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Getting to Grips with the Supply Chain
欧州製薬
サプライチェーンの
現状と
製薬企業が
進むべき方向
このままでは製薬企業が医薬品のサプライチェーンを
コントロールできなくなり、
薬の安全性や
製薬会社の収益性が脅かされることになる ̶̶̶̶̶̶̶̶
著作:Dr. Matthias Bünte
Dr. Marcus Ehrhardt
Omar Sawaya, PhD
監訳:小野 哲也、馬場 大輔
欧 州 で は 製 薬 流 通 業 界 の 統 合 が 卸 売 企 業 を 中 心 として
加速している。3 大卸売企業が 6 割( 500 億ユーロ:1€ = ¥ 160
換算で約 80 兆円)以上の流通販売マーケットシェアを占める
に至っている。それら巨 大 企業は地方 市場の統合(国内競 合
相手 の買収)や、水平 統 合(国境を越えた合併)の形で成長し
てきた。そして彼らが持つ潤沢な資金を用い、薬局チェーンの
構築や、チェーン化が違 法な地 域では薬 局への出資という形
で川下 へ の 垂 直 統 合 化 を 進 めて い る。一方 で 彼らはジェネ
リック製 薬 会 社設 立による川上へ の 垂直 統 合 化をも着々と
進めている。
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2008 Autumn
小野 哲也(おの てつや)
馬場 大輔(ばば だいすけ)
([email protected])
([email protected])
ブーズ・アンド・カンパニー 東京オフィス。
ブーズ・アンド・カンパニー 東京オフィス。
医薬、化学、商社、広告代理店等の業界にお
医薬・医療機器、化学、消費財などの業界
いて、コンサルティング経験を有する。ヘル
にお いて、コン サル ティング経 験を有 す
ス・プラクティスのメンバー。農学博士。
る。ヘルス・プラクティスのメンバー。
代表的な例としては、①英医薬品卸大手のアライアンス・ユニ
と医 薬 品流 通の可視 性の 確保こそがムダのない医 薬 品物流
ケム社が英ドラッグストアチェーン大手のブーツグループを合
と、薬 局現 場 へ の戦 略的なアクセスを獲 得する道である。そ
併し、ヨーロッパにおける主導的な小売薬局になったことや、
れは 製 薬 企 業 の 今 後を大きく左 右 する変 革を 起こせるかど
②欧州最大医薬品卸売企業の独セレシオ社が医薬品販売業
うかの試練の道でもある。
務 受 託 会 社 大 手 のファーメックス社 株 の 30% を取 得したこ
製薬企業が取るべき道を誤れば、欧州における彼らのビジ
と、そして、③独 医 薬 品卸大手フェニックス社による2003 年
ネスは妨げられ、収益力の劣化は避けられないだろう。
の北欧医薬品卸大手タムロ社の買収が挙げられる。彼らはサ
プライチェーン支配を拡 大し、薬 剤師が 担っている販 売 現 場
現在の欧州製薬流通業界の構造
までを手中に収めつつある。
そしてこれら の 巨 大 企 業 は すべ て、製 薬 会 社 に依 存した
現在の製薬流通業 界は卸売企業がその中心的位置を取り
ながら、他の販路も混在している状況である。
( 図表1 )
「卸売 業 者」から、消費 者サービス業としてのまさに「全 欧 州
を股にかけるヘルスケアカンパニー」へと変貌を遂げてきた。
欧 州における医 薬 品 の 約 4 分 の 3 は卸売 企 業 を経 由し、薬
自動車等の高付 加価値 産業が成し遂げ てきたように製 薬
局や処方医に販売されている。
産 業 も流 通 モデルを 変 えるべき時 が 来てい る。製 薬(製 造)
一方で、ドイツやイタリア、そしてフランスのような大きな
企業による医薬品サプライチェーンの完全なるコントロール
市場では製薬会社による病院への直接販売も行われている。
図表1 : 欧州の医薬品流通業界
製薬
(製造)企業
外部市場
1%
74%
16%
9%
卸売企業
薬局
80%
病院/処方医
通販薬局
18%
∼2%
患者
従来の流通チャネル
Source : Datamonitor, Booz & Company
最近出現してきた流通チャネル
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図表 2 : 欧州医薬卸売業界の統合
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フランス
-19%
10
32
イギリス
-67%
12
41
ドイツ
-59%
16
279
イタリア
-49%
138
0
20
40
60
80
100
120
140
280
300
総合卸売企業数
1979
Source : GIRP, Booz & Company
2005
図表 3 : 欧州3大卸売企業のマーケットシェア
欧州, 2005
欧州の5大経済大国内におけるマーケットシェア
73%
68%
47%
43%
その他
36%
64%
10%
欧州3大
卸売企業
イギリス
フランス
イタリア
スペイン
欧州3大卸企業のマーケットシェア
Source : Booz & Company
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ドイツ
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また、通 販 薬 局が新たな医薬品流通 ルートとして出現して
の医薬品の 57% は合法的な販売許可を得てない。ロシアでは
きている。通販による医薬品流通は欧州 6 カ国(デンマーク、
12% の薬が偽造であることが判明し、ウクライナではそれが
ドイツ、オランダ、スウェーデン、スイス、イギリス)で 合 法と
なんと40%近くにも上る。加えてEU 内で見つかる偽造品は着
なっているからである。
実に増加しており、それはプロペシア(育毛 剤)やバイアグラ
た だし、一 般 の 小 売 薬 局と同 様、通 販 薬 局 も 規 制 対 象と
(勃起不全薬)等のライフスタイルドラッグだけではなく、命に
なっている。通販薬局は正当な処方認可がなされた上でのみ
関わる薬( lifesaving drugs )にまで及んでいる。
販 売してい る。つまり正 式 な 医 師 の 処 方 箋 が 薬 剤 師に出さ
偽造はオリジナル製品の製 造 業者の売上 減に繋がるのは
れ、そして登録薬剤師によって処方されねばならない。
言うまでもなく、なによりも患者 の 安 全を脅かし、誠 実な 製
それでも一 部 の 通 販 薬 局 企 業は相当量 のマー ケットシェ
造業者の名声を傷つけることにもなる。
アを得るに至っている。例えばドイツにおける医薬品通 販の
パイオニアであり、現在オランダを拠点とするドクモリス・ドッ
・欧州全域的な卸売企業同士の統合
トコム社( DocMorris.com )、そしてスイスの 通 販 薬 局ズー
医 薬 品 卸売 業 ではコストカットや事 業 効率化 の為 の 水平
ルローゼ 社( Zur Rose )等 である。フルサービスを提 供して
統合が続いている。EU の統合が進み、欧州における単一市場
いる通 販 薬 局もあれば、イギリスの ヘルスエクスプレス社の
化が進展すれば統合も更に加速されるはずである。直近の事例
ように慢 性疾 患 薬やライフスタイルドラッグ(発毛剤や強壮
としてはフェニックス社によるクロアチアのファルマシージャ社
剤等)に特化している場合もある。
(Farmacija)とメディファームベルビット社(Medifarm-Velebit)
医薬品の通信販売は処方薬や OTC 薬の流通 ルートとして
の買収 が 挙 げられる。これらの 統 合が卸 売 企 業 の購買 力を
成長しているものの、その流通市場におけるシェアは近い将
さらに強めることになるのは言うまでもない。
来においては 5% を大きく超えることはないだろうと予測さ
れている。
・薬局チェーンの出現
卸売業界の合併統合は近年激しさを増している。
(図表 2 )
欧 州内では、これまで小売 薬 局のチェーン化を妨げ ていた
この 統 合 の 進 展はとりわけ 3 つ の 大きな全 欧 州 的 企 業 を
法律が緩和され、徐々に消えつつある。これに伴い、単独小売
台頭させた。
薬局の数は減少し、薬局チェーン(ブーツ社、ロイズ社、ガレニ
・セレシオ社(独) 2005 年の年間売上総額€ 205 億。セレシ
ケア社( GaleniCare )等)は急速に成長している。加えて薬局
オ社は最近独 CSO のファーメックス社の 30% 株式取得。
は 購 買 力 を 更 に 高 め る 為 に 購 買 協 同 組 合(purchasing
・フェニックス社(独) 2005 年の売上総額€179 億
cooperatives )の結成を進めている。
・アライアンス・ユニケム社(英) 2005 年の売上総額€133 億
そ の 規 模とカバーエリアの広さにより全 欧 州 的 卸 売 企 業
・卸売企業による薬局買収
は製薬企業に対してより優位な立場を築きつつある。それら
卸売企業は小売薬 局の買収や薬 局チェーン化を通して、よ
3 つの 卸売 企 業 のマー ケットシェアは合算するとイギリスで
り積極的に垂直統合化を進め、それが製薬業界にとって大い
( 図表 3 )
73% 、フランスで 68% 、ドイツで 47% にもなる。
なる脅威となりつつある。
(図表 4)
卸売企業は例えばジェネリック製品を卸売企業独自ブラン
医薬品業界の構造変化による
ドに代替させるなどして、相当の影響力を販売現場で持つこ
医薬品市場への影響
とができるようになるだろう。欧州卸売最大手のセレシオ社
は最も積極的に小売 薬 局に投 資し、7 つの国に 1,850 以 上の
・医薬品の偽造
薬 局を抱える。その中にはロイズ社やアイルランドのユニケ
医 薬 品 の 偽 造 は 世 界 的に重 要な 問 題となってきてい る。
ア社、そしてノルウェーのビタサポセック社( Vitusapothek )
国 際 製 薬 団 体 連 合 会( International Pharmaceutical
が含まれる。
Manufacturers Association)に よると、世 界 に お ける 偽 造
薬の取引は年間 300 億ドルに達している。医薬品偽造はかつて
発展途上国に限定された問題だったが、その見方は変わった。
・卸売企業と薬局チェーン独自の
ジェネリック医薬品ブランド
世界保健 機関(WHO )は現在世界中で売られている薬の1割
卸 売 企 業 と 薬 局 チェーン は 統 合 効 果 だ け で は なく、彼ら
は偽造品だと推計している。WHO の調査によるとミャンマー
独自のジェネリック医 薬 品ブランドを導入することで、価 格
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図表4 : 卸売企業の小売業販売の増大(2000-2005)
8,669
※
年複利成長率 2000-2005
セレシオ社 12.7%
アライアンス・ユニケム社 17.9%(ブーツ社除く)
アライアンス・ユニケム社 61.4%(ブーツ社含む)
6,868
ブーツ社
2,949
2,846
2,652
2,556
2,052
1,625
1,598
1,609
1,403
1,801
1,038
791
2000
2001
2002
2003
2004
アライアンス・
ユニケム社
小売
2005
※
予測 2005: 6,868 billion euros.
Source: Annual Report, Booz & Company
セレシオ社小売
アライアンス・ユニケム社小売
交渉力を増大してきた。ブーツグループのプライベートブラン
調達可能な国で医薬品を仕入れ、その医薬品をより高値で購
ド 製 品やアライアンス・ユ ニケム社のアルマス( Almus )が 挙
入する国 に販 売 することで 多大 な 利 益 を 上 げるパラレルト
げられる。これはジェネリック製 造 業 者に更なる競 争をもた
レーダーは製薬企業の利益を侵害する。安いパラレルトレー
らし、これは卸売 企 業と薬 局がバリューチェーンを更に支配
ド医 薬 品が 薬価の高い 地 域に流 入し、本来 の 製 品 需 要 を 低
することが可能であることを意味する。
下させるからである。その鞘取りはトレーダーにのみもたら
され、患者や輸入国の国民医療制度に恩 恵はもたらさない。
・販売現場としての薬局の重要性
そしてもちろん、製薬産業は利益を失う。一方で、製薬企業は
薬局はその重要性を増している。薬局はすでにとてつもな
パラレルトレードによる製 品の異常な流 通 が 薬価の 低い 地
い 商 業 的 影 響 力を有してい る。例 えば 彼らはブランド 薬 を
域での欠品に繋がることを恐れており、患者の健 康被害、ブ
ジェネリック薬に代 替させることが出来る。例えばドイツで
ランドダメージ、そして販 売 機 会 損 失を 避ける為、薬 局 へ の
はジェネリック代 替 促 進 の“ aut idem ”政 策 の 結 果、ブラン
直接流 通システム構築を迫られている。ヨーロッパではスペ
ド薬の販売は制限されている。そして薬剤師は更に強い影響
インとギリシャが最 大のパラレルトレードの温 床 で、それは
力を持つことが決まっている。というのは欧州各国が医薬品
薬価 規 制と償 還 慣 行( reimbursement environment )によ
販売時点において患者の決定に影響を与えうるアドバイザー
るものである。そしてその最大の行き先はイギリスで、パラレ
としての役割をより薬剤師に認めようとしているからである。
ルトレード品は医薬品全体の 21% にも及ぶ。デンマークでは
14% 、オ ランダ で は 13% で あ る。我 々 が 調 査した 限りで は
・パラレルトレード
この 問 題 は 改 善さ れるどころか 悪 化して い るようで あ る。
パラレルトレードは医薬品業界の重要問題である。低価格
全 EU 加 盟 国でパラレルトレードは合 法であるだけでなく、
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図表 5 : 製薬企業への増大する圧力
取引条件改善要求
ジェネリック代替
取り扱い品目からの除外
製薬企業
の利益
ジェネリック製薬業者や
パラレルトレーダーとの協力
製薬企業に対する医師及び
患者との共闘
薬局
卸売企業
パラレルトレードの推進
取引条件改善要求
特許医薬品のパラレル輸入品
による代替
病院納入パッケージの見直し
意図的な欠品増加
注 : 全ての医薬品に関して卸売企業や薬局が上記の戦略的アクションを取れるわけではない。
Source : Booz & Company
パラレルトレードに関与している会社はさらに強固なものと
掲載料( listing fee )を要求することを意味する。もし巨 大卸
すべく統 合 化を 進めている。つまり統 合により、物 流能 力を
売企業の思い通りにならなければ、彼らは製薬会社にとって
改善し、規模の経済原理で更に強固な財務基盤を獲得しよう
不利益となる多くの手段を取ることが可能である。
( 図表 5 )
としているのだ。その上、新規医 薬品の中央登録 制( central
ほとんどの欧 州諸国では卸売企業は医 薬品を自由に品目
registration )への移行はパラレルトレードを更に促し、医薬
リストから外すことが出来る。彼らはパラレルトレードに対し
品製造業者は、欧州全土における医薬品移動を把握すること
より積 極的に関与するかもしれない。また彼らはジェネリッ
がますます困難になる。また特にイギリスやドイツではヘル
クメーカーやパラレルトレーダーとの協同体制構築も模索す
スケア関係 者の間でパラレルトレードに対する支持が増して
るかもしれない。一方で、薬剤師は患者や医師に働きかけ、積
い る 事 実 も あ る。ド イツの 薬 局 は 売 上 の 少なくとも 7% を
極的なロビー活動を 通して製 薬 会 社に対 する抗 議 活動を展
パラレルトレードとする義務を負う。
開することも可能である。彼らは患者に対し競 合する医 薬品
を勧めることもできるし、特許で守られた製品をパラレルト
製薬企業は収益率を維持する為に、
レード品で積極的に代替することも可能である。
環境変化による圧力に対応する必要がある。
これまで述べてきたようなトレンドを鑑みるに、製 薬会社
はあらゆる側面から攻められているとするのが妥当な考え方
である。卸売企業による小売薬局チェーンへの垂直統合はす
なわち彼らがより大きな値下げやリベートそして品目リスト
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図表 6 : 流通モデルの代替案
長所
短所
卸売企業への依存レベル
卸売企業との
合意
・ 製品流通の部分的透明化
・ 薬局に対しては変化なし
・ 報復手段のリスク最小化
・ 合法的合意形成実現可能性高
・ 製品流通へのインパクトなし
・ 薬局(販売現場)へアクセスなし
・ 薬局との取引条件へのインパクトなし
・ 卸売企業依存の継続
卸売企業と
協業し
薬局との
直接関係強化
・ 製品流通の部分的透明化
・ サプライチェーンの完全コントロール
・ 患者の安全性確保
・ 薬局への直接的アクセス
・ 既存インフラ活用
・ 製薬企業としての業務・財務的リスク
・ 薬局には最低限の変化のみ
・ ステークホルダーによる報復リスク
・ 業務複雑化(例:販売在庫)
・ 販売現場における製品オーナーシップの保有
・ サプライチェーンの完全コントロール
・ 患者の安全性確保
・ 薬局への直接的アクセス
・ 既存インフラ活用
・ 製薬企業としての業務・財務的リスク
・ 多額投資の必要性と利幅へのネガティブインパクト
・ 他の製薬企業とのシナジーなし
・ 薬局には多少の変化
・ ステークホルダーによる報復のリスク大
・ 販売現場における製品オーナーシップの保有
・ サプライチェーンの完全コントロール
・ 患者の安全性確保
・ 薬局への直接的アクセス
・ 卸売企業からの完全独立
・ 製薬企業としての業務・財務的リスク
・ 多額投資の必要性
・ 新規インフラのセットアップ
・ 薬局に対し強烈な変化
・ ステークホルダーによる報復のリスク極めて大
卸売企業の買収
製薬企業からの
直販もしくは
物流サービス
プロバイダー
と協業
Source : Booz & Company
図表7 : 戦略オプション毎の評価基準
基準
主な評価方法
1. 環境と目的
・ 市場環境の再調査
・ 目的の設定
2. 法規制面での実現性
・ 法令・規制遵守の確認
3. 業務・物流モデル
・ 実現可能な業務の明確化
・ 評価基準の合意
4. 商売上の要件
・ ターゲット顧客の優先順位の把握
・ サービスレベルと取引条件の確認
5. 潜在的物流パートナー分析
・ 潜在的物流サービスプロバイダーの適正評価実行
6. 成長機会
・ 得られる追加マーケットシェアの算定
・ (例えば販売の透明化の寄与による)利益試算
7. 財務影響
・ 財務モデルの収集と吟味
8. 評価と推奨
・ 概要の要約作成
・ 望ましいオプションの推奨
9. リスクとリスク軽減活動
・ 各モデルの主なリスク検討
・ リスク軽減活動の特定
10. コミュニケーションと不測事態対策
・ コミュニケーションプランの明確化
・ 不測事態対策の整備
Source : Booz & Company
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図表8 : 新物流販売モデル導入の3段階ステップ
ステップ1:
戦略の選定
と評価
ステップ2:
計画と
実行準備
ステップ3:
変革の相互理解と
実行の推進
Source : Booz & Company
製薬会社はどう対処すべきか ?
まとめ
サプライチェーンを支配し、
流通の可視性を高めるべきである!
ブーズ・アンド・カンパニーは、製 薬 企業が、患者の安 全 性
を高め、企業の利益損失を防ぐ為に医薬品におけるサプライ
疑 いようもなく製 薬 会 社は 増 大する圧 力にさらされてい
チェーンのコントロールをより高める為の行動を速やかに起
る。どうすれば製薬会社は医薬品流通プロセスにおけるキー
こすべきであると考える。
( 図表 8 )
プレーヤーとして復権することができるだろうか。
従 来 のマーケティング活動、MR による販 売 主導や製 品供
・ステップ 1:戦略の選定と評価
給政 策 だけでは問題の本質に踏み込めない。卸売 企 業 が 薬
製 薬 企業はサプライチェーンをより強くコントロールする
局を所有し、販 売 現 場を握ってしまえば、製 薬 会社の販促 努
為、新しい流通 販売戦略を検討する必要がある。新たな戦略
力はなんの効果もない。
内容はその合法性だけでなく、業務及び財務的影響も精査し
問題 解決に効 果 的に対応 するための 実 行可能 な オプショ
なければならない。
ンは幾つかある。
( 図表 6 )
最も革 新 的な オプションのひとつは 製 薬 企 業 がサプライ
・ステップ 2:計画と実行準備
チェーンを自らコントロールできる新しい流 通モデルを導入
有 望 な 戦 略 の 選 択 肢 が 出てきたら、今度はそれを主 要ス
することである。次なるオプションとしては 製 薬 企 業が卸売
テークホルダーと一緒に厳しく吟味し、詳細な実行の青写真
企業を買収することである。これにより確かに製薬企業はよ
を策定する必要がある。医薬品メーカーにとって全世界的に
りサプライチェーンをコントロールできるようになるが、卸売
魅力的なのは RFID( Radio Frequency Identification )標
業は製薬企業のコアコンピテンシーではなく、多大な投資を
識技 術だろう。この 技 術により製 薬 企業はサプライチェーン
必要とするだろう。もうひとつのオプションは、例えばバイオ
全てにおいて製品の追跡が可能となる。当然幾つもの超えね
ジェンが Avonex® のドイツの薬 局への直 接販 売を、独ベル
ばならないハードルはあり、中でも最も明白なのは立ち上げ
テルスマ ン グ ル ープ 傘下 の アル バト ヘ ルス ケ ア サ ー ビ ス
コストと業界共通技術標準の合意形成である。
( Arvato healthcare service )に委 託したように、第 3 者 の
流 通プロバイダーと契約することである。卸売企業に代 理 店
・ステップ 3:変革の相互理解と実行の推進
の 役 回りをしてもらうのもオプションとなるかもしれない。
先 発 者になることで将 来における流 通 販 売構造の形成が
そして幾つか の 製 薬 会 社は薬 局 へ の直 接 販 売ネットワーク
有利となる。それに加え、製 薬 企業は薬 局レベルにおける顧
の構築を考えたくなるかもしれない。
客と面と向かった戦略実行の機会が得られる。もちろんその
これら全てのオプションには長 所短所がある。製薬企業は
為 の 研 修や 金 銭 的インセンティブが患者の協力と定 着を促
長 期に渡って持 続可能 な 方 策を見極めるべく検 討 する必 要
す為に必要となるだろう。
がある。
考慮すべき評価基 準は「 EU 法令の遵守」から「ステークホ
ルダーが柔軟性を持って業務・財務的に受け入れるか否か」ま
で多岐に渡る。
(図表 7 )
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