NCテキストのダウンロード(pdf)

2年電子機械科実習テキスト
マシニングセンターを使った切削加工とNCプログラミング
1.目的
・マシニングセンターを用いてNC工作機械加工の原理を理解する。
・実際に切削加工を行うことにより、NCプログラミングを体得する。
2.基礎知識
(1)マシニングセンター(以下MC)とは
自動工具交換能力があり、工具を回転させて加工する多機能切削加工NC工作
機械のこと。
(2)NC工作機械とは
目的とする加工工程を数値と符号で指令し、自動制御装置とコンピュータを併
用して自動加工できるようにした工作機械のこと。
(3)NCとは
Numerical Controlの略で、数値制御という意味。
工作物の位置や運動を数値化し、機械に命令することをいう。
(4)NC工作機械の特徴
①複雑で加工が困難な加工が容易にできる。
②同じ物を多量生産することができる。
③非常に高精度な仕上がりができる。(0.001mm単位)
④自動生産加工システムが構築できる。
3.MCの座標系
(1)座標の表現方法
MCでは座標をXYZの3軸で表現する。
X軸・・・テーブルの左右方向の移動軸、向かって右方向が+
Y軸・・・テーブルの前後方向の移動軸、向かって奥方向が+
Z軸・・・ヘッドの上下方向の移動軸、上方方向が+
座標値の最小指定単位は1/1000mmのため、数値入力のときに小数点を
付け忘れると1/1000mm単位の指令となるので注意する。
例)X20.0
→
X軸+方向に20mm
X20
→
X軸+方向に0.02mm
Y-2.5
→
Y軸-方向に2.5mm
(2)アブソリュート指令とインクリメンタル指令
アブソリュート指令(ABS)とは、原点を指定し、その原点からの距離で次
の座標を指定する方式。本実習のプログラムはABSを使用する。
特徴は、座標値のミスが後に影響しないため、チェックおよび修正が容易。
インクリメンタル指令(INS)とは、原点を指定せず、現在位置からの距離
で次の座標を指定する方式。
特徴は同一作業を別の箇所で繰り返して行う場合の繰り返し位置データとして
利用可能。
4.NCプログラムの構成
NCプログラムは、アドレス(英文字)と数値で構成される。アドレスの種類を以
下に示す。
(1)G92・・・座標原点指定
プログラムの実行時に使用する座標原点を指定する。座標原点から現在位置
までの距離を指示する。プログラムの最初、XYZ軸が機械原点にあるとき
指定する。プログラムの終了前、XYZ軸が機械原点にあるときに再指定し
リセットする。
例)G92 X50.0 Y40.0 Z60.0・・・プログラム最初
G92 X0
Y0
Z0
・・・プログラム終了
(2)G90・・・アブソリュート指令
G91・・・インクリメンタル指令
座標系として、どちらの指令を使うかを指定する命令。プログラムの最初に
いずれかを必ず指示する必要がある。
(3)G00・・・位置決め(早送り)指令
現在位置より指定された座標へ早送りで移動する命令。移動途中で刃先が材
料等に接触すると刃や材料が破壊されるので注意。
例)G00 X-10.0 Y20.0
(4)G01・・・直線補間(切削送り)指令
現在位置より指定された座標へ、指定された速度で移動する命令。移動速度
はF命令(後述)で指定しておく。刃が回転していないときに移動すると、
刃や材料が破壊されるので注意。
例)G01 X-10.0 Y20.0
(5)G02・・・円弧補間(右回り)指令
G03・・・円弧補間(左回り)指令
現在位置より指定された円弧終点座標へ指定された半径、または指定された
点を中心とする円弧に沿って指定された速度で移動する命令
移動速度はF命令(後述)で指定しておく。180度以上の円弧を指定する
場合は、半径の値に「-」符号を付ける。360度の円を指定する場合は、
円弧終点座標を現在位置として現在位置から円の中心座標までの距離をI
(X方向)
、J(Y方向)
、K(Z方向)パラメータを使って指定する。
例)
G02 X50.0 Y50.0 R100.0(<180°)
G03 X-30.0 Y60.0 Z-80.0(≧180°)
G02 X70.0 Y90.0 I20.0 J30.0(=360°)
(6)G28・・・自動原点復帰
機械原点へ復帰する。プログラム終了前に指定する。原点復帰時に刃先が材
料に当たらないように安全な位置に待避してから実行。
例)G28 Z0 ・・・Z軸を機械原点に移動。
(7)O・・・プログラム番号指令
プログラムの先頭に指令し、プログラムに番号を付けて区別する。個人のプ
ログラム番号は、O1**(**は出席番号)とする。
例)O123・・・23番の人のプログラム番号
(8)F・・・送り速度
切削送り時の送り速度を指定する。単位はmm/min。一度指定したら次
に指定するまで有効。
例)F300・・・送り速度300mm/min
(9)S・・・主軸回転数
主軸回転数を指定する。単位はrpm。一度指定したら次に指定するまで有
効。
例)S500・・・主軸回転数500rpm
(10)M03・・・主軸正転
主軸を回転させる。
(11)M05・・・主軸停止
主軸の回転を止める。
5.例題と練習問題
例題1 図1のA→B→C→D→E→Aの動きを考えよ。
◆アブソリュート (G90)→座標を基準点からの距離で指示する方法
◆インクリメンタル(G91)→座標を現在位置からの距離で指示する方法
◆位置決め
(G00)→現在位置より指示された座標へ早送りで移動する
命令
y
C
50
B
A
-50
O
x
50
D
E
-50
(12)T・・・工具指定
次に取り付ける工具番号を指定する。工具を収納する場合はT00を指定す
る。
図1
(13)M06・・・工具交換
T命令で指定された工具に交換する。実行時にはZ軸が機械原点にあること。
例)T02 M06・・・2番の工具に交換する。
(14)M30・・・プログラム終了
プログラムの終了。プログラムの最後に指定する。
解)
アブソリュート
A→B G90 G00 X40.0
Y40.0
B→C
X-50.0 Y50.0
C→D
X-40.0 Y-30.0
D→E
X-40.0 Y-40.0
E→A
X0
Y0
インクリメンタル
A→B G91 G00
B→C
C→D
D→E
E→A
X40.0
X-90.0
X10.0
X80.0
X-40.0
Y40.0
Y10.0
Y-80.0
Y-10.0
Y40.0
例題2 図2のA→B→C→D→E→Aの動きを考えよ。
◆切削送り(G01)→現在位置より指示された座標へ指示された速度で移動する
命令
例題3 図3のA→B→C→D→E→F→G→Aの動きを考えよ。
y
B
C
50
A
-50
O
x
50
D
-50
E
図3
図2
解)
アブソリュート
解)
アブソリュート
A→B G90 G01 X60.0
Y70.0
B→C
X-60.0 Y70.0
C→D
X-60.0 Y-40.0
D→E
X60.0
Y-70.0
E→A
X0
Y0
インクリメンタル
A→B G91 G01
B→C
C→D
D→E
E→A
X60.0
X-120.0
X0
X120.0
X-60.0
Y70.0
Y0
Y-110.0
Y-30.0
Y70.0
A→B G90 G00 X50.0
Y20.0
B→C
G01 X120.0 Y20.0
C→D
X140.0 Y70.0
D→E
G00 X120.0 Y100.0
E→F
G01 X60.0
F→G
X20.0
G→A
G00 X0
F200
Y120.0 F300
Y50.0
Y0
練習問題1 図4のA→B→C→D→E→F→G→H→I→Aの動きを考えよ。
例題4 図5のA→B、C→Dの動きを考えよ。
◆円弧補間(1)
G02→右回りで現在位置より指定された円弧終点座標へ、指定された半径又は点
を中心とする円弧に沿って指定された速度で移動する命令。
G03→左回りで現在位置より指定された円弧終点座標へ、指定された半径又は点
を中心とする円弧に沿って指定された速度で移動する命令。
y
C
50
B
-50
O
A 50 D
x
-50
図4
解)
アブソリュート
図5
A→B
B→C
解)
アブソリュート
A→B G90 G03 X0
Y50.0
R50.0
Y0
R60.0
C→D
C→D G90 G02 X60.0
D→E
E→F
インクリメンタル
A→B G91 G03 X-50.0 Y50.0
F→G
C→D G91 G02 X60.0
G→H
H→I
I→A
R50.0
Y-60.0 R60.0
例題5 図6のA→Bの動きを考えよ。
◆円弧補間(2) 180°以上の円弧を指定する場合の指示方法。円弧半径指定
(R)に「-」の符号を付ける。
例題7 図8のA→B→C→D→E→F→Bの動きを考えよ。
図6
解)
アブソリュート
①A→A G90 G02 X20.0 Y0
②A→A G90 G02 X20.0 Y0
R35.0
図8
R-35.0
例題6 図7の1周円弧A→Aの動きを考えよ。
◆円弧補間(3) 360°の円を指定する場合、円弧終点座標を現在位置とし、
現在位置から円の中心座標までの距離をI(X方向)、J(Y
方向)
、K(Z方向)で指定する。R指定はしない。
図7
解)
アブソリュート
A→A G90 G02 X0 Y50.0 I0 J-50.0
解)
アブソリュート
A→B G90
B→C
C→D
D→E
E→F
F→B
G01
G02
G03
G02
G03
G03
X0
X-60.0
X0
X60.0
X30.0
X0
Y-60.0
Y0
Y60.0
Y0
Y-30.0
Y-60.0
R60.0
R60.0
R60.0
R30.0
R-30.0
インクリメンタル
A→B G91 G01
B→C
G02
C→D
G03
D→E
G02
E→F
G03
F→B
G03
X-30.0
X-60.0
X60.0
X60.0
X-30.0
X-30.0
Y0
Y60.0
Y60.0
Y-60.0
Y-30.0
Y-30.0
R60.0
R60.0
R60.0
R30.0
R-30.0
練習問題2 図9のA→B→C→C→D→Aの動きを考えよ。
練習問題3 図10のZ方向のF→G→H→Fの動きを考えよ。
図9
解)
アブソリュート
A→B
図10
B→C
C→C
解)
アブソリュート
C→D
F→G
D→A
G→H
H→F
インクリメンタル
F→G
G→H
H→F
練習問題4 次のプログラムの工具軌跡をグラフ上に表示せよ。
練習問題5 次のプログラムの工具軌跡をグラフ上に表示せよ。
G92
X0
G90 G00 X-25.0
G01 X-15.0
X-10.0
X15.0
X5.0
X25.0
G00 X-10.0
G01 X-25.0
G91 G00 X25.0
Y25.0
G01 X-35.0 Y5.0
X-5.0
Y-25.0
Y-20.0
X15.0
Y10.0
X20.0
Y-20.0
Y25.0
X5.0
Y20.0
G00 X-25.0 Y-20.0
G00 X0
Y0
Y30.0
Y35.0
Y30.0
Y10.0
Y-15.0
Y-15.0
Y10.0
Y30.0
Y0
F200
F100
F200
練習問題6 次のプログラムの工具軌跡をグラフ上に表示せよ。
練習問題7 次のプログラムの工具軌跡をグラフ上に表示せよ。
G91 G00
G02
G01
G03
G02
G01
G03
G00
G92
G90 G00
G02
G01
G91 G02
X5.0
X15.0
Y20.0
Y-15.0
Y-30.0
X-30.0
Y20.0
X15.0
X10.0
Y10.0
X-15.0 Y-5.0
R-15.0
R15.0
R10.0
R10.0
F300
X0
X15.0
X25.0
Y0
Y25.0
Y15.0
Y-15.0
X-15.0 Y-15.0
X-5.0
Y5.0
G03 X-30.0
G01 X-5.0
G90
X-20.0 Y15.0
X15.0
G00 X0
Y0
R10.0 F100
R15.0
R5.0
R15.0
6.NCプログラムの構成
NCプログラムは次の3つから構成されている。
(a)出だし
(b)切削命令
(c)終わり
(a)と(c)の命令文は原則同じものであり、各自で作成するプログラムは
(b)切削命令だけとなる。
以下2つの構成について詳細を示す。
(a)出だし
%
O2040
G90
G92 X257.0 Y141.0 Z365.3
T03 M06
G00 X0 Y0 Z0
S2000 F200 M03
プログラムの最初に必ず入力する
プログラム番号 O(オー)+入学年度+出席番号
アブソリュート座標を宣言
プログラム座標原点指定(T03 の場合)
工具(T03=φ4)指定 工具交換
プログラム座標原点へ早送り
回転数・送り速度指定・刃物正転開始
(c)終わり
G01 Z0
M05
G28 X0 Y0 Z0
G92 X0 Y0 Z0
T00 M06
M30
%
刃物退避
主軸停止
自動原点復帰
プログラム座標原点キャンセル
工具外し(空ホルダーと工具交換)
プログラム終了
プログラムの最後に必ず入力する