丘のまちは緑でつながる

登録番号 15ー①
丘のまちは緑でつながる
空洞化し人通りが少なくなった飯田の中心市街地を、緑を増やすことで世界に誇れる美しいうるおいのあるまちにする。綿密な現地リサーチから、飯田の「丘の上」を多くの人が訪れる快適で個性豊かな都市に
するための提案をする。それは同時に、既存の都市構造やストックを最大限にいかしながら多くの人々をまちづくりに巻き込むことにもなる。リニア新幹線が開通する頃、豊かな緑であふれた丘のまちは、駅と
■まちづくりのコンセプト / まちを緑化することで訪れる人を迎え入れる環境をつくる
りんご並木がつながって回遊性のあるにぎやかなまちになるだけでなく、海外から訪れる人から市内に住む人、まちなか居住者まで多様な人々をつなぐ環境文化都市になる。そして、まちは生き生きとよみがえる。
回遊性の創出
所有形式を変えて都市を更新する
・空地をいかしてつなぐ
・土地の交換の仕方、広場の作り方、換地
衰退した中心市街地
車道
既存建物
裏界線
車道
新築町家
既存の都市構造を活かす
緑化して、
1. 快適で豊かな環境にする
2. 人が集まるきっかけになる
3. イメージを変え、個性的なまちにする
4. 後世に受け継ぐ美しい資産を残す
一体的に利用
まちづくり会社が整備
既存建物
駐車場→新築
駐車場→広場
駐車場→広場
町家のリノベ
駐車場→広場
カーシェア
パーキング
知久町
本町
通り町
※空家や不適格建築物から着手する
松尾町
現状では裏界線の南北で町が異なるの
今まで月極駐車場として使われていた敷地をまちづくり会社が借り受け、パブリックな広場として整備
で交流が生まれていない。二つの町に
する。広場を人が集まり活発に使われるように、広場に面して不適格建築物や空き家の建て替え、町家
またがって緑地を設けつなげていく。
のリノベーション、カーシェアパーキング用地となった建物の移転を行う。
・裏界線を利用する
・あらゆる主体がシェアして暮らす
・現在の所有形態
・新しい所有形態
核家族
シェアハウス
個人
迎え入れる
商いの場
パブリックスペース
商店主
商いの場
コワーキング
商いの場
ショップ
観光客
新しい住人
周辺地域の人
1町家1家族
ビジネス
様々な人が集まってまちをつくる
1町家多世帯
裏界線が生活動線として有効利用される
従来の町家は核家族が営み、通り沿いに商いの場を持ち、中庭を挟んで奥に居住する形式であった。
ように、一街区内に交流が起きそうな共
高齢化や後継ぎ不足により現在はこの仕組みがうまく機能していない。商店街の衰退で生まれた空き
通のプログラムを配置する。
地をいかしながら、あらゆる主体がシェアして暮らす新しい町家を考える。
時間軸を考慮した柔軟性のあるまちづくり
多くの人々を巻き込むためのプログラム
5年
・カルチャースクール
10 年
15 年
中心市街地を持続可能にしていくためのプログラムとして
カルチャースクールを提案する。カルチャースクールとは
地域住民や県外から訪れた人を講師として招き、体験型プ
ログラムを中心とする地域の誰もが通うことのできる学校
のようなものである。ただ技能を習得するだけでなく、多
世代間の交流を通して新たな文化を育むことを目指す。公
民館活動が盛んな飯田のまちにカルチャースクールを導入
まちなか大学
体験工房
多目的スペース
することで、中心市街地に新たな魅力を付加する。
・駅の多機能化
■まちづくりの前提
電車を待つだけではない、様々
リニア開通後
・商店
・駐車場
→小さな世界都市の実現
中心市街地は空洞化が進み
駐車場が増加している。空
駅とりんご並木を緑で結ぶ
次第に緑地が増加
まちに緑が広がる
な出会いやアクティビティの
ある新しい駅にする。駅を人々
が日常的に訪れる場にする。
電車やバスを待つ
が、利用率は37%にとど
まっている。丘の上には公
共施設や学校を始め多くの
fig.1
fig.2
少ない。かつて居住者がい
緑の広場 / 駅
利用率
た駅南側は特に人通りが少
■駅周辺は飯田市が整備
37%
なくなっている。
のの、商店に訪れる人々は
新たなまちの担い手を呼び込む
→多世代が集まるサスティナブルな都市の実現
・南北断面
城下町の町家の間口割が残
緑の路地 / 街並みの修景
■観光集客施設は飯田市が整備
■町家を新築
緑の屋根
オープンな
内部空間
通り沿いは商店など
が入る
緑の交差点/通り町とりんご並木の交点
二階は住戸
まちに立体的に
にぎわいを創出
fig.4 りんご並木
fig.3 裏界線
北側=明
fig.5 通り町の緑地帯
南側に建物のある裏界線は
飯田駅
人形劇フェスタ お練り祭り
文化と経済の集積交流拠点
観光拠点
JR, 路線バス
黒田人形
竹田人形
竜西地域
竜東地域
今田人形
霜月祭り
阿南町
天竜舟下り
天竜川
街へ続く道
緑があるのは町家や寺社の
fig.6
fig.7
まちの緑被率が下がり美観
的にも環境的にも魅力に乏
るほど美しい街並みのほとんどが失われてしまった。当
リニア駅
広域交通拠点
南信州の玄関口
駅前広場
しいまちになってしまう。
時の航空写真を見ると、田畑の中に中心市街地が広がっ
丘のまちフェスタ
オケ友音楽祭
豊丘村
ていたことがわかる (fig.2)。大火後、早急に GHQ の指導
のもとで先進的な防災都市として生まれ変わり、現代に
東京方面
おひさま進歩
学輪 IIDA
積しており、コンパクトでヒューマンスケールなまちで
市役所
街地の空洞化が進んでかつてのにぎわいやコミュニティ
らの地域と首都圏を結ぶ玄関口の役割を果たす。特にこれまで充分に脚光を浴びていなかった天竜川よ
が失われ、閑散としている (fig.7)。それでも、飯田市は
り東側の竜東地域の魅力を発信していかなくてはならない。それに対し中心市街地は、これまでに育ま
昔から市民活動が盛んなこともあり、イベントが行われ
と呼ばれ市民に親しまれてきた中心市街地ならではの価値をこれからのまちづくりにいかしていく。
公民館活動
モーニングウォーク
fig.8 市民活動がさかんな飯田市
る週末などには、今でも多くの人々が中心市街地に訪れ
ている (fig.8)。
三連蔵
緑の軸
( 通り町 )
りんご並木
一階には劇場が入る
駅からの動線とりんご並木の交点を面的に利用できるスクエアにする
■通り町は飯田市が整備
■通り町
車道を1車線
残して緑道化
中央通り
路地に対して建物を開く
■民家をリノベーション
緑のカーテン
緑のテラス
■飯田市が補助をして個人で取り組む
■飯田市が補助をして個人で取り組む
■個人の活動がヒートアイランドの抑制と修景
につながる新しいかたちのまちづくり
屋上を
有効利用
住宅の機能
を利用
光客を呼び込んだとしても中心市街地の
空洞化を食い止めることはできない。中
回遊性
知久町
心部に定住人口を増やすことで景観を整
えながらまちに回遊性を生み出し、生活
移転が始まり、スプロールが進んだ。その結果、中心市
れてきた都市生活をいかして飯田地方の文化と経済の集積交流拠点としての役割を果たす。「丘の上」
ピアゴ
ある。しかし、70年代に入って次第に商業施設の郊外
南信州地方には飯田市以外にも個性的で豊かな文化や歴史を持つ市町村が数多くあり、リニア駅はそれ
RC のビルを
スケルトンにする
緑の軸 / りんご並木への動線
を目的としたものである。そのため、観
縦軸と裏界線に接している (fig.6)。行政の主要施設も集
喬木村
多くの人々が集うための大屋根と広場
中心市街地の商店のほとんどは日常利用
飯田駅
裏界線は飯田の重要な都市の骨格である (fig.3,4,5)。また、
他の都市に比べて細長い形状の建物が多く、ほとんどが
■ビルをリノベーション
中心市街地活性化との連携
も引き継がれている。当時整備された防災道路や緑地帯、
大鹿村
表通り、緑の路地、裏界線と一体的に使う
まま駐車場が増加すると、
街である (fig.1)。1947 年の大火で信州の小京都と言われ
松川町
泰阜村
中庭や玄関先である。この
飯田の中心市街地は江戸時代に城下町が発展した商業の
中川村
南木曽町
町家と一体的に使う
て良い環境とは言えない。
りんご並木や緑地帯以外で
駒ヶ根市
飯島町
阿智村
車道
伊那市
名古屋方面
元善光寺
裏界線
・駐車場の増加に伴う緑被率の減少
菱田春草
高森町
よこね田んぼ
路地に面したテラス
薄暗く、住環境として決し
中心市街地
遠山郷
で、道路の南側と北側では
大きく日照環境が異なる。
車道
ギフチョウの里
街区が東西方向に細長いの
南側=暗
上階も緑化する
交差点と一体的
に使える広場
る飯田の中心市街地では、
昼神温泉
水引工芸館
産直市場
■まちづくりの手法 / 市民が主体的に関わりながら、緑地と建築を同時につくり集積する
主要施設が集まっているも
→環境文化都市の実現、環境首都を目指す
大平宿
図書館
として利用する例が多い
→高付加価値多機能都市の実現
■リニア駅周辺と中心市街地の役割分担
カルチャースクール
き家を解体して月極駐車場
多様な文化やモノが集積し新たな価値を生み出す
豊かな自然環境の中で文化を育む
に と っ て 重 要 な 場 所 で あ る。
フィールドワークから
1947
周辺の人・情報・文化が集まるコンパクトシティ
多くの人々が訪れる駅はまち
■リサーチから見えてくること
■飯田市丘の上の歴史背景
動物園
りんご並木
人形美術館
銀座通り
美術博物館
観光動線
者、市内から訪れる人々、観光客にとって、
歩いて楽しいまちにする。今後の丘の上
小さな緑地
町家の中庭
とつながる
の持続性を考えると、商店街を含んだ中
心市街地全体を活性化していく必要があ
る。駅から美術博物館への観光動線を軸
に、まちに回遊性を創出する。
街を分断している通り町を緑道にする
路地に面して
縁側を付加
路地を取り込むようにリノベーションする
奥行きのある外壁をいかして
緑を立体的に整備する
既存の建物の壁面を緑化する
路地はパブリック
屋上はプライベート
緑地を上階にも設けて立体的に利用する