こんな展示会みたことある? - 中小企業総合展

こんな 展示会
?
見たことある
独立行政法人 中小企業基盤整備機構 販路支援部 販路支援課
Tel:03-5470-1525 http://www.smrj.go.jp
特集
新価値創造展
個々の企業の持つ価値を再認識
中小企業の新たな一歩をバックアップ
2014年11月19日
(水)〜21日
(金)
に東京ビッグサイトで開催された
「新価値創造展」
。
今までの展示会にはないコンセプトで臨んだ第一回目。
新価値創造とは何か?他の展示会との違いは何か?について紹介する。
より広い
販路開拓へ
開始から10年経過した中小企業総合展を、既存商品の販路開拓のみで
なく、新市場・新事業創出をも支援するものとして大胆に見直した。その
中で注目したのが、企業価値や強みを再認識し、その先にある新しいチャレ
ンジ、新サービスを生み出す取り組みに対し積極的に支援していくこと。チ
ャレンジ精神旺盛な企業の強みを発信することで技術・サービスが新たに
組み合わさり、新しい魅力の発見に繋がる。それらの新価値創造活動をサ
ポートしていくという視点から、今までにない展示会「新価値創造展」が
生まれた。
3つの
テーマを設定
新価値創造展の特徴は、大きく3つのテーマを設定したこと。一つ目は、
健康長寿社会×ITビジネスと題し、医療・介護・健康IT関連の企業を募り、
新ビジネスを創ることを目指した「ウェルネス」
。二つ目は、地域コミュニ
ティの再生に貢献するビジネスを創ることを掲げ住宅・福祉・環境・エネ
ルギー関連の企業を募った「グリーン」
。三つ目は、ひとの感性・技能を活
かした技術ネットワーキングを進めると題し部品・素材・加工・機械・機器・
IT関連企業など多様な業界から参加可能なテーマを設けた「スマート」
。
3つのテーマをもとに、幅広い裾野をベースとして新たなチャレンジに積
極的な中小企業と新しいアイディアや技術を求める大企業などが刺激し合
い、これまでにない事業創出の一助をになうのが「新価値創造展」だ。
専門家の
サポート体制
運営における大きな特徴は、テーマごとに専門家をおいて出展者の「新
価値創造」を積極的にサポートする体制を整えたことだ。専門家の役割は
大きく分けて2つある。ひとつは、新価値創造を加速させる手助けをするこ
と。もうひとつは、新価値創造に向け先行的な取り組みを行っている企業
を集め、
「特別展示」として監修したことだ。さらに特別展示では、
“具現
化ソン”と称して、アイディアを有する者が出展者との会話のなかで、ビ
ジネスに昇華するヒントを得ることを狙ったワークショップ、ショートセミ
ナーなどを行うことにより、取り組みの普及を目指した。
次のページでは、ウェルネス、グリーン、スマートの監修者、中小機構
の担当者にそれぞれの立場から「新価値創造展」について話してもらった。
1
2
特集 新価値創造展
ウェルネス監修
柴崎 哲也
未来志向の中小企業が
ウェルネスの明日を創る
と教育を支援するツールを提供してい
ボレーションが実現し新たな価値が生
くは「勘」や「感性」
「洞察力」を必
る企業の方に特別出展としてご参加い
み出されることを願っています。
要とし、数値化したりデジタル化する
ただきました。高度な医療技術を支え
のが難しい部分です。しかも、これら
る匠の技や医療器具開発の前線をお見
は個人に由来し伝承が非常に困難。し
スマート監修
せすることができたのではないかと思
河内 英司
います。
ウェルネス社会を、
「予防・未病」
「
、治
最後は、
超高齢化社会をみすえた
「介
療」
、
「介護」の3つに整理してから考
護」
。相互扶助の「見守り」をITで補
えをスタートさせました。初めに「予
完し再構築していくことを念頭に※ス
防・未病」
。ここでは、自分の身体と
マートプラチナ社会の実現に向けた仮
向き合う環境づくりを目指し、正確な
想モデル、
介護支援ロボット、
「見守り」
生体情報の収集と解析システム、ユビ
テレビなどを紹介しました。
キタスネットワークの概念を掲示しフ
全体を通して忘れずに考えたのは経
ィットする企業の皆さんにご参加いた
済合理性です。理由は、技術モデルが
だきました。
成り立たないと継続していくことは難
次の「治療」では、医師の医療技術
しいからです。その辺を検証しつつ、
数値化、デジタル化
できない部分にヒントがある
小山 聡氏 1964年生まれ。1989年日本福祉大
学を卒業後、大和ハウス工業株式会社に入社。シ
ルバーエイジ研究所に所属し医療・福祉施設のコ
ンサル営業を担当。2011年に経営企画部に異動後、
新規事業開発を担当。社会福祉学会会員、専門は
福祉産業論。
河内 英司氏 京都市生まれ。京都教育大学特修
美術科卒業。卒業後、株式会社堀場製作所に入社
し広報宣伝業務に従事しながら製品デザイン・新
商品企画・マーケティング業務も兼務。同社コー
ポレートコミュニケーション室室長を経て、現在は、
広告・展示会・マーケティング・メディアプラニ
ング会社「カットス・クリエイティブ ラボ」代表
を務める。 かし、この部分があるからこそ世界が
認める高品質な部品や製品を供給でき
るのも事実です。大企業の合理主義で
はこの部分が削ぎ落されるのではない
かと危惧しています。
今後は中小企業同士を全国でネット
スマートと聞くと莫大な資本力が必
ワーク化しコミュニティを形成するこ
要な大企業向けの生産システムだと思
とで国全体がひとつの工場として機能
われがちですが、新価値創造展では、
するものづくりシステムを構築できれ
まったく異なった提案をしました。
ば素晴らしいと思います。
すなわち、IT化やデジタル化のプロ
セスの中に人の「勘」や「感性」を潜
次回の展示会に繋げることが大切だと
度広い分野・あらゆる業種に集まって
値」と言えます。
り込ませ提示するということです。
考えています。
いただくことで、企業や人が経済的・
今後も新価値創造展を通じて、コラ
本来日本人が得意とする職人技の多
※シルバー世代を越えてすべての世代がイノベー
ションの恩恵を受け、いきいきと活動できる超高
齢社会のこと
精神的に自立できる単位を考え、企業
グリーン監修
小山 聡
新たな社会やまちづくり
結びつきの深化がヒントになる
柴崎 哲也氏 1979年三菱商事株式会社入社、
主として合樹製品・医療機器の輸出取引、病院開
設プロジェクト及び病院PFI等の事業開発に従事。
海外関連 子 会 社の監査業務を経て、2008年T.
M.Associates社設立。米国企業の再生医療事業に
従事した後、中小企業の事業再生、海外進出・医
工連携支援に取組む。中小企業診断士 認定事業
再生士
2015年度
3
と企業、企業と人、人と人との結びつ
きを掘り下げ、新たな価値を作りヒン
トを持って帰っていただくのが「グリ
ーン」です。
独立行政法人中小企業基盤整備機構 販路支援部 審議役 メリットとして3つあると考えてます。一つ目は、地方に
柿沼 文彦
の向上をはかれること。二つ目は、営業活動。お取引のあ
拠点を置く企業の方にとって東京の大規模展示会で認知
る既存のお客様に新製品を見ていただくことや新しいお
新価値というと最先端技術がパッと
新価値創造展は社会の中のムーブメント
頭に浮かぶと思いますが、既存技術と
「中小企業総合展」も第10回を迎え、それを機に新たに
目、さまざまな意見を聞くことで客観的に自分の会社を見
既存技術を組み合わせても新たな価値
「新価値創造展」と改称しました。中小企業総合展から新
ることができ価値を再認識することができるのではないか
5年後、10年後を見据えた形で新た
は生まれると思っています。共創の先
な社会やまちづくりを考えるのが「グ
にあるのが「新価値」です。
リーン」
。都市開発、室内内装、情報
また、誰でも知っている技術が異業
通信技術・サービス、エネルギー関連、
種・他業界に移行した際に新技術とし
嗜好品のような小さな商品などある程
て受け入れられる場合、これも「新価
展示会開催予定
お問合わせ先 販路支援部 販路支援課
Tel:03-5470-1525 http://shinkachi.smrj.go.jp/
価値創造展への変化で一番大きいのは、3つのテーマ(ウ
客さんとの出会いがあること。最後に、外部の方々からの
と思います。
ェルネス・グリーン・スマート)を設定し展開したことです。 新価値創造展は新たなチャレンジです。新価値創造と
専門技術の展示会を3つ同時開催するということではなく
いう題目に、今回掲げた3つのテーマを社会の中のひとつ
社会的なテーマとして新しい分野に取り組む際の指針とし
のムーブメントとして捉え、出展者の方々には自社が向か
て捉えていただければと思います。
っていく方向を見出し、新しいチャレンジに繋がっていく
出展者の方にとって、新価値創造展へご出展いただく
ことを願っています。
新価値創造展2015 in Kansai
新価値創造展 東京 2015
2015年5月27日
(水)
〜 29日
(金)
インテックス大阪
2015年11月18日
(水)
〜 20日
(金)
東京ビッグサイト
事前来場者募集中!
4月下旬出展者募集開始予定
4
出展者&来場者の声
特集 新価値創造展
来場者
新価値創造展は、新価値が生まれる気づきの場であり、
さまざまな人々が交じりあう出会いの場となった。
独立系ベンチャー企業の将来は
中小企業の技術が必要になってくる。
その技術を知るため来場している。
新しいビジネスチャンスを求め訪れた出展者と来場者。
展示会で感じたこと、展示会に求めたことなど、交じり合った人々の声を紹介する。
静岡県/コンサルティング業/代表取締役
出展者
来場者
新価値創造展では、
新しいものを吸収して
事業に生かしたいと思っています。
成長する可能性のある会社と出会いたい。
自分が思っていないことも含めて
発展を期待している。
大阪府/家電メーカー/研究開発室
来場者
見たことのない技術や
アイディアが
もっとほしいと思った。
埼玉県/製造業(部品)/代表取締役
出展者
来場者
新価値創造展は社員教育に最適。
社員に人のココロが感じられる設計者に
なって欲しいと思い出展した。
具現化ソンがすごい良かった。
学生のアイディアと企業が繋がるのは
素晴らしいと思う。
埼玉県/製造業(クリエイティブ関連)/代表取締役
埼玉県/サービス業/代表取締役
出展者
来場者にとって、社長など責任ある人がブースにいる
貴重な空間だと思います。
「日本発」
「世界初」などのコピーを
企業や技術に付けると、人はもっと吸い寄せられると思う。
静岡県/製造業(健康・環境)/代表取締役
出展者
ウェルネスに出展したので医療分野の方との
出会いが多いと思っていたが、建築関係など
毛色の違う人達と出会える面白さを感じた。
東京都/製造業(システム関連)/営業部長
5
東京都/電子機器メーカー/ビジネスソリューション事業本部
来場者
この展示会は、ニッチな製品や
技術が集まるので、面白いものに
出会う可能性が高いと思いました。
静岡県/卸売業/営業部
出展者
出展者、来場者を含めいろいろな企業と
付き合いができて勉強になる。
山形の田舎に引っ込んでいたって何も起きない。
行動しなければ何も起こらない。
山形県/製造業(健康・環境)/代表取締役
6
特集 新価値創造展
新価値創造展2014
第10回中小企業総合展 東京
開催実績概要
1
中小企業等の展示
一般企業
308社
パブリック出展
ウェルネス 69社 グリーン 92社 スマート 147社
開催主旨
地域中小企業を支援する支援機関と
地域中小企業の共同出展
連携体
11社
インキュベーション
18社
特別展示
60社
支援機関
18社
新価値創造を目指す企業間または産学間の連携体
新市場・新産業の創出へ向けたグローバルニッチな技術の異分野融合や、大企業を含むオープンイノベーションによる新
商品開発などを"新価値創造"として重視し、
この動きを中小企業を中心に力強く推進すべく、
これまでの
「中小企業総合展
東京」
が
「新価値創造展」
としてさらに進化しました。
168社
中小機構インキュベーション施設入居者
ウェルネス 23社 グリーン 15社 スマート 22社
出展者・来場者を問わず、
共創の意思やビジョンを持った参加者と共に新価値創造展を創り上げました。
合計
金融機関・証券相談
583社
開催概要
会期
2014年11月19日
(水)
∼21日
(金)
2
10:00∼18:00
(最終日は17:00まで)
会場
開催テーマ
3日間を通し延べ10回の講演や具現化ソン
(ワークショップ)
東京ビッグサイト 東2・3ホール
健康長寿社会 ITでビジネスを創る
●医療・介護・健康・IT関連
の発表会、
ベストHiNT賞の授賞式が開催されました。
ウェルネス
地域コミュニティの再生に貢献するビジネスを創る
●住宅・福祉・環境・エネルギー関連
11月19日
(水)
●部品・素材・加工・機械・機器・IT関連
1
中小企業等の展示
2
メ
インステージ
ウェルネス
3
特別展示 3テーマ
4
ワンポイン
トH!NTコーナー
グリーン
主催
独立行政法人中小企業基盤整備機構
後援
経済産業省中小企業庁、関東経済産業局、
東京都、都道府県等中小企業支援センター、
日本商工会議所、全国商工会連合会、全国
中小企業団体中央会、株式会社日本政策金
融公庫、株式会社商工組合中央金庫、東京
中小企業投資育成株式会社
協賛
一般社団法人日本科学機器協会、一般社団
法人全国異業種連携協議会、中小企業家同
友会全国協議会
同時開催
7
第17回 産業交流展2014
●基調講演
「日本企業と新価値創造展」
赤池 学氏 ユニバーサルデザイン総合研究所 所長
●
「人の心に働きかける 情報薬TM による健康づくり」
辰巳 治之氏 札幌医科大学 教授
●
「超高齢社会の健康科学」
木村 穣氏 関西医科大学枚方病院 健康科学科 教授
●
「超高齢社会を支えるロボット技術」
小林 宏氏 東京理科大学 工学部第一部 機械工学科 教授
●
「共同開発パートナー!大企業 中小企業 ∼ J-GoodTech始動∼」
長岡 浩氏 パラマウントベッド株式会社、
前嶋 文明氏 ソフトプレン工業株式会社、
[コーディネーター]
小菅 昭子氏 フリーアナウンサー
グリーン
ひとの感性・技能を活かした技術ネットワーキングを進める
内容
メインステージ
スマート
11月20日
(木)
スマート
来場者数
11月19日
(水)14,592名
11月20日
(木)16,321名
11月21日
(金)17,637名
合計
48,550名
●
「製造業から創造業へ」
熊本浩志氏 amadana株式会社 代表取締役社長
●
「設計品質の向上と技術伝承の課題と解決」
國井良昌氏 國井技術士設計事務所 技術士
(機械部門:機械設計/設計工学)
●
「ドイツによる第4次産業革命インダストリー 4.0への取組」
尾木蔵人氏 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 国際営業部副部長 ドイ
ツ連邦共和国 ザクセン州経済振興公社 日本代表部 代表
●
「科学技術の観点から見たインダストリー 4.0 ∼インダストリー 4.0研究開発ロー
ドマップと初期R&Dプロジェクト成果」
Mr.Joachim Seidelmann フラウンホーファー IPA(生産技術・オートメー
ション研究所)
●
「ITソリューション企業から見た第4次産業革命 インダストリー 4.0」
Dr. Michael Arnold ピアー グループ社 (ドレスデン)
社長
●
「孤独問題を解消する分身ロボットコミュニケーション」
吉藤健太朗氏 オリィ研究所 所長
来場者内訳
自営
2.7%
総務・人事・
経理 2.2%
広報・宣伝
1.2%
学生
1.8%
その他
7.5%
経営管理
11.4%
販売・営業
29.1%
11月21日
(金)
業種
(職種)
別
企画・マーケティング・
研究・開発
39.4%
生産・技術
4.7%
●
「森ビルが取り組む地方創生」
山本 和彦氏 森ビル都市企画 代表取締役社長
●
「地域資源を活かした共創」
渡邊 さやか氏 東北グリーン復興事業者 パートナーシップ
●
「出展企業・来場者・若者による3日間の共創が産んだ新価値とは?
∼共感工学ラボ・具現化ソン成果発表会」
宇治原 徹氏 名古屋大学 教授
●ベストH!NT賞 授賞式
8
特集 新価値創造展
3
4
特別展示
ワンポイントH ! NTコーナー
ウェルネス、
グリーン、
スマートそれぞれの監修者のもと、
「新価値創造Labo」
と
会場内にコーナーを設置。
客席も設けられ、
数多くのセミナーや出展者プレゼンテーション、
体験参加イベントが行われた。
題したブースを設けワークショップやショートセミナーなどが行われた。
2日目には、
元陸上選手の為末大選手も登場し賑わいをみせた。
ウェルネス
23社
ウェルネス
体験
15社
合計 60社
グリーン
スマート
22社
11月19日
(水)
2つのセミナーと4つの出展者プレゼンテーション、
事業紹介などを行った。
講演・特別展示内ショートセミナー
健康づくりに関する
「予防・未病」
「治療」
「介護・リハビリ」
を3つのゾーンに分
けて展示。
またウェルネス社会の実現に向けた先駆的な取り組みに関するショー
トセミナーや体験デモを実施。
※3日間で7つのショートセミナーが行われた。
●商談・展示会
ジェグテック商談会・スゴ技ニッチ
トップ企業展示コーナー
優れた技術・製品を有する中小企業
と大手企業や海外企業につなぐウェブ
サイト
●中小機構
ベンチャープラザ ファンド in TOKYO
中小・ベンチャー企業と投資家等との
資金調達マッチングイベント
11月20日
(木)
2つのセミナーと11の出展者プレゼンテーションを行った。
11月19日
(水)
講演
●札幌医科大学 教授 辰巳治之氏
「情報薬を活用したスマートプラチナ
社会の実現を目指す」
グリーン
アイディア
ワーク
ショップ
11月20日
(木)
ショートセミナー
●株式会社菊池製作所
マッスルスーツの実演が行われ、参
加者がその性能を体感しました。
11月19日(水)∼21日(金)
ワークショップ
●Health Grid
バイタル情報の高度解析とデータの
活用方法を実際に体験してもらいま
した。
●セミナー
「松竹芸能」
が取り組む"異業種交流"「UR都市機構 松竹芸能」
による
スマートウェルネス住宅の実現 に向けた健康増進プログラムの実証実験
井上貴弘氏(松竹芸能株式会社代表取締役社長)
、山本雄士氏(株式
会社ミナケア代表取締役)、福亭純瓶 氏(落語家)、為末大氏(アスリート
ソサエティ代表理事)
、曽我武史氏(TKC BODY DESIGN代表/日本体
育協会公認アスレティックトレーナー)
11月21日
(金)
3日間にわたり、名古屋大学の学生を中心に
「地域コミュニティの再生に貢献するビジネスを創る」
というテー
マのもと、
コミュニティ形成のための共感課題を解決するコミュニケーションツールを出展企業と共に創造した。
為末大氏
会場一体となって
体操を行った
11月19日
(水)
∼21日
(金)
2つのセミナー
(5講演)
と5の出
3日間を通して体験・参加イベント
展者プレゼンテーションを行った。
具現化ソン
笑福亭純瓶氏
(ウェルネス)
を行った。
●セミナー
燃料電池セミナー in 東京
主催:経済産業省資源エネルギー庁
(実施運営:大阪科学技術センター)
●
「体の歪み検知からの運動指導」
株式会社CYBER CROSS JAPAN
ベストH ! NT賞
同賞は、出展者の中から新事業の取り組みの際に参考となる9社を「新価値部門」の受賞者として選定。更に、女
11月19日
(水)
チームごとに取り組み課題を決め、
出展
企業へ技術のヒアリングを行った。
11月20日
(木)
新価値創造に繋がるコンセプトを整理
し、
パートナー企業の検索を行った。
11月21日
(金)
メインステージにおいて各チームごとに
成果をプレゼンテーション形式で発表。
音楽データと地図情報クラウドのコラボ製品を企画・プレゼンしたチームが最優秀賞を獲得しました。
スマート
ライブ
プレゼンテーション
11月19日
(水)
9
新価値部門
株式会社魁半導体
(京都府)
株式会社キンセイ産業
(群馬県)
平井工業株式会社
(兵庫県)
株式会社クリスタルプロセス
(広島県)
マツバラ金網株式会社
(大阪府)
株式会社シンフォディア・フィル
(山形県)
奈良精工株式会社
(奈良県)
倉敷レーザー株式会社
(岡山県)
大成技研株式会社
(東京都)
女子力部門
実演プレゼンステージでは、
工場内の映像も含め各社の取り組みが感じられるプレゼンテーションを実施した。
ガウス株 式 会 社ほか9社がプレゼン
テーションを行った。
性の視点を活かした商品開発などに実績を挙げた企業を
「女子力部門」
として2社選定し表彰を行った。
11月20日
(木)
株式会社山本金属製作所ほか7社が
プレゼンテーションを行った。
11月21日
(金)
株式会社丸山製作所ほか8社がプレ
ゼンテーションを行った。
ユウアイ電子工業株式会社
(山梨県) リーフ株式会社
(福岡県)
講評
柿沼文彦 中小企業基盤整備機構 販路支援部 審議役
橘田 佳音利氏 株式会社フラジュテリー 代表取締役
ベストH!NT賞の新価値部門の選考にあたっては、①挑戦しているベン
チャー企業に活躍の機会を提供する、
②伝承技能や伝統的技術を新し
い考えや大企業との連携によって革新 し、世界にアピールできる、
③医
療分野や航空機産業など最先端の分野を下支えしているものづくり企
業にさらなる飛躍を期す――の3つの視点から、専門家よる選考委員会
と議論しながら9社を選んだ。
これからも新しいテーマでチャレンジする企
業を応援していきたい。世界に向けて発信できる企業となっていただくこ
とを願っている。
ベストH!NT賞の女子力部門の選考を務めさせていただいた。女性が能
力を認められ企業で活躍できるようにと支援してきた立場からみて、最近
は女性の活躍の場が広がり、
それが企業の実績につながるようになって
きたことを実感する。今回受賞が決まった2社は男性の経営者が女性に
活躍する場を提供し、
それが実績につながるように協力してきた企業であ
り、
そのことが女性の力を引き出したといえる。
これからも企業の経営者の
皆さんが女性が頑張り、
男性も頑張るような場をどんどんつくっていってく
れたら、
うれしく思う。
10
ウェルネス
CASE 01
奈良精工株式会社
13
グリーン
CASE 02
新価値創造展
有限会社あんじん
15
CASE 03
新市場・新事業への
株式会社エコシステム
17
CASE 04
株式会社ダイセー
進出支援
19
CASE 05
中島プレス工業有限会社
21
CASE 06
株式会社ライズ・アップ
新価値創造展をキッカケに、
出展者と来場者、
出展者の間に起きた
23
スマート
展示会後のストーリー。
3つのカテゴリーに分けて紹介する。
CASE 07
タミー株式会社
25
CASE 08
株式会社ナノテック
27
CASE 09
マツバラ金網株式会社
29
CASE 10
ヤマキ電器株式会社
31
アイコンの見方
製造業
部品・材料(金属類等)
加工業
11
卸売業
製造業
生活資材
製造業
健康・環境
製造業
食品
製造業
クリエイティブ関連
サービス業
12
新 価 値 創 造 展 2 014
ウェルネス
CASE 01
奈良精工株式会社 代表取締役社長 中川博央氏
出展者が語る
な
ら
来場者が語る
せい こう
奈良精工株式会社
多摩メディカル有限会社
少量多品種で高品質の医療機器
展示会が新商品開発に繋がった
柔軟性が生み出す
世界標準の技術力
展示会が新たな推進力に
小回りが利いて
高品質を追求してくれる 今回のマッチングは、多摩メデ
奈良精工は、ひとつの分野にとらわれず現状の設
備で何ができるかを追求し、長年培ってきた技術
ィカル医療機器事業部の営業本部
長の村山正廣氏が新価値創造展に
力を活かし幅広い分野に対応している。なかでも、
今、
医療分野において目覚ましい躍進を遂げている。
来場し、奈良精工と出会ったのが
キッカケだった。多摩メディカルは、
巻き爪や外反母趾など、足の治療
若手社員、ベテラン社員ともに高度な精密加工技術を実践
世界水準の信頼性であらゆる素材・形状にも対応
の第一人者である医学博士・整形
医学博士・整形外科医 町田英一氏 (高田馬場病院整形外科 日本大学整形学
科兼任講師)
外科医の町田英一氏が役員を務める爪矯正具の製造・販売会社である。
同社が奈良精工に依頼したのは爪の矯正具(プレート)と手術用のネジの
世代交代で時代に乗る
医療分野で着実に躍進
出展する度に企業価値を高め、着実
に成長を遂げている会社がある。奈良精
工もその中の一社だ。旧ミノルタの子会
社として1968年に設立以来、光学機器
年ものづくりに携わってきたというベー
だき、医療分野の人たちと接しているか
スがあるわけですから、そのベースを使
ら見えてきたことです」と語るのは、同
っていろんな組み合わせに挑んでいます。
住所
社の中川博央社長だ。
医療という新しいジャンルも開拓し、マ
設立
医療分野を託す人材の育成
お客様と共に成長するために
ッチングの仕方も着実に学んでいます」(
中川氏)
。奈良精工は「特化しない」柔
奈良精工株式会社
資本金
代表者
従業員数
奈良県桜井市小夫3681
1968年11月
3,000万円
中川 博央
42名
時の負担を軽減させるもの。また、改良型の手術用のネジが完成すれば、
今まで以上に手術時間が短縮できるという。
「医療器具はきわめて少量多
品種な製品です。患者の症状も一人一人違うため、同じ機器、同じ治療
法では全く成り立たないからです。だからこそ、小回りが利いて少量多品
種で高品質を追求してくれる中小企業に期待しており、そういう意味でも
奈良精工さんと出会えたことは本当に幸運でした」(町田氏)
。奈良精工は
軟な姿勢で対応しているからこそ、様々
◉ 企業概要
多摩メディカルにとって、追い風と共にこれからも並走していける理想的
旧ミノルタの子会社として光学機器部品、OA機
器部品の製造によって豊富な経験と実績、加工技
術を蓄積し、鉄道部品、航空機部品の製造を行う。
1996年より医療分野へ取組み、現在、第一種医
療機器製造販売業許可を持った会社として、歯科
用骨内インプラント材などの開発及び人工関節、
手術器械などのOEM受注生産など、医療部品製
造の展開を進めている。また、医療機関との共同
開発にも取り組み、難削材をも含む各種精密機器
部品の製造を通じて品質、精度の極限に挑戦中。
なパートナーといえるだろう。
の部品加工からOA機器、輸送機器、そ
「中小企業の使命は、与えられたチャン
な人と付き合い、様々なものを組み合わ
して、医療分野へ参入し着実に事業の幅
スをどう掴むかです。それは、ビジネス
せていくことで新しい価値を生み、進む
を広げている。同社の強みは“特化しな
の現場でも展示会でも同じことです。目
べき方向性を見い出している。現在、医
い”ことだ。ひとつの分野だけに縛られ
標達成のために自分たちが出来ることを
療分野を担当しているのは中川氏だけで
ることなく、現状の設備だけで何ができ
徹底的に考え抜き、最善の準備をして実
あるが、後進も育てているという。
「いず
るかを追求し、長年培ってきた技術力を
践していけば、結果は自ずと得られると
れは切り拓いた道を共に歩みながらバト
結集して幅広く対応することで成長して
信じています」
(中川氏)
。約半世紀に渡
ンを託すのが目標です。だからこそ、あ
きた。
「医療分野において技術の進展は
り、一貫して精密部品加工にこだわって
と3年程で医療分野の基礎を固め、5年
めざましいですが、同時に、技術を支え
きた同社は、展示会での実績も経験とし
程で人材を育て上げ、あとの10年は信頼
る職人の高齢化も進んでいます。だから
て蓄積し、新たなステージへの推進力に
して任せられる体制を作るのが理想です。
こそうまく世代交代し、機械化で新しい
している。新価値創造展2014では、医
これからも1+1を2ではなく3や4にして
方向に変えていかないといけない時代で
療機器販売会社の多摩メディカルとマッ
いくために、様々な人との出会いを大切
す。そのような時代の潮流の中でマッチ
チングを果たし、医療分野で新たな実績
にして、お客様に揉まれ、お客様と共に
しはじめているのが当社だと思います。
を築き上げている。
「会社も私自身も長
成長していきたいと思います」(中川氏)
。
13
改良だ。改良するプレートは、従来製品よりも金属部分を薄く加工し装着
それは、今、医療分野で仕事させていた
◉ 新価値創造展について
2012年から3年連続で出展中の奈良精工。新価値
創造展では、新しい試みも体現。展示物のひとつ
として、医療機具の使用方法をアニメーションで
解説する映像をモニターにて放映。注目を浴び『ベ
ストH!NT賞』受賞の要因となった。マッチングに
ついては多摩メディカルから依頼された手術器具
と部品を製造中で、近く販売される予定だ。
住所
設立
代表者
東京都福生市志茂213-4エミネント福生
資本金
1997年
300万円
従業員数 10名
横田 陽子
◉ 企業概要
医学博士(日本大学整形学科兼任講師)
・整形外科医である町田英一氏が顧問を務めている医
師向けの爪矯正具の製造・販売会社。取扱製品は町田医師が独自開発した巻き爪・陥入爪矯正
用形状記憶合金「マチワイヤMD」
、
「マチプレートMD」などだ。
◉ 新価値総合展について
多摩メディカルは、医療関係の展示会には何度も足を運んでいる。今回、異分野との出会いや
融合によって、新しいものを生み出していくという新価値創造展のコンセプトに期待して会場に
足を運んだ。さまざまなブースが並ぶ中で、モニターでアニメーションによる医療器具の映像を
流していた奈良精工のブースに注目。話を進めていく中で高い技術を持ち、医療関係の実績も
豊富なことを知り、マッチングを決めた。新価値総合展については、コンセプトをもう少し明確
に分かりやすくしてほしいという要望もある。
14
新 価 値 創 造 展 2 014
グリーン
CASE 02
ラジオ業界、コンサルタントを経て
あんじん代表取締役に就任した川崎英樹氏
出展者が語る
来場者が語る
有限会社あんじん
松崎化成株式会社
ニッチな市場に活路を見出す
成果の秘訣は事前の下調べ
対面で築く信頼関係が
ビジネスチャンスを
拡大させる
本業以外の事業を模索
ニーズの発見を展示会で解決
メーカーから塗料を仕入れ、顧
同社が開発し商品化した鳥よけジェル「B-ST」
。
展示会に出展することで、人体や環境に優しい商
客のニーズに応じて販売を行って
いる松崎化成。顧客のニーズを探
品であることを直接アピール。鳥害への悩みを解
決するため、更なる認知の拡大をはかる。
ることが事業拡大へのヒントになる。
「新価値創造展には、お付き合い
のある会社さんがあってもともと行
施工の様子。決められた間隔に「B-ST」を設置
展示会で「B-ST」をアピール
同社営業部の鈴木健太氏。入社7年目、新
しいことへのチャレンジ精神に溢れている
く予定にしていたんです。行くにあ
たり他にどんな会社さんがあるか調べていて『あんじん』さんを知りました。
私のお客さんで鳥害に困っている企業さんがあってそのことがずっと頭に
あったんです。せっかくだから一度お話しを聞いてみようと思いブースを
ておらず、
施工からメンテナンス(3年間)
明をし名刺交換させていただきました。
までを同社が請け負う。この15年間で約
展示会の後、松崎化成さんのお客さんで
6,000件の施工実績を積み重ねている。
焼津にある工場が鳥害で困っているとい
全国で施工を行うために、同社が力を
うことで問い合わせがあり、すぐに受注
鳥よけジェル「B-ST」を開発するキ
入れてきたのが代理店の増加。現在は、
に繋がりました。施工は、弊社の静岡県
資本金
ッカケとなったのが、約15年前に“鳥害
50社以上の施工代理店と契約を結んで
内にある代理店が担当させていただきま
代表者
に困っている”と顧客から相談されたこ
おり日本全国、海外での施工も可能にし
した。松崎化成さんとは僅かな間に2回
とだった。創業当初はビルメンテナンス
ている。
取引きをさせていただいています」と代
試行錯誤の末に商品化
15年で積み上げた
実績6,000件
やハウスクリーニングを生業としていた
「あんじん」だが、不況のあおりで本業
の受注が減っていた時期でもあり鳥害対
策の研究を本格化。試行錯誤の末、商
展示会から国内外へ拡大
創業者の魂を
二代目社長が受け継ぐ
表取締役の川﨑英樹氏は語る。
現在、海外での取引きも積極的に進め
ており、シンガポールや台湾、オースト
ラリアなど約10カ国で取引きを行ってい
品化に成功し今では同社事業の柱にま
佐賀県伊万里市に本社を置く同社が
る。海外での施工は課題やカントリーリ
で成長した。
営業として力を入れているのが展示会を
スクもあるというが一番の課題は、施工
鳥よけジェル「B-ST」の特徴は、有
活用すること。顔を付きあわせて商品の
できる会社を見つけ人材を育成すること。
害な化学薬品を一切使用しておらず人体
説明をし名刺交換をするので信頼関係を
鳥害に困っている国は多いと感じている
に影響がないこと。更に、鳥を駆除する
築きやすいという。
が、忌避剤での対策はまだまだ浸透して
のではなく寄りつかなくさせることを目
新価値創造展での出会いについて伺う
いないという。川﨑氏は、
「契約や通関
的としているため、鳥を痛めつけず景観
と、
「静岡県の松崎化成さんという塗料
など難しい問題もありますが、国内外問
や環境を損なうこともないなど高い商品
を扱う問屋さんが、新しい事業を積極的
わず、鳥害に困っている人にこの商品を
力を誇っている。商品単体での販売はし
にやっていきたいということで商品の説
広めていきたい」と今後について語る。
15
有限会社あんじん
住所
設立
従業員数
佐賀県伊万里市東山代町長浜
2050-7
1983年
―
川﨑 英樹
7名
訪ねたのが、
『あんじん』さんと出会ったキッカケです」と語るのは、同
社営業部の鈴木健太氏。鈴木氏は本業である塗料以外に新たな事業の柱
を探していたこともありマッチングに繋がった。
「展示会が終わってから、すでに2件の施工をお願いしています。今、もう
1件の見積もり依頼が来ているので近いうちに、成果が更に増えるかもし
れません」
(鈴木氏)
◉ 企業概要
1983年の創業当初はビルメンテナンスを主業とし
ていた。1999年から鳥害対策の取り組みを始め、
鳥よけジェル「B-ST(バード・ストップ/植物性
鳥飛来防止剤)
」を開発。2002年に製品化に成功
し、全国へ代理店展開を開始。2012年には、代理
店が48社にまで増加。海外での代理店構築を積極
的に推進している。2015年には、川﨑英樹氏が代
表に就任し、経営理念「百年本行」のもと百年本
気のビジネスを行う企業を目指している。
◉ 新価値創造展について
同社は、中小企業総合展から出展を続けており、
自然な流れで新価値創造展への出展を決めた。新
価値創造展への出展メリットについて「良くも悪く
も大企業ブースが少なく、その分、中小企業の社
長や会長が来ることが多く出展者同士が繋がりや
すい」
(川﨑氏)
。ビルメンテナンス、マンション管
理会社以外に予想もしない業種の方と出会えるの
がこの展示会の魅力だという。
住所
設立
代表者
静岡県静岡市葵区流通センター 15-2
資本金
1949年1月
2,000万円
従業員数 50名
松崎 公雄
◉ 企業概要
1928年に前身である松崎薬種店を創業、1949年に法人化。1971年に松崎化成と社名を変更し
今に至る。静岡県内を中心に事業を進めており、塗料を中心に工業薬品、工業材料、試薬、消
臭剤、接着剤、研磨剤などを扱う卸売業として発展を遂げている。経営理念で良心的な商品販
売と誠実なサービスを掲げており、環境に配慮することを心掛けた商品を取り扱っている。
◉ 新価値創造展について
ニッチな製品や技術が集まる場として捉えており、顧客のニーズにあった製品を探しているなか
で面白いものに出会う可能性があるという。
「実際に行ってみると、今まで知らなかった製品や
技術、大きな展示会には出てこないようなモノがあるんだという印象を受けました。またやるの
であればぜひとも行ってみたい」と語る鈴木氏。新価値創造展での出会いをキッカケに、鳥対
策といえば『松崎化成』だと思ってもらえるように地道な営業活動を続け、実績を作り、社内外
を巻き込んでいく予定だという。
16
新 価 値 創 造 展 2 014
グリーン
CASE 03
エコシステム株式会社 専務取締役 髙田実氏
同社のほとんどを髙田氏が取り仕切っている
出展者が語る
来場者が語る
株式会社
エコシステム
上海アドバンスドテクノロジーズ
展示会は優れた会社と出会う場所
埋もれた技術が国際貢献に繋がる
展示会準備で知った強み
経験に裏付けされた技術
海外からの引き合いも多数
6カ国でビジネス展開
日本と海外の架け橋になる
上海アドバンスドテクノロジー
エコシステムは、新価値創造展で多くの出会いが
あった。出展を決めたのも、展示会での出会いも偶
ズは、日本企業の海外ビジネス支
援を目的に2008年に設立した会社
然。しかし、自社の製品や技術と日々実直に向き
合うことで多くの出会いが偶然に引き寄せられた。
であり、本社は上海にある。同社
は6カ国でビジネス展開をしており、
代表の中村氏は日本と海外を行き
「K-グランド」を利用して舗装した石川県小松市にある木場潟公園の遊歩道
自社工場で瓦を粉砕しそのままトラックの荷台に
積みこむ様子
「常に新しい技術やおもしろい事を探してい
る」と語る中村氏。社員は全員外国人
来した生活を送っている。代表の
中村氏は、忙しいなかでも日本の埋もれた技術を探している。
「僕はあま
り展示会に積極的に足を運ぶ方ではなかったのですが、2013年に展示会
で秋田の工房成瀬さんと出会い、お取引きをさせていただくようになって
である瓦廃材のリサイクルをスタート。
のですが、今回の展示会で大きかったの
翌年に同社の主力商品である「K-グラン
が中国やタイの方からの引き合い、国内
ド」シリーズを開発。同シリーズは廃材
で展開しているリサイクル商品が国境を
「新価値創造展への出展を決めたのは、
となった瓦を粉々にしセメントや樹脂と
越えても需要があるということがわかり
住所
たまたまだったんです。商工会から自社
混ぜ合わせ舗装材として利用する商品だ。
グローバルな話も出来てとてもよかっ
設立
商品(スベラサンド)の開発に充てる目
通常のコンクリートと比べ歩行時にソフ
た」
(髙田氏)
。
的で補助金を受けていたんですが、その
トな感覚を覚えるのが特徴で公園や学校
同社は、新価値創造展で中国の商社
届出をするなかで予算として展示会が組
などの歩道に使われている。近年では、
やベンチャーキャピタルなどから見積り
み込まれていたんです。当初、どの展示
雑草対策などで家庭でも手軽に使える
依頼や中国での投資の可能性を探る話
会に出展するか全く決めていなくて、リ
水で固まる土「ハイドサイド」
、タイルや
があった。現在、進んでいる最中であり
フォーム展などいろいろと調べていたん
コンクリートの滑り止めになる「かんた
今後どのようになるのかはまだまだ未定
ですが、どれもフィットせず『新価値創
ん!スベラサンド」などの新商品販売や
ではあるが、同社の商品や技術が海外
造展』の名前を聞いた時、これだって直
開発にも力を入れている。
でも通用する可能性があることがわかる
自社商品の開発に注力
テーマは環境や人に優しいコト
感的にフィットしたんです。そこからい
ろいろ調べてみると出展料も安かったの
で迷わず出展を決めました」と語るのは、
瓦リサイクルシステムが
日本全国を盛り上げる
展示会となった。
今後の目標について、髙田氏は「海
外での展開は可能性として探っています
同社専務取締役の髙田氏。
新価値創造展での印象を聞くと「よか
が、まずはK-グランドシステム事業(フ
エコシステムは、小松空港にほど近い
ったの一言につきますね。国内の方も結
ランチャイズ事業)を加速させ、協力し
石川県能美市に本社をかまえるリサイク
構ブースに来場していただいたり、隣の
ていただける代理店を増加させることが
ル製品の開発施工を行う会社だ。1994
ブースのアースプロテクトさんには『ハ
目標です。全国で瓦リサイクルシステム
年に創業し、1998年に現在の主力商品
イドサイド』をご購入いただいたりした
を盛り上げていきたいですね」と語る。
17
株式会社
エコシステム
資本金
代表者
従業員数
石川県能美市寺井町口50-1
1994年12月
1,980万円
髙田 典英
10名
◉ 企業概要
全国でも数少ない瓦リサイクルを行う企業。瓦の
リサイクルを通じてエコシステムを確立することを
理念としている。産業廃棄物として大量に排出さ
れ続けている瓦が、通常、安定型処分場で埋め立
て処分をされ厄介な廃棄物になっていることを危
惧。瓦を廃棄物ではなく「新たな再生資源」とし
て着目し、保水力、独特の風合い、景観性などの
魅力を引き出すことに注力し、自社リサイクル製品
「K-グランド」を開発。環境負荷の少ない商品とし
て海外からも注目を浴びている。
◉ 新価値創造展について
中小機構主催の展示会に初出店のエコシステムだ
が、
出展準備をする段階で気づいたことがある。
「応
募時に選考があることで製品としてのターゲットや
位置づけ、販路が明確になった。これだけやるか
らには絶対に出たいという思いと気合が高まった」
(髙田氏)
。実りの多い展示会となった同社だが、
瓦リサイクルシステムの全国普及に向け、更に多
くの自治体、建設関係者との出会いを望んでいる。
から、常に取引きが出来るような会社を探しています」
(中村氏)
。
新価値創造展でのエコシステムとの出会いを伺った、
「2013年に出会
った工房成瀬さんが出展されていて呼ばれて伺ったんですよ。その時、ちょ
うど中国であるプロジェクトがあって、環境とかサステナビリティの会社
を探していて、出展者のなかでエコシステムさんの商品がフィットするん
じゃないかと思って声をかけさせていただいたんです。現在サンプルを中
国へ持っていってる段階です」
(中村氏)
。日本の中小企業が海外でのビ
ジネスを展開するにはリスクがつきもの。同社は、
その架け橋となっている。
住所
設立
代表者
東京都町田市小野路町2953-36(東京事務所)
※本社は上海
資本金
2008年
─
従業員数 6名
中村 聖二
◉ 企業概要
同社は、外資系化学会社の日本法人代表を務めた中村氏が退職後に東京と上海に設立。業務内
容は、日本企業の海外進出支援、セメントとコンクリートなどの土木工事、建築工事の技術支
援やコンサルタントを行っている。現在は、中国全土、極東ロシア、モンゴル、ベトナム、シン
ガポール、ミャンマーの6 ヵ国でビジネスを行っている。今後も日本の技術を積極的に発展途上
国へ展開していこうと考えている。
◉ 新価値創造展について
新価値創造展の印象について中村氏は、
「偶然の出会いもあり、地方の創生を何とかしなければ
いけないという気概が感じられていい展示会だと思った」と語る。大きなマーケットをターゲッ
トにしておらず、ニッチな部分に焦点を当てている展示会に好感を持っている。ニッチな技術と
人が出会う場所としての役割りは高いと感じている。
18
新 価 値 創 造 展 2 014
グリーン
CASE 04
株式会社ダイセー 代表取締役 大久保賢司氏
出展者が語る
来場者が語る
株式会社ダイセー
株式会社デイプロット
コンサルタントの経験を土台に
新商品開発へと突き進んでいく
3本柱で事業を展開
展示会の出会いで
特殊車いすの試作を開始
展示会での出会いから
事業が加速、試作を繰り返し
商品化を目指す
ものづくりや設計の他に健康分野への事業を展開
してきたダイセー。同社は、デイサービスへの参
同社代表を務める岩島氏は、コ
入経験から24時間温泉システムなどを開発。健康
分野への経験と知識から展示会での出会いへと繋
がった。
ンサルタントとして約30年間、新
事業や新商品開発に携わってきた。
デイプロットが企画、
ダイセーが製作した
「楽々ムーブJINGORO」
金沢市内にある本社兼工場。試作品作りなどが行われている
その経験から石川県のベンチャー
代表の岩島光太郎氏。ベンチャーコンテス
トを機に本社を金沢に移した
ビジネスコンテストに応募し「腰痛
防止車いす」の開発と事業化で優秀企業家賞を受賞。自らも商品開発へ
の道へと進むことになった。
「僕は若いころに住友3Mという会社にいて、ものづくりやビジネスに関
ことになったんです。経営者として健康
が始まり現在は2号機まで試作を行って
であることが何よりも大事だと実感して
います」
(大久保氏)
。
います。だから、健康に関係する事業に
ダイセーが福祉業界への理解のある
住所
ダイセーは、ものづくりや設計を柱と
は今後も積極的に関わっていきたいと思
ものづくり企業であり、デイプロットが
設立
し事業を進める一方、健康分野での事
っています」と語る。
経験から学んだ健康の重要性
新商品開発にも力を注ぐ
業をもうひとつの柱として展開してきた。
代表的な商品が、24時間自宅で温泉に
入れる「オンリーゆサービス」
。ミネラル
展示会で大事なのは継続
出会いの成果は突然やってくる
「革新的ベンチャープランコンテストい
しかわ」で優秀賞を獲得したこともあり、
資本金
代表者
従業員数
石川県金沢市増泉5-5-22
1969年12月
1,000万円
大久保 賢司
30名
わるノウハウを学びました。そのノウハウを世に広めようと独立しコンサ
ルタントをしていましたが、お客さんにアドバイスをしていくうちに熱い
想いにかられ『腰痛防止車いす』を開発することになりました」
(岩島氏)
。
新価値創造展でダイセーと出会い試作2号機までこぎつけた。後は改良
を重ねながら一刻も早い商品化を目指しているという。
この事業の将来について岩島氏は、
「ビジネスとして展開できる企業との
仲介者を挟み、両者は新価値創造展で
◉ 企業概要
連携を視野に入れながら、根底の部分ではこの車いすで利用者や介護者を
出会うことになった。デイプロットが石
スプリング、板金溶接、プレス加工を行う製作所
として1969年12月に金沢市内に創業。現在は、板
金溶接(SS板金溶接、ステンレス板金溶接、プレ
ス加工、産業機械フレームプラケット類溶接、ア
ルミ、
チタン板金溶接など)
、
産業機械設計制作(省
力化装置、環境機械、電気設計、機械メンテナン
スなど)
、健康産業(24時間温泉システム、医王
石販売、岩盤浴マット製造販売、水を使わない布
団清浄機など)の3本柱で事業を行っている。
幸せにしたいという気持ちが強いです」と熱い思いを語ってくれた。
元素を多く含む医王石を活性剤に生きた
展示会に出展してすぐに仕事につな
川県で会社を設立させたことにより、両
温泉を作りだし、特殊なフィルターを使
がるケース、半年、1年以上かかってよ
社の結びつきと連携がますます進んでい
いお湯の中のゴミや垢を強制吸着、ろ過
うやく試作にたどりつくケースなどさま
っている。
し24時間一定の温度に保つシステム。3
ざまだ。出展を重ねると出展者同士も仲
大久保氏は、今後の目標について、
「最
~ 6 ヵ月お湯の交換も不要。
良くなって紹介し合うなどメリットも多
終的には自社製品をヒットさせること。
代表である大久保氏の医療・介護・
いから継続することが大事だと大久保氏
そのために展示会で名前を覚えてもらい
健康分野への思いは強い、
「何十年も前
は語る。
根気よくタッグを組める企業と出会いた
から、お風呂の出前ができないかと思っ
新価値創造展での出会いは、
「デイプ
い」と語る。展示会を宣伝と広報の場と
ていたんです。たまたま福祉の世界に入
ロットさんという横浜にあるコンサル会
して捉えている同社は、今後も展示会へ
浴介護訪問という事業があって資格を取
社で、コンサルだけでなく自社で介護者
の出展を続けていく。
「根気よくやれば
ってずっとやっていたんです。ただあま
の負担を軽減させる車いすを開発したい
いつか名前を覚えてもらえます」
(大久
り儲からず苦労が多くなって辞めました。
ということで試作の依頼を受けました。
保氏)
。展示会への出展を続けることで
そこで24時間温泉システムを開発する
展示会が終わった直後からお付き合い
認知され口コミの効果があるという。
19
株式会社ダイセー
◉ 新価値創造展について
10年前から中小機構の展示会(中小企業総合展)
に出展。以前は東京と大阪の両方に出展していた
が、現在は東京に絞り出展を続けている。
「自社の
宣伝には絶対に必要です。すぐに成果が出ないか
らといって出展をしないのはもったいない。ちょっ
としたキッカケで仕事につながる」と語る代表の
大久保氏。新価値創造展には、今後も出展を続け
る予定だという。
住所
設立
代表者
石川県金沢市南新保町34-1
資本金
2014年3月
─
従業員数 2名
岩島 光太郎
◉ 企業概要
石川県ベンチャーコンテストで優秀企業家賞を受賞したのをきっかけに、ものづくりデザイン会
社「株式会社デイプロット」を2014年3月に設立。社名の由来は、
日々(デイ)試作(プロット)
をし続けるという意味。岩島氏がコンサル業で培ったネットワークや人脈を生かしながら、介護
業界での商品開発で飛躍を目指す。
◉ 新価値創造展について
「新価値創造展では、
普段出会うことのない出展者、
さらには来場者の方と繋がれることが大きい」
と岩島氏は語る。今回の展示会で、同じ石川県金沢市に本社を置く「ダイセー」と繋がり製品
開発までに至ったことに、
「技術力のあるダイセーさんと繋がれたことで開発が一気に進みまし
た。展示会での出会いに感謝しています」
(岩島氏)
。
20
新 価 値 創 造 展 2 014
グリーン
CASE 05
できあがった製品の検品作業を行っている。
日中は女性の従業員で賑わっている
出展者が語る
中島プレス工業
有限会社
環境変化に伴い多角経営
新たな価値をヒントに
事業拡大を目指す
中島プレス工業は、時代や環境の変化に伴い自社
商品の開発や新規事業を開発するなどアグレッシ
ブに展開している。変化を目指す同社にとって、
新規事業への取り組み、新価値創造展の出展目的
などを聞いた。
工場内でプレス作業を行っている様子。プレスには繊細な技術が求められる
プレス加工の技術を柱に
事業の多角化を進める
自社開発商品「おくり鳩」
。終活グッズに力を入れる
中島プレス工業有限会社 代表取締役 小松崎いずみ氏
プレス加工の仕事が年々厳しくなるなか
試作を重ね取引きへと繋がった。
「全部
に、終活グッズに興味を持っていただい
で工場の稼働率をあげることが課題でし
で4万枚納品させていただくことができ
たメディアの方などいい出会いがありま
た。その2つを考えた時に、自社ブラン
ました。鶴岡八幡宮のシンボルが鳩なの
した。特に新商品の水に溶ける花水鏡菊
住所
設立
埼玉県越谷市、日本最大級のショッピ
ドを展開することが自然な流れでした。
で、何とか『おくり鳩』を取引きしてい
®は目をひいていました」
(小松崎氏)
。
ングモール・イオンレイクタウンが
印刷事業を始めたのも自社製品を作った
ただけないかなと思って足を運び、神社
今後の目標は、
「やはり3本の柱を確
中島プレス工業有限会社
資本金
代表者
従業員数
埼玉県越谷市増森2544
1974年4月
300万円
小松崎 いずみ
25名
2008年にオープン。レイクタウンがで
時にパッケージや製品にプリントします。
への祈り『祈り鶴』として形状記憶の鳩
立させ拡大させていくことですかね」
(小
きたことにより転入者の増加、住宅・建
その時に、どうせなら自社でプリントを
の営業を継続しつつ、神社での学びを沢
松崎氏)
。既存の下請け事業と自社開発
◉ 企業概要
物の増加など街が大きく様変わりしつつ
した方が細部にこだわりを持てることに
山いただき、次のステップへと繋がりつ
商品に加え印刷事業をスタートさせた同
ある。そんな越谷市で40年ほど前から
気づき印刷事業を始めることにしまし
つあります」
(小松崎氏)
。
社は、それぞれの事業を拡大させ、更に
プレス加工を行っているのが中島プレス
た」と代表取締役の小松崎いずみ氏は
工業だ。同社は、柔らかい素材(フィル
語る。
創業以来、中島プレス工業はフィルム、ウレタン、フェルト、ゴム、シートなど柔らかい素材のプレ
ス加工を行ってきた。現在では、プレス加工の他にプレスの技術を生かした自社製品(おくり鳩な
どの終活グッズ)の製造、プリント事業を行っている。プレス加工以外の事業を本格的にスタート
させたのには理由がある。少子高齢化が進むなかで、プレス加工だけで事業を行うリスクを考えた時、
投資し新規事業にチャレンジする方がリスクが少ないと考えたからだ。攻めの経営へとシフトしたこ
とにより、2009年には本社兼工業を購入し移転。2011年には自社製品である終活グッズ専門に販
売する会社(株式会社エヌケー 代表取締役:小松崎寛氏)を設立。社長就任から12年、女性社
長ならではの気遣いと感性を武器に新しいことへのチャレンジを続ける。
ム・ウレタン・フェルト・ゴムなど)の
プレス加工を得意としており、OA機器
や自動車関連部品のシール材、エアフィ
3つの事業がひとつの形に
粘り強さでニーズを発見
新価値創造展は吸収の場
新たな出会いで事業を拡大
は連動させることを目指している。その
なかで、新価値創造展への出展意欲も
高く目的も明確だ。
「新価値創造展では、
中小企業総合展から数えて新価値創
新しいものを吸収して事業に生かしたい
造展で4回目の出展となる同社は、新価
と思っています。そのために、多くの人
値創造展でいくつかの出会いがあった。
や会社さんと出会いたい、出会いのなか
ルター、パッキン材などを扱っている。
同社が3つの事業として形になったの
現在は、プレス加工に加え「終活」グッ
が、鶴岡八幡宮との取引きだ。代表の
「同じ埼玉県内で医療、医薬化粧品系の
で、3本柱が4本柱になっても構わない。
ズの製造販売、印刷事業の3本柱で事業
小松崎さんが鶴岡八幡宮のシンボルが
パッキンの加工を行っている会社さんと
そんな気持ちで展示会には望んでます」
を展開している。
鳩であることを知り、
同社製品
「おくり鳩」
は今後、取引きに繋がりそうです。あと
と語る小松崎氏。今後の活躍が期待さ
「自社製品(終活グッズ)を作ることに
の取引きの可能性を探り営業。何度も足
は、LEDを扱う会社、細かいことは取引
れる。
なったのは、時代や環境が変化していく
を運ぶうちに小忌衣(おみごろも)に需
き中なので言えませんが信頼関係が構
なかでの危機意識だったんです。それに、
要があることを知った。その後、何度も
築されつつあり試作を行っています。更
21
◉ 新価値創造展について
中小企業総合展から数えて4回目の出展。
「名刺交換しただけですぐに仕事に繋がることは少ないで
す。ただ、今回の新価値創造展では、現在、取引きに繋がりそうな企業は2社あります。同じ県内
にある医療系の企業とはお互い工場見学を行い良好な関係を築きつつあります」
(小松崎氏)
。中島
プレス工業にとって新価値創造展は、自社製品をPRすることが大きな目的。
「今回の展示会では、
終活グッズをメインに展示させていただきました。何を見せるか厳選した時に終活グッズを選び、そ
こからプレス技術に興味を持っていただける方に技術的なお話しをさせていただきました」
(小松崎
氏)
。同社は、プリント事業を行っており自社ブースのプリントも独自で行い好評を得た。
22
CASE 06
新 価 値 創 造 展 2 014
グリーン
ベンドメックと呼ばれる手動式自販機の作動部
出展者が語る
株式会社
ライズ・アップ
防災意識の高い時代
新アイディアの提案で
自販機界の標準を目指す
東海地震の懸念により防災意識の高い静岡県沼津
市。この地で自動販売機と向き合ってきたライズ・
アップは、災害対応手動式自動販売機の装置を考
案した。東日本大震災で効果が発揮されたこの自
販機は、展示会への出展により各地域や企業に対
して存在感をアピールしている。
東日本大震災で存在感を見せた
災害対応手動式自動販売機
新価値創造展に出展した際のブース
いました。それまでは飲料メーカーに自
販機を設置していただくための営業ツー
ルでしかなかったのですが、震災後は大
防災意識の高い
運送会社の社員が展示会で
手動式自販機に注目した
自販機の扉を開けると、飲料すべてを取り出せる
ワイヤーがまとめられている
みのヒントを得たい。これがライズ・ア
ップの要望だ。そのために新価値創造展
への提案として、潜在的な顧客との交流
株式会社 ライズ・アップ 代表取締役 松本富士男氏
株式会社 ライズ・アップ
住所
本社 静岡県沼津市大塚1051
神奈川営業所 神奈川県藤沢市遠藤2020-1
2001年7月
1,000万円
松本 富士男
35名
日本全国に250万台設置されていると
手飲料メーカーを含め、さまざまな会社
いわれる飲料用自動販売機。デザイン・
から引き合いがありました。私どもの手
中小企業総合展を含め中小機構が主
じている。今回の出展では、今後につな
機能性・便利さ・豊かさでは海外に例が
動式自販機はワイヤー操作で、すでにあ
催する展示会に初出展となる同社だが、
がる取引きがいくつかあった。
ない。しかし、電気で作動する自販機は、
る自販機から飲料を取り出すもの。かさ
保険会社からもらったチラシがキッカケ
「お陰様で数件の引き合いがありました。
災害時には故障で使えない場合もある。
ばるものではなく、各社の自販機に組み
で、展示会を知り出展することになった。
そのひとつは東京の割と大きな運送屋さ
事実、東日本大震災では、被災した多く
込むことが可能でコストも安価です。比
担当者のひとり、営業本部長・秋山
んからのもので、防災意識の高い企業で
の自販機が作動しなかった。
その時、
しっ
較的単純な構造なのでメンテナンスも簡
泰一氏は新価値創造展について、
「新価
す」
(松本氏)
。
かりと自販機としての機能をはたし飲料
単です」と代表取締役の松本富士男氏
値創造ということで、来場者の方々に新
その来場者は帰社後、社内の自販機
を取り出せたのが手動式である。電気仕
は語る。
しいアイディアを提案したいと思って出
を管理している総務担当者に手動式災
掛けの自販機は、見栄えはいいが機能は
災害時、手動式自販機の確実性は心
展しましたが、正直なかなか狙い通りに
害対応自販機のことを報告した。ライズ・
停止した。一見地味に感じるが、人の手
強く、災害対策を講じる各地での採用が
はいきませんでした。その後、横浜で開
アップからもPRしたところ、多くの営業
作業で機能する装置が世の中の注目を
期待されている。しかし、防災意識の高
催された防災対策技術展にも出展しまし
支店への新規増設や現状の自販機の改
集める結果となった。現在、全国の自販
い地域の企業や自治体よりも備蓄倉庫
たが、そちらの方が専門的であり自社に
良(手動式装置の組み込み)など具体
機のうち約4パーセント(10万台程度)
としての役割りまで視野に入れて自販機
はフィットするかなと思いました。しか
的な相談や交渉に発展。その後、運送
が災害対応自販機となっており、そのう
を考えている防災意識の高い“企業”
し、異業種の方達との出会いを考えると
会社と契約している飲料ベンダーがライ
◉ 新価値創造展について
ち約2万台がライズ・アップの手動式製
のほうが、実際の設置や引き合いが多い
新価値創造展がいいかなと思います」と
ズ・アップと付き合いがあることもわか
品となっている。
という。
語る。
り、現在、ライズ・アップとベンダーと
2014年11月、新価値創造展(中小企業総合展)
・東京に出展。大塚製薬から災害対応手動式自販
機を2台借りてデモンストレーションを行った。中小企業の取り組みでは高い費用対効果が求められ、
展示会への出展も例外ではない。
他の出展者との交流から新たな取り組
の間で前向きに交渉が進められている。
「震災の2年ほど前から手動式を提案して
23
が促されるような場を設けて欲しいと感
設立
資本金
代表者
従業員数
◉ 企業概要
事業内容は自動販売機の修理・設置・整備・
オペレーション、冷凍サイクルの修理、車
輌の板金塗装、3D CADによる自社製品開
発販売。全国への自販機移送一括手配も行
う。バッテリー式の自販機も製作しており、
どんな状況でもすぐに調達が可能な自動車
用バッテリーを使うものである。また、自販
機参考メーター(積算電力量計、
子メーター)
の製作販売や自販機用の板金部品製作も行
う。長年、自動販売機のメンテナンスを手
がけてきた経験、
豊富な知識、
自販機の修理・
ライズアップ本社社屋
板金で培った高度な技術により、社会貢献
できる製品を生み出したい――その思いか
らワイヤー操作による手動式災害自販機を開発した。古くから東海地震などの大きな災害が想定さ
れている静岡県沼津市だからこそ考えられている、独自の取り組みである。
24
新 価 値 創 造 展 2 014
スマート
CASE 07
タミー株式会社 開発技術部 部長 日野原栄氏
出展者が語る
出展者が語る
タミー株式会社
ガウス株式会社
隣同士のブースでマッチング
同業者同士でタッグを組む
金型メーカーから脱皮
同業者と協業することで
時代のニーズを先取する
粉末射出成形業界でも
稀有な存在
ベンチャー精神でコラボを実現
タミーは、
長年営んできた金型専業メーカーからの
脱皮をはかりつつある。通常のプラスチック成形
用の金型だけでは、アジア各国との競争となり、
いずれは衰退していくからだ。同業者と協業する
ことや試作開発にシフトしていくことで時代の波
を乗り切る。
仲間うちの研究開発活動からス
タートし創業に至った同社は、常に
ベンチャースピリットを意識してい
る。現在会長を務める高根氏も大
本社工場で作業をする様子
代表取締役会長の高根勝久氏。現在、社長
業を譲り会長として各地を飛び回っている
手製造メーカーを退職しガウスにロ
安全注射針
マンを見出し参加したひとりだ。
「前職では、ディーゼルエンジンの設計などをやっていて、ガウスでは
試作開発分野で成果
付加価値製品で勝負をかける
厚木にある米軍基地にほど近い神奈
を行っている。
展示会での出会いが発展
互いの技術を認め合い協業へ
たガウスとは「実は展示会の前からガウ
スさんのことは知っていたんです。ガウ
スさんは、金属粉末射出成形とセラミッ
クス粉末射出成形の両方をやられていて
全くの異業種であるセラミックとか射出成形をやることになりました。流
タミー株式会社
住所
設立
資本金
神奈川県綾瀬市深谷中8-3-6
1970年2月
7,500万円
黒澤 弘三
55名
れとしてはメチャクチャですね。ただロマンがあって当時の上司を振り切
ってガウスに参加しました」と語るのは、同社会長の高根氏だ。
同社は、金属とセラミックの粉末射出成形を得意としており小さいなが
らも業界では両方を扱う珍しい会社として注目されている。
川県綾瀬市にタミーの本社はある。同社
積極的に試作開発を行っている同社
業界では名前が知られていましたし、図
は、金型メーカーではあるが、プラスチ
だが、展示会では既存の顧客のニーズ
面のやりとりなどはしたことがありまし
ック射出成形やセラミック射出成形、金
を掘り下げるとともに新たな顧客開拓を
た。新価値創造展で実際にお会いし、
◉ 企業概要
う話になった」と高根氏は語る。現在見積り段階だが、同業種であるタミ
属射出成形なども手掛けている。近年は、
常に試みている。
ディスカッションさせていただくことで、
ーとのマッチングの可能性を探っている。
金型専業メーカーから製品開発までを行
新価値創造展への出展理由は、
「中小
ガウスさんの技術の高さを再認識させて
う企業へとシフトしつつあり、試作開発
機構の方にお誘いいただいて、タイミン
いただきました。まだ実際の仕事が成立
1970年に横浜市に会社を設立。1992年に秋田に
工場を建設、2001年に神奈川県綾瀬市に本社を
移転。2008年にはセラミック部品の生産を開始。
2010年以降は海外との取引きも積極的に行う。
2011年には日本電産ニッシン株式会社に株式を譲
渡し日本電産のグループ会社となる。創業以来、
小型精密金型作りを得意としてきたが、今後は金
型専業メーカーから試作・開発まで行うメーカーと
して生まれ変わろうとしている。
◉ 新価値創造展について
1985年に「姫路技術開発研究会」として姫路市に設立。2003年に姫路市から相生市に移転し、
現在に至る。同社は、材料に有機バインダーを混ぜ金型に射出し脱脂後、焼結する製造方法の
粉末射出成形やセラミック粉末射出成形を得意としており、2007年にはセラミック粉末射出成
形を使い、
「テトラポッド型人工骨」を大学などと共同で開発した。異種材料の複合化、特殊元
素の添加による新機能創作など研究開発にも力を注いでいる。
分野でも着実に実績を伸ばしている。
グも合って出展することを決めました。
してはいませんが、お互いの強みが違う
代表的な試作開発事例として「安全
弊社が金型業界では精密なものを作っ
のでいいお付き合いができると思ってい
注射針(針刺し事故防止機能つき)
」が
ておりセラミックや金属の射出成形に目
ます」
(日野原氏)
。
あげられる。顧客からの要望を受け安全・
をつけていただきお誘いいただいたのか
金型業界において、セラミックと金属
安心な針カートリッジを開発。このカー
なと思ってます。正直、展示会の趣旨は
射出を両方できる会社は少ない。更に、
トリッジは注射をする時だけ針が現れ、
難しくて、弊社は場違いのような気もし
小ロットから対応できてさまざまな材質
注射が終わるとカートリッジが伸びて針
ましたが、結果的に出展者の方と仲良く
を扱えるガウスは同社にとっても貴重な
が収納される。収納された後はカートリ
なれたことが最大のメリットだったと思
会社のひとつであるという。
ッジが固定され二度と針が出てくること
います」と語るのは、同社開発事業部長
同社は、今後も金型で土台を作りつ
はないという優れた商品。ほかにも超微
の日野原栄氏。
つ、付加価値の高い商品作りにも力を入
小な穴のセラミック成形などの試作開発
展示会で隣のブースになり関係を築い
れていくという。
25
代表者
従業員数
金型メーカーとして、セラミックや金属の射出成形
など他社があまり踏み込んでいない分野で存在感
を示しているため特別展示で出展。
「会社としては
展示会には積極的に出ている方だと思いますが、
新価値創造展は他の展示会と違っていました。新
しい価値を創出するのは理想とするところでもあり
ますが、実際問題として大変難しい課題だと思い
ます。例えば、もう少し分野別に区切った展示を
行ってもいいように思いました」
(日野原氏)
。
新価値創造展では、
「隣のブースだったタミーさんは、以前から知って
いたんですが隣になったことで話が加速して一気にコラボしましょうとい
住所
設立
代表者
兵庫県相生市矢野町上土井273-1
資本金
1985年2月
3,510万円
従業員数 15名
黒田 義和
◉ 企業概要
◉ 新価値創造展について
ガウスにとって展示会での知名度を上げる場所と同時に、既存顧客との商談の場として捉えて
いる。代表取締役会長の高根氏は、
「弊社の取引先は関東がとても多いんです。今回出展するこ
とを知らせたら、取引先が多く来てくれました。普段遠距離で込み入った話がなかなかできない
分、コミュニケーションの場としてはとてもよかった。それと、企業同士が結びつき新価値を生
み出すマッチングにはとても魅力を感じる」と語る。
26
新 価 値 創 造 展 2 014
スマート
CASE 08
出展者が語る
株式会社ナノテック
部品製作自動化システム
ヒントを得たのは来場者
特許出願も進行中
ミクロン(マイクロメートル)の精度が常識とな
った、精密機械部品の製作。この世界に取り組ん
(上)これまでにナノテックが設計製作してきた各
種のチャック(クランプ)
。従来、油圧で作動させ
てきたが、ナノテックではエアの力で作動させるこ
とにより、作業の迅速化・省力化を実現している
(右上)ビデオデッキ、カメラのレンズ周辺部、エ
アコンなど精密機器の心臓部の部品。これらを加
工するための土台となるのがチャック(クランプ)
である
できたナノテックは、展示会出展の方向転換から、
既存技術を活かしたイノベーションを確立した。
コレットチャック。本体(受けの部分=上)にコレット(素材をはさむ部分=下)は、
バイオネット方式(PAT方式)
で結合され、シリンダーの動作によりコレットの回り止めとなり、素材を確実に押さえることができる
株式会社ナノテック 代表取締役 森井健補氏
新価値創造展への出展により
新たな分野を開拓する
きた。代表取締役の森井健補氏は、
「現
在は自動車関連を中心に対応しています
が、工作機械の国際見本市に出展した
自動化へのアイディアが結晶し
実現への第一歩が踏み出された
替える必要があり、そのたびに素材を移
動し固定させなければなりません。将来
株式会社ナノテック
的な部品製作の現場では、これまで人の
住所
設立
ナノテックは、主に機械部品の精密加
場合、業界関係者は来場します。しかし、
同社は、新価値創造展への出展では
手によって行われてきたこれらの作業を、
工を行う精密旋盤・研削盤に装着される
私たちのような特殊な道具を扱っている
一定の成果を得た。まず、医療業界で
機械の中で自動的にやってしまおうとい
資本金
代表者
従業員数
奈良市西大寺宝ヶ丘6-6
1989年6月
1,000万円
森井 健補
6名
チャック
(クランプ)を設計、製作、販
会社のブースは会場の隅に追いやられ、
使われる機器・部品がどのような形で、
うことになります。これを実現させるた
売する会社である。工場は持たず、設計
客の流れも悪い場所になってしまいます。
どのように使われているのかが見えてき
めのアドバイスが、今回の展示会の来場
◉ 企業概要
者5名が独自に部品の設計を行い、専門
それでは無意味なので出展を控えました。
たことだ。現在、省力化とコストダウン
者から得られたのです。
それをもとに、
“コ
的な精密加工を得意とする各地の工場
昨年は、異業種関連の業者を集めて東
のための主力製品として打ち出している
レット(チャックの一種)交換の自動化”
に製作を依頼し、できあがった全ての部
京で行われた新価値創造展に出展しまし
RQCシステ ム(Random Quick Change
というひとつの自動化の案を考えまし
精密旋盤・研削盤に装着されるチャック(エアチャック、ダイヤフラムチャック)
、特殊計測装置、
回転流体継手ハンドルなどを設計・製作。従来、油圧で作動させていたチャックのメカニズムをエ
ア(圧縮空気)で作動させる方式とし、各種のチャックを設計。それぞれの部品の製作を、専門技術
を持った各工場に依頼し、すべての部品をアセンブリングする。海外委託製作チャックの国内外販
売強化も行う。今後は自社の技術を活かし、医療機器関連など異業種への進出も視野に入れている。
品を自社で組み上げる体制をとっている。
た。自動車関連の来場者はほとんど居ま
Chuck System)を来場者にアピールし、
た」
(森井氏)
。
削られる素材を正確かつ確実に押さえ
せんでしたが、私たちの製品や製造部品
製作上の段取りに悩む関係者からかなり
森井氏は、社員と共に考え抜いた末、
るチャックは、製品の精度を左右し、作
を展示しておけば、話が広がっていきま
の関心を得た。何よりも大きな成果は、
ひとつの部品を作るための、人の手をす
業性にもかかわる重要な道具である。
す。また新分野、たとえば比較的閉鎖的
中小企業の精密部品製造において、自
べて排した方法を思いついた。この自動
1989年の創業以来、ビデオデッキ、コン
な医療業界など普段見ることのできない
動化を進める新システムのヒントが得ら
化案は図面が完成し、現在、特許出願
ピューターのハードディスク、コピー機
分野も見ることができました。新分野で
れたことである。
の手続きが進められている。そして、自
のポリゴンミラー、自動車関連の部品な
伸ばしたいというのが新たな出展の趣旨
ど、時代の最先端にあった機器の、心臓
です」と語る。
「部品製作は自動化の方向に進みつつあ
動化を進めようと考えるある会社に対し
り、最終的にはロボットの導入も含めて
て、150万円ほどの見積書を提出する段
部の部品製造に欠かせない最新の道具
無人化を目指すことになるでしょう。精
階まで発展しているという。
を世に送り出してきた。
密旋盤でひとつの部品を作るためには、
2009年からは各展示会にも出展して
製作の段階ごとに加工(切削)方法を
27
◉ 新価値創造展について
2009年からさまざまな展示会に出展。今後
は大きな見本市のような展示会よりも、ユ
ーザーと直結できる場を重視し、医療関係
なども含め、とくに異業種開拓の可能性が
ある展示会に積極的に参加したいという。
2014年は、
「新価値創造展」に出展。ブー
スでは工作機械に自社製品を装着して実際
に動かし、来場者にミクロン単位の精度を
実感してもらう展示を行った。今回の出展
では、新分野に接し、部品製作の自動化に
結び付くヒントも得られた。
新価値創造展の様子
28
新 価 値 創 造 展 2 014
スマート
CASE 09
マツバラ金網株式会社 営業部 吉田麻美氏
出展者が語る
マツバラ金網株式会社
織金網技術が持つ可能性
金網メーカーが見据える
地場産業の未来
日本一の「織金網」産地として知られる大阪府松
原市。この地で、工業用金網の専門メーカーとし
て80年以上も地場産業の一端を支え続けているの
がマツバラ金網だ。
『ベストH!NT』賞を受賞した
同社の技術と出会いに迫る。
マツバラ金網株式会社 営業部 課長 樫原雅之氏
80余年の歴史を誇る金網技術が
地場産業を支える
ります。だからこそ展示会を活用して当
化のポイントだという。
金網を織る様子は機織りで布製品を織る姿となんら変わりはない
してもらいたいという思いから「デザイ
「微細な加工技術の質の差をどうアピー
ンメッシュ」という特殊な製品にも挑ん
ています」と語るのは、同社営業部課長
ルできるかが鍵になります。金網技術に
でいる。松原市役所1階エントランスに
住所
設立
織金網の歴史は古く、明治時代後半
の樫原雅之氏である。同社は、新価値
はまだまだ多様な可能性があり、いろい
飾られたドラクロアの『民衆を導く自由
に河内木綿で培った手織技術を活かして
創造展において11件の具体的な問い合
ろと応用できる分野があります」と営業
の女神』の絵画は、同社の金網技術で
生まれたといわれている。昭和9年に創
業したマツバラ金網は、まさに金網産業
の黎明期を知る会社のひとつである。そ
の歴史の証として、同市には明治から昭
マツバラ金網株式会社
社の技術を広く認知していきたいと思っ
せ、4件のマッチングが実現した。
金網技術の未知なる可能性
ますます広がる応用分野
資本金
代表者
従業員数
大阪府松原市岡6-1-25
1961年6月
─
東田 龍一郎
28名
部・吉田麻美氏が語るように、最近では
製作し寄贈したもの。これは、地場産業
特に高い精度が要求される電磁波シー
である金網で地元を盛り上げる「まちづ
◉ 企業概要
ルド、スクリーン印刷、航空宇宙工学、
くり」の一貫としての試みではあるが、
自動車のエアーバック、半導体、その他、
これが契機で付き合いの幅が今まで以
1934年(昭和9年)に個人創業し、1961年(昭
和36年)にマツバラ金網株式会社として設立。
松原市の地場産業としての「金網」の発展と研究
に力を注ぎ、現在は産業界の幅広い分野で重要な
役割を果たすフィルター、ストレーナー用をはじ
めとした工業用金網の専門メーカーとしての地位
を確立している。取り扱う各種金網は、織金網・
クリンプ金網・溶接金網・ウェッジワイヤースク
リーンデミスター・スパイラル金網(コンベアー金
網)
・積層金属フィルター、積層金属不織布フィ
ルターなどで、80年以上蓄積した実績やノウハウ
を駆使して、常に最新の技術を導入しながら時代
の要請に応えている。
和初期まで使用されていた金網用木製
マッチング先は主に産業用のフィルタ
ハイテク産業用の金網も開発されるなど、
上に広がったという。新価値創造展でも、
手織機械が日本で唯一現存している。
ー系の製品加工の案件で、重化学工業
その用途はますます広がっている。特に
高精度の技術を活かした同社の実績が
同社は、中小企業総合展の頃から東
製品関係の会社や表面処理の案件で商
最近は塩素に強いステンレス製の網に、
評価され『ベストH ! NT』賞を受賞。今
京での展示会に出展を続けており、新価
社などから引き合いがあった。
異物混入を防ぐ磁性を持たせたフィルタ
後も出展を通じて金網技術を広くアピー
値創造展へも自然な流れで出展を決めた。
金網の製網は、機械工程がほとんど
ー系製品の開発に力を入れている。現在、
ルしていくつもりだ。
「展示会を通じていつも実感するのが、
であるが、縦糸を機械にセットする作業
これは塩素の強い醤油用のフィルターと
「社会の発展とともに品質の高性能化、
金属加工部品でネジやバネは知っていて
は、手作業で行っており、手間もかかる
して大手企業に採用されており、そのニ
精密化は進んでいきます。このような時
◉ 新価値創造展について
も、織金網についてはほとんどの人が知
という。金網を製造・販売している会社
ーズは着実に高まっているようだ。
代の流れを反映し、金網に要求される技
らないということです。織金網は防虫網
は同社以外にもいくつかあるが、同規格
や茶こし、ザルなどの日用品から、普段
でもいかに使いやすい製品に仕上げられ
目にすることのない産業用のフィルター・
るか材料の溶解まで遡って保証できるト
ストレーナーなどの多種多様な製品があ
レーサビリティ体制が、この分野の差別
マツバラ金網の場合、年間で出展する展示会は決めているが、出展するのは全国各地から来場者が
集う東京開催の展示会のみ。新価値創造展は、他の展示会と比べて新規の顧客を獲得できるチャン
スが多いという。現在でも長く取引している顧客は、中小機構主催の展示会で知り合った顧客が多
い。
「展示内容で一番気にするのは、来場者が一番興味を持っていたものを事前に把握し、それをで
きるだけ見やすい様に配置することです」と吉田さんが語るように、展示会前にはブースレイアウト
や展示物のセレクトに関するリサーチに力を入れ、担当者間でよく話し合って決めるという。基本的
に展示会には毎年出展し、着実に社名と独自技術をアピールしていきたいという。
29
地場産業の金網で「まちづくり」
多くの声に耳を傾けニーズに対応
同社では金網をもっと多くの人に認知
術力も厳しくなっています。だからこそ、
展示会を通じて、いろんな声に耳をすま
し、ユーザーのニーズに応えていきたい
と思ってます」
(吉田氏)
。
松原市役所に飾られたデザインメッシュ
30
CASE 10
新 価 値 創 造 展 2 014
スマート
最も力を入れる「焼結石英」
出展者が語る
ヤマキ電器株式会社
展示会は新規獲得の場
独自技術の応用で
新たな仕事を開拓
ヤマキ電器は、1891年(明治30年)創業のヤマキ
商店を前身とする老舗企業。現在、
「待ち」の営
業から「攻め」の営業へシフトし、独自の技術を
武器に新規開拓を進めている。
工場内の様子。碍子を作っている
「攻め」の営業へシフトチェンジ
がい し
ヤマキ電器は、高圧配電用機器碍子
に対応できなくなるという危機感を抱く
互いにメリットがあります」
(伊藤氏)
。
ようになり、営業力を強化し、展示会な
このような人事改革が功を奏し、展示会
どにも積極的に出展するようになりまし
でのマッチングもいくつか実現している。
ヤマキ電器株式会社 営業部部長代理 営業2課 伊藤昌洋氏
最もアピールしたい
世界初の焼結石英
愛知県瀬戸市にある自社工場外観
ヤマキ電器株式会社
住所
や一般用電磁器をはじめ、近年応用範
た」と語るのは、出展した殆どの展示会
初出展の2013年中小企業総合展では、
出展の大きな狙いは会社のアピール
囲が広がっている遠赤外線放射セラミッ
に立ち会ってきた営業部部長代理の伊
セラミック加工技術を活かしたマッチン
だけではなく、独自技術を応用した新
設立
資本金
代表者
従業員数
愛知県瀬戸市宮脇町4
1949年12月21日
3,600万円
加藤 陽太郎
90名
クヒーターや各種スイッチなどの配線器
藤昌洋氏だ。攻めの営業へシフトチェン
グが実現。ほかにも、ある企業の相談に
たな仕事を開拓することである。展示
具およびファインセラミック製品などを
ジしたことにより、営業部員も2人から5
対してブース内で技術的な打ち合わせを
ブースでは技術力をPRできる製品を
◉ 企業概要
取扱う会社だ。歴史に裏打ちされた独自
人に増員。顧客開拓には技術や製造の
行ない、その後希望予算内でいくつかの
展示しているが、特に力を入れてアピ
技術を背景に高品質を追求し続けている。
現場を熟知した人員も必要との判断から、
試作品を作り、2年近くかけて軌道に乗
ールしているのが「焼結石英」だ。
「焼
この数年の間に、中小企業総合展in
それまで製造担当だった伊藤氏も営業部
せた案件もある。2014年の新価値創造
結石英は従来のセラミック紛体プレス
Kansai、インターネプコン、新価値創
に異動することになった。
展でもある企業から依頼を受けた製品に
製法を応用し石英ガラスの製造を可能
対して、試作段階の交渉を進めている。
にした、
世界初の全く新しい技術です」
ヤマキ商店として1897年(明治30年)に創業し、1949年(昭和24年)にヤマキ電器株式会社に
改組。以来、60余年の間に蓄積した技術とノウハウを発揮し、ニーズを先取りした新技術の研究開
発に注力しつつ、独自技術を駆使した高品質の製品を提供し続けてきた。同社が取り扱う製品は、
高圧配電用機器碍子をはじめ応用範囲の拡大が見られる遠赤外線放射セラミックヒーター、茶道用
ヒーター電気炭、食品用磁器容器およびファインセラミック製品など。高圧配電用機器碍子は高圧
鋳込み成形により、複雑な形状も一体型で成形可能で、数量の変動にも対応できる。また、碍子を
建材に応用したり、崎陽軒の食品用磁器容器など自社技術を様々な分野に応用してニーズに対応し
ている。なかでも、近年力を入れているのが、紛体成形で作った世界初の焼結石英ガラスである。
造展などに積極的に参加し、いくつかの
マッチングも実現。同社が、展示会に出
展するキッカケは何だったのか。
「当社は電力会社向けの碍子製品や横浜
展示会でのマッチングでも
技術を応用して対応
「やはり、製造現場を経験した私のよう
しょうけつせきえい
「現在試作段階なので、細かいところま
(伊藤氏)
。石英の需要が一番多いのは
でお話しできませんが、当社技術で応用
半導体分野であるが、焼結石英は半導
可能ならまったく違う分野でなければ前
体分野以外での活用に的を絞っている
名物としておなじみの『崎陽軒』の食用
な技術畑出身の営業担当者がいれば、
向きに検討しています」(伊藤氏)
。同社
という。この製品は、もともとお客様
磁器容器など長年に渡ってお付き合い
ブースを訪れた方からの技術的な質問に
では、営業部と技術部、社長を交えた毎
の要望から生まれ、共同研究して実現
いただいているお客様がいて、経営は安
即答でき、部品の調達、製造工程などを
週のミーティングで顧客からのさまざま
した製品だという。
「展示会はニーズ
定しています。そのため、これまで営業
イメージすることができます。その場で
な要望を情報共有しているが、もちろん、
発見の場。これからも展示会を通じて
にはあまり注力していませんでした。数
見積りし、スケジュールまで伝えること
展示会で仕入れた情報も毎回フィードバ
新たな出会いを大切にしていきたいで
年前からこのままでは変化していく時代
で契約や納品などの時間も短縮でき、お
ックしているという。
す」と伊藤氏は語る。
31
◉ 新価値創造展について
2013年以降、中小企業総合展in Kansai、インターネプコン、新価値創造展に連続して出展。出展
するメリットは、会社の名前と技術を広く認知してもらうこと、更に長く付き合えるお客様との出会
いだという。また、出展者同士のコミュニケーションによって相互の情報交換などの交流ができるこ
とも有効だと認識している。2014年11月の新価値総合展では、約80社と名刺交換し、10社ほどの
企業とビジネスが進行中だという。新価値創造展の印象は、初めての開催ということもあって展示
会自体の認知が低いように感じられた。ただ、他のメジャーな展示会と組み合わせて開催するなど
の工夫をすれば、来場者が流れ、異業種間のマッチングも増えるという相乗効果も見込めたかもし
れないと述懐する。今後も引き続き出展し続けることで会社の認知度をさらに広げていきたいと考
えている。
32
中小企業総合展 in
インターネプコン2014
CASE 11
株式会社横浜石英
37
中小企業総合展 in
Gift Show
CASE 12
中小企業総合展 in
専門分野の大規模展示会
岩正織物株式会社
販路開拓支援
39
中小企業総合展 in
FOODEX JAPAN
CASE 13
株式会社谷口農場
中小機構では、ギフト関連商品、
食品など中小企業のニーズが高い国内展示会への
出展支援を行っている。
出展者エピソードを、
展示会ごとに分けて紹介する。
41
中小企業総合展2014 in Kansai
CASE 14
株式会社坂製作所
43
CASE 15
二九精密機械工業株式会社
45
アイコンの見方
製造業
部品・材料(金属類等)
加工業
33
卸売業
製造業
生活資材
製造業
健康・環境
製造業
食品
製造業
クリエイティブ関連
サービス業
34
2014年 中小企業総合展
開催実績概要
FOODEX JAPAN 2014
第39回国際食品・飲料展
日時
会場
来場者数
※来場者はFOODEX JAPAN 2014 第39回国際食品・飲料
展の総来場者数
第43回インターネプコン
ジャパン
日時
会場
来場者数
2014年1月15日(水)~ 1月17日(金)
10:00 ~ 18:00(最終日は17:00まで)
東京ビッグサイト 東2・3ホール/
インターネプコン2014
29,105名
2014年3月4日(火)~ 3月7日(金)
10:00 ~ 17:00(最終日は16:30まで)
幕張メッセ 8ホール(第39回国際食品・飲料展
FOODEX JAPAN 2014 内)
75,766名
出展者数
中小機構ブース(中小機構総合展 in FOODEX JAPAN)
74社
◉ 開催概要
アジア最大級の食品関連専門展示会において、経営革新に果敢に取り
組む地域の中小企業の国内外への販路開拓支援を行った。
※来場者は第43回インターネプコン ジャパンの
総来場者数
出展者数
中小機構ブース(中小機構総合展 in インターネプコン)
192社
◉ 開催概要
アジア最大級のエレクトロニクス製造・実装技術展において、
経営革新に果敢に取り組む半導体メーカー、自動車/電装品
メーカーなどの国内外への販路開拓支援を行った。
中小企業総合展2014 in
Kansai
日時
第77回東京インターナショナル・
ギフト・ショー春2014
日時
会場
来場者数
2014年2月5日(水)~ 2月7日(金)
10:00 ~ 18:00(最終日は17:00まで)
東京ビッグサイト 東6ホール(第77回東京
インターナショナル・ギフト・ショー春2014 内)
196,378名(海外来場者 3,360名含む)
会場
来場者数
出展者数
2014年5月28日(水)~ 5月30日(金)
10:00 ~ 18:00(最終日は17:00まで)
インテックス大阪6号館 Aゾーン
24,455名
301社・団体
◉ 開催概要
経営革新に取り組む国内中小企業・ベンチャー企業の更なる発展を
目指し、国内中小企業・ベンチャー企業等の製品・技術等を展示す
る場を設け、販路開拓や企業間ネットワークの強化を行うビジネス
マッチングの機会を提供した。
※来場者は第77回東京インターナショナル・ギフト・ショーの
総来場者数
出展者数
中小機構ブース(中小機構総合展 in Gift Show)
108社
◉ 開催概要
日本最大のパーソナルギフトと生活雑貨の国際見本市において、経
営革新に果敢に取り組む地域の中小企業の国内外への販路開拓支
援を行った。
35
36
中 小 企 業 総 合 展 i n イン タ ー ネ プ コン 2 014
CASE 11
株式会社横浜石英 代表取締役社長 新川一郎氏
出展者が語る
来場者が語る
よこ はま せき えい
株式会社横浜石英
東ベ化工株式会社
目的意識を持って訪れた展示会
ピンポイントな加工技術
見積りから始まる可能性
生き残りをかけた戦いは
展示会での出会いから
石英ガラスの特殊な加工を
高精度で行う横浜石英との出会い
さまざまな材料の加工を業務と
石英ガラスは透明度が高く高温にも強い。先端技
術分野の製品製造において、製造装置の部品とし
て欠かすことができない。この石英ガラスの特性
と高い加工技術を売り込むために、株式会社横浜
石英が特に力を入れているのは展示会での見積り
依頼の獲得である。
する東ベ化工では、他社からガラ
スの加工の引き合いもある。しかし、
基本的にガラス加工は外注として
おり、技術力や対応個数などの条
件を考慮すれば、仕事を依頼でき
本社工場で研削作業を行っている様子
手作業によるナットの研削。女性のきめ細やかさ
が作業に生かされている
る業者は少ない。九州営業所から、
本社社屋。品川区西五反田で創業し、長く
操業していたが、14年前に現在の大田区城
南島に移転した。
あるガラス加工の問い合わせがあり、対応できる業者を探すために、本社
営業部技術部長の有富淑章氏は展示会に赴いた。
てきたが、潜在的な顧客開拓のため、最
していただけますか?』とのことで、そ
近は各展示会の出展にも意欲的である。
れから取引きが始まりました。後に、そ
「展示会は、名刺交換の貴重な機会と考
れが福岡支社のお仕事だとわかり、直接
横浜石英は、
創業当初から石英ガラス
えています。ひとつの展示会で少なくと
やり取りさせていただくようになり、ガ
の精密加工を行ってきた。石英ガラスは
も150人の方々と交換することが目標で
ラス部品が必要なときは弊社に声をかけ
透明度、純度ともに高く、半導体の製造
す。去年は3つの展示会に出展しました。
てくださっています」
(新川氏)
。
装置には金属部品よりも石英ガラスが多
専門展の“同業種”でアイディアを得る
東ベ化工からの発注は、大きくても1
用されるのだという。
ことも大切ですが、今後は“異業種”の
センチ角ほどの部品を5 〜 10個。商社
代表取締役の新川一郎氏は、
「日本で
新たな顧客開拓を促進したいと考えてい
を通じて提示されるのは、図面と材質、
は、半導体産業の衰退で大手メーカーが
ます」
(新川氏)
。
仕上がりの状態などである。技術者どう
潜在的な顧客開拓のために
展示会への出展を重視
石英の生産から撤退していますが、加工
工場は現在も健在で、中国・韓国・台湾
などと奮戦しつづけています。1990年
見積り依頼先の一社となる
ことからすべての取引きが始まる
しの打ち合わせはなく、それだけに技術
力、正確な作業が求められる。
新たな顧客と案件を進める際に大切
の後半くらいからは液晶パネルが出回り
これまで横浜石英は中小機構が関係
なのは、まず“見積り”である。展示会
始め、
ガラス部品はその検査台などにも
する展示会を中心に出展してきた。昨年
への出展に対応しながら経理をこなす新
使われています。この分野も開拓し、現
は中小企業総合展 in インターネプコン
川尚子氏は、
「見積りさせていただき、
在では半導体と液晶関連で半々の割合で
2014に出展し、大田区に本社を置く東
金額が合えば単品注文でも受けます。見
部品製造を行っています」と業界の現状
ベ化工とマッチングすることができた。
積りを依頼されなければ何も始まりませ
「東京本社の部長様にお越しいただき、
ん。ですから、まず見積り先の一社に加
横浜石英は、インターネット発達の早
その後お電話をいただきました。
『小さ
えていただくことが先決です」と、新た
い時期からホームページで集客につとめ
なガラス部品で数が少ないですが、対応
な顧客開拓への難しさを語る。
を語る。
37
「インターネプコンで横浜石英さんとお話ができて、改めてこちらからお
株式会社横浜石英
住所
設立
資本金
代表者
従業員数
本社:神奈川県横浜市旭区都岡
町5-1
福島工場:福島県東白川郡塙町
大字西河内字上福沢1-19
1992年5月
5,000万円
新川 一郎
36名
◉ 企業概要
石英ガラスの精密加工から出発して、パイレック
スガラス・特殊ガラス・シリコン・セラミック・樹
脂・その他非鉄金属などの精密加工が現在の業務
である。大型製品の加工からレンズ・ネジなどの
特殊加工、各種材料の微細穴開け加工までを行う。
◉ 中小企業総合展 in
インターネプコン2014
について
新たな顧客を増やすために、地元横浜で開催され
るテクニカルショウヨコハマをはじめ、新価値創造
展(中小企業総合展・中小機構主催)には東京・
Kansaiなどにはつねに出展している。自社の技術
を必要としている会社が出展し、研究員の来場も
多いと思われるインターネプコンジャパンにも出展
した。そして、新たな顧客である東ベ化工との取
引きが始まった。
伺いして内容を説明。それからお付き合いが始まりましたが、それまでは
条件を満たす業者が見つからなかったので、他社から注文を受けてもお断
りすることがありました。高い精度を求められる加工ですが、ミクロン単
位で管理していただいています。横浜石英さんだからできる技術で、現在
ひとつの案件が順調に進んでいます」
明確な目的意識を持って展示会を訪れることで、効率よく目的を達成し
たことが伺える。
住所
設立
代表者
本社工場 東京都大田区城南島4-5-2 資本金
1961年10月
4,500万円
従業員数 68名
佐渡谷 修治
◉ 企業概要
戦後、ベークライトの販売で創業し(社名に由来)
、加工に業務を広げる。現在では、各種の樹
脂をはじめ各種金属、ゴム、セラミックなどさまざまな元材を加工。切削を中心にダイキャスト、
射出、圧空、真空、プレスなどの成型、曲げ・溶接などさまざまな加工に対応する。設計、計測、
試作開発、金型製造なども行う。東ベ化工は、東ベ精巧、東ベ化成、PHILIPPINE TOHBE
CORPOLATIONなどを含めた東ベグループの筆頭である。
◉ 中小企業総合展 in インターネプコン2014について
インターネプコンには専門技術を持つ中小企業が多く出展することから、同社はガラス加工に関
する専門技術を持つ会社との繋がりを求め来場していた。そのなかで、中小機構ブースに出展
の横浜石英と出会い、取引きに繋がった。
「横浜石英さんのような技術を持つ会社はなかなかあ
りません。取引きも順調に進んでいますし、今後も取引きが続いていくことを願っています」
(有
富氏)
。
38
中小企業総合展 in Gift Show
CASE 12
アシピタが作られているタイの工場
出展者が語る
来場者が語る
いわ しょう おり もの
こーく
岩正織物株式会社
COUXU株式会社
海外のバイヤーを招待して
マッチングを支援
試着してもらうことが
展示会最大のメリット
効果が即実感できる商品
メディア運営で
海外取引の促進
COUXUは2013年に設立された
製品がどんなに素晴らしくても露出や宣伝力、営
業力が弱ければ勝負できない。
日本商品の受託代行会社。アジア
を中心に31カ国のバイヤーと取引
展示会を通じて本物の商品をアピールし続ける岩
正織物が目指す次なるステージとは?
きしており、買い手が欲しがる日本
製品を事前に聞き出し、売買の橋
渡し役を担っている。2014年のギ
岩正織物株式会社 専務取締役 岩田茂裕氏
世界に展開している自社商品「アシピタ」
海外のバイヤーをギフトショーに招待
フトショーでは、日本製のスマートフォンケースを探していた香港やシン
ガポールのバイヤーを招き、出展企業とのマッチングを実現。同社代表の
大村氏は、
「日本企業は海外での販売をやりたいけど、よくわからないとい
う理由などで断念しているケースが多い。そんな会社に海外に出るキッカ
明していても半信半疑の顔で聞いている
伝用映像を流し、来場者に注目される工
人が多いです。ただし、女性の方であれ
夫をしている。
「アシピタは画期的な商
ば、その場で履いて、たった数歩歩いた
品ですが、薬事法をクリアしながら説明
岩正織物は社名に「織物」とあるよう
だけで私の説明が本当だったことを実感
しなければならないところがネックです。
に、もともと織物や着物を取り扱う会社
してくれます。展示会で歩き疲れ、足が
宣伝は露出が大事。履いてみせるのも宣
資本金
である。そんな同社が展示会などを通じ
くたくたなのでなおさらですよ。履けば
伝ですが、まず商品を目に止めてもらう
代表者
て今最も力を入れているのが、着物との
実感できる商品だからこそ、PRや露出
ことが大事。認識してもらってからが勝
関連から日本の伝統的な履物や足袋をヒ
の仕方がとても大事なんです」と語るの
負です」
(岩田氏)
。
ントに開発した「アシピタ」という商品だ。
は、同社専務取締役の岩田茂裕氏だ。
同社は、ギフトショーの他にも美容専
この製品は足指に適度な刺激指圧を与
同社がギフトショーなど展示会に出展す
門の展示会にも積極的に出展している。
えることにより、潜在的な体の運動能力
るメリットは、商品の効果効能を実際に
2014年秋の展示会では、新宿のファッ
を高め、足の冷えとむくみを5分ほどで
試せる場であることが大きいという。そ
ションビルの地下で営業する靴屋とマッ
解消し、身体の姿勢を正し、美脚効果も
れを実証したのが、某有名百貨店の展
チングし、過去には大手劇団事務所やテ
高いとして注目されている。特筆すべき
示会に出展した際、百貨店の社員が一
レビ局のプロデューサーからも声がかか
は、世界5カ国で特許を取得し、名古屋
番買ってくれたという事実だ。立ち仕事
ったことがあるようだ。
「最近では海外
大学医学部と機械工学部でも効果を証
の社員が実際に履いて、その効果が瞬
にも積極的に進出し、
タイでも人気が出
明するなど、医学的な見地からも実証さ
時に口コミで伝わったという。
ています。ドイツで行われた医療系の展
履けば分かる
だからこそ重要な宣伝力
れている商品だ。
「アシピタについてどんなに説明しても、
実際に使ってみないとその効果は実感で
きません。ギフトショーでもブースで説
39
日本から世界へ
着実に広がる認知度
展示ブースでは必ず「アシピタ」の宣
示会でも実際に何社かとマッチングしま
した。
次はアメリカ進出も計画中です」
(岩
田氏)
。
アシピタが踏みしめるステージは、
日本から世界へと着実に広がっている。
岩正織物株式会社
住所
設立
従業員数
愛知県名古屋市中村区名駅
5-16-17
─
1,200万円
岩田 一男
─
◉ 企業概要
織物、着物関連商品を取り扱う会社として名古屋
市で創業。現在、同社の主力製品として急成長し
ているのが、伝統的な履物や足袋をヒントに同社
の新事業として開発した画期的な製品「アシピタ」
である。健康および美容にも寄与する女性向けの
商品としてさまざまなメディアでも注目され、現在、
世界5か国でも特許を認定。世界進出も着実に進
め、日本を代表するヘルスケア製品として躍進す
る可能性を秘めている。
◉ 中小企業総合展 in
Gift Showについて
展示会自体がメディア的な役割を果たし、商品を
知ってもらうキッカケになる。ほとんどの展示会に
立ち会ってきた岩田氏は、
「展示会の最大メリット
は、製品を宣伝する最適なチャンスであるというこ
と。商品が良いと実感すれば間違いなく購入して
くれます」という。展示会はその場で使用して効
果が実感できるので、PR的要素も大きい。今後も
各展示会を有効活用していきたいという。
ケを作ってあげるのも我々の使命なのです」と語る。同社ではこのような
海外ビジネスのチャンスを広げるために「セカイコネクト」
(world-conect.
com)というメディアをネット上で運営している。海外での交渉ノウハウ
や各国バイヤーからの情報も掲載しており、商品の仕入れも可能だという。
「日本の輸出額を上げていくことが我々の使命だと思っています。ギフト
ショーも、英語表記の案内、通訳スタッフ、英語での映像PRなどの工夫を
すれば、海外とのビジネスチャンスがもっと広がると思います」
(大村氏)
。
住所
設立
代表者
東京都千代田区神田東松下町31-1 神田三義ビル4F
資本金
2013年11月
─
従業員数 6名
大村 晶彦
◉ 企業概要
海外バイヤーをターゲットに日本商品の受託代行を行う会社として2013年に設立。同社は約31
か国とパイプを持ち、日本の製品を買いたくても情報不足などで二の足を踏んでいる海外のバイ
ヤーと、海外と取引きしたくてもコミュニケーションや些末な手続きなどで敬遠している日本の
会社を円滑に結び付け、最適なマッチングを実現させることを使命としている。海外バイヤーと
日本商品をダイレクトに結ぶ「セカイコネクト」
(world-conect.com)というメディアも運営して
いる。
◉ 中小機構総合展 in Gift Showについて
同社は、東京インターナショナル・ギフト・ショーを海外のバイヤーに日本製品を実際に見て、
触って、その良さを実感してもらえるショーケース的な役割りを果たしている展示会だと位置づ
けている。そのなかで、
「中小機構ブースは、地方の良質な商品があり新商品発掘の場としても
今後有効に活用していきたい」と代表取締役の大村氏は語る。同社と海外のバイヤーにとって
中小機構ブースは、地方にある商品を直に触れ、説明が聞ける大きな機会だと捉えているようだ。
40
中小企業総合展 in FOODEX JAPAN
CASE 13
株式会社谷口農場 営業部 部長 小関拓哉氏
出展者が語る
来場者が語る
株式会社谷口農場
丸紅食料株式会社
展示会は新商品やメーカー発掘の場
全ての食品が関心の的
新規顧客の獲得は
販路開拓だけでなく
新ビジネスモデルの探索
北海道産ストレートジュースと
確かな生産方法が決め手に
FOODEXでの出会いから谷口農
生産から加工販売までを行う谷口農場は、有機農
法での栽培を行なっており土や人に優しい農業を
目指している。農場と隣接する工場で作る加工品
は、味・鮮度ともに申し分ない。そんな確かな商
品を展示会で紹介。展示会後にいくつかの取引き
が成立した。
場との取引きが始まった丸紅食料
は、展示会を新商品・メーカー発掘
の場と捉えている。
「私が現在担当
しているお客さまは、美味しくて添
加物が少ないこだわりの商品を求
事務所と隣接する工場。写真はトマトゼリーにラベルを貼っている様子
FOODEXでメイン商品としてPRしたオリジナル野
菜ジュース3種類
丸紅食料株式会社 食品農産本部食品部
食品二課長 能川小太郎氏
めていらっしゃいます。そのお客さ
まに提案をするために、展示会に足を運び、条件にマッチした商品・メーカ
ーさんを常に探しています」と語るのは、食品部課長の能川小太郎氏だ。
谷口農場と丸紅食料は、ストレート野菜ジュースの取引きを行っている。
生は大学を卒業しても思ったところに就
力を入れているのが北海道の素材のみを
職できない。そうすると、新規就農とい
使った『北海道ストレート野菜ジュー
う話になるんですが20代で多額の借金
ス』
。ベジレッド、ベジイエロー、ベジ
1968年に法人化し現在で48年目を迎
のリスクを背負うことは現実的ではない
グリーンの3種類で展開されており味わ
える谷口農場。設立から30年は、コメ
んです。そのことを考えると谷口農場に
いもそれぞ れ。中 小 企 業 総 合 展 in
中心の農業を行っており法人化されてい
就職できたことは、幸運だったと思いま
FOODEX JAPANでは、この3種類のジ
たが家族経営が中心の形態だった。転
すし、感謝しています」と語る。
ュースをメインに紹介をしたところ多く
◉ 企業概要
丸紅食料は、顧客ニーズに対応する総合商社を基本に、OEMでの食品
機を迎えたのは、今から約20年前、敷
北海道で農場運営を行っていく上での
の引き合いがあった。
プロデュース事業などにも注力していく予定だという。
地内に食品加工の工場を建設し加工品
難しさを、
「北海道は半分が冬なので、
「いくつかの企業さんと取引きをさせてい
の販売を始めたことにより、企業として
収穫できる期間が短い。弊社は加工工
ただき、実際の成果がありました。大手
整備されていった。
場もあるので稼働させなければいけない
小売店さんに扱っていただいたり、丸紅
現在、会社の営業部門や管理責任者
難しさもある。冬場に売れるものを考え
食料さんには人参ベースのジュースを扱
の営業部長・小関拓哉氏は農業法人に
工場の稼働率を上げることを考えていま
っていただいています。丸紅さんは農産
1900年に谷口岩次郎氏が富山県魚津市より入植
し現在の基礎を作る。1968年に有限会社谷口農
場を設立。1992年に自社工場を建設、自社ブラン
ド・トマトジュース「ゆうきくん」を開発。2000
年には、農場直営店「まっかなトマト」を開設し野
菜の直売を本格的に開始する。2008年に株式会
社に移行、第16回北海道加工食品フェアにおいて
スイーツトマトで優秀賞受賞。2009年には、旭山
動物園に直営店「ファームZoo」をオープンさせる。
ついて、
「僕は北海道の酪農系大学を卒
す」
(小関氏)
。
物も扱っておられるので、今後もいろい
農業の厳しさ
北海道の難しさをバネに
業して入社し、今年で13年目になります。
農業に就職したのは農業の現場に興味
を持ったということと自分で農家をやる
こだわりの商品と企画で
独自の路線を貫き通す
ろな部分でお取引きさせていただけるの
ではないかと思っています」
(小関氏)
。
同社は、自社製品の開発販売と同時
のがイメージできなかったんです。そう
谷口農場は、厳しい環境のなか、三
に収穫や加工、田植えなどの体験農場
なると、就職ということになりますが、
健農場(大地の健康、作物の健康、人々
にも力を入れている。体験を通じ北海道
そもそも農場法人自体が少ないんです。
の健康)を理念に掲げ多くの自社製品を
の魅力、農場の魅力を発信している。展
あっても求人が出ていない。農学部の学
世に送り出している。なかでも、現在、
示会への出展も意欲的に考えている。
41
株式会社谷口農場
住所
設立
資本金
代表者
従業員数
北海道旭川市東旭川町共栄255
1968年3月
4,400万円
谷口 威裕
25名
◉ 中小企業総合展 in
FOODEX JAPANについて
FOODEXに出展した理由は、新規の顧客を開拓す
ること。単純な販路開拓だけではなく、加工品の
提案などの新しいビジネスモデルを探ることだっ
た。
「今回FOODEXに初めて出展させていただいた
んですが、毎年出ていた展示会だと少しマンネリ
を感じたことと異業種の方があまり来場しないこと
もあって、FOODEXに出展を決めました」
(小関氏)
。
谷口農場は、独自の商品と工場を持つ強みから多
くの出会いに繋がった。
「社内の規定になるんですが、お取引き前にメーカーさんには工場を見せ
ていただくことになっています。工場の運営や衛生面、取引き数の生産が
可能かどうかなど調べさせてもらっています。谷口農場さんは、北海道の
農作物を使った確かな商品としっかりとした生産体制が確立されていてお
取引きをさせていただくことになりました」
(能川氏)
。今後は、他の商品
の取り扱いも視野に入れているという。
住所
設立
代表者
東京都中央区京橋1-12-5 京橋YSビル
資本金
1974年3月
10億円
従業員数 158名
島崎 隆平
◉ 企業概要
1974年に、食料専門商社(親会社:丸紅株式会社)として設立。飲料事業、食品農産事業(加
工食品、農産物、食品原料など)を2本の柱とし事業を行っている。時代と共に多様化が進む
食のニーズに対応した商品を提供し続けている。飲料事業では、製造工場を傘下に置きメーカ
ーとして機能することで飲料製品用原料から家庭向けの製品まで幅広く供給している。食品農
産事業では、味噌が主力事業となり首都圏と関西圏に味噌専門問屋を置いている。
◉ 中小企業総合展 in FOODEX JAPANについて
丸紅食料は、食料専門の商社として常に新しい食品を探しているため、展示会には数多く足を
運んでいる。中小機構のブースに出展している中小企業は、商品力もあり大手との取引きが進
んでいないところも多数あり掘り出しものの企業が多いという。新しい商品とメーカーの発掘が
命題になっている同社は展示会をニーズ発見の場と捉えている。
42
中 小 企 業 総 合 展 2 014 i n K a n s a i
CASE 14
出展者が語る
来場者が語る
さか せい さく しょ
株式会社坂製作所
株式会社エナミ精機
未知なる技術への関心
同世代社長へ高まる期待
自社製品で躍進を狙う
展示会活用で潜在
ニーズを掘り起こす
情報交換や見積り検討で
交流してきた両社
創業以来、薄型板金プレスライ
展示会は自慢の技術を見せる場である一方で、想
定外の用途を発見するチャンスにあふれている。
ン、カシメ装置などニーズに合わせ
た加工方法・機械装置を提案し、
自社の製品開発に再起を託した坂製作所は、展示
会をきっかけに躍進する。
開発から設置まで一貫して対応し
ているエナミ精機。独自の視点を
持ちながら優れた金型づくりの技
株式会社坂製作所 代表取締役 坂 栄孝氏
(上)自社工場。古き良き町工場の雰囲気
(下)改良が進む自社製のコンプレッサー
術を活用し新しい工法の開発に取
株式会社エナミ精機 代表取締役 江波 明氏
り組み続けている。
坂製作所の社長とは約3年前、京都機械金属中小企業青年連絡会のメ
ンバーとして知り合って以来の付き合いだという。中小企業総合展2014
悟で開発に着手したのです」
(坂氏)
。結
力まで上がらない製品もあります。しか
果的に、同社の未来を賭けて作った初め
し、当社製品は静かで吐出圧力まで上が
ての自社製コンプレッサーの完成が、中
ります。しかも小さく、オイルフリーな
坂製作所が積極的に展示会に出展し
小企業総合展2014 in kansai出展のキ
ので持ち運びに便利で、工場のセル生
ようと決めたのは2010年。それまで同
ッカケになった。完成と同時に京都府の
産方式に対応できます。実は大手自動車
社は、切削加工をメインにした下請けだ
経営革新計画承認や元気印中小企業認
メーカーから引き合いがあり、現在サン
けの仕事をしていたが、グローバル化が
証などを受け、
「関西ものづくり新選
プルで数台納めています」
(坂氏)
。
◉ 企業概要
進むなかで顧客の製造拠点が海外に移
2014」や「京都知恵ビジネスコンテスト」
3日間の展示会で名刺交換できたのは
転すると受注量が一気に落ち込んだ。そ
を受賞したことで出展を決めた。
約150枚。そのうち十数社とのマッチン
1960年(昭和35年)に創業して以来、
「まごころ
を製品に映して」を合言葉に大手機器メーカーの
下請け部品加工業者として安定した技術力で堅実
な経営基盤を構築。2010年には省エネ・極小型・
低騒音の「SAKAパーソナルコンプレッサー」とい
うオリジナル製品の開発に成功。さらに他社との
コラボにより「ささやきくん」というパッケージ型
コンプレッサーユニットも開発し、現在、自社製品
の量産化を目指している途上である。
どん底から這い上がる覚悟の
自社製品開発
こで、技術を売り出して新規の顧客開拓
に乗り出す決断を下し、2010年に関西
出展者同士のコラボも実現
グが実現した。また、出展者とのコラボ
で実現した製品が
「ささやきくん」
だ。
「こ
の展示会に初めて出展した。
「初出展の
同社が製作した小型コンプレッサーの
れは、音を吸収して熱に変えるボックス
時は加工品しか展示物がありませんでし
特徴は空気容量にある。今まで市販され
なんですが、この中に当社のコンプレッ
た。それだけではニーズが拾えないこと
ている小型コンプレッサーでも20リット
サーを入れると53dbの音が43dbまで下
も分かっていたので、そこから自社製品
ル以上の空気容量があり重くて騒音が
がるんです」と坂氏も語るように、医療
づくりがスタートしました」と語るのは
大きい。5リットル及び10リットルの製
機器装置の実験などに使用される画期
的な製品だ。
同社代表取締役の坂栄孝氏だ。
「実は展
品で従来の製品でカバーされない領域の
示会に出展し始めた頃にリーマンショッ
需要を同社は見出した。更に、省エネで
「展示会は、想定しなかった用途が見つ
クが起こり、いろんな後押しから自社製
コンパクトなので省スペースにもなり、
かるチャンスもあります。今後も積極的
品を作らないといけない状況になってき
音も静かである。
「同じクラスで音は静
に出展していきたいです」
(坂氏)
。
ました。まさにどん底から這い上がる覚
かだけど工業用として要求される吐出圧
43
株式会社坂製作所
住所
設立
資本金
代表者
従業員数
京都市右京区花園伊町44-12
1973年10月
4,000万円
坂 栄孝
18名
◉ 中小企業総合展2014 in
Kansaiについて
展示会では約150社の方と名刺交換し、そのうち
の約1割のお客様とのマッチングを実現した。展示
会は自社技術を披露する場であり、自社製品の想
定外の用途を広げるチャンスでもある。しかも中
小企業だけでなく大手企業も多数来場しており、
ビジネスチャンスは計り知れない。また、埋もれて
いるニーズも掘り起こせ、出展者同士のコミュニ
ケーションも有効だ。出展料の安さからみた費用
対効果も魅力。同社としてはもっと多くの人に自社
の技術を知ってもらいたいというのが願いである。
in Kansaiで坂製作所のブースを訪れ小型コンプレッサーの存在を知った。
「今回の展示会でも出展していたコンプレッサーについて見積りを依頼し
ており自社のニーズにフィットしているか検討しているところです」と語
る代表の江波氏だが、坂製作所が次に開発検討している少し容量の大き
なコンプレッサーへの期待値は高い。江波氏は、
「社長の仕事は外に出て
多くの人と会い新しい仕事を取ってくること」と語る。今後も、展示会を
通じた「未知なるニーズとの出会い」に期待を寄せる。
住所
設立
代表者
京都府舞鶴市大字平小字丁田1757
資本金
1968年3月
3000万円
従業員数
代表取締役 江波 明
35名
◉ 企業概要
1968年の創業以来、独自の視点から、より優れた金型づくりとプレス加工の可能性に挑戦し続
けている。プレス加工では、プレス金型を部品単位で設計・製作し、金型補修部品交換時に高
い再現性を実現。10ミクロン以下の加工精度を追求し、精密部品は三次元測定機で全数検査し
ている。機械装置の設計・開発から製造・組み立てまで一貫生産し、薄型板金プレス自動加工
ライン、大手家電メーカー世界11 ヶ国50社以上の実績を持つ。
◉ 中小企業総合展2014 in Kansaiについて
中小企業総合展には過去2 ~ 3回ほど出展している。
「展示会にはこれまで何度か出展しました
が、一回の出展で100社以上の会社と名刺交換でき、その中からいくつかの会社と新たなビジネ
スを生み出せる可能性が広がることは有意義です」と語る江波氏。展示会のメリットは、やはり
「未知なるニーズとの出会いと開拓」だと言い切る。ただ、関西の企業だからこそ「東京だけで
なくもっと関西の集客にも力を入れて欲しい」という要望もある。
44
中 小 企 業 総 合 展 2 014 i n K a n s a i
CASE 15
二九精密機械工業株式会社 営業部 係長 吉岡素弘氏
出展者が語る
ふた
く
せい みつ
き
来場者が語る
かい こう ぎょう
二九精密機械工業
株式会社
株式会社がまかつ
開発担当者の情熱とこだわりが
精度の高い釣竿を作り出す
世界初βチタンパイプ
唯一無二の技術が
あらゆる課題を解決する
釣竿を扱うのは人間
感覚の追求に終わりはない
二九精密機械工業との付き合い
世界のなかで二九精密機械工業にしかできないβ
チタン合金を直径6mm以下の小径パイプにする技
術。開発から約7年、手にした技術が各分野のさ
まざまな課題を解決する。ステンレスに比べ軽く
て強固なβチタン合金が展示会をキッカケに世界
に羽ばたく。
は約4年。当時の開発担当者がテレ
ビを観てアプローチをしたのがキッ
カケ。当初は、鮎と船竿に使う穂
先の2種類での取引きだった。
中小企業総合展2014 in Kansai
本社近くにある京都工場。ここでβチタン開発などが行われている
βチタンパイプを使った釣竿。穂先に金属を使う
と手に伝わる感覚が研ぎ澄まされる
兵庫県西脇市にある本社。近くには杉原川
と加古川が流れるおどやかな雰囲気の場所
で「いろいろなターゲット(魚の種
類)によって、穂先のしなり具合が違うので、そのことを二九さんに話し
たところ『熱処理の温度や時間を変えることでしなり具合が変わりますよ』
飽くなき技術への挑戦
「夢の扉+」で取り上げられたこともあ
Kansaiに出展することになり、
『がまか
というお話をいただき、そこからバリエーションが増えていきました」と
二九精密機械工業
株式会社
り、100社を超える問い合わせがあった。
つ』さんに来場の案内をさせていただき
そのテレビをキッカケに付き合いが始
ました。そこで、展示商品を見ていただ
創業から約100年、金属の切削加工を
まり、中小企業総合展2014 in Kansai
きβチタンパイプの可能性を更に認識し
住所
得意とし、経験と実績から多くの信頼を
で取引き拡大に繋がったのが、兵庫県の
ていただきました」
(吉岡氏)
。展示会後
設立
得てきた。その実績に胡坐をかくことな
釣り具メーカー「がまかつ」との出会いだ。
には、2種類だった釣竿の種類が10種
技術の先にある多くの出会い
く、更に、技術開発を進化させることで、
二九精密機械工業の技術が世界から注
目を浴びている。
二九精密機械工業が国内外から注目
展示会で再認識
趣味の世界の感覚的こだわり
同社の営業部係長の吉岡素弘氏は、
類にまで拡大した。
代表者
従業員数
同社は、メディカル分野での更なる拡
◉ 企業概要
大を目指しており、2013年にβチタン
1917年3月に創業し、1953年1月に法人化。現在
では、βチタンパイプの加工、レーザー加工、各
種研磨、レーザー溶接・ロー付けなどを中心に行
っている。35年前にメガネのフレーム部分のツル
ネジを世界で初めてマイナスからプラスネジに変
えるなどの功績を残している。会社のスローガン
である「4M+S=29」は、人・素材・機械・方法
の頭文字のMを取って4M+S(スキル)が足され
ると二九精密機械工業になるという意味。
パイプの技術を生かした単孔式腹腔鏡
を集めるキッカケとなったのが、βチタ
「通常の釣竿は先端までカーボンででき
手術用鉗子「DraCo」の開発に成功。
ン合金をパイプにする技術。βチタン合
ているんです。カーボンは軽くてしなる
この器具は、平成のブラックジャックと
金は、眼鏡のフレームなどに使われる形
ので使いやすいんですが、先端に金属を
呼ばれる外科医・金平永二氏と共同開
状記憶の金属。曲がっても元に戻る上に
使うと餌の食い付き、手に伝わる感覚が
発を行い国内外から多数の評価を得た。
丈夫で軽く、更にはステンレスと比べ錆
違うということらしいです。βチタンパ
こちらの共同開発の様子もTBSテレビ
びにくいというメリットの多い金属だが、
イプを使って先端部分を作れないかとい
「夢の扉+」で取り上げられた。
「世界の
細いパイプにするには難題が多く、開発
う問い合わせを『がまかつ』さんからい
人々に二九の技術を役立てたい」との思
から約7年かけようやくパイプにする技
ただきお付き合いさせていただくことに
いからアメリカやドイツの展示会へ積極
術を確立した。
なりました」と出会いのキッカケを語る。
的に出展し、自社技術のアピールを行っ
この技術に、医療業界をはじめとする
「その後、お付き合いを重ねていくう
ている。
多くの企業が関心を示した。TBSテレビ
ちに、弊社が中小企業総合展2014 in
45
資本金
京都市南区唐橋経田町33-3
1953年1月
3,000万円
二九 良三
約130名
◉ 中小企業総合展2014 in
Kansaiについて
2014年の展示会は、特別展示で出展。いままで取
引きのあった会社などがブースに訪れ価値を再発
見し、取引きの拡大につながった。医療分野での
海外での取引きが加速するなかで、アメリカやド
イツの展示会に積極的に出展。国内では集客の見
込める展示会に出展を予定している。
開発担当者は語る。
βチタンパイプを使用する以前は、カーボンマテリアルやグラスファイ
バーを使い工夫しながら手感度を上げていた。しかし、二九精密機械工
業との出会いによりβチタンパイプを使うことで水の中の魚の動きが手に
取るようにわかるようになったという。
開発担当者は「
『がまかつ』の釣竿はライトユーザーには敷居の高いイ
メージがある。しかし、誰が使ってもさすがと思われるような釣竿を今後
も追求していきたい」と釣竿に対する情熱を語る。
住所
設立
代表者
兵庫県西脇市郷瀬町417
資本金
1955年5月
5,000万円
従業員数 255名
藤井 敏孝
◉ 企業概要
創業以来、釣り具(釣竿、釣鈎、フィッシングウェアなど)を製造販売を行っている企業。
「自
然との共存」をコンセプトに、究極のフィッシング・スポーツを探求している。商品には材料工学、
機械工学、人間工学、人間の勘や感性を取り入れあらゆる角度から開発を行っている。高い技
術力を誇り、世界中に愛好者がいる。
◉ 中小企業総合展2014 in Kansaiについて
同社では、釣竿に使える素材や技術を常に探しており、それらを探す目的で展示会に訪れること
が多いという。
「自分の部署はマテルアル関連ですが展示会には行きます。部署自体がどんどん
新しいものにチャレンジしていくところなので、その為に展示会を活用しています」
(開発担当
者)
。自分が関わった商品で、完璧だと思える商品が年に何個かあると開発担当者は語る。そん
な満足のいく商品を目指し素材や技術を日々探している。
46