H26-3 都市機能向上のための都市施設のリニューアルに関する調査

都市機能向上のための
都市施設のリニューアルに関する調査
報
告
書
平成27年3月
公益財団法人
ちゅうごく産業創造センター
巻
頭
言
戦後、1960 年代の約 10 年間を頂点として、わが国において農山漁村から都市への人
口の大移動がみられた。
1960 年 12 月に池田内閣の国民所得倍増計画を始まりとし、1964
年開催の東京オリンピックをはさんで 1970 年の大阪で開催された万国博覧会に至る時
期である。この時期の急速な都市化によって、都市人口は当時の全人口の 4 分の 1 から
4 分の 3 に増大したといわれる。これに伴って、大都市圏のみならず、地方圏の中心的
な都市においても、企業の立地や操業を支える基盤施設、そしてそこで働く人々と家族
のための宅地開発と生活関連施設の建設が急速に進められた。多くの施設が一斉に建設
された。
それから 40 年以上の月日が経つ。公共や民間を問わず老朽化し、機能的にも陳腐化
している。これらの施設を放置すると様々な問題の発生が危惧される。まず、施設利用
の安全性が指摘できる。安全・安心の視点である。さらには通常、古く建てられた施設
は良好な立地場所にあり、その土地の有効活用の問題とされる。これらの理由から各地
において、これまで重要な都市機能を担ってきた主要施設のリニューアルが進められて
いる。
リニューアル事業が独自に進められる場合、個々の事業者が個々の所有地の中で個別
に事業展開が行われることが多い。このような状況をみると、広域的視野に立った面的
な一体性、公共事業や公共施設との関連性、長期間を要する事業展開、これらについて
改善する余地はないのであろうか、このような問題意識をもとに本調査を進めさせてい
ただいた。
本調査のねらいは、都市において重要な役割を果たす老朽化・陳腐化した施設のリニ
ューアル事業を調べ、各事業の計画や推進のためにどのような工夫が取り入れられてい
るかを整理し、中国地域の各都市の施設リニューアルにとって参考となる事項を提示す
ることにある。調査は全国の各都市を対象とし、まず、文献調査(都市再開発事業)に
よって全国においてのリニューアル事業の全体傾向を把握し、その結果を踏まえて何ら
かの顕著な取り組みがみられる 17 事業を選定し、ヒアリング調査または視察調査を実
施している。
本報告書は本編に加えて、別冊 リニューアル対応事例集として、とりまとめている。
特に、別冊 リニューアル対応事例集は調査結果の詳細を事業ごとに記録したものであ
り、本編と併せて、今後のリニューアル事業の展開のために役立てていただければと思
う。
最後に、本調査報告書は、民間・行政・シンクタンクほか多方面から参加いただいた
委員会・小委員会においての作業と検討の成果であり、委員長として各位にお礼申しあ
げたい。また、事務局である(公財)ちゅうごく産業創造センターと調査機関である中
電技術コンサルタント(株)の精力的な調査活動がなければ、このような含蓄ある調査
結果は生まれえなかったものと思う。重ねてお礼申しあげる。
平成 27 年 3 月
「都市機能向上のための都市施設のリニューアルに関する調査」委員会
委員長 戸田 常一
「都市機能向上のための都市施設のリニューアルに関する調査」
委
員
会
名
簿
(委員:所属名の50音順、敬称略)
区
分
氏
名
所
属 ・ 役
職
委 員 長
戸田
常一
広島大学
大学院
社会科学研究科
教授
副委員長
氏原
岳人
岡山大学
大学院
環境生命科学研究科
助教
委
員
水田 邦成
アンデルセン・パン生活文化研究所
専務取締役
委
員
森
株式会社奥村組 広島支店 営業部
課長
委
員
井上 昇
倉敷市
委
員
井上
株式会社山陰合同銀行
委
員
谷口 精寛
清水建設株式会社
委
員
難波 貢司
中国経済産業局 総務企画部
委
員
菅田 裕喜
中国経済連合会 部長
委
員
大池 勝則
中国地方整備局 建政部
委
員
柴田 浩喜
(公社)中国地方総合研究センター
委
員
熊谷
中電工業株式会社
取締役社長
委
員
奥川 泰光
日本通運株式会社
広島支店
委
員
上田
株式会社日立製作所中国支社
委
員
石井 和夫
広島県
委
員
中谷
広島市企画総務局
企画調整部
委
員
佐野 卓司
松江土建株式会社
社長付管理部長
委
員
野村 知央
株式会社山口銀行
地域振興部
宮﨑
昌二
広島県
事務局
佐原
一弘
(公財)ちゅうごく産業創造センター
〃
楫野
肇
〃
常務理事
〃
奥本
芳治
〃
常務理事
〃
木村
宜克
〃
調査部長
〃
宮﨑
哲彦
〃
調査部
部長
〃
石岡
孝治郎
〃
調査部
部長
〃
石橋
正浩
〃
調査部
部長
シンクタンク
上田
昭彦
中電技術コンサルタント株式会社
〃
山崎
俊和
〃
道路部
〃
山名
良明
〃
地域マネジメント部
〃
織田
恭平
〃
地域マネジメント部
オブザーバー
永吾
光悦
千代志
敬太郎
満美子
企画財政局
企画財政部
副参事兼財産活用課長
地域振興部地域振興グループ
広島支店営業部
副調査役
部長
参事官 (企画担当)
都市調整官
情報開発部長
総務次長
企画部
主任
土木局 都市計画課長
土木局
分権・行政改革推進課
主幹
主任
住宅課長
(事務局)
専務理事
(調査機関)
地域マネジメント部長
課長
部長
要約版
都市機能向上のための都市施設のリニューアルに関する調査〔要約〕
調査の目的と報告書の構成
報告書p1 参
照
都市機能を担う公共施設は、老朽化等の状況に合わせて、各施設の管理主体の方針に従った
公共施設マネジメントの取り組みが検討されつつあるが、その多くは必要最小限で都市機能と
質の水準を維持しようとするもので、低廉で効果的な施設更新が求められている状況にある。
また、業務や商業等の都市機能を担う民間施設も、耐震性、老朽化等の状況に合わせた施設更
新が実施されているものの、更新時の社会的な経済状況や、施設の所有者である民間企業の経
営状況等を踏まえながら、更新規模や内容が決定されている状況にあると考えられる。
このため、公共施設、民間施設のそれぞれのリニューアルが整合し、時流に沿った面的な広
がりのある都市機能と質の形成に、至っていない状況も見受けられている。
このような状況を踏まえ、本調査においては、全国における都市機能を形成する主要施設(以
下、「都市施設」という。)の実態を踏まえつつ、都市機能と質の更なる改善を狙いとし、そ
れぞれの都市が持つ課題に対して、効率的・効果的な都市施設のリニューアル対応を行った事
例をまとめることを目的とするものである。
さらに、その中で明らかとなった課題や工夫から、今後の中国地域の都市の参考となるよう、
全国事例を活用した中国地域の主要都市におけるケーススタディを実施し、都市機能を形成す
る主要施設のあり方の方向性を検討するものである。
報告書の構成と調査フロ―
1.都市施設のリニューアルの現状【文献調査】
本調査で対象とする「都市施設」及び「リニューアル」について設定し、リニューアル
の対応について、全国の実施事例、制度について、文献資料から整理した。
1.1.調査対象の設定
1.2.実施事例にみるリニューアル対応の特徴と方向性
1.3.リニューアル事業の制度面での促進事例
2.事例を基にしたリニューアル対応の工夫【ヒアリング調査・視察調査】
リニューアル対応について、全国実施事例からリニューアル時の苦労、工夫などの実態
を詳細調査し、整理した。
(調査結果の詳細は 別冊 に掲載。
)
2.1.事例調査箇所の選定
2.2.ヒアリング調査
2.3.視察調査
3.リニューアル対応事例の活用
事例調査結果から、リニューアル対応時の苦労、工夫の特徴を整理し、中国地域の都市
に対する事例の適用の方向性について整理した。
3.1.ヒアリング調査、視察調査にみるリニューアル事例
3.2.ヒアリング調査、視察調査にみる事業手法の工夫
3.3.
「政策・課題対応リスト」の活用手順
3.4.ケーススタディの実施
3.5.まとめ
- i -
1.都市施設のリニューアルの現状
報告書p3 参
図表① 本調査におけるリニューアルの捉え方
(1)調査対象の設定
【都市機能】
・政治・行政
・文化・交流
・商業
等
施
設
利
用
者
(
ニ
ー
ズ
)
機
能
と
質
の
向
上
工夫
高
リ
ニ
ュ
ー
ア
ル
時
)
フ
ィ
ー
ド
バ
ッ
ク
サ
ー
ビ
ス
提
供
都
市
機
当初
能
と
質
の
水
準 当
初
サ 建
ー 設
ビ 時
ス
(
本調査のキーワード
となる「都市施設」、
「都
市機能」及び「リニュー
アル」の対象範囲を次の
とおり設定した。
①都市施設
公共施設及び民間施設
に係るハコモノ(建築物)
②都市機能
政治・行政機能、文化・
交流機能、商業機能、観
光機能、教育機能、医療・
福祉機能、交通、物流機
能といった拠点性・広域
性を持つ集客機能(不特
定多数の人が集まる機
能)、並びに、防災拠点
や歴史的価値観を含む景
観形成に係る機能等
③リニューアル
物理的陳腐化、社会的
陳腐化、経済的陳腐化に
対応したリニューアル
照
事
業
主
体
・
施
設
運
営
者
機
能
と
質
の
回
復
【リニューアルの理由】
・物理的陳腐化
・社会的陳腐化
・経済的陳腐化 等
リニューアルの実施
【都市施設】
主に「集客機能」を有する施設
公共施設
(ハコモノ)
民間施設
(建築物)
リニューアルの工夫
【事業戦略の工夫】
【事業推進の工夫】
・施設機能の複合化
・
快適性向上
・広域の視点による機
能確保
・面的な拠点整備 等
・事業推進の円滑化
・組織の整備
・民間活力の活用 等
【リスク対応の工夫】
・事業費
・事業期間 等
(2)実施事例に見るリニューアル対応の特徴と方向性
近年の市街地再開発事業を基に、都市施設のリニューアルの方向性を整理した。
抽出事例の事業主体別の特徴からの考察
 公共が主体となっている事業では補助率が高く、事業費確保と
いった面でリスク対応が実施されている。
 民間施工では公共施工に比べると、工期・事業費の面でのリス
ク対応と事業推進の視点で、低廉で迅速な対応がされている。
 公共・民間のいずれにおいても、事業の前後で延床面積は増加
し、都市機能を集約したまちづくりなど、事業戦略として都市
部の 土地の有効利用、土地利用の高度化を図っていくこと
も、今後のリニューアルの重要な視点となっている。
抽出事例から読み取れる都市施設のリニューアルの特徴





駅前地区を中心とした住商混在型の施設整備が多い。
商業活動の活性化、公共施設の課題対応を事業計画の契機としている。
多岐にわたる事業目的を融合した施設整備が実施されている。
複合的な利用形態に対応した施設整備が実施されている。
施設整備と公共空間改善による面的機能の効果を目指している。
- ii -
都市施設の
リニューアルの方向性
 土地利用の高度化
 低容積型の施設整
備
 施設機能の複合化
と官民の連携
 周辺環境を改善す
る公共事業との連
携
 事業推進に向けた
制度の活用
(3)リニューアル事業の制度面での促進事例
大都市で実施されているリニューアル事業を促進するための制度面での工夫について整理した。
集約型都市(コンパクトシティ)形成に
向けた都市施設の誘導
 都市再生特別措置法の改正に伴い、立地適
正化計画に基づいた事業への資金支援及
び容積率等の緩和
 地域公共交通活性化再生法の改正に伴い、
地域公共交通網形成計画に基づいた事業
の許認可審査基準の緩和等
都市機能の誘導に向けた制度
 街並み誘導型地区計画等を活用し、地区特
性に応じた機能誘導に対する容積率等の
緩和
 隔地駐車場として集約駐車場を活用する
など、地区のルールに基づいた附置義務駐
車場の規制緩和
2.事例を基にしたリニューアル対応の工夫
報告書p40 参
照
(1)事例調査
文献調査による全国事例を基に 12 事例について事務局によるヒアリング調査を実施し
た。また、特徴的な全国事例から検討委員会の意見を踏まえ 5 事例について視察調査を実施
した。
なお、これら事例調査の詳細は別冊『リニューアル対応事例集』に取りまとめた。
(2)ヒアリング調査:12 事例 〔詳細は 別冊-2 ヒアリング調査 参照〕
都市名
事業名
事業概要
東京都千代田区 大手町連鎖型都市再生プロジェクト 合同庁舎跡地を活用して老朽化建築物を順次移転したプロジェクト
東京都中央区 銀座地区まちづくり計画
銀座地区のまちづくりに沿って各種規制緩和を行った地区計画
さいたま市 浦和駅東口駅前地区 第二種市街地再開発事業 駅前の建物密集地区を改善してにぎわい創出を目指した複合施設
名古屋市 有松駅前 第一種市街地再開発事業
歴史的街並み地区周辺の駅前拠点創出を目指した複合施設
岡山市
都市基盤整備が遅れた地区の高度利用と都市機能更新を図った複合施設
駅元町地区 第二種市街地再開発事業
北九州市 室町一丁目地区 第一種市街地再開発事業
区役所跡地を活用して公共事業と連携して整備された複合施設
高槻市
JR高槻駅北地区 第一種市街地再開発事業
駅前地区の高度利用と子育てを支援する複合施設
高松市
丸亀商店街 A~G 街区 第一種市街地再開発事業 定期借地権を活用した土地の所有権と利用権の分離による商店街の再開発
沼津市
大手町地区 第一種市街地再開発事業
駅前地区の高度利用と都市機能更新を目指した複合施設
大崎市
台町地区 第一種市街地再開発事業
大型商業施設跡地を活用して拠点創出を目指した複合施設
小松島市 井利ノ口 地区 第一種市街地再開発事業
工場跡地を活用して医療施設の機能向上を目指した病院施設
鹿屋市
移転しにぎわい創出を目指した複合施設
北田大手町地区 第一種市街地再開発事業
(3)視察調査:5 事例 〔詳細は
都市名
別冊-3 視察調査 参照〕
事業名
事業概要
京都市
京都御池中学校
時流に沿って地域要望に応えた複合施設
金沢市
金沢市民芸術村
歴史的建造物を機能転換し保存・再生した施設
金沢市
近江町いちば館
地区の歴史を継承する複合施設
富山市
グランドプラザ
機能転換で地区のにぎわいを創出する広場施設
長岡市
アオーレ長岡
地域の交流の場として再生した複合施設
ヒアリング調査(12 事例)及び視察調査(5 事例)の各々の事例に係る「工夫、苦労した
点」、「リニューアルの効果」及び「リニューアル実施後の懸案事項」について整理した。
〔詳細は 報告書本編 44~77 ページ 参照〕
- iii -
3.リニューアル対応事例の活用
報告書p78 参
照
(1)ヒアリング調査、視察調査に見るリニューアル事例
調査した 17 事例においては、各事業の目的を達成するためにさまざまな工夫を行ってい
る。その目的と工夫の関係性を次のような構成で“政策・課題対応リスト”として整理した。
〔「政策・課題対応リスト」は、報告書本編 図表 3.2 及び 別冊-1 参照〕
① 横軸
「政策・課題対応リスト」の横軸には、調査した 17 事例の名称・都市名・事業主体を示
すとともに、地方自治法に基づく地方公共団体の区分の「特別区」「指定都市」「中核市」
「特例市」「その他」、並びに、人口及び年齢構成の指標としての高齢化率も示した。
また、調査した事例の事業目的は、次の 9 項目に区分して示した。
1) 公共施設の整備 (公)
2) 商業の活性化
(商)
3) 業務機能の集積 (業)
4) 居住環境の改善 (居)
5) 住宅の供給
(住)
6)防災機能の強化
(防)
7) 都市機能の向上 (都)
8)拠点機能の強化
(拠)
9)医療機能の整備
(医)
注記:カッコ付き文字は、「政策・課題対応リスト」の略称を示す。
② 縦軸
「政策・課題対応リスト」の縦軸には、事業手法の工夫を示した。
事業手法の工夫は、施設建設の計画→実行(建設)→管理・運営のフローに対応するよう、
“1.事業戦略の視点”、“2.事業推進の視点”、“3.リスク対応の視点”の 3 つの視点を大
分類とし、目的、体制、事業規模により、中分類の項目に区分した。さらに、詳細な事業手
法の工夫を小分類の項目に区分した結果、小分類の工夫の数は 34 項目となった。
大分類
1. 事 業 戦 略 の
視点
中分類
小分類(主な内容:全 34 項目)
(1)機能向上・転換、 多様な年齢層の利用が図れるよう、“施設機能の複合化
高度利用
(2)拠点性の向上
の工夫”等
来街者の利便性の向上を図る道路・鉄道施設との一体整
備など“面的な拠点整備の工夫”等
(3)既存ストックの
活用
2. 事 業 推 進 の
(1)手法の工夫
視点
河川、公園等の地域資源を活用することで機能を高める
“地域資源の活用の工夫”等
未利用地を「種地」として事業の継続を図りながら進め
る連鎖型都市開発など、土地活用の工夫等
(2)体制の確立
首長のリーダーシップ、官民連携など、事業推進のため
の体制の確立
3. リ ス ク 対 応
の視点
(3)制度の活用
特定建築者制度、PFI等の民間活力の活用
(1)事業費の側面の
身の丈に合った低容積型施設の整備など、事業費の適正
工夫
(2)事業期間の側面
からの工夫
化のための工夫
都市の抱える課題の共有など、“合意形成の円滑化の工
夫”
- iv -
(2)ヒアリング調査、視察調査に見る事業手法の工夫
事例調査(17 事例)について、前ページに示した「政策・課題対応リスト」の縦軸の大
分類ごとに、事業化に際し適用した事業推進の工夫の詳細を整理した。
① 事業戦略性の視点からの工夫-将来的な都市の姿をとらえ、機能の陳腐化を見据えて、
リニューアル事業の戦略を計画・立案する。
中分類
機能向上・転換、
高度利用
小分類(具体的な工夫の内容)
a.施設機能の複合化の工夫
商業施設を基本としつつ、生活に関連する行政関連施設、文化・交流施設、
教育施設、医療・福祉施設などを併設する複合施設の整備により、多様な年
齢層の集客を図っている。
① 商業機能の導入:さいたま市、京都市、金沢市ほか多くの都市
② 庁舎機能の導入:長岡市(図表②)
③ 文化・交流機能の導入:北九州市(写真①)、岡山市、鹿屋市ほか
④ 教育施設の導入:北九州市ほか
⑤ 医療・福祉施設、子育て支援機能の導入:名古屋市、金沢市(写真②)、小松
島市ほか
⑥ 住宅機能の導入:高槻市、沼津市、名古屋市ほか
⑦ 業務機能の導入:東京都、さいたま市、岡山市、名古屋市ほか
b.アクセスの快適性向上の工夫
駅前広場等の交通基盤の整備、からの施設への通行路の改善などにより、
施設へのアクセターミナルスの向上を図っている。
① 交通ターミナル機能の快適性向上(交通広場、バス停):さいたま市ほか
② 歩行空間の快適性向上(ペデストリアンデッキ):名古屋市、高槻市、岡山市
(写真③)
図表② 長岡市の行政舎機能の配置
商業
北九州芸術劇
商業施設
- v -
中分類
拠点性の向上
小分類(具体的な工夫の内容)
c.広域の視点による機能確保の工夫
地域内の集客施設との一体的なリニューアルにより相乗効果を高め、広域
的な利用者を意識してにぎわいを創出している。また、交通手段の利便性を
高め、周辺地域からの集客を図っている。
① 広域利用者を意識した施設機能の導入:東京都千代田区大手町、北九州市
② 施設への広域アクセス手段の確保:富山市
d.面的な拠点整備の工夫
道路・鉄道施設、周辺の河川・公園等整備と合わせた面的整備により、来
街者の利便性の向上や周辺環境の向上を図っている。
① 道路関連施設との一体整備:東京都千代田区大手町、名古屋市、北九州市等
② 鉄道関連施設との一体整備:沼津市、岡山市、さいたま市
③ 河川関連施設との一体整備:北九州市、鹿屋市
④ 公園関連施設との一体整備:北九州市、東京都千代田区大手町
既存ストックの
活用
e.地域資源の活用の工夫
地域に存在する自然環境や歴史建築物や、イベント・祭りなどの人々が集う
文化もある。これら地域のハード・ソフトを集客の資源として活用している。
また、未利用地や利用されなくなった歴史的建造物等を積極的に活用している。
① 地域主体による地域資源の活用
(イベント開催等の場づくり):富山
市、長岡市
商業施設
② 河川・公園・歴史的建造物等の活
用:北九州市、鹿屋市(写真④)、
金沢市民芸術村
③ 未利用地の活用:東京都千代田区
整備された肝属川
大手町、北九州市、金沢市
② 事業推進の視点からの工夫 - 地権者・住民の合意を得て、効率的かつ効果的に事業を推進する。
中分類
手法の工夫
小分類(具体的な工夫の内容)
a.事業推進の円滑化の工夫
未利用地を「種地」として事業の継続を図りながら進める連鎖型都市開発
など、土地活用の工夫により、円滑な事業推進を図っている。
① 連鎖型都市開発:東京都千代田区大手町(図表③)、小松島市
② 関連施設との一体整備:小松島市
③ 建て替え申請手続きの効率化:東京都中央区銀座
図表③ 東京都千代田区大手町 連鎖型都市開発
- vi -
中分類
体制の確立
制度の活用
小分類(具体的な工夫の内容)
b.組織の整備の工夫
首長・事業者のリーダーシップ、官民連携、まちづくり会社の設立など、
体制の確立が図られている。
① 自治体首長・事業者のリーダーシップ:北九州市、富山市ほか
② 官民の連携:小松島市
③ まちづくり会社の設立:大崎市、高松市
c.民間活力の活用の工夫
特定建築者制度、PFI等による民間活力の活用や、街並み誘導型地区計
画等による事業者へのまちづくりのインセンティブを与える独自の制度を
定めて再開発を実施するなど、各種制度の活用を図っている。
① 民間事業者の参画制度の活用;岡山市、さいたま市、高槻市、鹿屋市
② 用途の誘導に向けた制度(インセンティブの付与)の導入 及び 施設建て
替えに向けての規制緩和:東京都中央区銀座(図表④)
③ PFI手法の導入:京都市
図表④ 東京都千代田区銀座地区 「街並み誘導型地区計画」、「機能更新型高度利用地区」
③ リスク対応の視点からの工夫 - 安定的かつ円滑な建設、管理・運営ができる事業とする。
中分類
事業費の側面
事業期間の側面
小分類(具体的な工夫の内容)
a.赤字回避の工夫
身の丈に合った低容積型施設の整備や定期借地権の採用などにより、事業
費の削減が図られている。
図表⑤ 高松丸亀商店街 定期借地権
また、施設の賃貸、駐車
場の運営など、自主事業
により財源を確保して
いる。
① 身の丈に合った低容
積型施設の整備:金沢
市、鹿屋市
② 定期借地権の活用:高
松市(図表⑤)
③ 自主事業の実施
b.合意形成の円滑化の工夫
地域を知る地元の行政・住民による事業の推進や、地域の特色を活かした
施設整備、多様な年齢層を対象とした事業計画など、合意形成が図りやすい
工夫・方策で事業を推進している。
① 地域を知る地元の行政・住民による事業の推進:京都市、金沢市民芸術村
② 地域の特色を活かした機能の導入―合意が図れる事業計画:京都市、金沢
市民芸術村
③ 少子・高齢化に配慮した機能の導入- 多様な年齢層を対象とした事業計
画:長岡市、金沢市
- vii -
(3)「政策・課題対応リスト」の活用
「政策・課題対応リスト」は、ヒアリング調査、視察調査で得られた国内各地のリニュー
アル事例における“事業の目的”を都市の政策・課題とし、また、各事例の事業目的達成の
ためにとられた“事業手法の工夫”を政策・課題への対応として表示することで、都市の政
策・課題に即した対応策を導くことができるように作られている。
ただし、各リニューアル事例は、都市の政策・課題が多岐に亘っていることから、事業の
目的も複数掲げられている。そのため、対象事業にかかる上位計画、都市全体から見た地区
及び施設の位置づけ、実施上の制約条件等を整理した上で「政策・課題対応リスト」を活用
する必要がある。
これらを踏まえ、「政策・課題対応リスト」の活用手順を以下に示す。
事業の前提条件の
「政策・課題対応リスト」は、対象事業にかかる上位計画、都市全体から
整理
見た地区及び施設の位置づけ、実施上の制約条件等を整理した上で活用す
る。
事業目的の設定
活用できる
リニューアル事例の選定
事業手法の工夫の
活用
リニューアル事例の
詳細内容の参照
リニューアル事業の目的を設定する。
設定された事業目的と「政策・課題対応リスト」の「事業目的欄」に記載
された目的とを比較し、活用できるリニューアル事例を選定する。
「政策・課題対応リスト」のリニューアル事例で採用された
事業手法の
工夫(○印)をリニューアル計画の検討に活用する。
更にリニューアル事例の詳細を参照したい場合、「政策・課題対応リスト」
の「別添資料記載ページ」に別冊『リニューアル対応事例集』の該当ペー
ジを記載しているので、参照できる。
(4)ケーススタディの実施
中国地域の都市のうち広島市、倉敷市及び米子市を対象に「政策・課題対応リスト」の活
用手順に従って、都市施設のリニューアル検討のケーススタディを行った。
【広島市】
都心部における都市施設のリニューアルに際し、連鎖型都市開発や用途の誘導に
向けた制度の導入などの工夫が活用できると考えた。
【倉敷市】
倉敷駅南地区の商店街の再開発を前提に、定期借地権の活用や住宅施設に加え
医療・介護・子育て支援施設といった関連施設との一体整備などにより生活環境を
確保することで商店街への多様な年齢層の居住促進を図ることができると考えた。
【米子市】
米子駅の南北自由通路の整備に伴う米子駅南地区のリニューアル整備を念頭に、
庁舎機能の導入や身の丈に合った低容積型施設の整備などの工夫が活用できると
考えた。
- viii -
目
次
調査の目的 ································································ 1
本報告書の構成と調査フロー ················································ 2
1.都市施設のリニューアルの現状【文献調査】 ······························ 3
1.1.調査対象の設定 ·················································· 3
(1)都市施設 ·························································· 3
(2)都市機能 ·························································· 4
(3)リニューアル ······················································ 5
(4)本調査におけるリニューアルの捉え方 ································ 6
1.2.実施事例にみるリニューアル対応の特徴と方向性 ···················· 8
(1)事例の抽出 ························································ 8
(2)抽出事例の事業主体別の特徴 ······································· 15
(3)抽出事例から読み取れる都市施設のリニューアルの特徴 ··············· 22
(4)都市施設のリニューアルの方向性 ··································· 29
1.3.リニューアル事業の制度面での促進事例 ··························· 33
(1)都市機能の誘導に向けた制度 ······································· 33
(2)集約型都市(コンパクトシティ)形成に向けた都市施設の誘導 ········· 38
2.事例を基にしたリニューアル対応の工夫 ································· 40
2.1.事例調査箇所の選定 ············································· 40
(1)調査箇所の抽出要件 ··············································· 40
(2)事例調査箇所の抽出結果 ··········································· 41
2.2.ヒアリング調査 ················································· 44
(1)ヒアリング調査結果の整理 ········································· 44
2.3.視察調査 ······················································· 67
(1)視察調査箇所 ····················································· 67
(2)視察調査結果の整理 ··············································· 68
3.リニューアル対応事例の活用 ··········································· 78
3.1.ヒアリング調査、視察調査にみるリニューアル事例 ················· 78
(1)政策・課題対応リストの作成 ······································· 79
(2)政策・課題対応リストの構成 ······································· 81
3.2.ヒアリング調査、視察調査にみる事業手法の工夫 ··················· 85
3.2.1.事業戦略性の視点からの工夫 ································· 85
(1)機能向上・転換、高度利用 ········································· 85
(2)拠点性の向上 ····················································· 89
(3)既存ストックの活用 ··············································· 92
3.2.2.事業推進の視点からの工夫 ··································· 95
(1)手法の工夫 ······················································· 95
(2)体制の確立 ······················································· 97
(3)制度の活用 ······················································· 99
3.2.3.リスク対応の視点からの工夫 ································ 101
(1)事業費の側面 ···················································· 101
(2)事業期間の側面 ·················································· 103
3.3.「政策・課題対応リスト」の活用手順 ···························· 106
3.4.ケーススタディの実施 ·········································· 107
(1)ケーススタディ対象都市の抽出・選定 ······························ 107
(2)選定都市のケーススタディ ········································ 112
3.5.まとめ ························································ 131
あとがき ································································ 132
別冊
∼リニューアル対応事例集∼ ········································ 133
別冊−1
調査の概要 ·················································· 134
別冊−2
ヒアリング調査 ·············································· 137
別冊−3
視察調査 ···················································· 206
参考資料 ································································ 236
参考資料−1
リニューアル事例 ········································ 237
参考資料−2
公共施設白書 ············································ 246
調査の目的
国や地方自治体の財政難を背景に、近年、公共投資は減少の一途を辿っているが、景
気浮揚策の一環として省エネ・環境対応など有望分野への予算投資を本格化するなど質
的変化がみられる。
例えば、官公庁庁舎・学校、医療・介護・福祉施設、道路といった公共施設・社会イ
ンフラについては、従来型の新築・新設を主体とした施設整備から、施設の長寿命化(改
修・維持・延命化等)といった既存施設の有効活用へと施策の転換が図られている。ま
た、施設内に省エネ・環境技術やICTなどの新技術を活用し、施設の機能やエネルギ
ー効率等を向上させることで、維持管理・更新コストを改善していくことも考えられて
いる。
このような背景から、各省庁・地方自治体が管理し一定の都市機能を担う公共施設は、
老朽化等の状況に合わせて、各施設の管理主体の方針に従った公共施設マネジメントの
取り組みが検討されつつあるが、その多くは必要最小限で都市機能と質の水準を維持し
ようとするもので、低廉で効果的な施設更新が求められている状況にある。また、業務
や商業等の都市機能を担う民間施設も、耐震性、老朽化等の状況に合わせた施設更新が
実施されているものの、更新時の社会的な経済状況や、施設の所有者である民間企業の
経営状況等を踏まえながら、更新規模や内容が決定されている状況にあると考えられる。
このため、公共施設、民間施設のそれぞれのリニューアルが整合し、時流に沿った面
的な広がりのある都市機能と質の形成に、至っていない状況も見受けられている。
以上のような状況を踏まえ、本調査においては、全国における都市機能を形成する主
要施設(以下、「都市施設」という。)の実態を踏まえつつ、都市機能と質の更なる改
善を狙いとし、それぞれの都市が持つ課題に対して、効率的・効果的な都市施設のリニ
ューアル対応を行った事例をまとめることを目的とするものである。
さらに、その中で明らかとなった課題や工夫から、今後の中国地域の都市の参考とな
るよう、全国事例を活用した中国地域の主要都市におけるケーススタディを実施し、都
市機能を形成する主要施設のあり方の方向性を検討するものである。
− 1 −
本報告書の構成と調査フロー
1.都市施設のリニューアルの現状【文献調査】
 本調査で対象とする「都市施設」及び「リニューアル」について設定し、リニューアルの
対応について、全国の実施事例、制度について、文献資料から整理した。
1.1.調査対象の設定
1.2.実施事例にみるリニューアル対応の特徴と方向性
1.3.リニューアル事業の制度面での促進事例
2.事例を基にしたリニューアル対応の工夫
 リニューアル対応について、全国実施事例からリニューアル時の苦労、工夫などの実態を
詳細調査し、整理した。(調査結果の詳細は、別冊に掲載。
)
2.1.事例調査箇所の選定
 1 章で整理した文献資料の全国事例からヒアリング調査 12 事例を選定した。
 特徴的な全国事例から委員会で北陸、関西から視察調査 5 事例を選定した。
2.2.ヒアリング調査
 ヒアリング調査を実施し、その概要、工
夫した点、効果、懸案事項等を整理した。
2.3.視察調査
 視察調査を実施し、その概要、工夫した点、
効果、懸案事項等を整理した。
3.リニューアル対応事例の活用
 本調査で明らかとなった調査事例の結果から、リニューアル対応時の苦労、工夫の特徴を
整理し、中国地域の都市に対する事例の適用の方向性について整理した。
3.1.ヒアリング調査、視察調査にみるリニューアル事例
 ヒアリング調査、視察調査の結果から、各事例の政策課題とこれに対応するリニューア
ル視点と工夫を整理した。
(1)政策・課題対応リストの作成
(2)政策・課題対応リストの構成
3.2.ヒアリング調査、視察調査にみる事業手法の工夫
 政策・課題対応リストで整理した事業手法の工夫の各項目について、特徴的な事例を例
示して、具体的に整理した。
3.2.1.事業戦略性の視点からの工夫
3.2.2.事業推進の視点からの工夫
3.2.3.リスク対応の視点からの工夫
3.3.「政策・課題対応リスト」の活用手順
 中国地域の都市施設のリニューアルを検討するためのツールとして「政策・課題対応リ
スト」の具体的活用方法を示した。
3.4.ケーススタディの実施
 中国地域の代表的な 3 都市を対象として、政策・課題対応リストを活用した各都市のリ
ニューアルの方向性を整理した。
(1)ケーススタディ対象都市の抽出・選定 (2)選定都市のケーススタディ
3.5.まとめ
 ケーススタディにより、「政策・課題リスト」を活用し、中国地域の都市施設のリニュ
ーアル計画の検討のためのツールとして利用できることを確認できた。
 今後リニューアルに際し、幾ばくかなりとも役に立てる資料となればと考える。
− 2 −
1.都市施設のリニューアルの現状【文献調査】
1.1.調査対象の設定
都市圏域においては、都市施設の整備により都市機能を集積し、街の活気やにぎわ
い、楽しさ、人との交流や文化など、都市の魅力を高めていくことにより、都市圏域
の活性化を図っていくことが求められている。中国地域の各都市では、生活圏の拠点
として必要な基礎的医療福祉、教育、行政、商業、業務といったサービスや身近な就
業機会を提供するとともに、広域的な都市的サービスを提供することで政治・行政、
文化・交流、商業など多様な都市活動が営まれ、都市の魅力を高め、にぎわいを創出
してきた。
しかし、モータリゼーションの進展や商業環境の変化などにより、郊外部では団地
の造成や大型小売店舗の進出等の開発が進み、都心部では商業販売額の減少、にぎわ
いの低下、居住者の減少が進行している。加えて、教育、文化、交流など多様な都市
的サービスを提供する都市施設は老朽化などによる再整備や改修などが必要な施設
も多く、今後、そのリニューアル対応が必要となってくるものも少なくない。
このため、本調査では、都市圏における都市施設の建て替えや改修・修繕などにお
いて、そのリニューアル対応の方向性を検討するが、以下に、本調査のキーワードと
なる「都市施設」、「都市機能」及び「リニューアル」の対象範囲を設定する。
(1)都市施設
本調査で検討する都市施設のリニューアルは、都市の一体的な発展を目指したもの
とするため、一定の広がりを持った地区・地域の面的整備を対象とする。そのため、
「公共」・「民間」を問わない都市施設を対象とする。
なお、都市施設は図表 1.1 のとおり「ハコモノ(建築物)」、「インフラ」及び「プ
ラント」に大別できる。本調査は、都市の魅力を高める都市施設のリニューアル対応
の方向性を検討するものであることから、「ハコモノ(建築物)」及びその周辺街区
を主な調査対象として設定する。
図表 1.1
形態
都市施設の形態と主な調査対象(調査対象:
)
施設事例
ハコモノ(建築物)
インフラ※1
プラント※1
行政施設:庁舎、支所・出張所、警察署 他
文化施設:博物館、スポーツ施設、ホール 他
生涯学習施設:公民館、コミュニティセンター、図書館 他
商業施設:百貨店、商店街、ホテル、レストラン 他
交通施設:鉄道、バス、空港、港湾等に係るターミナル 他
等
道路・橋梁、
港湾、
上下水道、
公園
等
ごみ処理施設
汚水処理施設
等
※1 主な調査対象と連携整備された公共施設は、その内容を整理した。
− 3 −
(2)都市機能
本調査の対象とする都市機能は、都市の魅力を高めてにぎわいや活力のあるまちづ
くりに繋がるものとするため、拠点性・広域性を持つ「集客機能(不特定多数の人が
集まる機能)」を主な視点とした。したがって、図表 1.2 に示す「政治・行政機能」、
「文化・交流機能」、「商業機能」、「観光機能」、「教育機能」、「医療・福祉機
能」、「交通・物流機能」を、主な調査対象とした。
また、近年増加する大規模災害に対応するための国土強靭化や、我が国の経済活性
化のための観光立国の推進といった背景から、「防災拠点」や「歴史的価値観を含む
景観形成」の機能も対象とする。
図表 1.2
分
都市機能の分類と主な調査対象(調査対象:
類
政治・行政機能
文化・交流機能
商業機能
観光機能
教育機能※1
医療・福祉機能※1
交通・物流機能※1
居住機能※2
業務機能※2
情報・通信機能※2
サービス機能※2
)
施設事例
行政施設(市役所・県庁・国家機関等の行政機関)、裁判所、
警察署、消防署、水道局、下水道局、ゴミ処理施設 等
文化施設(博物館、スポーツ施設、会館、劇場・ホール)、
生涯学習施設(公民館、コミュニティセンター、図書館)等
百貨店・商店街・ホテル・レストラン・ファストフード店、映
画館 等
国宝・重文・歴史的建造物等を含む観光資源、レクリエーショ
ン施設、国際会議・イベント会場、都市公園 等
学校施設(幼稚園、小学校、中学校、高等学校)、
大学、専門学校等
医療施設(病院、診療所)
福祉施設(保育所、児童館、老人ホーム)等
鉄道・バス・地下鉄・空港・港湾等に係るターミナル、
倉庫・貨物ターミナル
等
公営住宅施設(市町村営住宅、県営住宅)、分譲住宅(集合住
宅を含む)、賃貸住宅(集合住宅を含む)等
開発研究施設、デザイン業・設計業・卸売業等に係る業務施設・
事務所 等
通信業・放送業・新聞業・出版業等に係る業務施設・事務所 等
経営コンサルタント、各種物品賃貸業、法律事務所、会計士事
務所に係る事務所 等
※1 教育機能、医療・福祉機能は、拠点性・広域性を有する「大学」、「病院」を対象とし、交
通・物流機能は、集客機能を有する「ターミナル」を対象とした。
※2 調査対象とした主な機能と複合的に整備されている機能は、その内容を整理した。
− 4 −
(3)リニューアル
本調査のリニューアルの要因は、図表 1.3 に示す内容を対象とする。
ハコモノ(建築物)においては、その耐用年数、すなわち、「建物やその部材に要
求される性能を維持する能力をもつ期間」との関係でリニューアルの実施が判断され
る。ハコモノ(建築物)の耐用年数の概念は、①物理的耐用年数、②社会的耐用年数、
③経済的耐用年数の 3 つに分類される。
【ハコモノ(建築物)の耐用年数の概念】
① 物理的耐用年数:建築構造の劣化・老朽化に伴う材料そのものの耐用年数。
② 社会的耐用年数:人々の生活様式や価値観は日々変化しており、生活様式の高度
化の中で、建物が機能的に陳腐化する状況。また、法律や制度
の改正などによって、建物の使用目的が達せられなくなるとい
った状況も想定される。
③ 経済的耐用年数:維持改修費に影響される耐用年数。補修・改修によって建物の
物理的・社会的耐用年数をある程度引き延ばすことは可能にな
るが、建物の劣化の進行により維持改修費は増加傾向で、ある
時期を超えると維持改修費を負担できなくなる状況。
なお、物理的耐用年数による建物寿命を迎える前に、社会的耐用年数や経済的耐用
年数によって建物の価値が大きく下がることもある。
図表 1.3 では、物理的耐用年数、社会的耐用年数、経済的耐用年数に至ったことか
ら実施されるリニューアルの要因を、それぞれ物理的陳腐化、社会的陳腐化、経済的
陳腐化と言い換え、事象とその対応を整理した。
図表 1.3
要
因
物理的陳腐化
社会的陳腐化
経済的陳腐化
事
リニューアルの対象
象
対
応
劣化・老朽化
維持・長寿命化を目指した修繕・
耐震性能の不足
改修・耐震補強・建替
ニーズの変化等による機能不足
機能の向上・転換等を目指した改
修、建替
維持・修繕費などの著しい増加、 建替
不動産価値の低下等
− 5 −
(4)本調査におけるリニューアルの捉え方
都市施設は、建設後、施設運営者により管理され、施設利用者のニーズに見合った
サービスを提供する。しかし、時間経過とともに発現する物理的陳腐化、社会的陳腐
化、経済的陳腐化によりリニューアルが必要となる。
都市施設の修繕・改修及び建替といったリニューアルに際しては、提供する施設機
能と質の水準は、当初レベルを維持することが最低限必要となるが、リニューアルま
での時間の経過の中で、施設利用者のニーズ変化、施設周辺の環境変化、制度基盤の
変化、技術の革新等を踏まえつつ、施設機能と質の水準を向上することが望まれる。
本調査におけるリニューアル対応の方向性の検討では、当初より高い都市機能レベ
ルと質の向上を目指したリニューアルの実現を狙いとして、戦略的に複合的な機能向
上・転換、高度利用等を行うことや、そのために必要となる事業推進の工夫、事業推
進にあたって発生するリスク対応の工夫などを調査の視点とする。
本調査で対象とする都市機能と質の向上を狙いとしたリニューアルのイメージを
次ページの図表 1.4 に示す。
− 6 −
図表 1.4
本調査におけるリニューアルの捉え方
【都市機能】
(P4 参照)
施設利用 者 ︵ニーズ ︶
・政治・行政
・文化・交流
・商業
等
機能と質の向上
機能と質の回復
リニューアル時
当初建設時
(
フィードバック
サービス提供
都市機能と質の水準 サービス
リニューアルの工夫で
当初より高いレベルに
時間
【リニューアル】(P5 参照)
・物理的陳腐化
・社会的陳腐化
・経済的陳腐化
等
)
事業主体・施設運営者
リニューアルの実施
【都市施設】(P3 参照)
主に「集客機能」を有する施設
公共施設
(ハコモノ)
民間施設
(建築物)
リニューアルの工夫
【事業戦略の工夫】
【事業推進の工夫】
・施設機能の複合化
・アクセスの快適性向上
・広域の視点による機
能確保
・面的な拠点整備 等
・事業推進の円滑化
・組織の整備
・民間活力の活用 等
− 7 −
【リスク対応の工夫】
・事業費
・事業期間 等
1.2.実施事例にみるリニューアル対応の特徴と方向性
本節では、これまで実施されている都市施設の面的なリニューアル事例から、実施
内容の傾向や特徴を明らかにする。このため、全国のリニューアル対応事例を文献資
料から収集・整理し、リニューアル対応の方向性を抽出する。
(1)事例の抽出
a.調査対象の抽出
文献資料におけるリニューアル対応事例の抽出は、全国の市街地再開発事業を整
理している「日本の都市再開発
第7巻/(社)全国市街地再開発協会編」1(以
下「参考文献①」という。)の中から、面的整備を念頭においた事例を抽出した。
本調査では、都市の一体的な発展を目指し、一定の広がりを持った地区・地域の
面的整備を対象としているため、リニューアル対応事例は、個々の都市施設のリニ
ューアル事例ではなく、面的な複数の都市施設のリニューアル事例を対象としてい
る。このことから、既成市街地において都市基盤の整備の遅れなど利用価値の低い
街区を、面的に整備、再編する市街地整備事例を抽出対象とした。
なお、市街地整備の主な手法として、市街地再開発事業と土地区画整理事業があ
げられるが、本調査の検討目的が、当初より高いレベルでのまちづくりを念頭にお
いたリニューアル対応としていることから、土地の高度利用、都市機能の更新等を
図ることを目的としている市街地再開発事業を、事例の抽出対象とした。
【主な市街地整備手法】
① 市街地再開発事業
市街地内の老朽化木造建築物が密集している地区などで、細分化された敷地を共
同化し高度利用することで、共同建築物の建築と、公園・緑地・広場・街路等の公
共施設を整備し、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新
を図る事業である。
② 土地区画整理事業
公共施設の整備が十分でない区域で、地権者からその権利に応じて少しずつ土地
を提供してもらい、この土地を道路・公園・河川等の公共施設の整備用地に充て、
土地の区画を整え宅地利用の増進を図る事業である。
1
「日本の都市再開発」は、全国で実施した完了地区の再開発情報を掲載したものである。この
うち第7巻は、平成 21 年 3 月時点の内容となっている。
− 8 −
b.抽出要件の設定
本調査の対象とする面的整備の考え方を整理する。面的整備の規模の概念は、明
確な定義がないため、図表 1.5 に示す中国地域の代表的な市街地再開発事業、跡地
活用等の地区面積を整理した。この結果、従前の複数の街区を一体として整備し、
概ね 1.5ha を超える地区面積として整備されているものが、面的整備として捉える
ことのできる規模と考えた。
したがって、事例の抽出要件は、地区面積 1.5ha を超える事業を対象とした。
図表 1.5
中国地域におけるリニューアル事例
都市名
鳥取市
地区名
旧市立病院跡地※1
松江駅前地区
※2
岡山市
岡山駅前地区
※3
広島市
広島駅周辺地区※4
松江市
広島大学本部跡地
防府駅前※7
(ha)
1.4
2.1
※5
駅元町(第 1 工区、第 2 工区)
2.4
広島駅南口 A ブロック地区
1.23
広島駅南口 B ブロック地区
1.4
広島駅南口 C ブロック地区
1.9
若草地区
2.9
広島大学東千田キャンパス
1.8
民間所有地
2.2
東千田公園
3.0
旧理学部 1 号館敷地
0.6
事業者による整備予定地
3.8
旧市民球場跡地※6
防府市
敷地面積
6.93
防府駅てんじんぐち地区
出典:※1 鳥取市ホームページ「市庁舎整備の取り組み」
※2 (公財)全国市街地再開発協会ホームページ
※3 岡山県、岡山市ホームページ
※4∼6 広島市ホームページ
※7 中国地方整備局建政部ホームページ
− 9 −
1.5
c.抽出結果
参考文献①から地区面積 1.5ha を超える事例を抽出した結果を以下に示す。地区
面積 1.5ha を超える事例として、全事例の 30.7%にあたる 42 事例(
着色部)
を抽出した。
(42 事例の概要は、図表 1.10 参照。詳細は、別添参考資料−1参照。)
事例の地区面積の分布は、図表 1.6 のとおりである。図表 1.7 に示す事業主体別
にみると、公共団体が地区面積の 80.0%、以下同様に公社・機構 33.3%、市街地再
開発組合 25.8%、個人 27.8%、再開発会社 33.3%が抽出事例の割合となる。なお、
抽出事例は 1998 年以降の建設着工となり、1990 年代前半の日本のバブル経済崩壊
後、公共事業費削減傾向の時代背景を表している。(図表 1.8、図表 1.9 参照)
図表 1.6
事業主体
地区面積
事例の地区面積と事業主体
公共団体 公社・機構
市街地再
開発組合
1
20
8
1
30
2
29
3
1
37
3
23
2
28
2
10
1
17
0.5ha以下
0.5∼1.0ha以下
2
1.0∼1.5ha以下
1.5∼2.0ha以下
4
2.0∼2.5ha以下
1
2.5∼3.0ha以下
8
1
3.0∼3.5ha以下
2
3.5∼4.0ha以下
1
再開発
会 社
個人
計
9
4
1
6
1
3
3
4
4.0ha∼
2
1
3
全137事例
10
9
97
18
3
137
抽出42事例
8
3
25
5
1
42
80.0%
33.3%
25.8%
27.8%
抽出割合
図表 1.7
事業主体
33.3%
30.7%
市街地再開発事業の事業主体
事業主体の要件
公共団体
市町村
公社・機構
独立行政法人 都市再生機構 等
市街地再開発
組合
土地所有者及び借地権者 5 人以上が発起し、土地所有者及び借
地権者による人数及び地積の合計が 2/3 以上の同意を得た組合
個
人
土地所有者若しくは借地権者、又はこれらの者の同意を得た者
再開発会社
市街地再開発事業の施行を主目的とし、2/3 以上の土地所有者
及び借地権者が過半数の議決権を有する株式会社又は有限会社
− 10 −
図表 1.8
事業主体別建設着工時期
図表2.5
事業着手時期
(件数)
12
10
1
3
2
6
4
2
0
再開発会社
1
8
3
2
1
1
4
5
5
1
1
3
1
公社・機構
1
1
1
公共団体
2
2
市街地再開発組合
個人
1
1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
(H10) (H11) (H12) (H13) (H14) (H15) (H16) (H17) (H18)
図表 1.9
公共事業関係費の推移
出典:内閣府ホームページ
− 11 −
図表 1.10
事例
番号
都市名
1
北海道
札幌市
東札幌1条
組合
3.7
2
北海道
札幌市
琴似 4・1,2
個人
2.8
3※2
宮城県
大崎市
台町
個人
1.8
4
茨城県
水戸市
泉町1丁目南
組合
1.7
5
埼玉県
武蔵浦和駅
さいたま市 第 8-1 街区
組合
2.6
6
埼玉県
武蔵浦和駅
さいたま市 第4街区
組合
2.0
組合
2.3
機構
2.6
霞が関
三丁目南
個人
3.1
7
8
埼玉県
川口市
地区名
川口1丁目
1番
埼玉県
上福岡駅
ふじみ野市 西口駅前
事業
主体
抽出されたリニューアル事例
地区面積
(ha)
9
東京都
千代田区
10
東京都
中央区
日本橋浜町
三丁目西部
組合
1.8
11
東京都
中央区
勝どき六丁目
再開発
会社
4.3
12
東京都
港区
白金
一丁目東
組合
2.6
13
東京都
江東区
白河・三好
組合
2.0
14※1
東京都
品川区
東品川四丁目
第一・第二
個人
9.6
15
東京都
品川区
大崎駅
東口第3
組合
2.5
事業概要
公共流通地区から、地下鉄駅に至近の高度利用住宅地区への土
地利用転換を図る地区として、共同住宅と住生活をサポートする
日常利用の商業施設並びに医療施設、老人ホーム、保育園等の
公共施設を整備。
土地の高度利用により居住機能と商業機能が調和した複合施設
を整備。歩行者ネットワークの整備とオープンスペースも確保。
町の玄関口としての機能向上、居住機能の充実や土地利用の高
度化などを進めるため、商業サービス機能と居住機能などを複合
して整備し、駅周辺地区の活性化の核を形成。
地区を戦略的広域拠点とし、大型商業施設を中心とする商業集
積、道路とオープンスペース等の整備により中心市街地の活性
化、防災性の強化、市街地環境の向上を図る。
土地の合理的かつ健全な高度利用により、都市計画道路等の公
共施設の整備と、商業・業務、住宅施設を複合的に配置し、活力と
魅力にあふれた、人間性豊かな複合機能都市を形成。
住宅棟は商業施設等を配置した 28 階建ての棟と、住宅のみの 29
階建ての棟を配置し、その間に商業施設、駐車施設を配置。公共
施設として周辺に都市計画道路として配置。
統制のとれたまちづくりや川口市の顔の形成をめざし、土地の高
度利用と商業・業務機能の集積及び都市型住宅の整備を推進。
公共施設の整備と住宅・商業・業務等複合施設の集積により、駅
前にふさわしいにぎわいのあるまちづくりを推進。東武東上線踏切
周辺の交通混雑の緩和も実現。
街区のシンボルである中央広場を整備し、江戸城の改修・保存に
より当地区の歴史と記憶を未来に継承すると同時に、民間店舗を
配置し新たなにぎわいを創出。
都心における新しい「住み続け、働き続けられるまちづくり」をめざ
し、人口の回復・増加を目的とした高層住宅、良好な居住環境を創
出する緑地・広場空間、生活利便性を高める商業施設を整備。従
来の事務所・商業・作業所等の営業継続とまちのにぎわいをもたら
す業務施設も整備。
都心居住モデルとなる安全で快適なまちづくりを目指し、2,800 戸
の高層住宅と多様な店舗等による生活利便施設を整備。また緑
地・オープンスペース等による交流の核となる都市空間を形成。
超高層街区と工場集約街区で構成。超高層街区には、中央広場
を中心に、業務棟、住宅 A 棟、超高層住宅棟を配置。街区南東に
は、駅前プラザを、また、工場集約街区には、街区北側に集合工
場棟及び集合住宅棟を配備。
地区内に日常的な最寄品店舗等を整備。道路・公園など公共施設
を整備し、定住性の高い良質な都市型住宅を建設。また、町の記
憶(旧同潤会 AP)の継承を図るためデザインを統一。
新駅整備に合わせ、新しい居住の場、就業の場、憩いの場を形
成。業務・商業・ホテル等の都市機能の充実はもとより、高層住
宅、歩行者空間や敷地内緑地の整備により快適性、利便性、安全
性の向上を図り、地域拠点にふさわしい都市空間を整備。
大崎副都心整備計画の位置付けに相応しい都市環境の創出を目
指し、道路などの都市基盤施設の整備とともに、業務棟1棟(商
業・業務)、住宅棟2棟(保育所含む)など、高次の複合都市機能を
備えた質の高い多機能空間を整備。
− 12 −
事例
番号
都市名
地区名
事業
主体
地区面積
(ha)
16
東京都
世田谷区
芦花公園駅
南口
機構
2.0
17
東京都
豊島区
東池袋四丁目
組合
1.6
18
神奈川県
横浜市
ヨコハマポートサイド
F-1 街区
組合
2.0
19
神奈川県
横浜市
新杉田駅前
組合
1.9
20
石川県
七尾市
七尾駅前第二
組合
2.1
21※2
静岡県
沼津市
大手町
公共
団体
1.9
22
愛知県
名古屋市
牛島南
組合
2.1
23
愛知県
名古屋市
鳴海駅前
(D街区)
公共
団体
3.2
24※2
愛知県
名古屋市
有松駅前
公共
団体
3.2
25
愛知県
春日井市
勝川
組合
1.6
26
愛知県
豊田市
豊田市
駅前通り南
組合
1.6
27
愛知県
田原市
田原中央
公共
団体
1.6
28
京都府
長岡京市
長岡京駅西口
組合
3.0
29
大阪府
堺市
北野田駅前B
組合
1.7
事業概要
世田谷区の地区拠点として、住宅団地の建替事業と一体的な土
地の合理的かつ健全な利用と都市機能の更新を図り、地域の活
性化と建物の不燃化を行い、併せて住環境を改善。
狭隘な道路、細分化された土地、密集する木造住宅の改善を目指
し、副都心の立地条件にふさわしい土地の有効利用を図り、駅周
辺地区の生活拠点にふさわしい商業業務機能と都市型住宅が共
存する複合市街地を形成。
都心臨海部の複合市街地の形成を目指し、都市基盤施設の整備
と都心型住宅を中心に、業務・商業・サービス・文化などの施設を
整備。F-1 街区の開発は、当該地区の中核的施設として開発。
「人にやさしい」を基本理念に、活気ある商業・業務・サービス施
設、誰もが利用しやすい市民利用施設、都市型住宅との複合化に
より、安全で快適な都市空間を整備。
大型商業集積施設の機能を充実すべく、業務施設などに加え、市
民活動上必要な市民施設で構成し、生活利便機能を整備。また、
パトリアと建物間を上空通路で連結し、来街環境も整備。
市の玄関口である JR 沼津駅の南駅前に位置し、商業・業務の集
積地、かつ交通の結節点となっており、この立地を活かし、中心市
街地の活性化に寄与する商業施設・駐車場・分譲住宅を整備。駅
前広場・道路、駅前ロータリー等も実施。
名古屋駅前地区のランドマークとなるシンボル性の高い高層オフィ
ス棟を配置。低層部へのオープンスペース、屋外への広場の整備
など、地域の安全性と快適性も確保。
連続立体交差事業に併せ、都市計画道路や駅前広場等の公共施
設を整備し、交通結節機能を向上。緑区の玄関口にふさわしい魅
力ある商業・業務施設や、駅直近の利便性を生かした都市型住宅
施設を整備し、地区の活性化を実現。
地区拠点となる名鉄有松駅に接し、伝統的建造物が残る旧東海
道への玄関口。街に不足する道路等の公共施設の整備及び機能
を特化した商業・駐車場・住宅などの施設を導入し、魅力的なまち
づくりを推進。
市の西の玄関に位置し、都市機能の更新、地域全体の機能強化
や魅力向上を目指し、商業の拠点性・商店街との連続性及び居住
快適性の確保を図る複合施設を整備。
「水と緑の修景施設」を地区中心部に配置し、地域の憩いの場を
提供。多機能複合型施設の導入や新たな交流核の形成による昼
夜間人口の拡大、並びに中心市街地の活性化と交通環境等の向
上により市街地を整備。
景観に配慮しつつ、中心市街地の核施設として、公共空間が充実
し集客力のある商業集積施設、中心部への自動車来街の利便性
を高めるための公共駐車場、中心市街地の憩いの場・イベント開
催の場としての広場等を整備。
市の東の玄関口に位置する生活拠点として、商業、公共施設、住
宅、駐車場を複合させ、シンボル性を有する形態と外観を形成。幹
線街路、区画道路、駅前広場及び広場公園等の公共施設と有機
的に一体となったまちづくりを推進。
「住まい・商い・文化のある生活交流の創造」を基本理念に、都市
型住宅、コミュニティの再生に資する魅力ある商業集積及び地域
の文化創造の場となる公共施設など、様々な用途の複合化によ
り、交流拠点づくりを推進。
− 13 −
事例
番号
都市名
30※2
大阪府
高槻市
31
大阪府
泉佐野市
32
地区名
事業
主体
地区面積
(ha)
JR高槻駅北
組合
2.9
泉佐野駅
上東
組合
2.2
大阪府
三日市町
河内長野市 駅前西
公共
団体
1.5
若江岩田駅前
組合
1.7
33
大阪府
東大阪市
34
兵庫県
三田市
三田駅前
A ブロック
公共
団体
1.5
35
奈良県
王寺市
王寺駅前
久度地区
中央街区
組合
2.5
36※2
岡山県
岡山市
駅元町
公共
団体
2.4
37
広島県
広島市
緑井駅周辺
組合
3.7
38※2
徳島県
小松島市
井利ノ口
個人
4.1
39※2
福岡県
北九州市
室町一丁目
組合
3.6
40
福岡県
北九州市
八幡駅前
組合
2.7
41※2
鹿児島県
鹿屋市
北田大手町
機構
1.7
42
沖縄県
嘉手納市
新町・
ロータリー
公共
団体
3.7
事業概要
市の中心市街地のJR高槻駅北側に位置し、広域・地域コミュニテ
ィの中心として、大規模商業施設、コミュニティ施設等の公共施
設、超高層の都市型住宅などの整備による都市活力の再生を実
現。
市の玄関口にあたる南海本線泉佐野駅周辺の商業地であり、市
民生活の拠点にふさわしい店舗・住宅を設け地区の活力の再生を
図るとともに、地区周辺の環境や都市防災にも配慮した魅力ある
都市景観の形成と地域の活性化を実現。
駅前交通広場とアクセス道路の整備により、駅前の利便性の向上
を図るとともに、商業施設、公共施設、公共駐輪場などの整備によ
り、土地の合理的且つ健全な高度利用と都市機能の更新を実現。
市東地区の商業拠点・地域生活拠点として、道路・駅前広場等の
都市基盤整備に併せて、魅力ある商業・業務・文化機能の充実及
び駅前立地の利便性を活かした魅力ある都市型住宅を整備。
市の中心都市核であり、様々なにぎわいのあるまちづくりを促進す
るため、商業・業務・交流・行政機能などを整備。中心に商業ビル
を配置しショッピングや市民交流としての活力ある空間を形成。
王寺駅北口に位置し、都市景観に考慮しつつ、「生活都心」の複合
的施設を整備。併せて、駅前広場・都市計画道路等による適正な
街路の形成を図り、円滑な交通動線を確保。
JR岡山駅西口に位置する「リットシティビル」。特定建築者制度を
活用した再開発事業による複合施設で、第 1 工区ビル「フォーラム
シティビル」(コンベンション施設・集合住宅)との一体化により、岡
山市の交流拠点を創出。
住宅棟と商業棟で構成される再開発ビル。2階部分を歩行者用デ
ッキで接続し、集客と回遊性を高める。また、駅前広場、道路・街
路なども一体的に整備。
中心市街地活性化を図る「医療・福祉交流ゾーン」の形成を目指し
た病院整備と、周辺地区の居住・交通環境等を向上させる都市景
観・環境づくりによる新しいまちづくり。
隣接地区の特性を活かした小倉都心西部のまちづくり。商業、業
務、文化、情報、高次教育機能が集積した複合施設を建設し、新
たな人の流れを生み出すための都市整備を図る。
八幡駅周辺地域の中核地区にふさわしい①土地の高度利用、②
都市機能の整備拡充(商業・業務)、③良好な都市環境(住宅・公
共施設等)、④都市景観の形成を目指したまちづくり を推進。
大隅地域の行政・商業・業務の中心地区として、①低容積型市街
地再開発事業、②他事業との一体的整備(水辺プラザ事業等)」、
③交流人口の増大 を目指したまちづくり を推進。
新たな都市機能の創出、国の機関(沖縄防衛局他)によるまちづく
り。併せて、商業施設、住宅、公民館、図書館等の公共施設、防災
広場等を整備。
※1 参考文献①では、事例番号14(東品川四丁目第一・第二)は第一地区と第二地区として個別に取り
扱われているが、本調査では一つの事例として取り扱う。
※2
着色部は、2章でヒアリング調査を実施した事例。詳細は、2章参照。
− 14 −
(2)抽出事例の事業主体別の特徴
a.抽出事例の分類
抽出した事例について、参考文献①の情報を整理するとともに、当該都市のHP
に掲載されている開発事業の概要紹介、当該開発事業に関わった設計・建設会社に
よる事業紹介及び当該開発事業に関連する論文等の文献(以下、「参考文献②」と
いう。)を加え、その内容を整理した。(整理結果の内容は「参考資料−1」を参
照。)
抽出した事例を基に、各事業の特性に着目して分析した結果、事業主体、理由、
事業の目的の 3 項目に着目した分類が、事業のグループ化を試みる上で重要な項目
であると判断した。その上で、図表 1.11、図表 1.12 に示すとおり、事業主体別に
分類し、41 事例を対象とした。
各グループの概要を図表 1.11 に、各事例の内容を図表 1.12 に整理した結果を示
す。
なお、グループ化した各グループを、それぞれ「Ⅰ公共・総合型」、「Ⅱ-1組
合・総合型」、「Ⅱ-2組合・商業型」、「Ⅱ-3組合・業務型」、「Ⅲ個人・総合
型」として整理する。
図表 1.11
グループ番号
・名称
事業
主体
グループの分類
事例数
グループの概要
 公共団体(8 事例)及び都市再生機構(8 事例)が事
業主体となり、公共施設の整備、商業の活性化、居
住機能の整備、住宅の供給 及び 防災機能の強化に
主眼が置かれた事業。
Ⅰ
公共・総合型
公共団体
機構
11
 事業の主な理由(きっかけ)は、「公共施設の不足」
と「商業活動の沈滞」である。事業目的としてこの 2
つに対応した「公共施設の整備」、「商業の活性化」
に加え、複数の事業において「防災機能の強化」、
「居住環境の改善」および「住宅の供給」が主な目
的として設定されている。
 再開発組合が事業主体となり、グループⅠと同様、
公共施設の整備、商業の活性化、居住機能の整備、
Ⅱ-1組合・総合型
組合
19
住宅の供給、防災機能の強化に主眼が置かれた事業。
 事業の主な理由(きっかけ)と目的はグループⅠと
同様である。
− 15 −
グループ番号
・名称
事業
主体
事例数
グループの概要
 再開発組合が事業主体となり、公共施設の整備、商
業の活性化 及び 防災機能の強化に主眼が置かれた
事業。
 事業の主な理由は「商業活動の沈滞」と「他の公共
Ⅱ-2組合・商業型
3
事業の施行」の 2 つであるが、事業目的としてこの 2
つに対応した「商業の活性化」、「公共施設の整備」
に加え、すべての事業(3 事例)において「防災機能
の強化」が主な目的に設定されている。なお、本グ
ループの事業目的には住宅整備に関する事項は含ま
れていない。
組合
 再開発組合が事業主体となり、公共施設の整備及び
業務機能の集積に主眼が置かれた事業。
 事業の主な理由は「公共施設の不足」、「都市機能
Ⅱ-3組合・業務型
3
の更新」、「他の公共事業の施行」となっている。
事業目的として「公共施設の整備」、「業務機能の
集積」に加え、3 事業中 2 事業で「住宅の供給」が設
定されている。なお、本グループ以外に「業務機能
の集積」が目的に設定されているグループはない。
 個人が事業主体となり、商業の活性化及び住宅の供
給に主眼を置いた事業。
 事業主体が個人(5 事例)で構成されるグループであ
るが、うち 2 事例は中央官庁及び病院の整備を主目
Ⅲ
個人・総合型
個人
5
的とする特殊な事例である。事業の理由は「低未利
用地の活用」、「他の公共事業の施行」、「建物の
老朽化」、「商業活動の沈滞」と様々に分散してい
るが、特殊な 2 事例を除く 3 事例すべてで「商業の
活性化」や「住宅の供給」が事業目的に掲げられ、
業務機能の集積を進める事業も含まれている。
− 16 −
図表 1.12
グループの分類
理 由
事
例
番
号
都道府県名
都市名
事業名
事業主体
建
物
の
老
朽
化
公
共
施
設
の
不
足
商
業
活
動
の
沈
滞
火
災
等
の
罹
災
○
都
市
機
能
の
更
新
事業の目的 (◎:主要な目的)
文
化
交
流
の
場
の
創
出
低
未
利
用
地
の
活
用
地
区
住
民
の
高
齢
化
他
の
公
共
事
業
の
施
行
公
共
施
設
の
整
備
商
業
の
活
性
化
○
◎
業
務
機
能
の
集
積
居
住
環
境
の
改
善
住
宅
の
供
給
防
災
機
能
の
強
化
都
市
景
観
の
向
上
拠
点
機
能
の
強
化
病
院
の
整
備
整備された公共施設
(ハコモノのみ)
グループⅠ
8
埼玉
ふじみ野
上福岡駅西口駅前
機構
○
○
16
東京
世田谷区
芦花公園駅南口
機構
○
○
21
静岡
沼津
○
○
○
◎
23
愛知
名古屋
○
○
○
○
○
大手町
公共団体
鳴海駅前(D街区)
公共団体
○
○
◎
○
○
◎
○
○
○
◎
○
○
◎
○
○
◎
○
◎
◎
○
健康支援センター・市民ホール,乳幼児健診
センター他
○
まちづくり協働センター
○
博物館,コンベンション施設
○
24
愛知
名古屋
有松駅前
公共団体
○
○
27
愛知
田原
田原中央
公共団体
○
○
32
大阪
河内長野
三日市町駅前西
公共団体
○
○
34
兵庫
三田
三田駅前Aブロック
公共団体
○
○
◎
◎
36
岡山
岡山
岡山市駅元町
公共団体
○
○
◎
◎
41
鹿児島
鹿屋
北田大手町
機構
○
◎
◎
42
沖縄
嘉手納
公共団体
○
○
○
◎
○
11
2
1
11
10
小計
新町・ロータリー
(件)
11
0
8
○
0
0
0
5
市役所出張所,子育支援施設
○
○
○
○
学習・文化・交流施設,高齢者福祉施設
市民交流センター
1
○
◎
○
6
4
10
教育・福祉施設
0
0
0
グループⅡ−1
1
北海道
札幌
5
埼玉
さいたま
6
埼玉
さいたま
7
埼玉
川口
10
東京
13
東札幌1条
組合
武蔵浦和駅第8-1街区
組合
○
○
○
○
武蔵浦和駅第4街区
組合
川口1丁目1番
組合
○
中央区
日本橋浜町三丁目西部
組合
○
東京
江東区
白河・三好
組合
○
17
東京
豊島区
東池袋四丁目
組合
18
神奈川
横浜
ヨコハマポートサイドF-1街区
組合
19
神奈川
横浜
新杉田駅前
組合
25
愛知
春日井
勝川
組合
○
○
○
○
○
◎
○
市役所出張所,図書館
○
○
◎
○
高齢者トレーニングルーム
○
○
◎
○
○
○
○
○
○
○
老人ホーム,保育園
○
◎
○
◎
○
◎
○
○
○
○
◎
○
○
◎
○
○
○
○
愛知
豊田
豊田市駅前通り南
組合
○
◎
京都
長岡京
長岡京駅西口
組合
○
○
○
◎
○
○
○
29
大阪
堺
北野田駅前B
組合
○
○
◎
○
○
◎
○
30
大阪
高槻
JR高槻駅北
組合
○
○
◎
○
◎
○
31
大阪
泉佐野
泉佐野駅上東
組合
○
○
◎
○
○
○
33
大阪
東大阪
若江岩田駅前
組合
◎
○
35
奈良
王寺
王寺駅前久度地区中央街区
組合
○
37
広島
広島
緑井駅周辺
組合
○
40
福岡
北九州
八幡駅前
組合
19
○
○
○
3
○
○
9
10
3
1
1
1
1
5
◎
◎
○
◎
◎
○
17
14
あうるすぽっと(劇場),図書館
区民文化センター,保育所
◎
28
(件)
○
○
26
小計
○
◎
◎
◎
○
○
○
○
○
○
○
市民交流ロビー,ギャラリー,子育支援施設
等
○
堺市立東文化会館文化ホール
児童館
行政サービスセンター,福祉事務所,保健セ
ンター,保健所,男女共同参画センター
◎
○
○
○
ホール,保健センター 他
◎
0
地区集会所
○
◎
○
14
19
13
市立理容美容専門学校
1
0
0
グループⅡ−2
4
茨城
水戸
泉町1丁目南
組合
20
石川
七尾
七尾駅前第二
組合
福岡
北九州
39
小計
室町一丁目
(件)
○
組合
3
○
○
○
◎
○
○
○
○
◎
○
○
◎
◎
3
3
3
○
0
1
3
0
0
0
0
0
0
0
0
市役所健康福祉部,図書館,子育支援施設
等
○
○
3
1
0
0
0
0
0
0
劇場,市立美術館分館,展示施設
グループⅡ−3
12
東京
港区
白金一丁目東
組合
15
東京
品川区
大崎駅東口第3
組合
○
22
愛知
名古屋
牛島南
組合
○
小計
(件)
3
○
0
2
○
0
0
1
0
0
0
1
○
◎
○
◎
○
○
◎
3
1
3
◎
○
◎
1
2
○
◎
グループⅢ
2
北海道
札幌
琴似4・1,2
個人
3
宮城
大崎
台町
個人
9
東京
千代田区
霞が関三丁目南
個人
14
東京
品川区
東品川四丁目第一・第二
個人
徳島
小松島
井利ノ口
個人
38
○
◎
○
◎
○
○
○
○
○
◎
○
◎
○
文部科学省庁舎(PFI事業)
◎
○
◎ 病院
小計
(件)
5
1
0
1
0
0
0
2
0
3
1
3
1
1
3
0
0
1
1
計
(件)
41
4
20
25
5
3
1
3
1
17
35
31
5
22
28
26
2
1
1
注記:抽出した事例の中で、事業主体が再開発企業の事例は1件のみであったため、類型化のグループ分類では考慮していない。
− 17 −
b.事業主体別の特徴
前小々節のグループの分類を基に、地区面積、工事期間、事業費及び補助金につ
いて図表 1.13 にグループ毎の平均値を整理した。整理した結果から、各項目にお
ける特徴を整理した。
【特徴の概要】
 地区面積:各グループで大きな違いはない。
 事業後の延床面積:Ⅰ公共・総合型、Ⅱ−1組合・総合型は地方都市の事例が
多く、延床面積が抑制されている。Ⅲ個人・総合型は大都市の事例を含み、延
床面積が大きくなっている。
 事業前後の延床面積:全てのグループで土地利用の高度化が図られており、特
にⅡ−3組合・業務型で高度化の割合が高い。
 工事期間:各グループともに大きな差はない。
 工事進捗(延床面積/工事期間):個人、組合が、公共より高い。
 事業費:Ⅱ―3組合・業務型及びⅢ個人・総合型が大きく、Ⅰ公共・総合型、
Ⅱ−1組合・総合型及、Ⅱ−3組合・業務型が小さい。
 建設単価(事業費/延床面積):公共が、組合、個人より高い傾向にある。
 補助金:公共が、組合、個人に比べ多い傾向にある。
図表 1.13
事業費
事業費/
延床面積
補助金
(年)
延床面積
/工事期間
(㎡/年)
(百万円)
(千円/㎡)
(百万円)
補助金/
事業費
(%)
番号
名称
(ha)
Ⅰ
公共・総合型※1
2.31
41,913
3.4
3.33
12,586
18,330
514
6,664
36.4%
Ⅱ−1 組合・総合型※2
2.29
79,705
6.5
3.04
26,219
24,987
317
5,705
22.8%
Ⅱ−2 組合・商業型
2.47
90,141
2.1
2.61
34,537
25,426
282
6,043
23.8%
Ⅱ−3 組合・業務型
2.39
142,716
10.6
3.47
41,129
52,651
369
6,379
12.1%
4.26
174,099
5.8
2.58
67,480
33,838
259
919
2.7%
2.73
86,620
5.1
3.06
28,307
25,890
327
5,290
20.4%
Ⅲ
個人・総合型※3
平均
延床面積
工事期間
事業後
延床面積
(㎡)
グループ
地区面積
グループ別の特徴
事業後/事業前
(倍)
※1 公共・総合型については、事例番号23 名古屋市鳴海駅前(D街区) の 事業費 及び 補助金 が不明のため、これを含まずに整理した。ま
た、これに伴い 事業費/延床面積 は事例番号23の事業後延床面積(68,500㎡)を控除して算定した。
※2 組合・総合型については、事例番号33 東大阪市若江岩田駅前 の 事業前延床面積 が不明のため、これを含まずに 延床面積整理 事業後
/事業前 を算定した。なお、事例番号33の事業後延床面積は判明しており、これを考慮して事業後延床面積、延床面積/工事期間 及び 事
業費/延床面積 を算定した。
※3 個人・総合型については、事例番号9 東京都千代田区霞が関三丁目南 の 事業費 が処分床(34,007㎡)分のみ判明しているため、これを考
慮して 事業費 及び 事業費/延床面積 を算定した。なお、事業後延床面積は事例番号9の計画面積全体で整理するとともに、これを基に 延
床面積 事業後/事業前 及び 延床面積/工事期間を算定した。
− 18 −
① 地区面積
41 事例の地区面積の平均値は、2.73ha であった。
Ⅰ公共・総合型、Ⅱ-1∼Ⅱ-3 組合の各グループの平均面積は 2.29ha∼2.47ha
と全体の平均値に近い値である。Ⅲ 個人・総合型は、4.26ha と平均を大きく上回
る値となっているが、このグループに事例番号 14(東品川四丁目第一・第二)の
地区面積 9.6 ha が含まれていることが、他グループと異なる傾向となった原因と
なっている。この事例番号 14 を除くと、Ⅲ 個人・総合型の平均値は 2.92 ha とな
り、他のグループと概ね同じ傾向となり、地区面積の大きな違いはない。
② 延床面積
41 事例の事業後延床面積の平均値は、86,620 ㎡であった。
【事業後延床面積】
各グループの中では、Ⅰ 公共・総合型が 41,913 ㎡で平均値の 48%程度と大きく
下回る。また、事業目的がⅠ 公共・総合型と類似するⅡ-1 組合・総合型も 79,705
㎡で平均値をやや下回り約 92%となっている。これら 2 つのグループ内の大半は
地方都市の事例となっており、需要等の地域の実情に応じた開発となっている。
一方、Ⅲ 個人・総合型は 174,099 ㎡で平均値の約 201%と平均を大きく上回っ
ている。当該グループには東京・名古屋といった大都市圏での事例が含まれており、
規模の大きい開発が行われていることがわかる。また、Ⅱ-3 組合・業務型は
142,716 ㎡で平均値の約 165%、Ⅱ-2 組合・商業型は 90,141 ㎡で平均値の 104%
と平均値より上回る。
【延床面積(事業後/事業前)】
41 事例の事業前後の延床面積を面積比で比較すると、
平均値は 5.1 倍であった。
Ⅱ-3 組合・業務型は 10.6 倍、Ⅱ-1 組合・総合型 6.5 倍、Ⅱ-1 個人・総合
型で 5.8 倍の順で平均値より大きくなっている。組合施行で事業目的が商業・業務
機能の強化が特徴となっているⅡ-3 組合・業務型で、極めて高い割合で土地利用
の高度化が図られている。
③ 工事期間
41 事例の工事期間の平均値は、3.06 年であった。
単純な工事期間の比較では、最短はⅢ個人・総合型の 2.58 年、最長はⅡ-3 組
合・業務型の 3.47 年となっており、その差は 1 年程度である。
工事の進捗速度を延床面積を工事期間で割り戻した値でみると、Ⅰ 公共・総合
型で 12,586 ㎡/年となっている。これに対し、Ⅲ 個人・総合型は 67,480 ㎡/年
とⅠ 公共・総合型の 5.4 倍の進捗速度となっている。また、Ⅱ-1 組合・総合型
では 26,219 ㎡/年となっており、Ⅰ 公共・総合型の 2.1 倍となっている。3 グ
ループともに事業目的が総合型であるが、公共に比べ個人、組合の方が 1 年間に
より多くの面積を施工していることがわかる。
− 19 −
④ 事業費・補助金
【事業費】
41 事例の事業費の平均値は、25,890 百万円であった。
事業後延床面積と同様の傾向であるが、Ⅱ-3 組合・業務型及びⅢ 個人・総合
型が平均値より多く、Ⅰ 公共・総合型、Ⅱ-1 組合・総合型及、Ⅱ-3 組合・業
務型が平均値より少ない。
しかし、建設単価として事業費を延床面積で割り戻した値でみると、Ⅰ 公共・
総合型が 514 千円/㎡となっており、Ⅱ-1 組合・総合型は 317 千円/㎡でⅠ 公
共・総合型の 62%と小さい値となっている。また、Ⅲ 個人・総合型では 259 千
円/㎡と、さらに小さい値となっている。
【補助金】
41 事例の補助金の平均値は、5,290 百万円であった。このうち、Ⅰ 公共・総合
型が最も大きくなっている。
事業費に対する補助金の割合をみると、Ⅰ 公共・総合型が 36.4%、Ⅱ-1 組合・
総合型は 22.8%となっており、Ⅲ 個人・総合型は 2.7%となっている。補助金の
割合は、組合、個人に比べ公共が高くなっていることがわかる。
− 20 −
c.事業主体別事業の特徴からの考察
事業主体別の分類で事業をグループ化し、その特徴を整理した結果、組合、個人
といった民間施行の事業にあっても、公共施設整備が実施されているものが多く、
公共団体が主体となっている事業では補助率が高い傾向もあることから、事業費確
保といった面でリスク対応が実施されていることがわかる。
また、組合、個人といった民間施工では公共施工に比べると、工事進捗速度が速
い、建設単価が低いといった傾向があり、工期、事業費の面でリスク対応と事業推
進の視点で、低廉で迅速な対応がされている。
これらのことから、民間施工と公共施工ではそれぞれの得失があることが予想さ
れ、民間施設と公共施設を複合した都市施設を整備するといった事業戦略の視点も、
今後のリニューアルの重要な視点となる。
また、公共、組合、個人のいずれのグループにおいても、事業の前後で延床面積
は増加し、特に大都市を含むものは高い割合で増加しており、都市機能を集約した
まちづくりといった側面で、その事業戦略として都市部の土地の有効利用、土地利
用の高度化を図っていくことも、今後のリニューアルの重要な視点であることがわ
かる。
以上のことから、当初より高い都市機能レベルと質の向上を目指した都市施設の
リニューアル対応に際しては、公共と民間の施設を複合化するといった事業戦略的
な視点、公共と民間がより円滑に連携していくといった事業手法的な視点、事業推
進の上でより早く、より安定的かつ円滑に進めるといったリスク対応の視点など、
様々な工夫をしながら、リニューアル事業を展開していくことが必要と考えられる。
− 21 −
(3)抽出事例から読み取れる都市施設のリニューアルの特徴
前小節で対象とした 41 事例を基に、各事業の「地区の立地・性格」、「理由」、
「目的」、「効果」の観点で、整理・分析した結果から導かれた特徴を整理する。
a.駅前地区を中心とした住商混在型の施設整備
① 地区の立地場所
対象となる 41 事例を「地区の立地場所」で整理すると、図表 1.14 に示すとおり
となる。「駅前地区」での整備(28 件)が最も多く、次いで、各都市の「中心市
街地」での整備(7 件)、「都心・副都心地区」(4 件)、「周辺地区」(2 件)
と続く。
このように本調査で面的整備と捉えた地区面積 1.5ha を超える事例では、交通機
能の結節点である駅前地区での整備が多くなっている。また、来街者が多くなる中
心市街地、都心・副都心地区での整備件数が続いており、にぎわいを創出できる環
境がある地区において多くなっていることがわかる。
図表
1.14
地区の立地場所
図表2.13
地区の立地
0
5
10
15
20
(件数)
30
25
公共・総合型
駅前地区
8
14
1
3
2
組合・総合型
組合・商業型
中心市街地
3
11 2
組合・業務型
個人・総合型
都心・副都心地区
周辺地区
2 11
2
注記:地区の立地場所は、参考文献①における「地区の立地」と参考文献②及び地形図等を参
考に、次の考え方により再整理した。
① 駅前地区
駅に隣接(概ね 200m圏内)し、駅及び駅前整備に合わせた再開発事例をいう。
② 都心・副都心地区
駅前地区を除き、主要な都市圏(東京首都圏、大阪、名古屋の三大都市圏及び札
幌、仙台、広島、北九州、福岡の各都市圏)において行政・商業・業務機能が集中
する地区をいう。
③ 中心市街地
駅前地区・都心地区を除き、人口が集中し、当該都市における地域の中心となる
業務・商業・行政機能が充実している地区をいう。
④ 周辺地区
上記①から③以外の地区をいう。
− 22 −
② 地区の用途
対象となる 41 事例を「地区の用途」で整理すると、図表 1.15 に示すとおりとな
る。最も多かったのが住商混在地(26 件)である。この住商混在地に加え、住宅・
商業・工業等の混在地(住工:3 件、住商工:1 件、商工:2 件)を含めると計 32
件となっている。このように複数用途が混在する地区における事例では、地区が有
する課題も複数となっているため(図表 1.17)、全ての事例で 2 種類以上の利用
形態を有する施設の整備となっている(図表 1.16)。
一方、事業前の土地利用が単独である住宅地(1 件)、商業集積地(5 件)、業
務地(2 件)、中央官庁街(1 件)の合計は 9 件となっている。これらの地区の中
では、商業集積地(1 件:事例番号 4)で単独の利用形態となっているが、他の 8
件は住宅・店舗・事務所といった複数の利用形態となっている。
図表 1.15
地区の性格
(件数)
図表 1.16
施設の利用形態
− 23 −
b.商業活動の活性化、公共施設の課題対応を契機とした事業計画
対象となる 41 事例について、参考文献①で整理されている「事業の契機」を事
業実施に至る「理由」とみなして整理すると図表 1.17 に示すとおりとなる。
最も多い理由は、「商業活動の沈滞」(25 件)となっており、次いで「公共施
設の不足」(20 件)、「他の公共事業の施行」(17 件)と多くなっている。その
ほかに、防災機能の不足を意味する「火災等の罹災」(5 件)、「建物の老朽化」
(4 件)、「都市機能の更新」、「低未利用地の活用」(各 3 件)、「文化交流の
場の創出」、「地区住民の高齢化」(各1件)と続く。
このように、商業活動に関すること、公共施設に関することが多くの地区で課題
となっていることがわかる。また、41 事例の中で事業実施の理由が 2 つ以上とな
っている事例は 27 件となっており、多くの地区において複数の課題を有している
ことがわかる(図表 1.18)。
図表 1.17
事業実施の契機
(件数)
注記 1:「建物の老朽化」は個別施設ではなく、地区全体の状況を判断し整理されている。
注記 2:各事業で複数の理由を有する場合は、複数で整理されている。
図表 1.18
各地区の理由の数(重複状況)
− 24 −
c.多岐にわたる事業目的の融合
対象となる 41 事例を「事業の目的」で整理すると、図表 1.19 に示すとおりとな
る。最も多い目的は、「公共施設の整備」(35 件)となっている。次いで、「商
業の活性化」(31 件)、「住宅の供給」(28 件)、「居住環境の改善」(22 件)
と多くなっている。
これは、「事業実施の契機」で公共施設に関すること、商業活動に関することが
多かったことにも対応している。また、事例地区として多くなっている住商混在地
(26 件)においては、多くの事例で店舗と複合して住宅が整備(23 件)されてい
る。
また、狭隘街路の拡幅、オープンスペースの確保、建物の不燃化等の「防災機能
の強化」(26 件)も多く、近年の防災意識の高まりとも対応している。そのほか
に、「業務機能の集積」(5 件)、中央官庁及び病院の整備に伴う「拠点機能の強
化」(2 件)、「都市景観の向上」(2 件)といった地区の拠点化に向けた動きも
見て取れる。
図表 1.19
事業の目的
(件数)
注記 1:公共施設は、行政機能の一部や図書館・ホールといった文化・交流施設、子育支援施
設、高齢者福祉施設などの公共施設とともに、事業地区内で整備された街路・公園等
の公共事業も含まれている。
注記 2:各事業で複数の事業目的を有する場合は、複数で整理されている。
− 25 −
d.複合的な利用形態に対応した施設整備
全 41 事例で整備された都市施設の「利用形態」で整理すると、図表 1.20 のとお
りとなる。最も多い利用形態は、「店舗」(41 件)となっている。次いで、公共
又は民間により整備された「駐車場」(38 件)、「住宅」(32 件)、「事務所」
(28 件)、「公共施設」(23 件)と、半数以上の事例で整備されている。そのほ
かに、「ホテル」(4 件)などとなっている。
このように、「店舗」は全事例で整備されており、全事例で複数の利用形態で整
備されている。「住宅」、「駐車場」、「事務所」、「公共施設」が多くなってお
り、これら施設が「店舗」とともに複合的に整備されている。
図表 1.20
利用形態
(件数)
注記 1:「店舗」は、各事例の中核となる大規模な商業施設のほか、物販・飲食等の小規模な
テナントが入居している事例も対象となっている。
注記 2:各事業で複数の利用形態を有する場合は、複数で整理されている。
− 26 −
e.施設整備と公共空間改善による面的機能による効果の発揮
参考文献①は、地方自治体の視点による事業効果を、「開発地区のその後」とし
て整理している。41 事例の「開発地区のその後」とともに、参考文献②で整理さ
れている「事業の効果」を整理した結果、図表 1.21 及び図表 1.22 に示すとおりと
なった。
最も多い事業効果は、「地域の活性化」(29 件)となっている。次いで、交通
安全や防災機能の強化を図った「安全な都市空間の形成」(28 件)、事業地区の
集客に大きく寄与する「商業活動の活発化」(25 件)、コミュニティ活動の活性
化といった「居住人口の増加」、「憩いの場・にぎわい空間の創出」(各 16 件)
で多くなっている。そのほかに、公共施設の整備等に伴う「市民生活の利便性の向
上」(13 件)、昼間人口の増加に寄与する「業務機能の強化」(7 件)、事業地区
の開発に起因した「周辺開発の誘導」(5 件)となっている。
これらの事業効果の結果をみると、「市民生活」、「商業活動」、「業務活動」、
「居住環境」の改善に対応した各種施設整備、それらを取り巻く「公共空間」の改
善に対応した公共施設整備、これらが面的に機能を発揮した「地域拠点・広域拠点」
としての地域の活性化、にぎわいの創出が図られており、事業者はこうした効果の
発揮を目指して事業戦略を工夫している。
図表 1.21
事業の効果
(件数)
注記 1:各事業で複数の事業効果を有する場合は、複数で整理されている。
− 27 −
図表 1.22
事業の効果
事業効果の内容
内
容
件数
市民生活の利便性 ・行政センター、市民ホール、図書館、保育所等の公共
施設の整備による市民生活の利便性の向上
の向上
13
・百貨店・スーパーや物販・飲食の個人商店などの商業
活動における来客の増加
25
商業活動の活発化
・オフィスビル・工場スペースの提供による企業活動の
活発化
業務機能の強化
・特定業務機能の提供(官庁、病院、放送局等)
・権利者移転住宅の整備により居住環境が改善され、併
せて、保留床を活用した新たな集合住宅等の供給に伴
居住人口の増加
う居住人口の増加
・歩道・歩廊等の整備による歩行者の利便性・安全性の
向上及び道路・街路・駐車場等の整備による車両の円
安全な都市空間の
滑な通行及び交通渋滞の解消
・施設の老朽化や地区内の狭隘な道路などに伴い低下し
形成
た耐震性・耐火性を改善するため、新たに建築物や道
路等を整備することによる安全性の確保
7
16
28
憩いの場・にぎわ ・公園や広場の整備、施設内のオープンスペースの確保
い空間の創出
に伴う憩いとにぎわいのある空間の創出
16
周辺開発の誘導
・事業地区周辺におけるマンション開発
・事業地区周辺の商店街・商業施設への物販・飲食等の
新規テナント出店、ホテルの立地
5
地域の活性化
・地域拠点・広域拠点等として機能し、事業地区周辺を
含むにぎわいの創出
29
− 28 −
(4)都市施設のリニューアルの方向性
前小節では、対象となる 41 事例を基にその特徴を整理した。文献資料の事例の特
徴から、本調査で検討する都市施設のリニューアルの方向性を整理する。
a.土地利用の高度化(事業戦略の視点)
整理した事例をみると、駅前地区、中心市街地等の人が集まる地区で実施されて
いる事例が多い。このため、従前から集客性の高い地区を有効活用するための工夫
が必要となっている。
図表 1.23 は、事業後の延床面積と事業後延床面積/事業前延床面積の比を整理
したものであるが、いずれの事例も 1.0 倍以上で平均値は 5.1 倍となっており、多
くの事例で「土地利用の高度化」が図られていることがわかる。これは、集客性の
高い地区では地価も高いことから、事業の採算性を確保するために、極力多くの延
床面積が確保されているものと考えられる。
b.低容積型の施設整備(リスク対応の視点)
一方、需要に見合った施設整備の工夫もされている。駅前地区、中心市街地等の
人の集まる地区でも、大都市に比べると集客力が低い地方都市では、土地の高度利
用を図っても、それらが有効活用できない事を想定した対応の工夫も必要である。
図表 1.23 では、事業後延床面積/事業前延床面積の比が小さい事例として、事
例番号 20(石川県七尾市)1.0 倍、事例番号 4(茨城県水戸市)、41(鹿児島県鹿
屋市)、42(沖縄県嘉手納市)は 1.4 倍があげられるが、これらは地域の特性を踏
まえて必要最小限の施設計画として「低容積型」の施設整備としたものと考えられ
る。
図表 1.23
延床面積
事例番号 41
事例番号 42
事例番号 4
平均値:5.1 倍
事例番号 20
注記:事例番号 11(626 倍)、事例番号 33(事業前延床面積不明)は記載していない。
− 29 −
c.施設機能の複合化と官民の連携(事業戦略、事業推進の視点)
整理した事例をみると、全事例で単一の利用形態はなく、複数の利用形態で施設
整備されており、「施設の複合化・多機能化」が、集客力を高める工夫の重要な視
点となっている。また、官民が連携して民間と公共の施設が複合的に整備されてい
ることも、住民、民間事業者、公共団体がメリットを享受する上での重要な視点で
ある。
図表 1.24 は、施設の複合化・多機能化の具体的事例である。事例番号 24(名古
屋市:有松駅前)及び事例番号 30(大阪府高槻市:JR高槻駅北)は、民間の大
規模商業施設を集客の核として、その他の民間、公共施設を複合的に整備している。
また、事例番号 17(東池袋四丁目)及び事例番号 39(北九州市)は、文化・芸術
の公共施設を集客の核として、その他の民間施設を複合的に整備している。
このように、「官民が連携」して民間サービスと公共サービスを同一箇所で提供
することは、住民生活の利便性が高まるとともに、民間事業者は客層の拡大が期待
され、公共団体は公共施設の整備コスト抑制、公共サービスの充実を図ることにも
繋がると考えられる。
図表 1.24
事例
番号
24
30
17
都市名
愛知県
名古屋市
地区名
有松駅前
大阪府
JR高槻
高槻市
駅北
東京都
東池袋
豊島区
四丁目
施設の複合化・多機能化の主な事例
事業
主体
公共
団体
施設内容
イオン有松ショッピングセンター、銀行、住宅、事務所、
駐車場、東丘コミュニティセンター(学習・文化・交流施
設)、有松デイサービスセンター、公共空地
アル・プラザ高槻(平和堂高槻店)、シネマコンプレック
組合
ス、店舗、事務所、市営駐車場・駐輪場、児童館、駅前広
場
組合
あうるすぽっと(劇場)、中央図書館、マルエツプチ(食
品スーパー)他店舗、事務所、駐輪場、東池袋地下通路
北九州芸術劇場(劇場、ホール)、北九州市立美術館分館、
市民ギャラリー、小倉室町郵便局、ゼンリン地図の資料館、
39
福岡県
室町
北九州市
一丁目
デコシティ(ショッピングモール)、シネマコンプレック
組合
スT・ジェイ、SAKODA ホームファニシングス(家具・生活
雑貨)、ザ・ブルー リバーウォーク(結婚式場)、レクサ
ス小倉、西部ガスリビングスタジオ、NHK北九州放送局、
朝日新聞社、西日本工業大学小倉キャンパス、駐車場
− 30 −
d.周辺環境を改善する公共事業との連携(事業戦略の工夫、事業推進の工夫)
整理した事例をみると、駅前地区、中心市街地等の人が集まる地区で実施されて
いる事例が多く、集客性の高い地区を有効活用するために、施設単体だけの工夫と
ともに施設周辺の工夫がされている。
図表 1.25 は、公共事業と連携を図った具体的事例である。事例番号 23(名古屋
市)は鉄道関連事業と連携し、駅舎の改善とともに駅と施設を直結するペデストリ
アンデッキの整備により、施設利用者のアクセス性や、集客力の向上が図られてい
る。また、事例番号 36(岡山市駅元町)でも鉄道関連事業と連携しており、構内
の東西連絡通路整備によって鉄道で分断されていた東西の人の流れを確保すると
ともに、東西連絡通路と施設を直結するペデストリアンデッキを整備し、施設まで
人の流れを導いている。また、事例番号 41(鹿児島県鹿屋市)は、隣接する河川
で国土交通省による水辺プラザ事業で親水護岸整備が実施されたことから、景観性
など地区の魅力が高まり、来街者が増加している。
このように、施設自体で集客力を高めることも必要であるが、それらを取り巻く
公共空間を「公共事業と連携」して改善していくことにより、地区の拠点性を高め
てにぎわいを創出する工夫もなされている。
図表 1.25
事例
番号
23
公共事業と連携を図っている主な事例
都市名
地区名
事業
主体
愛知県
鳴海駅前
公共
名古屋市
D街区
団体
施設内容
【
】は公共事業を示す
【連続立体交差事業】、分譲住宅、物販・飲食
店舗、事務所、駐車場、鳴海駅南交通広場、
街路、自転車駐車場、自転車歩行者連絡橋
【岡山駅東西連絡通路】、岡山全日空ホテル、
36
岡山県
岡山市
駅元町
公共
NHK岡山放送局、岡山市デジタルミュージ
団体
アム、岡山コンベンションセンター、店舗、
分譲住宅、駐車場、街路、下水道
41
鹿児島県
北田
鹿屋市
大手町
【水辺プラザ事業】、鹿屋市市民交流センター、
機構
マックスバリュ、専門店、駐車場、街路、街
区公園
− 31 −
e.事業推進に向けた制度の活用(事業推進、リスク対応の視点)
事業化に向けては、資金調達や合意形成など様々なリスクが想定されるが、リス
クを低減するために有効な制度を活用していくことも必要である。
図表 1.26 は、事業を推進するために事業制度を活用した具体的事例である。事
例番号 9(東京都)は、老朽化した庁舎をPFI事業2(BTO・サービス購入型)
で建て替えるとともに、官庁施設を含む街区全体の再開発を行い、建設資金は維持
管理・運営期間の中で、サービス対価としてPFI事業者に支払われる。事例番号
5(さいたま市)は、平成 12 年改正の特定目的会社の証券発行による特定資産の流
動化に関する法律(SPC法)を活用し、商業棟部分に不動産証券化手法を導入し、
資金調達を行っている。また、参考文献①に掲載されている香川県高松市の高松丸
亀町商店街A街区第一種市街地再開発事業では、定期借地権を活用して全体事業費
を抑えるとともに、テナント賃料や分譲住宅の価格を低く抑えている。
このように、事業ごとに地区の抱える課題に応じて様々な制度を活用して、事業
が進められている。
図表 1.26
事例
番号
9
5
−
2
都市名
地区名
東京都
霞が関三
千代田区 丁目南
埼玉県
さいたま市
香川県
高松市
事業
主体
施設内容
【
】は導入した事業手法を示す
【PFI(BTO・サービス購入型)】
個人
文部科学省庁舎、物販・飲食店舗、事務所、駐
車場、道路
【不動産証券化】
武蔵浦和
駅第8−
事業手法の工夫
組合
武蔵浦和ショッピングスクエア、 民 間 分 譲 住
1街区
宅、
高松丸亀
【定期借地権】
町商店街
A街区
組合
市営駐車場
丸亀町レッツ(多目的ホール)、物販・飲食店
舗、住宅、駐輪場、道路
PFI(Private Finance Initiative)とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間
の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法をいう。
− 32 −
1.3.リニューアル事業の制度面での促進事例
前節「1.2.実施事例からみるリニューアル対応の方向性」では、市街地再開発
事業を基に、本調査で検討する都市施設のリニューアルの方向性を、土地利用の高度
化、低容積型の施設整備、施設機能の複合化と官民の連携、周辺環境を改善する公共
事業との連携、事業推進に向けた制度の活用といった視点が重要である。
本節では、大都市で実施されているリニューアル事業を促進するための制度面で工
夫を行っている事例を整理する。
(1)都市機能の誘導に向けた制度
都市計画法に基づいた都市整備を進める上では、様々な整備促進策が示されている
が、ここでは街並みの誘導、用途の誘導、民間事業者の開発意欲の促進といったこと
に対応する工夫について、参考事例を紹介する。
a.地区特性に応じた機能誘導に対する容積率等の規制緩和
① 街並み誘導型地区計画
3
街並み誘導型地区計画は地区計画制度のひとつで、一定の条件を満足した場合、
容積率制限などの規制の一部を緩和する制度であり、東京都や横浜市で導入・実施
されているものである。
この計画では、密集市街地において新たな制限を設け、その一方で制限の緩和を
図ることにより、道路の拡幅整備と建築物の建て替えを一体的に整備することを促
進するもので、地区の特色に応じた街並みを誘導しつつ、土地の合理的かつ健全な
有効利用の推進及び良好な生活環境の創出を図ろうとするものである。
図表 1.27 に示す東京都中央区の銀座 B 地区は、定住性の高い住宅等の整備を誘
導するために策定された街並み誘導型地区計画によって、住宅等を整備した場合の
容積率の緩和と、壁面後退による道路斜線制限の緩和を行った事例 4 となっている。
また、街並み誘導型地区計画では、道路幅員と容積率によって建築物の高さ制限を
行っており、整然とした街並みの形成を誘導している。
このように、街並み誘導型地区計画は、都市部の市街地における二世帯住宅やゆ
とりのある住宅の整備、狭隘道路に面する敷地や小規模敷地の有効利用、建築物の
高さや壁面位置の統一による整然とした街並みの形成等を誘導するための手法と
して活用されている。
3
4
SSN 1346 7328I-国総研資料 第 368 号/平成 19 年 1 月/国土技術政策総合研究所
みなさんの建て替え支援 地区計画の手引き 第Ⅱゾーンにおけるまちづくりのルール/東
京都中央区
− 33 −
図表 1.27
街並み誘導型地区計画における規制緩和
【通常】
【緩和後】
出典:地区計画の手引き 第Ⅱゾーンにおけるまちづくりのルール/東京都中央区
② 機能更新型高度利用地区
5
機能更新型高度利用地区は、大都市等の都心地域を対象に、高水準で整備されて
いる基盤施設を活用しつつ、老朽化した建築物の建て替え時に、適切な都市機能の
更新を誘導するために、地区を指定する制度である。
本制度は、1998 年に東京都中央区銀座地区で初めて導入され、銀座地区ではこ
れを活用した建て替え計画が相次いでいる。これに続き、中央区では日本橋・東京
駅前地区でも導入してオフィスビルなどの建て替えを促進している。
ここでは、東京都中央区銀座地区で導入された事例 6 を紹介する。図表 1.28 に
示す銀座A地区では、にぎわいを誘導する機能更新型高度利用地区として、一定規
模以上の商業施設などの誘導用途施設を確保した建築物は、道路幅員や歩道幅員に
応じて 100%∼300%の範囲で割り増し容積率が付与されている。(当該地区の誘
導用途施設は、店舗、飲食店、百貨店等のサービス業を営む店舗となっている。)
また、街並み誘導型地区計画をあわせて策定することにより、建物建築時の道路斜
線制限と隣地斜線制限を緩和し、付与された割り増し容積率が有効活用できるよう
に工夫されている。
このように、地区に必要となる機能を誘導するために、容積率の緩和、斜線制限
の緩和といったインセンティブが活用されている。
5
6
「21 世紀を切りひらく緊急経済対策」を受けた都市計画等の取り組みについて (別紙 2)機
能更新型高度利用地区の創設について(要旨)/平成 9 年 12 月 25 日/建設省都市局長・住宅
局長通達
にぎわいと風格の再生 地区計画の手引き 新しい銀座のルール/東京都中央区
− 34 −
図表 1.28
機能更新型高度利用地区における規制緩和
出典:地区計画の手引き 新しい銀座のルール/東京都中央区
③ 広島市における容積率等の緩和
7
中国地域でも、事業促進に向けた容積率等の緩和が実施されおり、ここでは広島
市の事例を紹介する。
広島市では、広島駅新幹線口周辺地区の開発において、二葉の里土地区画整理事
業の実施、広島駅自由通路、新幹線口ペデストリアンデッキ等の整備とともに、ま
ちづくりのルールとなる地区計画を定めている。
開発の推進にあたり、広島市は「広島駅新幹線口周辺地区における用途地域及び
容積率の見直し等の都市計画に関する運用方針」を策定し、次に示す基本的方針の
他、建築物の高さの最高限度及び壁面の位置の制限、並びに種々の周辺環境等への
配慮事項を満足することで、図表 1.29 に示すような容積率等の緩和を行うことが
できることとなっている。
【基本的方針】
・計画に当たっては、敷地内に有効空地や緑地を確保し、環境の保全及び向上を図
るものであること。
・計画に当たっては、自動車及び人の交通がそれぞれ円滑に行われるように、交通
の処理について十分配慮し、かつ、建築物の用途に応じた所要の駐車施設を適正
に配置すること。
・建築物の位置及び形態は、隣地との相隣関係や二葉山及び二葉の里歴史の散歩道
沿いの景観に配慮するとともに、その他都市環境の向上に資するものであること。
7
広島駅新幹線口周辺地区における用途地域及び容積率の見直し等の都市計画に関する運用方
針/広島市
− 35 −
図表 1.29
広島駅新幹線口周辺地区における容積率等の緩和(例)
□A地区、B地区、C地区について【基盤整備による見直し容積率等】
地区の区分
用途地域
容積率
建ぺい率
現行
A地区
商業地域
400%
80%
(指定)
B地区
第二種住居地域
200%
60%
C地区
第二種住居地域
200%
60%
地区の区分
用途地域
容積率
建ぺい率
見直し後
A地区
商業地域
500%
80%
(想定)
B地区
近隣商業地域
300%
80%
C地区
近隣商業地域
300%
80%
− 36 −
b.地区のルールに基づく附置義務駐車場の規制緩和
附置義務駐車場とは、駐車場法第 20 条に基づき定められた地方公共団体の条例
に基づき、一定規模以上の建築物の新築・増設の際に義務として整備された駐車場
であるが、附置義務駐車場の設置が、都市施設のリニューアル時に制約を与える場
合がある。ここでは、建築物の所有者等に対して、地区のルールに基づく条件を課
した上での、附置義務駐車場の緩和策の事例を紹介し、今後の検討の参考とする。
① 大手町・丸の内・有楽町地区の附置義務駐車場整備の特例
8、9
東京都駐車場条例では、原則として、建築物単位に一律の基準によって駐車施設
の附置義務を定めているが、東京都千代田区の大手町・丸の内・有楽町地区では、
公共交通機関の整備が充実し、地区の駐車場に余裕があるといった特性から、地区
内の建築物の所有者等が有効な駐車対策について検討し、実行することを条件とし
て、駐車施設の附置基準を緩和する地域ルールを策定している。
但し、この地域ルールの適用を受けた建築物の所有者等は、駐車場供用開始以降も、
・ 毎年 1 回の駐車場の運用状況の報告
・ 地域ルールに係る義務が履行されない場合には、条例に定める附置義務台数に
復帰する
という義務が課されている。
② 銀座地区の附置義務駐車場整備の特例
10
東京都中央区銀座地区は、狭小敷地や間口の狭いビルが多く、基準どおり駐車場
を整備した場合、通りに面して駐車場入口だらけとなり、通りのにぎわいの連続性
が失われるため、地域ルールによって適切な駐車施設の確保により、銀座のまちづ
くりにふさわしい駐車環境の改善を図っている。
具体的には、敷地規模 500m²以上の建
図表 1.30
銀座地区地域ルール
築物は、集約駐車場として基準の 1.2 倍
の附置義務台数確保することで助成金を
受けることができ、また、敷地規模 500m²
未満の建築物は、協力金の支払いにより、
隔地駐車場として集約駐車場を活用する
ことができる。協力金は、区が基金とし
て管理し、集約駐車場の助成金や銀座の
交通環境改善のために使われている。
8
東京都駐車場条例に基づく地域ルールの策定指針/平成 15 年 11 月 28 日/東京都 15 都市建
企大 25 号
9
大手町・丸の内・有楽町地区の附置義務駐車場整備の特例に関する地域ルール/東京都千代田区
10
銀座地区 駐車施設整備の手引き/中央区都市整備部都市計画課
− 37 −
(2)集約型都市(コンパクトシティ)形成に向けた都市施設の誘導
人口減少・高齢化等により地域の活力が低下しつつある都市において、拡散した都
市機能を集約させ、生活圏の再構築を進めていくため、コンパクトなまちづくりを推
進していくことが必要となっている。ここでは、集約型都市の形成に向けて都市施設
を誘導していくための制度を紹介し、今後の検討の参考とする。
① 都市再生特別措置法
11
集約型都市の形成に向けて、平成 26 年 8 月 1 日に、「都市再生特別措置法の一
部を改正する法律」が施行されており、市町村が、都市再生基本方針に基づき、住
宅及び都市機能増進施設(医療施設、福祉施設、商業施設その他の都市の居住者の
共同の福祉又は利便のための施設であって、都市機能の増進に著しく寄与するもの)
の立地適正化計画を策定することが最大のポイントとなっている。
立地適正化計画には、その区域を定めるほか、次の事項を定めることとなってい
る。
・住宅及び都市機能増進施設の立地の適正化に関する基本的な方針
・居住誘導区域及び居住誘導区域に居住を誘導するために市町村が講ずべき施策
・都市機能誘導区域(都市機能増進施設の立地を誘導すべき区域)及び誘導すべ
き施設並びに当該施設の立地を誘導するために市町村が講ずべき施策
立地適正化計画による事業は、都市機能誘導区域内に誘導すべき施設を整備する
民間事業者に対して、(一財)民間都市開発推進機構による出資等の支援を受ける
ことができる。また、都市機能誘導区域内に誘導すべき施設についての容積率及び
用途の制限を緩和する特定用途誘導地区を都市計画に定め、規制緩和の特例措置を
認めることができるものとなっている。
② 地域公共交通活性化再生法
12
人口減少、少子高齢化が加速度的に進展することにより、公共交通事業をとりま
く環境が年々厳しさを増している中、持続可能な地域公共交通ネットワークの再構
築を図るため、平成 26 年 11 月 20 日に、「地域公共交通の活性化及び再生に関す
る法律の一部を改正する法律」が施行されている。これは、「都市再生特別措置法
の一部を改正する法律」に基づき策定される立地適正化計画と連携して、集約型都
市の形成を推進していくものである。
地域公共交通活性化再生法の改正では、交通政策基本法の基本理念に従って、地
方公共団体が中心となり、まちづくりと連携して、面的な公共交通ネットワークを
再構築していくために地域公共交通網形成計画を策定することがポイントとなっ
ている。
11
12
都市再生特別措置法等の改正について/国土交通省都市局都市計画課
地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律等の施行について/国土
交通省総合政策局公共交通政策部
− 38 −
地域公共交通活性化再生法では、地域公共交通再編実施計画等について国土交通
大臣の認定により、バスの路線、輸送力の設定等に関する許認可の審査基準の緩和
など、関係法令の特例措置等を受けることが可能となっている。
図表 1.31
集約型都市形成に向けたまちづくりと公共交通の連携
出典:地域公共交通活性化再生法パンフレット/国土交通省総合政策局公共交通政策部
− 39 −
2.事例を基にしたリニューアル対応の工夫
2.1.事例調査箇所の選定
(1)調査箇所の抽出要件
1章の検討は、実施事例からみるリニューアル事業の方向性、リニューアル事業
を制度面から促進する事例、公共施設の今後のリニューアルの方向性について整理
した。この中で整理されたキーワードは、以下のとおりである。
調査対象事業は、以下のキーワードに該当する事例を、1章で整理した実施事例
と本調査における検討委員会の委員から推薦された特徴的な事例から抽出した。
【文献調査から抽出した都市施設のリニューアルのキーワード】
○
実施事例からみるリニューアル事業の方向性

土地利用の高度化

低容積型の施設整備

施設機能の複合化と官民の連携

周辺環境を改善する公共事業との連携

事業推進に向けた制度の活用
○
リニューアル事業の制度面での促進事例

都市機能の誘導に向けた制度

集約型都市(コンパクトシティ)形成に向けた都市施設の誘導
− 40 −
(2)事例調査箇所の抽出結果
事務局及び調査機関が実施するヒアリング調査、並びに、本調査における検討委
員会の委員にもご参加いただく視察調査により、事例調査を実施する。
ヒアリング調査は、1章で面的整備とした全国の 42 事例から、9 事例を抽出し
た。また、本調査の検討委員会の意見等を反映して、「リニューアル事業を制度面
から促進する事例」として、連鎖型開発が行われている「東京都千代田区」、街並
み誘導型地区計画、機能更新型高度利用地区が導入されている「東京都中央区」、
民間が中心となって商店街を活性化した「香川県高松市」の 3 事例を抽出し、合計
12 事例を調査した。
また、視察調査は、「2.3
視察調査の実施」で実施することとし、本調査の
検討委員会の意見等を反映して「新潟県長岡市」、
「富山県富山市」、
「石川県金沢市」
で 4 事例を抽出した。また、視察調査ではPFI手法を活用した「京都府京都市」
の 1 事例も抽出し、合計 5 事例を調査した。
なお、図表 2.1 に「調査対象事業」を、また、図表 2.2 に「調査対象事業の位置
図」を示す。
− 41 −
図表 2.1
調査対象事業
調査事例
事例No.
別冊ページ数
ト
有
松
p162
p169
p211
p215
p222
p175
p182
p230
p187
p190
p195
p200
京
都
御
池
中
学
校
リ岡
山
ト コ
シン
テベ
ン
ビシ
ル
ン
セ
ン
タ
リ
バ
金
沢
市
民
芸
術
村
近
江
町
い
ち
ば
館
グ
ラ
ン
ド
プ
ラ
ザ
ア
ク
ト
ア
モ
高
松
市
丸
亀
商
店
街
ア
オ
イ
リ
オ
徳
島
赤
十
字
病
院
リ
ナ
シ
テ
ウ
ク
北
九
州
レ
レ
長
岡
ラ
d
e
ネ
ふ
る
か
わ
商業防 公商業 公商居 公商居 公商防 公商業 公商防
公商防 公商防 公商居 公商居 公商防
公防都
公商防
拠
居住防拠 住防
防
都
居住防
都
都
都
住防 住防都
都
商住
病
東京都 東京都 埼玉県 愛知県 京都府 岡山県 福岡県 石川県 石川県 富山県 大阪府 香川県 新潟県 静岡県 宮城県 徳島県
都市名
千代田区
大手町
事業主体
人口(千人)
47
高齢化率(%)
19.1
公商
鹿児島
県
小松島
北九州
中央区 さいた 名古屋
鹿屋市
金沢市 金沢市 富山市 高槻市 高松市 長岡市 沼津市 大崎市
京都市 岡山市
市
市
銀座
ま市
市
−
−
か
の
や
ー
ク
ト
浦
和
パ
ル
コ
p207
ィ
ウ
イ
ン
ハ
ー
p157
コ
ム
ナ
ー
p153
銀
座
地
区
の
ま
ち
づ
く
り
計
画
レ
聞取9 聞取10 聞取11 聞取12
ー
p148
その他
聞取7 聞取8 視察5
ー
p138
大
手
都町
市連
再鎖
生型
プ
ロ
ジ
特例市
聞取5 聞取6 視察2 視察3 視察4
ォー
視察1
ー
聞取4
ョ
聞取3
ィ
聞取2
中核市
ッ
聞取1
ー
事業の目的※1
指定都市
、
事
業
名
・
計
画
名
・
施
設
名
特別区
ー
ア
ル
の
方
向
性
地方自治法等に基づく
地方公共団体の区分
ェ
ュー
文
献
資
料
か
ら
抽
出
し
た
都
市
施
設
の
リ
ニ
組合
公共
公共
123 1,222 2,264 1,474
16.3
公共
組合
公共
組合
公共
組合
組合
公共
公共
個人
組合
組合
710
977
462
462
422
357
419
283
202
135
41
105
20.8
20.8
24.4
23.2
22.4
25.4
24.8
24.4
26.8
24.8
○
○
〇
○
○
○
○
19.1
20.8
22.4
21.3
24.8
○
○
〇
○
○
1.実施事例からみるリニューアル事業の方向性
(1)土地利用の高度化
○
○
〇
(2)低容積型の施設整備
〇
(3)施設機能の複合化と官民の連携
○
(4)周辺環境を改善する
公共事業との連携
○
○
(5)事業推進に向けた制度の活用
○
○
○
○
〇
○
○
○
○
〇
○
〇
○
○
〇
○
○
○
〇
○
○
○
2.リニューアル事業を制度面から促進する事例
(1)都市機能の誘導に向けた制度
(2)集約型都市(コンパクトシティ)
形成に向けた都市施設の誘導
○
○
○
○
− 42 −
〇
○
〇
○
○
○
○
○
○
図表 2.2
調査対象事業の位置図
注記:人口は平成 22 年度国勢調査(総務省統計局ホームページ)
− 43 −
2.2.ヒアリング調査
(1)ヒアリング調査結果の整理
ヒアリング調査の結果を基に、都市施設の面的なリニューアル対応において認識さ
れた課題、その対応の実施内容、効果などについて整理・分析する。
なお、ヒアリング結果の詳細は、
「別冊−2
ヒアリング調査」に添付する。
a.リニューアルの概要
① 大手町連鎖型都市再生プロジェクト(東京都千代田区大手町)
−
合同庁舎跡地を活用して老朽化建築物を連鎖的に移転したプロジェクト
(独)都市再生機構、㈲大手町開発、三菱地所㈱、エヌ・ティ・ティ都市開発㈱が
事業主体で実施したプロジェクトで、合同庁舎移転による跡地を地区の高度利用に
繋げるように考えられた手法である。跡地に順次建築物を移転建設することにより、
事業活動を中断・停滞させることなく、老朽化した建築物の機能向上・更新が行わ
れている。また、本プロジェクトでは容積率の規制緩和等を図る手法も活用されて
おり、民間企業の建て替え意欲向上にも繋がっている。
② 銀座地区のまちづくり計画(東京都中央区銀座地区)
−
地区のまちづくりに沿って各種規制緩和を行った地区計画
東京都中央区と民間が主体となる地区全体の建築物建て替え計画で、地区計画に
基づいた各種規制の緩和により、従前の建築物の規模を確保しながら整然とした街
並み形成によって、地区全体の機能更新、災害時の安全確保を図っている。本計画
は、容積率、附置義務駐車場設置の規制緩和等により、民間事業者が建築物の建て
替えを行いやすい環境を創出している。
③ コムナーレ、浦和パルコ(浦和駅東口駅前地区第二種市街地再開発事業)
−
駅前の建物密集地区を改善してにぎわい創出を目指した複合施設
さいたま市が事業主体で実施した事業で、浦和駅東口周辺の老朽建物密集地区の
改善と、駅東口の交通ターミナル機能を改善し、商業・集客施設とともに公共施設
を導入し、駅前地区の高度利用と都市機能更新を図った複合施設となっている。駅
前広場、都市計画道路の整備など公共性、緊急性の高い事業として第二種市街地再
開発事業として実施されている。
④ ウインハート有松(有松駅前第一種市街地再開発事業)
−
歴史的町並み地区周辺の駅前拠点創出を目指した複合施設
名古屋市が事業主体で実施した施設で、近隣に歴史的町並み地区を有する駅前で
地域拠点の創出を図った複合施設となっている。住宅、商業施設とともに、公共施
− 44 −
設として高齢化に対応したデイサービスセンター、住民が活用するコミュニティセ
ンターの導入を図り、歴史的町並み地区とともに地域全体の活性化に繋がる起爆剤
として、駅前地区の整備が行われている。
⑤ 岡山コンベンションセンター、リットシティビル
(岡山市駅元町地区第二種市街地再開発事業)
−
都市基盤整備が遅れた地区の高度利用と都市機能更新を図った複合施設
岡山市が事業主体で実施した施設で、戦後開発の遅れによる市街地の地盤沈下に
対応するため、都市基盤の整備、居住環境の改善、駅西の玄関口にふさわしい多様
な都市機能の導入を図った複合施設となっている。第 1 工区は、会議機能を中心と
したコンベンションセンターと住居の複合施設、第 2 工区はホテル、事務所、飲食
店、岡山市シティミュージアム、NHKといった多様な複合施設となっている。こ
れら施設と岡山駅を結ぶペデストリアンデッキの整備によって、多様な利用者によ
るにぎわいを創出している。
⑥ リバーウォーク北九州(室町一丁目地区第一種市街地再開発事業)
−
区役所跡地を活用して公共事業と連携して整備された複合施設
室町一丁目地区第一種市街地再開発組合が事業主体で実施した施設で、区役所跡
地を活用して、商業施設、集客施設、情報発信施設、大学施設を整備して高度都市
施設を集積した複合施設となっている。道路、河川、公園事業と連携し整備が進め
られ、特に河川のシンボル空間との連携によってにぎわいの向上を図っている。
⑦ アクトアモーレ(JR高槻駅北地区第一種市街地再開発事業)
−
駅前地区の高度利用と子育てを支援する複合施設
JR高槻駅北地区市街地再開発組合が事業主体で実施した施設で、密集する老朽
化低層住宅、店舗等の建て替えと、商業施設との連携、交通ターミナル機能の改善
により、土地の高度利用と都市機能の更新を図った複合施設となっている。近年の
保育施設の需要増加に対応した公共施設の導入を図るとともに、JR駅と複合施設
を結ぶペデストリアンデッキを整備することで、駅⇔複合施設⇔商店街の人の流れ
を生んで、中心市街地の更なる活性化を図っている。
⑧ 高松丸亀町商店街(高松丸亀商店街A∼G街区第一種市街地再開発事業)
− 定期借地権を活用した“土地の所有権と利用権の分離”による商店街の再開発
地元の商店主によるまちづくり会社「高松丸亀町まちづくり㈱」が実施した事業
で、近隣への大型商業施設の進出で衰退した商店街を、定期借地権を活用した“土
地の所有権と利用権の分離により一括で再開発した。商店街の一括の開発で、消費
者のニーズに合わせたテナント作り(テナントミックス)が可能となり、商店街の
来街者が、バブル期のピーク時)に戻りつつある。また、テナントほか、医療機関
− 45 −
併設型のマンションの建設により、上質の生活環境が整備され、商店街の居住者が
増加している。
⑨ イーラde(大手町地区第一種市街地再開発事業)
−
駅前地区の高度利用と都市機能更新を目指した複合施設
沼津市が事業主体で実施した事業で、沼津駅周辺総合整備事業の中の 1 事業とし
て、沼津駅南口の交通ターミナル機能の改善と、商業施設と住宅施設の整備により、
土地の高度利用と都市機能の更新を図った複合施設となっている。沼津駅周辺総合
整備事業では、鉄道高架化、関連道路整備、土地区画整理、駅北拠点開発等も実施
されている。
⑩ リオーネふるかわ(台町地区第一種市街地再開発事業)
−
大型商業施設跡地を活用して拠点創出を目指した複合施設
地区の若手商店主の出資による民間まちづくり会社「台町ティー・エム・シー㈱
(タウン・マネジメント・センター)」が事業主体で実施した施設で、中心市街地
内の大型商業施設撤退後の跡地を活用して、地区の拠点機能を高める商業施設と、
都心居住を推進する住宅施設の整備を行った、低容積型の複合施設となっている。
また、当初は整備できなかった公共施設として子育て支援センターが住宅施設内に
設置されている。
⑪ 徳島赤十字病院(井利ノ口地区第一種市街地再開発事業)
−
工場跡地を活用して医療施設の機能向上を目指した病院施設
東洋紡績(株)、日本赤十字社が事業主体で実施した施設で、紡績工場の跡地を活
用して、老朽化した病院建物の建て替えと院内施設の更新を行っている。更に、市
街地再開発事業として実施することで、調整する権利床を活用して、病院施設、コ
ンビニ、院外薬局が一体となった複合棟を設置し、利用者の利便性を高めるととも
に、収益確保を図っている。
⑫ リナシティかのや(北田大手町地区第一種市街地再開発事業)
−
密集市街地の建物を移転しにぎわい創出を目指した複合施設
(独)都市再生機構が事業主体で実施した施設で、老朽化する密集市街地の跡地に、
商業施設、集客施設、公共施設等を導入した複合施設となっており、地域特性を反
映した低容積型の施設規模による複合施設となっている。市役所移転、バイパス整
備に伴う店舗移転等の当該地区の停滞を打開するために整備された施設となって
おり、地域の核施設として整備されている。
− 46 −
図表 2.3(1)
番号
聞取 1
事例
事業主体
理由・目的
リニューアルの内容
大手町連鎖
型都市再生
プロジェクト
(独)都市再生機構
㈲大手町開発
三菱地所(株)
エヌ・ティ・ティ都市開
発(株)
(理由)
・建物の老朽化による建替
・合同庁舎の移転
(目的)
・事業活動を中断、停滞させる
ことのない建物更新
・合同庁舎跡地の有効活用
・地区の高度利用
・金融業、新聞社、経団連、J
A等の民間施設
中央区、民間
(理由)
・建物の老朽化
・地区のにぎわいと風格の再生
(目的)
・地区全体の機能更新、災害時
の安全確保
・整った街並みの形成
・従前規模を確保した建替
・商業地のにぎわい再生
・定住促進
・隔地駐車場の確保
・商業施設(店舗、飲食店、百
貨店等)
・業務施設
・住宅施設
・駐車場施設
(理由)
・狭小な駅前広場、飲食、不動
産等建物が密集、西口の大型
店舗整備による東口の商業活
動の沈滞
(目的)
・駅前広場、道路の拡充、オー
プンスペースの確保、商業・
コミュニティ振興
・民間と公共の複合施設(「商
業施設」、「駐車場」、
「集客施
設(シネマコンプレック
ス)」、「公共施設(図書館、
市民サポートセンター、国際
交流センター、消費生活セン
ター、コミュニティセンタ
ー、庭園)」)
・駅前広場、市民広場、公共駐
車場、都市計画道路
(理由)
・老朽木造建物の密集による都
市機能更新の停滞、防災面の
懸念、歴史的町並みとの連携
(目的)
・地区拠点の創出、道路等公共
施設整備、旧東海道の歴史的
町並み保存・活用
・民間と公共の複合施設(「商
業施設」、「駐車場」、「業務施
設(事務所)」、「住宅」、「公
共施設(コミュニティセンタ
ー、デイサービスセンタ
ー)」)
・駅前広場、ペデストリアンデ
ッキ、地下通路、公共駐輪場、
街園、都市計画道路
東 京 都 千代 田
区大手町
銀座地区の
まちづくり計画
東 京 都 中央 区
銀座地区
聞取 2
コムナーレ、 さいたま市
浦和パルコ
聞取 3
浦 和 駅 東口 駅
前 地 区 第二 種
市 街 地 再開 発
事業
ウインハート 名古屋市
有松
聞取 4
ヒアリング調査におけるリニューアル概要
有 松 駅 前第 一
種 市 街 地再 開
発事業
− 47 −
図表 2.3(2)
番号
事例
ヒアリング調査におけるリニューアル概要
事業主体
理由・目的
リニューアルの内容
(理由)
・戦後開発の遅れ、市街地の地
盤沈下
(目的)
・都心の都市基盤の整備、居住
環境の改善、駅西の玄関口に
ふさわしい多様な都市機能の
導入
・第 1 工区の複合施設(「コン
ベンションセンター」、「住居
施設」、「駐車場」、「広場」)
・第 2 工区の複合施設(「ホテ
ル」、「業務施設(事務所)」、
「商業施設(飲食店)」、「公
共施設(岡山市シティミュー
ジアム)」、「情報発信施設(N
HK等)、「駐車場」)
・都市計画道路、ペデストリア
ンデッキ
リバーウォーク 室町一丁目地区第
北九州
一種市街地再開発
組合
(理由)
・商業地としてのにぎわい低下
・老朽化による区役所移転
(目的)
・高度な都市施設の集積
・道路、河川、公園等の一体整
備
・川をシンボル空間としたにぎ
わい空間の創出
・商業施設、集客施設、情報発
信施設、大学施設の複合施設
(「商業施設」、
「集客施設(シ
ネマコンプレックス、劇場、
美術館)」、業務施設(事務
所)、「駐車場」、「放送局」、
「新聞社」、「大学」
)
アクトアモーレ
JR高槻駅北地区
市街地再開発組合
(理由)
・老朽化低層住宅、店舗等の密
集による中心市街地の都市機
能停滞
(目的)
・交通ターミナル機能の向上
・中心市街地の活性化
・土地の高度利用と都市機能の
更新
・民間と公共の複合施設
(「商業施設」、
「集客施設(シ
ネマコンプレックス)」、「駐
車場」、「住宅」、「公共施設(保
育園、児童館)」
)
・駅前広場、ペデストリアンデ
ッキ、公共駐車場・駐輪場、
都市計画道路
高松丸亀町まちづ
くり(株)
(理由)
・近隣への大型商業施設の進出
による商店街の衰退
(目的)
・商店街の活性化
・商店街の居住者の増加
・消費者のニーズに合わせて
再編されたテナント
・住宅施設、医療施設
岡山コンベン 岡山市
ションセンター
リットシティビル
聞取 5
聞取 6
聞取 7
岡 山 市 駅元 町
地 区 第 二種 市
街 地 再 開発 事
業
室 町 一 丁目 地
区 第 一 種市 街
地再開発事業
J R 高 槻駅 北
地 区 第 一種 市
街 地 再 開発 事
業
高松丸亀町
商店街
聞取 8
高 松 丸 亀商 店
街 A ∼ G街 区
第 一 種 市街 地
再開発事業
− 48 −
図表 2.3(3)
番号
事例
イーラde
聞取 9
事業主体
理由・目的
リニューアルの内容
沼津市
(理由)
・百貨店閉店による中心市街地
の空洞化、商業活動の沈滞、
中心市街地の交通問題
(目的)
・県東部の拠点都市としての発
展、中心市街地の活性化、中
心市街地の交通問題解消
・複合施設(「商業施設」、「駐
車場」、「住宅」)
・駅前広場、都市計画道路
台町ティー・エ
ム・シー㈱
(理由)
・中心市街地の大型店撤退によ
る商業活動の沈滞
(目的)
・中心拠点としての都市機能導
入、都心居住地区の整備、商
店街を核とした回遊性の確
保、広域の玄関口としての交
通機能の改善と都市情報の提
供
・商業複合施設(「商業施設」、
「集客施設(シネマコンプレ
ックス)」
、「駐車場」)
・店舗併用住宅施設
・住宅施設(「公共施設(子育
て支援センターを含む)」
・業務施設
東洋紡績(株)、日本
赤十字社
(理由)
・紡績工場跡地の有効活用
・老朽化(耐震強度不足等)し
た病院の建て替え
(目的)
・病院機能を維持しながらの建
て替え
・医療設備の更新
・市道拡幅
・医療施設と商業施設の複合
施設
(「病院」、
「コンビニ」
、
「院外
薬局」
、「駐車場」)
(独)都市再生機構
(理由)
・市役所移転、バイパス整備に
伴う店舗移転による中心市街
地の停滞
(目的)
・身の丈にあった再開発
・土地の高度利用
・地域の都心核形成
・中心市街地の活性化
・民間と公共の複合施設
(「商業施設」、「集客施設」、
「駐車場」、「イベント広場」
、
「公共施設(ホール、情報プ
ラザ、芸術・文化・学習プラ
ザ、福祉プラザ、健康スポー
ツプラザ)
」)
大 手 町 地区 第
一 種 市 街地 再
開発事業
リオーネ
ふるかわ
聞取 10
ヒアリング調査におけるリニューアル概要
台 町 地 区第 一
種 市 街 地再 開
発事業
徳島赤十字
病院
井 利 ノ 口地 区
第 一 種 市街 地
聞取 11 再開発事業
リナシティ
かのや
北 田 大 手町 地
区 第 一 種市 街
聞取 12 地再開発事業
− 49 −
b.リニューアルにあたって工夫、苦労した点
① 大手町連鎖型都市再生プロジェクト(東京都千代田区大手町)
−
「連鎖型都市再生」手法の導入
「連鎖型都市再生」の手法を導入することで、事業活動を停滞、中断することなく
建物移転更新が図られている。都市再生緊急整備地域としての規制緩和の活用、特
定建築者制度による建設推進、用途地域見直し、地区計画による各種規制緩和策を
活用することで、民間事業者の建て替え意欲を高めている。設立された推進協議会
で地区のまちづくりが議論され、主要企業がリードする形でプロジェクトが推進さ
れている。
② 銀座地区のまちづくり計画(東京都中央区銀座地区)
−
円滑に街並みを更新するための規制緩和策の実現
都市計画マスタープランを策定せず、まちづくりのルールとして「街並み誘導型
地区計画」、「機能更新型高度利用地区」、「用途別容積型地区計画」を策定し、その
中でルールに基づいた各種規制緩和を図ることで、民間施設の建て替え意欲を誘発
している。計画は、中央区が、地元住民、東京都、国土交通省と協議を重ね策定し
ている。
③ コムナーレ、浦和パルコ(浦和駅東口駅前地区第二種市街地再開発事業)
−
資金調達のための独自スキームの構築
当初予定していた商業核店舗の撤退により資金調達が困難となったが、国内初で
開発型不動産証券化を市街地再開発事業に導入した特定建築者事業ストラクチャ
ーのスキームを考案し、事業を推進している。このスキームでは、特定建築者を公
募し、特定建築者が施設入居者と定期建物賃貸借契約、SPCとの信託契約締結、
大手建設会社へ各種業務委託によって、事業推進体制が構築されている。
④ ウインハート有松(有松駅前第一種市街地再開発事業)
−
住宅施設に対する地方住宅供給公社の事業参画
公共施設中心の複合施設では事業の採算性確保が困難なため、施設内に住宅を整
備するとともに、分譲住宅の保留床を名古屋市住宅供給公社と協定締結することで、
低価格で住宅販売を行っている。再開発に対して積極的に行動する行政職員が主体
となり、地元の推進団体である再開発協議会とともに事業を推進している。
− 50 −
⑤ 岡山コンベンションセンター、リットシティビル
(岡山市駅元町地区第二種市街地再開発事業)
−
第二種市街地再開発事業の採用と特定建築者制度の採用
岡山駅前の立地で公共性・緊急性が高いため、岡山市内再開発事業 7 地区の中で、
本地区のみ第二種市街地再開発事業で実施されている。事業推進にあたっては、保
留床契約のリスク回避のため、第 2 工区では特定建築者制度を活用して複合施設を
建設している。
⑥ リバーウォーク北九州(室町一丁目地区第一種市街地再開発事業)
− 河川整備等の公共事業と一体となった市街地再開発事業
国交省のマイタウン・マイリバー整備事業と連携して事業を進め、河川を活用し
た熱源システム、自然換気システムなどの設備を導入している。また、都市計画事
業により、他地区で移転が必要となった施設を本事業地内に移転し、広い範囲で効
率的、経済的な事業となっている。
⑦ アクトアモーレ(JR高槻駅北地区第一種市街地再開発事業)
−
高層住宅整備による採算性確保と業務代行方式の採用
駅前の好立地であるため、複合施設内の住宅は高層として整備することで土地の
高度利用を図り、事業の採算性を確保している。経済の停滞時期と重なり、当初予
定の商業核店舗が撤退したが、撤退時の違約金が事業再検討費用に活用されている。
また、民間事業者による業務代行方式により、保留床契約のリスク回避を行ってい
る。事業当初から、地元住民のキーマンが事業推進のリーダーとなり権利者をまと
めている。
⑧ 高松丸亀町商店街(高松丸亀商店街A∼G街区第一種市街地再開発事業)
−
定期借地権方式による、再開発の障害となる土地問題の解決
商店街の再開発の失敗事例の調査から、商店街の再開発は土地の所有権による
“土地問題”が障害となっていると判断した。土地問題解決のため、定期借地権方
式を活用した“土地の所有権と利用権の分離”により、消費者のニーズに適した商
店街に一括で再開発した。構想から、再開発まで約 20 年を要しているが、地元の
商店主がまちづくり会社(高松丸亀町まちづくり(株))を設立し事業を進めたこと
が、定期借地権方式での商店街の再開発の実現の推進力となっている。
⑨ イーラde(大手町地区第一種市街地再開発事業)
−
道路整備等の公共事業と一体となった市街地再開発事業
大手町地区第一種市街地再開発事業は、沼津駅周辺の都市基盤整備の 4 事業(①
鉄道高架化事業、②関連道路整備事業、③土地区画整理事業、④静岡東部拠点特定
− 51 −
再開発事業)と、建物整備の 2 事業(⑤市街地再開発事業(大手町地区)、⑥駅北
拠点再開発事業)の中の 1 つとして、総合的な視点で開発が実施されている。建築
物を耐火高層建築部物に更新し、駅前広場、都市計画道路の公共事業と一体となっ
て土地利用の高度化を図っている。
⑩ リオーネふるかわ(台町地区第一種市街地再開発事業)
−
地元組織を主体とした事業推進と低容積型の施設整備
地区の若手商店主により設立されたまちづくり会社「台町ティー・エム・シー㈱」
が、自ら建設したホテルを賃貸して自主財源を確保し、経済産業省の補助金等も活
用して事業費を確保している。複合施設内の商業施設の運営主体は、市と地元の地
権者による第 3 セクターの株式会社として、地元に根付いた事業推進を行っている。
また、最小限の住宅整備と店舗の併設により、低容積率の施設整備を行う身の丈開
発として、事業費を縮減している。
⑪ 徳島赤十字病院(井利ノ口地区第一種市街地再開発事業)
−
医療施設整備で市街地再開発事業と沿道整備街路事業を活用
紡績工場跡地を活用して、市街地再開発事業と沿道整備街路事業と一体となった
病院施設整備となっており、病院移転地のための跡地造成、周辺道路等は、各種公
共事業の補助金を活用して整備している。また、再開発の権利変換により、紡績工
場が地権者となった複合棟には、外来診療棟とともに、コンビニ、院外薬局が一体
で整備され、利用者が利用しやすい施設となっている。
⑫ リナシティかのや(北田大手町地区第一種市街地再開発事業)
−
事業推進組織の工夫と低容積型の施設整備、河川整備等の公共事業と一体と
なった市街地再開発事業
複合施設の整備では、特定事業参加者、特定建築者制度を活用して事業を進め、
大規模開発にはリスクが生じるため、低容積型の再開発としている。また、第三セ
クター「(株)まちづくり鹿屋」の役割として投資的事業は行わず、管理・運営の
みとしている。水辺プラザ事業、まちづくり交付金事業の公共事業と一体的に整備
し、各種補助金を活用している。地権者の合意形成は、反対者に対して個別に説明
を行うといった地道な活動で、同意を得ている。(独)都市再生機構が事業主体とな
ったことが、事業推進に繋がっている。
− 52 −
図表 2.4(1)
番号
事例
大手町連鎖
型都市再生
プロジェクト
東 京 都 千代 田
区大手町
聞取 1
銀座地区の
まちづくり計画
東 京 都 中央 区
銀座地区
聞取 2
聞取 3
聞取 4
ヒアリング調査における制度基盤・新技術の工夫
等
制度基盤・新技術の工夫 等
事業実施の制約・推進体制
(支援制度活用状況、コスト削減への取組み)
(地域住民との合意形成の方法)
・合同庁舎跡地を有効活用。
・「連鎖型都市再生」の手法を導入。
・都市再生緊急整備地域の指定。
・特定建築者制度により「特定施設建築
物」として建設を推進。
・用途地域見直し、地区計画による容積率
の緩和で民間開発の意欲促進。
・都市再生特別措置法による都市再生特
別地区の活用。
・地区計画の用途誘導によるにぎわい創
出。
・「まちづくり推進協議会」を設立し、主要
企業がリードする形で、専門家、行政に
検討を依頼し、政治的な動きも活用しな
がら、プロジェクトを推進。
・都市計画マスタープランを作成せず、ま ・中央区が、地元住民、東京都、国土交通
省と協議を重ね実現した。
ちづくりのルールとして「街並み誘導型
地区計画」、「機能更新型高度利用地区」、
「用途別容積型地区計画」を策定し、民間
施設の建て替え意欲を誘発。
・地区計画のルールを定めることで、事業
着手までの手続き期間を短縮。
・附置義務駐車施設整備要綱の策定によ
る駐車場環境の整備。
コムナーレ、 ・民間事業者の能力活用(特定建築者の公
浦和パルコ
募、特定建築者が入居者と定期建物賃貸
借契約、SPC との信託契約、建設会社へ
浦 和 駅 東口 駅
の各種業務委託)。
前 地 区 第二 種
市 街 地 再開 発 ・市街地再開発事業に国内初の開発型不
事業
動産証券化を導入し、融資を実現。
・災害時にかまどとして利用できるベン
チなどの防災機能、雨水貯留槽、壁面緑
化など環境共生にも配慮。
・第二種市街地再開発事業として用地買
収方式により実施。
・当初のキーテナント撤退により資金調
達が困難となり、開発型不動産証券化を
組み込んだ特定建築者事業ストラクチ
ャーのスキームを考案し、事業を推進。
ウインハート ・複合施設内に住宅を整備し、採算性を確
有松
保。
・分譲住宅部分の保留床を名古屋市住宅
有 松 駅 前第 一
供給公社と協定締結。
種 市 街 地再 開
・地元推進団体として再開発協議会が発
足。
・行政内の再開発に積極的な行政職員が
主体となり合意形成を推進。
発事業
岡山コンベン ・保留床処分のリスク回避のため、2 工区
ションセンター は、特定建築者制度を活用して複合施設
リットシティビル を建設。
聞取 5
岡 山 市 駅元 町
地 区 第 二種 市
街 地 再 開発 事
業
− 53 −
・公共性・緊急性が高いことから第二種市
街地再開発事業として実施。(岡山市内
7 地区のうち、第二種事業は本地区の
み。)
図表 2.4(2)
番号
聞取 6
事例
J R 高 槻駅 北
地 区 第 一種 市
街 地 再 開発 事
業
高松丸亀商
店街
聞取 8
大 手 町 地区 第
一 種 市 街地 再
開発事業
リオーネ
ふるかわ
台 町 地 区第 一
種 市 街 地再 開
発事業
聞取 10
制度基盤・新技術の工夫 等
事業実施の制約・推進体制
(支援制度活用状況、コスト削減への取組み)
(地域住民との合意形成の方法)
・複合施設内に高層住宅を整備し、採算性
を確保。
・地元名士が権利者のリーダーとなり、事
業当初から事業を推進。
・当初予定の商業核店舗が撤退したため、
別の店舗を誘致。撤退店舗は違約金を支
払っている。
・民間事業者による業務代行方式で事業
を推進。
・定期借地権方式を活用した“土地の所
有権と利用権の分離”による再開発。
・地元商店主によるまちづくり会社によ
る事業の推進。
・駅前広場、都市計画道路整備の公共事業
と一体となって土地利用の高度化を図
っている。
・建築物を耐火高層建築物に更新。
・沼津駅周辺総合整備事業(都市基盤整備
の 4 事業、建物整備の 2 事業)の 1 事業
として実施。
・まちづくり会社「台町ティー・エム・シ
ー㈱」が建設したホテルを賃貸し、商店
街活性化の自主財源を確保。
・保留床取得費で、経済産業省のリノーベ
ーション補助金を活用。
・シネコンのデジタル化にあたり、一部経
済産業省の補助を活用。
・立地特性を踏まえて最小限の住宅施設
とし、店舗を併設。低容積率の身の丈開
発により事業費を縮減。
・東日本大震災の被害に対し、日本政策金
融公庫からの融資と、震災復旧グループ
補助金を交付されている。
・若手商店主の出資による民間まちづく
り会社「台町ティー・エム・シー㈱」を設
立し、事業を計画、推進。
・市街地再開発事業は台町ティー・エム・
シー㈱と大崎市が協働で実施。
・再開発ビルの商業施設を運営する主体
は、古川市と地権者による第 3 セクター
の株式会社を設立。
高 松 丸 亀商 店
街 A ∼ G街 区
第 一 種 市街 地
再開発事業
イーラde
聞取 9
等
リバーウォーク ・国交省「マイタウン・マイリバー整備事 ・周辺の河川、公園と一体となって開発を
北九州
業」の河川改修と連携。
進めたため、周辺地区との一体感、自然
・河川水を利用した熱源システム、自然換
環境、歴史環境との調和を図って、にぎ
室 町 一 丁目 地
気システムなどの設備を導入。
わい空間を創出している。
区 第 一 種市 街
・施設建物は、小倉城など歴史ある周辺計
・複合施設内に、大学施設を導入。
地再開発事業
・業務棟に入居した朝日新聞、NHKは、 画と調和するよう、外装素材に留意して
他地区の都市計画道路整備による移転
いる。
で、地区全体にわたって効率的、経済的
に事業推進。
アクトアモーレ
聞取 7
ヒアリング調査における制度基盤・新技術の工夫
− 54 −
図表 2.4(3)
番号
事例
徳島赤十字
病院
井 利 ノ 口地 区
第 一 種 市街 地
再開発事業
聞取 11
リナシティ
かのや
聞取 12
北 田 大 手町 地
区 第 一 種市 街
地再開発事業
ヒアリング調査における制度基盤・新技術の工夫
等
制度基盤・新技術の工夫 等
事業実施の制約・推進体制
(支援制度活用状況、コスト削減への取組み)
(地域住民との合意形成の方法)
・病院の移転地として紡績工場跡地を活
用。
・「市街地再開発事業」と「沿道整備街路事
業」の一体施行により、紡績工場跡地の
病院、住宅等移転地造成を実施。
・市街地再開発事業の権利変換で複合棟
の地権者が紡績工場であったため、紡績
工場取得の保留床はコンビニ、院外薬局
となり、外来診療棟と一体で整備されて
いる。
・屋上や敷地内の緑地、水庭の配置などに
よって、自然が感じられる環境づくりを
行っている。
・都市計画道路の拡幅に必要となる用地
の沿道地権者は、代替地の取得または金
銭補償による地区外転出により合意を
得た。
・「沿道整備街路事業」により、紡績工場跡
地の一部を種地として、沿道地権者の代
替地を確保した。
・反対者に対して個別に説明を実施。
・(独)都市再生機構を事業主体とした。
・当該地域の床需要を見込み、低容積型の ・反対派の「検証する会」の構成員は高齢
者が多く、最終的に子息等を含めて説明
再開発とした。
を実施。
・特定事業参加者、特定建築者制度を活用
・土地代が良かった時期から約1/5と
して事業を推進。
なったことも、同意が得られなかった要
・第三セクター「㈱まちづくり鹿屋」は投
資的事業を行わず、管理・運営のみ実施。 因となった。
・「水辺プラザ事業」、「まちづくり交付金
事業」と一体的に整備。
− 55 −
c.リニューアルの効果
① 大手町連鎖型都市再生プロジェクト(東京都千代田区大手町)
−
地区全体の段階的、連続的な建物更新と民間開発の意欲促進
連鎖型都市再生プロジェクトにより、中枢業務を担う建物が、事業活動を中断、
停滞することなく、地区全体を段階的、連続的に更新している。また、各種の規制
緩和策により民間開発の意欲が促進され、事務所以外の用途誘導により地区のにぎ
わいも創出されている。
② 銀座地区のまちづくり計画(東京都中央区銀座地区)
−
定住促進とバランスのとれた複合市街地形成の推進
まちづくり計画による容積率緩和、隔地駐車場の許可等による規制緩和等で、従
前規模程度を確保した建物更新が可能となっている。地区への住宅誘導によって、
定住促進とバランスのとれた複合市街地形成が進んでおり、建て替え申請手続きの
効率化により短期間の建て替えが可能となり、経済動向に左右され難くなっている。
今後は、高さ制限等の街並み誘導によって、整然とした街並みづくりが進む予定と
なっている。
③ コムナーレ、浦和パルコ(浦和駅東口駅前地区第二種市街地再開発事業)
−
地区住民、駅利用者の誘導に寄与し地区のにぎわいを創出
浦和駅西口に集中していた利用者が、施設整備によって東口にも訪れるようにな
っている。複合施設には公共施設として会議室、図書館等の機能が導入されており、
東口駅前地区には会議室の提供施設がなかったことから、多くの利用者が訪れてい
る。図書館も、毎日様々な目的で訪れる利用者でにぎわっている。
④ ウインハート有松(有松駅前第一種市街地再開発事業)
−
地区住民の生活環境の改善と歴史的町並みとの連携強化
従前の密集市街地が解消され、生活環境、防災面の改善が図られている。駅と複
合施設がペデストリアンデッキで直結され、施設内自由通路が利用しやすい動線と
なっている。また、公共施設の導入により生活の利便性が向上し、交通広場整備に
より施設周辺の交通安全が向上している。近隣の旧東海道の伝統的街並みとの連携
により、地区全体の活性化が期待されている。
⑤ 岡山コンベンションセンター、リットシティビル
(岡山市駅元町地区第二種市街地再開発事業)
−
駅東口と連携した複合都心の形成による地区のにぎわい創出
岡山駅東口と複合施設がペデストリアンデッキで直結され、利用しやすい動線と
なっていることから、多くの利用者が施設に訪れている。コンベンションセンター、
− 56 −
高い稼働率で施設運営状況は良好であり、リットシティビルにも多くの来場者があ
る。都市型住宅・ホテル・商業等の都市施設及び周辺道路・ペデストリアンデッキ
等の公共施設の整備により、駅東口と連携した複合都心を形成していることから、
周辺にも民間施設が徐々に増加し、公表地価が市内で唯一値上がりしている、今後
も民間開発が期待されている。
⑥ リバーウォーク北九州(室町一丁目地区第一種市街地再開発事業)
−
来街者の増加による地区のにぎわい創出と学習機会の創出
複合施設の整備とともに河川、公園等の公共事業との一体開発によって、周辺地
区からの集客が確保され、海外観光客も訪れている。北九州芸術劇場は高い稼働率
で運営されている。大学施設を利用する芸術系学生にとっては、複合施設の近代的
な建物と小倉城の歴史的な建物が隣接するなど、良好な教育環境になっており、学
生からのまちづくりの提案もある。
⑦ アクトアモーレ(JR高槻駅北地区第一種市街地再開発事業)
−
地区全体の商店街の活性化に寄与と街なか居住の推進
JR駅前広場の整備、駅と複合施設を結ぶペデストリアンデッキの設置により、
歩行者の安全性が向上するとともに、商店街への回遊動線が強化され、地区全体で
にぎわいが増加している。複合施設内の商業核店舗は、他地域の全店舗の中でも売
上が上位となっており、他店舗と比較しても多くなっている。整備された住宅は即
日完売となり、駅周辺のマンション建設の引き金となっている。
⑧ 高松丸亀町商店街(高松丸亀商店街A∼G街区第一種市街地再開発事業)
−
商店街の来街者の増加、居住者の増加
定期借地権方式により、土地の所有権と使用権を分離しての商店街の一括の開発
で、消費者のニーズに合わせたテナント作り(テナントミックス)が可能となり、
商店街の来街者が、バブル期のピーク時(通行者も含めて約 35,000 人/日)に戻りつ
つある。テナントほか、マンション・クリニックの建設により、上質の生活環境が
整備され、商店街の居住者が増加した(開発前の 75 人から開発後約 1,100 人)。
⑨ イーラde(大手町地区第一種市街地再開発事業)
−
他事業と一体となった総合的な開発による駅周辺来外者の利便性向上
沼津駅周辺が総合的に整備されているが、本施設の整備によって沼津駅周辺来街
者の利便性が向上している。今後予定されている沼津駅周辺総合整備事業のその他
事業と連携して、更なる地区利用者の増加、商業施設の売上向上が期待され、沼津
駅の南北の回遊性を高めていく予定となっている。
− 57 −
⑩ リオーネふるかわ(台町地区第一種市街地再開発事業)
−
中心市街地の認知度向上に寄与し地区のにぎわいを創出
複合施設整備によって、地区の中心市街地としての認知度の高まりから、商店街
の利用者は増加し、複合施設の経営状況も良好となっている。施設のテナントに空
きはないが、入店を希望する店舗もある。また民間まちづくり会社が商店街活性化
のための自主事業を展開するなど、熱心に商店街の活性化に取組んでいる。
⑪ 徳島赤十字病院(井利ノ口地区第一種市街地再開発事業)
−
来院者の医療環境改善と医療施設への来院者増加
病院施設の建て替えとともに、医療施設も機能更新されたため、来院者が増加し、
病院収入も増加している。病院職員、来院者、病院関連事業者等で約 3,000 人/日
の出入があるため、今後は、周辺地区に生活・娯楽施設、飲食店、宿泊施設を整備
することで、地域の活性化に繋がる可能性がある。また、病院整備にあわせて、市
道の拡幅、市街地整備が行われたため、アクセス性、交通環境が改善され、工業跡
地の更新により地区の景観も改善されている。病院とあわせて、コンビニ、院外薬
局が一体営業しており、来院者、地域住民の利便性が向上している。
⑫ リナシティかのや(北田大手町地区第一種市街地再開発事業)
−
施設利用者の増加による地区のにぎわい創出
利用客は、全体的に増加傾向にあるが、周辺地区との連携が図れていないため、
周辺地区の商店街への回遊性強化が望まれている。なお、駐車場として通常利用さ
れている「まちなかパーク」は、イベントを開催することにより、利用者が急激に
増加している。
− 58 −
図表 2.5(1)
番号
事例
大手町連鎖
型都市再生
プロジェクト
聞取 1
東 京 都 千代 田
区大手町
銀座地区の
まちづくり計画
聞取 2
東 京 都 中央 区
銀座地区
ヒアリング調査におけるリニューアルの効果
施設の利用状況
(利便性の向上・利用の広がり)
・中枢業務を担う建物が、事業活動を中
断、停滞することなく、地区全体が段階
的、連続的に更新された。
・容積率の緩和等の規制緩和により、民間
開発の意欲が促進された。
・オフィス以外の用途を誘導することで
地区のにぎわいを創出している。
地域活性化や新事業展開といった
発展性
・連鎖型都市再生プロジェクトの手法を
用いた事業は、大手町のみとなってお
り、今後他地域でも活用することが考え
られる。
・容積率緩和、隔地駐車場の許可等による ・高さ制限等の街並み誘導により、今後整
規制緩和等で、従前規模程度を確保した
然とした街並みづくりが進んでいく。
建物更新が可能となっている。
・今後他地域の市街地更新でも、同様のま
・住宅の誘導による定住促進とバランス
ちづくり計画の考え方を活用すること
のとれた複合市街地形成が進んでいる。 が考えられる。
・建て替え申請手続きの効率化により、経
済動向に左右されない建て替えが可能
となった。
聞取 3
コムナーレ、 ・浦和駅東口側に会議室の提供施設がな
浦和パルコ
かったため、公共施設である再開発ビル
の会議室(コミュニティセンター)の利
浦 和 駅 東口 駅
用は多い。特に音楽室の利用が多くなっ
前 地 区 第二 種
ている。
市 街 地 再開 発
事業
・図書館は、毎日様々な目的で訪れる利用
者でにぎわっている。
・浦和駅西口に集中していた駅利用者の
流れが、再開発ビルの整備により、浦和
駅東口にも利用者が流れるようになっ
ている。
・開発地の近隣に旧東海道の伝統的街並
みが形成されており、当該地区との連携
により地域の活性化が期待されている。
聞取 4
ウインハート ・駅と直結するペデストリアンデッキか
有松
ら建物内自由通路へ地域の人たちが利
用しやすい動線となった。
有 松 駅 前第 一
地元の利便性が
種 市 街 地再 開 ・公共施設の導入により、
向上。交通広場の整備により交通安全が
発事業
向上。
・密集市街地の解消による生活環境、防災
面の改善。
聞取 5
岡山コンベン ・岡山駅東側とペデストリアンデッキで ・都市型住宅・ホテル・商業等の都市施設
及び周辺道路・ペデストリアンデッキ等
ションセンター 直結され、利用者は多い。
の公共施設の整備により、駅東口と連携
リットシティビル ・コンベンションセンターで 150∼200 件
した複合都心を形成している。
/月の催事を開催。ホール、会議室は約
岡 山 市 駅元 町
70%の稼働率。会議利用が全体の約 80%、 ・周辺に民間施設が徐々に建設され、飲食
地 区 第 二種 市
店、ホテル、マンションが増えている。
そのうち医学関係利用が 1/4。コンベン
街 地 再 開発 事
業
ションセンターは第三セクターが独立 ・駅元町地区は、公表地価が市内で唯一値
採算方式で運営し、利益を上げている。 上がりしており、今後も民間開発が期待
されている。
・リットシティビル来場者は、H18.8 月
∼H19.8 月で約 127 万人/年。
− 59 −
図表 2.5(2)
番号
聞取 6
事例
施設の利用状況
(利便性の向上・利用の広がり)
地域活性化や新事業展開といった
発展性
リバーウォーク ・リバーウォーク周辺の一体開発により、 ・芸術系学生の最適な実地学習の場とな
北九州
周辺地区からの集客を確保。海外観光客
っており、学生からのまちづくり提案も
も訪れている。
ある。
室 町 一 丁目 地
区 第 一 種市 街 ・北九州芸術劇場は、高い稼働率で運営さ ・多様な年齢層が来街するよう、適宜テナ
れている。
ントの入れ替えを行っている。
地再開発事業
・街なか居住の進展で、周辺地域のマンシ
ョンに 30∼40 代の家族層が増加し、今
後の集客対象として期待。
アクトアモーレ
聞取 7
聞取リング調査におけるリニューアルの効果
J R 高 槻駅 北
地 区 第 一種 市
街 地 再 開発 事
業
・駅前広場、ペデストリアンデッキの設置
により歩行者の安全性が向上。
・施設と商店街とが回遊動線となってお
り、地区全体でにぎわいが増加。
・商業核店舗は、他地域の全店舗の中でも
売上が上位となっている。
・住宅は即日完売し、その後の駅周辺マン
ション建設の引き金となっている。
高松丸亀商
店街
聞取 8
・消費者のニーズに合わせたテナント作 ・人の住む商店街の発展をはかるため、
り(テナントミックス)により、商店街
生鮮市場、温浴施設、保育園、高齢者福
祉施設、防災拠点を整備していく計画で
の来街者がバブル期のピーク時に戻り
高 松 丸 亀商 店
つつある。
ある。
街 A ∼ G街 区
・マンション・クリニックの建設により、
第 一 種 市街 地
再開発事業
上質の生活環境が整備され、商店街の居
住者が増加した。
イーラde
聞取 9
大 手 町 地区 第
一 種 市 街地 再
開発事業
リオーネ
ふるかわ
台 町 地 区第 一
聞取 10 種 市 街 地再 開
発事業
・沼津駅周辺の来街者の利便性が向上し
た。
・沼津駅周辺総合整備事業により、以下の
成果を想定している。
(想定成果)
・鉄道高架化事業による交通円滑化によ
り、利用者の増加、商業施設の売上増加。
南北の回遊性向上。
・東海地震、東南海、南海地震の三連動地
震に対する防災機能の向上。
・利用者は約 10 万人/月で利用者は増加。 ・テナントに空きはないが、大手デパート
(従前は約 5.1 万人/月)
の系列店の入居希望もある。
・古川地区の中心市街地として認知され ・台町ティー・エム・シー㈱が中心となり、
商店街活性化のための原資を生み出す
利用者が増加。
・当初約 4,000 万円の営業赤字から、直近
自主事業を展開している。
(ホテル、住
宅の賃貸)
の平成 26 年 3 月期は、2,800 万円の営
業黒字を達成。
− 60 −
図表 2.5(3)
番号
事例
徳島赤十字
病院
井 利 ノ 口地 区
第 一 種 市街 地
再開発事業
聞取 11
リナシティ
かのや
聞取 12
北 田 大 手町 地
区 第 一 種市 街
地再開発事業
ヒアリング調査におけるリニューアルの効果
施設の利用状況
(利便性の向上・利用の広がり)
地域活性化や新事業展開といった
発展性
・医療設備の更新により来院者が増加し、 ・多くの職員が勤務し、多くの利用者があ
る総合病院であるため、生活・娯楽施設、
病院収入も増加。
飲食店、宿泊施設の整備など周辺地域の
・病院職員、来院者、病院関連業者等で約
活性化に繋がる可能性がある。
3,000 人/日の出入があり、市街地への
集客は増加。
・市道拡幅、市街地整備により病院へのア
クセス性、交通環境が改善。
・工場跡地に新築建物が整備されること
で、周辺景観が改善。
・病院、コンビニ、院外薬局の一体営業で、
来院者、住民の利便性が向上。
・利用客は、全体的に増加傾向。
・まちなかパークは、イベントの開催によ
り利用者が急激に増加している。
− 61 −
・再開発ビルの集客性を活用して、周辺地
区の商店街への回遊性を強化。
d.リニューアル実施後の懸案事項
① 大手町連鎖型都市再生プロジェクト(東京都千代田区大手町)
−
連鎖型都市再生手法の他地域への参考事例としての展開
地区全体を段階的、連続的に更新している連鎖型都市再生の手法が、低未利用地
を有する他地域の参考事例として、展開してくことが期待される。
② 銀座地区のまちづくり計画(東京都中央区銀座地区)
−
まちづくり計画による規制緩和策の立地域への参考事例としての展開
まちづくり計画で実現した各種規制緩和の取り組みが、地区全体の円滑なリニュ
ーアルが必要となっている他地域の参考事例として、展開していくことが期待され
る。
③ コムナーレ、浦和パルコ(浦和駅東口駅前地区第二種市街地再開発事業)
−
商業核店舗の継続的な事業運営
当初の商業核店舗が民事再生法申請により撤退したことから、現在の商業棟は定
期建物賃貸借契約となっており、契約企業が継続的に事業運営できる環境が必要で
ある。
④ ウインハート有松(有松駅前第一種市街地再開発事業)
−
周辺交通環境の改善とキーテナントの継続的な事業運営
複合施設、都市計画道路、交通広場等が整備されたが、鉄道立体化が実現してい
ないため、従前からの地区課題である鉄道踏切による渋滞が解消されてない。また、
複合施設の利用客はそれ程多くなく、近隣の旧東海道の歴史的町並みと連携を図っ
ていく必要がある。なお、整備当初から複合施設内の住宅棟1階のテナントには入
居者がなく、商業棟の企業は現在賃貸契約となっている。
⑤ 岡山コンベンションセンター、リットシティビル
(岡山市駅元町地区第二種市街地再開発事業)
−
多様な施設とその関係者の円滑な運営
再開発ビルが多様な機能を有する複合施設となっていることから、複数地権者の
意思決定に時間を要していることや、異なる用途で稼動している施設の運営管理が
円滑にできる体制整備が必要となっている。
⑥ リバーウォーク北九州(室町一丁目地区第一種市街地再開発事業)
−
多様な年齢層の集客確保
大学施設を併設しているため大学生の利用は多いが、消費金額が高い傾向にある
中高年層の利用は少なくなっており、多様な年齢層の集客が必要となっている。近
− 62 −
年、周辺地区にマンション建設が進んでおり、ファミリー層などの新規顧客を集客
対象としていくことが必要となっている。
⑦ アクトアモーレ(JR高槻駅北地区第一種市街地再開発事業)
−
複合施設内への居住機能の導入の是非
JR高槻駅北地区は、複合施設整備によりにぎわいを増しているが、施設内には
居住機能も導入されており、居住機能整備に対する補助金投入について議論がある。
⑧ 高松丸亀町商店街(高松丸亀商店街A∼G街区第一種市街地再開発事業)
−
消費者のニーズにあった商店街の運営の継続
商店街の運営は、まちづくり会社が、マネージャーを大手流通メーカから雇用し、
地元出身の従業員とともに行っている。来街者数等、運営のノルマ達成のため、緊
張感をもって運営にあたるよう、相応の処遇はするが、契約は 1 年更新としている。
消費者のニーズに合う商店街の運営を継続することが必要である。
⑨ イーラde(大手町地区第一種市街地再開発事業)
−
施設の健全な事業運営継続と地区課題への対応
複合施設は、当初市出資の「沼津まちづくり会社」が運営していたが、開業後の赤
字経営から、民間の社長招聘により経営改善を図ることで良好な経営を達成してい
るが、今後も継続していくことが必要となっている。また、地区課題としてあげら
れている自転車利用空間整備が試験的に実施されており、今後は本格運用に移行し
ていくことや、整備地区に街路樹が少ないといった意見もあることから、こうした
地域ニーズに対応していく必要がある。
⑩ リオーネふるかわ(台町地区第一種市街地再開発事業)
−
行政課題に沿った公共施設の導入と施設の売上維持・向上
民間の個人施行であることから、整備当初は公共機能が導入されなかったが、整
備後に公共施設として子育て支援施設を導入したことが、施設の信頼度向上に繋が
り、民間業者の入居が進んでいる。公共施設導入が施設全体のメリットとなってお
り、行政課題に沿った施設機能の導入を検討していくことも必要と考えられている。
また、運営会社の経営は良好な状態であるが、役員は無報酬となっており、継続的
に良好な経営を持続・向上させていくことが必要となっている。
⑪ 徳島赤十字病院(井利ノ口地区第一種市街地再開発事業)
−
病院を核とした周辺のまちづくり計画の立案
病院移転により施設が更新され、病院に勤務、来院する人は多くなっているが、
病院周辺には、生活・娯楽・飲食・宿泊施設が不足しており、消費が徳島市に流出
しているという意見がある。今後は総合病院を核としたまちづくりにより、地域活
− 63 −
性化を図っていくことが必要となっている。
⑫ リナシティかのや(北田大手町地区第一種市街地再開発事業)
−
周辺地区の商店街との回遊性強化と施設の維持管理
複合施設には人が集まっているが、周辺地区の商店街に人の流れが形成されてお
らず、周辺地区への回遊性強化が必要となっている。また、公共施設が導入されて
いる複合施設は、維持管理費が約 3 億円/年となっている。公共施設保有者の鹿屋
市は、施設の修繕積立が行われていないことや、担当課が複数で調整が難しいこと
などが課題となっている。
− 64 −
図表 2.6(1)
番号
聞取 1
ヒアリング調査におけるリニューアル実施後の懸案事項
事例
大手町連鎖型都市再生
プロジェクト
リニューアル実施後の懸念事項
・大手町連鎖型都市再生プロジェクトの他地域への展開が期待さ
れる。
東京都千代田区大手町
銀座地区のまちづくり計画
聞取 2
・銀座地区のまちづくり計画の他地域への展開が期待される。
東京都中央区銀座地区
・当初のキーテナントが民事再生法申請により撤退したため、現在
は商業棟の所有権を銀行が取得し、企業と定期建物賃貸借契約を
浦和駅東口駅前地区
行っている。
第二種市街地再開発事業
ウインハート有松
・有松駅前後の鉄道立体化が実現していないため踏切が解消され
ておらず、地区の課題である渋滞解消には至っていない。
有松駅前
・有松駅前再開発ビル利用客は、それほど多くない。
第一種市街地再開発事業
・商業棟は賃貸契約となっている。また、整備当初から、住宅棟1
階部分のテナントに、入居者が入っていない。
岡山コンベンションセンター ・再開発ビルで地権者が 8 者となっており、意思決定に時間を要し
ている。
リットシティビル
・365 日、24 時間で異なる用途で稼動しており、対応の多様性が必
岡山市駅元町地区
要となっている。
第二種市街地再開発事業
リバーウォーク北九州
・大学施設を設置しているため、大学生の利用は多いが、消費金額
は中高年層に比較すると低いため、多様な年齢層の集客が必要で
室町一丁目地区
ある。
第一種市街地再開発事業
・周辺地域にマンションが増加しており、集客の対象として考えて
いく必要がある。
アクトアモーレ
・複合施設内に居住機能を設ける際の補助金投入について議論が
ある。
JR高槻駅北地区
コムナーレ、浦和パルコ
聞取 3
聞取 4
聞取 5
聞取 6
聞取 7
第一種市街地再開発事業
高松丸亀商店街
聞取 8
高松丸亀商店街A∼G街区
第一種市街地再開発事業
イーラde
大手町地区
第一種市街地再開発事業
聞取 9
・商店街の運営を行うまちづくり会社が、消費者のニーズに合う
商店街の運営を継続することが必要である。
・再開発ビルは、市出資の「沼津まちづくり会社」が運営していた
が、開業後赤字が継続したため、民間の社長招聘により経営改善
を図り、現時点では単年度黒字化を達成しており、継続する必要
がある。
・沼津駅周辺は自転車利用者が多く、自転車走行空間の整備を試験
的に行っている。
・街並み更新地区において、街路樹が少ないとの指摘があり、検討
を続けている。
− 65 −
図表 2.6(2)
番号
事例
リオーネふるかわ
台町地区
第一種市街地再開発事業
聞取 10
徳島赤十字病院
井利ノ口地区
聞取 11 第一種市街地再開発事業
リナシティかのや
聞取 12
北田大手町地区
第一種市街地再開発事業
ヒアリング調査におけるリニューアル実施後の懸案事項
リニューアル実施後の懸念事項
・地元商店主で計画され、当初公共施設機能は無かったが、現在、
市の子育て支援センター入居による信用度向上で、民間業者の入
居が進んでいるため、今後も行政課題に沿った事業運営を継続し
ていくことが考えられる。
・運営会社は、現在概ね黒字を達成する状況になってきているが、
役員は無報酬となっており、今後の継続的な会社運営のために
は、報酬の出せる会社とすることが必要である。
・病院に勤務、来院する人は多いが、病院周辺の地区には、生活・
娯楽・飲食・宿泊施設が不足しており、消費が徳島市に流出して
いるという意見がある。
・地域活性化のため、総合病院を核としたまちづくりが必要であ
る。
・再開発ビルには人が集まっているが、周辺地区の商店街への回遊
強化には至っていない。
・施設建物の維持管理費が約3億円/年となっている。
・公共施設保有者である鹿屋市は、施設の修繕積立を行っていな
い。
・複合施設となっているため、担当課が複数で調整に課題がある。
− 66 −
2.3.視察調査
(1)視察調査箇所
「2.1.事例調査の実施(1)事例調査箇所の選定」で示したとおり、視察調査
は合計 5 か所とし、図表 2.7 に示すとおり 9 月 10 日(水)~12 日(金)の行程で実施し
た。
図表 2.7
視察調査スケジュール
NO
月日
時間
視察先
1
9 月 10 日(水)
10:00~11:30
京都御池中学校
京都市中京区柳馬場通御池上ル
虎石町 45-3
2
9 月 10 日(水)
15:00~16:30
金沢市民芸術村
石川県金沢市大和町 1-1
3
9 月 11 日(木)
9:30~11:50
近江町いちば館
石川県金沢市青草町 88
4
9 月 11 日(木)
14:00~16:00
グランドプラザ
富山市総曲輪(ソウガワ)3-3-16
5
9 月 12 日(金)
9:30~11:50
アオーレ長岡
長岡市大手町1丁目 4 番地 10
図表 2.8
住所
視察調査先位置図
新潟県
グランドプラザ
金沢市民芸術村
近江町いちば館
アオーレ長岡
富山県
石川県
京都御池中学校
京都府
- 67 -
(2)視察調査結果の整理
視察調査における調査結果を基に、都市施設の面的なリニューアル対応において認
識された課題やその対応の実施内容、効果などについて整理・分析する。なお、視察
調査結果の詳細は、「別冊−3
視察調査」に添付する。
a.リニューアルの概要
① 京都御池中学校
−
時流に沿った地域要望に応えた複合施設
京都市が事業主体で実施した施設で、少子化・高齢化の時流に沿って、地域の要
望に応えた複合施設整備となっている。学校施設の統合だけでなく、老人デイサー
ビスセンターを導入による機能転換を図ることで若年者と高齢者の交流に寄与し、
通りに面してレストラン等の導入でにぎわいを創出することで、旧御池中学校の機
能向上・転換が行われている。施設は、耐震化、最新技術を導入した環境負荷低減
施設導入等で機能向上が図られている。
② 金沢市民芸術村
−
歴史的建造物を機能転換し保存・再生した施設
金沢市が事業主体で実施した施設で、歴史的建造物の保存・再生により金沢市民
が活用できる文化施設整備となっている。老朽化した旧紡績工場の施設を耐震化し、
市民が活用するための音楽、演劇等のためのスタジオ(工房)、市民が交流するた
めのオープンスペース、芝生広場など、従来機能を転換した施設整備となっている。
③ 近江町いちば館(金沢市)
−
地区の歴史を継承する複合施設
武蔵ケ辻第四地区第一種市街地再開発組合が事業主体で実施した施設で、密集老
朽木造建築物の建て替えと、歴史的建造物の活用により、市場を再生した複合施設
整備となっている。施設は昭和 40 年代から続く市場の雰囲気を継承しつつ、交流
プラザ等の公共施設の導入によって機能向上・転換を図っている。また、道路拡幅
により移設が必要となった歴史的建造物は、曳家と耐震化により保存・活用されて
いる。
④ グランドプラザ(富山市) −
機能転換で地区のにぎわいを創出する広場施設
富山市が事業主体で実施した施設で、市街地再開発にあわせて市道、民間施設空
地を統合して整備した多目的広場整備となっている。老朽化建築物が密集する地区
を、グランドプラザと併設する大規模商業施設、立体駐車場で再整備し、耐震化、
にぎわい創出等に対応している。
⑤ アオーレ長岡(長岡市)
−
地域の交流の場として再生した複合施設
長岡市が事業主体で実施した施設で、旧市役所、旧厚生会館の機能を中心とした
複合施設として、駅前の旧厚生会館の跡地に建設された。老朽化した市役所、厚生
会館の建て替えを図り、屋根付き広場、コンビニ・カフェ、市民協働センター等の
− 68 −
機能を追加することで、市民が気軽に立ち寄りやすい施設に機能転換している。
図表 2.9(1)
番号
事例
京都御池
中学校
視察調査におけるリニューアル概要
事業主体
京都市
理由・目的
(理由)
・京都御池中学校を核とした複
・PTAからの少子化に伴う小
中学校統合要望
視察 1
リニューアルの内容
合施設整備
(「乳幼児保育所」「老人デイサ
・市内 3 中学校の統合
ービスセンター」「オフィスス
(目的)
ペース」「にぎわい施設(レスト
・敷地の有効活用
ラン等)」「拠点備蓄倉庫」「自治
・次代の教育に対応可能な高機
会・消防分団施設」「観光トイ
能な学校整備
・地域ニーズの高い公共施設導
レ」)
・施設耐震化、環境負荷低減施設
の導入
入
・前面道路(御池通)のにぎわい
(屋上緑化、井戸水・雨水活用、
再生資材、太陽光・風力発電設
の創出
備、燃料電池)
金沢市民
芸術村
金沢市
(理由)
・紡績工場施設の再生と敷地の
・紡績工場の閉鎖
(目的)
(「工房(マルチ、ドラマ、ミュ
・歴史的建造物(レンガ造)と敷
地の有効活用
視察 2
活用
ージック、アート)」「オープン
スペース」「レストラン」「市民
の交流施設」「芸術活動の練習
室」「芝生広場(防災拠点)」「職
人大学校」
・紡績工場施設の外周壁の耐震
補強、遮音対策
近江町
いちば館
視察 3
武蔵ケ辻第四
地区第一種市
街地再開発組
合
(理由)
・民間と公共の複合施設(「市
・老朽木造建物の密集による都
市機能更新の停滞
場」、「商店」、「飲食店」、「交流
プラザ(ちびっこ広場・食育広
・防災面の懸念、来客数の減少
場・まなびぃ広場・市民サービ
(目的)
スコーナー)」、「事務所」、「駐
・市場の街路構成の維持
車場」)
・市場の雰囲気の継承
・親しみのある風景の保存
・市民の台所機能を残しつつ新
たな機能の付加
− 69 −
・歴史的建造物の保存・活用(「銀
行」、「飲食店」)
・国道拡幅、バス停整備
図表 2.9(2)
番号
事例
グランド
視察調査におけるリニューアル概要
事業主体
富山市
プラザ
理由・目的
(理由)
・全天候型多目的広場(グランド
・郊外化に伴う大型店の撤退
視察 4
リニューアルの内容
(目的)
プラザ)
・併設して、大規模商業施設(F
・中心市街地のにぎわい再生
ERIO)、立体駐車場(CU
BY)を一体的に整備
アオーレ
長岡
長岡市
(理由)
・商業に過度に頼らないまちづ
・老朽化(耐震強度不足)した市
役所の建て替え
・老朽化した厚生会館の建て替
庁舎
(「市役所(総合窓口)」、「屋
根付き広場」、「アリーナ」、「議
え
視察 5
くりを念頭に置いた複合型市
(目的)
場」、「市民交流ホール」、「市民
・市民により便利な市役所
協働センター」、「コンビニ・カ
・市民に開かれた交流拠点
フェ」、「福祉カフェ」、「シアタ
・次世代に誇れる市役所
ー」、「スカイデッキ」)
・環境配慮施設
(「屋上緑化」、「中水循環型融
雪システム」、「長岡産天然ガス
によるコージェネレーショ
ン」、「太陽光発電・環気システ
ム」、「省 CO2 情報の発信」
− 70 −
b.リニューアルにあたって工夫、苦労した点
① 京都御池中学校
−
PFI手法の導入と継続的な事業説明
PFI手法を導入することで、財政負担が 29.8%軽減されている。また、PFI
事業者がレストラン等の店舗と委託契約しており、施設内で地域のにぎわいを創出
する収益事業も実施されている。
学校統合の合意形成には 30 年の時間を要しているが、PTAに対する継続的な
説明により理解が得られ、最終的にはPTAから統合の要望が出て施設内容を議論
することができている。この熱心な取組みは、当時市長が教育長経験者だったこと
も事業推進に寄与しているものと考えられる。
② 金沢市民芸術村
−
利用しやすい施設と市民による施設運営
旧施設の再生にあたって、再生用途毎に施設に適した耐震補強が施されている。
また、施設の運営は年中無休・24 時間営業で、利用料金も低価格であることから、
市民から活用される施設となっている。
旧施設は解体予定であったが、解体直前に視察に訪れた市長の直感的な判断によ
り、保存されることとなった。再生施設の内容は、演劇関係等の関係者と相談しな
がら整備されており、整備後はディレクターとして採用された市民が各種企画を担
当することで、継続的に施設の活性化が図られている。
③ 近江町いちば館(金沢市)
−
地区の歴史の継承と権利者の要望対応
施設建築敷地を一筆共有地とし、従来の権利者の地上権を設定し、元々の市場の
雰囲気を残し、また近代歴史を引き継ぐため歴史的建造物は曳家し、地区全体での
歴史継承に成功している。
権利者も多いため、合意形成には時間を要しており、景気の波の影響も受けてい
る。営業補償の代替として、プレハブ仮設店舗の設置により、権利者の営業要望に
対応している。事業推進にあたっては、意思決定と執行組織を別々に組織し、施設
完成後は維持管理組織を設立している。
④ グランドプラザ(富山市) − 市民が利用しやすい制度と市長のリーダーシップ
市道の指定を解除することで、市民が自由に利用しやすい公共空間となっている。
広場の利用は条例を制定することで管理・運営され、市民が平等に活用できるもの
となっている。
富山市長のリーダーシップが強く、まちなかのにぎわいエリアの創出といった、
富山市のコンパクトシティ政策の一環で事業が推進されている。
− 71 −
⑤ アオーレ長岡(長岡市)
−
市民が集まる施設整備と市民による議論
環境配慮施設など、最新の技術を積極的に導入した施設となっている。市役所内
に「コンビニ・カフェ」を設置し、市民がくつろぎ交流しやすい施設も導入している。
再開発の検討は、約 20 年前から実施されており、市役所移転の反対意見も多か
ったが、市民委員会の中で市庁舎移転が議論され、新しい市役所プランも策定され
た。
図表 2.10(1)
番号
事例
視察調査における制度基盤・新技術の工夫
等
制度基盤・新技術の工夫 等
事業実施の制約・推進体制
(支援制度活用状況、コスト削減への取組み)
(地域住民との合意形成の方法)
13
京都御池
中学校
・PFI手法の導入によりVFM 29.8% ・合意形成に 30 年近い時間を要し、少子
化による学校運営のメリット、デメリッ
を達成。
・PFI事業によりレストラン、宝石店、 トをPTAに説明。
・平成に入り理解が高まる中、地元設立の
ベーカリーの収益事業を実施。
「新中学校設立推進委員会」で施設内容
を議論。
・建設当時の市長が 2 代続いて教育長経
験者であったことも事業推進に寄与。
金沢市民
芸術村
・施設外周壁の耐震補強を 6 棟の用途毎
に異なる方法で施工。
・年中無休・24 時間営業、低料金の施設
利用費。
・芝生の広場、憩いの広場は、災害時の避
難場所でもあり、ヘリポートを設置。
・施設解体直前に金沢市長が保存を直感
的に判断した。その後、倉庫再利用につ
いて演劇関係、各分野の関係者に相談し
整備された。
・(公財)金沢芸術創造財団が運営。村長
の元、各種企画を立案運営するディレク
ターが市民に委嘱される。
近江町
いちば館
・施設建築敷地は一筆共有宅地として地
上権を設定
・歴史的建造物を曳家し、再生・活用。
・合意形成には昭和 56 年から平成 14 年ま
でかかっており、景気の波にも影響を受
ける。
・事業費削減のため営業補償ができなか
ったことにより、権利者の営業要望でプ
レハブ仮設店舗を設置し営業。
・意思決定組織「武蔵ケ辻第四地区市街地
再開発組合」で具体的意見交換及び情報
交換の場とし、執行組織は「青草辻開発
㈱」として組合との両輪で事業を推進。
・施設の維持管理組織として、「近江町い
ちば館管理組合」を設立。
視察 1
視察 2
視察 3
13
VFM(Value for Money)とは、PFI事業における事業の選定等に使用される考え方で、
単純に価格だけではなく、利便性の向上などの定性的側面からの評価も含んだ上で、一定
の支払額に対して、どの程度の価値あるサービスが提供できるかという考え方のこと。
− 72 −
図表 2.10(2)
番号
視察調査における制度基盤・新技術の工夫
等
制度基盤・新技術の工夫 等
事業実施の制約・推進体制
(支援制度活用状況、コスト削減への取組み)
(地域住民との合意形成の方法)
グランド
・3 本の市道集約と再開発事業によるセ
・富山市長がリーダーシップを発揮し、富
プラザ
ットバックにより、まとまった広場の創
山市のコンパクトシティ政策を推進し
出(21m×65m)。
ているが、グランドプラザもコンパクト
事例
・市道の道路指定を解除し、なるべく自由
る。
に使用できる広場とした。
・セットバック部分は、富山市が無償で借
・施設開設当初は、社会実験として位置づ
け富山市が運営。平成 23 年 4 月から(株)
り受けている。
視察 4
シティ政策の一環として実施されてい
・市民の交流を促進し、広場のにぎわいを
まちづくりとやま(指定管理者)が運営。
高めるためにグランドプラザ管理・運営
・「富山市まちなかにぎわい広場条例」に
のための「富山市まちなかにぎわい広場
より、ルールに則した市民活用を促して
条例」を制定。
いる。
・グランドプラザのガラス屋根は、隣接す
る大規模商業施設(FERIO)と一体
構造で建設。
アオーレ
・環境配慮施設として、「屋上緑化」、「中
・市役所移転に対する市民の反対の声が
長岡
水循環型融雪システム」、「長岡産天然ガ
大きく、公園廃止による隣接地権者との
スによるコージェネレーション」、「太陽
調整に時間を要した。
光発電・環気システム」、「省 CO2 情報の
・約 20 年前から再開発を検討してきた地
区で、再開発自体の反対はなかったが、
発信」を設置。
・市役所内に「コンビニ・カフェ」を設置。
視察 5
当初は大型商業施設誘致の計画であっ
たため、事業性確保が課題となった。
・新潟県中越地震以後、市庁舎移転につい
て市民意見聴取。
・「行政機能再配置検討市民委員会」で市
庁舎移転を議論。
・「長岡市新しい市役所市民委員会」で新
しい市役所プランを策定。
− 73 −
c.リニューアルの効果
① 京都御池中学校
−
教育機能の多様化と周辺地区のにぎわい創出に寄与
生徒数は、当初より増加しており、通りに面した店舗によって御池通のにぎわい
にも繋がっている。施設内には多様な施設が導入されていることから、学校教育の
一環として、学生の職場体験、実習体験にも繋がっている。また、警備体制も強化
されていることから、安全な学校教育環境にもなっている。
② 金沢市民芸術村
−
市民の芸術、文化意識の高揚と歴史の継承に寄与
施設は高い稼働率を維持しており、特に夜間から深夜の稼働率が高くなっている。
市民が芸術に触れ合う場として活用されるとともに、レンガ造工場建築群の歴史を
市民が学ぶこともできている。芸術、文化の種類は時代とともに変化しており、施
設の継続的な発展につながっている。また、芝生広場は災害時の防災拠点にもなっ
ており、地区の安全性にも寄与している。
③ 近江町いちば館(金沢市)
−
来街者の増加と市場の歴史の継承
施設整備後、来街者は増加しており、市場利用だけでなく交流プラザの利用を目
的とする利用者も増加している。施設前の歩道、バス停整備により交通利便性の向
上や、駐車場設置によるマイカー利用の利便性も向上している。
金沢市の都心軸の一部として再開発されているが、地区の従来からの伝統継承と
新たな機能の付加が成功している。
④ グランドプラザ(富山市)
−
まちなかのにぎわい創出に寄与
土日を中心として高い稼働率となっており、殆どの日にイベントが開催されるな
ど、まちなかのにぎわい創出に寄与している。イベント開催により市民と企業のマ
ッチング事業にも発展しており、また広場周辺の来街者が増加していることから、
店舗改装など商店街の活性化にもつながっている。また、公共投資が民間事業者の
活動意欲向上にもなっており、分譲マンションの建設も活発に行われるようになっ
ている。
⑤ アオーレ長岡(長岡市)
−
市民の交流の場として機能
開設後、様々なイベントも開催されていることから、施設に訪れた人は 2 年間で
274 万人となっており、移転した市民協働センターの利用者も急増している。施設
内には、24 時間自由に通行できる大手スカイデッキもあり、長岡駅にも直結して
いることから施設周辺の通行者数も増加している。長岡駅に近接し、市民の交流の
場にもなっていることから、アオーレ長岡が新たな長岡市の「顔」として定着してき
ている。
− 74 −
図表 2.11
番号
視察 1
事例
施設の利用状況
(利便性の向上・利用の広がり)
地域活性化や新事業展開といった
発展性
京都御池
中学校
・小中学校統合の動きにより、整備当初 ・複合施設として多様な学校教育活動の
の生徒数 446 名から現在 729 名に増加。 実現(学生の職場体験、実習体験)
・店舗設置による御池通のにぎわい創出
・警備体制強化による安全な学校教育環
境。
金沢市民
芸術村
・各施設は 365 日 24 時間開設で、60∼70%
の高い稼働率。
・ドラマ工房の夜間(18 時∼24 時)は
96.2%、深夜(0 時∼6 時)は 61.6%の稼
働率で最も高い。
・平成 25 年度の来場者約 25 万人(1 日あ
たり約 700 人)。
・市民のみならず、金沢市以外の利用も
約 24%。
・施設は利用申請が必要であるが、オー
プンスペースは自由に出入可能。
・レンガ造工場建築群を市民の記憶に残
るよう再生利用。
・市民が芸術に触れ合う場として高い稼
働率で利用されている。
・「ネールアート」「コスプレ」「コミック
アート」等新たな使用目的の要望が出
ている。
・災害時には防災拠点となる。
近江町
いちば館
・平日歩行者が 3 万人から 5 万人に増加。
・交流プラザ設置(ちびっこ広場等)に
より、市場利用者だけでなく、交流施
設利用者(若い人)の来街が増加。
・施設前のバス停整備による公共交通利
便性の向上。
・市場駐車場設置による利便性向上。
・複合施設(市場、商業、交流、駐車場
等)として多様なニーズに対応。
・従来の市場の伝統を維持しつつ新たな
機能を付加。
・国道拡幅のため、曳家による歴史的建
造物の保存・再生利用。
・都心軸(金沢港∼金沢駅∼武蔵ケ辻∼
香林坊)の一部として再開発。街なか
定住の促進。
グランド
・グランドプラザの土日の休日稼働率は
100%。平日も殆どの日にイベントが開
催されている。
・グランドプラザのイベント開催によ
り、郊外に流出していた若者、ファミ
リー層が街なかに戻ってきている。
・市民からのイベント提案と協賛したい
企業を結び付けるマッチング事業を展
開。
・来街者数の増加から、店舗の改装を行
うなど商店街で積極的な経営の動きが
見られている。
・公共投資に呼応して分譲マンション建
設など民間事業者の活動も活発となっ
ている。
視察 2
視察 3
プラザ
視察 4
アオーレ
長岡
視察 5
視察調査におけるリニューアルの効果
・開設後 2 年間で述べ 274 万人の来訪者。 ・24 時間自由に通行できる大手スカイデ
・アオーレ長岡内に移転した市民協働セ
ッキによりアオーレ長岡∼長岡駅が直
ンターの利用者が急増。
結しており、施設周辺の通行者が平日
・市民のまちづくり活動の拠点(街の駅) 1.1 倍、休日 1.5 倍に増加。
として様々なイベント実施。
・アオーレ長岡が新たな長岡市の「顔」と
して定着し、市民のたまり場となって
おり、まちに愛着を持つ市民が増えて
いる。
− 75 −
d.リニューアル実施後の課題
① 京都御池中学校
−
中学校統合化に反する地区人口の動き
少子化によって中学校を統合したが、小中学校統合の動きや周辺部のマンション
建設等によって生徒数が増加している。一方で、京都市全体をみると生徒数が減少
している地区がある。
② 金沢市民芸術村
−
施設維持のあり方と変遷する「文化・芸術」への対応
安価な施設利用料の設定のため、維持管理費の殆どが税金となっている。施設の
利用目的となる「芸術・文化」の考え方が、“コスプレ”“コミックアート”等、時
代とともに変遷することから、利用要望に対して柔軟に対応していく必要がある。
③ 近江町いちば館(金沢市)
−
市場の売上向上と街なか定住促進
近江町いちば館付近の来街者は増えているが、市場の売上は伸びていないため、
今後対策を検討する必要がある。また、公共用地の増加により公共の負担は増加し
ている。街なか再開発時には、街なか定住促進の動きも考慮する必要があり、その
際発生する駐車場問題にも対応していく必要がある。
④ グランドプラザ(富山市)
−
施設の維持管理
施設の運営等に関しては盛況であり大きな問題はないが、融雪、強化ガラス破損
対応等の大屋根の維持管理が必要である。
⑤ アオーレ長岡(長岡市)
−
施設維持管理・警備、周辺地区への市民の誘導
多様な施設であるため、複雑な施設構造となっており、今後の維持管理や警備の
煩雑さを解消する必要がある。アオーレ長岡が整備され、地域の就労者も多くなり、
周辺には飲食施設が増加している。今後は、飲食施設だけでなく商業施設が増加す
るよう対策が必要である。また、アオーレ長岡は市役所として斬新で近代的な構造
となっているが、今後類似事業に着手する場合は、事業費増大に対応する補助制度
が必要である。
− 76 −
図表 2.12
番号
視察調査におけるリニューアル実施後の課題
事例
京都御池
中学校
視察 1
リニューアル実施後の懸念事項
・小中学校統合の動きにより、小学校 6 年生が当施設で教育を受けており、整備当
初の生徒数 446 名から現在 729 名に増加。
・周辺部のマンション建設により、今後生徒数が増加することが予想される。
・一方で、他学区では生徒数が減少している地区がある。
金沢市民
芸術村
視察 2
・安価な施設利用料としているため、維持管理費の 90%(約 1.5 億円)を金沢市より
補助。
・時流により「芸術・文化」の種類も変遷しており、施設目的に沿って市民の新たな
要望を審査していく必要がある。
近江町
いちば館
・来街者の通行量は増加しているが、市場の売上は伸びていない。
・街区の一部を市道、国道(バス停)として活用したため公共用地が増加し、公共
の維持管理費が増加。
・街なか定住促進のため住宅施設整備の話もあったが、市場特有の匂いの発生、整
視察 3
備施設の種類には制約が生じた。
・街なかの再開発時には、大規模駐車場設置は困難であるため、駐車場設置のあり
方を検討する必要がある。
グランド
視察 4
プラザ
アオーレ
長岡
・グランドプラザのガラス屋根の融雪、強化ガラスが年に 1 枚程度破損しているた
め、その維持管理費が必要。
・複雑な施設構造となっているため、維持管理・警備の煩雑さを解消する必要があ
る。
・アオーレ長岡周辺の商業施設が増加しているが、多くが飲食店であり、来街者が
視察 5
さらに時間を費やせるよう、施設との結びつきを促す対策が必要。
・類似事業着手の場合、近年の労務単価、資材価格高騰のため、さらなる補助制度
の拡充が必要。
− 77 −
3.リニューアル対応事例の活用
3.1.ヒアリング調査、視察調査にみるリニューアル事例
ヒアリング調査及び視察調査を行った国内各地の 17 都市のリニューアル事例は、
目的を達成するために、それぞれの都市の規模・環境に適合した工夫を行い、成果を
あげている。
図表 3.1
1
特別区
NO
ヒアリング調査及び視察調査を行った 17 事例
都市名
事業名・計画名・施設名
大手町連鎖型都市再生プロジェクト
2
東京都中央区銀座
銀座地区のまちづくり計画
3
埼玉県さいたま市
浦和駅東口駅前地区第二種市街地再開発事業
愛知県名古屋市
有松駅前第一種市街地再開発事業
京都府京都市
京都御池中学校複合施設整備等事業
6
岡山県岡山市
岡山市駅元町地区第二種市街地再開発事業
7
福岡県北九州市
室町一丁目地区第一種市街地再開発事業
8
石川県金沢市
金沢市民芸術村
石川県金沢市
武蔵ケ辻第四地区第一種市街地再開発事業
富山県富山市
グランドプラザ整備事業
11
大阪府高槻市
JR高槻駅北地区第一種市街地再開発事業
12
香川県高松市
高松丸亀町商店街A街区第一種市街地再開発事業
新潟県長岡市
厚生会館地区市役所事務機能整備事業
静岡県沼津市
大手町地区第一種市街地再開発事業
宮城県大崎市
台町地区第一種市街地再開発事業
徳島県小松島市
井利ノ口地区第一種市街地再開発事業
鹿児島県鹿屋市
北田大手町地区第一種市街地再開発事業
指定都市
東京都千代田区大手町
4
5
10
特例市
13
中核市
9
14
16
17
その他
15
調査事例には、中国地域の多くの都市と同規模の人口 20 万人未満の都市から大都
市まで様々な都市がある。各都市とも、事業の目的を達成するため、工夫がなされて
おり、今後の中国地域の各都市のリニューアル対応のあり方の事例として活用できる
ものである。
− 78 −
等
(1)政策・課題対応リストの作成
都市施設のリニューアルは、地権者・住民の意見を聞き、合意を図りながら、計画
→施設建設→運営まで、期間を要する事業である。事業期間が長期となれば計画した
施設は機能が陳腐化し、目的とした機能を満たすことができない。
そのため、施設の整備は、事業の規模・事業の目的を明確にした上で、効率的・効
果的に進めることが重要となる。
調査した 17 都市の事業化の手法は、各事業の目的を達成するために適用した手法
を“工夫”とし、図表 3.2 に示すとおり目的と工夫を対応させた“政策・課題対応リ
スト”として整理した。
ここで、図表 3.2 の事例 No.に示す“聞取 1∼12”の詳細は『別冊−2 ヒアリン
グ調査』に、
“視察 1∼5”の詳細は『別冊−3
視察調査』に記載している。
また、整理の方法の詳細は、次小節(2)政策・課題対応リストの構成にまとめる。
− 79 −
図表 3.2
地方自治法に基づく
地方公共団体の区分
ト
有
松
p169
p211
p215
p222
p175
p182
p230
p187
p190
p195
p200
リ岡
山
ト コ
シン
テベ
ン
ビシ
ル
ン
セ
ン
タ
リ
バ
金
沢
市
民
芸
術
村
近
江
町
い
ち
ば
館
グ
ラ
ン
ド
プ
ラ
ザ
ア
ク
ト
ア
モ
高
松
市
丸
亀
商
店
街
ア
オ
イ
リ
オ
徳
島
赤
十
字
病
院
リ
ナ
シ
テ
ウ
ク
北
九
州
レ
レ
長
岡
ラ
d
e
ネ
ふ
る
か
わ
ィ
事業主体
浦
和
パ
ル
コ
p162
京
都
御
池
中
学
校
か
の
や
ー
都市名
ー
注)赤字は主目的
事業の目的※1
ク
ト
、
公
商
業
居
住
防
都
拠
医
p207
ー
ウ
イ
ン
ハ
ー
p157
コ
ム
ナ
ー
p153
銀
座
地
区
の
ま
ち
づ
く
り
計
画
ー
p148
大
手
都町
市連
再鎖
生型
プ
ロ
ジ
レ
聞取9 聞取10 聞取11 聞取12
ョ
p138
その他
聞取7 聞取8 視察5
ォー
別冊ページ数
特例市
聞取5 聞取6 視察2 視察3 視察4
ー
視察1
ィ
聞取4
ッ
聞取3
ー
聞取2
事
業
名
・
計
画
名
・
施
設
名
調査事例
中核市
指定都市
聞取1
ェ
:
:
:
:
:
:
:
:
:
特別区
事例No.
政策課題と工夫
※1事業の目的
公共施設の整備
商業の活性化
業務機能の集積
居住環境の改善
住宅の供給
防災機能の強化
都市機能の向上
拠点機能の強化
医療機能の整備
政策・課題対応リスト
公商防 公商防 公商居 公商居 公商防
商業防 公商業 公商居 公商居 公商防 公商業 公商防
公商防
公防都
都
都
住防 住防都
都
拠
居住防拠 住防
防
都
居住防
都
商住
医
公商
東京都
千代田区
大手町
小松島
北九州
中央区 さいたま 名古屋
鹿屋市
金沢市 金沢市 富山市 高槻市 高松市 長岡市 沼津市 大崎市
京都市 岡山市
市
市
銀座
市
市
−
−
埼玉県 愛知県 京都府 岡山県 福岡県 石川県 石川県 富山県 大阪府 香川県 新潟県 静岡県 宮城県 徳島県
鹿児島
県
東京都
組合
公共
人口(千人)
47
高齢化率(%)
19.1
16.3
19.1
20.8
○
○
○
○
公共
123 1,222 2,264 1,474
公共
組合
公共
組合
公共
組合
組合
公共
公共
個人
組合
組合
710
977
462
462
422
357
419
283
202
135
41
105
22.4
21.3
24.8
20.8
20.8
24.4
23.2
22.4
25.4
24.8
24.4
26.8
24.8
○
○
○
○
○
○
○
a.施設機能の複合化の工夫
①商業機能の導入
機
能
向
上
・
転
換
②庁舎機能の導入
、
(1)
1
事
業
戦
略
性
の
視
点
高
度
利
用
③文化・交流機能の導入
○
○
④教育機能の導入
⑤医療、福祉、子育て支援機能の導入
⑥住宅機能の導入
⑦業務機能の導入
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
b.アクセスの快適性向上の工夫
①交通ターミナル機能の快適性向上(交通広場、バス停)
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
②歩行空間の快適向上(ペデストリアンデッキ)
○
○
○
○
○
c.広域の視点による機能確保の工夫
①広域利用者を意識した施設機能の導入
(2)
拠
点
性
向
上
○
○
②施設への広域アクセス手段の確保
○
(3)
ッ
ス既
ト存
活
用ク
(1)
手
法
工の
夫
(2)
体
制
確の
立
(3)
制
度
の
活
用
①道路関連施設との一体整備
○
②鉄道関連施設との一体整備
事
業
側費
面の
(2)
事
の業
側期
面間
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
e.地域資源の活用の工夫
①地域主体による地域資源の活用(イベント開催等の場づくり)
②河川・公園・歴史的建造物等の活用
③未利用地の活用
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
a.事業推進の円滑化の工夫
①連鎖型都市開発
②関連施設との一体整備
○
○
③建替え申請手続きの効率化
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
b.組織の整備の工夫
①自治体首長・事業者のリーダーシップの発揮
②官民の連携
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
③まちづくり会社の設立
○
○
○
○
c.民間活力の活用の工夫
①民間事業者の参画制度の活用
②用途の誘導に向けた制度(インセンティブの付与)の導入
○
○
③施設建替えに向けての規制緩和
○
○
○
○
○
○
○
④PFI手法の導入
(1)
○
d.面的な拠点整備の工夫
④公園関連施設との一体整備
3
リ
ス
ク
対
応
の
視
点
○
○
○
○
○
③河川関連施設との一体整備
2
事
業
推
進
の
視
点
○
○
○
○
a.赤字回避の工夫
①身の丈に合った低容積型施設の整備
○
○
②定期借地権の活用
○
○
③自主事業の実施
○
○
b.合意形成の円滑化の工夫
①地域を知る地元の行政・住民による事業の推進
②地域の特色を活かした機能の導入
③少子・高齢化に配慮した機能の導入
○
○
○
○
○
○
○
○
○
− 80 −
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
(2)政策・課題対応リストの構成
a.都市の情報と事業の目的
調査した 17 事例は、地方自治法に基づく地方公共団体の区分の「特別区」「指
定都市」「中核市」「特例市」「その他」で分類し、人口、および年齢構成の指標
として高齢化率をまとめた。
また、調査した都市の事業の目的は、以下の 9 項目に区分した。
事
業
の
目
①公共施設の整備
(公)
②商業の活性化
(商)
③業務機能の集積
(業)
④居住環境の改善
(居)
⑤住宅の供給
(住)
⑥防災機能の強化
(防)
⑦都市機能の向上
(都)
⑧拠点機能の強化
(拠)
⑨医療機能の整備
(医)
的
(カッコ内は、政策・課題対応リストの略称)
− 81 −
図表 3.3
都市の情報と事業の目的(政策・課題対応リストの横軸)
調査事例
指定都市
中核市
特例市
その他
聞取7 聞取8 視察5
聞取9 聞取10 聞取11 聞取12
別冊ページ数
p138
p148
p153
p157
p207
p162
p169
p211
p215
p222
p175
p182
p230
p187
p190
p195
p200
大
手
都町
市連
再鎖
生型
プ
ロ
ジ
銀
座
地
区
の
ま
ち
づ
く
り
計
画
コ
ム
ナ
ウ
イ
ン
ハ
京
都
御
池
中
学
校
リ岡
山
ト コ
シン
テベ
ン
ビシ
ル
ン
セ
ン
タ
リ
バ
金
沢
市
民
芸
術
村
近
江
町
い
ち
ば
館
グ
ラ
ン
ド
プ
ラ
ザ
ア
ク
ト
ア
モ
高
松
市
丸
亀
商
店
街
ア
オ
イ
リ
オ
徳
島
赤
十
字
病
院
リ
ナ
シ
テ
レ
レ
長
岡
ー
ク
北
九
州
ー
ォー
ョ
ト
有
松
ウ
ィ
浦
和
パ
ル
コ
ー
ー
ラ
d
e
ネ
ふ
る
か
わ
東京都 東京都 埼玉県 愛知県 京都府 岡山県 福岡県 石川県 石川県 富山県 大阪府 香川県 新潟県 静岡県 宮城県 徳島県
都市名
事業主体
︶
人口
(千人)
高齢化率
(%)
千代田区 中央区 さいたま 名古屋
大手町
銀座
市
市
−
−
47
19.1
1.公共施設の整備
組合
公共
組合
公共
組合
組合
公共
公共
462
422
357
419
283
202
135
41
105
24.4
26.8
24.8
20.8
20.8
24.4
23.2
22.4
25.4
24.8
○
○
○
●
○
●
●
○
●
○
○
●
○
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
○
○
○
●
●
●
○
○
○
○
○
●
●
●
○
4.居住環境の改善
○
○
5.住宅の供給
●
●
○
○
○
○
○
○
組合
462
24.8
7.都市機能の向上
組合
977
21.3
○
個人
710
22.4
○
○
組合
20.8
3.業務機能の集積
8.拠点機能の強化
公共
19.1
●
○
公共
鹿児島
県
小松島
北九州
鹿屋市
金沢市 金沢市 富山市 高槻市 高松市 長岡市 沼津市 大崎市
市
市
16.3
●
6.防災機能の強化
公共
京都市 岡山市
123 1,222 2,264 1,474
2.商業の活性化
か
の
や
ー
ク
ト
レ
、
、
事
業
名
・
計
画
名
・
施
設
名
ィ
聞取5 聞取6 視察2 視察3 視察4
ー
視察1
ー
聞取4
ッ
聞取3
ー
聞取2
ェ
聞取1
○
:
対
応
す
る
政
策
課
題
●
:
主
な
政
策
課
題
特別区
事例No.
︵
事
業
の
目
的
地方自治法等に基づく
地方公共団体の区分
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
9.医療機能の整備
●
− 82 −
b.事業手法の“工夫”の整理
事業手法の“工夫”は、施設建設の計画→実行(建設)→管理・運営のフローに
対応するよう、“1.事業戦略の視点”、“2.事業推進の視点”、“3.リスク対応の
視点”の 3 つの視点を大項目とし、目的、体制、事業規模により、中分類の項目に
区分した(以下に示す【事業手法の“工夫”の整理】のうちカッコ数字)。
【事業手法の“工夫”の整理】
1.事業戦略性の視点からの工夫
−将来的な都市の姿をとらえ、機能の陳腐化を見据えて、リニューアル事業の
戦略を計画・立案する
(1)機能向上・転換、高度利用
・多様な年齢層の利用が図れるよう、
“施設機能の複合化の工夫”等
(2)拠点性の向上
・来街者の利便性の向上を図る道路・鉄道施設との一体整備など“面的な拠点
整備の工夫”等
(3)既存ストックの活用
・河川、公園等の地域資源を活用することで機能を高める“地域資源の活用の
工夫”等
2.事業推進の視点からの工夫
−地権者・住民の合意を得て、効率的かつ効果的に事業を推進する
(1)手法の工夫
・未利用地を「種地」として事業の継続を図りながら進める連鎖型都市開発な
ど、土地活用の工夫等
(2)体制の確立
・首長のリーダーシップ、官民連携など、事業推進のための体制の確立
(3)制度の活用
・特定建築者制度、PFI等の民間活力の活用
3.リスク対応の視点からの工夫
−安定的かつ円滑な建設、管理・運営ができる事業とする
(1)事業費の側面の工夫
・身の丈に合った低容積型施設の整備など、事業費の適正化のための工夫
(2)事業期間の側面からの工夫
・都市の抱える課題の共有など、
“合意形成の円滑化の工夫”
− 83 −
詳細な事業手法の工夫は、さらに小分類の項目に区分した(図表 3.2
政策・課
題対応リスト の○付き数字の項目)
。工夫の数は 34 項目となった。
「図表 3.2
政策・課題対応リスト」には、都市ごとに事業にあたり適用した工
夫を「○」で示している。各都市とも複数の「○」が示されており、調査を行った
国内各地の 17 事例の都市は、都市の規模を問わず、様々な工夫により事業の推進
を図っていることが表れている。
次章の3.2では、各都市が事業化にあたり適用した事業推進の工夫の詳細を、
“1.事業戦略の視点”、
“2.事業推進の視点”、
“3.リスク対応の視点”の順にまとめ
る。
− 84 −
3.2.ヒアリング調査、視察調査にみる事業手法の工夫
3.2.1.事業戦略性の視点からの工夫
(1)機能向上・転換、高度利用
a.施設機能の複合化の工夫
調査事例では、多くの都市が、購買・娯楽など商業活動による収入が得られる商
業施設を建設している。合わせて、直接的な収入には繋がらないものの、生活に関
連する行政関連施設、文化・交流施設、教育施設、医療・福祉施設も併設し、複数
の機能を有する複合施設の建設により、多様な年齢層の集客を図っている。
① 商業機能の導入:さいたま市、京都市、金沢市ほか多くの都市
各都市において、大規模なショッピングセンター、地元スーパー等の施設が建設さ
れている。
② 庁舎機能の導入:長岡市
長岡市では、新庁舎建設において、行政機能を1庁舎に集約せず、市民サービス
の機能は、多目的ホール(体育館等として使用)、イベントを開催できる「屋根付広
場」からなる、複合型市庁舎“アオーレ長岡”にまとめた。一方、他の商工、農林、
福祉の機能は、駅周辺の建物に分散させた。
複合型市庁舎には生活上の手続きで来庁する多くの市民が訪れ、にぎわいをもた
らしている。また、行政機能を分散させることで、人の往来の回遊性をもたらして
いる。
このように、行政機能は、庁舎の複合化、また分散化によっても、人の流れを誘
導することができる。〔詳細は、別冊の長岡市:230 ページを参照〕
図表 3.4
長岡市の行政機能の配置
年間約 240 万人の来訪者
がある複合型庁舎アオ
ーレ長岡
出典:長岡市提供資料
− 85 −
③ 文化・交流機能の導入:北九州市、岡山市、鹿屋市ほか
文化・交流施設は、若年層から高齢者層まで多くの市民が利用することから、多
様な年齢層の集客を図ることができる。
北九州市の複合施設リバーウォーク北九州にある、市民芸術劇場は高い稼働率で
運用されている。
鹿屋市北田大手町のリナシティでは、ヒアリングの際も高齢者の男性が市民交流
センターの料理教室で学び、フィットネスホールでは若者が活動していた。
都市の規模を問わず、文化・交流施設は様々な年齢層の市民が活用する施設とな
っている。〔詳細は、別冊の北九州市:169 ページ、鹿屋市:200 ページを参照〕
北九州市の複合施設リバーウォークと施設内の大学のキャンパス
北九州芸術劇場
大学のキャンパスの外観
商業棟
④ 教育施設の導入:北九州市ほか
少子化の進む中、大学は学生の確保のため、交通の利便性の良い市街地にサテラ
イトキャンパスの建設を進めている。大学生をはじめとした“若者“は街に活力を
与える。携帯電話等の情報通信機器を利用する”若者“には、これら情報通信機器
による”口コミ”の情報発信によるPR効果もある。
北九州市のリバーウォークには、施設内に学生数 600 名(1 学年 150 名)の大学を
誘致し、にぎわいをもたらしている。〔詳細は、別冊の北九州市:169 ページを参
照〕
⑤ 医療・福祉施設、子育て支援機能の導入:名古屋市、金沢市、小松島市ほか
高齢化社会が進行する中、医療・福祉の充実が求められ、中心市街地へ医療・福
祉施設が建設されている。
名古屋市緑区では、複合施設にデイサービスセンターを設置している。
金沢市・近江町いちば館は、1・2 階に市場及び商業施設を整備する一方で、3 階
以上に幼児の遊戯場、託児室を併設し、市場の商品購入者以外の集客も図っている。
また、医療施設で規模の大きい病院の整備は、小松島市の徳島赤十字病院のよう
に病院関係者ほか、多くの集客に繋がる効果がある。
− 86 −
近江町いちば館の状況と施設内の幼児用の遊戯場
1階の市場の状況
いちば内の3階の遊戯場(交流プラザ)
⑥ 住宅機能の導入:高槻市、沼津市、名古屋市ほか
高槻市、沼津市、名古屋市の駅前再開発では、大型店の郊外出店により空洞化し
た市街地の復活を図る“まちなか居住”を推進するため、駅に隣接して住宅施設を
併設している。建設した集合住宅は、短期間で完売しており、集客面はもとより、
保留床の販売による事業採算性の確保の面でも有効である。
近年の家族層は一戸建て住宅への執着は少なくなっており、北九州市、岡山市で
は都心部のマンションの需要が高くなっている。高齢者層の利便性の良い中心市街
地への転居も進んでおり、高松市の丸亀町商店街では、商店街に医療施設併設型マ
ンションを建設することで、商店街の居住者が増加している。
比較的土地の安価な地方では、住宅機能の導入は採算の見込める施設となる。
駅に隣接して建設された住宅施設、商店街の住宅施設
マンション
マンション
沼津駅前の商業施設、住宅施設併設の
イーラde
高松丸亀町商店街に建設された
マンション
⑦ 業務機能の導入:東京都、さいたま市、岡山市、名古屋市ほか
人口の多い都市においては、交通のアクセス等の利便性がよければオフィスとし
て民間企業が入居し、就労する勤労者によりにぎわいを創出することができる。
地方都市でも、駅から約 500m にある宮城県の大崎市の複合施設のリオーネふる
かわには、大手金融機関、流通業者の地方拠点が入居している。
〔詳細は、別冊のさいたま市:153 ページ、岡山市:162 ページ、大崎市:190 ページを参照〕
− 87 −
b.アクセスの快適性向上の工夫
施設への集客を図るには、利用者のニーズを満たす多機能な施設であっても、施
設へのアクセス手段がなければ集客を図ることができない。調査事例では、駅前広
場等の交通基盤の整備、ターミナルからの施設への通行路の改善により、施設への
来街者の利便性を図る工夫がされている。
① 交通ターミナル機能の快適性向上(交通広場、バス停):さいたま市ほか
地方都市においては、人の往来の多い駅のターミナルは、バス、タクシー等の
交通機能が集中しており、多くの人が訪れるので商業施設等が建設されている。
さいたま市では駅前交通広場を拡充
し、バス乗降所、タクシープール等の
浦和駅の駅前広場
適正配置、駐車場の整備で、車両のス
ムーズな誘導を図ることで来街者の利
便性を高めている。
広場の拡充は歩行にゆとりをもたら
し、待ち合わせ場所としても利用され、
安全で快適な空間をもたらしている。
〔詳細は、別冊のさいたま市:153 ペー
ジを参照
〕
② 歩行空間の快適性向上(ペデストリアンデッキ):名古屋市、高槻市、岡山市
駅に隣接して複合施設を建設した高槻市高槻駅前、名古屋市緑区有松駅前及び岡
山市駅元町地区では、整備した複合施設と駅とをペデストリアンデッキで結び、来
街者の往来の利便性を図っている。
信号や車に制約されることなく、人のみが通行できる“上空空間の通路”のペデ
ストリアンデッキは、あらゆる方向から人々が行き交い、スムーズな集客と回遊性
の確保による集客効果を高めている。
往来者の中にはペデストリアンデッキで立ち止まり語らう人、景色を楽しむ人も
あり、往来にゆとりと楽しみを生み、施設に付帯する集客のための設備ともなって
いる。〔詳細は、別冊の名古屋市:157 ページ、高槻市:175 ページ、岡山市:162
ページを参照〕
岡山駅と商業施設を繋ぐペデストリアンデッキ
商業施設
岡山駅側⇒
− 88 −
(2)拠点性の向上
c.広域の視点による機能確保の工夫
地域内に集客施設が多くある都市部においては、地域内の集客施設を一体として、
相乗効果を高め、広域の視点からにぎわいを確保する工夫がされている。
また、都市の中心地にある集客施設にアクセスする交通手段の利便性を高め、周
辺地域からの集客を図っている。
① 広域利用者を意識した施設機能の導入:東京都千代田区大手町、北九州市
オフィスを中心に、集客施設が多くある東京都千代田区大手町では、合同庁舎跡
地を「種地」として、広域で各施設の事業を継続しながら、順次換地に施設を移転
する“連鎖型都市開発”が行われている。
図表 3.5
東京都千代田区大手町の連鎖型都市開発の概要
出典:大手町連鎖型都市再生プロジェクト パンフレット/UR都市機構
北九州市では、複合施設の建設を、隣接する河川、公園の整備と一体で行い、河
川の対岸にある商業施設等のにぎわいの拠点と連携し、周辺地域一帯でにぎわい空
間の創出を図っている(91 ページの写真参照)
。
〔詳細は、別冊の東京都千代田区大手町:138 ページ、北九州市:169 ページを参照〕
− 89 −
② 施設への広域アクセス手段の確保:富山市
移動のアクセス手段が不足する地方都市においては、そのアクセス手段の確保も
重要な課題となる。
富山市等では、周辺地域から市街地への来街を促すため、公共交通機関の活用を
促す方策が行われている。
富山市:おでかけ定期券∼65 歳以上を対象の 100 円均一の公共交通利用券
富山市では、郊外の高齢者を中心市街地へ誘導するため、65 歳以上の
市民に 100 円でバス、路面電車の公共交通機関を利用できる定期券を発
行している。
この制度は、高齢者の集客とともに、市内への移動に伴う歩行の増加
による健康増進の効果も目的としている。歩行距離が増えれば健康にな
り、高齢者の医療費が年間約 7,500 万円削減されるとしている。この額
は、老人定期券の市と交通会社の負担額約 1 億円を概ねまかなえる額で
ある。
富山市では、公共交通機関の会社が 1 社であることから、全市の方策
として容易に実施することが可能となった。
事例は、高齢者を対象とした優待制度であるが、まちなか居住が進んでいること、
近年は若者の車離れもあることを考えると、公共交通機関の整備は、高齢者のみな
らず多様な年齢層の集客の効果が見込まれる。
公共交通の利用料金に行政の補助が必要となっても、郊外の施設のように、集客
のため、高額事業費となる道路の整備の費用は不要である。高齢者ほか多様な年齢
層の集客手段となることから、公共交通機関の整備とその利活用方策の推進は、有
益な方策であると考える。
〔詳細は、別冊の富山市:222 ページを参照〕
− 90 −
d.面的な拠点整備の工夫
調査事例では、建設する施設を中心に、来街のための交通機関、周辺の河川・公
園等整備と合わせた面的整備により、来街の利便性の向上、周辺環境の向上を図り、
施設の機能を高めている。
① 道路関連施設との一体整備:東京都千代田区大手町、名古屋市、北九州市等
各都市で道路の幅員の拡張、照明設備の設置等、安全で快適な歩行者空間を整備
している。また、北九州市では、電線類の地中化も行っている。
交通機関によるアクセス機能が劣る地方都市では、道路・街路や駐車場の整備
は集客の重要な要素となっている。
② 鉄道関連施設との一体整備:沼津市、岡山市、さいたま市
沼津市では、鉄道高架化により鉄道で分断された市街地の回遊化、交通の円滑化
により、駅周辺の利用者の利便性の向上と市街地の一体化を進めている。鉄道の高
架化は、事業範囲が広範囲となるため、事業が長期化することの留意が必要となる。
また、岡山市では、駅の東西を結ぶ自由通路が解放されることで利用者の利便性
が向上し、駅周辺の商業施設等への来訪者が増加している。〔詳細は、別冊の沼津
市:187 ページ、岡山市:162 ページを参照〕
③ 河川関連施設との一体整備:北九州市、鹿屋市、④公園関連施設との一体整備:
北九州市、東京都千代田区大手町
北九州市では、複合施設(リバーウォーク)の周辺にある、河川、公園の整備をす
ることで、住民の“憩い・集う”ゆとりある環境を創出し、河川の対岸の商業地域
とあわせて、一帯の回遊性による集客向上を図っている。〔詳細は、別冊の北九州
市:169 ページを参照〕
周辺の河川、公園整備と一体で開発した北九州市の複合施設
小倉駅→
リバーウォーク
小倉城庭園公園
市役所
紫川 10 橋の
各橋
勝山公園
出典:北九州市の再開発/平成 25 年 3 月/北九州市より転載、一部加筆
− 91 −
(3)既存ストックの活用
e.地域資源の活用の工夫
地方には、自然環境、歴史的建造物の資産がある。また、祭り等、人々が集う文
化もある。調査事例では、これら地域のハード、ソフトを集客の資源として活用し
ている。
① 地域主体による地域資源の活用(イベント開催等の場づくり)
地方には地域のコミュニティの繋がりがあり、祭り等のイベントで多くの人が集
う。富山市、長岡市では商業施設内、市庁舎内に、イベント広場や全天候型多目的
広場等を整備し、これまで行われたイベントや、新たなイベントが開催されるよう
になり、多くの市民でにぎわっている。
(ⅰ) 富山市:グランドプラザ(全天候型多目的広場)
富山市のグランドプラザは、区域内の道路を整備して、イベント広場として
開放している。多くの市民がイベントを開催しており、土・日・休日の稼動率は
ほぼ 100%であり、平日も殆どの日にイベントが開催されている。グランドプラ
ザに行けば何かあるという状況になり、隣接する商業施設の来街者も増加して
いる。イベントの開催などにより、郊外等に流出していた若者・家族層がこの
地区に戻ってきている。〔詳細は、別冊の富山市:222 ページを参照〕
(ⅱ) 長岡市:アオーレ長岡
長岡市のアオーレ長岡では、市庁舎内に誰もが気軽に立ち寄り、憩い集うス
ペースとして、イベント・結婚式も可能な全天候型のイベント施設「ナカドマ
(屋根付広場)」、および隣接して 3 面のバスケットコートで構成される最大
5,000 人収容可能なアリーナが整備されており、市民でにぎわっている。〔詳
細は、別冊の長岡市:230 ページを参照〕
イベント広場の活用状況
富山市グランドプラザ
アオーレ長岡の屋根付広場(ナカドマ)
− 92 −
② 河川・公園・歴史的建造物等の活用
地方において活用できる公園・河川等の自然環境、歴史的建造物等も集客の向上
策として活用されている。
(ⅰ) 北九州市、鹿屋市:河川・公園等の自然環境
土地もあり自然環境が豊かな地方では、建物とともに公園・河川等の自然環
境も都市の魅力を高める大きな財産となる。公園があれば周辺の居住者も増加
する。自然を面的整備の一部とすることは、建物を含めたエリア一体での集客
の増加に繋がる。
河川整備と一体で開発したリナシティかのや
また、公園はこれからのまちづくり
商業施設
の課題である防災拠点として活用でき
る。緑のある公園は、高齢者や子供に
やさしい施設であり、多様な年齢層が
利用するやすらぎ空間として活用でき
る。
鹿屋市では、商業施設(リナシティ
整備された肝属川
かのや)に隣接する河川整備を行い、
公園、イベント広場としても活用して、
にぎわいを高めている。〔詳細は、別
出典:鹿屋市提供資料より転載、一部加筆
冊の北九州市:169 ページ、鹿屋市:200 ページを参照〕
(ⅱ) 北九州市、金沢市民芸術村: 歴史的建造物
地方に多くにある、城郭等の歴史的建造物、観光資源も集客を高める資源と
なる。北九州市では、隣接する小倉城が、回遊性による集客の資源となってい
る。(91 ページの写真参照)
金沢市民芸術村では、紡績工場の閉鎖に伴うレンガ造の工場建築群を市民の
「記憶の保存」として残すとともに、再生利用して、金沢市の新たな芸術・文
化の振興施設として、多くの市民に利用されている。〔詳細は、別冊の北九州
市:169 ページ、金沢市民芸術村:211 ページを参照〕
紡績工場跡地に整備した金沢市民芸術村
− 93 −
③ 未利用地の活用:東京都千代田区大手町、北九州市、金沢市
高度成長期に多く建てられた、商業施設、工場等は、建築後 40 年近く経過し、
老朽化のため取り壊され、都市によっては未利用地となっている。
都市の未利用地は、交通の利便性が良い都心部にあるものが多い。調査事例では、
新しい手法で未利用地の有効活用を図っている。
(ⅰ) 東京都千代田区大手町、北九州市
大都市の未利用地は集客が見込まれることから、東京都千代田区大手町では、
合同庁舎跡地を利用した連鎖型都市開発、北九州市では区役所跡地を利用し、
河川・公園整備と一体の複合施設を建設している。〔詳細は、別冊の東京都千
代田区大手町:138 ページ、北九州市:169 ページを参照〕
(ⅱ) 金沢市
地方都市の金沢市では、金沢駅に隣接した紡績工場跡地において、歴史的建
造物の煉瓦倉庫を活用した施設をリニューアル整備し、市民の芸術活動の拠点
として、また、市民の憩いの場としてにぎわいをもたらしている。〔詳細は、
別冊の金沢市民芸術村:211 ページを参照〕
− 94 −
3.2.2.事業推進の視点からの工夫
(1)手法の工夫
a.事業推進の円滑化の工夫
調査事例では、“事業の継続を図る”、“公共性の高い関連施設との一体整備で
事業を推進する”等により、事業推進の円滑化を図っている。
① 連鎖型都市開発:東京都千代田区大手町、小松島市
連鎖型都市開発は、1.事業戦略性の視点からは、(2)拠点性向上の c.広域の
視点による機能確保の工夫の手法であるが、事業を継続しながらの施設の移転によ
り、事業を円滑に進めることができる。
(ⅰ) 東京都千代田区大手町
大手町地区には、金融、情報通信など、24 時間型稼動の業種が多く、仮移転を
伴う建て替えは、業務の連続性に支障を来たすことから、大手町合同庁舎の跡地を
「種地」とし、順次換地に施設を移転することで、事業活動を中断・停滞させるこ
となく施設の更新を可能とする手法として実施された。〔詳細は、別冊の東京都千
代田区大手町:138 ページを参照〕
(ⅱ) 小松島市
総合病院は、地域医療連携の拠点であり、広域的な医療圏の中核としての機能も
有している。一方、地域住民の健康及び安全を確保する必要があることから、リニ
ューアルにあたっては事業の継続性と診療・入院・駐車場等病院スペースの確保が
同時に求められる。小松島市では、老朽化した総合病院の移築新築にあたり、紡績
工場の跡地を「種地」とし、順次換地に移転することで、事業の継続性と病院スペ
ースの確保を同時に成し遂げた。また、当該事業を市街地再開発事業とすることで、
総合病院が、紡績工場の建物等の除却費用を負担することなく施設移転を達成でき、
医療経営面でも大きな効果があった。〔詳細は、別冊の小松島市:195 ページを参照〕
② 関連施設との一体整備:小松島市
施設建設での道路、鉄道、河川、公園等の関連施設関連施設の一体整備は、1.
事業戦略性の視点からは、(2)拠点性向上のd.面的拠点の工夫の手法である。
道路、鉄道、河川、公園の整備は、多くが公共事業として実施される。
公共性が高い住民の合意が得やすい公共事業と一体で施設を建設することで、事
業を円滑に進めることができる。
地方都市においては公共事業の比率は高い。活用できる補助制度も多く、公共事
業との連携により、事業費の軽減も見込まれる。
− 95 −
小松島市では、総合病院の移築新築にあたり「市街地再開発事業」と「沿道整備
街路事業」の一体施行により、紡績工場跡地を活用した沿道地権者のための代替地
造成を行うとともに、病院が移転する再開発敷地を街路に面して確保した。これに
より、病院前ロータリーの救急車の進入が容易になり、救急患者の受入れが円滑に
行われる効果があった。その結果、救急医療の安定性が確保できるとともに、救急
患者の入院数の増加に対応して退院患者を増加させる必要性から、急性期病院と慢
性期病院、急性期病院とかかりつけ医との役割分担が明確になり、地域の医療連携
としても理想に近づいている。〔詳細は、別冊の小松島市:195 ページを参照〕
③ 建て替え申請手続きの効率化:東京都中央区銀座
まちづくり計画では、上位計画として都市計画マスタープランがあり、これに基
づき基本方針を策定し、進められることが多い。しかし、都市計画マスタープラン
は基本計画であり、直接的な規制を行うものではないため、具体的な規制・ルール
作りにあたっては、まちづくり条例等が必要となる。
事業者にとっては、基本方針→条例のルールの階層化はわかりにくいものとなる。
昭和 40 年代に建てられた建物が多い銀座では、老朽化した建物の更新により防災
機能を高め、銀座に適した街並みの建設のため、都市計画マスタープランは策定せ
ず、平成 10 年から「街並み誘導型地区計画」等の制度で、地権者がわかりやすい
規制・ルールにより、銀座地区一帯のまちづくりを進めている。〔詳細は、別冊の
東京都中央区銀座:148 ページを参照〕
− 96 −
(2)体制の確立
b.組織の整備の工夫
従来の発想にとらわれない新しい施設の建設のため、調査事例では、次のような
組織の整備が行われている。
① 自治体首長・事業者のリーダーシップ
先進的な事業を推進するためには、行政の縦割りの弊害をなくし、トップのリー
ダーシップの発揮、行政の新たな取組みが、大きな原動力となる。
(ⅰ) 北九州市:市長による行政の連携が図れる長期構想の策定
北九州市では、昭和 63 年に当時の国土交通省出身の市長が、重工業で栄えた
都市の産業構造転換を図り、「水辺と緑とふれあいの“国際テクノロジー都市”
へ」を基本テーマとした都市再生計画“北九州市ルネッサンス構想”を策定した。
この構想に基づき、紫川・勝山公園を整備する「紫川マイタウン・マイリバー
整備事業」が国土交通省に採択され、公共事業と連携した、室町一丁目地区第一
種市街地再開発事業が推進された(91 ページの写真参照)。〔詳細は、別冊の
北九州市:169 ページを参照〕
(ⅱ) 富山市:市長自らによるコンパクトシティ計画の市民への説明
富山市では、市長自らが富山市の開発のコンセプトである“コンパクトシテ
ィ”について市内各地で開催するタウンミーティングで説明し、市民の理解を
得ながら事業を進めている。視察したグランドプラザでも、市民のイベントの
終了時に行われた市長の挨拶で、市長が大型スクリーンを用い、“コンパクト
シティ”について説明されていた。
行政による事業推進にあたっての市民への説明は“説明責任”であるととも
に“説得責任”でもあるとの市長の言葉に、富山市の開発に向けた熱意が現れ
ている。〔詳細は、別冊の富山市:222 ページを参照〕
② 官民の連携
にぎわいのあるまちづくりには、多様な年齢層が来街し、購買・娯楽に消費する
商業施設を整備するとともに、公共施設、教育施設、医療・福祉施設、住宅施設な
どを併設した複合施設を整備することで成果をあげている。
少子・高齢化の進展に伴い、複合施設として、公共施設・福祉施設等の整備は、
需要が増すものと考えられる。
幅広い年齢層が来街し、住宅の併設で住民が生活する複合施設には、求められる
ニーズも多様となる。施設のハード整備の面では、土木・建築部門が主となるが、
施設のソフト整備の面では、管轄する行政の部門も、商工部門・教育部門・福祉厚
生部門など、多岐に及ぶこととなる。
− 97 −
行政の縦割りの弊害をなくしていくことはもとより、関連する行政部門、事業者
が連携することで利便性の高い高機能のまちづくりを進めることが可能となる。
調査事例の中で、行政・民間の緊密な連携の重要性を示唆した、小松島市のヒア
リング結果をまとめる。〔詳細は、別冊の小松島市:195 ページを参照〕
小松島市の徳島赤十字病院の移転のヒアリングの概要
・小松島市の徳島赤十字病院の移転では、地域の総合病院として、コンビニ
などを併設した病院の複合施設整備により、集客の“主役”の来院者・地
域住民の利便性向上が図られた。
・その一方で、来院者や地域住民と直接接している病院の職員からは、職員
の生活・娯楽ための店舗、入退院に伴う家族のため宿泊施設があれば、よ
り集客性の高い施設にできたであろうとの意見があった。
・複合施設では、行政と民間の緊密な連携により、利用者のニーズを発掘し、
アイデアを出せば、都市機能の向上を図ることができる。
③ まちづくり会社の設立
規制にとらわれず民間の発想で斬新な事業を推進するため、民間事業者がまちづ
くり会社を設立し、まちづくりの計画を策定し、事業を推進している。
(ⅰ) 宮城県大崎市:まちづくり会社が約 7 カ月でのまちづくりビジョンを策定
大崎市の台町地区第一種再開発事業では、平成 9 年に若手商店主の出資によ
り民間まちづくり会社「台町ティー・エム・シー㈱」を設立した(出資者:52 の
個人・法人、資本金 5,000 万円)。
台町ティー・エム・シー㈱は、宮城県が進めた「活路開拓ビジョン調査事業」
の学識経験者専門委員の猿谷雅治氏の指導を受けながら、若手経営者が勉強会
を開催し、約 7 カ月でまちづくりのビジョンを策定した。
また、台町ティー・エム・シー㈱は自ら個人施行者となり、ビジョンに基づき
商業施設、住宅、カルチャー施設などの都市機能が複合した「台町地区第一種
市街地再開発事業」を実施した。〔詳細は、別冊の大崎市:190 ページを参照〕
(ⅱ) 高松市:高松丸亀町まちづくり(株)−定期借地権方式による商店街の一括開発
高松市の丸亀町商店街では、商店主がまちづくり会社を設立し、定期借地権
方式で約 2.7km におよぶ商店街を一括で再開発した。
(定期借地権の概要、事業の成果は、101 ページの3.2.3.リスク対応の
視点からの工夫
(1)事業費の側面 a.赤字回避の工夫
〔詳細は、別冊の高松市:182 ページを参照〕
− 98 −
参照)
(3)制度の活用
c.民間活力の活用の工夫
事業の早期推進、採算性確保のため、民間活力が活用されている。
① 民間事業者の参画制度の活用;岡山市、さいたま市、高槻市、鹿屋市
岡山市、さいたま市、鹿屋市、高槻市では、「特定建築者制度」により、再開発
事業における保留床を購入・賃借する民間事業者の誘致を実施し、事業を推進した。
「特定建築者制度」は、市街地再開発事業において、施行者以外の者が、施行者
に代わって施設建築物を建設し、権利変換計画の定めにより自ら建設した建築物の
保留床(権利者が取得する床以外の床)を取得する制度である。
すべて保留床(特定施設建築物の権利者取得床以外の床)からなる施設建築物の
ように、施行者が施設の建設を行う必要がない場合に、当該施設建築物全部を取得
する民間事業者が、自らの負担・ノウハウにより計画・建築工事を行うことができ
る。これにより、施行者と民間事業者の有機的な連携が可能となり、再開発事業の
円滑な進捗を図れる利点がある。〔詳細は、別冊の岡山市:162 ページ、さいたま
市:153 ページ、高槻市:175 ページ、鹿屋市:200 ページを参照〕
− 99 −
② 用途の誘導に向けた制度(インセンティブの付与)の導入 及び 施設建て替えに
向けての規制緩和
東京都中央区銀座では、
「街並み誘導型地区計画」、
「機能更新型高度利用地区」
により、地方自治体が事業者にまちづくりのインセンティブを与える独自の制度を
定めて、再開発を実施している。
老朽化が進んだ銀座地区の建物のリニューアルに際し、壁面後退・高さ制限の規
制と、一定条件のもとでの容積率の緩和により、地区内の統一したまちづくりを行
っている。
地域の状況に適したまちづくりに向け、地方都市においても、これらを参考とし
た独自の制度を定めて取組んでいくことが望まれる。〔詳細は、別冊の東京都中央
区銀座:148 ページを参照〕
図表 3.6
「街並み誘導型地区計画」、「機能更新型高度利用地区」の規制と緩和
「①並み誘導型地区計画+②機能更新
型高度利用地区」制度により建て替えら
れたビル(
)と、旧ビル(
)。
旧ビルは、道路斜線による傾斜がある。
また、壁面が建て替えビルより前にあ
る。
出典:地区計画の手引き 第Ⅱゾーンにおけるまちづくりのルール/東京都中央区
③ PFI手法の導入
京都市の京都御池中学校では、PFI手法を導入し、資金調達も含め、公共施設
の整備及び維持管理・運営を一括して民間事業者に委ねる手法を採用している。
PFI手法により、事業費は 63.2 億円となり、従来手法の 90.1 億円に対し、26.9
億円の削減、VFM29.8%を達成した。
京都市では、この京都御池中学校のPFI事業のノウハウを活かし、以後教育委
員会で 4 事業(小学校普通教室冷房化、音楽高校建設、2 件の耐震化)をPFIによ
る事業として実施した。〔詳細は、別冊の京都市:207 ページを参照〕
− 100 −
3.2.3.リスク対応の視点からの工夫
(1)事業費の側面
a.赤字回避の工夫
中央の大手資本の参画が見込めない等、事業費確保の課題がある地方都市におい
ては、赤字回避のため次の工夫がなされている。
① 身の丈に合った低容積型施設の整備
大都市の開発事例をみると、高層ビルを建設し、高密度で店舗や事務所等を収容
して集客効率を高めている。遠くからでも見える高いビルは新規性、PR効果はあ
るが、一方で威圧感もある。また、開発に伴い、需要を上回る保留床の確保は、事
業の成立にも課題を残すことにもなりかねない。
地方は、地価も安く、広い土地の活用が可能である。金沢市の近江町いちば館、
鹿屋市のリナシティかのやでは低層階の建物で、多様な年齢層の集客を図っている。
(ⅰ) 金沢市:近江町いちば館
近江町いちば館は、容積率 600%の制限に対し、5 階建てで容積率 288%の施設
となっている。市場に、幼児の遊戯場、託児室の併設、歴史的建造物である銀
行の保存により、市場の商品購入者以外の集客も図っている。
近江町いちば館に面する国道の対面には、民間の高層の商業施設が立地する。
建物を対比すると、高層ビルに目を奪われるが、市場の機能は 5 階建ての施設
で十分に満たされており、視察を行った際は午前中にも拘らず、多くの市民・
観光客が訪れていた。〔詳細は、別冊の金沢市:215 ページを参照〕
(ⅱ) 鹿屋市:リナシティかのや
リナシティかのやが整備された地区の用途地域は「商業地域」で、容積率は
400%であるが、地方都市では保留床14の需要が見込みにくく、大規模開発を行っ
た場合にはリスクが生じる。このため、保留床の需要などを十分に調査し、容
積率 137%と、身の丈に合った低容積型の再開発事業としている。
施設内には、商業施設をはじめ、情報プラザ、芸術・文化・学習プラザ、健
康スポーツプラザなどの公共施設が配置されており、市民のふれあいの場とし
て日々にぎわっている。〔詳細は、別冊の鹿屋市:200 ページを参照〕
② 定期借地権の活用:高松市
高松市の高松丸亀町商店街では、商店主がまちづくり会社を設立し、定期借地権
14
保留床とは、市街地再開発事業等で事業前に土地、建物の権利を所有していた事業
者に対して、事業後にその権利に応じて与えられる施設建築物の敷地・床をいう。
− 101 −
方式で約 2.7km におよぶ商店街を一括再開発することにより、次の成果が得られて
いる。
・60 年の定期借地権契約により、土地の所有権と使用権を分離しての商店街の
一括の開発で、消費者のニーズに合わせたテナント作り(テナントミックス)
が可能となり、商店街の来街者が、バブル期のピーク時(通行者も含めて約
35,000 人/日)に戻りつつある。
・定期借地権方式による地権者の土地の借用により、土地購入費用が不要とな
る。1 街区あたりの事業費は概ね 70 億円であり、同規模の土地購入の開発の
場合の事業費約 200 億円に対し、大幅な低減効果が得られた。
・テナントほか、マンション・クリニックの建設により、上質の生活環境が整
備され、商店街の居住者が増加した(開発前の 75 人から開発後約 1,100 人)。
〔詳細は、別冊の高松市:182 ページを参照〕
図表 3.7
定期借地権による高松丸亀町商店街の再開発の概要
出典:高松丸亀商店街振興組合提供資料
③ 自主事業の実施
大崎市台町の事例では、商店街活性化の自主財源を生み出すため、民間まちづく
り会社である台町ティー・エム・シー㈱が中心となり、商店街活性化のための原資
を生み出す自主事業を展開した。
台町ティー・エム・シー㈱は、5 億円の融資を受けて商店街の一角にあるプラザ
ホテル古川の新館を建設し、それをホテル会社に賃貸する自主事業を立ち上げた。
プラザホテルはもともと高稼働率であり、新館の賃貸事業も好調に推移した。その
結果、台町ティー・エム・シー㈱は事業開始 2 年目から黒字を計上し、商店街活
性化のための自主財源の確保が可能となった。
また、台町ティー・エム・シー㈱は、近隣地において賃貸住宅事業、駐車場経営
も展開し、この収益金の一部も商店街活性化のために活用している。〔詳細は、別
冊の大崎市:190 ページを参照〕
− 102 −
(2)事業期間の側面
調査事例では、事業を円滑に推進するために次のような工夫がなされている。
b.合意形成の円滑化の工夫
① 地域を知る地元の行政・住民による事業の推進
調査事例では、再開発組合の設立のほか、住民の意見を聞く機会を設け、地域の
意見を反映した開発・運営が進められている。成果として、斬新な施設を建設して
いる。
(ⅰ) 京都市:京都御池中学校
地元の「新中学校設立推進委員会」で中学校のあり方、校舎施設につき協議し
た。その結果、京都市で初のPFI事業として、中学校を核とした、商業施設、
福祉施設を併設した複合施設の建設を円滑に進めることができた。〔詳細は、別
冊の京都市:207 ページを参照〕
(ⅱ) 金沢市民芸術村
地元市民で構成されるディレクターにより、事業の計画や施設の運営を行っ
ている。地元住民の要望を踏まえた運営により、24 時間営業の施設は高い稼働
率となっている。〔詳細は、別冊の金沢市民芸術村:211 ページを参照〕
(ⅲ) 長岡市:アオーレ長岡
「長岡市新しい市役所検討市民委員会」で市民の要望を踏まえた新しい市役
所のプランを策定した。イベント広場、体育館として利用できるアリーナ等の
ある市庁舎は、年間約 240 万人が訪れている。〔詳細は、別冊の長岡市:230
ページを参照〕
上記の事例が相応の成果を得られたのは、地域を知る地元の行政・住民が主体と
なって事業方針を策定し、関係者の合意形成を図ることができたからと言える。
② 地域の特色を活かした機能の導入―合意が図れる事業計画
調査事例では、京都御池中学校は“PFI事業として中学校を核とした複合施設
の建設”、金沢市民芸術村は“金沢駅から至近の地区に東京ドーム 2 個分の敷地を
有する市民の芸術振興の施設の建設”と、ともに全国初の事業を推進し、成果が得
られている。成功の要因として、市民の合意を得やすい、地域の特徴を生かした事
業を実施したことがあげられる。
(ⅰ) 京都市御池中学校:京都市民の教育への強い関心
京都御池中学校のように、用地内に店舗を併設した中学校の建設では、“店
舗のある複合施設は教育に支障を及ぼすのではないか”といった反対意見が想
− 103 −
定された。御池地区は日本で最初の小学校である御池小学校が開設された地区
で、市民の教育に対する関心は高く、事業計画に課題がある場合には、強い反
対意見がある反面、教育の質の向上を図れる事業であれば斬新な事業も受け入
れられる地域である。
この教育への思い入れの強い地域特性を背景に、乳幼児から高齢者が集う中
学校を核とした複合施設の建設に市民の合意を得ることができた。〔詳細は、
別冊の京都市:207 ページを参照〕
(ⅱ) 金沢市民芸術村:金沢市民の芸術に対する深い造詣
金沢市民芸術村のように、
金沢駅から約 700mの至近に広大な土地があれば、
収益面から民間事業者による商業施設、マンションが建設されることが想定さ
れる。
金沢は 400 年間戦災の被害がなく、文化財・伝統文化の保存に取り組んでき
た都市である。この文化に対する造詣が深い地域特性を背景に、文化的な価値
の高いレンガ倉庫を保存するとともに、市民の芸術振興の場とする事業計画が
実施された。〔詳細は、別冊の金沢市民芸術村:211 ページを参照〕
事業の成功のためには、これまでの事例とは異なる斬新な事業の実施も方策とな
る。斬新な事業の実施に際しては、地域の特性を反映し、市民の理解が得られる事
業コンセプトをベースとした計画が、推進力になる。
− 104 −
③ 少子・高齢化に配慮した機能の導入− 多様な年齢層を対象とした事業計画
収益を考えた開発では、収入のある勤労者層を対象に、集客を図る施設整備を行
う事例が多い。しかし、活性化のためのにぎわいの場を作るには、年齢層を問わず
多くの人を集めることが必要となる。
今後、少子・高齢化が進み、高齢者の比率が高くなると、にぎわいの創出には高
齢者が集うようにすることも重要となってくる。一方、高齢者に比べ子供の比率が
少なくなったとしても、子供、特に、乳幼児の移動は家族同伴となることから、乳
幼児が集えば家族として多くの集客を得ることができる。
(ⅰ) アオーレ長岡:多様な年齢層の市民が利用できる施設の整備
アオーレ長岡では、屋根付広場(ナカドマ)、アリーナ、多目的室等の多く
の施設を整備し、多数の市民が利用している。屋根付広場には、視察を行った
午前中でも、ベビーカーで子供をつれた母親の姿、また高齢者がベンチで語り
合う姿がみられた。
高齢者の来庁は、市庁舎で活動ができ、くつろげる場の提供とともに、ゆと
りのある高齢者に優しい庁舎の設計も、来庁の要因となっている。市庁舎は高
層ビルでなく、4 階建てで 1 フロアの床面積が広く、通路などのスペースに余
裕のある設計となっており、高齢者が利用しやすい施設となっている。〔詳細
は、別冊の長岡市:230 ページを参照〕
(ⅱ) 金沢市近江町いちば館:市場に幼児の遊戯場、保育園を併設
近江町いちば館では、施設内に託児室や幼児が楽しめる遊戯場を併設してい
る。来館した子育て世代も安心して子供を預け、買い物ができる環境を整備す
ることで、市場の来訪者の多様化に繋がっている。冬季に屋外で遊べない時期、
また雨天時は、遊戯場は公園と同等の利用者があり、にぎわいの創出に繋がっ
ている。〔詳細は、別冊の金沢市:215 ページを参照〕
− 105 −
3.3.「政策・課題対応リスト」の活用手順
「政策・課題対応リスト」は、ヒアリング調査、視察調査で得られた国内各地のリ
ニューアル事例における“事業の目的”を都市の政策・課題とし、また、各事例の事
業目的達成のためにとられた“事業手法の工夫”を政策・課題への対応として表示す
ることで、都市の政策・課題に即した対応策を導くことができるように作られている。
そして、各事例の政策・課題への具体的対応策を取りまとめた『別冊
リニューアル
対応事例集』を参照できるよう、別冊の記載ページを表示している。
ただし、各リニューアル事例は、都市の政策・課題が多岐に亘っていることから、
事業の目的も複数掲げられている。そのため、対象事業にかかる上位計画、都市全体
から見た地区及び施設の位置づけ、実施上の制約条件等を整理しておく必要がある。
これらを踏まえ、「政策・課題対応リスト」の活用手順を以下に示す。
「政策・課題対応リスト」の活用手順
事業の前提条件
の整理
対象事業にかかる上位計画、都市全体から見た地区及び施設の
位置づけ、実施上の制約条件等を整理しておく。
事業目的の設定
リニューアル事業の目的を設定する。
活用できるリニュ
ーアル事例の選定
設定された事業目的と「政策・課題対応リスト」の「事業目的
欄」に記載された目的とを比較し、活用できるリニューアル事
例を選定する。
事業手法の工夫
の活用
「政策・課題対応リスト」のリニューアル事例で採用された
事業手法の工夫(○印)をリニューアル計画の検討に活用する。
リニューアル事例の
詳細内容の参照
更にリニューアル事例の詳細を参照したい場合、「政策・課題
対応リスト」の「別添資料記載ページ」に別冊『リニューアル
対応事例集』の該当ページを記載しているので、参照できる。
− 106 −
3.4.ケーススタディの実施
本節では、前節で示した「政策・課題対応リスト」の活用手順に従って、中国地域
の都市を対象とした都市施設のリニューアル検討のケーススタディを行う。
(1)ケーススタディ対象都市の抽出・選定
ケーススタディを行う都市については、ヒアリング調査、視察調査を行った 17 都
市を参考に、都市の規模、地域的条件等から選定する。
a.対象都市の抽出
① 都市規模による抽出
「図表 3.2
政策・課題対応リスト」では 17 都市を地方自治法等に基づいた地
方公共団体の都市制度区分による都市規模で整理している。
中国地域の都市をこれら 17 都市の規模と対比しやすくするために、同様に地方
自治法等に基づく都市制度区分及び平成 23 年にちゅうごく産業創造センターで実
施した「中国地域の 5 県および生活圏の経済的な自立と持続のための方策調査」で
採用した生活圏により整理した結果を
「図表 3.8
中国地域の都市の区分」
に示す。
対象となる都市は 40 都市あり、山陽側には、広島市、岡山市の政令指定都市の
大都市、倉敷市、福山市、下関市の 3 つの中核市がある。そのほかの 35 都市は、
人口が 25 万人以下の“いわゆる”地方都市である。
調査を実施した 17 都市は、都市の規模を問わず様々な工夫によりまちづくりに
取り組んでいる。まちづくりの規模は、周辺を含めた都市人口に比例することにな
る。
ケーススタディの対象都市は、中国地域の大都市、中規模都市、地方都市から各々
1 都市ずつ抽出することとする。
− 107 −
図表 3.8
中国地域の都市の区分
都市制度区分
県名
都市名
指定都市
中核市
特例市
中心市※
連携中枢
都市
○
生活圏
人口
(千人)
鳥取
○
◎
○
194
倉吉
◎
○
50
米子
○
150
◎
松江
○
○
○
206
出雲
◎
○
175
安来
△
41
島根
雲南
○
42
大田
○
38
浜田
◎
○
58
益田
◎
○
50
岡山
○
△
○
○
705
倉敷
○
△
○
○
483
備前
◎
38
津山
△
○
106
玉野
○
64
岡山
総社
○
68
笠岡
○
53
高梁
○
34
真庭
○
49
美作
○
30
広島
○
△
○
○
1,187
呉
○
△
○
○
238
三原
△
○
99
尾道
△
○
145
福山
○
△
○
○
473
広島
府中
△
42
三次
△
56
○
庄原
△
39
東広島
○
184
竹原
○
28
下関
○
◎
○
○
278
宇部
△
172
○
山陽小野田
65
山口
◎
○
195
萩
◎
○
52
山口
下松
△
56
岩国
△
○
143
長門
◎
37
柳井
○
34
周南
△
○
150
※ 中心市の区分 ◎;宣言あり、○;ビジョンあり、△;宣言なし
出典:都市制度区分、生活圏、人口の出典は以下のとおり。(平成 27 年 2 月 13 日時点で整理・作成)
都市制度区分 総務省ホームページ。なお、中心市については、各都市のホームページでも確認。
生活圏 中国地域の 5 県件及び生活圏の経済的自立と持続のための方策調査/平成23 年2 月/公益財団法人 ちゅうごく産業創造センター
人口
住民基本台帳に基づく平成 26 年 1 月 1 日現在の人口/総務省統計局
注記 1:本表は、都市制度区分に該当する都市のみ記載している。
注記 2:都市制度区分の根拠法令等は以下のとおり。
指定都市
地方自治法第 252 条の 19 第 1 項の規定により政令で指定
中核市
地方自治法第 252 条の 22 第1項の規定により政令で指定
特例市
地方自治法第 252 条の 26 第 3 項の規定により政令で指定
中心市
定住自立圏構想
連携中枢都市 連携中枢都市圏構想推進要綱/平成 27 年 1 月 28 日(総行市第 4 号)一部改正
鳥取
− 108 −
② 公共施設マネジメントの取り組み状況による抽出
地方自治体では、少子高齢化等の人口構造の変化による税収の減少や社会保障費
の増加等により、財政状況が厳しくなることが想定されている。
このような中、高度経済成長期に集中的に整備された公共施設の老朽化が進行し
ており、今後の公共施設のリニューアルに対するコスト増加が、地方自治体の課題
となっている。この課題解決のため、公共施設のリニューアルを計画的に進めるた
めの公共施設マネジメントの必要性が認識され始めており、各地方自治体でその取
り組みが始まっている。
中国地域の各都市のうち、図表 3.9 に示す 16 都市では「公共施設白書」等を策
定し、公共施設マネジメントに積極的に取り組んでいる。
公共施設白書等を策定している 16 都市においては、自らが管理する公共施設の
建築後の経過年数を整理しており、図表 3.10 に示すとおり、各都市とも公共施設
のうち建築後 30 年以上の割合が高い状況にある。
ここで、国土交通省の調査によると、建築後 30 年を超える建物の修繕費は高く
なる傾向にあるとの報告がなされており、今後、各都市で公共施設の修繕費用が増
加してことが予想される。また、鉄筋コンクリート造の建物の一般的な耐用年数は
50 年ないし 60 年と言われており、近い将来、建替も念頭に置いた本格的なリニュ
ーアルが実施されるものと想定される。
このような状況を勘案し、公共施設マネジメントに積極的に取り組み、かつ、公
共施設の建築後の年数が高い割合を示す都市を対象都市として抽出することとす
る。
− 109 −
図表 3.9
県
名
中国地域における「公共施設白書」等の作成状況
地方自治体
資料名
策定年度
鳥取県
鳥取市
米子市
公共施設白書
公共施設白書
H26. 2
H26. 3
島根県
松江市
公共施設白書
H25. 6
岡山県
真庭市
笠岡市
玉野市
倉敷市
公共施設管理運営方針一覧表
公共施設の現状と課題
公共施設白書
公共施設白書
H24. 9
H23. 7
H24.12
H25. 3
広島県
廿日市市
呉市
江田島市
福山市
広島市
公共施設白書
公共施設白書
公共施設白書
公共施設サービス再構築基本方針
ハコモノ白書
H23.
H23.
H25.
H25.
H26.
山口県
宇部市
周南市
防府市
光 市
公共施設白書
公共施設白書
公共施設白書
公共施設白書
H25. 3
H25.11
H26. 3
H26. 7
3
3
3
3
1
注記 1:各地方自治体ホームページにおける公共施設白書等を基に、平成 27 年 2 月 13 日現在
で整理・作成。
注記 2:上表の各地方自治体が策定した公共施設白書等のうち、公共施設の現状認識及び今後
の対応方針等を整理した内容を参考資料−2に添付する。
図表
3.10
図表1.14
築 30 年以上の公共施設の割合
築30年以上の公共施設数の割合
(%)
0
10
20
30
40
鳥取市
米子市
松江市
笠岡市
玉野市
倉敷市
廿日市市
呉市
江田島市
福山市
広島市
宇部市
周南市
防府市
光市
− 110 −
50
60
70
b.対象都市の選定
前項における検討結果を基に、対象都市として、
① 中国地域の大都市、中規模都市、地方都市から各々1 都市
② 公共施設マネジメントを実施しており、公共施設の建築後の年数が高い割
合を示す都市
を抽出することとし、本調査における検討委員会での意見や山陽・山陰といった
地理的な条件を考慮して、対象都市は「図表 3.11 中国地域における対象都市の
選定」に示すように、広島市、倉敷市、米子市の 3 都市とした。
図表 3.11
都市名
人口(千人)
広島市
1,187
倉敷市
483
米子市
150
中国地域における対象都市の選定
都市の状況から見た選定理由
・中国地域一の大都市であり、集客力のある都市である。
・駅前地区の再開発、広島駅の自由通路、郊外の商業施設の建設、
JRと新交通システム駅のアクセスターミナルの設置等、商業
施設から交通基盤までの幅広い整備が推進されている。
・中国地域の中心都市として、人口も多く集客力があり、大規模
で様々な事業を推進することが可能な都市である。
・公共施設の建築後 30 年以上の割合が 59%と、最も高いグルー
プに位置づけられる。
・沿岸部に工業地帯を有する中規模都市で、にぎわいの中心は駅
周辺部にある。
・倉敷駅周辺は、駅の北側に若年層・家族層が対象のアウトレッ
ト、駅の南側には美観地区の観光地があり、一帯のにぎわいを
保っているが、この 2 つのにぎわい拠点の中間にある駅南地区
の商店街は活気が失われつつある。
・古くからの商業地で、市民がまちづくりを進めた歴史があり、
行政・市民が一体となってまちづくりを推進できる地区であ
る。
・公共施設の建築後 30 年以上の割合が 62%と、最も高いグルー
プに位置づけられる。
・山陰のほぼ中央に位置する人口約15万人の商業都市であり、
高速道路や鉄道が整備され、山陰と山陽を結ぶアクセス拠点と
なっている。
・市内には、中心部を走る国道沿線に、百貨店、公会堂等の市民、
および周辺市町からも人々が集う施設、店舗がある。
・米子駅地区は駅の南北を結ぶ自由通路が計画されており、ビジ
ネスホテル、コンベンションセンター等の市外からの来訪者を
受け入れる施設がある。
・山陰地区の3都市の中では、公共施設の建築後 30 年以上の割
合が最も高い。
− 111 −
(2)選定都市のケーススタディ
以下にこれら 3 都市のケーススタディの結果を示す。
a.広島市のケーススタディ
a)事業目的の設定のためのまちづくりの現状と上位計画
① まちづくりの現状
現在広島市では、広島駅周辺地区の再開発、大型ショピングモールを核とした
郊外(石内東)の商業施設の建設、広島駅の自由通路、JRと新交通システム駅の
アクセスターミナル(新白島駅)の設置等、商業施設から交通基盤までを含めた多
くの事業が推進されている。
広島市の現状のまちづくりの状況
広島市郊外の商業施設を核とした開発
広島駅周辺地区の再開発の状況
JRと新交通システムを連結する
ターミナルの建設
広島駅の自由通路建設に向けた
駅構内のコンコース
写真提供:広島市(市民と市政
平成 26 年 12 月 15 日掲載)
広島駅周辺で進む市街地再開発事業、郊外での商業施設の建設、交通基盤の整
備など様々な事業が行われていることから見ても、人口が集積する広島市は中国
地域の中心都市として周辺市町から多くの市民を集客している。
− 112 −
② 広島市都市計画マスタープラン
広島市では、2013 年 8 月に「広島市都市計画マスタープラン(以下「広島市マ
スタープラン」という。)」を改訂し、図表 3.12 の 2030 年を目標年次とした都
市づくりの方針を示している。
図表 3.12
広島市都市計画マスタープラン
出典:広島市都市計画マスタープラン 概要版/2013 年 8 月/広島市より転載、一部加筆
− 113 −
広島市マスタープランでは、国際平和文化都市として、“活力”、“魅力”、
“快適性”を備えた「世界に誇れるまちづくり」を目指している。
キーワードの“活力”の「活力とにぎわいにより、中四国地方の発展をリー
ドする都市」にあるように、中国地域の中心都市として、規模・質とともに先
進性のあるまちづくりが求められる都市である。
b)活用できるリニューアル事例の選定
上記想定された事業目的を踏まえ、参考となるリニューアル事例として、図表
3.13 の都市の取り組みがあげられる。
図表 3.13
広島市に参考となるリニューアル事例
事業に対応する図表 3.2 の
参考となる
事業の概要
事例の都市
政策・課題対応リストの項目及び
事業概要の詳細の参照ページ
国内有数の業務エリアの大手町において、 2.事業推進の視点
合同庁舎跡地を「種地」とし、事業の継続 (1)手法の工夫
東京都
特別区
を図りながら都市機能を移転・開発。(連
a.事業推進の円滑化の工夫
鎖型都市開発)
①連鎖型都市開発
観光客も含め、来街者の多い銀座地区にお
(95 ページ)
いて、壁面後退・建築高さ制限の規制によ 2.事業推進の視点
り街並みの美観を創出し、規制とあわせて (3)制度の活用
容積率の緩和を図ることで商業機能を集
c.民間活力の活用の工夫
積させる。(街並み誘導型地区計画、機能
②用途の誘導にむけた制度
更新型高度利用地区)
(インセンティブの付与)の導入
(100 ページ)
路面電車、バスなどの公共交通機関の利便 1.事業の戦略性の視点
性を向上させることにより、公共交通機関 (2)拠点性向上
を市街地の回遊手段とし、市内各地の市街
富山市
地を連携する“公共交通を中心とした拠点
集中型のコンパクトなまちづくり”を推進
c.広域の視点による機能確
保の工夫
②施設への広域アクセス手
段の確保
している。
(90 ページ)
河川改修、公園整備と連動した、広域の集 1.事業の戦略性の視点
北九州市
客を目的とした商業・業務・教育施設等か (1)機能向上・転換、高度利用
a.施設機能の複合化の工夫
らなる複合施設の整備
(85 ページ)
− 114 −
c)事業手法の“工夫”の活用例
前項の、広島市と同等の都市規模のまちづくり、およびその他の類似事例から、
参考とすることができる政策・課題対応リストの“工夫”をまとめる。
① 市内の跡地を利用した連鎖型都市開発
参考となる政策・課題対応リストの工夫:
2.事業推進の視点 (1)手法の工夫
a.事業推進の円滑化 ①連鎖型都市開発
広島市内では、多くの事業が推進されているが、広島市民球場の広島駅地区へ
の移転にみられるように、現在は広島駅周辺地区が街の開発の中心となっており、
市内には、旧市民球場跡地や広島西飛行場など、相応の面積を有しながらも用途
が確定していない用地(以下、「用途検討中の用地」という)がある。
図表 3.14
広島市のまちづくりの状況
開発が進む
広島駅地区
【凡例】
●:用途検討中の用地
●:建築後 40 年以上の施設
写真提供:広島市(旧広島市民球場跡地及び広島西飛行場)
また、市内中心部には、建設後 40 年を経過した大手百貨店・バスターミナルか
らなる複合施設をはじめ、今後リニューアルが必要となる施設が存在する。事業
− 115 −
を継続しながらリニューアルが求められる都市施設は、その耐用年数を考慮しつ
つ、順次、用途検討中の用地等への移転・新築が考えられる。
“連鎖型都市開発”の工夫を適用し、利便性の良い用地に都市施設を整備する
ことで、新たな都市機能を創出することができる。〔詳細は、別冊の東京都千代
田区大手町:138 ページを参照〕
② 街並み誘導型地区計画
参考となる政策・課題対応リストの工夫:
2.事業推進の視点 (3)制度の活用
c.民間活力の活用の工夫
②用途の誘導に向けた制度(インセンティブの付与)の導入
市内には、広島駅と紙屋町・八丁堀の市内中心部を結ぶ路面電車の沿線周辺か
ら広島城南通りの一体に商業施設、業務施設が立地している。
これら一帯は、市民のにぎわいの拠点であるとともに、平和文化都市として多
くの観光客も行き交う市街地となっている。今後も施設の新設・更新が見込まれ
る地区であり、観光客も含め市外からの来街者も多い。
“街並み誘導型地区計画”の工夫を適用し、壁面後退・高さ制限の規制により
美しい街並みを揃え、容積率の緩和により土地の有効利用を図ることで、東京都
中央区銀座地区の事例にみられるように、“魅力あるまちづくり”を進めること
ができる。〔詳細は、別冊の東京都中央区銀座:148 ページを参照〕
広島市の市街地と銀座地区の街並み誘導制度による街並み
広島市内の街並み
(壁面、高さが揃っていない)
壁面、高さの整備された銀座の街並み
− 116 −
③ 公共交通機関による中心部への集客
参考となる政策・課題対応リストの工夫:
1.事業戦略性の視点(2)拠点性の向上 c.広域の視点による機能確保の工夫
②施設への広域アクセス手段の確保
広島市民球場の広島駅地区への移転等、市内の新規開発は広島駅周辺が多くな
り、駅地区は若い世代、家族層が訪れている。市内中心部は百貨店、商店街もあ
りにぎわいが保たれているが、広島駅周辺においても人の流れが増えつつある。
市内中心部の百貨店、商店街は、現在の高齢層が若いころ訪れていた市街地で
もある。広島市内は路面電車が市街地を走り、郊外からのバス路線も整備されて
いる。
市内中心部の商店街の状況と市内中心部を走る路面電車・バス
写真提供:広島市
大都市の事例ではないが、高槻市、富山市では、郊外に居住する高齢層を対象
としたバス、路面電車の利用の優待制度により、高齢者の来街につなげている。
広島市においても、高齢者への公共交通機関利用への市の助成、交通事業者に
よる利用料金の割引制度が導入されている。人口の多い広島市においては、対象
年齢の引き下げ、あるいは、商店街への来街を対象とした制度の拡充により、高
齢者層が親しんでいた市内中心部への来街者の増加が見込まれる。
“施設への広域アクセス手段の確保”の手法を適用することで、中心市街地へ
の来街者の増大を図り、近年にぎわいを見せている広島駅周辺地区と一帯でにぎ
わいをもたらすことができる。〔詳細は、別冊の高槻市:175 ページ、富山市:
222 ページを参照〕
④ 広域の集客を目的とした複合施設の整備
参考となる政策・課題対応リストの工夫:
1.事業戦略性の視点 (1)機能向上・転換、高度利用 a.施設機能の複合化の工夫
− 117 −
広島駅前から紙屋町・八丁堀にかけては、商業・業務機能を中心に市街地が形
成されている。また、広島市内6河川のうち、元安川、京橋川及び猿猴川が流れ、
平和記念公園、中央公園や広島城など、自然環境にも恵まれている。
中国地域を牽引する役割を担う広島市では、このような立地条件を活かし、こ
れまでにも高次都市機能をはじめとした都市施設が集積され、逐次、その維持・
更新に伴うリニューアルが行われてきた。
リバーウォーク北九州
北九州市では、河川整備や既往の小倉
城庭園公園等を活かし、市役所に隣接し
て、商業施設、文化・交流施設、業務施
設及び大学など、多様な都市施設を集積
した複合施設・リバーウォーク北九州を
整備し、海外からの観光客も含め、集客
力の向上を図っている。
広島市の市街地においても、前述の連鎖型都市開発や街並み誘導型地区計画を
考慮しつつ、商業施設や情報・通信施設、行政施設、総合病院、大学、行政施設
など、多様な都市施設を集約・整備し、市民が集いにぎわいを創り出す空間とし
てリニューアルしていくことが考えられる。〔詳細は、別冊の北九州市:169 ペ
ージを参照〕
都市機能の集約した広島市では、「図表 3.2
政策・課題対応リスト」からの
参照した 4 項目以外にも、適用できる工夫は多くある。
− 118 −
b.倉敷市のケーススタディ
a)事業目的の設定のためのまちづくりの現状と上位計画
① まちづくりの現状
倉敷市は、観光地、商業施設、工業地帯が一体の都市で、行政・市民が一体で
まちづくり推進してきた都市である。
沿岸部は国内有数の重工業、コンビナートの工業地帯があり、市街地は倉敷駅
周辺が中心となっている。
倉敷駅の南北には、周辺地域からの来街もある商業施設、県外からの来訪者も
多い観光施設がある。
図表 3.15
倉敷市のまちづくりの状況
アウトレットパーク
若年層、家族層の来街が
多い駅北地区
アリオ倉敷
駅南商店街
観光客が多い駅南の
美観地区
倉敷駅物語館
− 119 −
特に、中国地域の有数の観光地である倉敷市の美観地区では、古民家を利用し、
美観地区に適した“上質・高質・本物を体験できる場”として、行政・住民が共
同し「倉敷物語館周辺再生整備事業」が進められている。
図表 3.16
「倉敷物語館周辺再生整備事業」による“上質・高質・本物を
体験できる場”をコンセプトとする施設
林源十郎商店:地元産のデニムによる
上質衣料品の販売店
奈良萬の小路
地元食材を利用した飲食店舗街
倉敷物語館:市民から寄贈された古民家を市
が改修し建設した美観地区の情報発信拠点
出典:倉敷市提供資料より転載、一部加筆
− 120 −
② 倉敷市都市計画マスタープラン
倉敷市においては、2008 年に「倉敷市都市計画マスタープラン(以下「倉敷市
マスタープラン」という。)」を策定し、概ね 20 年後を目標年次としたまちづく
りの目標を示している。
図表 3.17
倉敷市の都市計画マスタープラン
出典:倉敷市都市計画マスタープラン/2008 年/倉敷市
マスタープランでは、“市民協働のまちづくり”が中心にあり、“拠点の活性
化と地域連携による活力あふれるまちづくり”の方針が示されている。調査事例
では、倉敷市と同規模の中規模都市では、都市にあるにぎわいの拠点の回遊性に
よる一体の開発が取り組まれている。
倉敷市では、駅の南北にある商業施設、観光施設のにぎわいの拠点を連携し、
この 2 つのにぎわい拠点の中心部にある商店街の活性化等、駅地区一帯の回遊性
を高めるまちづくりが進められている。
− 121 −
b)活用できるリニューアル事例の選定
倉敷市に参考となるリニューアル事例として、図表 3.18 の都市の取り組みがあ
げられる。
図表 3.18
参考となる
事例の都市
倉敷市に参考となるリニューアル事例
事業に対応する図表 3.2 の
事業の概要
政策・課題対応リストの項目及び
事業概要の詳細の参照ページ
高松市
高松駅から約 1km にある丸亀町商店街を、 3.リスク対応の視点
商店街の店主が中心となりまちづくり会 (1)事業費の側面
a.赤字回避の工夫
社を設立し、定期借地権により約 2.7km に
②定期借地権の活用
およぶ商店街を、利用者のニーズに適した
(101 ページ)
店舗構成に一括で再開発した。
金沢市
金沢市の近江町いちば館は、市場内の上階 2.事業推進の視点
(1)手法の工夫
に、市民センター、幼児の遊戯場・託児室
a.事業推進の円滑化の工夫
を併設し、市場の商品購入者以外の集客も
②関連施設との一体整備
図っている。
(95 ページ)
高槻市
駅に隣接して、商業施設(地元スーパ)、住 1.事業の戦略性の視点
宅施設、福祉施設(保育園)からなる複合施 (1)機能向上・転換、高度利用
a.施設機能の複合化の工夫
設を建設。住宅施設は、ほほ即日完売で事
(85 ページ)
業費の確保に繋がっている。複合施設は、
b.アクセスの快適性向上の工夫
駅からペデストリアンデッキで直結させ、 ②歩行空間の快適性向上
来街者の利便性を図っている。
(88 ページ)
− 122 −
c)事業手法の“工夫”の活用例
前項の、倉敷市と同等の都市規模のまちづくり、およびその他の類似事例から、
参考とすることができる政策・課題対応リストの“工夫”をまとめる。
① 定期借地権による駅南商店街の再開発
参考となる政策・課題対応リストの工夫:
3.リスク対応の視点(1)事業費の側面 a.赤字回避の工夫
②定期借地権の活用
倉敷駅周辺には、駅北には若年層・家族層の来街するアウトレット等の商業施
設、駅南には観光客の多い美観地区の 2 つのにぎわいの拠点がある。このにぎわ
いの拠点の中心にある、駅南商店街を多様な年齢層が訪れる商店街とすることに
より地域一体の回遊性により集客を確保できると考えられる。
高松市の丸亀町商店街では、商店主がまちづくり会社を興し、定期借地権方式で
約 2.7km におよぶ商店街を一括再開発することにより、次の成果が得られている。
・60 年の定期借地権契約により、土地の所有権と使用権を分離しての商店街の
一括の開発で、消費者のニーズに合わせたテナント作り(テナントミックス)
が可能となり、商店街の来街者が、バブル期のピーク時(通行者も含めて約
35,000 人/日)に戻りつつある。
・テナントほか、マンションやクリニック棟の整備により、上質の生活環境が
整備され、
商店街の居住者が増加した(開発前の 75 人から開発後約 1,100 人)。
倉敷市は行政・市民が一体でまちづくりを進めている地区であり、期間をかけ
て、規模の大きい商店街の再開発も可能である。
提案する“定期借地権の活用”の手法を適用することで、上記の高松市と同等
の効果が得られると考える。〔詳細は、別冊の高松市:182 ページを参照〕
図表 3.19
定期借地権による高松市丸亀町商店街の再開発の概要
出典:高松丸亀商店街振興組合提供資料
− 123 −
② 商店街に住宅、医療、子育て支援施設等関連施設との一体整備
参考となる政策・課題対応リストの工夫:
2.事業推進の視点 (1)手法の工夫 a.事業推進の円滑化の工夫
②関連施設との一体整備
前述のように、高松市の丸亀町商店街では、医療機関併設型マンションの建設
により、上質の生活環境が整備され居住者が増加している。商店街への住宅施設
整備の事業化が十分に見込まれるとともに、商店街の地権者の住居とすることも
できる。
また、金沢市の近江町いちば館は、幼児の遊戯場・託児室を併設し、市場の商
品購入者以外の集客も図っている。〔詳細は、別冊の高松市:182 ページ、金沢
市:215 ページを参照〕
倉敷駅南側の商店街に近接して倉敷中央病院が立地しており、医療面での生活
環境は極めて良好であると考えられる。介護施設・子育て施設などの関連施設
を一体的に整備することで、医療・介護と一体となった安心・安全な生活環境が
確保され、商店街への多様な年齢層の居住を促すことができるものと考えられる。
商店街等に併設した住宅施設、子育て支援施設
商業施設
マンション
住宅施設
丸亀町商店街に建設されたマンション
近江町いちば館の3階の遊戯場・託児室
(交流プラザ)
− 124 −
③ ペデストリアンデッキの拡張
参考となる政策・課題対応リストの工夫:
1.事業戦略性の視点 (1)機能向上・転換、高度利用 b.アクセスの快適性向上の工夫
②歩行空間の快適性向上(ペデストリアンデッキ)
市民、来訪者の多くの人が利用する駅は、バス・電車等の交通の接点であり、
多くの車両が通行するので、信号による通行の遮断等、利用者が目的の施設に向
かうには、行動を制約されることになる。
駅に隣接して複合施設を建設した高槻市の駅前の再開発では、駅に直結して、
駅前道路を横断し、商業施設、バスターミナル等の各施設に直接繋がるペデスト
リアンデッキの建設で、来訪者の利便性を高めている。〔詳細は、別冊の高槻市:
175 ページを参照〕
倉敷駅に既にあるペデストリアンデッキを延長・拡幅し、よりゆとりのある歩
行空間とすることで、駅北のアウトレット等の商業施設、駅南の商店街や美観地
区に来街者を誘導し、駅一帯の回遊性を高めることができる。
駅に併設したペデストリアンデッキ
商業施設
←商業施設
高槻駅→
ペデストリアンデッキ
ペデストリアンデッキ
国道横断部は歩道橋になっている
倉敷駅南側のペデストリアンデッキ
− 125 −
高槻駅のペデストリアンデッキ
c.米子市のケーススタディ
a)事業目的の設定のためのまちづくりの現状と上位計画
① まちづくりの現状
市民の集うにぎわい施設は国道沿線にある。JR米子駅は、県内外の来訪者の
拠点となっている。
米子市は、古くから山陰地区の経済の中心地として発展した都市で、日野川河
口の平野に広がる市街地は、市街地開発、区画整理事業が段階的に行われてきた。
市内には、山陰の幹線道路の国道 9 号線、国内有数の漁獲量のある境港市に繋
がる国道 431 号線がある。この 2 つの国道沿線には、百貨店、公会堂、衣料・電
化製品の量販店があり、市民の集う地域となっている。
交通の拠点であるJR米子駅地区は、ビジネスホテル、コンベンションセンタ
ーがあり、市外からの来訪者の拠点となっている。また、観光客が多く訪れるア
ニメで人気の隣接する境港市につながるJR境港線の始発駅であり、観光客の多
い駅である。
この米子駅では、駅の南北を繋ぐ自由通路の建設が計画されている。
図表 3.20
米子市のまちづくりの状況
【凡例】
●:公共施設
●:商業施設
天満屋
国道沿線に市民の集う
施設・店舗が多い
鳥取大学病院
公会堂
米子市役所
鳥取県西部事務所
自由通路の建設が計画されている
米子駅南地区
イオン
− 126 −
② 米子市都市計画マスタープラン
米子市では、2004 年に「米子市都市計画マスタープラン(以下「米子市マスタ
ープラン」という。)」を策定し、2020 年を目標年次としたまちづくりの目標を
示している。また、2011 年に「第2次米子市総合計画(以下「総合計画」という)」
を策定し、行政運営の総合的な指針を示している。
図表 3.21
米子市都市計画マスタープラン
出典:米子市都市計画マスタープラン/平成 16 年 3 月/米子市より転載、一部加筆
都市計画マスタープランでは、“活力ある中心市街地形成”、“地域特性に応
じた市街地対策”が明確に示されている。市街地は、百貨店、市役所等のある国
道 9 号線沿線が中心である。駅の自由通路の計画されている米子駅と中心市街地
は、約 1km 圏内にあり、駅地区の開発より、一帯のにぎわいをもたらすことが望
まれる。地方都市において、JRは重要な交通基盤でありにぎわいの拠点である。
− 127 −
b)活用できるリニューアル事例の選定
米子市に参考となるリニューアル事例として、図表 3.22 の都市の取り組みがあ
げられる。
図表 3.22
参考となる
事例の都市
米子市に参考となるリニューアルの事例
事業に対応する図表 3.2 の
事業の概要
政策・課題対応リストの項目及び
事業概要の詳細の参照ページ
長岡市
駅周辺に市役所機能を分散配置し、市民 1.事業の戦略性の視点
の回遊性の確保することで中心市街地の (1)機能向上・転換、高度利用
a.施設機能の複合化の工夫
活性化を図っている。
②庁舎機能の導入
(85 ページ)
岡山市
複合施設を駅に隣接して建設するととも 1.事業の戦略性の視点
に、駅の東西を結ぶ自由通路が解放され (2)拠点性向上
d.面的な拠点整備の工夫
ることで利用者の利便性が向上し、駅周
②鉄道関連施設との一体整
辺の商業施設等への来訪者の増加に繋げ
備
ている。
(91 ページ)
地方都市では、都市施設の床需要が見込
鹿屋市
3.リスク対応の視点
みにくく、大規模開発を行った場合には (1)事業費の側面
リスクが生じることから、床需要などを a.赤字回避の工夫
十分に調査し、低容積型の再開発を行う ①身の丈に合った低容積型
施設の整備
ことで、財政基盤に応じた都市施設を整
(101 ページ)
備している。
− 128 −
c)事業手法の“工夫”の活用例
前項の、米子市と同等の都市規模のまちづくりの類似事例から、参考とするこ
とができる政策・課題対応リストの“工夫”をまとめる。
① 米子市の都市規模に適した複合施設の建設
−住宅施設、福祉施設、商業施設(地元商店)
参考となる政策・課題対応リストの工夫:
1.事業戦略性の視点(1)機能向上・転換、高度利用 a.施設機能の複合化の工夫
②庁舎機能の導入
地方都市においてJRの駅は主要な交通拠点であり、米子駅は観光客も多い。
調査事例では、都市規模にあった複合施設の整備により、にぎわいを創出して
いる。長岡市の事例では、分庁舎ほか市役所機能の一部を分散させ、一帯の回遊
性、
市民の利便性の向上を図っている(図表 3.23 の黒丸の 4 施設を駅周辺に配置)。
米子市役所は本庁舎の周辺に分庁舎がある。この市役所の分庁舎の機能を米子
駅南地区に整備することが考えられる。
このような庁舎機能に加え、住宅施設や商業施設など“施設機能の複合化の工
夫”の手法を適用することで、米子駅地区一帯のにぎわいをもたらすことができ
るものと考える。〔詳細は、別冊の長岡市:230 ページを参照〕
図表 3.23
長岡市の長岡駅周辺への市役所機能の配置図
出典:長岡市提供資料
− 129 −
② 鉄道関連施設との一体整備
参考となる政策・課題対応リストの工夫:
1.事業戦略性の視点 (2)拠点性向上 b.面的な拠点整備の工夫
②鉄道関連施設との一体整備
岡山市の中心市街地は、JR岡山駅を境にして駅東と駅西に二分されており、
都市基盤整備が遅れた駅西地区の地盤沈下を防ぐ目的から、駅西の玄関口にふさ
わしいランドマークとして、ホテル、文化施設、業務施設からなるリットシティ
ビルを建設した。更に、駅構内の東西を結
ぶ自由通路が建設されることで駅東口と連
携した複合都心を形成している。
米子駅南地区の土地利用の促進にあたっ
岡山駅の自由通路と商業施設を繋ぐ
ペデストリアンデッキ
商業施設
岡山駅側
ては駅南地区の都市施設と駅関連施設を一
体整備することで、南北地区の都市機能の
連携を図るとともに、未利用地の土地利用
の転換を誘導し、駅一帯の拠点機能の強化
に結び付けることが可能と考える。
〔詳細は、別冊の岡山市:162ページを参照〕
③ 身の丈に合った都市施設の整備
参考となる政策・課題対応リストの工夫:
3.リスク対応の視点(1)事業費の側面 a.赤字回避の工夫
①身の丈に合った低容積型施設の整備
地方都市においては、人口減少や高齢化の進展を背景に都市施設の床需要が見
込めない可能性がある。鹿屋市では、複合交流施設リナシティかのやの建設にあ
たり、床需要などを十分に調査した結果、当地区の用途地域に適用される容積率
400%ではなく、容積率 137%の「身
リナシティかのや
の丈に合った低容積率型の再開発
事業」とした。
米子市の中心市街地における年
間商品販売額、売り場面積ともに減
少傾向にあり、都市の経済規模や需
要に見合った適正な投資を進めて
いく必要がある。
出典:鹿屋市提供資料より転載
− 130 −
3.5.まとめ
本章では、全国における都市施設のリニューアル事業の中で参考となる特徴的な
取り組みがみられる 17 事業を取り上げ、各事例の政策課題とこれに対応するリニュ
ーアルの視点と工夫を「政策・課題対応リスト」として整理した。そして、「政策・
課題対応リスト」で整理した事業手法の工夫の各項目について、①事業戦略性の視
点、②事業推進の視点、③リスク対応の視点から特徴的な事例を例示して、詳細に
分類・整理した。
更に、実践の場で活用できるよう、「政策・課題対応リスト」の活用手順を示す
とともに、
中国地域の都市の中から公共施設の老朽化が進んでいる政令市、中核市、
地方都市各1都市を対象にケーススタディを行った。これにより、中国地域の都市
施設のリニューアル計画の検討のための一つのツールとして利用できることがわか
った。
本報告書では別冊として「リニューアル対応事例集」を添付している。これは、
各事例を担当された実務者の方々からリニューアルにあたっての苦労や工夫を詳細
にわたって聞き取ったものである。どの担当者の方からも熱心にお話をお伺いする
ことができた。そして、一様に、他地域の事例の詳細情報についてフィードバック
してもらいたいとのご要望をいただいている。
これは、どの地区においても真剣にまちづくりに取り組まれており、少しでも参
考になるような情報や工夫を得たいという熱意の表れであり、自らの街への誇りと
地域の産業振興・地域振興への責任感の表れだと深く感じさせられた。
各都市の公共施設白書からもわかるように、多くの地区で老朽化、陳腐化した都
市施設が存在している。厳しい財政状況の中で、都市機能向上のために都市施設の
リニューアルにあたり幾ばくかなりともお役に立てる資料になればと考えている。
− 131 −
あ と が き
1960 年以降の高度経済成長期に建設された施設が、いま一斉に老朽化の時期を迎え
ている。この中には都市機能として極めて重要な役割を担う施設も多く、その効果的
なリニューアルが求められている。一方、そのための具体策は個々の主体に委ねられ
ており、これまでの事例などを参考しながら最善の策を模索するほかなく、行政・民
間ともに非常に難しい判断を迫られている。
このような問題認識をもって、行政・民間・大学などで構成された「都市機能向上
のための都市施設のリニューアルに関する調査委員会(委員長:戸田常一広島大学教
授)」は発足した。本委員会では、全国の老朽化・陳腐化した都市施設のリニューアル
事例を調査・整理するとともに、実践の場において活用できるアウトプットを目指し
て検討が進められた。具体的には以下のとおりである。
1)多種多様な事例を対象とした現地視察と詳細なヒアリング調査
全国的な傾向を捉えた文献調査の中から特徴的な取組事例を抽出し、そのリニュー
アル対応について詳細に調査している。その対象は、首都圏の大都市から地方の小都
市までを含んだ 17 事例と幅広く多種多様な構成となった。各々の個別課題と対応策は
もちろんのこと、その裏側まで実践の場で活用できることであれば詳細にわたってヒ
アリングした。
2)実践の場で活用できる政策・課題対応リストとリニューアル対応事例集
これら調査結果を丹念に精査することでできあがったのが本報告書である。どの章
もとても充実した内容になっているが、特に政策・課題対応リストとリニューアル対
応事例集(別冊)は実務者の方々にすぐにでもご利用いただける成果物となっている。
前者は全国の参考事例を効率的に抽出し、各々のリニューアル対応を練るためのガイ
ドラインとして、後者は各事例について、じっくりと時間をかけて細部まで理解して
もらうためのデータベースとして別冊単体でも活用していただける。
このような報告書ができあがった背景には、現地視察のヒアリングに懇切丁寧にご
回答いただいた数多くの方々の協力があったことを忘れてはならない。なぜなら、本
調査報告書は、先に述べたように、その方々の現場の声にもとづいて、数あるエッセ
ンスを凝縮させたものだからである。関係各位には、あらためて御礼申しあげる次第
である。
平成 27 年 3 月
「都市機能向上のための都市施設のリニューアルに関する調査」委員会
副委員長
− 132 −
氏原
岳人
都市機能向上のための
都市施設のリニューアルに関する調査
別
冊
∼リニューアル対応事例集∼
別冊−1
調査の概要
・・・・・・・・・ 134
別冊−2
ヒアリング調査
別冊−3
視察調査
・・・・・・・ 137
・・・・・・・・・・ 206
− 133 −
別冊−1 調査の概要
目
次
調査の概要 ........................................................... 135
− 134 −
調査の概要
図表−1に示すように、本調査を進める上で参考となる 17 都市におけるリニューア
ル対応事例について、ヒアリング調査及び視察調査を実施した。
図表−1
1
特別区
NO
ヒアリング調査及び視察調査を行った 17 都市
都市名
事業名・計画名・施設名
大手町連鎖型都市再生プロジェクト
2
東京都中央区銀座
銀座地区のまちづくり計画
3
埼玉県さいたま市
浦和駅東口駅前地区第二種市街地再開発事業
愛知県名古屋市
有松駅前第一種市街地再開発事業
京都府京都市
京都御池中学校複合施設整備等事業
6
岡山県岡山市
岡山市駅元町地区第二種市街地再開発事業
7
福岡県北九州市
室町一丁目地区第一種市街地再開発事業
8
石川県金沢市
金沢市民芸術村
石川県金沢市
武蔵ケ辻第四地区第一種市街地再開発事業
富山県富山市
グランドプラザ整備事業
11
大阪府高槻市
JR高槻駅北地区第一種市街地再開発事業
12
香川県高松市
高松丸亀町商店街A街区第一種市街地再開発事業
新潟県長岡市
厚生会館地区市役所事務機能整備事業
静岡県沼津市
大手町地区第一種市街地再開発事業
宮城県大崎市
台町地区第一種市街地再開発事業
徳島県小松島市
井利ノ口地区第一種市街地再開発事業
鹿児島県鹿屋市
北田大手町地区第一種市街地再開発事業
指定都市
東京都千代田区大手町
4
5
10
特例市
13
中核市
9
14
16
その他
15
17
調査事例には、中国地域の多くの都市と同規模の人口 20 万人未満の都市から大都市
まで様々な都市がある。各都市とも、事業の目的を達成するため、工夫がなされてお
り、今後の中国地域の各都市のリニューアル対応のあり方の事例として活用できるも
のである。
都市施設のリニューアルは、地権者・住民の意見を聞き、合意を図りながら、計画
→施設建設→運営まで、期間を要する事業である。事業期間が長期となれば計画した
施設は機能が陳腐化し、目的とした機能を満たすことができない。
そのため、施設の整備は、事業の規模・事業の目的を明確にした上で、効率的・効
果的に進めることが重要となる。
このような状況を勘案し、次ページの図表−2に示すとおり、調査した 17 都市の事
例における“政策課題”と“工夫”を対応させた“政策・課題対応リスト”として整
理した。
− 135 −
等
− 136 −
3
リ
ス
ク
対
応
の
視
点
事
の業
側期
面間
(2)
事
業
側費
面の
(1)
制
度
の
活
用
(3)
体
制
確の
立
(2)
手
法
工の
夫
(1)
活
用ク
ッ
2
事
業
推
進
の
視
点
ス既
ト存
(3)
拠
点
性
向
上
(2)
高
度
利
用
、
1
事
業
戦
略
性
の
視
点
機
能
向
上
・
転
換
19.1
人口(千人)
高齢化率(%)
③少子・高齢化に配慮した機能の導入
②地域の特色を活かした機能の導入
①地域を知る地元の行政・住民による事業の推進
b.合意形成の円滑化の工夫
③自主事業の実施
②定期借地権の活用
①身の丈に合った低容積型施設の整備
a.赤字回避の工夫
④PFI手法の導入
③施設建替えに向けての規制緩和
②用途の誘導に向けた制度(インセンティブの付与)の導入
①民間事業者の参画制度の活用
c.民間活力の活用の工夫
③まちづくり会社の設立
②官民の連携
①自治体首長・事業者のリーダーシップの発揮
b.組織の整備の工夫
③建替え申請手続きの効率化
②関連施設との一体整備
①連鎖型都市開発
a.事業推進の円滑化の工夫
③未利用地の活用
②河川・公園・歴史的建造物等の活用
①地域主体による地域資源の活用(イベント開催等の場づくり)
e.地域資源の活用の工夫
④公園関連施設との一体整備
③河川関連施設との一体整備
②鉄道関連施設との一体整備
①道路関連施設との一体整備
d.面的な拠点整備の工夫
②施設への広域アクセス手段の確保
①広域利用者を意識した施設機能の導入
c.広域の視点による機能確保の工夫
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
47
−
②歩行空間の快適向上(ペデストリアンデッキ)
ク
北
九
州
レ
p230
ア
オ
p182
高
松
市
丸
亀
商
店
街
レ
長
岡
リ
オ
ラ
d
e
イ
p190
p187
商住
ネ
ふ
る
か
わ
リ
ナ
シ
テ
徳
島
赤
十
字
病
院
医
p200
p195
公商
か
の
や
組合
公共
公共
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
16.3
○
○
○
○
○
○
○
○
○
19.1
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
20.8
○
○
○
○
○
○
○
○
○
22.4
123 1,222 2,264 1,474
−
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
21.3
710
公共
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
24.8
977
組合
○
○
○
○
○
○
○
○
○
20.8
462
公共
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
20.8
462
組合
○
○
○
○
○
24.4
422
公共
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
23.2
357
組合
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
22.4
419
組合
○
○
○
○
○
○
○
○
25.4
283
公共
○
○
○
○
○
○
○
24.8
202
公共
○
○
○
○
○
○
○
○
○
24.4
135
個人
○
○
○
○
○
○
○
○
○
26.8
41
組合
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
24.8
105
組合
鹿児島
東京都 東京都 埼玉県 愛知県 京都府 岡山県 福岡県 石川県 石川県 富山県 大阪府 香川県 新潟県 静岡県 宮城県 徳島県
県
北九州
小松島
千代田区 中央区 さいたま 名古屋
京都市
岡山市
金沢市
金沢市
富山市
高槻市
高松市
長岡市
沼津市
大崎市
鹿屋市
大手町
銀座
市
市
市
市
事業主体
①交通ターミナル機能の快適性向上(交通広場、バス停)
b.アクセスの快適性向上の工夫
⑦業務機能の導入
⑥住宅機能の導入
⑤医療、福祉、子育て支援機能の導入
④教育機能の導入
③文化・交流機能の導入
②庁舎機能の導入
①商業機能の導入
a.施設機能の複合化の工夫
ェ
(1)
、
ー
都市名
ョ
商業防 公商業 公商居 公商居 公商防 公商業 公商防
公商防 公商防 公商居 公商居 公商防
公防都
公商防
都
都
住防 住防都
都
拠
居住防拠 住防
防
都
居住防
都
ィ
事業の目的※1
ー
ク
ト
ッ
ト
有
松
ォー
浦
和
パ
ル
コ
ウ
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レ
ア
ク
ト
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モ
グ
ラ
ン
ド
プ
ラ
ザ
近
江
町
い
ち
ば
館
金
沢
市
民
芸
術
村
リ
バ
リ岡
山
ト コ
シン
テベ
ン
ビシ
ル
ン
セ
ン
タ
京
都
御
池
中
学
校
ウ
イ
ン
ハ
p175
その他
聞取9 聞取10 聞取11 聞取12
特例市
聞取7 聞取8 視察5
p222
p215
p169
p162
p207
ー
p211
聞取5 聞取6 視察2 視察3 視察4
視察1
p157
聞取4
ー
注)赤字は主目的
公
商
業
居
住
防
都
拠
医
コ
ム
ナ
p153
聞取3
調査事例
中核市
ー
:
:
:
:
:
:
:
:
:
銀
座
地
区
の
ま
ち
づ
く
り
計
画
大
手
都町
市連
再鎖
生型
プ
ロ
ジ
事
業
名
・
計
画
名
・
施
設
名
p148
p138
指定都市
政策・課題対応リスト
ー
ー
※1事業の目的
公共施設の整備
商業の活性化
業務機能の集積
居住環境の改善
住宅の供給
防災機能の強化
都市機能の向上
拠点機能の強化
医療機能の整備
政策課題と工夫
聞取2
聞取1
事例No.
特別区
別冊ページ数
地方自治法に基づく
地方公共団体の区分
図表−2
ィ
別冊−2 ヒアリング調査
目
次
【聞取 1】
大手町連鎖型都市再生プロジェクト ............................. 138
【聞取 2】
東京都中央区銀座地区のまちづくり計画 ......................... 148
【聞取 3】
さいたま市
【聞取 4】
名古屋市緑区
【聞取 5】
岡山市
【聞取 6】
北九州市
【聞取 7】
高槻市
JR高槻駅北地区第一種市街地再開発事業 ............... 175
【聞取 8】
高松市
高松丸亀町商店街A街区第一種市街地再開発事業 等 ...... 182
【聞取 9】
沼津市
大手町地区第一種市街地再開発事業 ...................... 187
浦和駅東口駅前地区第二種市街地再開発事業 .......... 153
松駅前第一種市街地再開発事業 ................... 157
岡山市駅元町地区第二種市街地再開発事業 ............... 162
室町一丁目地区第一種市街地再開発事業 ............... 169
【聞取 10】
大崎市
【聞取 11】
小松島市
【聞取 12】
鹿屋市
台町地区第一種市街地再開発事業 ....................... 190
井利ノ口地区第一種市街地再開発事業 ................. 195
北田大手町地区第一種市街地再開発事業 ................. 200
− 137 −
【聞取 1】
ヒアリング日時
ヒアリング先
対応者
地区の概要
大手町連鎖型都市再生プロジェクト
平成 26 年 10 月 7 日(火) 14:00∼16:00
東京都千代田区大手町
関係する各事業者へのヒアリングにより作成
事業名 :大手町連鎖型都市再生プロジェクト
所在地 :東京都千代田区大手町
敷地面積:土地区画整理事業 約 17.4ha
第 1 次再開発事業 約 1.3ha(合同庁舎1・2号館跡地)
第 2 次再開発事業 約 1.4ha(第1次再開発参加地権者従前地)
第 3 次再開発事業 約 1.1ha(第 2 次再開発参加地権者従前地)
二丁目再開発事業 約 2.0ha
第 1 次再開発事業施工地区
第 2 次再開発事業施工地区
第 3 次再開発事業施工地区
二丁目再開発事業施工地区
位
置
図
出典:大手町連鎖型都市再生プロジェクトパンフレットより転載、一部加筆
事業の経緯
ヒアリング結果
契機:都心の大手町地区合同庁舎の跡地を活用した「連鎖型都市再生」
目的:
・大手町に立地する建物は、昭和 40 年前後にほぼ一斉に建設されたため、施設
面の老朽化が目立ち、中枢業務エリアとしての機能更新・土地の高度利用が
必要となっていた。
・大手町は、金融、情報通信、マスメディアなど、大規模な情報システムを備
えた 24 時間型稼動の業種が多く、仮移転を伴う建て替えは業務の連続性に支
障を来たすなど、再開発を行うには困難な制約条件があった。
・そこで、国内初の「連鎖型都市再生」の手法で、大手町合同庁舎の跡地を活
用することにより、エリア内の事業活動を中断、停滞させることなく、全体
を段階的かつ連続的に更新しながら開発した。
スケジュール:
・平成 14 年 7 月 都市再生緊急整備地域の指定(第 1 次指定)
「東京駅・有楽
町駅周辺地域」
− 138 −
事業の経緯
事業の概要
・平成 15 年 1 月
都市再生プロジェクトとして決定(第 5 次指定)
「大手町合
同庁舎跡地の活用による国際ビジネス拠点の再生」
・平成 15 年 3 月 大手町まちづくり推進会議発足
・平成 16 年 6 月 (有)大手町開発設立
・平成 17 年 3 月 都市機構が合同庁舎跡地 1.3ha を取得。
大手町地区にかかる都市計画決定(土地区画整理事業ほか)
・平成 19 年 3∼4 月 第 1 次再開発事業権利変換計画認可及び施設建築物工事着工
・平成 21 年 4 月 第 1 次再開発事業施設建築物竣工
・平成 22 年 4 月 第 2 次再開発事業施設建築物工事着工
・平成 24 年 10 月 第 2 次再開発事業施設建築物竣工
・平成 26 年 3∼4 月 第 3 次再開発事業権利変換計画認可及び施設建築物工事着工
1.大手町周辺地区の再開発の動向
(1)大丸有地区のまちづくり
東京駅を中心に大手町、丸の内、有楽町が位置し、これらの3地区は大丸有
(だいまるゆう)と呼ばれている。
六本木にアークヒルズが完成した昭和 61 年頃、東京では都市間競争が始まっ
ている。丸の内は、銀行、メーカーの本社はあるが、土日は人がいない、街
が閑散としていて活き活きしていないという状況で、平成 9 年頃に「丸の内の
黄昏」といった新聞記事が掲載されている。
東京都、千代田区、JR、大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会(70
∼80 社の企業)
、地権者が集まって、まちづくりの話合いが開始された。
丸の内地区の再開発が最初に進められた。その後、大手町地区の連鎖型開発
が進んでいる。現在、大手町地区は工事中、計画中の建物が多く、有楽町地
区は計画未着手の建物が殆どとなっている。大手町地区の後に、有楽町の開
発が進む予定となっている。
(2)大手町地区のまちづくり(連鎖型都市再生プロジェクト)
大手町地区は、機能更新の遅れ、地盤沈下気味といった背景があった。その
ような中で、国有財産審議会で大手町の老朽化する合同庁舎 1・2 号館の入札
による売却が一旦決定していたが、大手町の機能更新のために跡地を活用で
きないかという話があり、連鎖型都市再生プロジェクトが始まった。
連鎖型都市再生プロジェクトは、合同庁舎 1・2 号館跡地を土地区画整理事業
で建て替え希望の地権者の土地を換地し、仮移転なしで建物工事を行い、建
物完成後に移転するものである。
大手町地域は約 40ha。合同庁舎 1・2 号館跡地は約 1.3ha。大手町地区でも、
地権者 40 数社と行政を交えて「まちづくり推進協議会」を設立し、その中で議
論しながら事業が進められた。
位
置
図
出典:大手町連鎖型都市再生プロジェクトパンフレット
− 139 −
事業の概要
2.プロジェクトの特徴
(1)大手町地区再生時の課題
①中枢業務を担う建物の円滑な機能更新
当時、大手町地区では築 30 年以上の建物が殆どであり、第 1 次再開発事業に
参加した日経新聞の本社建物も老朽化していた。
しかし、本社建て替えを行う場合には、機能を維持するため別の場所に仮移
転する必要があった。仮移転の問題点として、新聞社では毎日編集する新聞
を発行する大規模システムが必要であるが、仮移転地、最終移転地の 2 回で
システム投資することは、難しいということがあった。
このため、1 回の引越しで済む本社移転の方法について検討されていた。
(同
じ時期に、合同庁舎 1・2 号館の入札による売却という話が出ていた。
)
②合同庁舎 1・2 号館跡地の有効活用
平成 13 年に防衛庁本庁跡地が入札による売却が行われ、民間企業により落札
されていたが、大手町でも同じように合同庁舎 1・2 号館跡地が入札によって
売却された場合、大手町の地盤沈下進行が懸念された。
このため、地権者、行政が一体となって跡地活用方法を議論し、合同庁舎 1・
2 号館跡地を機能更新に活用することとなった。
大手町地区の建物築年数の状況
出典:大手町連鎖型都市再生プロジェクトパンフレット
(2)合同庁舎 1・2 号館跡地活用に向けた仕組み作り
①第五次都市再生プロジェクトにおける大手町地区再開発の方針
大手町合同庁舎の活用方針は、平成 15 年の都市再生プロジェクト(第五次決
定)で位置づけられている。
大手町合同庁舎の活用方針は、「大手町合同庁舎跡地の活用による国際ビジネ
ス拠点の再生」の中で、国有地を活用して国際ビジネス拠点を再生していくと
いうことが謳われており、推進体制等の事業の枠組みを早急に整備していく
ことが述べられている。
国レベルで、合同庁舎 1・2 号館跡地有効活用のため、随意契約で払い下げる
仕組みを作り、都市再生に帰する目的に使うということを決めている。
− 140 −
事業の概要
②大手町地区再開発の推進体制
平成 15 年に、推進体制として全地権者、東京都、千代田区、大手町・丸の内・
有楽町地区再開発計画推進協議会から構成される「まちづくり推進会議」を発
足し、大手町まちづくり推進会議「基本方針」を確認している。
また、学識経験者も参加した「大手町まちづくりビジョン委員会」で「大手
町まちづくりのグランドデザイン」を提言し、土地持ち企業「(有)大手町開
発」が設立されている。
③合同庁舎 1・2 号館跡地売却の仕組み
国有地である合同庁舎 1・2 号館跡地は、国が一旦UR都市機構に随意契約で
払い下げを行った。
UR都市機構は、すべての跡地を保有することが難しかったため、大手町の
地権者で作る土地持ち企業「(有)大手町開発」が 2/3 を所有した。
(「(有)大手
町開発」は、デベロッパー中心で設立。SPCといっても良い。)
UR都市機構と(有)大手町開発は開発の権利を持たず、土地を移動していく
ための企業として機能し、連鎖型都市再生のしくみを構築した。
(3)大手町連鎖型都市再生の進め方
①大手町連鎖型都市再生の基本方針
・以下の基本方針に基づいて、プロジェクトが進められている。
○ 国際金融・情報通信・メディア産業などの集積を活かし、グローバルビ
ジネスの戦略拠点として再構築
○ 大街区による緑豊かな一体的都市空間の創造及びアメニティの確保
○ 神田・日本橋など隣接地区との有機的連携
○ 公民連繋のまちづくり
②連鎖型都市再生プロジェクトの流れ
・第一次再開発事業で合同庁舎1・2号館跡地を種地として新たな建物を建設し、
地区内地権者が移転。さらにその跡地を次の建て替え用地として、第二次、
第三次と連続的に街区更新を進めている。
・連鎖型都市再生は、成熟市場における大型再開発に適した革新的な開発手法
として注目を集めている。
第 1 次再開発事業は、都市再生機構が国有地(合同庁舎 1・2 号館跡地)を活
用して区画整理事業を実施し、大手町地区内で換地を行う事業者を募り、希
望した「日経新聞」、「経団連」、「JA」が移転した。
第 2 次再開発事業は、第1次再開発参加地権者の建物跡地に、建て替えを希
望した「日本政策投資銀行」、「公庫ビル・新公庫ビル(日本政策金融公庫)」、
「三菱総研ビル(三菱地所)」が移転した。
第 3 次再開発事業は現在進行中で、日本ビルの一部を移転する工事を行って
いる。三菱地所が手がけるビル建設地で温泉が出ており、ビル内に星野リゾ
ートが運営する純和風旅館を建設することが、話題となっている。
今後は、第 3 次再開発事業が終了後、第 4 次再開発事業が展開される予定。
③プロジェクト推進のための事業手法
合同庁舎 1・2 号館は、さいたま新都心に移転している。東京一極集中解消、
首都機能の分散・移転という当時の社会情勢、また、国庫負担軽減のための
一等地の行政庁舎移転という目的もあったと思われる。
・歴史的に大街区単位(2∼4ha)で土地利用の更新がなされてきた大手町の特
長を活かし、その大街区からなるブロックを計画単位として都市空間の形成
を進めている。
C工区(第 1 次再開発事業施工地区)は、周辺道路が既に整備されており区
− 141 −
事業の概要
画整理事業をどのように行うかという話があった。昭和 40∼50 年頃に都市計
画決定された日本橋川沿いの都市計画道路が、事業化されないまま現在に至
っていたため、この路線を整備するという目的で土地区画整理事業の手法を
とっている。
日本橋川沿いの都市計画道路は、歩行者専用道路として整備され、平成 26
年 4 月 22 日に開通している。川沿いの道路で、東京駅、日本橋にも繋がるこ
とからにぎわいが見込まれ、今後首都高速都心環状線高架が撤去される場合
は、良好な空間が構築される。
A工区(第 2 次、第 3 次事業施工地区)は、都道を廃道して土地を集約し大
街区化している。
連鎖型都市再生の流れ
出典:大手町連鎖型都市再生プロジェクトパンフレット
− 142 −
事業の概要
3.施設概要
(1) 各地区の施設概要
① 第1次再開発事業(大手町一丁目地区)
・施行者:有限会社大手町開発(地権者の同意による施工)
・地区・面積:合同庁舎1・2号館跡地 約1.3ha
・期 間:平成18年度∼平成25年度
・地権者:5者
・延べ床面積:約236,000m2
・階 数:日経ビル(地上31階)、JAビル(地上37階),経団連会館(地上23階・地下4階)
② 第2次再開発事業(大手町一丁目第2地区)
・施行者:独立行政法人都市再生機構(代表施行者)、三菱地所株式会社(共同施
行者) (地権者の同意による施工)
・地区・面積:第1次再開発参加地権者従前地 約1.4ha
・期 間:平成20年度∼平成28年度
・地権者:5者
・延べ床面積:約242,500m2
・階 数:大手町フィナンシャルシティ(ノースタワー(地上30階・地下4階)、
サウスタワー(地上34階・地下4階)
③ 第3次再開発事業(大手町一丁目第3地区)
・施行者:三菱地所株式会社(地権者の同意による施工)
・地区・面積:第2次再開発参加地権者従前地 約1.1ha
・期 間:平成25年度∼平成29年度
・地権者:3者
・延べ床面積:約205,000m2
・階 数:A棟(地上31階・地下4階)、B棟(地上18階・地下3階)
④ 二丁目再開発事業(大手町二丁目地区)
・施行者:独立行政法人都市再生機構(代表施行者)、エヌ・ティ・ティ都市開
発株式会社(共同施行者) (地権者の同意による施工)
・地区・面積:約2.0ha
・期 間:平成25年度∼平成30年度(予定)
・地権者:5者
・延べ床面積:約349,000m2
・階 数:A棟(地上35階・地下3階)、B棟(地上32階・地下3階)
出典:大手町連鎖型都市再生プロジェクトパンフレット
− 143 −
事業の概要
出典:大手町連鎖型都市再生プロジェクトパンフレット
(2)環境に配慮した都市基盤整備
①快適な歩行者専用道路等の整備
・緑豊かなアメニティ道路として、日本橋川沿いに歩行者専用道路を整備した。
特殊街路千代田歩行者専用道第6号線(幅員12m)
歩行者専用道沿いに設置されている環境啓発施設
②ヒートアイランド対策、CO2削減
・敷地内外の緑化や保水性塗装の採用などにより、ヒートアイランド現象を緩
和。地域冷暖房システム、ペアガラス等、省エネルギー化にも取り組んでい
る。
大手町タワー横の「大手の森」
注記:大手町土地区画整理事業施工地区外
− 144 −
事業の概要
③BCP対策と防災機能
・非常用発電機により、ビル用設備を約72時間稼動可能としている。また、災
害時には来訪者にアトリウム空間を提供、物資提供や救護活動を行うことが
可能。
(3)特定施設建築物としての建設
・特定建築者制度により「特定施設建築物」として建設している。
注記:特定建築者制度
・市街地再開発事業において、施行者以外の者が、施行者に代わって施設建築物
を建設し、権利変換計画の定めにより自ら建設した建築物の保留床(権利者が
取得する床以外の床)を取得する制度。
・特定施設建築物を建設する事業者は「特定建築者」となる。
事業の成果
1.容積率の緩和による民間開発の意欲促進
(1)用途地域見直しと地区計画による容積率の緩和
大手町地区は地価が高いため、民間企業にとって容積率を確保することが重
要となる。平成 16 年に用途地域見直しの際、容積率 1,000%だったものを地
区計画と合わせて 1,300%に見直している。
(2)都市再生特別地区の民間提案による容積率の緩和
更に容積率を上げる場合、都市再生特別措置法で創設された都市再生特別地
区(特区)で、地下鉄の地下道を整備する、地下鉄と直結するといった民間
提案により、容積率緩和が行われている。日本橋川沿いの歩行者専用道路も
民間提案で整備されており、容積率の上積みが行われている。
・都市再生特別措置法で創設された都市再生特別地区(特区)による容積率の
最高限度を、第 1 次再開発事業施工地区は 1,590%、第 2 次再開発事業施工地
区は 1,570%、第 3 次再開発事業施工地区は 1,650%の容積率で都市計画決定を
受けている。これにより、高容積の開発として進められている。
注記:第 4 次再開発事業は開発前だが、行政特区として現状 1,500%強に見直 さ
れており、最終的には民間提案により 1,600∼1,700%まで見直されると思わ
れる。
2.地区計画の用途誘導によるにぎわい創出
当時の用途地域見直しでは、様々な場所で用途地域見直しされているが、大
手町地区は容積率 1,000%を 1,300%に見直されている。併せて地区計画を策
定し、その中でエリア
分けを行い、1,000%以
上の容積の半分はオフ
ィスではない用途とす
ることが定められてい
る。エリア毎に特色付
けする誘導用途となっ
ており、誘導に従った
場合はインセンティブ
(容積率)が与えられ
ている。
出典:大手町連鎖型都市再生プロジェクトパンフレット
− 145 −
課題
1.連鎖型都市再生手法の他都市への展開
連鎖型都市再生プロジェクトの手法を用いた事例は、大手町のみとなってい
る。但し、地方の国有地で入札による売却がされているが、殆どの場所では
マンション開発を主体に進んでいるため、国土交通省では中心市街地活性化
のために、連鎖型都市再生の手法が使えないかという議論は出ているようで
ある。地方行政、学識経験者でも同じ事を言っている人はいるようである。
例えば、広島県庁も移転するということも考えられる。大手町の連鎖型都市
再生プロジェクトのように、旧広島市民球場跡地、広島県庁が移転した場合
の跡地を再開発の起点として、相生通りの再開発を軸にした地区計画を立案
することで、まちづくりを面的に検討することも考えられる。
また、中国地域では広島市中区白島周辺の中国財務局の国有地が残っており、
隣接して広島拘置所が立地している。広島市東区牛田にも広大な財務局の売
却用敷地が残っている。それらの用地を、連鎖型再開発の種地として活用す
るということはあるかもしれない。
2.都市再生のための制度づくり
行政の財政再建の中で、国有地処分の流れがあったが、地権者の中で、大手
町合同庁舎 1・2 号館跡地は単純な入札処分ではいけないという話があった。
当時、大手町では複数企業がまちづくりについての勉強会を開催しており、
その中で合同庁舎 1・2 号館跡地を活用した移転という仮移転を伴わない連鎖
型都市再生の検討も入っていたようである。
まちづくり推進会議の主要企業がリードする形で、専門家、行政に検討を依
頼し、政治的な動きも活用しながら、プロジェクトが推進されたようである。
地方の場合、このような動きを行政(県知事、市長等)から発意し、民間に
相談があると事業が円滑に進むのではないかと思われる。
補助金だけでなく、制度を整えていくことも、地方都市では重要と思われる。
− 146 −
参考写真
JAビル
経団連会館
日経ビル
経団連会館
合同庁舎
3号館
日経ビル
歩行者専用道
気象庁
JAビル
第1次再開発事業施工地区周辺
大手町フィナンシャルシティ
第1次再開発事業施工地区
JXビル
日本ビル
施工中の第3次再開発
第2,3次再開発事業施工地区周辺
− 147 −
朝日生命
大手町ビル
第4次再開発事業施工予定地
【聞取 2】
東京都中央区銀座地区のまちづくり計画
ヒアリング日時 平成 26 年 10 月 7 日(火)
ヒアンリング先
対応者
地区の概要
事業の経緯
事業の概要
9:00∼12:00
東京都中央区銀座地区
清水建設(株) プロポーザル本部
都市開発計画室 室長 山田 祥裕 様
グループ長 山本 師範 様
事業名 :銀座地区のまちづくり計画−にぎわいと風格の再生(仮称)
所在地 :東京都中央区銀座
施行者 :中央区、民間
敷地面積:中央通り、晴海通りを中心とした銀座地区一体
ヒアリング結果
契機:国内有数の商業地として老朽化した建築物の機能更新と防災機能強化
目的:にぎわいと風格のある銀座地区のまちづくり
・銀座地区は、日本有数の商業地として発展を続けているが、地域を代表する建
物は老朽化が進み更新の時期を迎えている。
・しかし、建築物の多くは昭和 39 年の容積率制度導入以前の建物で、現行の制
度での建え替えでは、従前規模の確保ができないなど円滑な更新が行えない状
況にあった。さらに銀座地区では、地区全体の機能更新や災害時の安全性の確
保も課題となっていた。
・以上を背景に、にぎわいと風格のある銀座地区のまちづくり図るため、次の制
度を策定し、平成10年より銀座地区一帯のまちづくりに着手した。
①街並み誘導型地区計画−街並み形成及び細街路敷地における建替更新。地区の
まちづくりの基本制度(中央区ほぼ全域を対象)
②機能更新型高度利用地区−商業をはじめとするにぎわい用途の誘導によるまち
の機能更新。商業地のにぎわい再生を目指す(銀座A地区、日本橋・東京駅前)
③用途別容積型地区計画−住宅の誘導による定住促進とバランスのとれた複合
市街地の形成。人口回復と災害に強いまちづくりを目指す(銀座B地区ほか)
スケジュール:
・平成 10 年 12 月 銀座地区における新たなまちづくりのルールとして「街並み
誘導型地区計画」
「機能更新型高度利用地区」を都市計画決定
・平成 15 年 9 月 中央区附置義務駐車施設整備要綱策定
1. 事業の特徴
・まちづくりの上位計画は、都市計画マスタープラン(*1)で基本方針を策定し進
められることが多い(*1:都市計画法第 18 条で規定されている「市町村の都市
計画に関する基本的な方針」)。
・しかし、都市計画マスタープランは基本計画であり、直接的規制を行うもので
はないため、具体的な規制、ルール作りはまちづくり条例等が必要となる。
・銀座地区のある東京都中央区では、都市計画マスタープランは策定せず、中央
区全域を、①街並み誘導型地区計画、②機能更新型高度利用地区、③用途別容
積型地区計画 の制度により平成 10 年からまちづくりを進めている。
・都市計画マスタープランなしでの計画を地権者にとって解りやすい制度とする
ため、中央区は地元住民、東京都、国土交通省と協議を重ね実現に結び付けた。
・3つの制度は、それぞれ次ページの表のように緩和項目、規制項目を定め、基
本となる ①街並み誘導型地区計画 に、地区毎に ②機能更新型高度利用地区、
③途別容積型地区計画 を適用し、銀座地域のまちづくりを進めている。
− 148 −
事業の概要
制度
緩和項目
規制項目
① 街 並 み 誘 導 (a)前面道路幅員による容積率 (a)壁面後退(道路幅員
型地区計画
制限((b),(c)の制限緩和によ
により 0.2∼1.0m)
−基本制度
り、指定容積率までの建物の建 (b)高さ制限(指定容積
設が可能となる)
率、道路幅員により 10
(b)道路斜線制限
∼60m)
(c)隣地斜線制限
(c)一階部分の用途制限
② 機 能 更 新 型 (a)容積率制限(誘導用途(*2)、
高度利用地
前面道路の歩道幅員により、容
区
積率を最大 300%緩和)
③ 用 途 別 容 積 (a)容積率制限(住宅の設置によ
型地区計画
り基準容積率を緩和。銀座B地
区では、容積率を最大 1.25 倍
緩和(*3))
*2:店舗、飲食店、百貨店等サービス業を営む店舗。これら誘導用途が総床面
積の 1/2 以上、事務所の床面積が 1/3 以下の建物は、歩道幅員により容積率
を緩和(歩道幅員が 5.5m 以上の場合、最大 300%緩和)
*3:建物がすべて住宅等の場合、最大 1.25 倍の容積率の緩和。
緩和項目、制限項目により次の効果が得られる(本ページ下図の事例の図参照)。
(1)緩和項目
(a)容積率緩和:建て替え意欲の誘発
(b)道路斜線制限,(c)隣地斜線制限:建物上部のセットバックが不要となり、整
った街並みの形成が可能となる。指定容積率までの建物の建設が可能となる。
(2)制限項目
(a)壁面後退:整った街並み、快適な歩行者空間の形成
(b)高さ制限:整った街並みの形成
2.銀座地区のまちづくりの事例
中央通り、晴海通りを中心とした銀座地区一体で、A、B地区に区分し、3つ
の制度を連携し、平成 10 年より地域のまちづくりを推進している(次ページの
地図参照)。
(1)銀座A地区(及び日本橋・東京駅前地区)−①街並み誘導型地区計画+②機
能更新型高度利用地区
・①街並み誘導型地区計画によって、道路・隣地斜線の代わりに壁面後退と高さ
制限による整った街並みや、快適な歩行者空間の形成を行う。さらに、前面道
路幅員により容積率が緩和される。
・②機能更新型高度利用地区によってにぎわい施設の整備に対する容積率増加の
インセンティブを与え、建て替え意欲を誘発することで地区の機能更新を進め
る。
出典:中央区の街づくりルール/清水建設㈱提供資料
− 149 −
事業の概要
出典:中央区の街づくりルール/清水建設㈱提供資料
(2)銀座B地区(及び第Ⅱゾーン、月島地区)
−①街並み誘導型地区計画+③用途別容積型地区計画
・①街並み誘導型地区計画によって、道路斜線の代わりに壁面後退、高さ制限に
よる整った街並みや、快適な歩行者空間の形成を行う。さらに、前面道路幅員
により容積率が緩和される。
・③用途別容積型地区計画によって、住宅の設置割合により容積率が緩和される。
出典:中央区の街づくりルール/清水建設㈱提供資料
3.銀座地区の駐車場整備−中央区附置義務駐車施設整備要綱
上記のまちづくり計画に併せ、商業地区の銀座に適した駐車場整備を図るた
め、東京都駐車場条例に基づき、中央区附置義務駐車施設整備要綱による独自の
ルールで駐車場整備を進めている。
(1) 目的
一定規模以上の建て替え計画に生じる駐車場附置義務ルールにより、銀座地区
のまちづくりにふさわしい駐車環境を整備する。対象地区は、銀座一丁目から銀
座八丁目。
− 150 −
事業の概要
(2) 特徴
① 集約駐車場による隔地駐車場の確保
・商業施設が集約した銀座地区では、東京都駐車場条例に基づく附置義務駐車台
数確保(店舗:250m2 に 1 台、事務所: 300m2 に 1 台)が困難な建物がある(参考:
広島市は 150m2 に 1 台の駐車場の確保のため、駐車場が過剰状態にある)。
・銀座地区では、以下のフローのように、敷地面積 500m2 により、
“参加建築物”
“集約建築物”に区分し、敷地面積 500m2 以上の集約建築物には、附置義務駐
車台数の 1.2 倍の駐車場(=集約駐車場)確保を義務付けている。
・敷地面積 500m2 未満の参加建築物で、駐車場確保が困難な建物は、集約駐車場
を隔地駐車場として、自所の駐車場とすることができる。
② 集約駐車場への助成金補助
・集約駐車場の附置義務台数の過剰分(台数
の 0.2 倍分)については、助成金として、
50 万円/台の補助を行っている。
・なお、この補助金は、500m2 未満の参加建
築物で、
隔地駐車場を確保する事業者の 200
万円/台の協力金によって運用している。
集約駐車場のイメージ
中央区附置義務駐車施設整備要綱の事業フロー
出典:銀座地区駐車施設整備のてびき/中央区 都市整備部計画課
− 151 −
事業の成果
1. ルール化による建て替え申請手続きの効率化
・地区計画のルールを定めることで、事業着手までの手続き期間が、建築確認申
請+約 1 カ月と短期間で行うことが可能となった(個別の事業ごとに都市計画
等を策定する場合は、5 年程度を要する場合もある)
。
2. ルール化による工事期間の短縮
・ルール化により短期間で工事が可能となり、経済動向に左右されることなく建
て替えが可能となった。工事スケジュールも計画が立て易くなった。
参考写真
「① 並み誘導型地区計画+②機能更新型高度利用地区」制度により建て替え
られたビル(
)と、旧ビル(
)。旧ビルは、道路斜線による傾斜が
ある。また、壁面が建て替えビルより前にある。
制度が適用されていない、道路斜線
が残っているビル
商業用途の店舗誘致で、基準容積率
800% + 容 積 率 300% 緩 和 で 容 積 率
1,100%で建て替えられたビル
− 152 −
【聞取 3】
ヒアリング日時
ヒアリング先
対応者
地区の概要
事業の経緯
計画の概要
さいたま市
浦和駅東口駅前地区第二種市街地再開発事業
平成 26 年 7 月 28 日(月)
さいたま市
14:30∼15:00
浦和駅東口駅前地区第二種市街地再開発事業
さいたま市 都市局 都心整備部 浦和駅周辺まちづくり事務所 管理係
係長 神尾 昌宏様、丸山様
事業名 :浦和駅東口駅前地区第二種市街地再開発事業
所在地 :さいたま市浦和区東高砂町 11-1
施行者 :さいたま市
地区面積:2.8ha
ヒアリング結果
契機:商業活動の沈滞
目的:
・浦和東口駅前地区はJR浦和駅東口駅前の 2.8ha の区域で、従前は狭小な駅
前広場、道路に面した飲食、不動産等の路面店が営業している状況で、駅前
広場、道路の拡充、オープンスペースの確保、商業・コミュニティ振興が急
務となっていた。
・昭和 56 年、市街地改造事業により、浦和駅西口に伊勢丹、コルソが完成・オ
ープンしたことから東口の地盤沈下は著しく、商店会などから東口の再開発
への期待が大きくなった。
・浦和市は、そうした地元商店会などの期待を背に、県都の浦和駅東口の整備
に向け動きだした。
・昭和 60 年に東口 16.6ha の基本構想を策定、昭和 62 年度には駅前 3.3ha につ
いて市街地再開発等調査(A調査)
、昭和 63 年度には駅前 2.8ha について市
街地再開発等調査(B調査)を実施し、現在の再開発区域がほぼ定まった。
スケジュール
・昭和 60 年
浦和駅東口 16.6ha の基本構想策定
・昭和 63 年
浦和駅東口再開発協議会発足
・平成 5 年 11 月
第二種市街地再開発事業として補助採択
・平成 6 年 12 月
都市計画決定
・平成 6 年度
国庫補助金にて用地買収を開始
・平成 10 年 10 月 都市計画決定変更(市民広場新設ほか)
・平成 11 年 1 月
駅前広場下駐車場の都市計画決定
・平成 11 年 3 月
事業計画決定
・平成 16 年 6 月
事業計画決定変更
・平成 16 年 8 月
管理処分計画認可
・平成 17 年 2 月
事業計画決定変更
・平成 17 年 3 月
管理処分計画変更認可
・平成 17 年 8 月
施設建築物工事着手
・平成 19 年 9 月
施設建築物竣工
1.事業の特徴
(1) 施設概要
①駅前交通広場の整備
・駅前交通広場を拡充し、バス乗降所、タクシープール等の適正配置及び歩行
者空間を確保し、安全で快適な駅前広場として整備する。
(2007 年秋時点では
2
2
約 4,000m の一部暫定形での整備。完成形は約 6,000m 。
− 153 −
計画の概要
②市民広場の整備
・市民の憩いと交流、浦和駅東口周辺地区の商業・文化振興を目的とした、開
かれた広場として整備する。
・災害時かまどとして利用できるベンチなど防災機能と雨水貯留槽、壁面緑化
など環境共生にも配慮する。
③駐車場の整備
・広場下公共地下駐車場 315 台、施設建築物地下駐車場 535 台を合わせた 850
台は、市営浦和駅東口駐車場として一体運営する。
④都市計画道路の整備
・地区の南側に都市計画道路田島大牧線を拡幅(幅員 25m)し、東側に都市計画
道路高砂仲町線を新設(幅員 18m)し、北側に都市計画道路浦和東口停車場線
を新設(幅員 25m)する。
・その他、区画街路 1 号(幅員 13∼21m)
、2 号(幅員 6∼25m)を整備する。
施設配置図
出典:浦和駅東口駅前地区第二種市街地再開発事業パンフレット
⑤施設建築物の整備
・浦和駅高架化工事は、平成 25 年度に完了している。
・施設建築物は、地下 1 階∼7 階までが商業施設、8 階∼10 階が公共施設となっ
ている。
・商業施設は「浦和パルコ」が入居しており、駅前商業施設としては県内最大級
で、「グルメ」「ファッション」「レジャー」の 3 つにゾーニングしている。
・公共施設は、中央図書館(8 階)
、市民サポートセンター(9 階)
、国際交流セ
ンター(9 階)、浦和消費生活センター(9 階)、浦和コミュニティセンター(10
階)
、屋上庭園(8,9,10 階)となっている。
− 154 −
計画の概要
施設建築物の概要
出典:浦和駅東口駅前地区第二種市街地再開発事業パンフレット
(2)推進体制
・民間事業者の能力活用のため、特定建築者の公募を実施。選定された三菱U
FJ信託は、パルコとの定期建物賃貸借契約、SPC との信託契約、大林組への
各種業務委託により事業推進体制を構築。再開発事業に国内初の開発型不動
産証券化を組み込んだことが本事業ストラクチャーの特徴となっている。
事業推進体制
出典:浦和駅東口駅前地区第二種市街地再開発事業パンフレット
事業費
(組合施行)
事業の成果
約 590 億円
(資金計画:道路特別会計補助金、一般会計補助金、まちづくり交付金、保留
床処分金、その他収入、市単独負担金)
・浦和駅東口側には、会議室(コミュニティセンター機能)を提供する建築施
設がなかったため、浦和コミュニティーセンター(10 階・9 階の一部)の予
約が一杯となっている。
(特に音楽室の利用が多い。)
・中央図書館は、毎日様々な目的で訪れる方々でにぎわっている。
− 155 −
課
題
・整備後、建築施設は区分所有権で取得し、公共施設はさいたま市が取得、そ
の他は三菱UFJ信託銀行株式会社が取得し、パルコ等に賃貸借契約してい
る。
・第二種市街地再開発事業は用地買収方式となるため、住民の合意形成という
ことはなかった。
・キーテナントとして当初マイカルと出店協定を結んでいたが、平成 13 年に民
事再生法申請により撤退したため、パルコ誘致に至った。
・キーテナント撤退による事業停滞が、苦労した点となる。このような撤退の
話もあったため、特定建築者事業ストラクチャーのスキームが考えられ、特
定建築者の公募が実施されている。本スキームは、大林組が提案した。
参考写真
浦和パルコ(8∼10 階公共施設)
工事中の駅前交通広場(その 1)
工事中の駅前交通広場(その 1)
交通広場につながる JR 浦和駅東口
− 156 −
【聞取 4】
名古屋市緑区
有松駅前第一種市街地再開発事業
ヒアリング日時
平成 26 年 10 月 21 日(火)
ヒアリング先
名古屋市
対応者
地区の概要
事業の経緯
事業の概要
13:00∼16:00
有松駅前第一種市街地再開発事業
名古屋市住宅都市局都市整備部 緑都市整備事務所
所長
橋本
勝 様
主幹(有松・築地等地区整備) 岡田 吉正 様
整備推進係長
鈴木 行薫 様
再開発係長
各務 芳巳 様
整備推進係主事
柳生
薫 様
主事
蒲 浩幸 様
事業名 :有松駅前第一種市街地再開発事業
所在地 :名古屋市緑区鳴海町字有松裏 200 番地
施行者 :名古屋市
地区面積:3.2ha
ヒアリング結果
契機:公共施設の不足、商業活動の沈滞
目的:公共施設の整備・防災性の強化・住宅の供給・商業機能の集積
名古屋市の人口は、約 227 万人(平成 26 年 4 月 1 日現在)で、全 16 区から
構成されている。有松地区は、人口約 23 万人の緑区内にあり、市の東南端部
に位置している。1608 年に東海道沿いの茶屋集落として開村し、振興策とし
て「絞染」が考えられた。現在も「有松絞」として全国的に有名である。
有松地区は国道1号と名古屋環状 2 号線との接点に隣接しており、名鉄名古
屋本線により、都心まで約 30 分と交通条件に恵まれた地区である。
再開発事業では、単に事業地区の都市機能の更新を図るだけではなく、旧東
海道の町並み保存・活用や、土地区画整理事業における生活道路の整備など
と組み合わせることにより、総合的なまちづくりを行いながら、再開発ビル
の建設とともに、駅前交通の拠点として駅前広場等の公共施設を整備し、地
域拠点にふさわしい整備を目指している。
スケジュール:
・平成 5 年度 都市計画決定(H6.3.23)
・平成 8 年度 事業計画決定(H9.1.17)、
住宅都市整備公団と事業参画契約締結
・平成 9 年度 権利変換計画決定(H9.9.26)
・平成 10 年度 (株)マイカルと事業参画契約締結、施設建築物の建築工事着手
・平成 13 年度 (株)マイカルと事業参画契約解除、施設建築物の建築工事中断
・平成 15 年度 施設建築物の建築工事再開
・平成 16 年度 大規模小売店舗届出、権利変換計画変更(H17.2.24)
、
商業棟建築工事完了
・平成 17 年度 モニュメント完成
・平成 18 年度 住宅棟建築工事完了
1.事業の特徴
・本地区は、伝統的建造物が残る旧東海道への玄関口であり、かつ地区の拠点
となる名鉄有松駅に接している。そのため、まちに不足している道路などの
公共施設の整備を図るとともに、機能を特化した商業・駐車場・住宅などの
− 157 −
事業の概要
施設を導入し、地区の拠点にふさわしい魅力的なまちづくりを目指した。ま
た、単に事業地区内の都市機能の更新を図るだけでなく、地区外においても、
東海道の町並み保存・活用や、土地区画整理事業における生活道路の整備な
どを行うことにより、総合的なまちづくりを行っている。
有松地区総合整備地区約 80ha を定め、「有松土地区画整理事業」
(平成 21 年
度に換地処分公告、平成 26 年度完了予定)
、
「有松駅前第1種市街地再開発事
業」
(平成 18 年度完了)
、「街路事業等」を推進している。
2.施設の概要
(1)施設建築物の概要
・再開発ビル(ウィンハート有松)は、商業施設、駐車場、事務所、住宅、市
民が活用するコミュニティセンターなどの公共施設といった異なる機能を複
合させることにより、相互に連携させ、利便性を高めた建築物となっている。
・ウインハートは、英語の「win:勝つ、
(努力によって)獲得する」と「heart:
心」を組み合わせた造語。
ウィンハート有松
出典:有松駅前第 1 種市街地再開発事業パンフレット
有松駅前第 1 種市街地再開発事業の概要
出典:名古屋市提供資料
(2)主な施設内容
事務所施設、商業施設、駐車場、住宅、公共公益施設で構成されている。
①事務所施設(1∼5 階)
・1、2 階に銀行を誘致し、3 階以上は交通の利便性を生かしオフィスとして活
用している。
− 158 −
事業の概要
②商業施設(1∼3 階)
・ショッピングセンター(イオン)を誘致し、魅力ある地域の中心商業地とし
ての拠点を形成している。
③駐車場(4∼6 階、屋上)
・収容台数 886 台の自走式駐車場。商業施設との重層化により、機能的な結び
付きを強化。都心部への過度な自動車交通の流入抑制等を目的としたパーク
アンドライド駐車場(200 台、駐車場代 5 千円/月)として活用している。
④住宅(3 階∼)
・分譲住宅、賃貸住宅の両方を整備。1DKタイプから 4LDKタイプまで多様
な居住者ニーズに対応している。分譲住宅 55 戸、賃貸住宅 34 戸を整備。分
譲住宅は 55 戸のうち 20 戸が権利床で 35 戸が販売されている。平成 16 年に、
名古屋市住宅供給公社と保留床(分譲住宅部分)の売買に関する基本協定を
締結している。
(平均分譲価格 2,100 万円程度)
⑤公共公益施設(1、2 階)
・コミュニティセンター、デイサービスセンター等を誘致。地域の福祉、文化、
交流の拠点を形成。
⑥公共施設
・駅前交通の拠点として面積約 4,000m2 の駅前広場を整備し、ゆとりあるオー
プンスペースを提供している。
・その他、都市計画道路、自転車駐輪場、街園、地下通路、ペデストリアンデ
ッキを整備している。
配置図
立面図
出典:名古屋市資料
事業費
(公共団体施行)
約 37,600 百万円
− 159 −
事業の成果
課題
その他
1.地区の課題解消
有松駅周辺は、木造平屋建ての家屋が密集しており、従前のバスターミナル
(交通広場)は狭く事故も多く発生していたが、再開発により生活環境の改
善、防災、安全性の向上、事故解消につながった。
2.地区のにぎわい創出
名鉄有松駅の橋上駅化に伴い、有松地区の鉄道を挟んだ南北地区の分断を解
消するとともに、駅につながるペデストリアンデッキから建物内自由通路へ
地域の人たちが利用しやすい動線となった。また、商業施設が開業し、地区
の活性化につながっている。
有松駅の利用者数は、平成 14 年時点約 200 万人、現在約 240 万人で約 40 万
人が増加しているが、緑区周辺自体が再開発事業により人口増加しており、
駅利用者の増加は地区内の人口増加が起因しているものと考えられる。
3.地区の利便性向上
公共公益施設として、コミュニティセンターとデイサービス施設が導入され
ており、地元の利便性が向上している。
1.交通渋滞の解消
有松駅の橋上化に伴い、鉄道自体も連続立体交差事業により高架化する話も
あったが、有松駅前後の線路線形から立体化困難で実現していない。現在も
踏み切りが残っているため、交通渋滞は解消していない。
2.再開発ビルの利用拡大
有松駅前再開発ビル利用客は、それほど多くない。近隣のJR東海道本線南
大高駅前にイオンが開業して、そちらの利用が多くなっている。JR東海道
本線南大高駅は連続立体事業により鉄道高架化も実施されている。
3.伝統的建造物を有する町並みとの連携
旧東海道の沿道には、伝統的建造物が町並みを形成しており、現在、文化庁
に伝統的建造物群保存地区として申請していることから、再開発地区との連
携により地域の活性化が期待されている。
4.商業、住宅に依存した複合施設
保留床処分金は約 118 億円であるが、保留床を取得する企業が見つからなか
った。商業棟は 20 年の賃貸契約となっている。住宅棟の1階部分は、未処分
であるためでなく、賃貸での入居者もいない状態である。
駅前に再開発ビルを建てる場合、住宅(マンション)は採算がとれるが、住
宅以外の公共施設を中心とした施設とすることは難しい。
1.公共施設整備について
図書館は各区に 1 箇所、支所に 1 箇所という考え方があり、同じ地区内に 2
箇所整備することは難しい。緑区図書館は 20 年前に完成し、老朽化していな
い。公共施設は、施設寿命まで使うという方針からも、再開発ビル内に再配
置することは難しかった。
有松駅前再開発の駐輪場は、イオン専用の駐輪場が整備されている。鳴海地
区では一般利用者用の駐輪場を整備する予定。
2.合意形成について
行政が主体となり、地元の合意形成のための説明会を継続して行ってきた。
戦災復興に伴う再開発は、名古屋市中心部から優先的に進められたため、有
松地区は合併から 20 年経って、ようやく再開発が進められている。このため、
再開発に対して、地元で比較的目立った反対はない。地元推進団体は、平成
3 年にEAST−HILL再開発協議会が発足している。
再開発に積極的な行政職員がいた。再開発事業は、キーマンが必要である。
− 160 −
参考写真
有松駅
駅と施設を結ぶ
ペデストリアンデッキ
再開発ビルから直結する有松駅
有松駅から商業棟へ
商業棟
駅前交通広場
住宅棟
商業棟と住宅棟
踏切
有松線
布を絞りひねり上げる形
駅前モニュメント「藍流∼あいる∼」
踏切解消に至っていない有松線
布を絞りひ
旧東海道の町並みねり上げる
形
再開発ビルから望む旧東海道
旧東海道の町並み
(伝統的建造物群保存地区として申請中)
− 161 −
【聞取 5】
岡山市
岡山市駅元町地区第二種市街地再開発事業
ヒアリング日時
平成 26 年 11 月 26 日(水)
ヒアリング先
岡山市駅元町地区第二種市街地再開発事業
対応者
岡山市都市整備局
市街地整備課
(株)岡山コンベンションセンター
地区の概要
事業の経緯
山田
幸弘
都市再開発担当課長様
木村
友紀
副主査様
難波
巧
常務取締役様
樋口
泰生
総務部長様
事業名 :岡山市駅元町地区第二種市街地再開発事業
所在地 :岡山市北区駅元町地内
施行者 :岡山市
地区面積:2.4ha
ヒアリング結果
契機:駅前市街地の活性化(公共施設の不足・商業活動の沈滞)
目的:公共施設の整備・防災性の強化・居住環境の改善
1.当地区岡山駅西口の状況と課題
・岡山市の中心市街地は、JR岡山駅を境にして駅東と駅西地区に二分されて
おり、駅東地区は第二次世界大戦で壊滅的な被害を受けたことから、戦後、
土地区画整理事業等により積極的に整備された。
・その一方、戦災の被害が少なかった駅西地区は戦後の開発から取り残され、
低層の建物が多い旧態依然の市街地が残るとともに、都市基盤整備が遅れて
おり、駅西地区の地盤沈下を招いていた。
第 1 工区
再開発前の地区の状況
第 2 工区
2 工区に区分した施工区域図
出典:フォーラムシティ&リットシティビルパンフレット
2.再開発の経緯
・都市基盤整備が遅れた駅西地区は、広範囲に大学・専門学校の学生の通学や
下宿する地区で、JR岡山駅に隣接する当地区は、都市基盤整備により発展
する可能性が高かった。
・市街地の地盤沈下の課題の解決のため、昭和 58 年に岡山市駅元町地区市街地
再開発等調査により、地区居住者にアンケートを行ったところ、再開発推進
に 70%を超える賛同が得られた。
・これを受け、昭和 60 年に策定された岡山市都市再開発基本構想では、当地区
は総合的に再開発を促進する地区に指定され、平成 7 年に 2 工区に分けて開
発する事業計画が決定された。
・再開発は、市の玄関口を整備する岡山駅西口再開発のパイロット事業として
− 162 −
事業の経緯
事業の概要
駅西地区全体の活力向上の起爆剤となるよう、次を目的として進められた。
①都心基盤の確立−都心の基盤となる道路等の公共施設を整備する。
②居住環境の整備−安全、便利で快適な都市型住宅を整備する。
③都心機能の育成−駅西の玄関口にふさわしい多様な都市機能を導入する。
・第 1 工区は国際会議も開催できるコンベンション施設、住宅施設からなる複
合施設で平成 13 年 3 月竣工した。第 2 工区は平成 17 年の岡山国体に向け、
岡山市のランドマークとなるよう、ホテル、文化施設(岡山市シティミュー
ジアム)
、業務施設(NHK等)からなるリットシティビルとして平成 17 年 6
月に竣工した。
スケジュール
・昭和 58 年
岡山市駅元町地区市街地再開発等調査
・昭和 60 年
岡山市都市再開発基本構想策定
・平成 3 年 6 月
第 2 種市街地再開発事業としての施行決定
・平成 6 年 3 月
都市計画決定
・平成 7 年 11 月 事業計画決定。2 工区に分けての施行を決定
・平成 9 年 11 月 第 1 工区管理処分計画認可
・平成 10 年 6 月 第 1 工区施設建築物新築工事着工
・平成 13 年 3 月 第 1 工区施設建築物完成
・平成 14 年 3 月 第 2 工区特定建築者公募(平成 14 年 5 月特定建築者決定)
、
管理処分計画認可
・平成 14 年 12 月 第 2 工区施設建築物新築工事着工
・平成 17 年 6 月 第 2 工区施設建築物完成
1.事業の特徴
(1) 岡山駅西口再開発のパイロット事業−市施行の第二種市街地再開発事業
・平成 13 年 3 月竣工の第 1 工区のコンベンションセンター、平成 17 年 6 月竣
工の第 2 工区のリットシティビルからなる本施設は、平成 18 年 10 月竣工の
岡山駅東側と繋がる駅東西連絡通路とともに、都市型住宅・ホテル・商業等
の都市機能と、周辺道路・ペデストリアンデッキ等の公共施設を整備し、駅
東口と連携した複合都心の形成を図っている。
・当地区には、駅東地区と駅西地区を結ぶ都市計画道路下石井岩井線につなが
る都市計画道路上石井岩井線の事業区域も含まれており、公共性・緊急性が
高いことから、岡山市施行の第二種市街地再開発事業として事業を進めた。
岡山市では本地区を含め 7 地区で法定再開発事業が完成しており、第二種事
業は本地区のみである(他の 6 地区は第一種市街地再開発事業)
。
・周辺にも民間施設が徐々に建設され、飲食店やホテルやマンションが増えて
いる。公表地価も市内で唯一値上がりしたのが駅元町地区であり、今後も、
民間開発が期待されている。
(2)コンベンション・タウンの創出
・駅に近接した立地条件を活かし、国際会議を開催できるコンベンションセン
ターを核に、
「ひと・もの・情報」が集まる「コンベンション・タウン」の創
出を目標とした。
・第 1 工区には、各種会議・シンポジウム・見本市・展示会を開催できるコン
ベンションセンター、屋外展示場としても活用できる市民の憩いの場、マン
ション・駐車場を整備した。
− 163 −
事業の概要
・第 2 工区のリットシティビルには、コンベンションセンターの利用者も食事
を楽しみ宿泊できる飲食店街・ホテル・宴会場や業務施設(オフィス)を整
備した。また、情報発信力のあるNHK、岡山市シティミュージアムを誘致
した。
・第 1・第 2 工区の各施設は、駅から繋がるペデストリアンデッキで結ばれて
おり、開放的でにぎわいのある公共スペースとランドマークとして洗練され
たデザインとしている。これら第 1・第 2 工区の施設整備により、
「外から来
る人・住む人・働く人」の交流が生まれ、様々な情報が集まり、発信される
新しい街、
「コンベンション・タウン」を建設した。
施設の平面図
出典:フォーラムシティ&リットシティビルパンフレット
(3)特定建築者制度を活用した複合施設の建設−第 2 工区
・第 2 工区のリットシティビル(*1)は、特定建築者制度(*2)を活用し、複合施
設を建設した(特定建築者は公募により大成建設に決定)
。
・第 2 工区の計画段階では、バブル崩壊後の不動産価格の下落等から保留床の
処分の確保が懸念された。この時期の平成 11 年に都市再開発法が改正され、
権利床を含む施設建築物についても特定建築者の対象とできるようになっ
た。
・そこで平成 13 年より、第 2 工区全体を改正された特定建築者制度により事業
− 164 −
事業の概要
を実施することとした。改正された特定建築者制度による再開発事業は本事
業が国内初の事例である。
*1:Light の過去分詞 Lit の“光化”より、リットシティビルとした
*2:権利変換計画又は管理処分計画において、施行者がその全部又は一部を
取得するよう定められた施設建築物の建築を特定建築者に行わせ、事業
の円滑な実施を図ろうとする制度。施行者にとっては施設建築物の建築
費用調達及びその設計等の負担が軽減され、また、特定建築者にとって
は自らの創意工夫を生かして施設を建築できるというメリットがある。
2.施設概要
(1)第 1 工区
・敷地面積:6,554m2、延床面積:32,696 m2 、最高高さ:82.35m
・構造 鉄骨鉄筋コンクリート造
・階数 高層棟:地下 2 階・地上 21 階
・所要施設概要
①駐車場(地下 1 階、地下 2 階他)
:市営 256 台、住宅用 93 台
②コンベンションセンター(1 階∼4 階)
:1 階 594 人収容ホール、3 階 720 人
収容ホール
③住居施設(5 階∼21 階 90 戸)
:権利者住宅 20 戸、分譲住宅 70 戸
④広場:約 1,800m2
第 1 工区施設の断面図
出典:フォーラムシティ&リットシティビルパンフレット
− 165 −
事業の概要
(2)第 2 工区
・敷地面積:7,596m2、延床面積:54,868m2 、最高高さ:81.75m
・構造 鉄骨造(一部鉄骨鉄筋コンクリート造)
・階数 地上 19 階・地下 2 階
・所要施設概要
①駐車場(地下 1 階、地下 2 階)
、駐車台数 約 270 台
②NHK 岡山放送局(1 階∼3 階)
③公益施設(1 階、4 階、5 階)
:岡山市シティミュージアム
④商業施設(1 階、2 階):飲食店舗
⑤業務施設(3 階∼7 階)
:マルチメディアに対応したインテリジェントオフィス
⑥全日空ホテル(1 階、8 階∼19 階)
、客室 221 室
第 2 工区施設の断面図
出典:フォーラムシティ&リットシティビルパンフレット
− 166 −
事業費
(市施行)
事業の成果
課題
総事業費
約 460 億円
項目
公共施設管理者負担金
市街地再開発事業補助金
保留床処分金等
合計
第 1 工区
6,320
7,069
13,892
27,281
第 2 工区
1,425
3,867
13,511
18,803
単位:百万円
計
7,745
10,936
27,403
46,084
1.高い施設利用率−コンベンションセンター
・第 1 工区のコンベンションセンターでは、毎月 150∼200 件の催事が開催され
ている。ホール、会議室は約 70%の稼働率であり、会議室によっては 90%以上
の稼働率の施設もある。
・会議系での利用が全体の約 80%であり、岡山大学、川崎医科大学の 2 つの医
大があることから、医学関係の利用がこのうち約 1/4 と多い。センターのホ
ール、会議室を利用し、医学学会の分科会を含めた全会議が開催されたこと
もある。
・運営する(株)岡山コンベンションセンターは、岡山市、JR西日本など 5 者
が株主の資本金 9,900 万円の第三セクターで、独立採算方式で運営している。
従業員は 16 名である。
・2013 年度の業績は、売上高約 681 百万円、経常利益約 93 百万円の利益を上
げている。
・ホール等の利用料金は、周辺にホテルもあることから、民間業者と競合しな
いようホテルと公共施設(公民館等)の中間の価格としている。
2.周辺地域の利用者、通行者の増加
・リットシティビルの来場者は、平成 18 年 8 月∼平成 19 年 8 月の 1 年間の調
査では、約 127 万人である。
利用者数 ホテル
384,000 人
オフィス・店舗 305,000 人
ミュージアム
300,000 人
NHK
24,480 人
コンベンション 258,800 人
計
1,272,280 人
・オフィス・店舗、シティミュージアム、コンベンションの来場者も大手ホテ
ルとほぼ同数であり、利用者数は多い。
複合施設として、維持管理において次の課題がある。
・再開発ビルで地権者が 8 者であり、各々所有床の用途が異なるので、意思決
定には協議と時間を要する。
・ホテル、ミュージアム等、異なった用途で 365 日、24 時間稼働するので、対
応の多様性が必要となる。
− 167 −
参考写真
コンベンションセンターの住宅棟
リットシティビル2階 ガレリア
リットシティビルの外観
− 168 −
コンベンションセンター前の広場
駅に繋がるペデストリアンデッキ
レセプションホール
リットシティビル内の
岡山シティミュージアム
【聞取 6】
ヒアリング日時
ヒアリング先
対応者
地区の概要
事業の経緯
北九州市
室町一丁目地区第一種市街地再開発事業
平成 26 年 10 月 15 日(火) 13:30∼16:00
北九州市 室町一丁目地区第一種市街地再開発事業
北九州市建築都市局整備部再開発課 有田 秀昭係長様、永嶋 祥子主任様
事業名 :室町一丁目地区第一種市街地再開発事業
所在地 :北九州市小倉北区室町一丁目、大門一丁目、城内の各一部
施行者 :室町一丁目地区市街地再開発組合
敷地面積:3.6ha
ヒアリング結果
契機:他の公共事業の施行・商業活動の沈滞
目的:公共施設の整備・市街地の活性化・防災性の強化・都市景観の向上
・本事業は、小倉都心の中心を流れる紫川西側の室町一丁目地区を、以下を背
景に、200 万広域都市圏(*1)の中核都市にふさわしいにぎわいの地となるよ
う、①高度な都市機能の集積、②道路、河川、公園などの一体的整備、③紫
川をシンボル空間とした個性的で魅力あるにぎわい空間の創出を目的とし実
施された。
(*1:北九州市と対岸の下関、南の大分県中津市の区域)
(1) 恵まれた立地環境
・室町一丁目地区は、中心市街地にあって、紫川・勝山公園などの自然、小倉
城など歴史的遺構にかこまれた都市環境にある。周辺には官公庁・文化施設
の公共公益施設が集積し、利便性が高い。
(2) JR小倉駅移転による衰退
・当地区は小倉城下に位置し、古くから長崎街道起点の町として栄えていた。
明治になり一時期は小倉県の県庁がおかれ、明治 24 年に小倉駅が設置される
と駅前商業地として栄えていた。
・しかし、昭和 33 年に旧国鉄小倉駅が当地から紫川の東側の現地点に移転後、
商業の中心は小倉駅前地区に移り、にぎわいは次第に薄れてきた。
(3) 小倉北区役所跡地の開発構想
・地区の東半分を占めていた小倉北区役所は築 30 年を経過し、OA化・バリア
フリー化の対応が困難であった等から、建て替えの検討が始められた。
・しかし区役所は休日が閉庁となり、建て替えてもにぎわいを分断する指摘があ
り、区役所は移転新築し、区役所跡地を文化拠点として整備することとなった。
(4) 「北九州市ルネッサンス構想(*2)」を起点とする公共事業との一体開発
・昭和 63 年、北九州市では「北九州市ルネッサンス構想」を策定し、小倉都心へ
の都市機能の集積・強化を都市再生のための重要な基本方針の一つに掲げた。
・紫川周辺については、平成 2 年に国土交通省より認定された「紫川マイタウ
ン・マイリバー整備事業」の推進により、河川の改修にあわせて、紫川や勝山
公園などの恵まれた周辺環境を活かしたシンボルゾーンとして整備すること
とし、本事業はその主要事業として進められた。
(*2:政令指定都市移行から 25 周年の昭和 63 年に、重工業で栄えた都市の産業
構造転換を図り、
“水辺と緑をふれあいの国際テクノロジー”を基調テーマと
した都市再生計画)
− 169 −
事業の経緯
スケジュール:
・昭和 63 年 2 月
・平成 2 年 8 月
・平成 3 年∼
・平成 6 年 9 月
・平成 9 年 11 月
・平成 12 年 7 月
・平成 15 年 4 月
・平成 16 年 10 月
・平成 17 年 7 月
・平成 18 年 3 月
事業の概要
北九州ルネッサンス構想策定
紫川マイタウン・マイリバー整備事業 認定
旧小倉北区役所跡地利用の検討
室町一丁目西地区まちづくり研究会設立
高度利用地区の都市計画決定、第一種市街地再開発事業の
都市計画決定
第 1 期 A-1 棟建築工事着工
第 1 期 A-1 棟建築工事竣工。再開発ビル部分オープン
(「リバーウォーク北九州」)
第 2 期事業 A-2 棟、B 棟建築工事着工
第 2 期事業 B 棟建築工事竣工
(8 月「レクサス小倉」オープン)
第 2 期事業 A-2 棟建築工事竣工
西日本工業大学小倉キャンパスオープン
1.事業の特徴
(1)都市機能を集積した複合施設
・都心の新しい顔づくりを目指して、高度な都心機能を集積させた大型複合施
設として次のコンセプトからなるリバーウォーク北九州を建設した。
① 多様な都市機能を集積した複合施設:リバーウォーク北九州
・商業棟、業務棟を 1 期工事で整備し、2 期工事で大学棟、商業棟を建設した。
(a)第 1 期事業:A-1 棟
・施設構成は地階から低層部に商業施設を、中層部に劇場や美術館、シネコン
などの集客施設を、高層部に事務所など業務施設を機能的に配置している。
・市が文化施設として整備した「北九州芸術劇場」は、ミュージカルや演劇、コ
ンサートまで幅広い催し物が開催できる大ホール(収容数約 1,300 人)、演劇
専用の中劇場(収容数約 700 人)
、多目的に利用できる小劇場(収容数 120∼
130 人)の 3 つのホールからなる。また、市立美術館の分館を設置し、まち
なかで市民が身近に芸術に触れることのできる機会を提供している。
・放送局、新聞社の情報発信施設は、地元のニュースの貴重な情報発信源であ
り、館内には来場者が見学、利用できる交流スペースなども設置されている。
・収容台数 800 台の自走式駐車場は、館内の車路を長くとることで施設周辺の
渋滞軽減を図っている。外壁はルーバで採光を取り明るい駐車場としている。
駐車場は、日本ベストパーキング賞に選ばれた。
(b)第 2 期事業:A-2 棟、B 棟
・第 2 期事業で建設した大学棟は、低層が商業施設、3 階から上層が大学キャ
ンパスで、1 期工事の A-1 棟とは 2 階通路で連絡し、施設の回遊性を図って
いる。また、地区の西玄関部分 B 棟には、特定建築者により自動車ショール
ームが整備されている。
− 170 −
事業の概要
注記:地下の専門店には、現在は家具メーカーが入っている。
出典:北九州市提供資料
② 都心の新しいランドマークの創造−形状、色の異なる建築物
・北九州市の新しい顔となるシンボル性と、インパクトのある施設デザインと
した。1 期工事の A-1 棟は、北九州市が 5 市の合併で政令指定都市となった
ことから、形・色の異なる次の 5 つの建築物とした。
(a)NHK、中劇場ほか業務・商業棟 形状:球形、色:茶色−大地をイメージ
(b)専門店のある商業棟 形状:低層円柱形、色:白−小倉城の漆喰をイメージ
(c)北九州芸術劇場ほか商業棟 形状:逆円錐形、色:赤−漆をイメージ
(d)朝日新聞ほか業務棟 形状:高層半円柱、色:黒−日本瓦をイメージ
(e)シネマ、専門店等商業棟 形状:直方体、色:黄−収穫期の稲穂をイメージ
・当初は、紫川の川面、小倉城の緑に合わないとの意見もあったが、歴史的建
物に対比した現代建築と評価され、集客のランドマークとして機能している。
・施設建設地には、小倉城に続く鳥居があった。この鳥居をイメージした門を
北側入り口に設置している。
③周辺環境への配慮
・小倉城など歴史ある周辺景観と調和するよう、外装の素材に留意し、施設内
部には、小倉城を眺望できるスポットを設置している。
④環境に配慮した先進設備の導入
・紫川の河川水を利用した熱源システム、自然換気システムなど、省エネルギ
ーに配慮した設備を導入している。
(2)他の事業と連携しての地区の開発−地域を一体としたにぎわい空間の創出
・河川、公園のある周辺地域を次のように公共事業で整備し、都心を形成する
周辺街区との一体感を生み出すとともに、自然環境・歴史環境との調和を図
り、人々の集いや出会いの場となる都心のオアシス空間を創出している。
① 紫川の整備−紫川マイタウン・マイリバー整備事業
・平成 2 年に建設省(現国土交通省)より認定された「紫川マイタウン・マイリ
バー整備事業」により、洪水予防の河川改修とともに、
“紫川 10 橋”
“小倉城
庭園公園”
“勝山公園”の整備により、一帯に市民が集い・憩う空間が創出さ
れた。
・紫川の河川敷の広場、勝山公園では数々のイベントが開催され、周辺地域一
帯の回遊性を高めている。勝山公園は、多くの市民が集い、イベントが開催
できるよう遊具は設置せず、芝生を広く設置している。
− 171 −
事業の概要
小倉駅→
リバーウォーク
小倉城庭園公園
市役所
紫川 10 橋の
各橋
勝山公園
出典:北九州市の再開発/平成 25 年 3 月/北九州市より転載、一部加筆
② 周辺道路の整備
・本再開発事業の実施にあわせて、リバーウォーク北側の都市計画道路小倉中
央線(国道 199 号)は約 11 メートルの広幅員歩道を整備し、電線類の地中化
や照明設備の設置等、安全で快適な歩行者空間を整備している。
・紫川沿岸、及び勝山公園に面した市道室町 16 号線の一部は、歩行者専用空間
として整備し、くつろぎの場となるオープンスペースを形成している。
・業務棟の朝日新聞、NHKは、整備される都市計画道路の地域にあった事業
者である。
・これら周辺整備を再開発事業と一体的に行うことで、効率的、経済的に事業
を進めるとともに、地区全体にわたって統一的な都市計画を形成することが
できている。
2.施設概要
(1)規模
・敷地面積:約 24,600 ㎡、延床面積:約 177,400 ㎡、S造(鉄骨構造)一部S
RC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)
、地下2階地上14階、高さ85m他
(2)用途
・商業施設:約 50,000 ㎡,業務施設:約 15,000 ㎡,公共ホール:約 19,500 ㎡
大学:約 7,000 ㎡,駐車場:約 31,500 ㎡(800 台収容)
(3)地権者
・地権者は 8 者。主要な地権者は、北九州市 16,600m2、小倉玉屋(地元の百貨
店)4,300m2、ダイエー3,900m2
− 172 −
事業の概要
出典:北九州市の再開発/平成 25 年 3 月/北九州市
事業費
(組合施行)
(4)管理運営
・第 3 セクターの北九州紫川開発(株)(北九州市が 24.5%出資、その他関係権利
者、中小企業基盤整備機構)
事業費:50,969 百万円
出典:北九州市の再開発/平成 25 年 3 月/北九州市
事業の成果
課
題
1.周辺地域からの集客の確保
・リバーウォーク周辺の一体開発により、紫川東地区からの集客、西小倉駅か
らの集客も確保された。中国、韓国の海外の観光客も訪れている。
・北九州に劇場文化を根付かせたいとの思いから命名した“北九州芸術劇場”
は、多機能ホールとして高い稼働率で運営されている。
2.大学生のまちづくりへの参加
・施設内の西日本工業大学は、デザイン学部の学生 600 名(150 名/1 学年)が学
んでいる。リバーウォークの現代的な建築物と小倉城の歴史建造物の混在す
る地区は、芸術系学生の最適な実地学習の場となっており、学生から地域の
まちづくりの提案もある。
1.多様な年齢層の集客確保
・多様な年齢層が来街するよう、適宜テナントの入れ替えを行っている。
・街中居住が進み、周辺地域のマンションには、30∼40 代の家族層が増えてお
り集客の対象として取り込むことが必要である。
− 173 −
参考写真
業務棟
北九州芸術劇場
商業棟
A−1 棟の 5 建物の外観
A−2 棟の西日本工業大学の外観
敷地内にあった鳥居を
イメージした入口
− 174 −
A−2 棟の西日本工業大学の内観
電線地中化等整備された北側の国道
【聞取 7】
ヒアリング日時
ヒアリング先
対応者
地区の概要
高槻市の状況
高槻市
JR高槻駅北地区第一種市街地再開発事業
平成 26 年 10 月 22 日(水) 9:00∼11:00
高槻市 JR高槻駅北地区第一種市街地再開発事業
高槻市都市創造部 都市づくり推進課 都市計画チーム 主査TL 戸田
都市づくり推進課
主査
松田
都市づくり推進課
江嶋
事業名 :JR高槻駅北地区第一種市街地再開発事業
所在地 :大阪府高槻市芥川町 1 丁目
施行者 :JR高槻駅北地区市街地再開発組合
地区面積:2.9ha
ヒアリング結果
勝美
昌大
啓太
様
様
様
1.概要
高槻市は、昭和 18 年 1 月に市制を施行し、平成 15 年 4 月に中核市に移行して
いる。現在、第 5 次総合計画のまちづくり構想に基づき、計画が進められてい
る。
高槻市の人口は約 35.5 万人(平成 26 年 9 月末現在)
。JR高槻駅周辺は、昭和
40 年代頃に人口が急増している。近年、団塊世代の高齢化により、現在は人口
昼夜率が 90%を切っているが、次第に増加傾向にある。
・国の施策でもある「コンパクトシティアンドネットワーク」の考え方を踏まえ、
まちづくりを進めることが必要と考えている。
2.交通特性
高槻市内には、JR(東海道本線)と阪急電鉄(阪急京都線)が平行して走っ
ており、5 つの駅がある。JR高槻駅北地区は、JR高槻駅と阪急高槻市駅に近
接した交通利便のよい立地特性にあり、両駅間に商店街等の商業施設が集積し
地区の中心地となっている。
高槻市は市営バスを運行しており、JR高槻駅を中心にバス路線が放射状に広
がっている。70 歳以上の方を対象として無料で乗れる乗車証を発行している。
JR高槻駅北部には北部丘陵地の大規模住宅地があり、市営バスの利用が多く
なっている。
(北部山手からJR高槻駅まで約 10∼15 分程度となっている。)
・駅南部は平地であることから、自転車利用の割合が多い。
・駅周辺の中心市街地は、狭隘な道路が多いこと等から、一般車両の流入は少な
くなっている。このため、市街地内は歩行者が歩行し易い空間が多く、商店街
も人通りが多く活気があるように見受けられる。
3.周辺の状況
現在、本地区の東側に位置するJR高槻駅北東地区において、都市再生緊急整
備地域における土地区画整理事業が完了し、都市開発事業も完成間近となって
いる。
事業の経緯
契機:公共施設の不足、住宅・店舗等の老朽化
目的:公共施設の整備・商店街の活性化・防災性の強化・居住環境の改善・住宅
の供給
− 175 −
事業の経緯
(1)事業実施の背景
本地区は、大阪・京都都心から新快速電車で約 15 分のJR高槻駅北側に位置す
る好立地にありながら、昭和 54 年に再開発事業が完了した駅南側に比べ、老朽
化した低層住宅や店舗等が密集するなど、中心市街地の核として不十分な状況
にあった。
(2)事業の目的
市の総合計画に位置付けられた事業として、高槻の北の玄関を整備するもので、
駅前広場などの都市基盤整備により交通ターミナル機能を高め、都市型住宅や
商業・業務施設等を整備して中心市街地の活性化を図るとともに、風格ある街
並みづくりとバリアフリー化によって、駅前にふさわしい合理的かつ健全な土
地の高度利用と都市機能の更新を図ることを目的としている。
スケジュール:
・昭和 56 年 11 月
「JR高槻駅北地区市街地再開発準備組合」発足
・平成 5 年 12 月 大阪府が第一種市街地再開発事業を都市計画決定
・平成 10 年 3 月 大阪府が「JR高槻駅北地区市街地再開発組合」の設立認可
・平成 13 年 11 月 大阪府が権利変換計画の認可
・平成 14 年 3 月 組合が工事着手
・平成 16 年 2 月 組合が施設建築物工事竣工
・平成 17 年 3 月 組合の解散、JR高槻駅北地区市街地再開発事業の完了
位置図
区域図
資料
大阪府ホームページ(事業完了地区及び事業中地区の概要)
( http://www.pref.osaka.lg.jp/toshiseibi/saikai/saikaihatujigyou.html )
− 176 −
計画の概要
1.計画の特徴
・本地区は商業集積の高い高槻市中心市街地の
JR高槻駅の北側に位置し、本市の北の玄関
口にあたるため、広域と同時に地域のコミュ
ニティの中心としての役割を担うことが求
められる。また、都市のランドマークとして
重要な役割を果たすべき地区となっている。
・機能的には、大規模商業施設、地域サービス
施設としてのコミュニティ施設等を計画し
て、周辺の既存都市施設と連携させることに
より、都市機能の向上に貢献するものであ
る。一方では、超高層の都市型住宅などを計
画的に立地させることにより、都心居住によ
る都市活力の再生に寄与するものである。
アクトアモーレ
・また、地区及び地区周辺への日照、風害、電波障害など都市環境や都市防災に
も配慮し、市の中心部にふさわしい都市景観及び都市機能を整備している。
2.地区の概要
・JR高槻駅駅前での区域面積約 2.9ha の本事業は、関係権利者 184 名の大規模
プロジェクトとなっている
施行前
施行後
資料
大阪府ホームページ(事業完了地区及び事業中地区の概要)
(http://www.pref.osaka.lg.jp/toshiseibi/saikai/saikaihatujigyou.html)
3.主な施設内容
①建物概要(アクトアモーレ)
施設建築部は大きく分けて 3 棟から構成されており、JR高槻駅に面して超高
層の住宅を 2 棟配置し、その中心にエントランスゲートをもつ商業棟を配置し
ている。
3 つの建物をJR高槻駅直結のペデストリアンデッキおよびアトリウムなどで
接続し、街区全体、施設全体の利便性の向上、にぎわいの創出を図っている。
市道芥川町 108 号線側(次頁配置図参照)の商業棟・住宅B棟の 1 階に外向き
店舗を配置し、商業棟と北側商店街が一体となって活気ある商業空間としてい
る。
− 177 −
計画の概要
住宅棟は、周辺への日照・風害等の条件を考慮しつつ眺望を生かした住戸配置
とし、良好な都市型住宅 495 戸を計画。地下には 348 台分の駐車場を設置して
いる。住戸は 2DKから 4LDKの様々なタイプとなっており、高齢化にも対応
した様々な世代、ニーズに対応している。
住宅A棟のうち東側 3 階には、市内全域の子育て家庭へのサービスの提供・地
域への貢献を目的とした認可保育園「高槻あいわ保育園」と児童厚生施設「高
槻あいわ児童館」が開設されている。
(西側)
(東側)
施設構成
資料
JR高槻駅北地区第一種市街地再開発事業パンフレット
②公共施設
施行地区の公共施設(道路、駅前広場)が占める割合は、全体約 2.9ha のうち
約 1.6ha で、施行前の約 1.7 倍の広さとなっている。特に、駅前広場は従前の
約2倍の約 6,000m2 が整備されている。
車両の広場内通過動線を排除した「人にやさしい駅前広場」をコンセプトに、
高槻駅北駅前交通広場の中央に歩道を配置し、その両側にバスロータリー部、
一般車・タクシー部を分離配置している。
③ 公共駐車場・駐輪場
市民の利便性向上と中
心市街地活性化を図る
ため、住宅用駐車場と
別に高槻市が地下に一
般駐車場 441 台を整備
している。(入出場時
間:午前 7 時から翌日
午前 0 時 30 分)
自転車駐輪場 1,300 台
を地下に整備してい
る。
(入出場時間:午前
6 時から午後 11 時)
配置図
資料
− 178 −
JR高槻駅北地区第一種市街地再開発事業パンフレット
計画の概要
⑤施設管理組織
施設の管理組織は、以下のとおり。
施設管理組織
資料
事業費
(組合施行)
JR高槻駅北地区第一種市街地再開発事業パンフレット
資金計画:
資料:大阪府ホームページ(事業完了地区及び事業中地区の概要
http://www.pref.osaka.lg.jp/toshiseibi/saikai/saikaihatujigyou.html
事業の成果
1.利用者の安全性が向上
・通勤・通学等、多くの市民が集中するJR高槻駅において、駅前広場の拡張整
備、ペデストリアンデッキの設置により、歩行者・自動車の動線の分離がなさ
れた。
・駐輪場の整備により、駅周辺の不法駐輪が減少し、歩行空間が確保された。
2.利用者の回遊性が向上
アクトアモーレはJR高槻駅からペデストリアンデッキで直結しており、駅か
ら商店街への動線にもなっていることから賑わいに連続性があり、回遊性が向
上している。
デッキと接続部分のドーム、内部のアトリウムでイベントが行われるなど、駅
へのアクセス性向上だけでなく、街全体の賑わいの向上に寄与している。
3.まちなか居住が促進
平均住戸面積約 80m2、価格 4 千万円で分譲された住宅は即日完売し、その後の
駅周辺マンション建設の引き金となっている。
− 179 −
事業の成果
4.その他
・松坂屋等が立地するJR高槻駅南側の商店街方面にも、利用者の流れが創出さ
れている。
・空き店舗の継続や増加はほぼ見られず、大規模商業保留床取得者のリーシング
が功を奏していることが伺える。
事業の特徴
1.合意形成
再開発事業の推進にあたっては、行政が積極的な姿勢をとることは当然である
が、権利者のリーダーであるキーパーソンの存在が最も重要である。当該事業
の権利者の中でもリーダー的な存在がJR高槻駅北地区市街地再開発組合の理
事長を務め、
昭和 56 年の事業当初から事業完了まで権利者組合をまとめられた。
地権者にはニュースレターを定期的に配布し、地道に事業内容を伝えることで、
長い時間をかけて事業の理解を高めている。
2.事業の推進
平成 11 年、商業核店舗が不況により撤退したことで、一時商業施設の誘致が停
滞したが、平成 13 年に商業核店舗として「株式会社平和堂」(本社:滋賀県)
を決定した。撤退店舗とは「事業参加協定書」に基づき、違約金交渉が行われ
た。違約金は、事業再構築のための費用に当てられた。
再開発事業では、業務代行方式※による事業協力者を早期に決めることで、事業
採算性の担保性が高まり、事業が進みやすくなる。
※
業務代行方式とは
業務代行方式は、民間事業者の持つ資金調達能力、専門的な知識・経験・ノウハウ及び保留床の処分能力等を
活用し、円滑な事業推進を図ることにより、権利者の手間が大幅に軽減できるものとして、平成 8 年度に創設
された制度。
※
業務代行方式の種類
業務代行方式の種類には、保留床処分について責任を持つことを条件に建築等の工事施工を含めて代行
する特定業務代行と工事施工を含まない一般業務代行の2種類がある。
参考資料
・JR高槻駅北地区第一種市街地再開発事業パンフレット
・「日本の都市再開発7
(企画・発行
市街地再開発事業の全記録」
社団法人 全国市街地再開発協会)
・「大阪の市街地再開発事業」
(発行
大阪府 都市整備部 市街地整備課)
− 180 −
参考写真
住宅A棟
住宅B棟
JR高槻駅南
JR高槻駅北
JR高槻駅南より再開発ビルを望む
JR高槻駅北より再開発ビルを望む
交通広場(バスロータリー部)
交通広場(一般車・タクシー部)
←再開発ビルへ
JR高槻駅へ→
JR高槻駅と再開発ビルを結ぶ
ペデストリアンデッキ
商業棟入口
商店街
店舗→
←商業棟の店舗
JR高槻駅北側の商店街
(再開発ビル横)
− 181 −
平日からにぎわうJR高槻駅南側商店街
【聞取 8】
ヒアリング日時
ヒアリング先
対応者
地区の概要
事業の経緯
高松市
高松丸亀町商店街A街区第一種市街地再開発事業 等
平成 26 年 6 月 25 日(水) 10:00∼12:00
高松丸亀町商店街A街区第一種市街地再開発事業
高松丸亀町商店街振興組合
古川 康造 理事長様
事業名 :高松丸亀町A∼G街区第一種市街地再開発事業
所在地 :香川県高松市丸亀町
施行者 :高松丸亀町まちづくり(株)
事業規模:7街区(延長 2.7 ㎞)
ヒアリング結果
契機:商業活動の沈滞
目的:商店街の活性化・防災性の強化・居住環境の改善・住宅の供給
・高松丸亀町商店街は、1588 年開町の江戸時代から 400 年以上の歴史を持つ全
国有数の商店街で、街路のカラー舗装、アーケードの建設、各種イベント事
業など、様々な取組みを行ってきた。
・ピーク時の平成 7 年には土日1日あたりの商店街の通行者数は 35,000 人に達
し、特に発展の契機となったのが、町営駐車場の建設で、自動車が普及して
いない昭和 47 年に商店街運営の駐車場を整備した。現在でも、駐車場事業が
様々な不採算事業の資金源となっている。
・しかし、
「バブルの崩壊」
「瀬戸大橋の開通」
「近隣への大型商業施設の進出」
により衰退がはじまった。バブルの崩壊により、地価がピーク時の 1/11 とな
り、税収が 70%減となった。
・商店街の再生に向け、平成元年頃から地元商店主により再開発事業の検討を
始め、平成 18 年 12 月再開発ビル第1号となる A 街区再開発ビルが竣工した。
・以下①∼③による事業化により地方の商店街の再開発として数少ない成功事
例となった。ここで実現した、
「土地の所有権と利用権の分離」は、後に続く
再開発にも、受け継がれている。
① 商店街の開発のネックとなる土地の所有権の課題を“定期借地権による土
地の所有権と使用権の分離”で行う
② 人が住み、人が集うまち−商店主の視点からではなく、利用者の視点から開
発する
③ 民間主導の開発−行政、デベロッパーに頼らず、商店主からなる「高松丸
亀町まちづくり(株)」による地元の民間事業者により開発
スケジュール
・平成 2 年:丸亀町商店街再開発計画策定
・平成 7 年:高松丸亀町まちづくり(株)(3セク)設立。
・平成 13 年:駅に近接した 470mの商店街をA∼Gの7街区にわけての再開発
事業・都市計画決定(商店街全体は約 2.7km あり国内最大)
。
・平成 18 年:最初のA街区竣工。以後平成 27 年度まで 7 街区順次竣工
事業の概要
1.事業体制 −地元の民間事業者による開発
・他地域の商店街の再生化の失敗事例から、行政主導の排除、中央のデベロッ
パーによる事業化を排除し、地域の状況を熟知している地域の人材による、
高松丸亀町まちづくり(株)により計画を推進。
・高松丸亀町まちづくり(株)は、資本金が1億円で、商店街振興組合が 95%、
高松市が 5%とした。市の比率が 51%以上になると、議会の承認等々で事業
推進に時間を要するので第 3 セクターの最低出資比率 3%を超える 5%とした。
− 182 −
事業の概要
・開発を地権者の所有権に縛られることなく、商店街全体の開発とするため、
地権者との定期借地権契約は、街区毎の“地権者共同出資会社”が行う。
・役所ではなく地権者が主導権を持った開発、巨大箱物でない面の開発、大型
店に頼らない開発を目指した。
・商店街にはコミュニティのきずながあり、地域の状況を熟知している。土地
の所有権と使用権の分離は、
“地権者共同出資会社”が行い、再開発の計画・
運営は、
“高松丸亀町まちづくり(株)”による地域の民間事業者が行う。
・地域の民間主導による開発により、行政・デベロッパーが行う前例主義にと
らわれない開発が可能となった。
2.事業の特徴
国内の商店街の再開発に失敗事例が多いことから、商店街の開発事例を調査
し、事業の計画、実現に取り組んだ。
(1)先行の開発事例の失敗例の調査
調査から失敗要因として以下の課題を抽出した。
① 商店街の再開発も含め“まちづくり”は土地の所有権による“土地問題”
がネックとなっている
・日本人は土地の所有への思い入れが強い。施設の老朽化、所有者の転居等
で土地が有効活用されなくなっても、所有権を保持するので、空地、空き
店舗が残る。
・日本の法律では、土地を貸すと、借地人に権利が付与され、土地利用の問
題が生じ、地権者が土地を貸さなくなった。東日本大震災でも「土地問題」
がネックになり、仮設住宅が建設できなかったところが多い。すべては、
土地問題に起因している。土地問題は、財産権の侵害にあたり、行政には
手が出せない。民の問題として、取り組む問題である。
② 事業をデベロッパー、コンサルタントにまかせて、地権者が主となって取
り組んでいない。
・デベロッパー、コンサルタントはハードを作ればもうかるので、多くは“建
物”を作り、テナントを誘致の手法であり、地域の特性を考えた事業を行
わない。中央のテナントを無理に誘致しテナントが撤退し、失敗となった
事例が多い(津山市、佐賀市等)
。地域に責任を負わされていない人が再開
発すると、当然のように失敗する。最終的に責任を負うのは、自治体であ
り、市民である。佐賀市では、最終的に、市が 25 億円支払い、建物を取得
した。地域の状況を周知している、地権者が取り組まないと成功しない。
・中央資本の大型店は利益を中央にもたらすだけであり、地域の雇用を奪っ
ている。
③ 消費者の視点からの開発でなく商店主の視点で開発している
・消費者が支持する大型店と比較すると、「消費者がほしい商品をおかない」
「駐車場がない」
「トイレ・休憩所がない」の問題があるが、問題としてと
らえる意識が低い。営業時間すら伸ばそうとしない。
・丸亀町商店街の例では、古川理事長が少年時代は 1000 人が居住していたが、
バブルが崩壊して気が付くと 75 人の年寄りしか居住していなかった。固定
資産税が高いため皆郊外へ転居し、店舗も魚屋、八百屋、雑貨という生活必
需品のものがなくなり、高級ブティックだけになってしまった。
これらの課題を、地元のまちづく会社が(2)の定期借地権方式により解決し
た。
(2)定期借地権による土地の所有権と使用権の分離−土地問題の解決
− 183 −
事業の概要
事業費
事業の成果
・商店主と 60 年の定期借地権契約を結び、土地の所有権と使用権を分離する。
地権者の作る“地権者共同出資会社”が土地の使用権を保有し、まちづくり
会社が建物を整備・所有する(53 ページ添付図参照)
。
・これにより、商店街全体の開発ができるようになり、消費者のニーズに合わ
せたテナント作り(テナントミックス)が可能となった。
・A街区の事業費 69.2 億円(他の街区も同規模)。
内訳:補助金 36.6 億円(国土交通省関係 28.2 億円、経済産業省関係 8.4 億)
マンション分譲等保留床売却 32.6 億円
売却に伴う、銀行借り入れは 2.6 億円。約 100 の土地所有者の負担は実質数
百万円でできた。
・同規模の開発では通常 200 億円であり、70 億以下の事業費は、定期借地権に
より地権者の土地の借用により、土地購入費 130 億円相当を不要としたこと
による。
1.商店街の通行者数、利用者数の増加
・土日の 1 日あたり通行者数はA街区開発直前の 2005 年の 9,500 人から、G街
区竣工の 2012 年には 28,000 人と、ピーク時の 1995 年の 35,000 人に戻りつつ
ある。
・A街区のドーム広場では、市民主催による年間 200 件以上のイベントが開催
され、集客に大きな効果を上げている。商店主がイベントを実施すると、一
般市民のニーズを反映されたものにならず、
「人が来ない」
、
「売り上げにつな
がらない」の負の連鎖となる。そこで、高松丸亀町商店街振興組合では、イ
ベントをやりたい人達の活躍できるようなステージを用意して、持ち込みイ
ベントの広場とした。ドーム広場では、多くの市民が休日ごとにイベントを
開催している
(ドーム広場の場所は、讃岐の各街道の基点であり、お城の正面入り口前であ
った。ヨーロッパには、街の中心に大きな広場があり、そこは地域の人々の
憩いの場、出会いの場になっている。ドーム広場には、セットバックにより
提供された民間スペースがあり、各種規制もグレーゾーンとなり面倒な規制
も受けない。市のシンボル的な広場となることを望んでいる)。
・商店街活性化の事例として、年間 10,000 人以上の見学者が訪れている。
2.税収の増加
・商店街の活性化により、固定資産税の増収は、
A街区:開発前 400 万円 → 開発後 3,200 万円
B,C街区:開発前 428 万円 → 開発後 3,312 万円と、約 9 倍に増加。
課題
3.商店街居住者の増加
・再開発前 75 人であった居住者は、現在約 1,100 人となっている。
・定期借地権による建設で低価格のマンションを提供できるので(駅に近接の条
件で 3LDK2,000 万円弱)、今後の計画のマンションも予約で完売であり、さら
なる居住者の増加が見込まれる。
1.事業化まで 20 年以上を要した要因として、バルブ崩壊後の税収増として市
が、市街地調整区域を全廃し農地を宅地にする政策を進めており、衰退して
いる市中心部の開発への公費投入は困難な状況であったことがあげられる。
これに対しては、商店街活性化による次の税収増の効果を説明し、行政・議
会の承認を得た。
2.行政コスト(維持補修費)の観点では、人口密度が低い郊外部 5127 円/人は、
中心部 875 円/人と 5 倍かかる。
− 184 −
課題
その他
3.面積比率 5%の中心部が、固定資産税比率でも、43%であり、市の税収は、
中心部に大きく依存している(市議会議員は、人口の多い郊外に多く、「自分
の地区に川の水を引いて来ること」だけが頭にあり、様々な反対意見を言わ
れたが、議員が支払っている固定資産税と古川理事長が支払っている固定資
産税を比べると格段の差があり、そのことが、固定資産税の高い中心部を何
とかしないといけないということが説得力となった)。
4.人口減、高齢化社会の到来により、郊外型の大型ショッピングセンターのよ
うなこれまでのビジネスモデルが時代について行かない。郊外の開発はイン
フラ整備に費用を要する。市中心部の商店街は、インフラ整備の終わった宝
の山であり、新しい場所でのまちづくりのように莫大な投資も必要ではない。
5.商店街の運営は、まちづくり会社が、マネージャーを大手流通メーカから雇
用し、地元出身の従業員とともに行っている。来街者数等、運営のノルマ達
成のため、緊張感をもって運営にあたるよう、相応の処遇はするが、契約は
1 年更新としている。消費者のニーズに合う商店街の運営を継続することが
必要である。
1.将来計画 −人が住み、人が集うまちづくり
・いかに居住者を増やすかという観点で、生活者の視点で、
“すんでみたい、い
ってみたい”と思う商店街となるよう業種を再編成(テナントミックス)
。高
松丸亀町商店街の再開発は、
「住宅整備」、
「テナントミックス」がクルマの両
輪である。
「歳とれば、丸亀に住みたいよね!」が、コンセプトである。ライ
フインフラを再整備し、クルマに依存せずに、歩いて事足る街をめざした。
・これからの少子高齢化社会では、車を必要とせず、インフラ・交通の利便性
のよいコンパクトなまちづくりが必要である。この観点から、商店街上部に
はマンションを建設した。また、地元出身の医師による診療所を開設した。
・定期借地権による土地の所有権と使用権の分離で建物建設費がおさえられ、
マンション価格も安価にできることもあり、マンションは完売している。マ
ンションは、高齢者にとっては、かかりつけ医師があることから、入院施設
完備の居住所となっている。
・高松はかつて高潮による浸水被害を受けている。防災拠点として、商業施設
をつなぐ道路上の空間を防災拠点として整備した。
・A∼Gの7街区の再開発は平成 27 年に完了する。本商店街の開発のテーマで
ある人の住む商店街の発展を図るため、今後は、生鮮市場、温浴施設、保育
園、高齢者福祉施設、防災拠点を整備していく計画である。
2.他都市への展開
・商店街の活性化は、土地の所有権に関わる土地問題の解消が成功の成否とな
る。丸亀町商店街の定期借地権による“土地の所有権と利用権の分離”の方
法は、人口の大小に関係なく、実現は可能である。
・これからは、いかに地域で経済循環させるかが、喫緊の課題であり、外貨獲
得や都市間競争は止めるべきである。九州は福岡、東北は仙台、北海道は札
幌というように、一極集中が始まっているなか、再開発には、地産地消を目
指して、居住者をいかに取り戻すかが、重要である。
・国内では地域の活性化として“イベント”+“B級グルメ”+“ユルキャラ”
が各地で行われているが、一時的には来訪者の増加になっても、恒久的な活
性化にはならないと考えている。
3.高松丸亀町商店街と同様の国内都市の取り組み
・丸亀町商店街の成功は奇跡と言われ、類似の取り組みはなかったが、近年沼
津市、静岡市呉服町、長野市 で取り組みがされている。
− 185 −
参考写真等
定期借地権の概念図
A街区のドーム広場
商店街の上部のマンション
− 186 −
【聞取 9】
ヒアリング日時
ヒアリング先
対応者
地区の概要
事業の経緯
沼津市
大手町地区第一種市街地再開発事業
平成 26 年 7 月
沼津市
大手町地区第一種市街地再開発事業
沼津市役所 都市計画部 沼津駅周辺整備事務局推進課 杉本 一也課長様
反町 将主任様、芦川 吉邦主事様
事業名 :大手町地区第一種市街地再開発事業
所在地 :静岡県沼津市大手町 1 丁目 100 番
施行者 :沼津市
地区面積:1.9ha
ヒアリング結果
契機: 商業活動の沈滞・他の公共事業の施行
目的:中心市街地の活性化、中心市街地の交通問題の解消
・人口約 20 万人の沼津市は、静岡県東部地域の拠点都市として、沼津港の物資
の荷揚げ場所であった御成橋地域から、東海道線開通時に沼津駅周辺、東名
高速道路開通後は沼津駅北部と、市街地は南から北へと発展してきた。昭和
32 年には、西武百貨店が地方で初めて店舗を開設し、沼津駅周辺は、県東部
地域から多くの集客があった。
・しかし時代の趨勢とともに近年求心力が薄れ、中心市街地の空洞化が進んで
いる。中心市街地の空洞化は、居住する人やまちを訪れる人の減少につなが
り、商店の減少などを引き起こし、
「利便性の低いまち」→「人離れ」→「空
洞化」の悪循環を招く。
・市ではこの悪循環を防ぎ、今後も県東部の拠点都市としての発展を図るため、
市の顔である中心市街地の活性化、中心市街地の交通問題の解消に取り組む
ため、都市基盤整備の 4 事業(①鉄道高架事業、②関連道路整備事業、③土地
区画整理事業、④特定再開発事業)、建物整備の 2 事業(⑤市街地再開発事業、
⑥駅北拠点開発事業)からなる、沼津駅周辺総合整備事業を策定した。
・大手町地区第一種市街地再開発事業は、上記の⑤であり、沼津駅南地区の再
開発を行うものである。
出典:沼津市提供資料
スケジュール
− 187 −
事業の経緯
計画の概要
事業費
沼津駅周辺総合整備事業は、昭和 60 年 11 月の沼津市都心地区総合整備計画
委員会の設立から始まる事業である。鉄道高架事業は、平成 34 年度完了予定で
ある。大手町地区第一種市街地再開発事業のスケジュールは次のとおり。
・平成 14 年 8 月 事業認可
・平成 16 年 6 月 変更許可
・平成 20 年 3 月 竣工
1.事業の特徴
(1)複合施設の再開発ビルの建設
・密集した住居・店舗等を共同化し、地下1階、地上 20 階の商業施設、駐車場、
住宅からなる再開発ビル(イーラde)を建設した。
(2)公共事業と一体の整備
・沼津駅周辺(特に南口)の交通環境の改善のため、駅前広場や都市計画道路
といった都市基盤の整備に併せ、土地利用の高度化を図り回遊拠点として次
の整備を行った。
①ビル周辺道路の壁面後退による広い歩行者空間の創出
②建築物を耐火高層建築物に更新
③住宅を備えることによる都心居住の推進
④大型専門店と専門店の組み合わせによる回遊拠点としてのにぎわいの創出
12,807 百万円
(沼津市施行)
事業の成果
1.来街者の利便性の向上
・沼津駅南口駅前広場や周辺道路の整備改善、新たな回遊拠点となる再開発ビ
ル「イーラ de」のオープンなどにより、人や車がより便利に通行できるよう
になった。
沼津駅周辺総合整備事業は現在進行中であるが、次の成果を想定している。
2.鉄道高架事業での利用者の増加、商業施設の売り上げ増等
・鉄道高架化により鉄道を挟んだ南北交通の円滑化が図られ、利便性の向上と
市街地の一体化が図られることで、来訪者・利用者の増加、商業施設の進出
と売上増等が見込まれる。
・現時点での効果は限定的であるが、沼津駅北口においては、URによる東部
拠点第一地区の土地区画整理と拠点整備がほぼ完了したことを受け、民間の
ホテルが複数進出している。
3.駅利用、防災機能等の市民生活の利便性、安全性の向上
・現在の駅は地上駅であるため、鉄道利用者以外が利用することはないが、鉄
道が高架化されれば、南北横断のためにも利用されることとなり、鉄道利用
者以外にも利用されることとなる。
・防災機能の観点からは、沼津市は駿河湾に面しており、旧来から東海地震の
発生が懸念されている地域である。東日本大震災以降、東南海・南海地震と
合わせた「三連動地震」に対する備えが必要とされている中で、南北交通の
円滑化と交通道路・通路の増設は、避難誘導や緊急自動車の配備の面からも
急務と認識している。
− 188 −
課
題
1.再開発ビル”イーラ de”の運営(市街地再開発事業)
・再開発ビル”イーラ de”の運営は、市が出資して設立した「沼津まちづくり
株式会社」が運営していたが、開業後しばらく赤字が続いた。民間の社長の
招へい等により、経営のテコ入れをし、現在は単年度黒字化を達成している。
2.住民の住環境整備の要望
・土地区画整理地区も含め、沼津駅周辺は高校生をはじめとした自転車利用者
が多いため、かねてから自転車走行空間の整備の必要性があり、路線を指定
して試験的な整備をしている。また、街並みが更新された地区において、街
路樹が少ないとの指摘もあり、緑化についても庁内検討会を組織し検討を続
けている。事業の進捗に伴い、住民より住環境の整備の要望がある。
以下は沼津駅周辺総合整備事業としての課題
3.20 年以上の長期の事業に伴う計画の変更
・設計面では、阪神大震災を受けて、高架構造物について新設計基準により再
検討を行った。
・財政面では、計画段階ではバブル期であったため、先行的に取得した事業用
代替地(事業用地の地権者が希望した場合に提供する土地)の地価下落によ
る売却時の差損に苦慮している。
また、事業用地や事業用代替地でありながら、事業が進まないため市で保有
している土地の管理とそれに係る経費(草刈等)の確保が例年課題となって
いる。個別事業については、必要に応じて事業認可の延伸を行っている。
参考写真
住宅、商業施設のイーラdeの外観
鉄道高架化される東海道本
線(奥)、御殿場線(手前)。御
殿場線側が高架となる
− 189 −
整備された駅前広場
【聞取 10】
ヒアリング日時
ヒアリング先
対応者
地区の概要
事業の経緯
大崎市
台町地区第一種市街地再開発事業
平成 26 年 11 月 19 日(水)
台町地区第一種市街地再開発事業
(株)アクアライト台町
千葉
基
社長
事業名 :台町地区第一種市街地再開発事業
所在地 :宮城県大崎市古川台町 212 番他
施行者 :台町ティー・エム・シー(株)(台町 TMC)
地区面積:1.8ha
ヒアリング結果
契機:商業活動の沈滞
目的:商店街の活性化・住宅の供給
・台町商店街のある古川地区の人口は、東北新幹線開通前は減少傾向であった
が、1982 年(昭和 57 年)の新幹線開通後は拠点性が高まり増加に転じ、県内
トップクラスの伸び率で推移した。市内には、アルプス電気、YKK、日東
電工の大手企業の工場もあり、仙台市のベッドタウンである。
・その一方で、古川地区は交通の要衝として道路交通の利便性が極めて高いこ
ともあり、1985(昭和 60)年頃から郊外の国道 4 号線バイパス周辺に大型店
が多数立地するようになり、1990 年代から中心市街地の客数が減少した。
・古川市(現大崎市)の中心市街地の台町商店街では、中核的存在であった大型
店(旧エンドーチェーン)が撤退し、商店街の衰退傾向が顕著になった。
・このため商店街組合は市と協議して街路整備(電柱の移設、街路灯の整備、
舗装改修等)を実施したが、ハード整備だけでは客足は戻らなかった。
・こうした中、平成 8 年に商店街の若手後継者を中心として宮城県中小企業中
央会の「活路開拓ビジョン調査事業」に取り組み、これがきっかけとなって
民間事業の再生手法を参考にした商店街活性化事業を模索する取り組みが始
まった。
・平成 11 年 3 月に策定した「中心市街地活性化基本計画書」により、古川駅周
辺地区の核として台町地区が一つの“街”になるような再開発事業を実施す
るという整備方針が定められ、民間まちづくり会社台町 TMC(タウン・マネ
ジメント・センター)が中心となり、次の目標の下、事業が推進された。
①広域圏の中心拠点として、魅力ある都市機能を導入する。
②駅前の立地条件を活かした都市居住地区として住む魅力あるまちづくり。
③駅前や商店街を核とした回遊路を整え、歩いて楽しいまちづくり。
④広域の玄関口として交通機能の改善と都市情報を提供する、わかりやすく使
いやすいまちづくり。
スケジュール:
・平成 8 年
宮城県中小企業中央会の「活路開拓ビジョン調査事業」に
着手
・平成 9 年
台町商店街の若手後継者による「台町 TMC 株式会社」設立
・平成 11 年 3 月 中心市街地活性化基本計画書策定
・平成 14 年
運営会社第 3 セクター「アクアライト台町」設立。
・平成 18 年 3 月 複合商業施設「リオーネふるかわ」オープン
− 190 −
事業の概要
1.事業の特徴
(1)若手商店主によるまちづくり会社による事業の計画、推進
・平成 9 年、若手商店主の出資により民間まちづくり会社「台町 TMC 株式会社」
を設立した(出資者:52 の個人・法人、資本金 5,000 万円)。「活路開拓ビ
ジョン調査事業」の学識経験者専門委員の猿谷雅治氏の指導を受けながら、
若手経営者が勉強会を開催し、約 7 カ月でまちづくりのビジョンを策定した。
第 3 セクターのように行政、民間の関わる法人でなく、短期間で民間まちづ
くり会社「台町 TMC 株式会社」を設立できた。猿谷先生からは、
「オレがやる、
協力する、明るくする」ということを学び、その精神が若手経営者に根付く
こととなった。
・民間まちづくり会社であるこの組織が中心となり、商店街活性化のための原
資を生み出す自主事業を展開した。台町 TMC は、個人施行者となって、1 日
の通行客 1 万人を目標に、商業施設、住宅、カルチャー施設などの都市機能
が複合した「台町地区第一種市街地再開発事業」を実施した。
(2) 商店街活性化の自主財源を生み出す不動産事業への取り組み
・台町 TMC は平成 10 年に 5 億円の融資を受けて商店街の一角にあるプラザホ
テル古川(新幹線古川駅から徒歩 5 分と至便)の新館を建設し、それをホテ
ル会社に賃貸する自主事業を立ち上げた。
・プラザホテルはもともと高稼働率であり、新館の賃貸事業も好調に推移した。
その結果、台町 TMC は事業開始 2 年目から黒字を計上し、商店街活性化のた
めの自主財源の確保が可能となった。
・事業開始 3 年目からは近接地において賃貸住宅事業も展開した。台町 TMC は
当初の目的どおり、収益金の一部を商店街活性化のために活用した。
(3)大型店(旧エンドーチェーン)撤退跡地の再開発事業
・台町 TMC は、設立当初の目標に沿い、1999 年に旧古川市が策定した「古川市
台町地区再開発基本計画」に基づき、台町商店街にある大型空店舗(8 年間放
置されていた)の再開発事業に市と協働で取り組んだ。
・市と協議を続けた結果、補助事業の円滑な活用を可能とするため、台町 TMC
による個人施行の第一種市街地再開発事業を選択した。
・商店街ににぎわいを取り戻すことを目的として再開発の中核事業を検討した
結果、年齢性別を問わず比較的広域からの集客が期待でき、常に新しいコン
テンツが出るシネマコンプレックス(以下「シネコン」
)事業を選定した。当
初、テナント誘致をはかったが、やってくれるところがなく、結局、
「オレ(自
分たち)がやる」ということになり、東急レクリエーションの事業協力によ
り、台町 TMC が自社で運営することになり、平成 18 年 3 月、県北地区初のシ
ネコン『シネマ・リオーネ古川』がオープンした(ワンフロアに 6 スクリー
ン・1000 席超)
。
・平成 14 年に、再開発ビルの商業施設を運営する主体として、古川市と地権
者の折半出資による第 3 セクター株式会社「アクアライト台町」を設立し、
「古川市中心市街地活性化基本計画」や「ふるかわ TMO 構想」などの上位計
画との整合性を図りながら、事業を推進した。
・
「アクアライト台町」は、まちの再生につながる魅力的な商業空間の創出とそ
の継続的運営を行うことを目的として保留床を取得し、
「リオーネふるかわ」
と名付けられた商業施設のテナント事業の管理運営を担当した。
− 191 −
事業の概要
事業費
(個人施行)
事業の成果
・保留床取得費の一部として、経済産業省のリノベーション補助金 5.4 億円(年
度予算総額 12 億円の 45%に相当)が交付されたことが事業実現の弾みとな
った。再開発の熱意が経済産業省の担当官に伝わり、財務省の担当官の説得
に繋がり、予算確保となった。
(4)民間の視点からの事業計画の工夫−地域の状況を反映した身の丈開発
事業計画は、コンサルタント会社とも協議し、シネコンほか民間の視点から
次の計画とした。
①低容積率の施設、駐車場の充実
・来場者の利便性を重視し、駐車場は地上駐車場と、3 階建ての立体駐車場約
450 台を整備し、複合施設は 3 階建ての容積率約 100%とした。
・先行事例の調査から、地下駐車場、建屋内の駐車場は、費用を要する割に、
利便性が悪いと判断し、スペース確保を重視した駐車場とした。立体駐車場
は、建設費が抑えられる鉄骨造である。
・駐車場は昼間 2 時間無料、夜間 1 時間無料で運営している。利用者も多く、
台町商店街活性化に寄与している。
②最小限の住宅施設
・マンションの建設も検討したが、本事業の計画時に建設された駅前の約 60
戸の大手メーカーによるマンションの売れ行きが芳しくなく、古川地区での
同じ大手メーカー施工のマンション販売は成功しないと判断し、店舗兼用、
住宅専用の 15 戸とした。住宅は数日で完売した。
③地権者の意向を反映した合意形成
・地権者は 22 者であった。地元商店主も多く、事業にあたっての同意は比較的
順調に進んだが、同意の得られない事業者の土地は計画から取り除いて、事
業の推進を優先とした。
④シネコンの運営、デジタル化
・シネマの新しいコンテンツが常に出ることが、情報発信となり、来場者も増
え、昨年度シネコンで単年度黒字を達成した。
・人件費削減のため、設備投資を要するフィルムからデジタル化への対応につ
いても、事業収支を検討したうえで、地方のシネコンとしては早期に導入し
た。デジタル化については、一部経済産業省の補助を活用した。
2.施設概要
・商業複合棟(地上 3 階、立体駐車場約 170 台含む、延床面積 13,000 ㎡)
・店舗併用住宅棟(地上 3 階、4 戸・延べ床面積 540 ㎡)
・住宅棟(地上 6 階、11 戸・延床面積 1,180 ㎡)
事業費:約 29 億円
補助:約 24 億円(国土交通省、宮城県、古川市、経済産業省)
1.利用者の増加
・利用者は約 10 万人/月である。事業前の地区の通行者が約 1,700 人(約 5.1
万人/月)であり、利用者は増加している。
2.古川地区の中心地としての認知
・中心市街地にあって駐車場が広いこともあり、古川地区の中心市街地として
認知され利用者が増えている。当初約 4,000 万円の営業赤字から、直近の平
成 26 年 3 月期は、2,800 万円の営業黒字を達成した。
・テナントに空きはなく、東証一部上場企業も大崎市地区の店舗として入居し
ている。大手デパートの系列店の入店希望もあり、既存テナントに一部転居
の要請も検討する状況になっている。
− 192 −
課題
その他
1.行政施設の入居
・地元商店主で計画したこと、また計画時財政の問題から行政による床の購入
ができない状況もあり、公共施設の入居が難しかった。現在は、市の子育て
支援センターが入居している。公共施設が入居することにより、信用度も増
し民間業者の入居も進んだ。今後も行政課題に合った事業運営をしていきた
い。
(当初は、賃貸としてなら可能かもということで賃貸市営住宅の検討もし
たが、結局、実現にいたらなかった。
)
2.運営会社の恒常的な利益確保
・運営会社アクアライト台町は、概ね黒字を達成する状況になってきたが、地
元商店主が多い役員は無報酬である。
・地元の商店主として、地域発展のため無報酬での勤務に異論はないが、事業
会社の継続性のためには、個人に依存せず、報酬の出せる会社とすることが
必要である。
1.震災の影響について
・運営会社アクアイト台町は、平成 14 年設立当初の赤字から、ようやく約 1,000
万円/年の利益が確保できる状況になった頃の平成 23 年 3 月に東日本大震災
に見舞われた。シネコンでは、天井・壁が崩落し、施設修理に約 1 億円を要
する被害を受けたが、日本政策金融公庫より約 8,000 万円の融資により、震
災から 4 カ月後の 7 月に運営を再開した。その後震災復旧グループ補助金も
交付された。
2.千葉社長の経歴−地元まちづくりへの熱意
・千葉社長は、幕末期創設の地元木材会社チバミンの 4 代目社長である。昭和
28 年生まれの 7 人兄弟の二男で、早稲田大学理工学部で応用物理学を専攻さ
れ、大手電機メーカーに就職後、25 歳の時に実家の製材業のチバミンに入社
し、平成 2 年に社長に就任された。チバミンは、リオーネふるかわの地権者
でもある。
・地元に貢献する、DBM(ドメスチックビジネスマン)になるとの思いから、
平成 8 年に台町商店街振興組合理事長に就任された。平成 25 年 10 月までは、
古川商工会議所副会頭として、現在は、チバミン、アクアライト台町、プラ
ザホテル、古川ガスの社長として、まちづくりに熱心に取り組まれている。
− 193 −
参考写真
シネコン棟
業務棟
リ オ ー ネ ふる か わ の外
シネコン入口
駐車場
施設内の子育て支援センタ
隣接して建設された住居施設
− 194 −
【聞取 11】
ヒアリング日時
ヒアリング先
対応者
地区の概要
事業の経緯
計画の概要
小松島市
井利ノ口地区第一種市街地再開発事業
平成 26 年 10 月 22 日(水) 15:30∼16:30
小松島市 井利ノ口地区第一種市街地再開発事業
徳島赤十字病院事務部総務課
真鍋
文雄事務部長様、佐野
哲哉主事様
事業名 :井利ノ口地区第一種市街地再開発事業
所在地 :徳島県小松島市小松島町字井利ノ口及び字房浜の各一部
施行者 :東洋紡績㈱、日本赤十字社
地区面積:約 4.1ha
ヒアリング結果
契機:老朽化した総合病院の移転、隣接する幹線市道の拡幅・整備
目的:市街地再開発による「医療・福祉・交流ゾーン」の核施設と病院建設
・小松島市の中心市街地の井利ノ口地区にある徳島赤十字病院は、老朽化が進
んでいたため建て替えによる耐震設計が必要となっていた。小松島市では、
平成 11 年度に策定の小松島市中心市街地活性化基本計画において、都市軸・
シンボルロードとしての都市計画道路市道芝生日ノ峰線の整備や、市街地再
開発事業による「医療・福祉・交流ゾーン」の核施設としての、徳島赤十字
病院の移転整備を重点事業に位置付けた。
・事業手法としては、市街地再開発事業と土地区画整理事業の組合せについて
の検討を重ね、平成 11 年度に制度化された「沿道整備街路事業」を導入し、
市街地再開発事業と土地区画整理事業との一体的施行として事業化した。
スケジュール
・平成 12 年 3 月 小松島市中心市街地活性化基本計画策定
・平成 12 年 11 月 個人施行予定者(東洋紡・日赤)による協議会設立
・平成 13 年 4 月 都市計画決定(近隣商業地域、高度利用地区、市街地再開発
促進区域)
・平成 14 年 6 月 井利ノ口地区土地区画整理事業認可
・平成 15 年 5 月 沿道整備街路事業による権利変換計画決定
・平成 16 年 12 月 井利ノ口地区第一種市街地再開発事業認可(個人施行)
・平成 18 年 5 月 新病院竣工
1.事業の特徴
(1)「市街地再開発事業」と「沿道整備街路事業」の一体施行による総合病院の
移転
①老朽化した総合病院の移転新築
移転前
−市街地再開発事業
・徳島赤十字病院の南約 250m の井利
移転後
ノ口地区の一画に、東洋紡績(株)
の約 8ha の工場敷地があった。この
工場跡地の一部約 4ha に病院を移
転新築するとともに、併せて医療関
連業務・商業施設等からなる複合ビ
ルを建設する「井利ノ口地区市街地
再開発事業」により、医療福祉を軸
としたまちづくりを行い、中心市街
出典:徳島赤十字病院提供資料より転載、一部加筆
地の再生を図ることとした。
②都市計画道路市道芝生日ノ峰線の整備−沿道整備街路事業
・移転先の東洋紡績工場敷地は既存の市道(芝生日ノ峰線)に面しており、市
− 195 −
計画の概要
道は市街地を南北に走る幹線道路であり、拡幅の要望があった。工場敷地と
市道に挟まれた用地には、細分化された沿道地権者の住居・店舗等が並んで
いた。地区内の都市計画道路沿道地権者(22 件)は、代替地の取得または金
銭補償による地区外転出を希望した。
・そのため、平成 11 年 3 月に施行された「沿道整備街路事業(*1)」により、東
洋紡績工場敷地の一部(病院の建設地の南側)を種地として、再開発事業区域
外に代替地を創出し、沿道地権者をその代替地を移転させることとした。
・この「市街地再開発事業」と「沿道整備街路事業」の一体施行により、東洋
紡敷跡地を活用した沿道地権者のための代替地造成を行うとともに、病院が
移転する再開発敷地を街路に面して確保した。
工場跡地と市道
病院移転先の
工場跡地
の間にある 22
地権者の用地
病院移転先の
工場跡地
換地への移転、
買収により病院
は市道に面する
ようにした
沿道整備街路事
業により確保し
た市街地再開発
事業用地内の地
権者の換地
換地内に整備
された地権者
の用地,区画道路
沿道整備街路事業による整備前後の土地の状況
出典:徳島赤十字病院提供資料より転載、一部加筆
*1: 沿道整備街路事業
・街路事業の区間の一部について、用地の所有者の残留希望と都市計画道路区
域外の土地所有者の売却意向に応えながら、換地方式により都市計画道路用
地を確保していく土地区画整理事業。直売方式と区画整理方式により、都市
計画道路用地を確保できる。
・街路事業者である自治体が、都市計画道路内の残留希望者と都市計画道路外
の売却希望者の同意を得て行う個人施工事業であるため、都市計画決定や審
議会などの手続きが不要であり、簡易に着手できる土地区画整理事業である。
・井利ノ口地区第一種市街地再開発事業は、全国で 2 例目の沿道整備街路事業
である。
(2) 医療関連業務・商業施設等からなる複合ビルの建設
・移転した病院は、9 階建ての病院棟と、3 階建ての複合棟からなる。複合棟の
2、3 階が外来棟であり、1 階には患者の利便性を高めるよう、レストラン、
コンビニ、店舗、キャッシュコーナーの施設を設置している。
・屋上や敷地内の緑地、水庭の配置などにより、自然が感じられる環境づくり
にも配慮している。
− 196 −
計画の概要
病院棟
複合棟
出典:徳島赤十字病院提供資料より転載、一部加筆
事業費
(組合施行)
事業の成果
2.施設概要
・面積:約 4.1ha
・施設:延床面積約 39,000 ㎡。病院棟 9 階建 病床数 405 床 約 30,000 ㎡
複合棟 3 階建 約 9,000 ㎡
・構造:RC 造一部 S・SRC 造
3.病院の運営状況
・医師数 137 名、看護職員 501 名、医療技術者 122 名、その他従業員 217 名
計 977 名が勤務(数値は 2013 年病院案内による、平成 24 年度の実績)
・外来患者数 673.1 名/人。入院患者延数 404.7 人/日。平均在院日数 8.7
日/人(概ね毎週約 300 人が入退院している。数値は 2013 年病院案内による)
・収入 約 160 億円/年(旧病院は約 120 億円/年)
14,142 百万円
この内徳島日赤病院の移転・新築費用が約 100 億円
1.病院の機能・規模拡大による周辺地域の集客の向上
・旧前の約 1.8ha から 4ha の用地への総合病院の新築により、医療設備が更新
され最新となり来院者が増加したため、病院の収入も増加した。
・約 1,000 名の職員、約 700 名/日の来院者、病院に関わる業者等、病院関連の
約 3,000 人の出入りとともに、隣接の東洋紡績跡地の残り半分に建設された
商業施設により、地域の中心市街地への集客は増加した。
2.周辺環境の整備
・病院の移転・新築とともに実施した市道の拡幅等の整備、市街地整備による
住居・店舗移転により、病院へのアクセス、地域の交通環境が改善された。
・利用されていない工場建屋を取り壊して病院を新築することで、周辺の景観
が改善された。
− 197 −
事業の成果
課
題
3.総合病院の事業参画による円滑な事業の推進
・全事業費の約 70%の約 100 億円が病院の建設費用である。経営基盤の安定し
た日本赤十字社(*1)の病院が事業者となったことは、事業の計画から工事ま
で、円滑な事業の推進に寄与している。(*1:日本赤十字社は、国内に 92 の
病院があり、従業員約 50,000 人。事業費は約 9,000 億円/年、設備投資は、
1,000 億円/年の約 1 兆円予算規模の事業体である。1 法人であるが、原則病
院毎の独立経営であり、民間病院として堅実な運営を行っている。)
4.複合棟の病院の借用によるコンビニ、院外薬局の設置
・3 階建ての複合棟は、地権者の東洋紡績の所有である。徳島赤十字病院は、2、
3 階を外来診療棟として借りている(そのため建物の名称はTNビルであ
る)。1 階は東洋紡績の所有のため、医療施設としての建築の制約を受けない
ので、コンビニ、院外薬局を設置した。
・結果として、病院と一体の形で営業できることとなり、来院者、地域住民の
利便性の向上に繋がっている。
1.再開発事業の核としての病院の活用−関連事業者の連携による開発計画
・本事業は“「市街地再開発事業」と「沿道整備街路事業」の一体施行による周
辺環境の整備”、
“医療関連業務・商業施設等からなる複合ビルの建設”
、等の
他に例のない事例により成果を上げている。
・約 1,000 名が勤務し多くの利用者がある総合病院の機能を考えると、もっと
市街地の活性化に繋がる計画ができたのではないかと考えている(日赤病院
の見解)。
・勤務者の多くは、医師・看護師等年齢層が若く、生活・娯楽の質的な面で店
舗が不足しており、消費が徳島市に流失しているという意見がある。毎週 300
人前後の入退院に伴い、家族・知人も来院するが、宿泊施設はなく、飲食店
も少ない。宿泊者は徳島に宿泊している。
・病院関係者としての行政の接点は保健福祉関係となる。一方、再開発は土木
関係である。総合病院による病院関係者ほか、多くの利用者があることを考
えると、多様な“集客機能”として、関連する行政部門と事業者が連携し、
まちづくりに活用することが望まれる。
− 198 −
参考写真
9 階建の病院棟の外観
コンビニ等のある 3 階建の業務棟の外観
沿道整備街路事業で整備された道路
− 199 −
病院に隣接する換地に移転した住宅
【聞取 12】
ヒアリング日時
視察先
応対者
地区の概要
事業の経緯
鹿屋市
北田大手町地区第一種市街地再開発事業
平成 26 年 10 月 16 日(木) 10:00∼12:00
鹿屋市 北田大手町地区第一種市街地再開発事業
北田・大手町商店街振興組合 顧問 本村 正亘 様
鹿屋市役所 農林商工部 商工観光課 係長 上椙 隆弘 様
鹿屋市役所 農林商工部 商工観光課 主任主事 長﨑 悟 様
事業名 :北田大手町地区第一種市街地再開発事業
所在地 :鹿児島県鹿児島市北田町及び大手町の各一部
施行者 :(独)都市再生機構
地区面積:1.74ha
ヒアリング結果
契機:商業活動の沈滞
目的: 公共施設の整備・商店街の活性化・公益施設の整備
(1)事業実施の背景
・昭和 50 年代頃までは、再開発地域の鹿屋市北田町・大手町付近は、百貨店や
鹿屋市役所が立地する鹿屋市の中心部であった。
平成 3 年大隅線鹿屋駅跡地に鹿屋市役所が移転し、平成 4 年国道 220 号鹿屋
バイパスの開通により店舗も多くが移転し、寿地区・西原地区に人口が集中
し、次第に中心部としての地位が低下した。
(2)中心市街地活性化基本計画の策定
・平成 4 年商店街等活性化実施計画が商工会議所により作成された。平成 11 年
鹿屋市中心市街地活性化基本計画が策定され、
「市街地再開発」、
「福祉」、
「芸
術・文化」を集約した北田大手町地区第一種市街地再開発事業が計画された。
鹿屋市中心市街地活性化基本計画は、以下の 4 本柱で計画立案されている。
①地域経済活性化の拠点形成
②総合的な福祉拠点の形成
③芸術・文化・学習振興拠点の形成
④個性的な商業集積の形成
(3) 北田大手町地区第一種市街地再開発事業の目的
・北田大手町地区第一種市街地再開発事業は、高次の都市機能の充実を図り、
地域を牽引する地区として、土地の合理的かつ健全な高度利用、複合交流拠
点となる公益施設の整備等を行い、安全で快適な都市空間の形成と町のにぎ
わいの再創出を図り大隅拠点都市地域の都市核形成及び中心市街地の活性化
に資することを目的とした事業である。
スケジュール:
・昭和 60 年 鹿屋市商業近代化基本計画、昭和 63 年 同実施計画
・平成 4 年 商店街等活性化実施計画
注記:ここまでは、商工会議所が計画立案。以降、鹿屋市が計画立案。
・平成 5 年 特定商業集積整備基本構想等作成調査
・平成 6∼9 年 「市街地再開発」、
「福祉」
、「芸術・文化」の観点で計画立案
・平成 11 年 3 月 鹿屋市中心市街地活性化基本計画
・平成 13 年 3 月 市街地再開発事業の都市計画決定
・平成 13 年 5 月 鹿児島県・鹿屋市から地域公団(現 UR 都市機構)へ事業実
施要請
・平成 17 年 10 月 市街地再開発事業の施設建築物の建築工事着手
・平成 19 年 4 月 施設建築物(リナシティかのや)の竣工(5 月オープン)
− 200 −
事業の概要
1.事業の特徴
・当地区は、大隅地域の行政・商業・業務の中心地区であることから、その活
性化が強く望まれていた。
(1)実現可能な事業フレームの構築
・当地区の用途地域は、
「商業地域」で容積率 400%であるが、地方都市では床
需要が見込みにくいため、床需要などを十分に調査した結果、容積率 137%
の「身の丈に合った低容積型の再開発事業」とした。
・特定事業参加者及び特定建築者制度を活用して事業を推進し、民間事業者の
参画誘導を実施した。鹿屋市が延床面積の約 7 割を占める保留床を公益施設
(市民交流センター)として取得した。保留床取得にあたっては、鹿屋市施
行規程に「特定事業参加者」と位置づけ、利用する立場で設計も行った。
・第三セクター「(株)まちづくり鹿屋」は、投資的事業は行わず、再開発ビル
などの管理・運営と商店街の活性化に取り組んでいる。
(2)国・県等と連携した事業の計画、実施
・国土交通省が実施した河川整備事業「肝属川水辺プラザ事業」
、鹿屋市が実施
した「まちづくり交付金事業」と一体的に整備した。
①肝属川水辺プラザ事業
肝属川水辺プラザの整備計画は、国土交通省(河川局長)により平成 13 年
1 月 31 日に、鹿児島県で初めて登録された。
(当時の国土交通省大隅河川国
道事務所副所長が、事業に対し積極的であった。
)
肝属川の抱える水質汚濁・ゴミの不法投棄等の課題を、市民に情報提供する
河川情報施設「きもつき川水辺館」が整備されている。
②まちづくり交付金事業
まちづくり交付金を
活用して、周辺の道路
や公園等の整備を行
うため、以下の整備事
業を行っている。
(市民交流センター
(公益施設床取得)、
イベント広場、木製遊
歩道橋、まちなかパー
クの整備)
整備計画図
出典:UR都市機構の都市再生事例 北田大手町地区リナシティかのや
http://produce.ur-net.go.jp/case/case003.html
− 201 −
事業の概要
(3)「生活」と「交流」の視点にたった施設整備
・中心市街地の活性化を図る一環として、当地区は、定住人口の増大ではなく、
中心市街地に人が集まる「交流人口」の増大を図ったものである。
・買物、福祉、芸術・文化・生涯学習、情報、健康・スポーツ機能など、市民
生活を支える機能の導入している。また、
「食」
・
「健」
・
「美」をコンセプトと
し、地場産品を販売するなど内発型産業構造を目指した商業施設を導入して
いる。
2.施設概要
(1)北田大手町地区市街地再開発事業の内容
・事業の中心となる 4 階建ての複合交流施設(リナシティ)は、商業施設をは
じめ、情報プラザ、芸術・文化・学習プラザ、福祉プラザ、健康スポーツプ
ラザなどの公共公益施設を各階に配置し、市民が集うふれあいの場となるよ
う整備されている。
複合交流施設(リナシティ)の他、国道 504 号拡幅、かのや川(肝属川)親
水整備を含めて事業が進められた。また、景観形成としてカラー舗装、イベ
ント広場、まちなかパーク等が整備されている。
鹿屋市民の日常移動は車中心であるため、市民駐車場の拡充が計画され、ま
ちなかパークの他、イベント広場を駐車場として活用している。
(2)複合交流施設(リナシティかのや)
・敷地面積:11,534 ㎡、建築面積: 7,027 ㎡、延床面積:15,953 ㎡、建物:
地上 4 階建
・リナシティは「リニューアル・アクティブ・シティ」の略で、鹿屋市内小中学
生を対象にした公募で、地元小学生の案が採用された。
情報プラザは、総務省の補助を受けて進めていたが、平成 18 年度に補助が打
ち切られたため、以降は国土交通省の補助で、基準となる概ね 1,000m2(1・2
階の面積)の情報空間を確保し整備した。
リナシティの核店舗であるマックスバリューは主に郊外店となっており、通
常は 2.5km以上の間隔で立地している。当時、中心市街地に立地する考え
はなかったが、中心市街地活性化法が改正され、大型店立地に関する考え方
が変わったため、リナシティに入居した。
図書館を複合施設内に整
備する案もあったが、城山
付近に現在の市図書館が
立地しているため、地元の
抵抗感があり整備されて
いない。
当初、バスセンターを再開
発地内に入れて欲しいと
いう要望もあったが、最終
的には国道 504 号拡幅に
併せて、バス停(3 バース)
を設置することとなった。
リナシティかのや
出典:鹿屋市提供資料
− 202 −
事業の概要
(3) 推進体制
(独)都市再生機構が事業主体となり、北田・大手町地区市街地再開発推進
協議会、鹿屋市、鹿屋商工会議所、
(株)まちづくり鹿屋(鹿屋市、鹿屋商工
会議所他出資)が連携して事業を推進した。
鹿屋市中心市街地活性化基本計画に基づく事業のため、鹿屋市内35団体で
構成された協議会(助役が理事長)と定期的に協議を行った。
国土交通省の肝属川水辺プラザ事業、鹿屋市が事業主体のまちづくり交付金
事業を連携して実施したため、相互に協議を進めながら事業を推進している。
事業は市長、副市長が中心となって指揮をとり、鹿屋市役所担当課が事業連
携する都市再生機構、国土交通省、県等の調整を積極的に行った。都市再生
機構が加わったことも、事業が進んだ一つの要因である。
再開発事業推進体制図
出典:鹿屋市提供資料
事業費
(組合施行)
全体で約 130 億円の事業の大規模事業であることから、事業に対して賛否両
論あり、議会も 15:12 で可決する等厳しい状況であった。
事業費概要
出典:鹿屋市提供資料
事業の成果
・利用者数は、全体的に増加傾向である。
(1)集客状況
出典:鹿屋市提供資料
注記:
「ハローワーク」は、
「リナシティかのや」から国道 504 号を挟んで整備されている。
− 203 −
事業の成果
(2)附帯施設の利用状況
まちなかパークの利用者は、イベントを開催することによって、近年利用が
急激に伸びている。
(3)国道504号交通量
注記:交通量調査時間帯:7:00∼19:00(12 時間)
課題
(1) 周辺地区との連携強化
リナシティには人が集まってきているが、現時点では周辺地区への回遊強化
には至っていない。
オープン当初、専門店から駐車場が遠いため売上が伸びない等の不満があっ
たが、その後不満はなくなってきている。現在、空き1店舗がある。
(2) 維持管理について
施設建築物の維持管理費は約 1 億 2 千万円/年、市民交流センターの運営費
は約 1 億 8 千万円/年、発生している。
修繕積立金は区分所有者が毎年積み立てを行っているが、鹿屋市は金額確認
のみで積立は行っておらず、必要な時に予算化する考え方となっている。
リナシティは複合施設のため、公共施設の統括は鹿屋市商工観光課が行って
いるが、担当課が 5 箇所で調整に課題がある。
・鹿屋市の公共施設「鹿屋市市民交流センター」(情報プラザ・芸能文化学習プ
ラザ・福祉プラザ・健康スポーツプラザ)は、まちづくり鹿屋および鹿屋市
社会福祉協議会(福祉プラザのみ)が指定管理者として運営にあたっている。
(3) 事業実施時の合意形成について
平成 9 年度末で権利者の 69.2%の合意を得たが、それ以上は進まなかったが、
その後反対者に対し個別にお願いし、平成 15 年 10 月時点で権利者(所有者)
、
権利者(借地権)
、面積のいずれも 90%以上の賛同書を取得し、議決を得た。
(議案上程は平成 15 年 10 月 31 日までに 90%以上の賛同が、市長からの条
件であった。強制執行は行わない方針であった。
)
反対派の「検証する会」構成員は高齢者が多く、最終的に息子等も含めて説
明を行った。土地代が良かった時期から約 1/5 となっていたことも、同意が
得られなかった要因の一つである。
(現在、約 22∼23 万円/坪。)
再開発地は、建物が老朽化していた。地権者の移転先準備は、地元の不動産
業者が協力してくれたため、円滑に進んだ。
− 204 −
参考写真
肝属川
肝属川
リナシティかのや
ふれあい橋
肝属川水辺プラザ整備事業
水車を利用した
水力発電装置
城山の沸き水を活用した水路
国道拡幅で整備されたバス停
各施設の予定
市民交流センターの予定
市民交流センター内のホール
FMかのや放送中
市民交流センター内の
芸術文化学習プラザ
− 205 −
市民交流センター内の情報プラザ
(FMサテライトスタジオ)
別冊−3 視察調査
目
次
【視察1】
京都市
京都御池中学校複合施設整備事業 ................... 207
【視察2】
金沢市
金沢市民芸術村 ................................... 211
【視察3】
金沢市
武蔵ケ辻第四地区第一種市街地再開発事業 ........... 215
【視察4】
富山市
グランドプラザ整備事業 ........................... 222
【視察5】
長岡市
厚生会館地区市役所事務機能整備事業 ............... 230
− 206 −
【視察1】
京都市
京都御池中学校複合施設整備事業
視察先
京都市
対応者
(記載省略)
地区の概要
京都御池中学校
事業名
:京都御池中学校・複合施設整備等事業
所在地
:京都市中京区御池通富小路西入東八幡町579番地
事業者
:京都市
敷地面積:8,400m2
ヒアリング結果
事業の経緯
契機:市内の3中学校の統合による京都御池中学校の建設
目的:
生徒数の減少(昭和 33 年をピークに減少。)に伴い、地元の 14 学区5小中学
校のPTAからの統合要望書を受け、御池通の利便性に優れた敷地条件を活用
し、①教育と福祉の拠点、②地域と歩む学校づくり、③都心のにぎわいの創出
を目的とし、中学校を核とする複合施設を教育施設としてPFI手法により建
設した。
スケジュール:
・平成 14 年 6 月
京都市PFI導入基本方針策定
・平成 15 年 5 月
PFIでの事業化決定
・平成 16 年 3 月
PFI事業者決定
・平成 18 年 3 月
3中学校(*1)統合の京都御池中学校竣工(*1:滋野、柳池、城
巽)
事業の概要
1.事業の特徴
(1)地元と協働した事業実施−地元とのパートナーシップで事業化
・事業化においては、地元で設立された「新中学校設立推進委員会」で新しい
中学校のあり方、校舎施設について議論・意見集約が図られ、以下の内容の
施設コンセプトに関する提案が京都市に提出された。
① ひとづくり・まちづくりの拠点施設
② 都心部活性化、御池シンボルロードのコンセプトに寄与する施設
③ 将来の人口増や少人数教育に対応した施設
④ 体験や交流等を通じた幅広い学習機会
(2)複合施設化の検討
・上記地元の提案をふまえ、次の視点から複合施設の検討を行った。
① 利便性に優れた敷地の有効活用
② 次代の教育に対応可能な機能性の高い学校
③ 地域ニーズの高い公共施設の整備
④ 御池通のにぎわいの創出
・これを基に、京都御池中学校を核とした「乳幼児保育所」「老人デイサービ
スセンター」「オフィススペース」「にぎわい施設」「拠点備蓄倉庫」「自
治会・消防分団施設」「観光トイレ」からなる複合施設を建設した。
− 207 −
事業の概要
・乳幼児から高齢者までが集う複合施設として、中学生の確かな学力を身につ
けるとともに、豊かな心と生きる力を養う場として、地域の子育て支援及び
高齢者福祉の拠点施設となった。
(3)PFI手法による施設建設、維持管理
・中学校の統合化の合意形成が図られ、建設の計画を進めていた時期の平成 14
年 6 月に、京都市PFI導入基本方針が策定され、WTO協定に基づく基準
額以上の事業は、PFI手法の導入の検討を行うこととなった。
・京都市の財政非常事態宣言もあり、次の視点からPFI手法導入の検討を行
い、従来手法より 10%のコスト削減(最終成果は約 30%削減)が見込まれるこ
とから、京都市で初のPFI事業として、中学校を核とした大規模複合施設
の建設となった。また、学校施設等の整備にPFI手法の導入は、政令指定
都市として初めての事例となった。
<PFI導入可能性調査の実施>
① 施設内容・規模の想定、実現可能性の確認
② 事業スキームの想定(方式、期間、事業範囲)
③ 民間参入意向調査(設計、建設、金融等)
④ VFM(財政負担の比較等)の評価導入
(4)環境にやさしい施設
・屋上緑化、井戸水・雨水の活用、再生資材の使用等により環境負荷を低減し
た。太陽光・ 風力発電設備の設置、次世代エネルギーである燃料電池を全国
に先駆けて導入し、環境を学びあえる環境にやさしい施設とした。
(5)安心・安全な施設
・耐震性に優れた建物、災害応急用物資備蓄倉庫や防災井戸の設置等、地域の
安心・安全な施設とした。
2.施設概要
規模:地上7階、地下1階。延床面積
約20,000m2
・京都御池中学校:教室 2∼7 階、体育館 5 階、プール 6 階。
・乳幼児保育所:2 階、約 1,600m2、定員 160 名。
・老人デイサービスセンター:1 階、約 650m2。
・在宅介護支援センター:1 階、約 100m2。
事業費
・63.2 億円
・施設整備費の約 52.1 億円のうち約 36.5 億円は、財政負担の軽減のため 15
年間の分割払いとした。
事業の成果
1.PFI手法による事業費の削減、効率的な事業推進、PFI事業の推進
(1)事業費の削減
・事業費の 63.2 億円は、従来手法の 90.1 億円に対し、26.9 億円の削減となり、
VFM29.8%を達成した。
(2)効率的な事業の推進
・限られた敷地、約 3 年の事業期間、事業費等の厳しい条件下、民間事業者が
− 208 −
事業の成果
競合し提案力を競うことにより、複合施設建設の事業コンセプトの目的に沿
った施設を建設できた。
・設計から維持管理まで一括で発注することにより効率的な事業実施が図られ
た。
(3)PFI事業の推進
・京都御池中学校のPFI事業のノウハウを活かし、以後、教育委員会で4事
業(小学校普通教室冷房化、音楽高校建設、2件の耐震化)をPFIによる事
業として実施した。
2.御池通のにぎわいの創出
・PFI事業で実施することにより、(京都市→委託契約:PFI事業者→委
託契約:3店舗∼①イタリアンレストラン、②宝石店、③ベーカリー)地域
に適した店舗の営業で、御池通のにぎわいの創出に繋がった。
3.複合施設として多様な学校教育活動の実現
・複合施設として、中学校と他の施設の共通スペースはないが、
① 中学校の生徒が職場体験活動に取り組む「生き方探究・チャレンジ体験」
② 総合支援学級の生徒が店舗で実習等を体験する「総合支援学校版デュアル
システム」
等、教育活動へ協力している。
・維持管理業者が 24 時間常駐しており、安全な学校教育環境が整備された。
課
題
1.生徒数の増加
・平成 18 年度の生徒数は 426 名であった。現在は、平成 19 年より進めている
京都市小中学校の統合で小学 6 年生も学んでおり(御所南小、高倉小 2 校)、
小中学生あわせせて 1,020 名となっている。
・周辺部でマンションの建設が進んでおり、人数の増加が続いている。一方で、
他の学区では生徒数が減少している地区がある。
− 209 −
参考写真
京都御池中学校の鳥瞰図
出典:京都市教育委員会提供資料
京都御池中学校の正門
デイサービスセンター
− 210 −
御池通に面した 3 店舗
保育所
【視察2】
視察先
対応者
地区の概要
金沢市
金沢市
金沢市民芸術村
金沢市民芸術村
金沢市民芸術村
事業名
所在地
村長
普照
豊
様
:金沢市民芸術村
:金沢市大和町1-1
事業者 :金沢市
敷地面積:約 97,000m2(東京ドーム2個分の面積)
ヒアリング結果
事業の経緯
契機:紡績工場の閉鎖にともなう、既存建物を利用した総合文化施設の建設
目的:
事業の概要
・金沢市は約 400 年間戦災の被害を受けておらず、文化財が多くあり、芸術団
体の活動もさかんである。市民の芸術に対する造詣は深く、文化財・伝統文
化の保存に積極的に取り組んできた。
・本施設は、金沢市の新たな芸術・文化の振興の施設として、市民の芸術活動
に対する支援を対象に、“文化の創造を担う若者が相集い”、“市民が気軽
に演劇・音楽・舞踊・美術活動を練習し成果を発表する”場を提供し、豊か
な地域文化の醸成を図ることを目的に建設された。
・城下町金沢の伝統文化を維持するために必要な、建築系技能の保存・継承技
能者養成を目的とする金沢職人大学校を併設している。
・平成 9 年度のグッドデザイン賞大賞を受賞。グッドデザイン賞は運営も受賞
の対象となっている。事務所棟は国の登録有形文化財に登録されている。
スケジュール:
・平成 5 年 大和紡績所有の紡績工場閉鎖
・平成 6 年 8 月 紡績工場跡地利用の調査検討チーム設置
・平成 8 年 10 月 施設竣工
・平成 13 年 12 月 パフォーミングスクエア完成
1.事業の特徴
(1)既存の文化施設の活用
・大正 8 年創業の旧大和紡績工場の敷地と建物を金沢市が購入し、レンガ造工
場建築群を市民の「記憶の保存」として残すとともに、再生利用した。
(2) 再生の経緯
・倉庫を撤去する1週間前に、現場を視察した市長が解体工事に疑問を抱いた。
この建物は残すのが良いと直感的に判断をした。その後、倉庫の再利用につ
いて演劇関係ほか、各分野の関係者に相談し、施設建設に繋がった。
(3)市民が主役の施設運営
・施設は、金沢市文化ホールほか、金沢市の芸術・文化施設を運営する、(公財)
金沢芸術創造財団が運営している。金沢市民芸術村は村長の下、市民に委嘱
する、次のディレクターにより管理運営、事業の企画が行われている。
① 総合ディレクター:1名
市民芸術村の運営につき、総合的な見地から運営の企画立案、取り纏め
② ディレクター:ドラマ、ミュージック、アートの各工房の2名の計6名
施設利用の活性化戦略、工房独自の事業の企画の立案
− 211 −
事業の概要
(4)市民の利用しやすい施設−年中無休・24時間営業、低料金の施設利用料
・全国の公立文化施設で初めての年中無休、24 時間利用可能な施設とした。
・各施設は、深夜(0:00∼6:00)、午前(6:00∼12:00)、午後(12:00∼18:00)、夜
間(18:00∼24:00)の 4 区分の時間帯に区切り、1,000 円以下で利用可能とし
ている。利用費用には楽器、照明等機材の利用費も含んでいる。(ミュージッ
ク工房は 2 時間単位の利用。施設の詳細は、3.施設概要を参照)
2.活動の基本方針と方向性
芸術・文化都市の金沢の施設として、“行政の施設であるが市民の芸術活動
を規制しない”、“営利に関わる事業は行わない”を基本とし、次の方針で運
営している。
(1) 地域文化の拠点(市民参加型芸術文化活動)とする
・芸術活動の練習・制作・研修により、市民が活動する楽しみ・市民の芸術活
動の活性化の場を提供する。
(2) にぎわいの拠点(鑑賞型芸術文化活動)とする
・芸術活動の練習成果の発表により、新しい芸術文化の視点を発見する楽しみ
の場を提供する。
(3) 新しい文化創造の拠点(創造型芸術文化活動)とする
・高い芸術性を目指した制作活動により、優れた芸術作品や新しいアーティス
トが誕生する場としての楽しみを提供する。
3.施設概要
・大きく次の 5 施設がある、
① レンガ造りの倉庫の施設−工房(マルチ、ドラマ、ミュージック、アート
の 4 工房)、オープンスペース、レストラン
② 里山の家−古い民家を移築した市民の交流施設
③ パフォーミングスクエア−芸術活動をサポートする練習室
④ 大和町広場−芝生が植えられており、災害時には防災拠点となる
⑤ 金沢職人大学校
施設配置図
− 212 −
出典:金沢市民芸術村提供資料
事業の概要
事業費
事業の成果
課
題
・マルチ工房は演劇、音楽などの練習に使われている。ミュージック工房はス
タジオが 6 つあり練習、発表の場に使われている。アート工房は美術作品の
製作、展示に使われている。オープンスペースは自由に入ることができる。
・リニューアル当時の金沢市長の娘五木玲子さん(作家五木寛之氏の奥さん)
は有識者会議のメンバーで、リニューアルの提案を頂いている。当時、五木
玲子さんの「この場所は芝居をするイメージでリニューアルしていただきた
い」という提案で、ドラマ工房となった。
・レンガ倉庫の利用にあたって、外部は外周壁の耐震補強を工房他 6 棟の用途
に合わせてそれぞれ異なる方法で施工した。ドラマ、ミュージックの両工房
には強い遮音対策を施工。6 棟を繋ぐため、コロネードを設置し、その前に
池を設け、屋根雪の処理を行っている。内部は、床面を階段状に造り、階下
にトイレや倉庫を収容している。
1.施設建設−以下計約 72.2 億円
・用地取得費:約 50 億円
・市民芸術村建設費(改修工事費):約 17 億円
・パフォーミングスクエア建設費:約 4.7 億円
・事務所等耐震補強工事費:約 0.5 億円
2.維持管理費
(1)支出:年間約 172 百万円
施設管理運営費 116 百万円、人件費 32 百万円、アクションプラン事業費 24
百万円
(2)収入:年間約 20 百万円
施設利用料 19 百万円、レストラン等財産目的外収入 1 百万円
1.高い稼働率の施設利用
・利用料金を概ね安価(6 時間で 1,000 円以下)としたこと、駐車場が無料であ
る等から、各施設は 365 日 24 時間開設で、60∼70%の高い利用稼働率である。
・平成 25 年度で最も稼働率が高いのは、ドラマ工房の夜間(18:00∼24:00)の
96.2%である。ドラマ工房は深夜(0:00∼6:00)も稼働率 61.6%となっている
・平成 25 年度の利用状況は、利用団体数 18,631、利用者数(有償)190,311 人、
来村者 248,761 人(1 日あたり約 700 人) である。金沢市外からの利用も約
24%ある。
2.無事故運用
・24 時間開設の施設であっても、設備の破損、事故もなく運用されている。芸
術・文化施設として、利用者の節度ある利用がなされている。
市民が芸術に触れ合う場として高い稼働率で利用されており、大きな課題は
ないが、18 年間の運営の中での改善点として、以下が考えられている。
1.
約 1.7 億円の維持管理費の 90%が税金の補助である
・運営にあたっては、約 1.7 億円の維持管理費の 90%の年間約 1.5 億円を税金
で補助している。
2.
使用目的の変化への対応
・平成 8 年 10 月の開村から 18 年間で、新たな使用目的として「ネールアート」
「コスプレ」「コミックアート」等の要望がある。時代の流れであり、“芸
術・文化”を目的とするか審査し、極力市民の要望に応えるよう、施設利用
を認めている。
− 213 −
参考写真
写真③
写真②
写真①
施設の配置の案内パネル
①レンガ倉庫のオープンスペースからの
広場の外観
③登録有形文化財の事務所棟
− 214 −
②工房のあるレンガ倉庫
④紡績工場レンガを利用した
工房の外壁
【視察3】
視察箇所
対応者
地区の概要
事業の経緯
事業の概要
金沢市
武蔵ケ辻第四地区第一種市街地再開発事業
近江町いちば館
金沢市都市整備局市街地再生課
課長補佐
南野
浩克
様
事業名 :金沢市武藏ケ辻第四地区第一種市街地再開発
所在地 :金沢市青草町88
事業者 :武藏ケ辻第四地区第一種市街地再開発組合
地区面積:約 0.9ha
敷地面積:敷地面積:約 4,900m2,建物延床面積:約 17,350m2,営業面積:7,150m2
ヒアリング結果
契機:老朽化した商業地の再開発
目的:
・200 年前に商業施設が集積し、市場が形成された。現在の形は、昭和 40 年代
に形成されている。近江町市場区域は約 2ha、再開発エリアは 0.9ha。
・近江町市場前には、バスが約 800 本/日停車しており、重要な交通拠点とな
っている。バス停は、数箇所に分散せず 1 箇所に集約されており、ピーク時
にバス停の前に多くの人が滞留し、歩道が通行し難い状況であった。
・290 年間続く歴史ある市場の中で、戦後まもなく建てられた店舗を中心に、
老巧化による課題が顕在化し、また来客数も減少してきた。そのため、商環
境の再生と、都市機能の整備による総合的な中心市街地の活性化を目指し、
再開発事業が実施された。(従前の課題は、①防災性能の向上、②都市機能
の更新、③国有地の使用賃貸借物件の改善、④来街者数の減少。)
・第四地区は、平成元年∼平成 14 年で都市計画決定され、平成 12 年に近江町
市場活性化マスタープランを策定している。平成 17 年事業計画が認可され、
平成 21 年にグランドオープンした。なお、組合要望により平成 20 年 12 月に
1 階部分だけ営業を開始している。
スケジュール:
・平成 14 年 12 月 都市計画決定
・平成 15 年 3 月 青草辻開発株式会社設立
・平成 17 年 3 月 事業計画認可(市街地再開発組合の設立)
・平成 18 年 3 月 分譲床出店者募集(地域関係者)
・平成 19 年 1 月 地区外仮店舗オープン
・平成 19 年 3 月 再開発ビル建設着手
・平成 19 年 8 月 分譲床出店者募集(一般公募)
・平成 20 年 12 月 1 階市場部分仮使用開始
・平成 21 年 3 月 近江町いちば館管理組合結成、工事完了、引渡し
・平成 21 年 4 月 グランドオープン
1.事業の特徴
(1)身の丈再開発
・老朽木造建物の密集による都市機能更新の停滞や防災面での懸念、個別建て
替えが困難など、多くの内的課題を抱えていた。
・そのため、高度利用に捉われず都市再開発法の趣旨と有意性を活用しつつ、
基準600%に対して容積率288%の低容積型事業(底地の割合を高めた権利変換、
少ない転出率、国道拡幅との一体施工、歴史的建造物の保存活用)により、
− 215 −
事業の概要
当事者自身が地域の再整備に取り組んだ。
(2)再整備の方針
・施設整備の方針として、①市場の街路構成を維持する、②市場の雰囲気を継
承する、③親しみある風景を保存する、④市民の台所機能を残しつつ新たな
機能を付加する、を掲げている。(土地活用モデル大賞受賞)
・これにより、市場の持つ伝統を維持しつつ新たな機能を付加することで、商
環境の再生と集客力の向上を図り、土地の合理的かつ健全な利用と良好な都
市環境の創出を図った。併せて国道の拡幅や地下道の新設など公共施設を整
備することで、中心市街地の活性化、市街地の防災性の向上、交通機能の向
上等を総合的に実現することを目的とした。
(3)歴史のある金沢の象徴地区としての開発(歴史建造物保存、都市基盤整備)
・再開発の考え方は、市場の雰囲気がなくならない様に何を残すか、近江町ら
しさ、現風景を残すということであったため、市場の雰囲気を残した再開発
ビルと、歴史的な建造物(北國銀行武蔵ヶ辻支店)を保存活用している。
・再開発に合わせ開発区域に面する国道157号と国道159号を3∼4m拡幅するた
め、隣接する歴史的建造物である村野藤吾氏設計の北國銀行武蔵ヶ辻支店は、
現状より後方に約13m移動し、再開発ビルと一体化させた。
歴史的建造物の曳家
出典:金沢市提供資料
(4)開発前後の土地・施設所有権
・権利者は51店舗、64名、従前の建物は51棟であった。戦後の混乱期により、
不法占用となっていた所有者もあったが、その所有者も組合に参加した。
・再開発ビル建設に伴い、次により開発前後の土地・施設の所有権を設定した。
① 従後の施設建築敷地は一筆共有宅地
② 地上権を設定する(地代の収受が発生)
③ 従前の土地所有者は、従前宅地評価額の割合に応じた敷地所有権(底地)
の持分と権利床(上物=地上権持分と施設建築物の一部)を取得する
④ 従前の借地権者は、上物のみを取得する。
⑤ 従前の借家人は、権利床を借りる権利を取得する。ただし、建物所有を希
望する者は、参加組合員として地階共有床の持分を取得する。
⑥ 緑地帯営業者は、借家人と同等の取扱いをする。
⑦ 銀行建物は、曳家し、再生・活用する。
− 216 −
事業の概要
土地・施設所有のスキーム
出典:金沢市提供資料
2.施設概要
(1) 民間と公共の複合施設
・1・2階は商業施設、3・4階は公益施設となっている。1階を市場の再生、地下
1階と2階には飲食店や専門店を集積した3層の商業フロアを創出し、上部に公
共交流施設を加えた複合する5層の新たな「近江町いちば館」を整備した。
近江町いちば館の施設構成
出典:金沢市提供資料
地下1階:惣菜店・飲食店・ドラッグストアなど13店舗
1階:青果店・飲食店など50店舗
2階:飲食店10店舗
3階:近江町交流プラザ(ちびっこ広場・食育広場)、駐車場
4階:近江町交流プラザ(まなびぃ広場・市民サービスコーナー)、駐車場
5階:事務所フロア
3.事業推進組織
(1) 再開発組合
・事業推進組織は、武蔵ケ辻第四地区市街地再開発組合と青草辻開発株式会社
が、両輪となっている。従前は、再開発組合に市職員 3∼4 名が出向していた
が、近年は出向もなく、
近江町市場再整備事務
所を設置している。
・武蔵ケ辻第四地区市街
地再開発組合は、組合
員18名、参加組合員20
名、計38名となってお
り、役員は理事長1名、
副理事長3名、理事16
名、監事2名で構成。
(平成20年12月現在)
武蔵ケ辻第四地区市街地再開発組合
出典:金沢市提供資料
− 217 −
事業の概要
(2) 管理組合
・近江町いちば館管理組合は、再開発事業により整備された施設建築敷地、施
設建築物及び附属設備の管理又は使用に関する事項を規約に定め、区分所有
者相互間の権利義務、共同利用等を調整し、建物全体の良好な環境を維持増
進することを目的として平成21年3月に設立された。
近江町いちば館管理組合
出典:金沢市提供資料
事業費
・総事業費約56.6億円
・資金計画
出典:金沢市提供資料
事業の成果
1.来街者の増加
・リニューアル整備により、平日歩行者が3万人から5万人に増加し、大きな効
果を上げている。
2.施設の利便性・魅力の向上
・3・4階は公益施設(近江町交流プラザ)となっており、市場利用客以外の来
街者にも活用されている。1階は対面販売の市場であるが、若い人は対面販売
が苦手である。若い人にも来街してもらうため、3階にちびっこ広場を設置し
ている。
3.歩行空間の快適性の向上
・歩行者の回遊性を高めるため、広めの歩道を整備することで改善している。
市内有数の繁華街の香林坊の整備は、歩道拡幅(国道157号香林坊拡幅事
業)がメインとなっている。(昭和50年代に武蔵ケ辻第四工区では、交差点
で地下道を整備した。この際、整備に対して地元意向も強く、国、市、地元
で1/3の事業費を負担している。)
− 218 −
事業の成果
課
題
その他
4.交通の拠点性の向上
・市民にとって利便性の低い場所であったが、バスの拠点としても利便性が向
上した。また、市場の駐車場は、昨年までは、6時以降無料としていたが、取
りやめた。
5.市場の雰囲気の継承
・市場の雰囲気を残すということで、建物内も既往の市場の形を再現した。
・市場の権利者は、店舗の奥行きより間口を大切にするが、既往の通りはすべ
てて拡幅となるため、市場の間口が足りなくなった。既往の通りだけでは、
間口が確保できないため、新しい通りを整備した。
6.近代建築物の保存
・近代の風景を受け継ぐため、銀行の建物を残した。建物は、曳家で移動させ、
免震、耐震構造とした。銀行は支店が不要であったため、建物も不要という
ことであったが、権利床を返却した。銀行は3時閉店であるが、銀行前面にお
菓子屋を配置し、3時以降も営業されている。キャッシュコーナーが、最も使
われている。
1.収益確保、維持管理
・歩行者の通行量は、地上面で若干増えている。また、地下道を通る人は増加
しているが、売上は伸びていないため、課題の一つとなっている。
・維持管理費は、市が運営に関与していないため不明であるが、駐車場の売上
は管理費として活用している。敷地内に通りを整備したため、その維持管理
費も必要となっている。道路拡幅により歩道の一部を使って武蔵ケ辻バス停
のバスベイを整備したため、市場敷地の一部を歩道として活用している。
2.地権者との合意形成
・合意形成は、非常に時間がかかっている。景気の波にも影響を受ける。反対
者が1桁(残り8名)になった時点で都市計画を決定した。昭和56年から平成
14年までかかった。
・事業費を圧縮したため、営業補償が払えなかった。そのため、権利者の営業
要望から、プレハブで仮設店舗を設置した。戦後の闇市のようであった。
3.駐車場の確保(自動車依存の高い金沢市)
・近江町市場の開発区域にも住宅の話があったが、市場特有の匂いが発生する
ため住宅に制約が発生する。また、街中で住宅を整備する場合、駐車場が必
要であるが、駐車場出入口の確保が困難であった。金沢市は、マイカーによ
る移動が多く、3台/世帯程度の自動車保有となっている。駐車場を設置した
場合でも、朝夕の渋滞が懸念され、住宅を整備することに魅力はあるが、課
題も多いという話があった。
・駐車場は、再開発の地区毎に駐車場を整備している。街中には、整備しなく
ても既存の駐車場があるという話もあった。巨大戦艦型の再開発ビルは整備
できないため、小規模駐車場を再開発ビルの近くで確保している。近年、100
円パーキングが増えているが、将来的には集約も考えている。
1.金沢市の市街地再開発について
(1) 保存と開発のまちづくり
・金沢市は、金沢城を中心に形成された城下町である。街区は殆ど残っており、
江戸時代からの道が多く残っている。
・金沢市のまちづくりの考え方は「保存」と「開発」であり、「保存する地区」と「開
− 219 −
その他
発する地区」を区分している。
・街中保全を実施する中で、区画整理を実施していくことは難しい。金沢には
地区計画が多くあり、用途を定める際に地区計画も定める。準工業地域であ
るが、規制が厳しい地区計画となっているものもある。加えてまちづくり条
例を策定している場合もある。
・金沢市の開発の特徴は、郊外で区画整理事業が多いことである。46万都市と
しては多くなっている。(通常、区画整理事業は街中での実施が多い。)
(2) 都心軸の整備
・武蔵ケ辻、香林坊は、金沢市の2大繁華街である。金沢港∼金沢駅∼武蔵ケ辻
∼香林坊の都心軸を開発地区として、「西部地区」、「駅西地区」、「金沢駅周辺」、
「駅東地区」で整備をそれぞれ進めている。(武蔵ケ辻地区は、駅東地区に位
置する。)
・金沢駅∼武蔵ケ辻は、昭和40年代に第一∼第五工区で将来像が描かれている。
香林坊地区は、再開発を進めている。「近代化」が金沢市の原点となっている。
・金沢駅前は、東西のうち西口が不便だった。昭和30年代から高架化の話があ
ったが、貨物ヤードの跡地活用検討が必要であった。跡地は高度利用できる
ように区画整理した。
(3) 街中の定住促進
・街中の人口は横ばい、若しくは低下している。定住促進を進めており、金沢
駅から武蔵ケ辻地区の第一∼第五工区は384戸住宅を整備した。
・郊外化は進んでいるが、近い将来、人口は減少に転じることが予想されるた
め、街中定住促進を進めていく。但し、過去の郊外化した経緯も、考えてい
く必要がある。
金沢市の都心軸
出典:金沢世界都市構想第2次基本計画
− 220 −
参考写真
曳家保存された北國銀行建物
近江町いちば館内の新通り
公益施設(近江町交流プラザ)
− 221 −
近江町いちば館の外観
公益施設(近江町市民センター)
銀行前のカフェ
【視察4】
視察箇所
対応者
富山市
富山市
グランドプラザ整備事業
グランドプラザ
富山市都市整備部中心市街地活性化推進課
富山市都市整備部都市再生整備課
地区の概要
事業の経緯
事業の概要
課長代理
柏木
克仁
様
主幹(課長代理)
守山
裕一
様
事業名 :グランドプラザ整備事業
所在地 :富山市新桜町7-38
事業者 :富山市
施設概要:ガレリア(大屋根)を設けた全天候型空間、施設面積(約1,400㎡)、
延べ床面積(約1,489㎡)天井までの高さ(約19m)、大型映像装置
(約277インチ)
運営主体:富山市(H19.9∼H22.3)、指定管理者まちづくりとやま(H22.4∼)
ヒアリング結果
契機:中心市街地活性化に連動した公共の市民広場の建設
目的:
・グランドプラザの位置する総曲輪(ソウガワ)地区は富山市最大の商店街・繁
華街であり、昭和 28 年にはアーケードが設置され、総曲輪通りでのショッピ
ングは「総ブラ」と呼ばれ楽しまれてきた。
・しかし、郊外化に伴う大型店の撤退などが相次ぎ、歩行者数の減少、小売業
の売り上げや店舗数の減少など、地区の活性化が大きな課題となった。
・富山市と地元関係者は、中心市街地のにぎわい再生に向けて再開発事業など
を核とした中心市街地活性化基本計画を策定し、順次事業化に着手した。
・新たなにぎわい拠点の整備として、中心市街地において、その核となる大規
模商業施設(FERIO)、全天候型多目的広場(グランドプラザ)、立体
駐車場(CUBY)を一体的に整備した。
・グランドプラザは平成19年9月にオープンし、平成22年3月まで富山市で運営
し、その後指定管理者((株)まちづくりとやま)が運営している。
スケジュール:
・平成 4 年
総曲輪地区の再開発準備組合設立。グランドプラザのある
総曲輪地区の再開発に準じ着手
・平成 15 年 7 月 街中活用懇話会にてグランド通り再整備の検討が始まる
・平成 16 年
グランドプラザ活用委員会発足
・平成18年5月
工事着手
・平成18年8月
愛称名をグランドプラザに正式決定
・平成19年8月
工事完了
・平成19年9月
オープン
1.事業の特徴
(1) 中心市街地活性化基本計画(第1期)の事業
・平成19年2月に「富山市」と「青森市」が、第1号で中心市街地活性化基本計画を
認定された。富山市の中心市街地区域面積は、436haとなっている。3つの基
本計画の達成目標を、①公共交通の利便性の向上、②にぎわい拠点の創出、
③まちなか居住の推進、として設定している。本事業は、この改正中心市街
地活性法下での中心市街地活性化基本計画に盛り込まれた事業の一つであ
る。
− 222 −
事業の概要
・グランドプラザは、立体駐車場と店舗からなる「CUBY」と、大規模商業
施設「FERIO」の二つの再開発ビルの間に、市道と再開発事業のセット
バックを活用して建設された市民広場である。
(2) 公共空地と民間空地を一体化した広場
・グランドプラザの敷地は、隣接する百貨店と駐車場の再開発に併せて廃止す
る3本の市道を集約し、両再開発のセットバック分も含めて21mの幅を確保し
ている。セットバック部分は、市が無償で借り受けている。
・公共空地と民間空地を活用した広場となっているが、グランドプラザの屋根
も隣接する再開発ビルと一体構造となっている。
・市道の廃止により、広場ではイベント時に道路占用許可の手続きは不要とな
っている。
グランドプラザ整備前
グランドプラザ整備後
出典:富山市提供資料
2.施設の管理・運営
(1) 富山市まちなかにぎわい広場条例
・広場全体を一括して市が直営で、整備・管理・運営を行っている。グランド
プラザを管理・運営するために、市では富山市まちなかにぎわい広場条例を
制定し、道路の指定を解除してなるべく自由に使用できる広場とした。
(2) 指定管理者による運営
・当初、施設の運営に関しては、一種の社会実験という位置づけとし、富山市
が運営にあたった。オープン後平成22年3月までは富山市で運営し、その後指
定管理者((株)まちづくりとやま)が運営している。
− 223 −
事業の概要
3.施設概要
(1) グランドプラザ
・南北約65m、東西約21m、最高高さ約19.2mのガラス屋根に覆われた市民広
場となっている。ガラリ状に設置されたガラスの壁から、明るい日差しと自
然の風を取り入れることができる「にぎわい広場」となっている。富山市では、
昭和60年の一般市民を対象とした「富山市民大学ガラス工芸コース」の開設を
発端として、平成6年にはガラスの産業化とガラス作家の独立を支援する「富
山ガラス工房」が開設される等、ガラスをテーマとしたまちづくりに取り組ん
でおり、ガラスにこだわりがある。
・グランドプラザ設置のステージは約3.5m昇降可能であり、ステージ下は倉庫
として使用できる。移動可能な植樹桝(モバイルグリーン)は、人力で自由
に移動可能となっている。
・電気、水道、排水、ミスト等の設備があり、各種イベントが実施可能で、テ
ント、フットサルコート、音響施設等様々な備品も用意されている。
(2) 西町・総曲輪地区(CUBY)
・老朽化・細分化した建築物が密集している当地区は、商業環境として十分な
状況ではなくなっており、土地の合理的かつ健全な高度利用が図られていな
いことから、魅力ある商業施設や、公的駐車場等を配した施設建築物を中核
とする再開発事業を施行し、商店街全体としての魅力度、快適性、利便性を
高め、地区及び商業の活性化を図ることを目的としている。
・駐車場630台。(土日は満車。利用料金平日30分100円。土日祝20分100円。)
・中心市街地活性化委員会で、駐車場マネジメントを実施している。
(3) 総曲輪通り南地区(FERIO)
・郊外型ショッピングセンターの進出による集客力の低下や、老朽化した低層
木造建築物などが密集していることにより、施設更新が求められていた。
・キーテナント:大和百貨店
2地区の開発とグランドプラザ
出典:富山市資料
− 224 −
事業費
事業の成果
総事業費
約 15.2 億円(まちづくり交付金:約 8.9 億円)
1.来街者の増加
・グランドプラザの整備効果として、グランドプラザ周辺の歩行者通行量は増
加しており、隣接する総曲輪通りでは約2倍となった。
・土日の休日稼動率は100%で予定が詰まっており、平日も殆どの日にイベント
が実施されており、行けば何かあるということになっている。
・ワールドカップ「コートジボワール戦」のパブリックビューイングでは、2,400
人が集まった。冬期には樹脂パネルを用いてスケートリンクを開設している。
(樹脂のため、冷却費用は不要。)
・グランドプラザでは、視察当日にも「富山大学歩行圏コミュニティ研究会」が
「まちなか ゆる歩き とやま2014」を開催しており、多くの来街者が訪れて
いた。
注記:「まちなか ゆる歩き とやま2014」の内容(2014年9月11日(木)開催)
・開会式、ステージ(大道芸、バンド演奏、剣詩舞)、ブース(ホコケン活動紹
介、ラテアートコーヒー、あんばやし、手打ちそば、歩行関連福祉機器の体験、
健康測定、トライ工房作品販売、ネールアート、写真展)、サプライズイベン
ト(森富山市長のビデオレター、ホコケンのメンバーによるダンス)、閉会式
課
題
その他
2.商店街の活性化
・イベント開催などにより、郊外等に流出していた若者、ファミリー層が戻っ
てきている。広場を利用したイベントは、市民からのイベントの提案と協賛
したい企業とを結び付けるマッチング事業も展開している。
・来街者数の増加を見て、商店街の店舗の改装を行うなど、積極的な経営に転
ずる傾向が見られるようになった。
3.街中居住者の増加
・グランドプラザ周辺の歩行者、路面電車利用者が増加し、中心市街地の人口
が社会増に転じた。中心市街地は高齢者が多く自然減は現在も横ばいで継続
しているが、平成18年から社会増となっている。
・全国的に地価が下落する中、中心商業地区は平成18年以降、地価の下落は見
られず横ばいである。
・公共投資に呼応して民間事業者の活動も活発で、民間分譲マンションの売れ
行きは好調である。
市民の憩いの場所として高い稼働率で利用されており、現段階で大きな課題
はないが、整備時の合意形成、現在の維持管理面で、以下が考えられている。
・富山市の再開発事業は全員同意が原則で実施されている。総曲輪フェリオは、
1組だけ反対があり、反対があったのは富山市ではここだけである。
・グランドプラザの、大屋根(ガラス)の雪は、水で溶かしている。強化ガラ
スになっているが、年に1枚程度割れる。
1.富山市の再開発について
(1)公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくり
① まちづくりの基本方針
・まちづくりの概念図として「だんごと串」という表現を良く使っているが、「だ
んご」が徒歩圏で、「串」が公共交通である。(バスが一社で、公共交通機関の
調整は比較的容易であった。)
− 225 −
その他
② 公共交通の利便性向上(LRT)
・中心市街地内を、市内電車(セントラム)で環状化した。既往の軌道を繋ぐ
環状接続部分を、日本発の上下分離式で整備した。
(運営:富山地方鉄道(株)、
軌道整備:富山市。)
・市内電車(セントラム)の車両はトータルデザイン化されており、車両内の
広告は液晶のみで、広告、中吊りはできない。信号は電車優先となっている。
③ 公共交通の利便性向上(おでかけ定期券)
・満65歳以上を対象に、中心市街地への公共料金を1乗車100円とする「おでかけ
定期券事業」を実施している。県境∼富山中心地まで通常1,200円であるが、
定期券を使えば時間内は100円である。おでかけ定期券のICカード化時に利用
が一時減少したが、その後回復した。
・おでかけ定期券の利用により、利用者の歩数が増加するという効果が報告さ
れている。筑波大学久野教授の研究によると、1,000歩で約60円の医療費が削
減できると試算されている。おでかけ定期券利用で、1人あたり1,309歩/日の
歩数増加があり、おでかけ定期券利用者約2,500人/日で1日あたり約20万円
の医療費削減である。(年間7,560万円の医療費削減につながる。)
・おでかけ定期券の差額分は、富山市が負担している。利用者が乗っていない
バスを多く見かけるため、低料金でも乗ってもらった方が良いのではないか
という市長の発案から始まった。バス運賃差額分1億円のうち6,000万円を市
が負担している。残りはバス事業者が負担している。富山市では、バス利用
運賃が平均300円であり、市、バス、市民が100円ずつ負担という考え方であ
る。(路面電車、電車は差額分の100%を市が負担している。)
④ 中心市街地への居住推進(まちなか居住推進事業)
・中心市街地への居住を推進するため、良質な住宅の建設事業者や、住宅の建
設・購入、賃貸で入居する市民に対して助成する、「まちなか居住推進事業」
を実施している。
・まちなか回帰は、土地価格は関係なく市の政策によるものと考えている。ま
ちなかのマンションは、3LDKで3,000∼4,000万円程度である。郊外で3,000
∼4,000万円程度であれば、立派な戸建が建つ。
(2) トップ(市長)のリーダーシップ
① 市民への説明責任
・コンパクトシティは市長の思いが強く、支持率は高くなっている。政策の結
果が見えていることもあるし、各地で1時間程度のタウンミーティングを4回
/日実施されることもある。
・中心市街地の開発に重点を置くことを、郊外のタウンミーティングでも話さ
れている。市街化区域が、面積で全体の5.8%であるが、固定資産税+都市計
画税は全体の74%となっており、中心市街地の活性化は必要ということを説明
されている。(「説明責任」を「説得責任」と表現されている。)
② 政策のマネジメント
・政策のPDCA(マネジメントシステム)構築は、市長の思いもあった。政策実
施後は、データによる評価を実施している。
・コンパクトシティのリーディングプロジェクトのLRTは、賭けに近いものがあ
ったと思うが、狙った結果は出ている。路面電車利用者数は、平成18年まで
減少傾向であったが、中心市街地活性化基本計画が認定された平成19年以降
− 226 −
その他
回復している。
2.今後の開発計画(第2期計画:平成24年4月∼平成29年3月)
(1) 計画の概要
・第2期計画の3つの目標を、①公共交通や自転車・徒歩の利便性の向上、②富
山らしさの発信と人の交流によるにぎわいの創出、③質の高いライフスタイ
ルの実現、としている。
・市民・NPO・商業者等が主役のソフト事業を強化する方向で、66事業が予定さ
れている。舞台を市が整えたので、第2期計画で市民がどう演じるかである。
(2) 北陸新幹線開業に向けた富山駅周辺の開発
・にぎわいのエリアを拡大し、2015年3月に開業する北陸新幹線に向けて、富山
駅との回遊性を高める計画となる。
・北陸新幹線開業後、富山は雪・雨が多く、乗換えを容易にするため、富山駅
高架下にLRTを通過させる予定(全国初)。これにより、路面電車ネットワー
クとして、富山ライトレール、セントラムの南北軌道が繋がる予定。(但し、
新幹線開通の4年後となる。まだクリアすべき問題が多く残っている。)
・富山市では近年ガラスをPRしており、富山駅はガラスを意識したデザインと
なっている。
(3) 中心市街地の事業の動き
① 再開発事業
・西町南地区第一種市街地再開発事業では、旧大和富山店跡地に隈研吾氏デザ
インの複合公益施設が完成する。図書館、銀行等が入居する。
・総曲輪西地区第一種市街地再開発事業では、シネマコンプレックスが開業す
る。これにより歩行者通行量32,000人(平成28年)の目標を達成すると考え
ている。
② 新規出店サポート事業補助金
・まちなかのにぎわいを創出するため、中心商店街の空き店舗出店の改装費、
家賃、経営相談に対して、「新規出店サポート事業補助金」として助成を行っ
ている。7∼8店舗/年補助している。
③ 富山まちなか研究室MAG.net
・継続的に学生が地域活動に参加する仕組みとして、空き店舗を活用して「富山
まちなか研究室MAG.net」を平成23年7月にオープンしている。マグネット
(MAG.net)とは、人をつなぐことからきている。
④ 学生まちづくりコンペティション
・まちなかを盛り上げる学生提案の企画を募集する「まちづくりコンペディショ
ン」が、商工会議所、青年部と協力して実施されている。(シャッター通りト
リックアート、ファッションショー等)
⑤ まちなか活性化事業サポート補助金
・都市施設等を活用した市民活動が、より活発に展開されることを促すため、
財政支援を行う「まちなか活性化事業サポート補助金」を行っている。
・活動に対して、市からも積極的に意見を出し、3年まで補助し以降は自主事業
となる。まちなかラフティング事業は、1年で補助を打ち切り、その後自主事
業として運営した成功事例である。
⑥ まちなか情報発信事業
− 227 −
その他
・中心市街地で実施されるイベント情報などを一元化して、様々な場所やメデ
ィアと連携して情報発信を行う「まちなか情報発信事業」は、総務省ICT事業と
なっており、デジタルサイネージで、データを一元管理している。
⑦ 自転車市民共同利用システム導入事業(アヴィレ)
・アヴィレの管理・運営は、フランスのシクロシティ(株)に委託している。
30分以内であれば、無料となっている。アヴィレの利用率はそれほど高くな
いが、拡充の方向である。1日券が使いにくいため改善し、ステーションを2
箇所程度増設する予定。
⑧ 水辺空間にぎわい創出事業
・「水辺空間にぎわい創出事業」では、富岩運河等を活用し富岩運河環水公園か
ら中島閘門を体験し港町「岩瀬」を結ぶソーラー船を運航している。JTBと協力
(パッケージ)している。2008年、世界一美しいスターバックスとして紹介
されている。
− 228 −
参考写真
グランドプラザの外観
CUBYの外観
FERIOの外観
イベント開催風景
連絡通路より南側を望む
連絡通路より北側を望む
− 229 −
【視察5】
視察箇所
対応者
地区の概要
長岡市
長岡市
厚生会館地区市役所事務機能整備事業
アオーレ長岡
長岡市中心市街地整備室
長岡市財務部管財課
長岡市財務部管財課
まちなか整備担当課長 韮沢
主査 勝沼
主査 中村
由明 様
しのぶ 様
拓郎 様
事業名 :長岡市公会堂(仮称)整備事業 他(まちづくり交付金事業)
所在地 :長岡市大手通1丁目4番地10
事業者 :長岡市
敷地面積:約 14,900m2、 延べ床面積:約 35,500m2、地上4階、地下1階
ヒアリング結果
事業の経緯
契機:老朽化した厚生会館の建て替え+市役所の移転
目的:
・昭和52年(1977年)に建設された旧長岡市庁舎は、平成16年の新潟県中越地震
で損壊はなかったものの、一時的に庁舎機能が停止し、耐震強度不足が問題
となった。また、市町村合併、平成19年の特例市移行による事務量の増大に
より、事務スペースの不足も問題となった(現在の人口は約28万人)。
・これら問題を背景に、新潟県中越地震以後、市庁舎移転について市民意見聴
取を開始し、平成18年7月の「行政機能再配置検討市民委員会」において「庁
舎は、誰もが利用しやすい中心市街地へ配置することが望ましい」との提言
を受け、平成19年2月、長岡市厚生会館などが集積する「中心市街地」に移転
が決定した。
・一方、移転先地区にある厚生会館は、体育館を基本とした多目的ホールであ
り、老朽化による建て替えも検討されていたことから、市役所移転に併せ新
しい庁舎には市役所の本庁舎に加え、厚生会館の代替施設となる「公会堂(ア
リーナ)」と、天候に左右されずに屋外イベントを開催できる「屋根付き広
場」を整備する施設全体の骨子が固まり、市庁舎と一体的に整備する複合型
市庁舎“アオーレ長岡”として建設された。“アオーレ”は長岡地方の方言
で“会いましょう”の意味である。
スケジュール:
・平成16年 3月 「長岡市中心市街地の構造改革に関する提言」の中で先導的
事業地区に位置づけ
・平成19年 2月 「行政機能再配置検討市民委員会」などを経て、で市庁舎の
移転先決定
・平成19年5月∼11月 設計コンペティション実施、設計者決定
・平成20年 2月 基本設計着手
・平成20年 3月 「長岡市新しい市役所検討市民委員会」で「新しい市役所プラ
ン」策定。①市民により便利な市役所、②市民に開かれた交流
拠点、③次世代に誇れる市役所の3項目の方針を策定。
・平成21年 2月 実施設計着手
・平成21年 7月 長岡市厚生会館撤去、跡地の整地完了
・平成21年12月 建設着手
・平成24年 4月 “アオーレ長岡”供用開始
− 230 −
事業の概要
1.施設の特徴
「新しい市役所プラン」による、①市民により便利な市役所、②市民に開か
れた交流拠点、③次世代に誇れる市役所の方針のもと、次の特徴を有する複合
型市庁舎として建設された。
(1)日本一のサービスを目指した市役所「総合窓口」
・窓口を1階フロアに集約。“行きやすい・案内しやすい”窓口配置とし、相談、
証明発行などの手続きに合わせ、ワンストップでのサービスを提供する。複
数の手続きも、市民は動かず担当職員が入れ替わり対応する。
・窓口は、平日は午前8時30分から午後8時まで、土・日・祝日は午前9時から午
後5時まで開設している。また、リラックスした雰囲気の中で活動や交流の輪
を広げることのできる場として市役所内に「コンビニ・カフェ」を開設。
(2)全天候型のイベント施設「ナカドマ(屋根付広場)」、アリーナ
・誰もが気軽に立ち寄り、憩い集うスペースとして、イベント・結婚式も可能
な屋根付広場を設置。また、3面のバスケットコートがあり、最大5,000人収
容可能なアリーナを設置。ナカドマとアリーナは一体での使用も可能である。
(3)全国初のガラス張りの「議場」
・市民と議会の一体感を醸成するため、大勢の市民が集まるナカドマに面して
いる一階にガラス張り議場を配置。
(4)長岡市災害対策本部室の設置
・大型ディスプレイと6面の独立ディスプレイを活用し、リアルタイムでの気
象・河川の状況、テレビ情報等を総合的に閲覧することで、より的確・迅速
な意思決定を行うことができる。
(5)環境配慮の設計
・屋根に太陽光パネル、雨水のトイレ洗浄水利用・融雪水利用、屋上緑化、長
岡産の天然ガスによるコージェネレーション設備(350kW:アオーレ全体の電
気需要の4割を補填)がある。
2.施設概要
・地下1階、地上4階、塔屋1階、高さ21.4m。敷地面積約14,900m2、延床面積約
35,500m2。
・市庁舎が主体の東棟、市民活動スペースと議会が入る西棟及びアリーナの3
棟から構成され、3棟に面して屋根付き広場「ナカドマ」が敷地中央に配置さ
れている。
− 231 −
事業の概要
アオーレ長岡の施設配置図
出典:長岡市提供資料
事業費
事業の成果
1.工事費
約 131 億円
・まちづくり交付金等:
約29億円
・合併特例債
:
約54億円
・都市整備基金
:
約45億円
・一般財源
:
約 3億円
2.設計費
約4億円
1.中心市街地への来訪者・居住者の増加
(1)アオーレ長岡を中心としたにぎわいの創出
・オープン後、平成 26 年 3 月末までの 2 年間で延べ 274 万人の来訪者があった。
また、アオーレ長岡内に移転した市民協働センターの利用者数が急増し、市
民のまちづくり活動の拠点として様々なイベントが実施されるようになっ
た。
・大手スカイデッキの整備やアオーレ内の自由な通行により、近年減少傾向に
あった施設周辺の通行者数は増加に転じている。完成後から 2 年で、平日は
1.2 倍、休日は 1.7 倍程度に増加した。
(2)中心市街地居住者の増加
・長岡市全体の人口が減少する中、中心市街地における居住人口は平成 24 年∼
平成 25 年にかけて増加傾向にある。また、分譲マンションの立地も増加しつ
つある。
− 232 −
事業の成果
2.交流スペースの整備によるイメージアップ、意識改革
・これまで人の集まる拠点的な場所、いわゆるたまり場がなかった市民にとっ
て、産直市場や健康づくり教室等定期的な活動が行われることで、アオーレ
長岡が日常の場として親しまれるようになり、新たな長岡の「顔」として定
着してきた。
・まちに愛着を持つ市民が増え、中心市街地という場所の重要性を認識させる
ことができた。
課
題
1.開発時の合意形成における課題
・市役所移転に対する市民の反対の声(旧庁舎がまだ十分に使える、街中への
移転により駐車場が不足する等)が大きく、また公園を廃止したことによる
隣接地権者との調整にも時間を要した。
・ただし、厚生会館の建替えと広場整備についての反対はなかった。
2.今後の課題
(1)複雑な施設構成に伴う維持管理・警備の煩雑さの解消
・ソフト・ハードの管理者が異なることから、関係者相互の情報共有が必要で
ある。
(2)周辺商業施設との連携
・結果的に周辺の商業施設は増加したものの、多くが飲食店であり、今後来街者
がさらに時間を費やせるよう、商業施設との結びつきを促す対策が必要である。
(3)工事費の高騰に対応した補助制度の拡充
・類似事業に着手する場合、近年の労務単価や資材の高騰により同様な手法で
は事業がスムーズに進まない可能性があるため、さらなる補助制度の拡充が
望まれる。
その他
1.長岡市の市街地再開発事業について
・平成 16 年 3 月に取りまとめられた「長岡市中心市街地の構造改革に関する提
言」に基づき、「まちなか型公共サービスの展開」の実現に向けた事業が開
始された。
・アオーレ長岡と大手通中央地区の再開発はその第 1 ステージであり、公共施
設を分散配置し中心市街地全体で市役所機能を担うべく、以下の地区におい
て市街地再開発事業を実施している。
・なお、公共サービスの機能を担う一部(農林・建設のエリア)は、空きビル
を活用した「ながおか市民センター」に暫定的に配置している。
(1)大手通中央西地区・東地区(主要施設:フェニックス大手)
・大手通沿いの老朽化した建物の更新を契機に、大手通中央西地区・東地区に
おいて市街地再開発事業が実施された。
・西地区では、まちなか子育て支援拠点として、商業施設とマンションが一体
化した高層施設の一部に、「ちびっこ広場」と「まちなか絵本館」を併設し
た。保育士と司書がいる全国初の子育て支援施設「子育ての駅ちびっこ広場」
− 233 −
その他
として活用されている。
・東地区は、商業施設や銀行・住宅のほか、商工のエリアとして市役所大手通
庁舎や、学びと交流の場である「まちなかキャンパス長岡」、災害の記録や
教訓を後世に伝える「長岡震災アーカイブセンターきおくみらい」等で構成
される複合施設の整備が行われた。
(2)大手通表町地区
・現在進行中である大手通表町西地区市街地再開発事業では、分譲マンション
とともに社会福祉センターや老人ホーム等、福祉拠点の形成をコンセプトと
した施設が整備中である。
まちなか型公共サービスの展開イメージ
出典:長岡市提供資料
− 234 −
参考写真
アオーレ長岡
アリーナ
外観
市役所総合窓口(東棟 1 階)
議場(西棟 1 階)
− 235 −
ナカドマ(屋根付広場)
都市機能向上のための
都市施設のリニューアルに関する調査
参
考
資
料
参考資料−1
リニューアル事例
参考資料−2
公共施設白書
− 236 −
・・・・ 237
・・・・・・ 246
参考資料−1 リニューアル事例
『日本の都市再開発
第 7 巻/(社)全国市街地再開発協会編/平成 23 年 2 月
28 日発行(以下、
「参考文献①」という。)
』を基に、面的整備を念頭に地区面積が
1.5ha 以上の事例(全 42 事例)を抽出した。
さらに、抽出した 42 事例について、当該都市のHPに掲載されている開発事業
の概要紹介、当該開発事業に関わった設計・建設会社による事業紹介及び当該開発
事業に関連する論文等の文献(以下、総称して「参考文献②」という。
)を収集し、
参考文献①及び参考文献②を基に 42 事例に係る事業概要等を整理した。
− 237 −
【整理・分析にあたって】
1.参考文献①の記載内容について
1.1.収録対象地区
参考文献①においては、原則として、平成 16 年 4 月以降、平成 21 年 3 月までに市
街地再開発事業が完了した 137 地区(小規模事例を含む)が掲載されている。
1.2.収録内容の概説
収録資料は、全国市街地再開発協会が定め、原稿作成は公共団体、機構・公社の担
当部門に依頼したものであり、原則としてこの原稿を利用している。
なお、公共団体、機構・公社等の名称は、市町村合併や組織改編等によりその後変
更になっているものもあるが、原則として原稿の表記通りとしている。
2.分類方法について
参考文献①及び参考文献②を基にしたリニューアル事例を整理する上で、以下の考
え方に基づき分類・整理する。
2.1.事業概要
事業概要は参考文献①における記載内容に基づき整理した。
2.2.地区の立地
地区の立地は、参考文献①における「地区の立地」を基本としつつ、参考文献②及
び地形図等を参考に、次の考え方により再整理した。
(1)駅前地区:駅に隣接(概ね 200m 圏内)し、駅及び駅前整備に合わせた再開発
事例をいう。
(2)都心・副都心地区:駅前地区を除き、主要な都市圏(東京首都圏、大阪、名古
屋の三大都市圏及び札幌、仙台、広島、北九州、福岡の各都市圏)
において行政・商業・業務機能が集中する地区をいう。
(3)中心市街地:駅前地区・都心地区を除き、人口が集中し、当該都市における地
域の中心となる業務・商業・行政機能が充実している地区をいう。
(4)周辺地区:上記(1)から(3)以外の地区をいう。
2.3.地区の性格
地区の性格は、参考文献①における「地区の性格」を基本に整理した。
− 238 −
2.4.理由
理由は、参考文献①における「事業の契機」を基本に整理した。なお、その分類は
以下のとおりである。
(1)建物の老朽化
(2)公共施設の不足
(3)商業活動の沈滞
(4)火災等の罹災
(5)都市機能の更新
(6)文化交流の場の創出
(7)低未利用地の活用
(8)地区住民の高齢化
(9)他の公共事業の施行
2.5.事業の目的
事業の目的は、参考文献①における「事業の目的」を基本としつつ、参考文献②も
参考に再整理した。なお、その分類は以下のとおりである。
(1)公共施設の整備
(2)商業の活性化
(3)業務機能の集積
(4)居住環境の改善 … 移転に伴う老朽化した建物に係る居住環境の改善
(5)住宅の供給 … 既存住宅の移転とは別に新規住宅の供給
(6)防災機能の強化
(7)都市景観の向上
(8)拠点機能の強化
(9)病院の整備
なお、事業の目的に該当するものの中で主要な目的1∼2項目に◎を付している。
2.6.利用形態
利用形態は、参考文献①における施設建築物の計画を基本に整理した。なお、その
分類は以下のとおりである。
(1)住宅
(2)店舗
(3)事務所
(4)ホテル
(5)公共施設 … 行政、文化・教養、コミュニティなど、公益的な用に供する公共
施設(建物)
− 239 −
(6)駐車場
(7)その他
なお、利用項目の中で最大利用面積の施設に◎を付している。
2.7.公共施設の整備
公共施設の整備は、参考文献①における「土地利用計画」を基本に整理した。
なお、ここでいう公共施設とは、前項で示した公益的な用に供する公共施設(建物)
を除き、街路や緑地、広場、下水道などをいう。
2.8.主な床利用者
主な床利用者は、参考文献①における「施設建築物の計画」及び「主要な施設」を
基本に整理した。
2.9.建築物棟数
建築物棟数は、参考文献①の「施設建築物の計画」及び参考文献②の施設配置関連
図書を参考に、①住宅単独棟、②住宅を含む複合棟、③住宅を含まない複合棟、④住
宅を含まない単独棟の4区分により各地区の棟数を整理した。
2.10.事業の効果
事業の効果は、参考文献①における「再開発地区のその後」及び参考文献②におけ
る施設供用後の利用状況に関する図書を参考に整理した。なお、その分類は以下のと
おりである。
(1)市民生活の利便性の向上
(2)商業活動の活発化
(3)業務機能の強化
(4)居住人口の増加
(5)安全な都市空間の形成
(6)憩いの場・にぎわい空間の創出
(7)周辺開発の誘導
(8)地域の活性化
2.11.成功のポイント
成功のポイントは、参考文献①における「地業の推進成立に決定的な役割を果たし
たと思われること」及び参考文献②における関連する事項を参考に整理した。
− 240 −
リニューアル事例
総括表
参考文献①を基に、国内の市街地再開発事例を中心に、地区面積が 1.5ha 以上
の整備を含む事例全 42 件を抽出し、参考文献②も参考としつつ整理した。
なお、本総括表は整理の全体を表示しているために文字等が小さいことから、次頁以降に分割して拡大した総括表を掲載する。
事業概要
事業スケジュール
延床面積
地区の立地
事業費
駅
前
地
区
都
心
・
副
都
心
地
区
中
心
市
街
地
地区の性格
周
辺
地
区
住
宅
地
商
業
集
積
地
業
務
地
住
商
混
在
地
事
例
番
号
都道府県名
1
北海道
札幌
東札幌1条
3.7
組合
2004.2
2006.7
11,376
71,844
6.3
12,382
172
2
北海道
札幌
琴似4・1,2
2.8
個人
2005.3
2006.3
2,037
60,369
29.6
7,066
117
3
宮城
大崎
台町
1.8
個人
2004.2
2006.3
4,370
14,844
3.4
3,115
210
1,597
○
4
茨城
水戸
泉町1丁目南
1.7
組合
2004.4
2006.2
54,192
78,205
1.4
18,051
231
4,604
○
5
埼玉
さいたま
武蔵浦和駅第8-1街区
2.6
組合
2003.12
2006.6
11,260
90,300
8.0
25,545
283
5,208 ○
○
6
埼玉
さいたま
武蔵浦和駅第4街区
2.0
組合
2006.4
2008.1
6,137
76,336
12.4
22,651
297
4,502 ○
○
7
埼玉
川口
川口1丁目1番
2.3
組合
2003.7
2005.3
8,324
100,903
12.1
33,523
332
7,446 ○
○
8
埼玉
ふじみ野
上福岡駅西口駅前
2.6
機構
2003.1
2006.7
12,955
42,267
3.3
16,241
384
2,899 ○
9
東京
千代田区
霞が関三丁目南
3.1
個人
2005.1
2007.9
72,399
251,033
3.5
10
東京
中央区
日本橋浜町三丁目西部
1.8
組合
2002.8
2005.9
17,239
98,440
5.7
都市名
地区名
地区面積
(ha)
事業主体
工事着手
年月
工事完了
公告年月
事業前
(㎡)
事業後
(㎡)
事業後/
事業前
(倍)
事業費
(百万円)
事業費/
延床面積
(千円/ ㎡)
補助金
(百万円)
2,652
○
24,537
722
418
建
物
の
老
朽
化
公
共
施
設
の
不
足
○
8,968
○
○
○
勝どき六丁目
4.3
2005.1
2008.1
(612) (383,345)
(626.4)
80,655
210
7,765
港区
白金一丁目東
2.6
組合
2002.12
2005.1
18,421
136,252
7.4
48,845
358
2,268 ○
13
東京
江東区
白河・三好
2.0
組合
2003.2
2006.6
12,379
77,988
6.3
26,554
340
6,421
14
東京
品川区
東品川四丁目第一・第
二
9.6
個人
2000.2
2004.9
57,050
505,160
8.9
120,329
238
○
15
東京
品川区
大崎駅東口第3
2.5
組合
2004.5
2007.2
17,013
148,509
8.7
62,275
419
11,371 ○
16
東京
世田谷区
芦花公園駅南口
2.0
機構
2004.6
2007.12
9,623
32,181
3.3
12,340
383
1,528 ○
17
東京
豊島区
東池袋四丁目
1.6
組合
2003.1
2007.1
12,269
98,673
8.0
45,116
457
8,437
18
神奈川
横浜
ヨコハマポートサイドF-1
街区
2.0
組合
1999.9
2003.9
6,802
116,474
17.1
35,295
303
7,092
19
神奈川
横浜
新杉田駅前
1.9
組合
2000.1
2004.9
11,238
44,383
3.9
21,293
480
5,284 ○
○
20
石川
七尾
七尾駅前第二
2.1
組合
2005.6
2006.6
13,662
14,100
1.0
7,258
515
1,492 ○
○
21
静岡
沼津
大手町
1.9
公共団体
2005.7
2007.12
7,022
46,573
6.6
12,807
275
4,479 ○
22
愛知
名古屋
牛島南
2.1
組合
2001.6
2007.1
5,100
143,387
28.1
46,834
327
5,499 ○
23
愛知
名古屋
鳴海駅前(D街区)
3.2
公共団体
2003.12
2006.2
21,321
68,500
3.2
24
愛知
名古屋
有松駅前
3.2
公共団体
1998.1
2006.1
12,784
69,115
5.4
25
愛知
春日井
勝川
1.6
組合
2005.11
2007.1
5,865
39,780
6.8
7,997
201
1,977 ○
○
26
愛知
豊田
豊田市駅前通り南
1.6
組合
2004.12
2008.5
12,240
61,213
5.0
18,105
296
4,809 ○
○
27
愛知
田原
田原中央
1.6
公共団体
2003.3
2004.7
4,714
13,246
2.8
7,235
546
1,594
28
京都
長岡京
長岡京駅西口
3.0
組合
2003.6
2006.4
11,765
63,302
5.4
20,524
324
4,450 ○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
(株)マルエツ
○
街路, 下水道, 広場
民間分譲住宅
川口駅南地下公共駐
車場
○
街路, 下水道, 広場公
園
UR賃貸住宅
ココネ上福岡ショッピン
市サービスセンター
グプラザ
○
○
○
○
◎ 文部科学省庁舎
○
○
○
○ 高齢者トレーニングルーム
○
◎
○
◎
○
○
◎
○
○
○
○
◎
UR賃貸住宅
街路
街路, 広場
○ 街路, 公園
UR賃貸住宅
権利者住宅
貸事務所
核テナントの確保及び大手資本による投資スキームの構
築
SPCスキームの採用による景観の大幅見直し(不動産証
券化)
1
1
3
1
4 ○
○
○
当初の核テナント撤退に伴う公共施設の導入、新たな核テ
ナントの決定及び特定建設者の事業参画
○
2
1
1
1
権利者住宅
分譲住宅
UR賃貸住宅
1
1
分譲住宅
権利者住宅
貸事務所
2
1
○
街路, 街区公園
UR賃貸住宅
首都圏不燃建築公社
賃貸住宅
分譲住宅
3
○
街路, 交通広場, 公園
イオン品川シーサイド
ショッピングセンター
貸事務所
ホテルサンルート品川
シーサイド
2
4 ○
○
○
3
○
○
1
1
1
2
1
7
○
○
○
10
○
○
○
◎
○
◎
○
○
○
街路
民間分譲住宅
○
◎
○
◎
○
○
○
街路, 広場
磯子区民文化センター スズキヤ
○
○
○
◎
○
○
○
○
街路, 下水道
ホテル アリビィオ
○
○
○
◎
○
◎
○ 街路, 下水道
静鉄ストア
民間分譲住宅
○
○
○
○ 街路, 広場
変電所
貸事務所
○
○
○
○
◎
○
○
○
7,113
36,152
5.1
10,223
283
1,344 ○
2005.6
7,837
19,321
2.5
9,754
505
3,018 ○
○
若江岩田駅前
1.7
組合
1998.3
2002.2
(62,300)
−
23,120
371
6,706 ○
○
三田
三田駅前Aブロック
1.5
公共団体
2004.3
2005.8
30,708
3.5
19,355
630
10,581 ○
○
○
○
奈良
王寺
王寺駅前久度地区中央
街区
2.5
組合
2001.6
2004.3
23,300
82,760
3.6
30,403
367
7,160 ○
○
○
岡山
岡山
岡山市駅元町
2.4
公共団体
1998.6
2005.6
14,307
86,494
6.0
46,058
532
12,631 ○
○
○
広島
広島
緑井駅周辺
3.7
組合
2000.12
2004.9
11,535
109,262
9.5
20,091
184
5,582 ○
徳島
小松島
井利ノ口
4.1
個人
2003.7
2006.2
12,960
39,087
3.0
14,142
362
2,998
39
福岡
北九州
室町一丁目
3.6
組合
2000.7
2005.7
62,216
178,118
2.9
50,969
286
12,034
40
福岡
北九州
八幡駅前
2.7
組合
2001.1
2005.2
19,081
72,932
3.8
14,694
201
41
鹿児島
鹿屋
北田大手町
1.7
機構
2005.9
2007.3
11,578
15,953
1.4
10,149
636
42
沖縄
嘉手納
新町・ロータリー
3.7
公共団体
2004.12
2008.5
26,246
36,683
1.4
20,179
550
678,963
3,464,798
5.1
1,142,140
336
○
◎
◎
○
◎
○
○
○
○
◎
○
◎
◎
○
○
○
○
○
○
◎
○
○
◎
○
○
◎
○
○
○
市民交流ロビー,ギャラ
リー,子育支援施設等
○
堺市立東文化会館文化ホー
ル
○
○ 児童館
○
◎
○
◎
◎
○
◎
○
○
◎
◎
○
◎
◎
○
◎
◎
○
◎
○
◎
○
◎
○
○
◎
◎
◎
○
36
31
○
○
25
5
3
1
4
○
○
○
○
○
1
17
◎
○
◎
○
○
○
◎
◎
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
◎
○
○
○
○
5
◎
○
◎
○
23
29
27
○
○
○
1
1
− 241 −
2
○
街路, 都市緑地, 下水
道
生鮮館やまひこ
民間分譲住宅
1
◎
街路, 下水道
コモ・パーキング
ホテルトヨタキャッスル 民間分譲住宅
1
1
○
街路, 広場
セントファーレ駐車場
フードオアシスあつみ
1
1
○
街路, 広場公園
総合交流センター
フレンドマート平和堂
○
街路
堺市立東文化会館文
化ホール
デベロッパー分譲住宅
○
街路
高槻駅北地下駐車場・
民間住宅
自転車駐車場
公庫分譲住宅
健康支援センター・市
民ホール
行政サービスセンター,福祉事務所,
○ 保健センター,保健所,男女共
同参画センター
○
街路
近商ストア
公社住宅
○ まちづくり協働センター
○
街路, 下水道
三田駅前第一駐車場
三田市まちづくり協働
センター
阪急百貨店
○ ホール,保健センター 他
◎
王寺町地域交流セン
ター
王寺駅北駐車場
○ 博物館,コンベンション施設
○
○ 地区集会所
○
街路, 下水道, 駐輪場,
(株)西友王寺店
歩行者専用道路
◎ 病院
劇場,市立美術館分館,展
示施設
街路, 駅前広場, ペデ
ストリアンデッキ
(株)フジ
民間住宅
街路
徳島赤十字病院
北九州芸術劇場:
劇場,ホール
西日本工業大学
街路
北九州市立理容美容
学校
レッドキャベツ
公社住宅
街路, 街区公園
鹿屋市市民交流セン
ター
マックスバリュ
○
○
○
○ 市立理容美容専門学校
○
○
◎ 市民交流センター
○
○
○
◎ 教育・福祉施設
○
33
42
28
23
39
街路, 広場, 下水道, 駐
ロータリープラザ
車場, 緑地
5
(株)サンエー
1
1
○
2
○
3
○
4 ○
○
2
1
2 ○
1
1 ○
2
1
2 ○
○
1
○
○
○
2
1
3
○
3
○
1 ○
○
30
47
29
○
○
分有・分離型の施設建築物形態の採用による共有化を望
まない権利者との合意及びUR賃貸住宅の導入
業務棟入居辞退に伴い行政による保留省の購入(図書館・
ホール)及び行政・組合の協力な連携
「アート&デザイン」のコンセプトに拘った条
強力な参加組合員の加盟
件が厳しく1階店舗は2年間空き家
○
○
地域のランドマークとなる施設となり、知名
度向上
組合から事務局業務を横浜市住宅供給公社が受託・実施
○
ホテルは需要を下回る宿泊特化型とし、周
辺の飲食施設等との連携を考慮
地元の手づくりによる街なか再生
○
○
○
○
ルーセントタワーは名古屋でも最大級の貸
床面積を有するオフィスビル
変電所施設の更新時期を迎え開発機運が高まったことが
契機
第二種市街地再開発事業に変更し、権利者の要望に柔軟
に対応できたこと
○
○
○
名鉄名古屋本線の連続立体交差事業との
連携事業
○
○
イオンと地元の協働による祭り開催等による 撤退した商業デベロッパーの代わりとなる核テナントの入
まちづくり
居
○
権利者の熱意、早期の参加組合員確定と負担金納付及び
行政の人的支援・補助制度
○
○
○
○
○
○
国・県の理解及びTMO(中小企業商業高度化事業構想の
承認団体)の参画
○
当初の核テナント撤退による計画のコンパクト化、新たな
核テナント・公共公益施設の導入他
○
○
○
○
7
○
○
○
28
当初の核テナント撤退後に新たな核テナントが確保された
こと及び市の床取得
○
17
5
事業関係者・府・市をはじめとする事業推進者の全面的な
協力
当初の核テナント・住宅デべの撤退後に新たな核テナント・
住宅デべが確保されたこと
岡山駅東西連絡通路完成とも相まって交流
市による施行(2工区に分割して施工)
人口が増加
旧核テナントに売却済の土地を早期に買い戻せたこと及び
市出資等による対外的信用力の確保
周辺への看護系教育施設の進出など「医療 県・市の事業への熱意と強力な指導及び小規模権利者の
と福祉を核とする街づくり」を推進
理解・協力
○
○
○
17
○
○
○
○
核テナントとの出店合意と展開面積の調整を工事着手前
に終えたこと
近鉄奈良線連立事業の遅れ等により、想定
の動線が確保できていないとともに、商業施
設の営業にも影響
今後隣接するB・Cブロックも整備され、地域
拠点としての機能発揮を想定
○ 地域の商業拠点
○
病院
商業施設の専門店は開業2年(2009年)で
空店舗あり(2014年現在で2店舗)
○ 地域の玄関口としてのイメージアップ
○
○
市による保留床の購入(文化施設・駐車場)、組合・事務
局・コンサルの協力、新たな住宅デべの参加他
当初の核テナント撤退に伴う違約金支払いによる事業再構
築
○
2度の核テナント撤退に伴う「身の丈再開発 組合役員・権利者の協力及び計画変更(住宅棟の導入と
○
(保留床の最小化)」
低層・低容積の商業施設)
○
○
地元企業の事業支援
○
事業実施による地区イメージの大きな変化
(近代的で安全)
○
放送局
国機関
26
権利者の理解と協力及び関係者の熱意と努力
○
○
12 ○
40 146 13
緑地整備及び施設低層階の積極的な緑化 特定業務代行者制度と参加組合員制度の併用及び代表
により自然環境を再生
者のリーダーシップ
○
2
3
○
○
○
○
3
1
オフィス、住宅、ショッピングセンター等の多 土地所有者の負担金供出による新駅整備及び各テナント
彩な機能が集約
撤退に伴う権利者自身による増床取得
○
○
1
3
○
○
2
5
同潤会アパートは築70年を超え、近隣住民も基本的に反
対者なし
○
○
○
1
3
新たな居住者、特に子供の増加により街に
活気(旧同潤会アパート)
○
3
1 ○
1
沖縄防衛局
4
1
1
デコシティ
○ 街路
○
4
岡山市デジタルミュー
NHK岡山放送局
ジアム
○
○
1
○
工場街区がまとまったこと
○
○
○
3
事業者・施工者・コンサルタント等の連携
○
○
2 ○
2
1
岡山全日空ホテル
○ 街路, 下水道
3
2
1
5
地域住民のネットワーク、UR都市機構の協力及び組合・
UR・行政の強力な連携
町工場がある下町から、近代的な住宅、オ
フィス、店舗、工場の街に変貌
○
1
1
2
スーパーサンプラザ
◎
◎
2
◎
1
イオン有松ショッピング
センター
4
緑道や公開空地の整備による町内活動等
の地域コミュニティ形成促進
○
○
1
民間分譲住宅
(株)松源
◎
○
街路, 自転車駐車場,
歩行者連絡橋
街路, 駐輪場
○
○
1 ○
転出者の代替地を隣接地に確保できたこと
PFI事業による事業実施
○
○
3 ○
街路, 自転車駐車場,
自転車歩行者連絡橋
アル・プラザ高槻
5
1
1
2
○
2
○
街路
健康支援センター・市民ホール,
乳幼児健診センター他
2
○
○
○
○
駐車場
○
2 ○
1
○
◎
○
◎
○
◎
○
◎
◎
○
○
○
○
学習・文化・交流施設,高齢
者福祉施設
◎
○
○
○
○
○
○
◎
○
○
○
○
○
3
○
○
○
○
○
○
3
○
2
○
1
○
5
マルエツプチ
○
権利者の強い意欲
2
あうるすぽっと(劇場)
1
○
1
街路, 広場, 地下広場,
中央図書館
地下通路
公社分譲住宅
○
1
○
1
○
2
○
市役所健康福祉部,図書
館,子育支援施設等
既存商店街への駐車場サービスの提供によ 管理3セクによる床の一部及びシネマコンプレックスの取
る周辺商店街の利便性向上
得
○
○
○
管理者の再開発事業以外への参画
○
○
◎
○ 区民文化センター,保育所
初動期からの住宅デベロッパーの参画
○ 商業施設は、周辺を考慮した業種を誘致
○
○
◎
○
○
◎
○
○
○
○
○
○
○
○
○
◎
○
○
成功のポイント
備 考
3
○
あうるすぽっと(劇場),図書
館
地
域
の
活
性
化
2
3
○
安 の憩 周
全 創い 辺
な 出の 開
都
場 発
市
・ の
空
に 誘
間
ぎ 導
の
わ
形
い
成
空
間
1
13
○
居
住
人
口
の
増
加
2
中央合同庁舎第7号館
(文部科学省)
○
○
1
業
務
機
能
の
強
化
2
1
2005.5
20
民間分譲住宅
○
2
2003.1
4
街路, 下水道
3
1
2002.1
1
○
市営駐車場
1
6
組合
2
武蔵浦和ショッピング
スクエア
○
1
公共団体
2
民間分譲住宅
5
5
1.5
3
京成百貨店
街路, 下水道
商
業
活
動
の
活
発
化
9
公庫分譲住宅
2.2
26
街路
○
2
市
民
生
活
の
利
便
性
の
向
上
1
サミットストア
三日市町駅前西
2
○
1
UR賃貸住宅
泉佐野駅上東
○
シネマ・リオーネ古川
2
UR賃貸住宅
○
○
街路, 下水道
1
3
貸事務所
○
○
○
○
6
TSUTAYA
民間賃貸住宅
◎
○
市役所出張所,子育支援施
設
公庫分譲住宅駐車場
分譲住宅
街路, 広場
◎
○
○ 市役所出張所,図書館
街路, 緑地, 下水道
街路, 下水道
街路, 緑地
○
○
○
○
○
計
○
○
○
◎
(3)
○
◎
○
○
○
(2)
◎
○
○
(1)
○
○
○
○
◎
◎
◎
◎
5,464 ○
10,099 ○
○
◎
○
○
339
342
5
○
◎
◎
23,397
1
○
○
42,689
2
◎
◎
PFI事業
◎
○
◎
○
○
4.1
7
○
◎
◎
○
7.2
5
○
○
69,111
28
○
○
124,840
左記には事例
23は含まない
◎
○ 老人ホーム,保育園
○
◎
○
○
17,053
109.0
◎
○
17,413
42
○
○
その他の公共施設等
の整備
○
○
2007.3
(件)
○
○
そ
の
他
事業の効果
住
宅
を
含
ま
な
い
単
独
棟
○
○
2004.2
計
○
○
◎
駐
車
場
住
宅
を
含
ま
な
い
複
合
棟
○
○
○
◎
◎
○
公
共
施
設
ホ
テ
ル
住
宅
を
含
む
複
合
棟
◎
○
15,513
◎
◎
◎
事
務
所
建築物棟数
住
宅
単
独
棟
○
○
4,800 ○
○
○
◎
○
店
舗
主な床利用者
備 考
◎
○
住
宅
○
◎
◎
利用形態 (◎:最大用途)
病
院
の
整
備
◎
○
2004,5
拠
点
機
能
の
強
化
◎
○
○
都
市
景
観
の
向
上
○
○
○
○
防
災
機
能
の
強
化
○
○
○
○
住
宅
の
供
給
○
○
2001.12
38
○
○
○
14,392 ○
○
居
住
環
境
の
改
善
○
○
○
組合
37
◎
○
○
○
組合
36
◎
○
○
○
○
1.7
35
○
○
2.9
8,767
○
○
JR高槻駅北
兵庫
○
○
北野田駅前B
34
◎
○
堺
(不明)
○
○
高槻
東大阪
○
○
○
業
務
機
能
の
集
積
○
○
○
商
業
の
活
性
化
○
大阪
大阪
○
○
大阪
33
公
共
施
設
の
整
備
◎
○
○
他
の
公
共
事
業
の
施
行
○
○
○
29
泉佐野
地
区
住
民
の
高
齢
化
○
○
30
河内長野
低
未
利
用
地
の
活
用
○
○
中央区
大阪
事業の目的 (◎:主要な目的)
文
化
交
流
の
場
の
創
出
○
○
東京
大阪
都
市
機
能
の
更
新
○
○
東京
32
火
災
等
の
罹
災
○
○
12
31
商
業
活
動
の
沈
滞
○
○
延床面積はA∼Dの計
Dのみ完成のため事業費未記載
中
央
官
庁
街
○
11
422
商
工
混
在
地
○
再開発
会社
29,186
理 由
住
商
工
混
在
地
○
処分床34,007 ㎡のみ
41,158
住
工
混
在
地
地区への大学開校に伴う学生と地域の交流 官民協同による事業推進及び複合施設運営のノウハウを
持つ商業デベロッパーの参画
(イベント・街づくり活動への参加)
地元と行政の連携した街づくりの推進(地域
企業参加のまちづくり団体結成)
市住宅供給公社による保留床の取得
○
河川緑道整備等と併せ地区への来街者が
増え交流人口が増加
○
複数の旧商店街組織が統合した組織による
沖縄防衛局の入居決定
商業活性化に向けた取組み
29
身の丈再開発としたこと、市による保留床の取得及び周辺
での公共事業の施行
− 242 −
岡山
広島
徳島
福岡
福岡
鹿児島
沖縄
36
37
38
39
40
41
42
計
奈良
大阪
31
35
大阪
30
兵庫
大阪
29
34
京都
28
大阪
愛知
27
大阪
愛知
26
33
愛知
25
32
愛知
東京
16
24
東京
15
愛知
東京
14
23
東京
13
愛知
東京
12
22
東京
11
静岡
東京
10
21
東京
9
石川
埼玉
8
20
埼玉
7
神奈川
埼玉
6
19
埼玉
5
神奈川
茨城
4
18
宮城
3
東京
北海道
2
(件)
嘉手納
鹿屋
北九州
北九州
小松島
広島
岡山
王寺
三田
東大阪
河内長野
泉佐野
高槻
堺
長岡京
田原
豊田
春日井
名古屋
名古屋
名古屋
沼津
七尾
横浜
横浜
豊島区
世田谷区
品川区
品川区
江東区
港区
中央区
中央区
千代田区
ふじみ野
川口
さいたま
さいたま
水戸
大崎
札幌
札幌
42
新町・ロータリー
北田大手町
八幡駅前
室町一丁目
井利ノ口
緑井駅周辺
109.0
3.7
1.7
2.7
3.6
4.1
3.7
2.4
2.5
王寺駅前久度地区中
央街区
岡山市駅元町
1.5
1.7
1.5
2.2
2.9
1.7
3.0
1.6
1.6
1.6
3.2
3.2
2.1
1.9
2.1
三田駅前Aブロック
若江岩田駅前
三日市町駅前西
泉佐野駅上東
JR高槻駅北
北野田駅前B
長岡京駅西口
田原中央
豊田市駅前通り南
勝川
有松駅前
鳴海駅前(D街区)
牛島南
大手町
七尾駅前第二
1.9
2.0
ヨコハマポートサイドF1街区
新杉田駅前
1.6
2.0
東池袋四丁目
芦花公園駅南口
2.5
9.6
東品川四丁目第一・第
二
大崎駅東口第3
2.0
2.6
白河・三好
白金一丁目東
4.3
1.8
日本橋浜町三丁目西
部
勝どき六丁目
3.1
2.6
2.3
2.0
2.6
1.7
1.8
2.8
3.7
公共団体
機構
組合
組合
個人
組合
公共団体
組合
公共団体
組合
公共団体
組合
組合
組合
組合
公共団体
組合
組合
公共団体
公共団体
組合
公共団体
組合
組合
組合
組合
機構
組合
個人
組合
2004.12
2005.9
2001.1
2000.7
2003.7
2000.12
1998.6
2001.6
2004.3
1998.3
2003.1
2002.1
2001.12
2004,5
2003.6
2003.3
2004.12
2005.11
1998.1
2003.12
2001.6
2005.7
2005.6
2000.1
1999.9
2003.1
2004.6
2004.5
2000.2
2003.2
2002.12
2005.1
再開発
会社
組合
2002.8
2005.1
2003.1
2003.7
2006.4
2003.12
2004.4
2004.2
2005.3
2004.2
組合
個人
機構
組合
組合
組合
組合
個人
個人
組合
2008.5
2007.3
2005.2
2005.7
2006.2
2004.9
2005.6
2004.3
2005.8
2002.2
2005.6
2005.5
2004.2
2007.3
2006.4
2004.7
2008.5
2007.1
2006.1
2006.2
2007.1
2007.12
2006.6
2004.9
2003.9
2007.1
2007.12
2007.2
2004.9
2006.6
2005.1
2008.1
2005.9
2007.9
2006.7
2005.3
2008.1
2006.6
2006.2
2006.3
2006.3
2006.7
地区面積
工事着手 工事完了
事業主体
(ha)
年月
公告年月
霞が関三丁目南
上福岡駅西口駅前
川口1丁目1番
武蔵浦和駅第4街区
武蔵浦和駅第8-1街区
泉町1丁目南
台町
琴似4・1,2
東札幌1条
地区名
36,683
15,953
72,932
178,118
39,087
109,262
86,494
82,760
30,708
(62,300)
19,321
36,152
124,840
69,111
63,302
13,246
61,213
39,780
69,115
68,500
143,387
46,573
14,100
44,383
116,474
98,673
32,181
148,509
505,160
77,988
136,252
(383,345)
98,440
251,033
42,267
100,903
76,336
90,300
78,205
14,844
60,369
71,844
事業後
(㎡)
678,963 3,464,798
26,246
11,578
19,081
62,216
12,960
11,535
14,307
23,300
8,767
(不明)
7,837
7,113
17,413
17,053
11,765
4,714
12,240
5,865
12,784
21,321
5,100
7,022
13,662
11,238
6,802
12,269
9,623
17,013
57,050
12,379
18,421
(612)
17,239
72,399
12,955
8,324
6,137
11,260
54,192
4,370
2,037
11,376
事業前
(㎡)
事業概要
延床面積
384
332
297
283
231
210
117
172
(千円/ ㎡)
事業費/
延床面積
327
275
515
480
303
457
383
419
238
340
358
210
418
722
延床面積はA∼Dの計
46,834
12,807
7,258
21,293
35,295
45,116
12,340
62,275
120,329
26,554
48,845
80,655
41,158
24,537
処分床34,007 ㎡のみ
16,241
33,523
22,651
25,545
18,051
3,115
7,066
12,382
事業費
(百万円)
5,499
4,479
1,492
5,284
7,092
8,437
1,528
11,371
6,421
2,268
7,765
8,968
2,899
7,446
4,502
5,208
4,604
1,597
2,652
補助金
(百万円)
20,179
10,149
14,694
50,969
14,142
20,091
46,058
30,403
19,355
23,120
9,754
10,223
42,689
23,397
20,524
7,235
18,105
7,997
29,186
5.1 1,142,140
1.4
1.4
3.8
2.9
3.0
9.5
6.0
3.6
3.5
−
2.5
5.1
7.2
4.1
5.4
2.8
5.0
6.8
5.4
336
550
636
201
286
362
184
532
367
630
371
505
283
342
339
324
546
296
201
422
左記には事
例23は含ま
ない
15,513
4,800
12,034
2,998
5,582
12,631
7,160
10,581
6,706
3,018
1,344
10,099
5,464
4,450
1,594
4,809
1,977
14,392
3.2 Dのみ完成のため事業費未記載
28.1
6.6
1.0
3.9
17.1
8.0
3.3
8.7
8.9
6.3
7.4
(626.4)
5.7
3.5
3.3
12.1
12.4
8.0
1.4
3.4
29.6
6.3
事業後/
事業前
(倍)
事業費
総括表
17
北海道
1
事
例
番
号
参考文献①を
基に、国内の
市街地再開
発事例を中心
に、地区面積
が1.5ha以上
都道府県名
の整備を含む
事例全42件を
抽出し、参考
文献②も参考
としつつ整理
した。
事業スケジュール
リニューアル事例
(拡大版:その1)
− 243 −
愛知
愛知
愛知
京都
大阪
大阪
大阪
大阪
大阪
兵庫
奈良
岡山
広島
徳島
福岡
福岡
鹿児島
沖縄
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
計
愛知
東京
16
24
東京
15
愛知
東京
14
23
東京
13
愛知
東京
12
22
東京
11
静岡
東京
10
21
東京
9
石川
埼玉
8
20
埼玉
7
神奈川
埼玉
6
19
埼玉
5
神奈川
茨城
4
18
宮城
3
東京
北海道
2
17
北海道
(件)
嘉手納
鹿屋
北九州
北九州
小松島
広島
岡山
王寺
三田
東大阪
河内長野
泉佐野
高槻
堺
長岡京
田原
豊田
春日井
名古屋
名古屋
名古屋
沼津
七尾
横浜
横浜
豊島区
世田谷区
品川区
品川区
江東区
港区
中央区
中央区
千代田区
ふじみ野
川口
さいたま
さいたま
水戸
大崎
札幌
札幌
42
新町・ロータリー
北田大手町
八幡駅前
室町一丁目
井利ノ口
緑井駅周辺
28
○
○
○
○
王寺駅前久度地区中
央街区
岡山市駅元町
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
三田駅前Aブロック
若江岩田駅前
三日市町駅前西
泉佐野駅上東
JR高槻駅北
北野田駅前B
長岡京駅西口
田原中央
豊田市駅前通り南
勝川
有松駅前
鳴海駅前(D街区)
牛島南
大手町
七尾駅前第二
新杉田駅前
ヨコハマポートサイドF1街区
東池袋四丁目
芦花公園駅南口
大崎駅東口第3
東品川四丁目第一・第
二
白河・三好
白金一丁目東
5
○
○
○
○
日本橋浜町三丁目西
部
勝どき六丁目
○
○
○
○
○
○
都
心
・
副
都
心
地
区
7
○
○
○
○
○
○
○
中
心
市
街
地
地区の立地
霞が関三丁目南
上福岡駅西口駅前
川口1丁目1番
武蔵浦和駅第4街区
武蔵浦和駅第8-1街区
泉町1丁目南
台町
琴似4・1,2
東札幌1条
地区名
駅
前
地
区
2
○
○
周
辺
地
区
1
○
住
宅
地
5
○
○
○
○
○
商
業
集
積
地
2
○
○
業
務
地
26
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
住
商
混
在
地
3
○
○
○
住
工
混
在
地
地区の性格
2
○
○
住
商
工
混
在
地
2
○
○
商
工
混
在
地
1
○
中
央
官
庁
街
4
○
○
○
○
建
物
の
老
朽
化
25
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
商
業
活
動
の
沈
滞
20
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
公
共
施
設
の
不
足
5
○
○
○
○
○
火
災
等
の
罹
災
3
○
○
○
都
市
機
能
の
更
新
理 由
1
○
文
化
交
流
の
場
の
創
出
4
○
○
○
○
低
未
利
用
地
の
活
用
1
○
地
区
住
民
の
高
齢
化
17
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
他
の
公
共
事
業
の
施
行
36
◎
◎
◎
◎
○
◎
◎
◎
◎
◎
○
○
◎
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
◎
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
公
共
施
設
の
整
備
31
○
◎
○
◎
◎
◎
◎
◎
○
◎
◎
◎
○
◎
◎
◎
○
◎
○
○
◎
◎
◎
○
○
◎
○
◎
◎
◎
◎
商
業
の
活
性
化
5
○
◎
◎
○
◎
業
務
機
能
の
集
積
23
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
居
住
環
境
の
改
善
29
◎
◎
◎
○
◎
○
◎
◎
○
○
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
◎
○
◎
◎
住
宅
の
供
給
27
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
防
災
機
能
の
強
化
2
○
○
都
市
景
観
の
向
上
1
◎
拠
点
機
能
の
強
化
1
◎
病
院
の
整
備
事業の目的 (◎:主要な目的)
PFI事業
備 考
総括表
1
事
例
番
号
参考文献①を
基に、国内の
市街地再開
発事例を中心
に、地区面積
が1.5ha以上
都道府県名
の整備を含む
事例全42件を
抽出し、参考
文献②も参考
としつつ整理
した。
リニューアル事例
(拡大版:その2)
北海道
宮城
茨城
埼玉
埼玉
埼玉
埼玉
東京
東京
東京
東京
東京
東京
東京
東京
東京
神奈川
神奈川
石川
静岡
愛知
愛知
愛知
愛知
愛知
愛知
京都
大阪
大阪
大阪
大阪
大阪
兵庫
奈良
岡山
広島
徳島
福岡
福岡
鹿児島
沖縄
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
− 244 −
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
(件)
嘉手納
鹿屋
北九州
北九州
小松島
広島
岡山
王寺
三田
東大阪
河内長野
泉佐野
高槻
堺
長岡京
田原
豊田
春日井
名古屋
名古屋
名古屋
沼津
七尾
横浜
横浜
豊島区
世田谷区
品川区
品川区
江東区
港区
中央区
中央区
千代田区
ふじみ野
川口
さいたま
さいたま
水戸
大崎
札幌
札幌
42
新町・ロータリー
北田大手町
八幡駅前
室町一丁目
井利ノ口
緑井駅周辺
岡山市駅元町
33
○
◎
○
○
42
○
○
○
◎
○
◎
○
○
○
王寺駅前久度地区中
央街区
○
◎
◎
○
○
○
◎
○
○
◎
○
○
○
28
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
◎
○
○
◎
◎
○
◎
◎
◎
○
○
◎
○
◎
○
○
○
○
○
◎
◎
○
○
○
○
○
○
○
事
務
所
○
○
○
○
○
○
○
○
○
三田駅前Aブロック
若江岩田駅前
三日市町駅前西
泉佐野駅上東
JR高槻駅北
北野田駅前B
長岡京駅西口
田原中央
豊田市駅前通り南
勝川
有松駅前
鳴海駅前(D街区)
牛島南
大手町
七尾駅前第二
◎
◎
ヨコハマポートサイドF1街区
新杉田駅前
◎
◎
東池袋四丁目
芦花公園駅南口
○
○
東品川四丁目第一・第
二
大崎駅東口第3
◎
◎
◎
白河・三好
白金一丁目東
勝どき六丁目
○
◎
日本橋浜町三丁目西
部
○
○
○
○
◎
◎
○
○
○
◎
◎
◎
◎
○
◎
◎
店
舗
霞が関三丁目南
上福岡駅西口駅前
川口1丁目1番
武蔵浦和駅第4街区
武蔵浦和駅第8-1街区
泉町1丁目南
台町
琴似4・1,2
東札幌1条
地区名
住
宅
4
◎
○
◎
○
ホ
テ
ル
市役所出張所,子育支援
施設
あうるすぽっと(劇場),図
書館
劇場,市立美術館分館,展
示施設
23
◎ 教育・福祉施設
◎ 市民交流センター
○ 市立理容美容専門学校
○
◎ 病院
○ 地区集会所
○ 博物館,コンベンション施設
○ ホール,保健センター 他
○ まちづくり協働センター
39
○
○
○
○
○
◎
○
健康支援センター・市民ホール,
○
乳幼児健診センター他
行政サービスセンター,福祉事務
○
○ 所,保健センター,保健所,男
女共同参画センター
○
○
○
○
○ 児童館
○
○
◎
○
○
○
○
◎
○
堺市立東文化会館文化
○
ホール
学習・文化・交流施設,高
齢者福祉施設
市役所健康福祉部,図書
館,子育支援施設等
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
駐
車
場
市民交流ロビー,ギャラ
リー,子育支援施設等
○
○
○
○ 区民文化センター,保育所
○
○ 高齢者トレーニングルーム
◎ 文部科学省庁舎
○
○ 市役所出張所,図書館
○ 老人ホーム,保育園
公
共
施
設
街路, 広場
街路
街路, 下水道
街路, 広場
街路
街路, 広場, 地下広
場, 地下通路
街路, 広場
街路, 緑地
街路, 交通広場, 公園
街路, 街区公園
変電所
静鉄ストア
ホテル アリビィオ
磯子区民文化セン
ター
民間分譲住宅
中央図書館
民間賃貸住宅
貸事務所
岡山全日空ホテル
(株)西友王寺店
ホテルトヨタキャッス
ル
民間分譲住宅
貸事務所
民間分譲住宅
スズキヤ
フレンドマート平和堂
北九州芸術劇場:
劇場,ホール
民間住宅
ロータリープラザ
街路, 広場, 下水道,
駐車場, 緑地
(株)サンエー
鹿屋市市民交流セン
マックスバリュ
ター
沖縄防衛局
公社住宅
西日本工業大学
岡山市デジタルミュー
NHK岡山放送局
ジアム
王寺町地域交流セン
王寺駅北駐車場
ター
北九州市立理容美容
レッドキャベツ
学校
デコシティ
徳島赤十字病院
アル・プラザ高槻
民間分譲住宅
駐車場
公社分譲住宅
三田市まちづくり協働
阪急百貨店
センター
公社住宅
健康支援センター・市
民ホール
公庫分譲住宅
民間住宅
街路, 街区公園
街路
○ 街路
街路
街路, 駅前広場, ペデ
(株)フジ
ストリアンデッキ
○ 街路, 下水道
街路, 下水道, 駐輪
場, 歩行者専用道路
三田駅前第一駐車場
近商ストア
街路
街路, 下水道
スーパーサンプラザ
(株)松源
高槻駅北地下駐車
場・自転車駐車場
サミットストア
公庫分譲住宅
ホテルサンルート品
川シーサイド
あうるすぽっと(劇場) マルエツプチ
UR賃貸住宅
UR賃貸住宅
堺市立東文化会館文 デベロッパー分譲住
化ホール
宅
総合交流センター
貸事務所
UR賃貸住宅
貸事務所
首都圏不燃建築公社
分譲住宅
賃貸住宅
権利者住宅
分譲住宅
権利者住宅
ココネ上福岡ショッピ
市サービスセンター
ングプラザ
川口駅南地下公共駐
UR賃貸住宅
車場
(株)マルエツ
セントファーレ駐車場 フードオアシスあつみ
コモ・パーキング
街路, 駐輪場
街路
街路
街路
街路, 広場公園
街路, 広場
街路, 下水道
街路, 都市緑地, 下水
生鮮館やまひこ
道
街路, 自転車駐車場, イオン有松ショッピン
歩行者連絡橋
グセンター
(3)
武蔵浦和ショッピング
市営駐車場
スクエア
TSUTAYA
(2)
イオン品川シーサイド
貸事務所
ショッピングセンター
UR賃貸住宅
分譲住宅
権利者住宅
UR賃貸住宅
中央合同庁舎第7号
館 (文部科学省)
街路, 自転車駐車場,
民間分譲住宅
自転車歩行者連絡橋
○ 街路, 広場
○ 街路, 下水道
5
民間分譲住宅
民間分譲住宅
民間分譲住宅
京成百貨店
シネマ・リオーネ古川
分譲住宅
公庫分譲住宅駐車場
(1)
街路, 下水道, 広場公
UR賃貸住宅
園
街路, 下水道, 広場
街路, 下水道
街路, 下水道
街路
街路, 下水道
街路, 下水道
街路, 緑地, 下水道
その他の公共施設等
の整備
○ 街路, 公園
そ
の
他
主な床利用者
総括表
計
北海道
1
事
例
番
号
参考文献①を
基に、国内の
市街地再開
発事例を中心
に、地区面積
が1.5ha以上
都道府県名
の整備を含む
事例全42件を
抽出し、参考
文献②も参考
としつつ整理
した。
利用形態 (◎:最大用途)
リニューアル事例
(拡大版:その3)
北海道
北海道
宮城
茨城
埼玉
埼玉
埼玉
埼玉
東京
東京
東京
東京
東京
東京
東京
東京
東京
神奈川
神奈川
石川
静岡
愛知
愛知
愛知
愛知
愛知
愛知
京都
大阪
大阪
大阪
大阪
大阪
兵庫
奈良
岡山
広島
徳島
福岡
福岡
鹿児島
沖縄
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
− 245 −
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
(件)
嘉手納
鹿屋
北九州
北九州
小松島
広島
岡山
王寺
三田
東大阪
河内長野
泉佐野
高槻
堺
長岡京
田原
豊田
春日井
名古屋
名古屋
名古屋
沼津
七尾
横浜
横浜
豊島区
世田谷区
品川区
品川区
江東区
港区
中央区
中央区
千代田区
ふじみ野
川口
さいたま
さいたま
水戸
大崎
札幌
札幌
都市名
42
新町・ロータリー
北田大手町
八幡駅前
室町一丁目
井利ノ口
緑井駅周辺
岡山市駅元町
王寺駅前久度地区中央
街区
三田駅前Aブロック
若江岩田駅前
三日市町駅前西
泉佐野駅上東
JR高槻駅北
北野田駅前B
長岡京駅西口
田原中央
豊田市駅前通り南
勝川
有松駅前
鳴海駅前(D街区)
牛島南
大手町
七尾駅前第二
新杉田駅前
30
5
1
2
47
3
3
1
2
1
2
2
1
1
1
2
1
1
1
3
ヨコハマポートサイドF-1
街区
6
1
1
5
1
東池袋四丁目
芦花公園駅南口
大崎駅東口第3
2
東品川四丁目第一・第
二
1
1
1
1
2
2
1
3
2
1
1
2
1
3
6
白河・三好
白金一丁目東
勝どき六丁目
日本橋浜町三丁目西部
霞が関三丁目南
上福岡駅西口駅前
川口1丁目1番
武蔵浦和駅第4街区
武蔵浦和駅第8-1街区
泉町1丁目南
台町
琴似4・1,2
東札幌1条
地区名
住
宅
を
含
む
複
合
棟
29
1
1
2
1
1
1
1
1
2
1
1
1
1
1
2
1
1
1
1
2
1
1
1
2
住
宅
を
含
ま
な
い
複
合
棟
12 ○
1 ○
3
3
3
2
1
2 ○
1 ○
2 ○
1 ○
2
3
2 ○
4 ○
3
2
4
3
1
5
1
1 ○
3 ○
5
2 ○
13
3
10
3
5
2
2
3
4 ○
4 ○
3
3
2
3
5
9
計
市
民
生
活
の
利
便
性
の
向
上
40 146 13
3
1
2
1
1
1
1
3
4
2
2
1
7
1
1
2
1
1
1
2
1
1
住
宅
を
含
ま
な
い
単
独
棟
26
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
商
業
活
動
の
活
発
化
7
国機関
○
病院
○
放送局
○
○
○
○
○
業
務
機
能
の
強
化
17
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
居
住
人
口
の
増
加
28
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
17
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
5
○
○
○
○
○
安 の憩 周
全 創い 辺
な 出の 開
都
場 発
市
・ の
空
に 誘
間
ぎ 導
の
わ
形
い
成
空
間
備 考
同潤会アパートは築70年を超え、近隣住民も基本的に反
対者なし
新たな居住者、特に子供の増加により街に
活気(旧同潤会アパート)
業務棟入居辞退に伴い行政による保留省の購入(図書館・
ホール)及び行政・組合の協力な連携
分有・分離型の施設建築物形態の採用による共有化を望
まない権利者との合意及びUR賃貸住宅の導入
特定業務代行者制度と参加組合員制度の併用及び代表
者のリーダーシップ
近鉄奈良線連立事業の遅れ等により、想定
の動線が確保できていないとともに、商業施
設の営業にも影響
今後隣接するB・Cブロックも整備され、地域
拠点としての機能発揮を想定
商業施設の専門店は開業2年(2009年)で
空店舗あり(2014年現在で2店舗)
29
○
○
○
○
当初の核テナント・住宅デべの撤退後に新たな核テナント・
住宅デべが確保されたこと
当初の核テナント撤退後に新たな核テナントが確保された
こと及び市の床取得
事業関係者・府・市をはじめとする事業推進者の全面的な
協力
核テナントとの出店合意と展開面積の調整を工事着手前
に終えたこと
身の丈再開発としたこと、市による保留床の取得及び周辺
での公共事業の施行
市住宅供給公社による保留床の取得
複数の旧商店街組織が統合した組織による
沖縄防衛局の入居決定
商業活性化に向けた取組み
河川緑道整備等と併せ地区への来街者が
増え交流人口が増加
企業参加のまちづくり団体結成)
地元と行政の連携した街づくりの推進(地域
地区への大学開校に伴う学生と地域の交流 官民協同による事業推進及び複合施設運営のノウハウを
持つ商業デベロッパーの参画
(イベント・街づくり活動への参加)
周辺への看護系教育施設の進出など「医療 県・市の事業への熱意と強力な指導及び小規模権利者の
と福祉を核とする街づくり」を推進
理解・協力
旧核テナントに売却済の土地を早期に買い戻せたこと及び
市出資等による対外的信用力の確保
岡山駅東西連絡通路完成とも相まって交流
市による施行(2工区に分割して施工)
人口が増加
○ 地域の商業拠点
○
当初の核テナント撤退に伴う違約金支払いによる事業再構
築
市による保留床の購入(文化施設・駐車場)、組合・事務
局・コンサルの協力、新たな住宅デべの参加他
当初の核テナント撤退による計画のコンパクト化、新たな
核テナント・公共公益施設の導入他
国・県の理解及びTMO(中小企業商業高度化事業構想の
承認団体)の参画
地元企業の事業支援
権利者の熱意、早期の参加組合員確定と負担金納付及び
行政の人的支援・補助制度
2度の核テナント撤退に伴う「身の丈再開発 組合役員・権利者の協力及び計画変更(住宅棟の導入と
(保留床の最小化)」
低層・低容積の商業施設)
事業実施による地区イメージの大きな変化
(近代的で安全)
○ 地域の玄関口としてのイメージアップ
○
○
○
○
○
○
イオンと地元の協働による祭り開催等による 撤退した商業デベロッパーの代わりとなる核テナントの入
まちづくり
居
第二種市街地再開発事業に変更し、権利者の要望に柔軟
に対応できたこと
名鉄名古屋本線の連続立体交差事業との
連携事業
○
権利者の理解と協力及び関係者の熱意と努力
変電所施設の更新時期を迎え開発機運が高まったことが
契機
地元の手づくりによる街なか再生
ホテルは需要を下回る宿泊特化型とし、周
辺の飲食施設等との連携を考慮
ルーセントタワーは名古屋でも最大級の貸
○
床面積を有するオフィスビル
組合から事務局業務を横浜市住宅供給公社が受託・実施
地域のランドマークとなる施設となり、知名
度向上
「アート&デザイン」のコンセプトに拘った条
強力な参加組合員の加盟
件が厳しく1階店舗は2年間空き家
緑地整備及び施設低層階の積極的な緑化
により自然環境を再生
オフィス、住宅、ショッピングセンター等の多 土地所有者の負担金供出による新駅整備及び各テナント
彩な機能が集約
撤退に伴う権利者自身による増床取得
工場街区がまとまったこと
事業者・施工者・コンサルタント等の連携
地域住民のネットワーク、UR都市機構の協力及び組合・
UR・行政の強力な連携
町工場がある下町から、近代的な住宅、オ
フィス、店舗、工場の街に変貌
緑道や公開空地の整備による町内活動等
の地域コミュニティ形成促進
PFI事業による事業実施
転出者の代替地を隣接地に確保できたこと
当初の核テナント撤退に伴う公共施設の導入、新たな核テ
ナントの決定及び特定建設者の事業参画
権利者の強い意欲
SPCスキームの採用による景観の大幅見直し(不動産証
券化)
核テナントの確保及び大手資本による投資スキームの構
築
既存商店街への駐車場サービスの提供によ 管理3セクによる床の一部及びシネマコンプレックスの取
る周辺商店街の利便性向上
得
管理者の再開発事業以外への参画
初動期からの住宅デベロッパーの参画
成功のポイント
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○ 商業施設は、周辺を考慮した業種を誘致
○
地
域
の
活
性
化
事業の効果
総括表
計
都道府県名
事
例
番
号
住
宅
単
独
棟
建築物棟数
リニューアル事例
(拡大版:その4)
参考資料−2 公共施設白書
− 246 −
自治体
鳥取県鳥取市
資料名
公共施設白書/H26.2
延床面積
公共施設の
現況
(㎡)
1人当たり面積
(㎡/人)
築 30 年以上割合
(%)
901,632
4.65
33
公共施設サービスにおける課題認識
□必要な公共サービスを維持するため、人口や財政規模に応じて公共施設の総量を最適化
していくこと
□公共施設にかかる生涯経費(企画設計・建築・維持管理・運用・除却にかかる総経費)
を可能な限り縮減すること
□計画的な維持(予防)保全に取り組み、財政負担の平準化を図るとともに、安全で良好
な公共施設を確保すること
□ムダ・ムラ・ムリの無い公共施設の再配置によって、より効率的に公共サービスを提供
すること
□公共施設の利用者間並びに納税者間の公平性を確保すること
□公共施設に頼らない公共サービスの提供について研究すること
公共施設サービスのあり方
〔公共施設白書より(基本方針策定中)〕
【はじめに】
公共施設は、市民が公共サービスを受けるため、もしくは利用するために施設利用者や
議会等の意見もうかがいながら整備・管理運営を行っている。同時に、税や使用料の負担、
管理運営への協力や参画など、公共施設を支えているのも市民である。
【取り組み状況】
「鳥取市行財政改革大綱」のもと、行財政改革に取り組み、様々な分野にわたり、一定の
成果を上げてきた。しかしながら、土地や建物などの保有財産に関する改革は思うように
進んでいないのが現状である。こうしたことから、経営の視点から確実な保有財産の改革
を実行するため、2013 年4月から専任の担当者を配置し、全市をあげて『公共施設の更
新問題』に立ち向かうために、庁内にファシリティマネジメント推進プロジェクトチーム
を設置し、これまで以上に総合的な視点から“財産経営”に取り組むこととした。
【財産経営の基本的な考え方】
□保有財産の最適化(総量の適正化と効率的な施設運営)
□公共施設にかかる生涯経費(ライフサイクルコスト)の最適化と環境対策
(無駄を省いた効率化とサービス水準の向上)
□保有財産の利活用(資産の有効活用と増収策)
【今後の進め方】
「鳥取市公共施設白書」は、1つ目の柱である『保有財産の最適化』を進めるための基
礎資料とし、できるだけ早期に「公共施設の総量適正化にむけた基本方針(仮称)」の策
定をめざす。
− 247 −
自治体
鳥取県米子市
資料名
公共施設白書/H26.3
延床面積
公共施設の
現況
(㎡)
550,284.2
1人当たり面積
(㎡/人)
3.43
築 30 年以上割合
(%)
40.6
公共施設サービスにおける課題認識
□学校、公民館、図書館・美術館、体育館、公会堂、庁舎これらの施設が一斉に老朽化す
るという課題に直面
□人口減少時代の影響による利用者の減少、市民のライフスタイルやニーズの変化に伴い
施設の設置目的が時代にそぐわなくなるなど環境は大きく変化
□今後、公共施設の大規模改修等の需要は益々増加するものと予測
公共施設サービスのあり方
:
〔公共施設白書より〕
【はじめに】
将来にわたって、公共施設を活用したサービスを安定的に維持・提供していくために、
それぞれの施設の現状をきちんと把握した上で、真に必要な施設サービスの在り方につい
て、議論を進めていく。
【これまでの取り組み】
(1)指定管理者制度の適用
(2)施設運営の抜本的な見直し(市営施設と県営施設の在り方の見直し)
(3)施設の休止・廃止等
(4)施設使用料の見直し
(5)その他(ネーミングライツの導入、電力入札の実施等)
【今後の取り組み】
(1)公共施設を取り巻く環境
公共施設の老朽化対策は、喫緊に対応すべき課題となっている。しかし、公共施設を
取り巻く環境は、大変厳しい状況にあり、本市においても、簡易な試算ではあるが、全
ての施設を維持することは非常に困難であるという結果がでている。
(2)米子市インフラ長寿命化計画策定実施本部の設置
昨年の11月に、国や地方公共団体等が一丸となってインフラの戦略的な維持管理・
更新等を推進することを目的とした「インフラ長寿命化基本計画」が策定された。これ
により、本市では、平成26年1月に市長を本部長とする「米子市インフラ長寿命化計
画策定実施本部」を設置し、公共施設を含むインフラ等の老朽化対策を全庁的に推進し
ていく体制を確立した。
(3)米子市インフラ長寿命化計画等の策定について
2016年までのできるだけ早い時期に、公共施設等の在り方に関する基本的な方針
となる「米子市インフラ長寿命化計画」を策定し、この作業と並行して、個別の施設ご
との対応方針を定める計画(個別施設計画)の策定にも取り組んでいく。
− 248 −
自治体
島根県松江市
資料名
公共施設白書/H25.6
延床面積
公共施設の
現況
公共施設適正化基本方針/H26.3
(㎡)
940,854.67
1人当たり面積
(㎡/人)
4.57
築 30 年以上割合
(%)
37.2
公共施設サービスにおける課題認識
〔公共施設白書より〕
□本市は、大型の市町村合併を行ったこともあり、多様な施設を数多く保有しており、機
能の重複や偏りがある施設も見受けられる。
□保有施設の37%が建築後30 年以上経過しているなど老朽化が進んでおり、今後、修繕
費など経常的な維持管理費の増加が見込まれる。
□将来更新経費の試算により、現在、保有している公共施設を、将来にわたって継続保有
することは、財政的には極めて厳しいことが明らかになった。
〔公共施設適正化基本方針より〕上記以外の事項
□今ある資源・資産を最大限に活用して、適切かつ良質な公共施設サービスを維持し、将
来にわたる財政面での持続可能性を確保するため、今後の人口減少、人口構成の変化に
応じた公共施設適正化を行う必要がある
□公共施設のほぼすべての分野において、公共施設が積極的に利用されているとは言えな
い状況にある。当初の設置目的を失った施設や利用が少ない施設もあり、この機会に本
当に行政が行うべき施設サービスであるかどうかも含め、市民ニーズにあった公共施設
のあり方を検討する必要がある
公共施設サービスのあり方 〔公共施設適正化基本方針より〕
【公共施設適正化 3つの目標】
□公共サービスの向上:現在の公共サービスを見直して、市民目線に立ち「まちづくり」
に資するサービスを提供
□市民の安全を守る:災害時の避難施設としての役割も意識し、安全で安心できる、良質
な建物を提供
□財政の健全化:次の世代に負担を強いることのないよう財政負担の軽減と平準化を図る
【公共施設適正化 5原則】
□新規整備は行わない[増やさない!]
□現在保有している施設のスリム化[減らす!]
□安全で魅力ある施設の提供[安全快適!]
□施設を利用しない市民への配慮[公平公正!]
□未利用財産の売却推進[財源確保!]
【取り組みの視点】
□財産管理から資産マネジメントへの転換
・全庁的な推進体制の構築
・未利用財産を円滑に処分する手法の検討
□利用圏域に応じた施設利用の推進
・広域利用の推進施設の複合化・多機能化による総量縮減
□事務事業の見直しや実施中の新規整備に適正化の視点を持たせる
□コミュニティ機能充実のため公民連携(PFI、PPP)と市民協働の推進
□学校施設老朽化対策との連携による地域拠点の整備
□施設の長寿命化によるライフサイクルコスト(LCC)の削減
□市民に対して積極的に情報を発信
− 249 −
自治体
岡山県真庭市
資料名
公共施設見直し指針/H21.9
公共施設白書/H26.7
延床面積
(㎡)
−
1人当たり面積
(㎡/人)
−
築 30 年以上割合
(%)
−
公共施設の
現況
公共施設サービスにおける課題認識
□施設の中には老朽化が著しいものがある
□住民ニーズが大きく変化する中で設置の意義が薄れているものや類似施設の重複など
が見受けられる
□平成23年度の新本庁舎完成に伴う各庁舎の取り扱いについても早急な検討が求めら
れている
公共施設サービスのあり方
〔公共施設見直し指針より〕
【見直しの視点・方向性】
①人口・財政規模等
②市内均衡化
③行政の責任領域
④市民との協働
⑤地元、利用者等の意見の反映
⑥受益者負担の原則
⑦空きスペース利活用
【見直し方針】
(1)公の施設
①施設の設置目的や機能が民間の施設と競合していないか
②施設の設置目的が時代のニーズに合致しているか
③利用率が大きく低下するか漸減傾向にないか
④利用者が一部の地域に集中しているため、より地域に密着した運営が行えないか
⑤施設の管理運営が効率的、弾力的に行われているか
(民間事業者の専門性、効率性、ノウハウ等の導入がなされているか)
⑥耐用年数の到来(5∼10年先を見据える)により、施設の安全性や快適性、機能性
が失われていないか
⑦新規に設置要請がある施設の代替機能を果たすことが可能か
(複合施設として利用できるか)
⑧収支のバランスや「負担の公平性」の観点から、使用料等の設定は適切か
(2)公用施設
①耐震基準を満たしているか。(有事の際の拠点となりうるか。)
②分散、狭隘により利便性やサービスの低下、行政効率の低下を招いていないか。
③老朽化が進み、危険箇所や故障への対応が応急処置的なものとなっていないか。
④新規に設置要請がある施設の代替機能を果たすことが可能か。
(複合施設として利用できるか。)
⑤将来の行政需要の変化にも柔軟に対応するゆとりがあるか。
【対応策】
①廃止
②類似施設との統廃合・複合化
③民間譲渡・民営化
④指定管理者制度の適用(民間委託)
⑤事務等の一部委託(業務委託を含む) ⑥直営(前項の対応策が採用できないもの)
− 250 −
自治体
岡山県笠岡市
資料名
公共施設の現状と課題/H23.7
延床面積
公共施設の
現況
(㎡)
1人当たり面積
(㎡/人)
築 30 年以上割合
(%)
227,902
4.23
45
公共施設サービスにおける課題認識
□施設の老朽化への対応
□公共施設管理台帳の整備
□コストの検証
□受益者負担の適正化
公共施設サービスのあり方
〔公共施設の現状と課題より〕
【今後の公共施設のあり方】
□既存施設の長期利用
公共施設の建替時期の集中に対処するため、既存施設の長期利用を推進する。
特に建て替え費用が最も多額となる学校教育施設は、現在、進めている耐震化工事の
中で、施設の延命化を図っていく。
その他の施設についても改修等による施設の延命化や時代の要請に応じた、施設の統
合等を検討していく必要があり、そのため、財政健全化の取り組みを引き続き実施しな
がら、その財源を確保していく。
□効率的・計画的な維持管理
公共施設管理台帳システムの導入などにより、効率的・効果的・計画的に維持管理が
可能となるようにするための新しい仕組みづくりを進める。
□適正な公共施設の維持管理
現在の地方財政を取り巻く環境は、めまぐるしく変化しており、中期的な見通しも不
透明な状況となっている。
このため、笠岡市では第6次笠岡市行政改革大綱の基本方針に基づき、毎年「笠岡市
財政運営適正化計画」を策定し、外的要因にも耐えうる財政基盤を確立することとして
いる。
今後も財政健全化の取り組みを継続し、公共施設についても市民により活発に利用し
てもらえるよう適正な維持管理をする。
− 251 −
自治体
岡山県玉野市
資料名
公共施設白書/H24.12
延床面積
公共施設の再編整備等の方向性について/H25.9
(㎡)
270,117.14
公共施設の
1人当たり面積
(㎡/人)
4.10
現況
築 30 年以上割合
(%)
62.6
公共施設サービスにおける課題認識
□昭和30 年代から50 年代にかけて建設されたものが多く、それ以降に整備されたものも含め、全
体的に老朽化が進んでおり、大規模改修や建て替えといった更新時期を迎える施設が増加
□現在の施設の運営にあたっても、維持管理経費の増加やバリアフリー化への対応、さらには耐震
化の問題など、様々な課題が山積
□将来的に人口の減少や高齢化が進展することで、公共施設に対するニーズなどが変化することが
予想される
□本市の財政は厳しい状況にあり、人口減少に伴う歳入の減少や少子高齢化の進展による社会保障
関係経費の増加など、不安要素を多く抱えている
公共施設サービスのあり方
〔公共施設の再編整備等の方向性についてより〕
【基本的な考え方】
□現存施設の活用
・新しい施設や耐震化施設など一定の強度を維持している施設は、可能な限り活用し続ける
・改築にあたっては、他の施設に同等の機能を収容し得るかどうか検討する
□共通化・複合化の推進
・施設を新しく整備する際には、本来の行政目的を損なわない範囲内で、できるだけ複数の機能
を持たせ共通経費を削減するとともに、新しい組合せによって、新たな付加価値を生み出す
□民間活力の導入
・個々の施設について、そもそも市が維持していくべきかどうか検証し、必要性のない施設につ
いては、民間企業や地元などへの譲渡を検討する
・行政目的があるからといって、必ずしも市が所有する必要はなく、行政サービスを提供するに
あたっては、民間施設の活用も視野に入れる
□優先順位
・市民、特に子どもの安全・安心を守るために必要な機能を維持することを最優先とする
□国県等の財源の有効活用
・国県等の補助金や交付税措置のある有利な起債等を最大限活用すべきであり、施設の整備等に
あたり、これらの活用が可能な場合は、優先的な取り組みを行う
□後年度負担への配慮
・市債発行は市の借金であることを認識した上で、将来世代に過度な負担を残さないよう適正な
管理に努めるとともに、財政健全化の観点から将来の公債費負担が市の財政に相応した範囲内
に止まるよう十分配慮する
【再編整備等の方向性】
公共施設の具体的な方向性を検討するため、施設分類ごとに必要性や施設性能などを考慮した
上で、次の3つの類型に整理する。
① 最優先施設
・防災上最も重要な施設等はその機能を維持するため、建て替えや耐震補強の他、耐震化された施
設への機能移転を含め優先的に耐震化を図る。なお、建て替えの場合、可能な限り複合化を検討
する。
② 優先施設
・①に次いで重要な施設はその機能を維持するため、建て替えや耐震補強の他、耐震化された施設
への機能移転を含め、順次耐震化を検討する。なお、建て替えの場合、可能な限り複合化を検討
する。
③ 統廃合・民営化などを検討すべき施設
・利用率が低く、老朽化が著しい施設、利用者が少ない施設、市民ニーズを満たしていない施設、
他の民間施設との公平性に課題のある施設などは、他の類似施設との統合・譲渡などを検討する。
・民間事業者による同種のサービスが定着しており、民間事業者により、効率的かつ質の高いサー
ビス提供が可能な施設については、民営化を検討する。
− 252 −
自治体
岡山県倉敷市
資料名
公共施設白書/H25.3
延床面積
公共施設の
現況
公共施設白書・施設別編/H26.5
(㎡)
約 1,570,000
1人当たり面積
(㎡/人)
3.3
築 30 年以上割合
(%)
62
公共施設サービスにおける課題認識
〔公共施設白書/H25.3〕
□今後の人口推計を踏まえると、税収の減少や社会保障関係経費の増加による財政状況の
逼迫が予想される
□近い将来、老朽化した公共施設の更新 時期が到来し、現状のままの施設を維持してい
くことが大変難しい状況になる
〔公共施設白書・施設別編/H26.5〕
□少子高齢化の進展や人口減少社会への移行に伴い、公共施設に対する市民ニーズの変
化、さらに、財政面では、市税収入の減少や社会保障関係経費などの支出の増加により
厳しい状況となることが見込まれる。
□このため、現在の公共施設の質と量をそのまま維持するための改修・更新や維持管理に
要する財源を確保していくことは、他の行政サービスに影響を及ぼすことが予想され、
将来世代へ負担を押し付けることにも繋がる。
公共施設サービスのあり方
〔公共施設白書及び公共施設白書・施設別編より〕
〔公共施設白書/H25.3〕
□本市が保有する適正な公共施設の量を検証し、効果的な修繕とするために、更新時期や
再編の計画を定める
□施設の複合化・多機能化や官民連携による運営管理費の削減など、様々な新しい取り組
みについても検討する
〔公共施設白書・施設別編/H26.5〕
注記:施設ごとに老朽化の状況、維持管理費や利用状況を調査し、さらに建設費・維持管理費をあわせ
たライフサイクルコストを試算したデータ集としてまとめたもの
公共施設白書を活用して、次のような視点で各公共施設について具体的な検討に入る。
□コストをかけて長寿命化対策を図ることが適切か
□複合化や多機能化を図ることができないか
□公民連携など民間活力を導入することで効率化を図ることができないか
□近隣自治体と連携することで相互利用ができないか
□受益者負担の観点から利用者料金の見直しが必要ではないか
さらに、今後、公共施設白書を基礎資料として活用し、国の「公共施設等総合管理計画」
策定の趣旨に沿って、公共施設をより良いかたちで次の世代へ引き継いでいくことが出来
るように、本市の実状を踏まえた公共施設再編の方針や指針の策定に取り組む。
− 253 −
自治体
広島県廿日市市
資料名
公共施設白書/H23.3
延床面積
公共施設の
現況
公共施設マネジメント基本方針/H25.6
(㎡)
514,304
1人当たり面積
(㎡/人)
4.08
築 30 年以上割合
(%)
37.5
公共施設サービスにおける課題認識
□廿日市市の市民一人当たりの公共施設延べ床面積は4.08 ㎡で、全国平均を0.86 ㎡、総
延床面積では約10 万㎡上回る。10 年後には、築30 年を経過する建物が全体の64.5%
を占めることとなり、このうち築50 年を経過する建物は10%を超える。建築後30 年で
大規模改修、築60 年で建て替えを行うと仮定した場合、長期間継続して整備した公共
施設の更新問題への計画的な対応が必要となる。(老朽化)
□少子高齢化に伴い税収が伸び悩む一方、社会福祉にかかる費用は年々増加傾向にある。
□これまで整備してきた公共施設(建物)は、近く更新の時期を迎え、この費用が市財政
に大きな負担として顕在化する。
□これらのことは、将来の行政サービスの水準維持に影響を及ぼすだけでなく、将来世代
への負担となることが懸念される。
□将来の市民にも良質かつ充実した行政サービスを提供するためには、新たな収入源の確
保あるいは財政負担を抑制する手段を考えなくてはならない時期にある。
公共施設サービスのあり方
〔公共施設マネジメント基本方針より〕
〔公共施設マネジメント基本方針/H25.6〕
【5つの基本的な考え方】
□ 総延床面積の縮減
・原則として新たな公共施設は建設しない。
・また、現在ある公共施設は、集約化や統廃合を進め、総延べ床面積を縮減する。ただ
し、老朽化等への対応やまちづくりの視点による時代のニーズに対応するため、新た
な公共施設を建設する場合は、規模の縮小化、又は他の公共施設を同面積以上廃止(予
定も含む。)する。
□機能を重視した再配置
・公共施設のあり方については、社会情勢の変化に伴う必要性について市民とともに検
討し、公共施設が担う機能を中心に考え、地域特性や時代(市民)のニーズを考慮し
た公共施設の再配置を行う。
□資産の有効活用
・公共施設を経営資源として捉え、行政財産の貸付等や統廃合によって生じた跡地等の
売却などを検討し、主に将来の公共施設の維持更新、機能の充実に充てる財源とする
など、積極的に資産の有効活用を図る。
□効率的・効果的な管理運営
・必要性、公共性の高い施設であっても、施設の設置目的や業務内容等を精査した上で、
利用率や稼働率の向上に努めるとともに、民間活力の活用や受益者負担の適正化を推
進することにより、効率的・効果的な管理運営を行う。
□公共施設の一元的なマネジメント
・施設所管課による適正な管理運営を継続しつつ、全体最適の視点による活用戦略の策
定、長期的な施設更新の課題解決を図るため、公共施設を一元管理する。
【総量(延べ床面積)縮減目標の設定】
□当面の目標として、今後40 年間で総延べ床面積10 万㎡、約2割を縮減する。
− 254 −
自治体
広島県呉市
資料名
公共施設白書/H23.3
第一次公共施設再配置計画/H24.6
延床面積
公共施設の
現況
(㎡)
公共施設再配置計画基本方針/H23.10
第二次公共施設再配置計画/H25.6
1,154,723
1人当たり面積
(㎡/人)
4.75
築 30 年以上割合
(%)
約 41
公共施設サービスにおける課題認識
□呉市は、昭和30年代から産業の発展や市域の拡大などによる人口急増に伴い、多くの公
共施設を整備してきた。また、平成17年に完了した近隣8町との合併により、施設数は
大幅に増加した。その結果、何らかの老朽化対策を必要とする築20年以上の施設が建築
面積ベースで全施設の約60パーセントを占めている。
□呉市の人口は昭和50年を境に減少傾向にあり、少子高齢化の進行やそれに伴う人口構成
の変動、さらには急激な社会情勢の変化などの要因により、公共施設に対するニーズが
多様化している。
公共施設サービスのあり方
〔公共施設再配置計画基本方針より〕
【基本方針】
□必要性の検証
・公共施設ごとに、施設が持つ性質や位置付けなどを確認し、今後も市がその施設を保
有し、サービスを提供し続ける必要性について再検証する。
□公平性の確保
・公共施設の運営に係る経費は、利用者からの使用料や税などにより賄われている。こ
のため、施設の利用状況や配置状況などを基に、利用機会の公平性の確保に努める。
□有効活用の促進
・本市の公共施設は、国などの補助金交付によるものが多数を占めている。従前はその
補助目的に沿った利用が義務付けられていたが、最近は柔軟な施設運営が認められ始
めている。複雑・高度化する社会の変化やそれに伴う住民ニーズの多様化が進展する
中、公共施設においても、当初の設置目的とは異なった新たなニーズも生じている。
今後も国などの動向を注視し、転用が可能な要件を満たした公共施設のうち有効活用
を図ることができるものは転用する。
・地域を取り巻く環境の変化などから、複数の公共施設を集約化することも検討する。
これにより一つの施設で多様なニーズに対応することが可能となり、利用者の利便性
の向上が図れるものと考える。
□管理運営方法の改善・改革
・市による設置・運営が必要とされる公共施設への行政資源の投入は不可欠である一方、
管理運営の効率性についても検討する必要がある。引き続き、施設の管理運営につい
て、指定管理者制度の導入や一部業務の民間委託により、当該経費の縮減に努めると
ともに、市民サービスの向上を進め、利用者の満足度を重視した取り組みを行う。
・地域協働を推進する観点からも、「新しい公共」の考え方に基づき、公共施設を地域
に委ねることも検討する。これにより施設の柔軟な運営が可能となるとともに、地域
の担い手育成や地域コミュニティの再生に大きく貢献するものと考える。
− 255 −
自治体
広島県江田島市
資料名
公共施設白書/H25.3
延床面積
公共施設の
現況
(㎡)
148,432
1人当たり面積
(㎡/人)
8.43
築 30 年以上割合
(%)
52.5
公共施設サービスにおける課題認識
□江田島市の公共施設は、市民生活やコミュニティ活動などを支えているが、その一方で
老朽化と維持管理コストの増加、利用状況の低い施設の存在、地域的な施設の偏在、運
営管理方法の違いなど数々の問題・課題がある。
□公共施設のうち41%(延床面積)が新耐震基準に適合していないため、公共施設にお
ける防災・安全性の確保も課題となっている。
□現在ある公共施設のうち、築30年以上を経過した施設が52%を占めており、大規模
改修や建て替えによって施設すべてを維持・更新する場合の将来経費(試算)は、年平
均で約16億円の財政負担が必要となる。(維持管理費用の増大)
公共施設サービスのあり方
〔公共施設白書より〕
【基本方針】
□江田島市の将来のまちづくりを見据え、安全な公共施設と健全な財政を次世代に引き継
ぐために計画的な公共施設の再編・整備を進める。
□公共施設の再編・整備により、公共施設を通じた市民の安全・安心や住みやすさの維持・
継承を図る。「ハコ」から「機能」へ視点を換え、たとえば、集会所を廃止する場合で
も、その集会機能は他の施設で確保する。
□公共施設の再編・整備を、施設・機能の高次化及び利便性や防災・安全性の向上につな
げる機会とし、より多くの市民に利用され、多様な交流の促進やコミュニティの活性化
に寄与する取り組みとする。
【見直しの基本的な方向】
□長寿命化と維持管理コストの最適化
□統廃合、複合化などによる投資効果の向上
□将来の都市づくりを目指した再編・整備
□運営管理の効率化と市民などの参画
□市民意見の反映
【再編・整備の基本パターン】
□統廃合・複合化
□用途廃止(機能移転を行わない場合)∼売却処分、将来の活用の資源としての保有、移譲
□地域 団体等への移譲
□指定管理・民営化
□現状のまま(市運営管理)
□用途変更
− 256 −
自治体
広島県福山市
資料名
福山市公共施設サービス再構築基本方針/H25.3
延床面積
公共施設の
現況
(㎡)
1,550,000
1人当たり面積
(㎡/人)
3.33
築 30 年以上割合
(%)
約 57
公共施設サービスにおける課題認識
□保有する公共施設には建築後30年以上経過したものが多くあり、建築時期が集中して
いるため、その改修や建て替えを必要とする時期も集中して到来する(老朽化)
□少子・高齢化の進展とそれに伴う人口減少などにより人口構造そのものが変化し、公共
サービスも市民ニーズや環境の変化に適切に対応していくことが必要
□財政面でも、税収の減少や医療・介護等の社会保障関係費の増加など、地方自治体を取
り巻く環境は厳しさを増しており、現状の公共施設を維持し、公共施設サービスを提供し
続けることは困難(維持管理費の不足)
公共施設サービスのあり方
〔公共施設サービス再構築基本方針より〕
【基本理念】
社会の変化に的確に対応し、 将来にわたり活力のある、持続可能なまちづくりをめざ
し、公共施設の再構築を通して最適な公共サービスの提供を実現する。
【現在の取り組み】
□複合化 … 市民センターと図書館・ホールなどを複合化
□転 用 … 幼稚園を保育所に転用、こども発達支援センター等の既存施設の利活用
□長寿命化 … 公民館等の延命化、小・中学校の耐震化
□移管譲渡 … 保育所の法人移管、老人集会所等の地域への譲渡
□処 分 … 既存施設の売却
□再整備 … 市営住宅の計画的な整備、保育所の再整備
□コスト管理 … 電気調達や業務委託等の管理運営経費の見直し、指定管理者制度の活用
□環境配慮 … LED化や太陽光発電設備の設置等の環境配慮
【今後の取り組み】
□ 適正配置、保有総量の縮小
・所管部署ごとに保有する公共施設の情報を一元的かつ組織横断的に集約
・集約した情報により、公共施設を「財務・品質・供給」の3つの側面から評価し、そ
の統廃合や再配置などを計画的に進め、必要なスペースは適切に確保しつつ、資産保
有量全体の縮減を実現する
・利用を廃止した公共施設は、遊休財産として基本的に売却処分する
□ 効率的・効果的な活用
・利用を継続する公共施設は、利用状況を検証し、施設間の利用調整などにより最大限
に有効活用する
・自助・共助・公助の視点を踏まえたまちづくりを推進するため、地域住民や公的な団
体等が主体となった活動に対して施設の効率的な活用の視点から支援を進める
・施設規模や利用状況に応じた標準的、効率的かつ適正な維持管理コストにより、また、
防災や環境にも配慮した施設運営に取り組む
・利用の低迷している公共施設は、施設の情報や評価等により施設のあり方を総合的に
検討し、新たな施設に転用を図るなど引き続き効率的・効果的な活用に取り組む
□ 計画的保全、長寿命化(更新コストの縮減)
・それぞれの公共施設で実施される各種点検や屋上防水など、日常の適正な維持管理や
計画的で適切な維持補修は、公共施設の寿命を延ばす
・日常の保守点検マニュアルを整備運用し、これまで培ったノウハウも十分に活用する
とともに、計画的な保全による更新コストの縮減を行い、施設の適正な管理によって、
可能な限り長寿命化に取り組む
− 257 −
自治体
広島県広島市
資料名
ハコモノ白書/H26.1
延床面積
公共施設の
現況
(㎡)
4,220,769
1人当たり面積
(㎡/人)
3.57
築 30 年以上割合
(%)
59.0
公共施設サービスにおける課題認識
□類似するサービスや同様の機能を有する諸室を持つ施設が多数存在するなど、ハコモノ
資産全体の最適化が図られていないのではないか。
□汎用的な機能を有している施設にもかかわらず、対象とする利用者が限定されているも
のがあるのではないか。また、提供する機能が時代遅れとなり利用者が減少傾向にある
ものがあるのではないか。
□施設の中には運営・維持費のほぼ全額を税収入等で負担しているものがあり、施設を利
用しない市民にとっても想定以上の負担が生じているのではないか。(費用負担の公平
化)
公共施設サービスのあり方
〔ハコモノ白書より〕
【ハコモノ資総論】
□ハコモノ資産(建物)の建築状況
・本市のハコモノ資産(建物)は、全体の約5 割、222 万㎡分の建物が昭和40 年代か
ら50 年代の20 年間で集中的に建築された。鉄筋コンクリート造の建物の一般的な耐
用年数は60 年といわれているため、これらの建物は、平成37 年から平成56 年の20
年間に集中して耐用年数を迎えることになる。
・国土交通省の調査によれば、国家機関の建物では、建築後31 年以上の修繕費が高く
なる傾向が示されており、本市のハコモノ資産は、築30 年以上の建物が全体の56.1%
(延床面積ベース)を占めていることを踏まえれば、近い将来、建物の修繕に要する
経費が、急速に増加していくことが想定される。
□ハコモノ資産(建物)の更新費用(推計)
・今後40 年間の更新・大規模改修費用の推計額は、総額で1 兆8,981 億9,000 万円、
年平均で474 億5,000 万円にのぼることになった。一般会計、特別会計及び企業会計
において、ハコモノ資産の更新・大規模改修等に充てられた費用は、平成22 年度決
算額で264 億9,000 万円、平成23 年度決算額で282 億5,000 万円、平成24 年度決算
額で271 億円である。平成24 年度決算額と上記の推計額を比較すると、年間で203 億
5,000 万円が不足し、現在の経費から約1.8 倍の額を確保しなければならない。
【今後の対応】
□「公共施設老朽化対策検討会議」において検討を進め、平成26 年度末を目途にハコモ
ノ資産の更新に関する基本方針を作成する予定。
− 258 −
自治体
山口県宇部市
資料名
公共施設白書/H25.3
延床面積
公共施設の
現況
宇部市公共施設マネジメント指針/H26.5
(㎡)
679,428
1人当たり面積
(㎡/人)
3.96
築 30 年以上割合
(%)
52.1
公共施設サービスにおける課題認識
□「品質」の課題∼安全で安心して利用できる計画的な保全の推進
・施設の大半が建築後30 年以上経過しており老朽化が進んでいる。また、耐震性を有
していない施設もあり、全ての公共施設が安全で安心して利用できるとは言い難い。
・これらの老朽化した施設は、バリアフリーなどの福祉性能、省エネなどの環境性能と
いった機能面で、市民満足度の低下に繋がることも考えられる。
□「供給」の課題∼最適量の施設を供給、サービスの質を保持した経費削減、まちづくりとの整合
・公共施設ニーズを上回る施設の保有は、市の財政状況を逼迫させるだけでなく、偏在
の原因や計画的な保全の阻害要因となるなど、様々な問題を引き起こす。
□「財務」の課題∼全施設の必要性の検討、必要な施設のライフサイクルコストの抑制、
適正な受益者負担の設定、財政負担の平準化、経費の一時借入の抑制
・市の歳入が減少する一方で、歳出は増加が見込まれることから、施設の維持、整備に
はこれまでどおりの予算確保していくことは困難な状況にある。
・さらに、施設保有には継続的に多額の維持費が必要であり、かつ老朽化した施設の修
繕や耐用年数切れに伴う施設更新は今後確実に財政を逼迫させ、現状の施設数を維持
することは不可能と考えられる。
公共施設サービスのあり方
〔公共施設マネジメント指針より〕
□「品質」を最適化するための方針
・施設の耐震化を積極的に進める。
・施設維持管理の質、体制を整えるとともに、計画的な保全を進め、施設性能の維持、
長寿命化を図る。
・施設維持にかかる専門的なノウハウ、指定管理者制度の活用を進める。
・施設の利用状況に即した福祉性能、環境性能の向上に努める。
□「供給」を最適化するための方針
・将来的な施設需要を見極め、施設総量の最適化を図る。
・社会情勢の変化等に伴い、有効活用がされていない施設は、用途転用や複合化、廃止
を積極的に進める。
・市保有施設以外の施設の積極的な活用を検討する。
・新たな施設供給(新築、更新)は、他の目的施設との統合など施設の多機能化を積極
的に進める。
・まちづくりの指針である市総合計画との整合を図る。
・施設供給の転換に当たっては、市民意見を聴取し、施設利用者の合意形成に努める。
□「財務」を最適化するための方針
・中長期的視点からの計画的な施設保全に努め、トータルとして経費圧縮に努める。
・施設改築、大規模修繕等に係る財政負担の平準化を図る。
・施設維持管理コストについて、管理形態・方法を見直すなど経費の圧縮に努める。
・新たな施設供給(新築・更新)に当たっては、適正規模の見極めとあわせライフサイク
ルコストの抑制に努めるとともにPFI 等PPP 手法の導入について積極的に検討する。
・施設利用者の負担となる使用料の適正化に努める。
− 259 −
自治体
山口県周南市
資料名
公共施設再配置の基本方針/H26.3
延床面積
公共施設の
現況
(㎡)
806,038
1人当たり面積
(㎡/人)
5.49
築 30 年以上割合
(%)
62.1
公共施設サービスにおける課題認識
□公共施設の老朽化への対応(平成 42 年;施設の 93.2%が築後 30 年超)
・短期間に、大規模改修や建て替えを行うことは非常に難しいので、総量抑制や長寿命
化、適正管理等の手法等を含め、公共施設の老朽化への対応は、避けられない課題で
ある。
□少子化・超高齢社会への対応(平成 42 年人口;126,809 人、22,678 人減少)
・少子化や超高齢社会の進行の影響はから、市歳入の減少や施設等の路用者の減少が予
測され、確実に増大する扶助費への対応や中山間地域と都市地位での人口同行の違い
から派生する生活関連の行政サービスの多様化等への対応等で需要が増加すると見込
まれる。
□財源確保問題への対応(更新を実施するための一般財源;毎年約 131 億円)
・厳しい財政状況が予測される中、現愛保有するすべての公共施設を現状のまま更新(大
規模改修や建て替え)していくことは非常に困難な状況にある。
公共施設サービスのあり方
〔公共施設再配置の基本方針より〕
【公共施設保有のあり方】
□市民ニーズの変化に対応するサービスの提供(サービスの最適化)
□効果的で効率的な施設の管理運営(コストの最適化)
□次の世代に継承可能な施設の保有(量の最適化)
□安全に、安心して使用できる施設整備(性能の最適化)
【公共施設の保有の在り方を実現する主要方針】
□建物などを保有する施設の最適化
□公共施設白書の内容や「施設別データ」に基づく現有施設の検証
・利用者数や市民ニーズなどからの検証(機能の検証)
・建物性能の検証
□地域の拠点となる施設への取り組み
□将来を見越した公共施設の最適化
・サービスの最適化
・コストの最適化
・量の最適化
・性能の最適化
□都市基盤施設の最適化
□長寿命化計画やストックマネジメントなどによる計画的な維持管理
□公共施設を維持更新していくために
□公共施設を維持更新していくための財源の確保
□公共施設を維持更新していくための公共施設マネジメントの実施
【今後の取り組み】
□(仮称)周南市公共施設再配置計画の策定
□次期まちづくり総合計画やインフラ長寿命化基本計画との整合
□計画策定に向けての庁内体制
− 260 −
自治体
山口県防府市
資料名
防府市公共施設白書/H26.3
延床面積
公共施設の
現況
(㎡)
433,908
1人当たり面積
(㎡/人)
3.77
築 30 年以上割合
(%)
61.7
公共施設サービスにおける課題認識
□必要性の視点
・人口構成の変化やライフスタイルの多様化等により、公共施設の建設当時と比べ、施設に
対する市民のニーズが変化しており、本当に必要な公共サービスを峻別する必要がある。
□継続性の視点
・既存施設の計画的な保全、施設の長寿命化を図り、施設の安全性を確保しつつ公共サ
ービスを継続的に提供する必要がある。
□効率性の視点
・管理運営コストが高い施設や利用状況(稼働率等)の低い施設については、管理運営の
効率化や利用状況の改善といった公共施設の管理運営方法の見直しを行う必要がある。
公共施設サービスのあり方 〔公共施設白書より〕
□施設の最適化に向けた取り組み
・全庁的な視点から施設の最適化に向け、公共施設全体のあり方や施設分類別の取り組
みの方向性、取り組みのスケジュール(ロードマップ)を定める公共施設マネジメント
基本方針を検討し、これに基づき、施設分類別に存続・見直し等の具体的な対応策を
検討する。
□施設の長期保全に向けた取り組み
・公共施設の大規模修繕や更新に係る将来的な費用負担に加え、耐震化やバリアフリー
化、省エネルギー化等の新たな社会的需要に対応するには、長期的な視点で施設の安
全性を確保しつつ計画的な保全を行い、施設の長寿命化を図る必要がある。そのため
には、施設の長期保全計画を策定し、建物の状態に応じて長期的に見た修繕・更新費
用の縮減につながる適切な維持管理手法を適用する。
・また、限られた財源の中で施設の長期保全の実現性を確保するため、財政計画とも連
携した施設の長期保全計画に基づき、施設の修繕・更新等に優先順位を付けて効率的・
重点的に維持管理を行い、継続的に公共サービスを提供する。
□管理・運営の効率化に向けた取り組み
・施設の維持管理費や事業運営費には莫大なコストがかかっている現状を踏まえ、限られ
た財源を効果的に活用するため、PFI/PPPなど公設公営だけでなく民間を活用した事業
手法を導入する等、施設管理・運営の効率化について検討する。
・一方、公共施設は出来るだけ多くの市民に利用されることが必要であり、継続使用施
設は提供サービスの対象圏域や特性を踏まえた施設の利用促進施策も検討する。
□資産の有効活用に向けた取り組み
・利用状況の低い施設や継続使用しない建物などについては、他施設との複合化や統合
化等を含め、不動産の有効活用について検討する。
□公共施設マネジメントを実践する仕組みづくりと組織づくり
・公共施設マネジメントを継続して実践していくためには、施設の再編・再整備(施設
の複合化や統合化等)など、全庁的な視点で施設の全体最適に向けた判断ができるよ
う、全体的な調整について意思決定できる体制の構築を図ることも必要であり、公共
施設マネジメントを実践する仕組みと組織づくりについて検討する。
・また、公共施設マネジメントのPDCAサイクルを実践し、結果のフィードバックと継
続的な改善が可能な環境を整備するため、意思決定に必要な情報を一元的に管理する
仕組み検討する。
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自治体
山口県光市
資料名
光市公共施設白書/H26.7
延床面積
公共施設の
現況
(㎡)
205,089
1人当たり面積
(㎡/人)
3.83
築 30 年以上割合
(%)
59.4
公共施設サービスにおける課題認識
□光市の現状
・多くの公共施設が高度経済成長期に整備されており、築30年以上経過した施設の延床
面積が全体の59%に上るなど、施設の老朽化が相当に進展しており、これらの施設の
更新時期を今後一斉に迎える。
・施設更新に係る費用の推計結果は、現在ある全ての施設を更新すると仮定した場合、
今後40年間に約920億円の更新費用が必要となる。
・こうした中、人口減少や少子高齢化の進行により、市税収入の減少や扶助費の増加が
将来的に見込まれる一方で、人件費抑制等の行財政改革には限界があるため、1年あた
り約23億円(平成25年度一般会計予算の1割に相当)にも上る更新費用を全て確保する
ことは困難といえる。
・また、今後、人口が減少していく中で、公共施設の需要そのものが低下することも考
えられる。
□課題認識
・現在ある公共施設は、これまでの財政状況や人口規模において適正とされたものであ
ることを認識し、時代の変化に対応しながら、改めて光市の身の丈に合った適正な保
有総量とするため、統廃合による総量の縮減を進めていくことが求められている。
・その上で、市民ニーズに応えるために引き続き設置すべき施設については、適切な予
防保全による長寿命化と計画的な更新を図っていく必要がある。
・このため、行政需要等に応じた公共施設の量・質などの最適化等を進める『公共施設
マネジメント』に取り組むこととし、これにより、財政負担の軽減・平準化を実現し、
真に必要な施設の維持を図る。
・これに伴い、施設の利用状況や費用対効果等に基づき、更新や統廃合について検討し
ていくことを基本としつつ、『公共施設の適正配置等に関する方針(仮称)』を策定
する。
公共施設サービスのあり方 〔公共施設白書より〕
「公共施設の適正配置等に関する方針(仮称)」において留意すべき主な視点
□優先度による財源の配分
・市民ニーズや費用対効果、老朽化の進展具合等により、施設の優先度を判断した上で、
限られた財源を適切に配分する。
□施設機能の重視
・同じ機能を有する施設の統合、機能が異なる施設の複合化により、施設機能を維持し
ながら総量を縮減する。
□施設の長寿命化
・大きな財政負担を生じる建て替えを繰り返すのではなく、施設の長寿命化対策を適切
に行い、今ある施設を長期に渡り活用する。
□安全性の確保
・事後保全から予防保全への転換や耐震化等により、施設の安全性を確保する。
□機能の向上
・施設需要の量や質の変化を想定した整備や改修により、施設機能の向上を図る。
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都市機能向上のための
都市施設のリニューアルに関する調査
報 告 書
平成 27 年 3 月 31 日
編集・発行
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