色の
効 果 、 第 27 回 日 本 歯 内 療 法 学 会 、
2006/7/29、徳島大学蔵本キャンパス
新井敦子、萩谷(川村)洋子、菊地和泉、
吉岡隆知、小林千尋、須田英明、歯根破
折と根尖性歯周炎の X 線透過像による鑑
別診断、第 27 回日本歯内療法学会、
2006/7/29、徳島大学蔵本キャンパス
菊地和泉、和達礼子、吉岡隆知、須田英
明、根管充填材料カルフィー・ペースト
およびカルシペックス II の除去について、
第 25 回 日 本 歯 科 薬 物 療 法 学 会 、
2006/6/24、高松市文化芸術ホール
菊地和泉、吉岡隆知、和達礼子、須田英
明、荒木孝二、俣木志朗、医歯学シミュ
レーション教育システム教材の歯科医師
による評価、第 25 回日本歯科医学教育学
会総会・学術大会、2006/6/16、ネ!ット U
仙台市情報・産業プラザ
吉岡隆知、花田隆周、川村洋子、佐々木
るみ子、菊地和泉、福元康恵、須田英明、
大林尚人、根尖切除法における歯科用小
照射野 X 線 CT および歯科用実体顕微鏡
による検査、第 124 回日本歯科保存学会
春季大会、2006/5/25、神奈川県民ホール
〔図書〕
(計 0 件)
〔産業財産権〕
○出願状況(計 0 件)
名称:
発明者:
権利者:
種類:
番号:
出願年月日:
国内外の別:
○取得状況(計 0 件)
名称:
発明者:
権利者:
種類:
番号:
取得年月日:
国内外の別:
〔その他〕
ホームページ等
6.研究組織
(1)研究代表者
菊地和泉(KIKUCHI IZUMI)
東京医科歯科大学・歯学部附属病院・医員
研究者番号:00396988
(2)研究分担者
(
)
研究者番号:
(3)連携研究者
(
研究者番号:
)