平成27年度消防防災科学技術賞 一次審査通過作品について[PDF]

平成27年6月22日
消防庁消防研究センター
平成27年度 消防防災科学技術賞
一次審査通過作品について
本表彰制度は、消防防災機器等の優れた開発・改良を行った方、消防防災科学に関す
る優れた論文を著した方、原因調査に関する優れた事例報告を著した方を消防庁長官が
表彰することにより、消防科学技術の高度化と消防防災活動の活性化に資することを目
的として、平成9年度から実施しています。
平成27年度においては、作品募集が5月8日(金)に締め切られ、全国の消防機関、
消防機器メーカー等から、総計93編(機器等の開発・改良51編、科学論文17編、
原因調査事例報告25編)の応募がありました。今般、一次審査を行い、以下の作品を
一次審査通過作品といたしました。
今後、最終選考を経て、9月頃受賞作品が決定される予定です。
連絡先
消防庁消防研究センター 研究企画室
〒182-8508
東京都調布市深大寺東町 4 丁目 35 番 3 号
電話 0422-44-8331(代表)
F A X 0422-44-8440
メールアドレス [email protected]
平成27年度 消防防災科学技術賞
一次審査通過作品一覧
消防職員・消防団員の部 / 消防防災機器等の開発・改良 10編
作 品 名
主たる応募者 (個人または団体)
消防隊員保護用ミスト噴霧金具の開発 姫路市消防局
ほねプロン
防火衣等収納システムの開発
日本橋消防団 第2分団
概 要
塚原 昌尚
姫路市消防局では、平成24年に発生した化学プラント工場で発生した爆発火災において、
燃焼しているアクリル酸廃液を浴びて多くの消防職員が負傷した。この教訓を活かして、
ヒートストレス対策も含めて消防隊員を火災による火災輻射熱、燃焼物の付着から守ること
を目的に「消防隊員保護用ミスト噴霧金具」を開発した。
和田 智恵子
『ほねプロン』は、「AED(自動体外式除細動器)の使い方」「心肺蘇生」の応急救護訓
練等際に用いる補助具です。体の外側からでは解りづらい「胸骨と心臓の位置関係」が良く
解るように作りました。胸骨のどの部分をどのように押すと、心臓から血液が送り出される
のかが、一目で解るため、「AEDの使い方」や「心臓マッサージの方法」を、一般の方々
に効果的に伝えることが出来ます。
豊橋市の消防団員数1,214名のうち、74.4%にあたる903名が被雇用者である。火災が発生し
た場合、ほとんどの団員が職場や出先から直接現場へ行き、現場で防火衣等を着装し、消火
活動を行っている。従来の消防団車両は防火衣・防火帽・長靴を専用で収納するスペースが
なかったため、防火衣一式を荷台等から取り出すため、着装するまでに時間を要していた
が、今回開発した専用の収納システムの活用により現場到着から着装、消火活動に移行する
までの時間を1分~2分短縮することが可能となり、さらに団員も確実に防火衣が着装できる
ことで、活動時の安全性も向上した。
豊橋市消防本部
波平 将朋
救急活動時の静脈路確保において、現行のストレッチャーに付属してる輸液バック吊り下げ
用アームでは設定、離脱に時間を要し、病院到着後の救急室ストレッチャーへの移動が不便
であった。今回開発した吊り下げ用三脚によって、設定、離脱が容易になり、静脈路確保さ
れている患者のベット移動が迅速に行えるようになった。
はしごクレーン救助時の三連はしごの
東京消防庁
転倒を防止する器具の開発
安永 豊
消防救助操法の基準(消防庁告示)に定める、第四編、第三章、第四節、はしごクレーン救
助操法等の三連はしごの確保要領について、従来の足裏で下部滑り止めゴムを押さえる確保
要領では、足裏でしっかりと確実に押さえることが必ずしも十分とは言えず、そのような状
態でさらに救助ロープの操作をすることで、三連はしごの転倒危険が高い状態で活動を行っ
ていた。今回、開発した器具(以下、「器具」という。)を、三連はしごの下部滑り止めゴ
ムにはめ込み、その器具を足で押さえる構造としたことにより、その危険が解消され安全、
確実、迅速にさらに容易な体勢で確保できるようになった。
分離式ワンタッチ担架(Rescue
熊本市消防局
Porter)の開発
現行の警防活動で、傷病者の体位変換を行わずに収容や救出できる布製の資機材はない。傷
病者の苦痛軽減と隊員の体への負担を最小限にし、より簡単に、安全で、スムーズな警防活
動が行える分離式ワンタッチ担架(Rescue Porter 以下:レスポ)の開発を
下西ノ園 大地
行った。最大の特徴は、担架を上下に分離し、ワンタッチで装着できること。レスポを活用
することで、さまざまな状況の傷病者に対応でき、レスポ最大の特徴が傷病者と隊員の負担
を軽減し、迅速な活動に繋げることができた。
救急現場及び車内で使用する輸液バッ
宮古島市消防本部
グ吊り下げ用三脚の開発
打ち込み用ビット金具の開発
三方活栓汚染対策固定器具の開発
車載空気呼吸器ブラケットの開発
東近江行政組合消防本部
東近江行政組合消防本部
札幌市消防局
積載型静電気拡散性オイルパンの開発
京都市消防局
について
川嶋 伸悟
救助現場では、各種救助資器材を使用する際に支点を必要とする事が多く、救助活動を行う
上で支点の存在は重要です。しかし、現場によっては、田畑や構造物のない平地もあり、思
い通りの場所に支点がありません。今回開発した打ち込み用ビット金具は、削岩機の振動を
利用し、大バール自体を地面に打ち込み、支点として使用するものです。現有する車載資器
材を使用して、容易に強固な支点の構築ができ、迅速な救助活動が可能となりました。
野田 敦史
救急活動において救急救命処置は清潔操作が求められていますが、清潔な環境を確保するこ
とが困難な状況です。また、薬剤投与の際にホールド感もなくラインが交差し投与方向もわ
かりにくく不便でした。今回開発した三方活栓汚染対策固定器具は、これまであった汚染・
ホールド感・投与方向の問題点を解決することができ、清潔に、より確実かつ迅速な処置に
繋がります。
松花 将克
これまでの車載空気呼吸器ブラケットは、車内での着装時に固定部を解除する動作が必要で
あり、狭い助手席内での装着には周辺のAVM等の機器に接触する危険性もあった。また、
取り外し操作を必要としない製品も海外製のため国内生産の埋め込み式シートには適合しな
いものもあった。今回開発した空気呼吸器ブラケットは、国内生産シートに適合できるよう
コンパクトな設計とし、海外製品も含め様々なサイズの空気呼吸器に適合するよう、サイズ
調整を可能とした。また、将来的な空気呼吸器や空気ボンベ径の変化にも対応できるように
調整可能な設計とした。
堀尾 泰寛
ガソリン等の流出事故において使用する現行のオイルパンは、金属製で、常時緊急車両に積
載できないため、迅速で安全な現場対応に苦慮するところであった。今回開発した、オイル
パンは、非金属製で、軽量のため、取扱い易く、常時緊急車両に積載できるものとした。ま
た、オイルパンの使用に伴う、火花発生のリスクを限りなくゼロとした。外側に、組立式の
ハードケースを用いるとともに、内側に、漏水防止のためのシートを用いた。静電気による
二次災害発生防止の観点から、各素材は、静電気拡散性のものを使用している。展開時の大
きさ 65×44×24.9(H)㎝ 容量54.9ℓ 重さ3.9 kg
消防職員・消防団員の部 / 消防防災科学に関する論文 8編
作 品 名
主たる応募者 (個人または団体)
災害時要援護者の避難支援に関する検
討について
大津市消防局
~GISとQRコードの融合から~
車両における電気配線(ハーネス)火
北九州市消防局
災の出火機構に関する研究
加圧防排煙設備に係る消防活動支援性
能評価のための複数室の簡易温度算定 東京消防庁
モデルの構築
「命のQRコード」システムの考案
久留米広域消防本部
「伝える広報」から「伝わる広報」へ 神戸市消防局
概 要
木村 尚
本稿では、災害時要援護者の避難支援計画に資するようGIS(Geographic Information
Systems:地理情報システム)の持つ地理情報や解析機能を効率的に利用し災害時要援護者
の地理的分布を可視化することにより、災害時要援護者の距離的アクセシビリティや避難阻
害要因の現状を把握する。更に、QRコードを使用することにより時々刻々と変化する避難状
況の把握を行い避難所運営支援の一助とする。また、仮想空間での検証を行うことで災害時
要援護者の避難支援方策や災害対策本部における意思決定手段の可能性を探った。
(key words)災害時要援護者 GIS 情報の可視化 QRコード 避難支援
松本 龍一
本研究は、当消防局管内で平成26年5月に、屋外駐車場に駐車後の貨物自動車から発生し
た車両火災において、出火箇所を電気配線(ハーネス)としたが、出火箇所の一次側に設置
されたヒューズに作動が見られないことから、短絡状況を再現し、発熱状況等を確認するこ
とで、ヒューズの安全性やその作動限界等、火災危険について検証実験を行うこととしたも
のである。実験結果から、グラファイト化した配線被覆等を経由した間接的な短絡が起こっ
た場合、ヒューズが作動する電流が流れず、出火に至る場合があることが確認でき、火災調
査時には、一次側のヒューズが作動していないからとの理由で、短絡火災を否定することは
できないことを実証した。再現実験結果を公開することで、今後の火災調査業務の参考とし
ていただきたい。
田嶋 一雅
消防法の性能規定化に伴い、消防活動拠点における消防隊員の安全確保のために加圧防排煙
設備に求められる要件が整理された。消防活動拠点の性能評価を行う上で、消防活動拠点に
隣接する室の温度を計算し、消防活動拠点への加圧給気量が算定される。消防法では建築物
の限定的な条件から求めており、建築物個々の子細な条件を考慮できない。本研究では、現
行法に比べ建築物個々の条件を考慮できる複数室内の簡易温度算定モデルを理論的に構築し
た上で、火災実験を実施し、その算定モデルの妥当性を検証した。そして、現行法の区画内
温度の算出結果と本モデルの算出結果から本モデルの特徴を明らかにした。
髙橋 浩
本研究は、病院や行政機関等と連携し、通院患者、要援護者や高齢者福祉、障がい者など
の、病歴や処方薬、住民個人の基本情報を入力したQRコード(シール等)を広く住民へ配付
しておき、救命に必要な活動や身元不明者情報として活用するもの。住所、氏名、生年月
日、血液型、緊急連絡先及び病歴情報などの個人情報が入力されたQRコードシールや印刷紙
を、携帯電話や保険証等の身近な所持品に貼り付けておき、救急隊や警察、医療機関など
が、携帯電話のカメラやタブレット端末で読み取り、救急業務や急性期医療に役立てようと
するもの。
上村 雄二
火災原因調査結果の活用として重要な業務に火災予防がある。各消防本部でも様々な取り組
みを行っているが,神戸市消防局予防課調査係では火災予防のための「広報」の方法につい
て,今までの発信するだけの「伝える広報」を見直し,受け取り手にきちんと「伝わる広
報」を目指して,一昨年から火災予防のための再現実験動画の発信を新たに実施している。
これは実験動画の概要や工夫,評価について記載し,今後の展開について報告するものであ
る。
三重折りホースシステムの研究
神戸市消防局
緊急消防援助隊等における効果的な後
神戸市消防局
方支援活動の研究
病院前脳卒中スケールによる脳卒中判
京都市消防局
別に関する研究について
高橋 信人
火災現場において、狭所・通路・階段及び階段区画等様々な場所で火掛りする上で、ホース
延長の重要性を疎かにできないことから、島田折り・狭所巻きの長所を生かし、短所を排除
した三重折りホースシステムを考案した。現在、主流で使用されている島田折りを崩すこと
なく、狭所・通路・階段区画等でホース延長を容易にしたのが三重折りホースシステムであ
る。
丑子 哲平
緊急消防援助隊派遣時等に編成される後方支援隊は常設・専任ではなく、「いつ」・「誰
が」後方支援隊に選出されてもおかしくない状態にあるにもかかわらず、明確な「マニュア
ル」が存在しないことから、後方支援活動に使用する車両・資機材等の運用にかかる問題点
を洗い出し、これらについての解決方法を検討するとともに今後の後方支援活動への提言や
改善を図ることとし、近い将来発生が危惧される南海トラフ巨大地震等の大規模災害に備え
るため、研究を実施した。
山岡 辰朗
本研究は、当消防本部において現在運用されていない急性期の脳卒中発症に対する 脳卒中
判定法について、脳卒中治療ガイドラインに掲載されているデータを疾病別に 症状の発症
率から点数化を行い、脳卒中スケールを作成し、スケールの精度と有効性について検証した
もの。
消防職員・消防団員の部 / 原因調査に関する事例報告 14編
作 品 名
貨物自動車のハーネスからの火災
低圧進相コンデンサによる建物火災
主たる応募者 (個人または団体)
北九州市消防局
北九州市消防局
充電式カイロから出火し、リコールに
北九州市消防局
至った事例
低圧進相コンデンサ火災の予防対策に
姫路市消防局
ついて
概 要
水迫 祐介
駐車場内でエンジン停止中の貨物自動車から出火し、貨物自動車のエンジンルーム及び車内
の一部を焼損した車両火災である。出火原因については、現場見分結果及び関係者の回答か
らエンジンルーム内にある電気配線から出火したものと推定し、火災調査を行った。当該電
気配線は、他に比べ焼けの程度が強く、複数の短絡痕があるものの、一次側にあるヒューズ
は作動していないため、電気配線に短絡が生じた際にヒューズが作動せず、火災に至る可能
性について再現実験を行った。実験の結果、電気配線上に間接的な短絡が生じ、ヒューズの
溶断電流に至らない程度の電気的異常が継続的に続いた場合、短絡部分から発火し、火災に
至る可能性があることが確認された。短絡が生じた要因については、経年劣化及び走行時の
振動等によりハーネス内の電気配線が露出し、ボディと接触したと考えられるため、今後の
予防対策として、定期点検及び日常点検時に電気配線被覆の劣化程度を確認する必要がある
と考える。
岸 幸一朗
本火災は、耐火造4階建て建物の1階倉庫に設置していた、分電盤の一部を焼損した建物火
災である。出火原因は、分電盤に設置されていた、低圧進相コンデンサ内部の絶縁破壊によ
る短絡である可能性が極めて高いことが判明した。昭和50年以前に製造した低圧進相コン
デンサには保安装置がなく、他都市でも複数の出火が発生している。
松本 二郎
ショッピングセンター共用通路において、客のバッグ内の充電式カイロから出火し、充電式
カイロ、バッグ及び財布等の一部を焼損したものである。現場見分で得た関係者の回答と北
九州市消防局、NITE及び輸入販売元による合同調査の結果、出火箇所については、充電
式カイロに内蔵されたリチウムイオン電池と断定し、出火原因については、リチウムイオン
電池内部のセパレータの損傷部分で短絡したと推定する事例である。火災予防対策として、
北九州市消防局は報道機関への情報提供、また、輸入販売元は充電式カイロのリコールを決
定、製品を回収した。
塚原 昌尚
昭和50年(1975年)以前に製造された低圧進相コンデンサには安全装置が内蔵されて
おらず、また経年劣化による寿命の領域にあることから、同コンデンサから出火の危険性が
あることは以前から関係機関により指摘されている。そのため、(一般社団)日本電機工業
会や各消防機関においてホームページやマスメディア等を活用して、注意喚起を実施してい
る。しかし、低圧進相コンデンサに起因する火災(以下「低圧進相コンデンサ火災」)は、
当市消防局管内においても毎年、発生している状況である。そこで、平成26年に低圧進相
コンデンサ火災の発生をストップさせる目的で、同コンデンサ火災の予防対策を、電気供給
者である関西電力㈱姫路支店、(一般財団)関西電気保安協会、コンデンサ等のメーカー団
体の(一般社団)日本電機工業会と連携協力して、官民により取組んだ。本事例は、出火原
因の特定に留まらず、当市消防局の管轄を越えた兵庫県内5消防本部と連携し、広域的な行
政区域内での予防対策の実施に結びつけることができた事例である。
業務用電気フライヤーの火災調査報告 東近江行政組合消防本部
蛍光灯電極部からの火災事例
誘導灯基板の焼損事故について
京都市消防局
名古屋市消防局
亜酸化銅増殖発熱現象の火災調査方法 神戸市消防局
穀物貯蔵サイロの爆発火災事例に関す
る原因究明手法及び消防隊活動時の危 横浜市消防局
険予知について
上林 広季
コンビニエンスストアの業務用電気フライヤーから出火し、店内を一部焼損、不適切な初期
消火で店長が負傷した火災である。一部始終を記録した監視カメラの映像によると繁忙時間
帯であればパニック行動の危険が高かったと言える。当該機器の安全装置が機能せずに調理
油が加熱され続けたことが出火原因であり詳細な調査をしたところ、安全装置の故障は使用
状況に因るもので機器の異常を認識してからの対応も不適切なことが判明した。調査結果か
ら、営業本部及びフランチャイズ経営者に出火経過を説明しつつ従業員教育の徹底を指導
し、製造者へは保守サービスにおける管理強化を要請したものである。
伊藤 香平
本件は,複合型商業施設1階及び2階に入店している家電量販店1階天井に設置された埋め
込み式4灯型蛍光灯器具からの出火事案であり,営業中にレジ係の従業員が臭気を感じ4灯
型蛍光灯を確認すると,4灯あるうちの1灯の蛍光ランプ口金付近から断続的に煙を発生
し,火花が出ていた状態であったものを,他の従業員及び警備員に知らせ,電源を切り,焼
損した蛍光ランプを外して鎮火させた事案である。本火災の調査にあたっては,詳細な火災
調査を積み重ね,蛍光ランプの発光時に発生する物質の付着箇所を判明させ,製造会社ごと
における蛍光灯本体と蛍光ランプの安全装置の詳細な調査を実施し,蛍光灯本体と蛍光ラン
プを異なる製造会社のもので組み合わせた場合において出火する可能性の有無を追及し,蛍
光灯からの火災危険を店舗及びグループ関連会社に日常点検及び従業員教育への徹底等で再
発防止対策を講じさせるに至ったものである。これらは,各蛍光灯製造会社の蛍光灯本体と
蛍光ランプの独自の対策を詳細に調査し,安全装置の機能を把握したうえで,新たな電路が
形成される等の高い電圧が供給されることを検証し,出火にいたるメカニズムを追及した結
果であり,全国展開する家電量販店の火災危険の排除につながる原因調査活動であった。
以上のことは,原因究明に携わった火災調査員の地道な調査の賜物であり,当局の職員に周
知することで,地域住民への防火指導等で同様火災の再発防止にも繋がるものである。
松本 凌
今回の発表の経緯は、平成26年5月、名古屋市北区内の老人福祉施設において、誘導灯が
焼損する事故が発生しました。老人福祉施設は、災害時要援護者である高齢者や身体の不自
由な方が多数生活している施設であり、早朝に自動火災報知設備のベルが鳴動し、異臭が発
生したことで施設内はかなりの混乱があったとのことです。何故「安心・安全」を提供する
ための設備が焼損したのか?その原因及び改善策を検証しましたので紹介させて頂きます。
澤田 邦彦
現在さまざまある亜酸化銅存在の確認方法について諸方法の問題点を検証した結果、亜酸化
銅増殖発熱現象を火災発生の主原因と立証するためには、その亜酸化銅が腐食や火災熱に
よって2次的に生成したものではないと確認する必要性をつきとめた。そこで、金属組織の
観察方法を応用することによって、銅製品内部に増殖した亜酸化銅の大きさ・形・位置を正
確に観察する方法について詳細に検証を行った。ここでは、実火災による亜酸化銅の検証結
果を基にした、フローチャート式の総合的な調査方法を提案する。
岩方 清光
飼料用大豆が貯蔵された穀物サイロで発生した爆発火災事例である。火災調査は、現場活動
とともに複数の分析機器を用いて粉塵爆発の打ち消し、好気性微生物の存在及び貯蔵大豆か
ら発生した可燃性ガスの存在を確認したもので、大豆自体が「着火物」と「発火源」になり
えた事実を立証している。また、火災・爆発の要因は複合的であるが、大規模閉鎖空間を有
する建物火災の潜在的危険性と出場消防隊活動の要注意点についても提言する。
在宅酸素療法中の患者宅で発生した火
大阪市消防局
災の調査報告
無煙ロースターに起因する火災の調査
大阪市消防局
報告
鏡面仕上げ(平面)ステンレス板によ
大竹市消防本部
る収斂火災の調査報告について
医薬品中間体を製造する危険物一般取
扱所にて静電気により出火した事例の 富山市消防局
調査報告
車両からの出火事例の調査報告
堺市消防局
北尻 宗嗣
在宅酸素療法中の患者宅において酸素濃縮装置等を焼損した事例である。当初、酸素濃縮装
置自体からの出火を疑ったが、鑑識及び検証実験等を行った結果、酸素吸引中に、誤って
マッチの火が鼻カニューレに着火し、その後、燃焼が鼻カニューレ等の内側を通って、酸素
濃縮装置本体側に向け移動していったため、二次的に装置本体が燃焼したものと判明した。
また、酸素吸入中の喫煙による火災は依然として発生していることから、再現映像を作成す
るとともに、酸素濃縮装置の使用者や業界に対し危険性を再周知するなど、類似火災防止に
向けて取り組んだものである。
西田 秀光
焼肉店で使用されている下引きダクト方式の無煙ロースターから出火する火災が後を絶たな
い。そこで、当該火災の予防には火災予防条例の遵守が不可欠であることを証明するインパ
クトのある映像資料を作成し、視覚的にその重要性を訴えるべく再現実験を実施した。実験
に使用する無煙ロースターには、透明なダクトを取り付け、ダクト内の燃焼状況を可視化で
きる構造とした。その結果、映像資料の獲得に加え、出火に至る経緯を目の当たりにするこ
とができた。本稿では、実験結果及びそれから導き出された火災予防のポイント並びにそれ
を基に実施した火災予防活動を紹介する。
中村 将也
本火災は,石油コンビナート等特別防災区域内の非危険物施設「保全倉庫」の軒先を焼損し
た建物火災です。 結論から言うと,出火原因は廃材置場に鏡面仕上げを施したステンレス
板を放置したことで生じた「収斂火災」ですが,一見,凹凸のない平面加工された板でし
た。平面から焦点を形成するメカニズムを究明し,再現実験を機に,事業所が約40年間
行っていた取扱いを見直し,再発防止を施すまでに至る調査経緯を紹介するものです。当該
事案は,大事に至りませんでしたが,高度な産業技術には思いもしない大惨事の可能性を有
することを,事業所職員とともに認識した事例です。
小関 啓介
現場の状況、関係者の供述から静電気により出火した可能性が高いと考えられた。こういっ
た事案の場合、静電気が出火原因と安易に決めがちだが、鑑識や現場見分を丁寧に実施し、
他の出火原因を確実に否定することができた。また、静電気放電の種類を特定するための実
験を行った。最終的に放電の種類を特定するには至らなかったが、詳細な現場調査や実験方
法等の考察を通し、事業所に対して適切な指導をすることができ、加えて、署員の静電気に
関する教養も図られた。類似火災防止のために、類似事業所に対して注意喚起文を発出し予
防面においても効果を得た。
内田 篤志
駐車直後の軽四輪自動車から出火し、同車両が1台焼損した火災である。鑑識の結果、走行
により赤熱状態のエキゾーストマニホールドとインシュレーター上に、エアクリーナーイン
テークダクトが脱落し出火に至ったものと結論付け原因説明を実施し、類似事案を質問する
と、同様の事故が数件ある事を聴取する。後日、火災予防の重要性を再三担当者に説明説得
し、鑑識終了から約2カ月で約65万台に対するリコールとなる。リコール後の回収率を追
跡調査すると、1年で約70%が回収でき、リコール後の広報が重要ではなく、如何に探究
心を持って忠実に車両鑑識を実施するのが重要であるかを痛感する。
一般の部 / 消防防災機器等の開発・改良 5編
作 品 名
主たる応募者 (個人または団体)
窒素富化空気を用いた移動式防消火装 株式会社モリタホール
置の開発
ディングス
大口径金具のフェールセーフ設計
<安全弁機能付き結合金具>
透明樹脂製蓄圧式消火器の開発
リング型表示灯付発信機の開発
櫻護謨 株式会社
概 要
廖 赤虹
核燃料再処理工場は可燃性溶媒の火災対策として、二酸化炭素消火設備を設置している。固
定式消火設備は地震で破損する恐れがあるため、新たに、水系以外でかつ、地震やテロに強
いバックアップ用の消火装置が求められている。これら課題の解決を目的に、信頼性と操作
性及び安全性を重視した動式窒素富化空気(NEA)防消火装置の実用化を果たした。本装置
は、車両に搭載した窒素分離膜とコンプレッサからの圧縮空気を用いるため、燃料さえ確保
できれば、大気から消火剤のNEAを無限に供給できる。また本装置は、原子力施設のみなら
ず、重要通信施設や石油施設などの防消火にも利活用可能である。
堀本 章
消防用ホースは内圧で膨らみ、エネルギーを蓄積するので、結合金具が破損離脱すると金具
が高速で飛び非常に危険である。ホース体は万一破損してもたてに繋がった状態でよこ糸が
切れて水を噴き出す(切断したホースが暴れない)たて糸を多く使用したフェールセーフ設
計が知られている。しかし、フェールセーフ設計の金具は存在しなかったので、万一の事故
時でも「金具が繋がった状態で、塑性変形させるために設けた部分が伸びて高圧水を噴出す
る」安全至上の結合金具を開発した。大口径ホースの場合は蓄積エネルギーが大きく金具も
重いので、直接人に当たると人命に係わる可能性があり、特に有効である。
株式会社 初田製作所
消火活動において,現行の鉄・ステンレス等の金属製消火器は消火器質量が負担となり,高
齢者や女性にとって持運びや操作が難しかった。今回開発した樹脂製蓄圧式消火器は,本体
容器の素材に樹脂を採用することで,消火器の軽量化を達成することができた。また,金属
製消火器では実現できない透明な容器であるため,消火薬剤の固化や異物混入の有無を外部
から確認できる他,本体容器の腐食・老朽化による破裂事故の発生リスクや,火災現場にお
ける爆発事故の発生リスクを低減した。
能美防災株式会社
従来、発信機とその位置表示灯は別々に設置され、夜間補助照明がない場合、表示灯の明か
りでは発信機の押ボタン部が視認しづらかった。本製品では、表示灯を発信機と一体に設置
し、発信機の周囲がリング状に点灯することで、表示灯の明かりで発信機が照らされ、発信
機押ボタンの夜間視認性を向上した。また、設置時の厚みを壁面とほぼフラットにすること
で、学校や幼稚園の廊下や体育館、店舗の廊下などで搬入経路にあたる場所に設置された場
合に誤って機器に接触して人が怪我をしたり、機器が破損するなどがなくなるように安全面
にも配慮している。
航空機から安全・迅速・正確に林野火
災を消火するドロップコントロールシ 株式会社イルカカレッジ
ステムの開発
大規模な森林火災は航空機による上空からの散水消火が行われるが、高高度での散水では水
が霧状になり偏流され消火効果が低く、低高度における消火活動は火災に巻き込まれる危険
を伴い墜落事故なども発生している。そこで高高度から安全に消火水を火災に投下するため
に、消火水を5分間でゲル化し細分化出来る、「ゲルパック消火剤」を開発した。消火水を
半固体化することによって、投下位置を正確に予測することが出来る。その予測システムを
地図データと対応させた「管制システム」、及び「投下装置」を開発した。これを消火航空
機に搭載することによって、最速で確実な消火を行うことが出来る。