下肢損傷学 総括 3

下肢損傷学
外傷性股関節脱臼
交通事故によるものが多い(ダッシュボード・インジュリー)→関節窩後縁骨折を伴いやすい
スポーツによる介達外力での発生は少ない→骨折を伴わない事が多い
可及的早期に整復をする必要がある脱臼である→大腿骨頭壊死の可能性(5∼30%)
後方脱臼(多い)
分
類
発
生
機
序
弾
発
性
固
定
症
状
整
復
予
後
合
併
症
治
療
注
意
点
整
復
障
害
前方脱臼(最も稀)
恥骨上脱臼
腸骨脱臼
坐骨脱臼
発生頻度が高い(腸骨脱臼>坐骨脱臼)
ダッシュボード・インジュリー
股Jに屈曲・内転・内旋が強制され後方に押す力が作用
① スカルパ三角部に骨頭を触知出来ない
② 骨頭が殿部後上部にて触知する
③ 下肢の短縮
④ 大転子高位=Roser-Nelaton 線より2∼3cm 高位
⑤ 殿筋部に骨頭を触知する
大腿骨頭靭帯断裂(腸骨大腿靭帯は断裂しない)
恥骨下脱臼
閉鎖・会陰脱臼
股 J が過伸展時 下肢の強い外転と
に下肢の外転・外 外旋力に屈曲力
が強制され
旋の強制により
軽度屈曲
外転・外旋
強度屈曲
内転・内旋位
内転筋群
腸骨大靭帯
腸腰筋
軽度屈曲
内転・内旋位
内転筋群
腸骨大靭帯
大腿直筋
中心性脱臼
内方脱臼ともいう
大転子部の強打
(側方からの外力)
強度屈曲
外転・外旋
関節包前面を損傷する
大腿骨頭骨折を合併しやすい
大腿骨頭靭帯断裂
恥骨上脱臼
→スカルパ三角部に骨頭が膨隆する
恥骨下脱臼
→会陰部に骨頭が膨隆する
関節包は破れない
臼蓋底骨折を必ず伴う
大転子部陥凹
デパルマ法=回転法 (背臥位)
下肢を外旋し、大腿骨長軸方向に
牽引し内旋する
観血的整復
骨盤骨折に準じた処置
持続牽引4週間
① 牽引法 : 患者を背臥位
② スティムソン法 : 患者を腹臥位
③ コッヘル法(回転法) : 患者を背臥位
④ 肩担法 : 患者を背臥位
*整復の遅れたものは徒手整復困難となる
大腿骨頭壊死(内側大腿回旋動脈損傷の時)
変形性関節症
骨化性筋炎
変形性股関節症
骨化性筋炎
大腿骨頭靭帯断裂
関節窩縁(寛骨臼後縁)骨折
坐骨神経損傷(腓骨神経領域に出現)
骨頭骨折・寛骨臼後縁骨折
大腿動脈損傷
大腿神経損傷
変形性股関節症
骨化性筋炎
*骨頭壊死の可能性は低い
臼蓋底骨折
3週間の介達牽引
12週間は完全荷重を許可しない(早期荷重は大腿骨頭壊死を後遺しやすくなる)
① 整復は原則として麻酔下で行う
② 可及的早期の整復が必要(受傷後12時間以内)
①
②
③
④
⑤
軟部組織の関節内嵌入したもの
骨折を伴うもの(大腿骨頚部骨折・大腿骨骨幹部骨折・関節窩縁骨折など)
骨片の関節内嵌入したもの(関節窩縁骨折・大腿骨骨頭骨折など)
ボタン穴機構
関節包の萎縮(整復路が狭小したもの)
1
下肢損傷学
大腿骨近位端部骨折・1
骨頭 Fr.
(関節包内骨)
頚部骨折
分
類
特
徴
発
生
機
序
骨
片
転
位
症
状
治
療
固
定
予
後
備
考
介達外力が多い
①ダッシュボード損傷
②単独外傷は稀
③頚部骨折からの波及
④中心性脱臼と前方脱
臼に合併する
<側方型>
ダッシュボード損傷
<外転・外旋型>
頚部骨折より波及する
(高齢者に多い)
脱臼に合併する
①
②
③
④
⑤
骨頭下骨折
内側骨折(関節包内骨折) 中間部骨折
外側骨折 (関節包外骨折)
内転型Fr.
転子間Fr.
外転型Fr.
骨粗鬆症が基礎疾患で発生する
老人の女性に多い
足部から回旋力が加わり骨折し転倒する
回旋力の時は螺旋骨折となる
殆どが内転型骨折となる
尻餅をつき下肢が投げ出され
転倒する
大転子を強打した際に発生
外上方、内転、外旋
骨片が咬合する事が多い
外転・内旋位→外反股
(内転筋群・外旋筋群の牽引)
転子貫通Fr.
① 内転型より高齢者に発生
② 転子間Fr.の発生頻度が高い
③ 骨癒合は良好
介達外力
回旋力が作用
直達外力
大転子部を後外
方から強打
末梢近位骨片→外転・外旋
末梢遠位骨片→内転
内転・外旋位→内反股
1. 大転子部の腫脹・皮下出血斑
1. 皮下出血著明 → 大腿,殿部
2. スカルパ三角部に限局性圧痛
*内側Fr.より著明
3. 自発痛はあまり著明でない
2. 限局性圧痛 → 大転子部
4. 踵からの介達痛
3. 腫脹著明 → 大転子部
5. 起立歩行不能 (外転型では歩行可能なこともある)
4. 異常可動性は股J運動と鑑別し難い
限局性圧痛は
6. 下肢の挙上不能
5. 起立歩行不能 (可能な事もある)
触知不能
7. 内転型 → 内反股変形 (頸体角減少)
6. 下肢挙上不能
外転型 → 外反股変形 (頸体角増大)
6. 変形→ 内反股 (頚体角減少)
8. 棘果長が短縮する
7. 下肢の著明な短縮
9. 大転子高位 (外転型では大転子高位にならない)
8. 著明な外旋位を呈する
9. 内転型ではhell-palm test 陽性
(患側下肢外旋する現象、咬合していると見られない)
1.ホイットマンの整復・固定も可能
ホイットマンの外転位整復
2.コンプレッション・ヒップスクリュー
1.健側肢を最大外転する
*骨頭温存方法
2.患側肢を最大外転させ内旋
*外側回旋A損傷が無い事も条件
外転型では整復の必要が無い
*観血的療法適応が多い
ホイットマンの外転位ギプス固定
12週間
8∼12週間
骨片を放置すると無腐
長期臥床による褥創(仙骨部)
性骨壊死の危険性がある
尿路感染症(腎炎・膀胱炎)
内反股変形を生じやすい
痴呆、沈下性肺炎
*予後は良好である
変形性関節症の発症
大腿骨頭壊死
偽関節(elephant foot像)
頚部内転型の分類 <パウエルズの分類>
<ガーデンの分類>
Ⅰ度30°以下: 保存(骨癒合有利)
st.1 : 不全 Fr.(咬合外転型を含む)→保存可能
Ⅱ度50°以上: 保存 or 観血療法(骨癒合困難) st.2 : 完全 Fr.転位ナシ→骨頭温存可能
Ⅲ度70°以上: 観血療法(骨癒合不良)
st.3 : 完全 Fr.転位アリ→人工骨頭の適応
st.4 : 完全 Fr.高度転位→人工骨頭の適応
2
下肢損傷学
大腿骨近位端部骨折・2
特徴
発生機序
骨片転位
大転子単独骨折
(関節包外骨折)
青壮年に好発、稀な骨折
小転子単独骨折
(関節包外骨折)
稀な骨折
直達→不全骨折
介達→剥離骨折
延長転位
中・小殿M牽引
介達外力より
腸腰Mの牽引
ルドルフ徴候陽性
→ 椅子に腰掛け股Jを自動的に 90°以上屈曲不能
症状
保存的療法
トレンデレンブルグ歩行を呈する時は手術
外転位で6週間
治療
固定
保存的療法
屈曲位で6週間
大腿骨骨幹部骨折
中央(中)1/3部骨折
遠位(下)1/3部骨折
最も多く発生する
顆上屈曲型骨折と類似する
特 徴 ① 交通事故・労働災害などにより開放性骨折・多発骨折(同側または反対側)になりやすい
② 幼児では不全骨折となりやすい
③ 発生頻度が高く、青壮年に好発する
④ 出血量が多量に発現する(1∼2ℓ)
発生機序 直達外力 → 横骨折・斜骨折 高度な軟部組織組織損傷を伴う事が多い。開放性骨折・挫滅症候群となることがある
介達外力 → 屈曲力 : 斜骨折 (第3骨片を伴うこともある)
捻転力 : 螺旋骨折 (外旋力で発生する事が多い)
*下肢全体として、一般的に外旋位を呈する
骨片転位 中枢骨片 : 屈曲→腸腰 M
中枢骨片 : 中間位
中枢骨片 : 屈曲 →腸腰 M
内旋 →内転筋群
外転→中・小殿 M
末梢骨片 : 後方→腓腹筋
末梢骨片 : 後 →腓腹筋
外旋→外旋筋群
上方 →ハムストリング
末梢骨片 : 内転→内転筋群
上内方→恥骨筋
腫脹
多い
中
少ない
限局性圧痛
強い
中
少ない
変形
強い
中
少ない
異常可動性
股 J に近く鑑別しにくい
著明
膝 J に近く鑑別しにくい
注意点 1.早期の鎮痛剤投与は循環血液量の維持できなくなる (鎮痛剤が末梢血管を拡張させてしまう)
2.合併症に留意しその処置を優先する
3.小児では過成長を見込んだ施術を必要とする
1.出血性ショック (受傷直後)
合併症 2.偽関節
3.脂肪塞栓 (受傷から1∼3日後位までは注意を要する)
脳塞栓→意識障害
肺塞栓→呼吸困難
皮膚の毛細血管(斑点状のうっ血)→発生頻度が最も高い
保存療法の場合 (この牽引法は全て整復と固定をかねている)
1.幼児期 : オーバー・ヘッド・トラクション (短縮転位1㎝程を残したまま牽引する)
2.学童期 : 90°―90°牽引法、Weber 牽引法 (短縮転位1㎝程を残したまま牽引する)
治療
3.青年期以降 : 一般的な持続牽引法 *手術後に用いた場合は疼痛軽減のため行う
4.横骨折の時は、屈曲整復法の適応となる (特に遠位1/3部骨折に適応あり)
5.10∼12週間の長期臥床を必要とする
6.トーマス副子(Thomas splint) →拘縮予防の為の持続牽引用副子(30°位の屈伸が可能もの)
大腿部の内反変形高齢者ほど変形しやすい (内反変形=「く」の字変形=前外側凸変形)
予後
小児の患側過成長による脚長差 (20°以内の屈曲転位は自家矯正される)
偽関節 → 直達外力の横 Fr は発生しやすい (近位1/3部外旋・外反力の斜骨折は骨癒合良好の骨折線)
膝 J 拘縮 → 中間広 M 損傷が著しい為、瘢痕化し伸張性をなくす為 (特に遠位1/3部に好発)
分
類
近位(上)1/3部骨折
3
下肢損傷学
大腿骨遠位端部骨折
顆上 Fr(関節包外骨折)
.
直達外力
骨端線離開 Fr.
顆部 Fr.(関節包内骨折)
特 →交通外傷、労災事故、スポーツ外傷
徴 介達外力
→骨粗鬆症を素因とする高齢者
分
類
伸展型
屈曲型
8∼10才の小児に発生する
関節内骨折なので
関節機能障害を残しやすい
発
生
機
序
直達外力
膝 J 過伸展で
強打
介達外力
膝 J 屈曲位で
衝いて
発生頻度が高い
幅広い年齢層
老人に多く発生
骨
折 後方から前上方
線
中枢骨片
→後方
腓腹 M
転
位 末梢骨片
→前方
前方から後上方
中枢骨片
→内前方
大腿四頭 M
大内転 M
末梢骨片
→後方
腓腹 M
短縮騎乗転位
咬合する
伸展型
屈曲型
外転型
外顆 Fr.
内顆 Fr.
直達外力
発生頻度
2位
直達外力
発生頻度
3位
介達外力
発生頻度
1位
発生頻度
1位
発生頻度
3位
中枢骨片
→後方
中枢骨片
→後方
外顆後端 Fr.
発生頻度
2位
膝J屈曲位
伸展位で大腿 屈曲位で膝関 足部からの軸
で軸圧と
軸圧
軸圧
骨遠位部に外 節強打
圧と生理的外 生理的外反
生理的外反
内反強制
力
反
により
外顆部前下
顆間窩か ら 方か ら 後上
顆間窩から
ソルターハリスⅡ型となることが多い
外上方顆部 内上方顆部 方
骨端部
→外方
骨端部
→前上方
症
状
下肢短縮
前後径の増大
腫脹著明
ディンプル・サイン
下肢短縮
前方凸変形
下肢短縮
合
併
症
整
復
膝窩 A 損傷
坐骨N損傷
前面関節包損傷
中間広 M 損傷
膝窩 A 損傷 中間広M 損
は少ない
傷は少ない
咬合 Fr.の時は
必要ない
牽引直圧法
牽引直圧法
良肢位で5∼6週間
良肢位で5∼6週間
成長障害(下肢長差)
早期より変形性関節症に移行しやすい
関節拘縮は強く出現する
外転型と同じ外力で成人が損傷すると
内側側副靭帯断裂となる
臨床的には顆部骨折とならず
内側側副靭帯断裂となる事が多い
固
定
持続牽引療法(膝J屈曲位)
6∼8週間
予
後
反張膝
備
考
異常可動性は
膝 J 運動との
鑑別が必要
膝 J 拘縮
顆上Fr.
準ずる
顆上Fr.
準ずる
4
外反膝
内反膝
関節内血腫
脂肪滴
関節内血腫
脂肪滴
関節内血腫
脂肪滴
内側側副lig
内側半月板
外側半月板
外側側副lig
内側半月板
内側側副lig
内側半月板
外側半月板
下肢損傷学
膝蓋骨骨折
横Fr.
分類
特徴
分類
転位
症状
治療
固定
固定範囲
期 間
粉砕Fr.
直達外力により発生
3つ以上の骨片があれば呼ぶ
遠位1/3部
好発部位
発生機序
縦Fr.
骨軟骨骨折
膝蓋骨外側脱臼に合併
女性に多い
外側1/3部
介達外力による
後方に転倒しそうになり体幹を起こそうとして 直達外力が多い
発生する(成人の場合)小児→脛骨粗面Fr
腱膜下Fr.
完全Fr.
離開転位
殆ど無し
中枢骨片→上方
(大腿直M)
膝J伸展不能
離開部の陥凹触知
膝J伸展可能
膝J部腫脹・疼痛
観血的療法
テンションバンドワイヤリング
馬蹄形絆創膏固定術
リング式固定術
小骨片が関節面より剥離
二分(分離)膝蓋骨との鑑別
骨軸写X線を必要とする
*学童期の成長過程で認める 前後・側方・軸位撮影
*50%が両側性に出現
30°sky line view
wire loop法
膝蓋骨周囲をワイヤーで締結
する
膝J過伸展位・足J良肢位
大腿近位端部∼足MP関節
*場合により副子は足先まで含む
4∼6週間 *2∼3週間目に良肢位に変更する
関節拘縮に留意する
下腿骨近位端部骨折・1
脛骨顆部 Fr. (プラトーFr.・脛骨高原骨折)
外顆 Fr.
内顆 Fr.
発
生
機
序
軟
部
損
傷
発生頻度が高い
軸圧が強く作用
縦・不全・陥凹骨折
(発生頻度が高い)
外反が強く作用
→ 斜骨折線
腓骨頚部 Fr.合併
外側半月板損傷
内側側副靭帯
前十字靭帯
外反動揺性が強い
内反力が強く
軸圧もかかる時
軸圧力が強く
内反力もかかる時
内側半月板損傷
外側側副靭帯
後十字靭帯
内反動揺性が強い
内側・外側半月板
動揺性はあまりない
症
著明な腫脹、皮下出血 (関節内骨折の特徴を呈する)
牽引直圧法は可能 (海綿骨なので安定性・骨癒合とも良好)
復 観血的療法が多い(関節内骨折・軟部組織損傷を考慮して)
固 大腿近位端部∼MP 関節
良肢位 ・ 7∼8週間
定 固定後4週間位から PTB ギプスを使用
膝関節の関節拘縮は必発する
予
拘縮回復には固定期間の倍の日数がかかる
後
状
整
備
考
脛骨粗面 Fr.
学童期(10才未満)
成人の場合には前十字損傷
介達外力が多い・下腿の回旋
内旋と → 前顆間区剥離 Fr.
外反
発生頻度が高い
外旋と → 後顆間区剥離 Fr.
過伸展
発生頻度が低い
大腿骨前面からの外力
Meyers & Mckeever 分類
Type1: 不全 Fr.(1/3 まで)
Type2: 不全 Fr.(1/3∼1/2)
Type3: 完全 Fr.(長軸転位)
Type4(R): 完全 Fr.で
顆間隆起が回転転位
Type1∼ Type3 は保存的
Type4(R)は観血的
学童期(13∼18歳)
両顆 Fr.
特
徴
脛骨顆間隆起 Fr.
良肢位 4∼8週間
PTB で部分免荷から完全免荷
発生年齢的にも
関節拘縮は軽度
後顆間区剥離 Fr.は高齢者に
発生する事がある
OA を要因として外旋力が
作用し発生する
臨床的には Hohl の分類が使用される
局所陥凹型(不全骨折)が多く観血的治療となる
5
大腿四頭筋の収縮力
スポーツ外傷の踏み切りや
着地の際に発生
体を起こそうとした時四頭筋
の収縮力(成人では膝蓋骨
骨折となる)
Watson-Jones 分類
Ⅰ型: 骨端核のみ剥離
完全骨折(観血的)
Ⅱ型: 不全 Fr. (保存的)
Ⅲ型: 関節内完全 Fr.
(観血的)
良肢位 6週間
PTB で部分免荷から完全
Ⅲ型は将来OAの発現の
可能性が高い
オスグット・シュラッター病との
鑑別を必要とする
下肢損傷学
下腿骨近位端部骨折・2
腓骨近位端部 Fr.
分 類
発生
機序
整 復
腓骨頭単独 Fr.
介達外力による
大腿二頭筋の牽引
固 定
備 考
脛骨頚部 Fr.(メゾヌーブ骨折)
介達外力により、足関節内返し捻挫により螺旋骨折を起こす
必要なし、足部の固定を充分に施す 遠位脛腓関節を両側方より圧迫する
大腿中央∼足 MP 関節 6週間
4週位で膝関節は固定範囲から除く PTB ギプスを使用
腓骨頚部は固定時に、直接外力が加わらないように配慮する
足関節は遠位脛腓関節を両側方より圧迫する
下腿骨骨幹部骨折
分 類
発 生
機 序
脛骨骨幹部単独 Fr.
下腿両骨骨幹部 Fr.
小児に多い
青壮年に多い
腓骨骨幹部単独 Fr.
脛腓両骨 Fr.
脛骨果上 Fr.
脛腓骨骨端線離開
直達外力 : 開放性骨折となりやすい
→ ブーツトップ型 同高位 横骨折
介達外力 : 螺旋骨折となりやすい
→ 内旋 : 脛骨高位で骨折
外旋 : 腓骨高位で骨折(発生頻度が高い)
反復する外力(疲労性)=シンスプリント
跳躍型 :上・中1/3部 (後脛骨筋の牽引)
ランニング型 :中・下1/3部(広義のシンスプリント)
転 位
骨折型 定型的骨折型 →外旋力により脛骨中・下1/3部 Fr.
成人では腓骨高位での骨折が加わる
腫脹→著明・水泡形成
症 状 変形→ 独 Fr.は無し、両骨 Fr.は様々
(下肢外反・外旋が多い)
整 復
下腿果上 Fr.
膝 J 屈曲位、足 J 底屈位
長軸末梢方向に牽引し直圧
直達外力が多い(横骨折)
脛骨果上骨折が多い
介達外力では近位部・遠位
部に好発し外側側副靭帯の
牽引により発生
疲労性骨折は中・下部に好
発
転位なしが多い
必要なし
両骨 Fr. →持続牽引
単独 Fr. →PTB ギプス
膝 J・足 J とも軽度屈曲位 8∼10週間
偽関節・遷延治癒
注意点
→ 脛骨中・下1/3部は血行分布が悪い
尖足位拘縮 → 尖足位拘縮、腓骨神経麻痺
ハンマー趾 → 腫脹による弊害のため
後遺変形=反張下腿+外反下腿を残しやすい
反張下腿 : Bohler の持続牽引、PTB の早期荷重
屈側凸に再転位しやすい
予 後
足関節の尖足位拘縮となりやすい
内反下腿 : 持続牽引の指標を第3趾に偏らせた為
残しても害が少ない
指標を示趾、母趾とする
外反下腿 : 固定の緩み・早期荷重による
固 定
6
大腿中央∼MP 関節
良肢位 5週間
後々PTB に変更
介達外力が多い
(軸圧+生理的外反)
直達外力では轢傷が多い
外上方(前後方向は様々)
ソルター・ハリスのⅡ型
三角骨片を残す事が多い
腫脹・皮下出血は軽度
変形著明
膝 J90°屈曲足 J 底屈位
長軸末梢へ牽引し外側より直圧
腓腹筋・ヒラメ筋を弛緩させる肢位
膝 J 軽度屈曲
脚 J 軽度底屈位∼0°
7∼10週間
4∼5週が PTB に変更
深腓骨神経麻痺
固定の不備によるものが多い
→外転方向へ再転位
→第1・5中足骨が持ち上がり
横軸扁平足から外反扁平足
→MP過伸展
(ハンマー趾と伴う)
下肢損傷学
膝関節部の軟部組織損傷
側副靭帯
分
類
特
徴
半月板
内側側副靭帯
外側側副靭帯
発生頻度が高い
関節包・半月板
と密着
瘢痕性に治癒
発生頻度が低い
関節包と連絡しない
独立性が高い
治癒しにくい
内側半月板
C 字状
内側側副靭帯と結合
発生頻度が高い
十字靭帯
外側半月板
O 字状
円板状の人がいる
単独損傷が多い
前十字靭帯
後十字靭帯
太く・短い
断裂は少ない
関節面との密着性が
高く可動性が高い
<直達外力>
外転・外旋力
足部固定で脛
<単独損傷>
以前の出血により
骨前面からの
内側側副靭帯の牽引 瘢痕化したものに 内旋力、脛骨が前方
外力
に押し出された外力
起こりやすい
スポーツ動作
<直達外力>
円板状の人に多い
(着地、急停止)
<介達外力>
大腿骨前面の外力
外旋力
<不幸の三徴>
発
生
機
序
膝 J に外反力
下腿が外旋され
膝 J に内反力
下腿が内旋され
<介達外力>
急な方向転換
症
状
矢状面断裂が多い
前額面断裂が多い
→ バケツ柄状損傷
大腿二頭筋・膝窩 バケツ柄損傷は大腿
筋・腸脛靭帯により 骨内側頭が陥入する
補強があり機能障害 とロッキングを示す
が少ない
不幸の三徴=unhappy triad 内側側副靭帯 + 内側半月板 + 前十字靭帯
備
考
膝関節部軟部組織の検査法
側副靭帯
名
特
徴
肢
位
操
作
陽
性
引き Apley test
側方動揺テスト
複合損傷に使用
患者背臥位
完全伸展位
単独損傷に使用
患者背臥位
軽度屈曲位
下腿を外反、内反する
外反動揺性 → 内側側副靭帯
内反動揺性 → 外側側副靭帯
患者腹臥位
膝J90°屈曲
患者腹臥位
膝J90°屈曲
牽引しながら内旋
踵が外を向く
外側側副靭帯損傷
牽引しながら外旋
踵が内を向く
内側側副靭帯損傷
十字靭帯
部
位
名
特
徴
肢
位
操
作
陽
性
Nテスト
膝崩れ現象
急性期は無理
患者背臥位
膝J屈曲位
外反力を加える
下腿が前内方に
内旋し、亜脱臼
前十字靭帯
ラックマンテスト
急性期に適応
患者背臥位
膝J軽度屈曲位
下腿上端部を
前方に引き出す
前方に引き出される
前方引き出しテスト
陳旧例に適応
患者背臥位
膝J90°屈曲位
下腿上端部を
前方に引き出す
前方に引き出される
7
後十字靭帯
後方引き出しテスト
Sag sing
脛骨上端部
後方落ち込み徴候
患者背臥位
患者背臥位
膝J90°屈曲位
下腿上端部を後方に
押し込む
後方に押し込まれる
脛骨粗面が健側に比べ
後方に落ち込む
下肢損傷学
半月板
名
称
操
作
損
傷
部
位
ワトソン・ジョーンズ
過伸展を強制
前節損傷
スタインマンテスト
押し Apley test
マックマレー
充分屈曲
90°屈曲
軽度屈曲
後節損傷
中節損傷
前節損傷
スタインマンテストを
連続して行う
内旋で疼痛→外側半月板
外旋で疼痛→内側半月板
患者を腹臥位
膝J90°屈曲位
押しながら内旋で疼痛
→外側半月板
押しながら外旋で疼痛
→内側半月板
膝蓋骨脱臼
分
類
特徴
発生
機序
特徴
症状
整復
側方脱臼
垂直脱臼
外側脱臼
内側脱臼
発生頻度が高い
習慣性脱臼になりやすい
発生頻度が低い
直達外力 → 稀
介達外力 → 膝 J に外転力が強要
膝 J に外旋力が強制
大腿直筋の急激な収縮
1.女性に多く発生する
2.小児の外側脱臼は習慣性脱臼になりやすい
3.外側脱臼は自然整復となる事が多い
4.発生素因が関与する
① 骨の素因
膝蓋大腿関節の低形成、膝蓋骨高位、FTAの減少
生理的外反が強い(外反膝)、Q-アングルの増大
頚体角の減少・X 脚、前捻角の減少
骨盤下腿筋群の作用(内側広筋の筋力低下)
② 軟部組織の素因
エストロゲン(リラキシン)の作用により膝周囲の
結合組織が弛緩傾向となり膝蓋骨高位となる
素因を有さない男性 → 膝 J 屈曲位の弾発性固定
素因を有する人→ 自動整復後の来院が多い
アプリヘンション・サインにより確認
患者→ 長坐位(股 J 屈曲位、膝 J 伸展位)
*大腿直筋の弛緩する肢位とする
操作→ 膝を伸展しながら膝蓋骨を内側に圧迫する
稀な脱臼
膝蓋骨関節面が
外側へむく事が多い
回転脱臼
稀な脱臼
反転脱臼とも言う
膝蓋骨関節面が
前面をむく
水平脱臼
稀な脱臼
下方脱臼ともいう
膝蓋靭帯を損傷
固定
馬蹄形絆創膏
*肢位は固定に準ずる(軽度屈曲)
後療
筋力アップトレーニング→ 内側広筋をメインにする、鵞足構成筋群
備考
アプリヘンション・サイン (脱臼位を強制すると患者が回避するような動作・言動を認める)
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下肢損傷学
膝関節脱臼
特徴
前方脱臼
後方脱臼
側方脱臼
回旋脱臼
発生頻度が高い
完全脱臼が多い
直達外力が多い
外側脱臼が多い
不全脱臼が多い
内旋・外旋脱臼がある
不全脱臼となる
横径増大
外側脱臼は下腿が外旋位
内側脱臼は下腿が内旋位
靭帯損傷、半月損傷
脛骨が回旋すると側副
靭帯によりボタン穴機
構へ移行する事がある
(徒手整復不能)
介達外力
→膝Jが過伸展を強制され発生
発生 直達外力
→大腿骨遠位部を前方から強打
関節包の後面が断裂し大腿骨が後
方へ逸脱する
過伸展位で弾発性固定
下肢長短縮、前後径増大
症状 ディンプル・サインがあるときは膝窩A
損傷の可能性が高い
十字靭帯損傷
直達外力
→膝J屈曲位で脛骨近位端部に
前方から外力が加わる
関節包の後面が断裂し脛骨が後方
に逸脱する
過伸展位で弾発性固定
膝窩A損傷
(後脛骨A・足背Aの拍動を確認)
靭帯損傷
整復
牽引+直圧
固定
良肢位 6∼8週間
後療
大腿四頭筋の萎縮に注意する (長期固定により膝関節の拘縮・筋力低下を招きやすい)
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