抗凝固剤・抗血小板剤投与時に外科的手術を行う

抗凝固剤・抗血小板剤投与時に外科的手術を行う場合の処置について
先日、ある歯科医の方から、低分子ヘパリンを使用している透析患者の抜歯について問い合わせがありました。通常、薬物は半減期の5∼6倍時
間が経てば血中から消失し、効力がなくなると考えられます。例えば、ローヘパ(低分子ヘパリンの1つ)の場合、半減期が2.5∼5.5時間ですの
で、一日経てば、ほぼ影響を考えなくてよくなります。アスピリン、チクロピジン、EPAのようなものは、血小板に対して不可逆的に作用します。このよ
うな場合は、血小板の寿命(約10日)を目安とします。以下に一覧を示しますので、参考にしてください。
抗凝固剤・抗血小板剤
成分
商品名(メーカー)
ワルファリンカリウム
ワーファリン
(エーザイ)
休薬時点
大手術の場合→ 5∼
7日前に内服中止。ヘ
肝臓でビタミンK依存性(
血液)
凝固
パリンNaの持続点滴
因子の第Ⅱ(
プロトロンビン)
・
第Ⅶ・
に変更 5000単位を1
第Ⅸ・
第Ⅹ因子の合成を阻害
回静注。10∼20単位
/kg/時間で調節
バファリン81
(ライオン)
アスピリン
10∼14日前
シクロオキシゲナーゼを抑制、血小
板で TBX A2 生成を抑制
10∼14日前
血中の濃染顆粒から放出されるAD
Pを特異的に抑制し、Adenyl cyclase
を活性化。血小板cyclicAMPを増加
(
glycoprotein IIb / IIIa の阻害)
10∼14日前
TBX A2 の代わりに TBX A3 を生成
(
アラキドン酸から TBX A2、エパ
デールから TBX A3 を生成、エパ
デールはアラキドン酸と競合)
バイアスピリン
(バイエル)
塩酸チクロピジン
パナルジン
(第一)
イコサペントエン酸
エチル:EPA
エパデール
(持田)
シロスタゾール
塩酸サルボグレ
ラート
ベラプロストNa
プレタール
(大塚)
3∼4日前
アンプラーグ
(三菱ウエル
ファーマ)
1∼2日前
ドルナー
(東レ−山之内)
塩酸ジラゼブ
リマプロストアル
ファテクス
ペルサンチン
(ベーリンガー)
アンギナール
(山之内)
コメリアン
(興和)
プロレナール
(大日本)
抗血小板作用
その他
なし
緊急の場合→ 直ちに服用を中止。ビ
タミンK2を30∼50mg静注。効果不十
分時は新鮮血液、血液凝固因子製剤
を投与
不可逆的
作用は血小板の寿命(
約10日)
と共に
消失
不可逆的
作用は血小板の寿命と共に消失。経口
後、血中濃度のピークは1∼3時間後、
血小板凝集抑制作用は投与後24時間
で最大。(
血中濃度のピークと効果との
間にずれが有る)
半減期1.6時間
経口投与後6時間で最高血中濃度。2
4時間で消失
不可逆的
血小板凝集抑制作用は弱い。ADP凝
集は抑制しない。
経口後3∼6時間で最高血中濃度。半
減期α相3時間/β相18時間
Phosphodiesterase を特異的に阻
害。cyclicAMP 濃度を上昇させ血小
板凝集を抑制
可逆的
血小板、平滑筋の 5-HT レセプター
に対する選択的拮抗
可逆的
ADP・
Epi
・
コラーゲン・
アラキドン酸凝
集に対し用量依存的に凝集抑制
1∼2日前
Phosphodiesterase を阻害。
cyclicAMP 増加
可逆的
また、臨床用量では、抗血小板作用は
弱い
2日前
Phosphodiesterase を阻害。
cyclicAMP 増加
可逆的
生物学的半減期約4時間
1∼3日前
Adenyl cyclase 活性化による血小板
cyclicAMP 増加
可逆的
経口後1時間で最高血中濃度
1∼2日前
TBX A2 受容体の阻害
可逆的
経口後2時間で最高血中濃度。半減期
6時間
血小板凝集抑制作用は PGI2 の50%
と弱い
ロコルナール
(持田)
エステリフール
(高田-塩野義)
ダルテパリンN
フラグミン
低 a
(ファルマシア)
分
子 パルナプリンNa ローヘパ
(清水)
ヘ
パ
クリバリン
リ
(ダイナボット)
ン レブパリンNa
ローモリン
(シェーリング)
経口後30∼60分で最高血中濃度、半
減期1.11時間、投与後6時間で作用
消失
可逆的
オパルモン
(小野)
トラピジル
経口後1∼2時間で最高血中濃度。半
減期0.69時間
Adenyl cyclase 活性化による血小板
cyclicAMP 増加
1∼2日前
プロサイクリン
(科研)
ジピリダモール
作用機序
抗Xa因子活性に比較して、活性化部
分トロンボプラルチン時間の延長が軽
度、半減期1.78時間
1日前
1∼2日前
アンチトロンビンI
I
I
に結合し、血液凝
固因子(Ⅱa、Xa、VIIa、Ⅸa、XIa、
XIIa)
の活性を阻害
ⅡaよりもXa因子への選択性が高く、活
性化部分トロンボプラルチン時間の延
長が軽度、半減期1.27∼1.95時間
1日前
*誤り等ありましたら、ご教唆ください。
半減期2.5∼6時間
鹿児島県薬剤師会 薬事情報センター
恵谷 誠司
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