第9回

シナプス電位
5)シナプス電位
ニューロン間の情報伝達
→ シナプスを介する
シナプス前神経末端
走査型電子顕微鏡による化学シナプスの観察
仕組み → 電気シナプスと化学シナプス
機能 → 興奮性と抑制性伝達
(1)電気シナプス
シナプス前ニューロンの活動電位に伴う内向き電流
→ ニューロン間にある細胞質の連絡路(= ギャップ結合)を 通って流れ
→ シナプス後ニューロンに電気緊張性電位として伝えられる
トランスミッター放出といったワン・クッションの必要がない
信号の伝達 → 非常に速やか(100μsec以下)
素早い生体応答を必要とする運動経路
ザリガニやキンギョの逃避行動
(2)化学シナプス
多くのシナプスは化学シナプス
シナプス前ニューロンとシナプス後ニューロンの間
= シナプス間隙と呼ばれる細胞外空間
活動電位発生に伴って終末内に流入した電流
→ シナプス間隙を通って外へ流出
→ シナプス後ニューロンを直接脱分極できない
次のニューロンへの信号の伝達
→ 神経伝達物質、トランスミッターをシナプス間隙に放出
→ 拡散しながら、シナプス後ニューロンに到達
→ 受容体タンパクと結合
→ 膜のチャネルが開き、膜電位が変化(= シナプス電位)
活動電位という電気的信号
→ トランスミッターという化学的信号に変換
→ シナプス電位という電気的信号に再変換
電気シナプスに比べ、信号伝達に0.5ミリ秒以上の遅れ
= シナプス遅延 (電気信号から化学信号への変換過程)
(3) 神経伝達物質の放出
活動電位の伝播
膜脱分極とそれに伴う電位依存性Ca++の開口
トランスミッターの合成と貯蔵
Ca++の流入
シナプス小胞の細胞膜への融合
トランスミッターの
シナプス間隙への放出
膜の回収
チャネルの開・閉口
シナプス後細胞の興奮・抑制
レセプターへのトランスミッターの結合
① ニューロンそれぞれ、トランスミッター合成
シナプス近傍のシナプス小胞に貯蔵
活動電位の伝播
膜脱分極とそれに伴う電位依存性Ca++の開口
トランスミッターの合成と貯蔵
Ca++の流入
シナプス小胞の細胞膜への融合
トランスミッターの
シナプス間隙への放出
膜の回収
チャネルの開・閉口
シナプス後細胞の興奮・抑制
レセプターへのトランスミッターの結合
シナプス小胞 → アクティブゾーンに集積
= シナプス後膜に向かい合っている部分
アクティブゾーンの近傍
→ 脱分極でゲートが開く電位依存性Ca++チャネルが高密度に存在
② 活動電位がシナプス前ニューロンの神経終末に到達
③ 細胞膜が脱分極 → 電位依存性Ca++チャネルが開口
活動電位の伝播
膜脱分極とそれに伴う電位依存性Ca++の開口
トランスミッターの合成と貯蔵
Ca++の流入
シナプス小胞の細胞膜への融合
トランスミッターの
シナプス間隙への放出
膜の回収
チャネルの開・閉口
シナプス後細胞の興奮・抑制
レセプターへのトランスミッターの結合
④ 細胞外から細胞内へCa++流入
(細胞内 Ca++ 濃度は10-6M以下、細胞外は10-3M程度)
活動電位の伝播
膜脱分極とそれに伴う電位依存性Ca++の開口
トランスミッターの合成と貯蔵
Ca++の流入
シナプス小胞の細胞膜への融合
トランスミッターの
シナプス間隙への放出
膜の回収
チャネルの開・閉口
シナプス後細胞の興奮・抑制
レセプターへのトランスミッターの結合
⑤ Ca++流入を引き金にシナプス小胞がシナプス前膜と融合
⑥ トランスミッターのシナプス間隙への放出
活動電位の伝播
膜脱分極とそれに伴う電位依存性Ca++の開口
トランスミッターの合成と貯蔵
Ca++の流入
シナプス小胞の細胞膜への融合
トランスミッターの
シナプス間隙への放出
膜の回収
チャネルの開・閉口
シナプス後細胞の興奮・抑制
レセプターへのトランスミッターの結合
⑦ トランスミッター → シナプス間隙中を拡散
シナプス後膜に達し、後膜中の受容体と結合
活動電位の伝播
膜脱分極とそれに伴う電位依存性Ca++の開口
トランスミッターの合成と貯蔵
Ca++の流入
シナプス小胞の細胞膜への融合
トランスミッターの
シナプス間隙への放出
膜の回収
チャネルの開・閉口
シナプス後細胞の興奮・抑制
レセプターへのトランスミッターの結合
⑧ 受容体のチャネルが開口 → イオンの流入・流出
<興奮性 or 抑制性>
活動電位の伝播
膜脱分極とそれに伴う電位依存性Ca++の開口
トランスミッターの合成と貯蔵
Ca++の流入
シナプス小胞の細胞膜への融合
トランスミッターの
シナプス間隙への放出
膜の回収
チャネルの開・閉口
シナプス後細胞の興奮・抑制
レセプターへのトランスミッターの結合
⑨ シナプス後ニューロンの膜電位が変化
= シナプス電位の発生
活動電位の伝播
膜脱分極とそれに伴う電位依存性Ca++の開口
トランスミッターの合成と貯蔵
Ca++の流入
シナプス小胞の細胞膜への融合
トランスミッターの
シナプス間隙への放出
膜の回収
チャネルの開・閉口
シナプス後細胞の興奮・抑制
レセプターへのトランスミッターの結合
⑩ 終末部では膜を回収
→ 新たなシナプス小胞用の膜として活用
活動電位の伝播
膜脱分極とそれに伴う電位依存性Ca++の開口
トランスミッターの合成と貯蔵
Ca++の流入
シナプス小胞の細胞膜への融合
トランスミッターの
シナプス間隙への放出
膜の回収
チャネルの開・閉口
シナプス後細胞の興奮・抑制
レセプターへのトランスミッターの結合
(4) シナプスの様式
興奮性シナプス 主にNa+チャネルが開き → 細胞内へ Na+ が流入
→ シナプス後ニューロンが脱分極
= 興奮性シナプス後電位 (EPSP)
伝達物質: アセチルコリン、グルタミン酸
抑制性シナプス
主にCl-チャンネルが開き → 細胞内へ Cl- が流入
→ シナプス後膜が過分極
= 抑制性シナプス後電位 (IPSP)
伝達物質: GABA(γアミノ酪酸)
(5)シナプス統合作用
1個のシナプスの活動によって生じる応答の大きさ = 数 mV
シナプスの場 → 樹上突起上
距離と共に急速にその大きさは減衰
↓
その場でただちに活動電位を発生させられるわけでない
一個の神経細胞に形成されるシナプス = 数千から1万個
興奮・抑制という入力信号のパターン
受け取るシナプス電位の総和
→ シナプス後ニューロンの活動性(興奮の程度)が決まる
= シナプス統合作用
軸索の起始部(軸索小丘)の閾値 → 非常に低くなっている部分 = Na+チャネル高密度 → 通常この部分で活動電位が発生 = スパイク発火帯
ひとつの入力を繰り返し受ける = 時間的加算
たくさんの入力を同時に受ける = 空間的加算
→ 閾値を超えれば、スパイクが発生
ニューロン
刻々これらのシナプス入力を足し引き演算し、
その結果をスパイク信号として軸索に送り出すかどうかを
決定している