英国大使館・IGESセミナー「新しい気候変動国際枠組みへの期待及び各国の緩和策」 Institute for Global Environmental Strategies IGES‐WRI共同研究 ~2030年温暖化対策シナリオの比較分析~ 倉持壮 地球環境戦略研究機関 英国大使館・IGESセミナー 「新しい気候変動国際枠組みへの期待及び各国の緩和策」 2015年5月14日、東京・英国大使館 11 英国大使館・IGESセミナー「新しい気候変動国際枠組みへの期待及び各国の緩和策」 Open Climate Networkのご紹介 • 2011年にWRIが立ち上げた、気 候変動政策シンクタンク・研 究所連合 • 気候変動対策の野心度向上の ための比較可能な情報や分析 を提供 – 国内エネルギー・気候政策 – 途上国への気候資金 • IGESは発足当初より参加、これ までに3本の共同研究報告書 22 英国大使館・IGESセミナー「新しい気候変動国際枠組みへの期待及び各国の緩和策」 IGES‐OCN:最新研究報告書 • 2030年温暖化対策シナリオの 比較分析 – 著者:倉持壮、脇山尚子、栗山昭久 – WRIチームがフレーミングおよびデータ解析 で協力 – OCN参画機関がレビュー • 5月初旬発表(4月末に最終原稿発表) ダウンロード http://pub.iges.or.jp/modules/envirolib/view.php?docid=5974 33 英国大使館・IGESセミナー「新しい気候変動国際枠組みへの期待及び各国の緩和策」 主要メッセージ • 「2度目標と整合」を含む最大努力レベルのシナリオ は、1990年比16‐39% 削減の幅に分布(原子力シェア は0‐29%) • エネルギーミックス案のように既存原発を再稼動さ せるならば、「2℃目標」に向けた国際社会の取り組 みに十分資する削減レベルは1990年比25% (2005/2013年比32%)以上 • 上記削減レベルに到達するには、2020年以前の省エ ネや、火力発電燃料の選択(石炭かガスか)が大変 重要になる 44 英国大使館・IGESセミナー「新しい気候変動国際枠組みへの期待及び各国の緩和策」 2030年温暖化目標とエネルギーミックス GHG排出量:実績と将来目標 2020年目標(2005年比‐3.8%、1990年比+5.8%) 1600 GHG排出量 (実績はLULUCF除く、Mt‐CO2e/年) 2030年エネルギーミックス案 1400 1200 京都議定書第1約束期間 目標(1990年比‐6%) 1000 ? 800 600 出典:経産省 (2015) 400 第4次環境基本計画 (2012) 200 2050年80%削減(1990年比) 0 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050 年 • 2030年約束草案(案):2013年比‐26%?(2005年比‐25%、1990年比‐18%) 「2℃目標」達成に向けた国際的取り組みにおいて、十分な貢献 と評価されるレベルか? 55 英国大使館・IGESセミナー「新しい気候変動国際枠組みへの期待及び各国の緩和策」 比較した文献およびシナリオ • 2011年以降に発表された研究について、以下の条件 を満たした計7本の論文より48シナリオからデータを 抽出 ① 個別技術レベルで導入ポテンシャルを評価し、具体的な政策 手段についても検討した研究 ② 国内目標策定において政府にシナリオを提供している研究機 関やその他世界的に認知されているエネルギー研究機関(IEA など)が参画している研究、または査読付学術誌に掲載されて いる研究 • 「技術固定シナリオ」や「原子力>35%シナリオ」は 検討せず 66 英国大使館・IGESセミナー「新しい気候変動国際枠組みへの期待及び各国の緩和策」 実施した2つの分析 分析A:主要指標の比較分析 分析B:「GHG削減とエネルギー目標」 のセットの検討 • シナリオを4つの「削減努力 • 方程式を導出 レベル」に区分 • 以下の主要指標について、 比較したシナリオデータを基に回帰 • GHG削減レベル別(1990年比‐20%, 削減努力レベル別のレンジ 25%, 30%, 40%)にエネルギー需給目 を分析 標のセットを試算 – GHG総排出量 – 再エネ/CO2回収貯留(CCS)電力 • 環境省再エネポテンシャル報告書 (2015)も参考 シェア – 原子力シェア – 火力発電シェア – 最終エネルギー消費 77 英国大使館・IGESセミナー「新しい気候変動国際枠組みへの期待及び各国の緩和策」 分析A:「削減努力レベル」の区分 • シナリオのデータを以下の4つのレベルに区分 • 「技術固定シナリオ」は扱わず • 「レベル4」シナリオ同士でもかなりの努力差あり レベル レベル1 概要 レベル2 現行の施策に加え、現在計画または検討されている施策の 一部または全てが導入されると想定しているシナリオ。 レベル3 レベル4 レベル2以上、レベル4未満の全てのシナリオ。 次の3条件のいずれかを満たしているシナリオ:(1)先 端技術の最大導入を想定、(2)2050年80%削減との整合 性を示唆、または(3)2℃目標との整合性を示唆。 現行の施策は将来にわたり継続するものの、追加的施策の 導入を一切考慮していないシナリオ。 88 英国大使館・IGESセミナー「新しい気候変動国際枠組みへの期待及び各国の緩和策」 分析A:GHG削減 • 検討・計画中の政策の効果を見込んだレベル2シナリオ群は、’90年 比3‐20%削減 • 「最大努力」レベル4のシナリオ群は、’90年比16‐39%削減 • 日本の2030年目標案:単純比較ではレベル2‐3のレンジ GHG排出量(LULUCF除く、Mt‐CO2e/年) 1600 2020年目標(2005年比‐3.8%、1990年比+5.8%) 1400 レベル 1(現行政策の継続) 1200 1000 800 INDC案(LULUCF除く): 2013年比‐23.4% (1990年比‐15.1%) 600 400 レベル 2(現在計画中・ 検討中の政策の導入) レベル4(先端技術の最大導入、 2050年80%削減、 「2℃目標と整合」シナリオ等): 1990年比16‐39% 200 2050年80%削減(1990年比) 0 1990 2000 2010 2020 年 2030 2040 2050 99 英国大使館・IGESセミナー「新しい気候変動国際枠組みへの期待及び各国の緩和策」 分析A: GHG削減と最終エネルギー消費 TFC vs. 2010 levels 0% ‐5% ‐10% ‐15% ‐20% ‐25% ‐30% GHG emissions vs. 1990 levels 20% 10% 0% Level 1 政府案 Level 2 Level 3 Level 4 ‐10% ‐20% ‐30% ‐40% ‐50% • レベル4でもGDP成長想定の違いにより大きな差 • 政府想定(1.7%/年)を超える2010年GDP平均成長率を想定したシ ナリオなし 1010 英国大使館・IGESセミナー「新しい気候変動国際枠組みへの期待及び各国の緩和策」 分析A: GHG削減と原子力シェア Nuclear electricity share 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% GHG emissions vs. 1990 levels 20% 10% 0% ‐10% Level 1 政府案 Level 2 Level 3 Level 4 ‐20% ‐30% ‐40% ‐50% • 「原子力シェア高=GHG削減率大」とはなっていない 1111 英国大使館・IGESセミナー「新しい気候変動国際枠組みへの期待及び各国の緩和策」 分析A: GHG削減と再エネ/CCS電力シェア 10% 15% RE/CCS electricity share 20% 25% 30% 35% 40% 45% 50% GHG emissions vs. 1990 levels 20% 10% 0% ‐10% 政府案 Level 1 Level 2 Level 3 Level 4 ‐20% ‐30% ‐40% ‐50% • レベル4シナリオでは再エネ/CCSシェア27‐47% • 2030年にCCS導入を想定したシナリオは少数 1212 英国大使館・IGESセミナー「新しい気候変動国際枠組みへの期待及び各国の緩和策」 分析A: GHG削減と石炭火力シェア Unabated coal‐fired power share in total electricity generation 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% GHG emissions vs. 1990 levels 20% 10% 0% Level 1 Level 2 政府案 Level 3 Level 4 ‐10% ‐20% ‐30% ‐40% ‐50% • レベル4でも石炭シェア>25%のシナリオあり • GHG削減20%以上のシナリオでの石炭火力シェアはいずれも21%以下 1313 英国大使館・IGESセミナー「新しい気候変動国際枠組みへの期待及び各国の緩和策」 分析B: GHG排出90年比‐25%を例に • 回帰方程式(n=48, R2=0.99)に よると、原子力シェア15% では: Low gas-to-coal ratio High gas-to-coal ratio – 再エネ:30%(中位対策) – 最終エネ(2010年比):‐20% – 火力発電に占めるガス:60% 達成できるのか? 1414 英国大使館・IGESセミナー「新しい気候変動国際枠組みへの期待及び各国の緩和策」 省エネ:2020年以前の努力が一層重要に! 一人当たりの消費は2004年頃から減少に転じている COP19 (ワルシャワ、2012年)で提出された2020年目標の、前提となる最 終エネルギー消費は2012年と同レベル • 人口は減少するため、一人当たり消費は再び増加 2020年までの頑張りで2030年20%削減も可能に • • Projected TFC for the Warsaw Target 450 400 TFC (left) 4.0 3.8 3.6 350 3.4 300 3.2 250 TFC per capita (right) 3.0 200 2.8 150 2.6 100 2.4 50 0 1990 ‐0.9% per year 1995 2000 2005 2010 Historical 15% reduction vs. 2010 (immediate action) Year 2015 2020 2025 Total final consumption per capita (toe per person) Total final consumption (Mtoe HHV) 500 2.2 2.0 2030 15% reduction vs. 2010 (delayed action) 25% reduction vs. 2010 (delayed action) 1515 英国大使館・IGESセミナー「新しい気候変動国際枠組みへの期待及び各国の緩和策」 火力発電の燃料選択:再エネ同様に重要! 火力発電に占めるガス比率60%は技術的には 問題なし、しかし・・・ • 2030年ミックス案:石炭火力26% • 現時点で21GW以上の石炭火力発電所建設 計画(CCS 検討なし)が進行中 • これら計画分だけで約130Mt‐CO2/年を2050 http://www.co2remove.eu/Sections.aspx?section=418.435 年までロックインする可能性(1990/2005 年排出量の約10%) ストランデッド・アセットの議論は? 2050年80%を目指すなら、最低限 CCS ‐ Readyを義務付けるべきでは? CCS導入のための市民との対話は? Photo: Reformatorisch Dagblad (http://www.refdag.nl/polopoly_fs/protest_tegen_co2_opslag_1_75407!image/ 3330452508.jpg_gen/derivatives/landscape_300/3330452508.jpg) 1616 英国大使館・IGESセミナー「新しい気候変動国際枠組みへの期待及び各国の緩和策」 今後に向けて • 約束草案はあくまで「自主的な」目標案である。 しかし、国際社会からは「取り組み不十分」と評価 される可能性あり。 • 約束草案提出後は、国際社会への説明責任をどう果た していくのかがカギ。 • 世界的な動向によっては日本もより積極的な貢献を 求められる可能性があり、今後の展開を注視したい。 – INDC提出後の国際的な相互検証and/or協議プロセス(田村発表) – OECDの「今世紀後半にゼロエミッション」提言、 世銀のカーボン・ プライシング提言や、石炭からのdivestment などの動き – Etc. 17 17 17 英国大使館・IGESセミナー「新しい気候変動国際枠組みへの期待及び各国の緩和策」 ご清聴ありがとうございました URL: www.iges.or.jp Email: [email protected] 1818
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