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表1
表1-1
ブアナ・トゥンガール村は
綺麗で快適、そして平和な村
である。
ほとんどの村人が水田で
農家として働いている。
贅沢な暮らしは出来ないが、
それでも村人は皆幸せだ。
満面の笑みで日々を過ごす。
⾒た目はこれがブアナ・
トゥンガール村の現状だ….
チッ!
チッ!
チッ!
だが、その完璧な⾒た目からは誰もが知らず、予想してない、
ミステリアスな暗い部分と物語が潜んでいる。
そしてこの物語は
その一部である。
一人の少年ハスビ
と彼の水牛、
アタンの物語だ。
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あんた絶対時間忘れてるでしょう?
遅刻して机の上に⽴たせれても
知らないよ〜
それ
何持ってんの?
何だよ、双子か。
今俺は妄想で忙しいのに。
昨日さ、捕まった魚が
飛んでる夢を⾒たんだ。
でも二人とも
可愛いから、
ま、いいか。
羽根が生えてて、
バッタみたいに…
いや、違う!
トンボみたいな羽根が…!
泣きぼくろが
ある方がアニサ。
アタン!
聞いてんのか?
もし魚が鳥みたいに飛べたら
楽しいだろうな。
もしアタンも飛べたら一緒に
あっちこっち飛び回ろうぜ。
バッタだ!
作り方分かるの?
お姉さんの方は
アニカ。
当然だよ!
かっこいいだろう?
次、他の草虫作る。
ガブガブ
二人の顔、体型、声はまったく一緒だから
結構間違う人もいる。
あの泣きぼくろだけが二人の違いだ。
ハスビ!
どうして
アンタまだここに
いるの?
ん?
結構いい出来じゃん。
ちょうだい〜
はぁ?
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これ難しいよ。
何回も何回もやり
直さないといけない
から。
でもそれに挑戦して
みなよと言ったのは
あたしじゃない。
はは〜これは俺の最初の作品だよ。
簡単に人にあげると思う?
だから、
あたしに
ちょうだい
ってば〜
だからあたしが
もらうべきよ。
これ俺のだから、
誰にあげるか
俺の勝手だろう。
二人のもうひとつの違いだ。
よく喋る妹と違い、
姉は無⼝で⼈⾒知りする。
あまり二人と会話をしてないけど、
俺は姉さんの方の性格が好きだ。
もうおなかいっぱい?
帰ろうぜ、学校の時間だ。
ほれ、
アニカ。
俺の最初の作品
お前にやるよ、
アニサじゃなくて。
モォォ!
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あたしでも
いいじゃない。
あたし達全部共有
するんだから。
あの双子はいつもこんな感じだ。
負けず嫌いな妹、いつも譲っている姉。
ダメだよ!
2⼈の性格はもう分かり切っている。
俺たち3人小さいころから一緒だ。
お互い家もそんなに遠くはない。
それに、学校でも同じクラスだ。
パッ!
それでも俺の一番の友達はアタンだ。
アタンと一緒に時間を
過ごすのが好き。
だけど、いつもアタンと過ごせない、
父さんの田んぼで手伝いをするから。
結構ハードな仕事してる。
アタンの背中に乗って村を回りに⾏くの
はすごく楽しい。
アタンの上からの村の雰囲気と眺めは
面白くて、そして広く⾒える。
アンタ早く帰って
準備した方がいいわよ。
後でまた学校で!
おい、
返せ!
でもアタンとの会話はもっと面白い、なぜなら
アタンは俺の⾔うことを理解できるから。
もっとすごいのは、アタンは俺が言ってる事を
絶対他の人にばらさない。
だから、俺はアタンに色んな秘密を語った。
だからアタンは俺にとって一番の友達だ。
じゃ、アタン!
風呂入って、
ご飯食べて、
学校に⾏くから。
アニサ、
もういい加減にしろ。
お前も
気を付けろな。
早く⾏こう!
無視〜無視〜
モォォォ!
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