昇 汞 の消 毒 作 用 並び に毒 性 に関す る研 究

615.
777.
96
昇 汞 の 消 毒 作 用 並 び に毒 性 に 関 す る 研 究
第2編
昇 汞
の 毒 性 並 び に 昇 汞 中 毒 に 対 す る6, 8Dithiooctanoic
Acidの
効 果 に 就 い て
岡山大学医学部公衆衛生学教室(主 任:大 田原一祥教授)
専 攻 生 酒
井
朝
〔昭和34年9月28日
目
第1章 緒
生
受稿〕
次
言
第4章 実 験 成績
第2章 実 験材 料
第1節 LD50
第1節 実 験 動物
第2節 Thioctic acidに よ る解 毒効 果
第2節 使 用薬 品
第5章 総 括 並 び に考 按
第3章 実 験 方法
第1節 LD50の
第6章 結
論
文
献
測 定 に つ いて
欧文抄録
第2節 薬 剤 に よ る解 毒 に つい て
そ の解 毒 作 用 が著 明 で あ る と報 告 され て お り,又 岸
第1章 緒
言
田13),渡 辺14)氏 は昇 汞 中 毒 の 場 合,貧 血及 び 白血
昇 汞 の細 菌 に 対 す る消 毒 作用 につ いて は著者 が第
1編 に お い て 既 に 述 べ た 処 で あ る が,又
一 方生 体 に
球 増 多症 が 起 る事を 家 兎 に よ り実験 報告 して い るが
著 者 は,マ ウ スの腹 腔 内 注射 に よ り惹 起 され る中 毒
対 し て も強 い 毒 性 を 有 す る 事 実 は 既 に 先 人 の 多 数 の
症 状 が, Thioctic acid,即 ち6,8-Dithiooctanoic acid
報 告 に よ つ て 明 ら か に さ れ た 所 で あ る.
に よ り解 毒 され るか否 か を,そ の 血液 中の赤 血 球 数,
即 ち,
Frank
A
Patty1)に
量 は 内 服 に よ り 体 重1kgに
15mg,静
よれ ば 昇 汞 の 致 死
つ き1日10mg乃
脈 内 注 射 に よ る 量 は4mg乃
あ つ て,
G. Menesini2),藤
前5),藤
田 進6),小
至5mgで
田 広3),横
田4)及
び 久 保 田9),原
に,
氏10)等
中 毒 症 に 関 す る報 告 が あ るが,動
少 な い よ うで あ る.茲
び 門
G. Ricker
の 淡 黄 色 の結 晶 で あ
造を有 し
and
W.
に よ り昇汞 の慢 性
物特 にマ ウス に対
に 於 い て著老 は マ ウ スを 用 い
そ の 腹 腔 内 注 射 に よ る50%致
略 記 す る)測
死 量(50%
Letaldosis
生 体 内で は,活 性SH基
と し て 強 力 な解 毒 作 用
を発 揮 す る と考 え られ て い る.
第2章 実 験 材 料
定 に つい て の実 験 を 行 つ
第1節 実 験 動 物
た.
更 に 一 方1951年Reed等
て,
Thioctic acidは 融 点60∼61℃
つて,水 に 不溶,稀 ア ル カ リに 易溶 で あ り下記 の構
す る 毒 性 を そ の 致 死 量 に よ り検 討 し た 報 告 は 極 め て
以 下LD50と
白 血球 数 の変 化 及 び死 亡 数 を指 標と して 追究 した.
関7)氏 等 も 昇 汞 の 急 性 中 毒 症 に
つ い て 報 告 し て お り,更
Hesse8)及
至
Lipoicと
Rauch且11)及
S. M.12)に
が 肝臓 エキ スか ら単 離 し
名 付 け た.所
びSteigmann.
よ り,肝
謂Thioctic
F
&
実験 動物 と して は体 重13∼24gの
市 販 の雑 系 マ
acidが,
ウ スを使 用 し,食 餌 は雑 穀,野 菜 を飽 食せ しめて 一
Canaknatic
定 期 間飼 育 して その 発 育状 態順 調 な る事 を確 め た 後
障 害 に 用 い て 効 果 が あ り,殊
に
に実 験 に供 した.
132
酒
井
朝
生
第2節 使 用 薬 品
第1表 昇 汞 腹腔 内注 射 に よる 「マ ウ ス」
1.昇 汞(日 本 水銀 薬 品 会 社製 試 薬)溶 液調 製 に
の死 亡表
つ い て は 後 述 す る.
2. 6, 8-Dithiooctanoic acid,ナ
溶 液 に て,
ト リウ ム塩の水
1cc中 に チ オ ク ト酸5mgを
含 有 す る市
販 注 射 液(藤 沢薬 品 株 式会 社 製)を 使 用 した.
第3章 実 験 方 法
第1節 LD50の
測定 につ い て
昇 汞 は 生 理 的 食 塩 水 を以 て, 0.1%,
0.05%,
0.0365%,
0.025%の
0.075%,
各 稀 釈 液 を 作 製 し之
れ を 「マ ウ ス」 の 腹 腔 内 に 各 々体 重10gに
0.115ccに
対し
相 当す る量 を注 射 した.注 射 後7日 間 に
亘 り症 状 を 観 察 した.使 用 「マ ウ ス」 は10匹 宛1群
と して,対 照 群 を含 む6ケ の 実験 群 に 分 け,各 群 の
「マ ウ ス」 の体 重 の差 を 極 力 な くす るよ うに選 ん だ.
第2節 薬 剤 に よ る解 毒 効 果 に つ いて
「マ ウ ス」 に対 す る 薬 剤 の 解 毒 効 果 を実 験 す るた
め, Thioctic acidを 選 び そ の 腹 腔 内 に チオ ク ト酸
目 に5匹20%,第5日
水 溶 液 を,体 重10gに
つ いて0.007mgを
注 射 し,
2時 間 後 に,腹 腔 内 に 昇 汞 の 生理 的食 塩 水 稀釈 液
0.075%,
0.05%,
し, 0.115ccに
0.0365%の
ものを体 重10gに
対
相 当 す る量 を 注 射 して 実験 を行 つ た.
目 に3匹
3匹 で12%で
あ る.死
達 し, 88%が
死 亡 し,第6日
で12%,第6日
亡 例 は 第5日
目に
目 ま で に22匹 に
日 に3匹
死 亡 し,そ
の
後 死 亡 例 は 認 め な か つ た.
上 記 の 実 験 結 果 よ り, Van
der
Waerden氏
の面
更 に 「マ ウス」 を10匹 づ つ2群 に分 ち,第1を
昇 汞を 体 重10gに
つ き0.0055mg注
第2群 を チ オ ク ト酸 を 体 重10gに
射 の み の群,
つ き0.007mg+
上 記 と同 量 の 昇 汞溶 液注 射 の群 と して,各
々1週 間
積 法 に よ り4)5),第3∼
LD50を
求 め た.即
第8表
に 示 す 如 く,各
日の
ち
h… 観 察 さ れ た 死 亡 率
x… 使 用 せ る薬 物 量 の 対 数 ×10-2
後 及 び30日 後 に血 液 を採 取 し,血 液検 査 に 当つ て は,
尾 静 脈 をXylol一Alchoholで
拭 つて 拡張 せ しめ,小
メ スで傷 つ けて 湧 出 す る血 液 に つ いて,赤 血球 数 及
n… 各1群
L…log.
m…
の動 物 数
LD50
標準 誤 差
び 白 血球 数 を測 定 した.
とすると
第4葉 実 験 成 績
第1節 LD50
昇 汞 注 射 は 「マ ウ ス」 体 重1g当
0.0042mg,
0.0055mg,
り0.0027mg,
0.0085mg,
(1)
0.0115mg
の各 量 を 使 用 した.
注 射 後7日 間 に 亘 る 「マ ウ ス」 の死 亡状 況 は 第1
表 に 示 す 如 くで あ る.
(2)
又 昇 汞注 射 に よ る 「マ ウ ス」 の 中毒 症 状 の経 過及
び 転帰 の 概 要 は 第2表 の如 くで あ る.
即 ち死 亡 は 第1日 目 は2匹 で,全 死 亡 数 の8%,
第2日 日 に6匹24%,第3日
目に6匹24%,第4日
で あ る か ら 第3表
LD50を
求めると
よ り 死 亡 例 の 出 た第1日
目の
昇汞の消毒作用並 びに毒性に関す る研究
第2表 第3表 L=1.0478
log(1
der Waerden氏
m=0.008775
day
L=0.9987
m=0.0189
day
LD50)=0.9987±0.0189
症 状
法 に 依 るLD1
∴
LD50)=1.0478±0.0878
第4表 log(2
Van
中 毒
133
1 day
50(第1日
目)
LD50=11.16±1.02/1000=0.01116±
0.00102mg
Van
der
Waerden氏
法 に 依 るLD2
∴
2 day
0.001036mg
50(第2日
目)
LD50=9.97±1.036/1000=0.00997±
134
酒
第5表 L=0.9227
log(3
Van
der
井
Waerden氏
m=0.0333
day
朝
生
法 に 依 るLD3
∴
3 day
50(第3日
目)
8.37±1.08
LD50=
=0.00837±
/1000
LD50)=0.9227±0.0333
0.00108mg
第6表 L=0.8725
log(4
log(5day
log(6day
Waerden氏
Van
der
Waerden氏
m=0.03821
LD50)=0.7592±0.0976
4 day
50(第4日
LD50=
目)
7.12±1.09
=0.00712±
/1000
0.00109mg
法 に 依 るLD5
∴
LD50)=0.806±0.0382
m=0.0976
法 に 依 るLD4
∴
LD50)=0.8526±0.0313
第8表 L=0.7592
der
m=0.0373
day
第7表 L=0.806
Van
5 day
50(第5日
LD50=
目)
6.40±1.092
=0.0064±
/1000
0.001092mg
Van
der Waerden氏
法 に 依 るLD6
∴ 6 d
ay
50(第6日
LD50=
目)
5.74±1.25
/1000
0.00125mg
=0.00574±
昇汞の消毒作用並びに毒性に関す る研究
135
して 大 な る変 化 は 認 あ なか つ た.
以 上 の 成績 に よ り
1day
LD50=0.01116±0.00102mg
2day
LD50=0.00997±0.001036mg
3day
LD50=0.00837±0.00108mg
4day
LD50=0.00712±0.00109mg
5day
LD50=0.0064±0.001092mg
6day
LD50=0.00574±0.00125mg
又,白 血球 に於 て,第10表
の 如 く大 な る変 化 は 認
め なか つ た.
第10表 赤 血 球 数(被 験 群)単
位:万
な る こ と を 認 め た.
第2節 1.対
a)赤
Thioctic
照 群(昇
acidに
汞 液+生
よ る解 毒効 果
理 的 食 塩 水 注 射 群)
血 球 数(第9表)
注 射 前 平 均 値 は812万
で あ り, 7日
於 て も著 明 な 貧 血 症 状 を 呈 し,そ
を 示 し,注
射 前 の 赤 血 球 数 の2/3の
注 射 後30日
目 の 測 定 で は692万
く恢 復 し て 来 た が,未
に 止 り.所
目に は生 存 例 に
第12表 白 血 球 数(被 験 群)
の 平 均 値 は552万
数 値 に 減 少 し た.
を 示 し,比
だ 注 射 前 の85%強
較 的早
の赤 血 球 数
謂慢 性 中 毒症 の傾 向 を示 した,
第9表 赤 血 球 数(対
照 群) 単 位:万
3.死
亡 数 並 び にLD50の
変化
チ オ ク ト酸 ナ ト リ ウ ム 塩 水 溶 液 注 射 量 は,体
10gに
つ き0.007mg,昇
0.0085mg,
汞 注 射 量 は 体 重1g当
0.0055mg,
0.0042mgの
重
り
各 量を 使 用
し た.
b)白
注 射 後7日
血 球 数(第11表)
注 射 後7日 目に は 非 常 に 著 明 な増 多 症 の状 態 と
な り, 12, 384の 平 均 値 を 示 し,注 射 後30日 目 には
11,742の 平 均 値 とな り,生 存 例 で は あ る程度 の恢復
間 に 亘 る 「マ ウ ス 」 の 死 亡 状 況 は 第13
表 に 示 す 如 くで あ る.
第13表 Thioctic
acid併
用 注 射(腹
腔 内)に
依 るマ ウス死亡 表
を 示 して い るが,之 れ も依 然 増 多症 の状 態が 見 られ,
慢 性 中毒 症 の傾 向を 示 して い る もの と認 め られ る.
第11表 白 血 球 数(対 照群)
2.被 験群(昇
汞 液+チ
オ ク ト酸 ナ トリウム塩 水
溶 液 注 射群)
a)赤
血 球 数 及 び 白血 球 数(第10表,第12表)
赤 血 球 数 に 於 て は,注 射 前平 均 値 は801万 で あ り,
即 ち,第6日
目に1匹 死亡 した の みで, 7日 以 後
は死 亡 例 は見 られ なか つ た.
又,こ の結 果 を昇 汞 の みの 腹 腔 内注 射 の 場合 に認
め られ た死 亡表(第1表)と
比 較 す ると, 6日 目の
注 射 後7日 目に は786万 の平 均 値 とな り, 30日 目に
死 亡 数が チオ ク ト酸+昇 汞 液 注 射 例 で は 減 少 して
於 て 生 存 例 で は801万 の平 均 値 を示 し,注 射前 に比
お り,「 マ ウス」 の体 重1g当
り0.0055mg並
びに
136
酒
0.0042mgの
井
朝
注 射 に よ る場合 に死亡 数 が減 少 して い
Waerden氏
る こ とが認 め られ た.
よ つ て,先
Thioctic
L=0.7850
同 様 に, Van
acid併
用 例 のVan
求 め
der
Waerden氏
法 に 依 るLD6
50(第6日
目)
性 が割 合 に 急 性 に 来 た事 を 示 す もの と思 わ わ る.
LD50)=0.7850±0.03674
∴6dap
目 のLD50を
によ り
der
m=0.03674
log(6day
面 積 法 に よ り第6日
る と,第14表
に 求 め たLD50と
第14表 生
又,菊 地 氏18)は,昇
汞 内 服 の 場 合 に は,痂 皮 を
作 らず 深 く広 汎 に亘 つ て腐 触 作 用 が あ り,こ の た め
LD50=6.09±1.088/1000=0.00609±
に 胃粘 膜 及 び 実質 に急 性壊 死 を起 す と報 告 して い る.
0.001088mg
更 に高 濃 度 昇汞 液 の 場 合 は,粘 膜,皮 膚 に塗 布 に
即 ち,チ オ ク ト酸 併 用 の 場 合 に は6日 目のLD50
の 昇 汞 の 薬 量 は0.00609±0.001088mgを
昇汞
単 独 の 場 合 は0.00574±0.001036mgで
0.00035mg増
あ り約
加 す る こ とを認 め た.
よ り刺 戟 し,炎 症 を 招 くと云 わ れ るが,こ の 実 験 の
如 く,極 め て 稀釈 され た溶 液 で は,注 射 部 位 に は変
化 は認 め られ なか つ た.
2)
6, 8-Dithiooctanoic acidの 解 毒効 果 に つ いて
昇 汞 を 「マ ウ ス」 の 体 重1gに
第4章 総 括 並 び に 考 按
及 び0.0042mgの
1)昇
汞 の 毒 性 につ い て
つ き0.0055mg
腹 腔 内 注 射 を した 場 合 は,チ オ
ク ト酸 使 用 例 に於 て は,対 照 例 に 比 し各1匹 づ つ死
昇 汞 を マ ウ ス の腹 腔 内 に注 射 した 場 合第1表 に示
した如 く非注 射 群 には1匹 の死 亡 例 も認 め られ な か
亡 数 が 減少 して い る.
亦LD50を
比 較検 討 す るな らば,チ オ ク ト酸使 用
つ た こ と よ り,死 亡 は全 く昇 汞注 射 に よ る もの と推
例 は 明 らか にLD50が
増加 して い る.即 ち, 5日 目
察 され る.
まで は同 様 なLD50を
示 し て い る が, 6日 目に至
昇 汞 の 腹腔 内注 射 に よ る全 死 亡 例 は6日 目ま で に
認 め られ7日
目以後 に 於 て は1例 も認 め られ な か つ
り急速 に増 加 して い る.而 して,高 濃度 の昇 汞溶 液
に 於 て は,死 亡 数 に変 化 な く,こ の 事実 は チオ ク ト
た点 よ り, 1週 間の 観 察 に よ つて,そ の死 亡 数 は 全
酸 は,低 濃度 昇汞 に対 して は昇 汞 の 毒性 に対 しその
部 表 わ れ る もの と考 え られ る.
解毒 作 用 は 若干 効 果 が あ ると推 定 され る.
50%致 死 量 に 関 して はLG50とLD50の
二 つ の表
亦 赤 血 球 数 並 び に白 血球 数 の対 照 群 と の比 較 に於
リクロ ール
て も,チ オ ク 卜酸 の併 用な き場合 は, 1ケ 月 後 に於
エ チ レ ン等 の 如 く吸 入 に よ り中毒 を 起 す場 合 に 用 い
て も未 だ貧血 症 の 状 態 を呈 し,岸 田,渡 辺 氏 の報 告
られ, LD50は
注 射 に よ り中 毒 を 起 す 場合 にの み 用
の 如 く著者 の 実験 の結 果 に お いて も,白 血 球 増 多症
い られ る,昇 汞 で は吸 入 に よ る中毒 は 考 え られ な い
が 表 わ れ,慢 性 中毒 症 の状 態 に移 行 して い る よ うに
のでLD50で
考 え られ る.
わ し方 が あ り, LC50は
ベ ン ゾ ール,ト
表 わす こ とに し,そ の 計 算法 と して は
最 近 最 も よ く使 われ るVan
いた 昇 汞 のLD50は
den Waerden氏
全経 過 に 亘 り観 察 した 場合 に は,
更 に,対 照 群 に於 て は 著 明 な浮 腫 が観 察 され るが,
チオ ク ト酸 使 用 例 に は死 亡 例 と雖 も浮 腫 は認 め られ
対 し昇 汞
ず,之 れ は山 田 氏17)が 報告 の 如 くチオ ク ト酸 に よ
腹 腔 内 に 注 射 した時 に表 われ る事 実 を
る解 毒 作用 並 び に強 心 利 尿 の作 用 も亦 加 わつ て い る
第1表 に 見 る如 く 「マ ウス」 の体 重1gに
0.0055mgを
法を用
確 認 して お り,
LD50は
他 の 毒物 と 同様 に 経 過 日
数 が長 くな る につ れ て低 下 して い る,即 ち之 れ は毒
もの と考 え られ る.
以上 の如 く,チ オ ク ト酸 は体 内 に入 り,活 性SH
昇汞の消毒作用並びに毒性に関する研究
基 と し て,解
毒 作 用 を 発 揮 し,昇
体 内 のSH基
わ れ る が,之
汞 に よ る中毒 症 は
3
day
LD50=0.00837mg±0.00108mg
と親 和 性 が あ るた め に 惹 起 す る と い
4
day
LD50=0.00712mg±0.00109mg
5
dap
LD50=0.0064mg±0.00109mg
6
day
LD50=0.00574mg±0.00125mg
れ を 活 性SH基
と し て,解
亢 進 す る よ う に 補 給 し,予
毒作用を
防 的 に 作 用 す る も の と思
わ れ る.
2,
亦,先
に 森,荒
MethioninとB.
館 森20)氏
木19)氏
A. Lを
等 は,昇
Cystein
137
は 昇 汞 中 毒 に 対 し,
併 用 して 効 果 を 与 え て お り,
汞 中 毒 を 血 液 像 よ り追 究 し て,
Thioglykol酸Soda
Vitamin
が あ つ た と 述 べ て い る が,著
C等
が 効 果
6, 8-Dithiooctanoic
acidを
予 め
「マ ウ ス 」 に
与 投 す る 事 に よ り 死 亡 率 の 低 下(6day
0.00609mg±0.00108mg)並
血 球 数 の 減 少,白
び に,中
血 球 数 の 増 加)に
LD50=
毒 症 状(赤
対 し,若
干 の効
果 を 示 す こ と が 認 め られ た.
者の 実験 に よ りチ オ ク
ト酸 に も若 干 の 効 果 の あ る 事 が 判 明 し た.
稿 を 終 る に 当 り,終
第5章 結
昇 汞 の毒 性 に つ いて
よ りLD50を
論
「マ ウ ス 」 の 腹 腔 内 注 射 法 に
求 め,併
せ て チ オ ク ト酸 に よ る 解 毒 効
果 に つ い て 実 験 を 行 い,以
1.
Van
den
げ る と共 に御 助 言 を賜 わ つ た 緒方 助 教授 に謝 意を 呈
す.
(本 論 文 の 要 旨 は 昭 和34年6月
下 に 示 す 如 き 成 績 を 得 た.
Waerden氏
始 御 懇 篤な る御 指導 並 び に御
校閲 を 賜わ つ た 恩 師大 田原一 祥 教 授 に深 謝 の 意 を捧
法 に よ るLD50の
値は
第5回
中 国 地区 公
衆 衛 生 学 会 に 於 て 発 表 し た)
以 下 の 通 りで あ つ た.
1
day
LD50=0.01116mg±0.00102mg
2
day
LD50=0.00997mg±0.001036mg
文
1)
Frank,
A.
Toxicology
2)
G.
3)
藤 田 広,安
Menesini:
12号,
4)
Industrial
II,
Hygiene
and
538,
1939.
本 内 科 学 会 雑 誌,
43巻,
保 順 一;日
3,
No.
2,
場 小 太 郎:日
本 内 科 学 会 雑 誌,
891(昭30).
門 前 徹 夫,大
谷 博:広
島 医 学,
9巻,
4号,
藤 田 進:治
7)
小 関 忠 尚,前
野 直 一:京
53巻,
835(昭28)。
8)
G.
317,
9)
10)
療,
6号,
Ricker
267
and
W.
8号,
946(昭30).
都 府 立 医 科 大 学 雑 誌,
: Arzn.
eimittelforschng.,
5,
32,
Steigmann,
F.
Canaknati,
proc,
15,
岸 田
医 学 生 物 学,
2巻,
14)
渡 辺
北 海 道 医 誌,
20巻,
15)
小 沢 凱 夫:堀
学 編,
487,
and
Fed.
1956.
48号(昭17).
1413(昭17).
浩 綜 合 研 究 報 告 集 録,医
学 及 び 薬
713(昭29).
16)
黒 田 直:日
17)
山 田 弘 三:治
療,
菊 地 桂 助;日
本 法 医 学 雑 誌,
18)
S. M.:
本 法 医 学 雑 誌,
40巻,
5巻,
11号,
5号,
241.
59(昭33),
5巻,
4号,別
輯,
93(昭26),
Hesse:
Arch.
path.
Anat,
19)
森 正 義,荒
号,
近 の 職 業 病,
働 科 学 季 報,
F.
13)
(1915).
久 保 田 重 孝:最
原 一 郎:労
37巻,
12)
116
(昭31).
6)
Rauch,
1955,
1021(昭30).
8号,
11)
1949.
Zaechia
横 田 万 之 助,的
44巻,
5)
patty,
Vol.
献
1巻,
54,初(昭28).
2号,
46
20)
(1952).
木:日
館 脇 正 治,外
号,
本 消 化 器 学 会 雑 誌,
50巻,
12
12巻,
12
40(昭28).
1147(昭28).
山 英 典.日
大 医 学 雑 誌,
138
酒
Studies
on
the
2.
The
Toxicity
生
Action
Mercuric
Chloride
of
of
朝
Antiseptic
of
Part
井
Mercuric
and
Chloride
6.8-dithiooctanoic
Toxicity
and
Antidotal
Effect
Acid
By
sao
Department
of
public
(Director:
For
the
purpose
experiments
of
to
mercuric
acid:
obtained
The
(adecrease
determining
LD50
solution
the
LD50
day
LD50=0.00997•}0.001036mg
3
day
LD50=0.00837•}0.00108mg
4
day
LD50=0.00712•}0.00109mg
5
day
LD50=0.0064•}0.00109mg
6
day
LD50=0.00574•}0.00125mg
6.8-dithiooctanoic
chloride
in
the
solution,
erythrocyte
of
with
experiments
Medical
on
M.
D.
School
)
mercuric
chloride
the
mice
given
the
antidotal
the
author
performed
intraperitoneal
effect
of
injection
6.8-dithiooetanoic
results.
determined
2
University
Ohtawara
toxicity
compound
also
following
values
LD50=0.01116•}0.00102mg
When
this
Okayama
Kazuyoshi
the
of
and
day
mercuric
suppressed.
of
out
1
2.
the
chloride
and
1.
find
Health
Prof.
Sakai
acid
it
count
by
Van
is
injected
has
and
been
an
den
Waerdens
to
found
increase
mice
method
prior
that
in
to
are
follows:
intraperitoneal
fatality
the
as
leucocyte
rate
and
count)
injection
toxic
are
symptoms
somewhat
of