キチン含有廃棄物の有効な利用方法を提供 し、あるいは - 三重大学

(57)【要約】
【課題】 キチン含有廃棄物の有効な利用方法を提供
し、あるいはキチン含有廃棄物の廃棄処理を低コスト化
する。
【解決手段】 キチン含有廃棄物をクロストリジウム属
キチン分解嫌気性菌、特にクロストリジウム・パラプト
リフィカム(Clostridium paraputrificum)M株を用
いて嫌気的条件下に生物的に分解処理して、次の1)及
び/又は2)を行う。
1)前記分解処理によるキチン質の脆化を利用してキチ
ン含有廃棄物を高密度に圧縮し、廃棄又はその他の二次
用途に供する。
2)前記分解処理により水素ガスを生成させ、エネルギ
ー源として回収する。
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【特許請求の範囲】
【請求項1】 キチン含有廃棄物をクロストリジウム属
のキチン分解嫌気性菌を用いて嫌気的条件下に生物的に
分解処理することにより、次の1)及び/又は2)を行
うことを特徴とするキチン含有廃棄物の処理方法。
1)前記分解処理によるキチン質の脆化を利用してキチ
ン含有廃棄物を高密度に圧縮し、廃棄又はその他の二次
用途に供する。
2)前記分解処理により水素ガスを生成させ、エネルギ
ー源として回収する。
【請求項2】 前記キチン分解嫌気性菌が、クロストリ
ジウム・パラプトリフィカム(Clostridium paraputri
ficum)M株であることを特徴とする請求項1に記載の
キチン含有廃棄物の処理方法。
【請求項3】 前記キチン含有廃棄物が、エビ,カニ又
はロブスターの殻を含むものであることを特徴とする請
求項1又は請求項2に記載のキチン含有廃棄物の処理方
法。
【請求項4】 請求項1の1)の場合を除き、前記キチ
ン含有廃棄物が予め粉砕処理及び/又は所定の酸・アル
カリ処理を受けていることを特徴とする請求項1∼請求
項3のいずれかに記載のキチン含有廃棄物の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はキチン含有廃棄物の
処理方法に関する。更に詳しくは、本発明は、キチン含
有廃棄物をクロストリジウム属のキチン分解嫌気性菌に
よる生物的分解処理に供することにより、キチン含有廃
棄物に圧縮性を付与すると共に、水素ガスを生成させて
回収するキチン含有廃棄物の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】キチンは、自然界においてセルロースに
次いで二番目に豊富なポリマーであり、主にN−アセチ
ル−D−グルコサミンから構成される多糖類であって、
β−1,4結合による分枝のないポリマーである。
【0003】商業的キチンの主要源はカニ,エビ,ロブ
スター等の殻であるが、近年、我が国も含めてカニ,エ
ビ,ロブスター等の消費量の伸びが著しく、従って、膨
大な量のキチン含有廃棄物が発生している。廃棄シェル
フィッシュにおける全キチン含有量は1年で12万メー
トルトンに達すると言う世界的概算もある。
【0004】しかしながら、キチンは非常に強固な構造
を持つ難分解性物質であり、無機塩類やタンパク質もか
なり含有するために生物的分解を受け難く、現在のとこ
ろ、膨大な量のキチン含有廃棄物の殆どは、蒸気消毒後
にそのまま地中に埋込んで廃棄されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の第1
の課題は、何ら有効利用の途なく単に廃棄されている膨
大な量のキチン含有廃棄物と言うバイオマスを如何に有
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効利用し得るか、その方向性を示すことである。
【0006】この点に関し、特開平10−66568号
公報では、カニやエビの殻をアルカリ処理した固形分を
主炭素源とし、好気性であるシュードモナス属細菌を用
いてキチナーゼを製造する方法を開示している。しかし
この発明ではキチナーゼの製造を目的とし、キチン含有
廃棄物は培地栄養源として用いるに過ぎない。従ってキ
チン含有廃棄物は少量用いられるに止まり、実施規模の
面でバイオマスの有効利用に結びつき得ない。又、一般
論として好気性細菌を用いた場合、エネルギー回収の面
でも期待できない。
【0007】本願発明者は既に、市販のN−アセチル−
D−グルコサミン粉末を主炭素源とし、キチン分解嫌気
性菌クロストリジウム・パラプトリフィカムM株を用い
て水素ガスを生産できることを報告している(J. Bios
ci. Bioeng. Vol. 89 No. 6, pp. 596-601, 20
00)。しかしながら、粉末状態の低分子量物質であるN
−アセチル−D−グルコサミンに関する知見が、そのポ
リマーであり、難分解性物質として知られるキチンにそ
のまま適用できるか否かは、容易に予測できない。
【0008】本発明の第2の課題は、現状のキチン含有
廃棄物の廃棄過程における廃棄物の圧縮と言う問題を解
消することである。即ち、エビ,カニ又はロブスターの
殻は中身の抜けた空洞状であり、重量の割りには著しく
嵩張る。そしてプラスチック材料と類似した弾力性を示
すため、圧縮状態で取扱うことが困難である。そのた
め、これらを集中処理しようとした場合、単位重量当た
りの運搬,保管等のコストが非常に大きい。地中への埋
立ての際にも大きなスペースを占有する。
【0009】他の廃棄物処理分野を見ると、多量のプラ
スチックの破片や屑を含む自動車のシュレッダーダスト
の処理において、廃棄物が著しく嵩張ることによるコス
ト問題を生じたことがある。しかしシュレッダーダスト
の場合、加熱圧縮によりプラスチックの塑性変形を利用
して高密度圧縮の問題を解決した。しかし、キチン含有
廃棄物には熱可塑性がないので、この方法は適用できな
い。
【0010】
【課題を解決するための手段】(第1発明の構成)上記
課題を解決するための本願第1発明(請求項1に記載の
発明)の構成は、キチン含有廃棄物をクロストリジウム
属のキチン分解嫌気性菌を用いて嫌気的条件下に生物的
に分解処理することにより、次の1)及び/又は2)を
行う、キチン含有廃棄物の処理方法である。
1)前記分解処理によるキチン質の脆化を利用して前記
キチン含有廃棄物を高密度に圧縮し、廃棄又はその他の
二次用途に供する。
2)前記分解処理により水素ガスを生成させ、エネルギ
ー源として回収する。
【0011】(第2発明の構成)上記課題を解決するた
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めの本願第2発明(請求項2に記載の発明)の構成は、
前記第1発明に係るキチン分解嫌気性菌が、クロストリ
ジウム・パラプトリフィカム(C. paraputrificum)M
株である、キチン含有廃棄物の処理方法である。このM
株は、FERM P−16390として、既に工業技術
院生命工学工業技術研究所に寄託されている。
【0012】(第3発明の構成)上記課題を解決するた
めの本願第3発明(請求項3に記載の発明)の構成は、
前記第1発明又は第2発明に係るキチン含有廃棄物が、
エビ,カニ又はロブスターの殻を含むものである、キチ
ン含有廃棄物の処理方法である。
【0013】(第4発明の構成)上記課題を解決するた
めの本願第4発明(請求項4に記載の発明)の構成は、
第1発明の1)の場合を除き、前記第1発明∼第3発明
に係るキチン含有廃棄物が予め粉砕処理及び/又は所定
の酸・アルカリ処理を受けている、キチン含有廃棄物の
処理方法である。
【0014】
【発明の作用・効果】(第1発明の作用・効果)キチン
含有廃棄物にクロストリジウム属のキチン分解嫌気性菌
を嫌気的条件下に接種すると、水素ガスを生成すること
が分かった。従って、キチン含有廃棄物と言う膨大なバ
イオマスから水素ガスを回収すると言う有効利用の方向
性が示される。
【0015】従来、天然のポリマーであるキチンから生
物的分解により水素ガスを得たと言う報告はなされてい
ない。前記従来技術に係る好気性細菌を用いたキチン分
解は、キチン含有廃棄物からの水素ガス生産に対して示
唆を与えない。
【0016】一方、キチン含有廃棄物にクロストリジウ
ム属のキチン分解嫌気性菌を嫌気的条件下に接種する
と、前記水素ガスの生成やキチン含有廃棄物のある程度
の重量減少と共に、キチン質が脆化して弾力性を失うこ
とが分かった。
【0017】その結果、第1発明の生物的分解を受けた
キチン含有廃棄物は、プレス圧によりキチン質が容易に
折れや割れを起こし、非常に高密度に圧縮できる。そし
てプレス圧を解除しても体積膨脹を起こさない。このた
め、元々は重量の割りに著しく嵩張るキチン含有廃棄物
を、高密度に圧縮して運搬,保管等を行うことが可能と
なり、その集中処理において大きくコストダウンするこ
とが可能となる。又、地中への埋立ての際にも、大きな
スペースを占有しない。
【0018】(第2発明の作用・効果)上記のキチン分
解嫌気性菌としては、クロストリジウム・パラプトリフ
ィカムM株が特に好ましい。本願発明者は、このM株を
用いて、上記第1発明の効果を実験的に確認している。
【0019】(第3発明の作用・効果)キチン含有廃棄
物としては、エビ,カニ又はロブスターの殻を含むもの
であることが、発明の産業上の有用性の点から、特に好
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ましい。
【0020】(第4発明の作用・効果)第1発明の前記
1)の場合を除き、キチン含有廃棄物を予め粉砕処理及
び/又は酸・アルカリ処理しておくと、上記各発明の効
果が特に顕著である。その理由は、これらの処理により
キチンが含有する無機塩類やタンパク質が除去されるた
めではないか、と推定される。
【0021】
【発明の実施の形態】次に、第1発明∼第4発明の実施
の形態について説明する。以下において、単に「本発
明」と言うときは、第1発明∼第4発明を一括して指し
ている。
【0022】〔キチン含有廃棄物〕キチン含有廃棄物と
は、要するにキチン質を含有する廃棄物である限りにお
いて、その種類,内容及び出所を限定されない。例え
ば、ホテルやレストランから排出される料理の食残し,
家庭から排出される生ゴミ、食品加工場から排出される
廃棄物等が例示される。
【0023】キチン含有廃棄物に含まれるキチン質の代
表的なものがエビ,カニ又はロブスターの殻である。
【0024】キチン含有廃棄物は、その廃棄状態のまま
で直ちに本発明の処理方法に供しても良いが、キチン質
を他の野菜,肉類等の廃棄物から予め選別しておくこと
が好ましい。洗浄等によって、キチン質に付着したソー
スや油等を除去しておくことも好ましい。キチン質に付
着した筋肉等を除去しておくことも好ましい。
【0025】キチン含有廃棄物は、予め粉砕処理するこ
とにより、更には所定の酸・アルカリ処理を行うことに
より、キチン分解嫌気性菌の作用を一層受け易くなる。
粉砕処理の手段は限定されないが、代表的なものがボー
ルミル処理である。乳鉢等を用いて磨り潰すこともでき
る。
【0026】なお、キチン含有廃棄物の粉砕処理にも無
視できないコストと設備を要する。前記第1発明の1)
の場合、即ち、前記嫌気的条件下の生物的分解処理によ
るキチン質の脆化を利用してキチン含有廃棄物を高密度
に圧縮し、廃棄又はその他の二次用途に供する場合に
は、キチン含有廃棄物の粉砕処理は行わない。
【0027】上記「所定の酸・アルカリ処理」とは、キ
チン含有廃棄物を特定の条件で酸処理した後、アルカリ
処理によって略中性のpH域に調整することを言う。酸
・アルカリ処理に用いる酸やアルカリの種類,処理条件
等は任意に選択することができるが、一例として、1∼
2規定度の無機酸(例えば、塩酸)を用いて1∼5日間
程度酸処理し、次いで1∼2規定度のアルカリ(例えば
水酸化カリウム)で中和することができる。
【0028】〔生物的分解処理〕本発明に係るキチン含
有廃棄物の処理方法の最大の特徴は、クロストリジウム
属のキチン分解嫌気性菌を利用して、キチン含有廃棄物
を嫌気的条件下に生物的分解処理に供することである。
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【0029】クロストリジウム属のキチン分解嫌気性菌
* ムM株は、三重県津市上浜町の三重大学構内の土壌から
として、好ましくはクロストリジウム・パラプトリフィ
分離されたものであり、表1に示す形態学的,生理学的
カム(C. paraputrificum)を利用できる。特に好まし
特徴が認められるため、絶対嫌気性細菌クロストリジウ
くは、FERMP−16390として既に特許寄託され
ム・パラプトリフィカムと同定され、M株と命名され
ているクロストリジウム・パラプトリフィカムM株を利
た。
用することができる。
【0031】
【0030】このクロストリジウム・パラプトリフィカ*
【表1】
なお、クロストリジウム・パラプトリフィカムM株にお
ける糖の資化性に関しては、少なくともN−アセチル−
D−グルコサミン,キチン,セロビオース,フルクトー
ス,グルコース,グリコーゲン,ラクトース,マルトー
ス,マンノース,リボース,サルシン,デンプン及びシ
ョ糖に対して陽性である。又、少なくともアラビノー
ス,イノシトール,マンニトール,メリビオース,ラフ 30
ィノース,ソルビトール及びトレハロースに対して陰性
である。
【0032】上記のキチン分解嫌気性菌が嫌気的条件下
にキチン含有廃棄物に接種される。ここに「嫌気的条
件」とは、分子状酸素が存在せず、培地中の酸化還元電
位が低い状態を言う。「低い酸化還元電位」とは、通
常、−150mV以下を言う。
【0033】キチン分解嫌気性菌の接種の形態は限定さ
れない。キチン含有廃棄物が予め粉砕処理されている場
合には、例えばその粉末を適当な栄養培地に添加し、こ 40
れにキチン分解嫌気性菌を接種してジャーファーメンタ
ー等で嫌気培養することができる。
【0034】キチン含有廃棄物を圧縮処理して廃棄に供
する場合には、キチン含有廃棄物は粉砕しない。この場
合、キチン含有廃棄物に対するキチン分解嫌気性菌の接
種形態は限定されないが、好ましくは、例えばキチン含
有廃棄物に水を張り、これにキチン分解嫌気性菌を添加
する方法を採用できる。この方法を採用する場合におい
て、効果の顕著性を重視すれば嫌気的密閉系を構成する
ことが好ましいが、開放系でも処理は可能である。
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【0035】〔水素ガスの生成と回収〕本発明に係るキ
チン含有廃棄物の処理方法において、主として水素ガス
H2 と二酸化炭素CO2 が生成し、両者の体積比が6
5:35程度であることが分かっている。嫌気培養の培
地のpHをアルカリ剤等を用いて5.8程度に調整して
おくと、水素ガスの生成量が増大する。
【0036】このようにして生成した水素ガスは、二酸
化炭素との混合気状態のままで回収し、あるいは分離操
作によって二酸化炭素と分離したもとで、燃料電池車用
の燃料その他の多様な用途のクリーンエネルギーとして
有効に利用できる。水素ガスと二酸化炭素との分離操作
の手段は限定されないが、比較的簡単な分離操作とし
て、例えば、ガスホルダー(ガスのみを一時的に貯蔵す
るタンク)を利用し、水素ガスと二酸化炭素との比重差
に基づいて分離する、と言う方法等を好ましく挙げるこ
とができる。
【0037】〔キチン含有廃棄物の圧縮〕本発明の生物
的分解を行ったキチン含有廃棄物は、前記したように非
常に高密度に圧縮して廃棄に供することができる。この
ような取扱いによるコストダウン効果を十分に発揮させ
るためには、キチン含有廃棄物を大量に集積し、集中処
理を行うことが好ましい。
【0038】高密度に圧縮されたキチン含有廃棄物は、
未だ実験的には確認していないが、生物的分解を経由す
ることによって、相対的に易分解性の廃棄物に変化して
いることが十分に予想される。従って、例えば土中へ埋
立てた場合に従来の無処理のキチン含有廃棄物に比較し
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て速やかに自然分解することを期待できる。
【0039】〔キチン含有廃棄物の二次用途〕又、本発
明の生物的分解を行ったキチン含有廃棄物は、上記のよ
うに相対的に易分解性に変化していると期待される点か
ら、廃棄処分せずに他の産業分野で利用する資材又は原
料として活用することも可能である。例えば、一部で注
目されているキトサン等の有用物質の採取原料として利
用したり、粉砕してフィッシュミール等の増量剤として
利用する、等の利用法を例示することができる。
【0040】
【実施例】(実施例1:試料の調製)市販の粉末状N−
アセチル−D−グルコサミン,キチン、及び適宜のルー
トで入手したエビ殻又はロブスター殻を用いて試料を調
製した。
【0041】市販の粉末状N−アセチル−D−グルコサ
ミンについては、そのまま試料として用いた。
【0042】キチンについては、次の粉砕条件でボール
ミル処理したものを、試料として用いた。即ち、その粉
砕条件は、キチン30gに対して水1.5Lを加え、通
常のボールミル粉砕器を用いて3日間、4度で粉砕処理
した。ボールミル処理の終了後、9,000×Gで30
分間遠心分離し、得られた沈殿物を適当な条件で乾燥さ
せて、粉末状の試料を得た。
【0043】エビ殻及びロブスター殻については、まず
水洗し、オーブン(60°C)で乾燥させた後、乾重量
30gに対して水1.5Lを加え、通常のボールミル粉
砕器を用いて3日間、4度で粉砕処理した。ボールミル
処理の終了後、9,000×Gで30分間遠心分離し、
得られた沈殿物を適当な条件で乾燥させて、粉末状の試
料を得た。
【0044】又、エビ殻及びロブスター殻に関しては、
以下のように、粉砕処理と化学処理(酸・アルカリ処
理)とを併せ施した試料も準備した。
【0045】即ち、エビ殻の場合には、Stanley らの方
法(J. Biotech. Bioeng. Vol.17, pp. 312-326,
1975)を改良した方法で処理した。具体的には、まず
エビ殻を水洗し、オーブン(60°C)で乾燥させた
後、乳鉢ですりつぶした。この乾物30gに対して1規
定度の塩酸1.5Lを加え、通常のボールミル粉砕器を
用いて5日間、4度で粉砕処理した。このようなボール
ミル処理の終了後、9,000×Gで30分間遠心分離
し、得られた沈殿物(湿重量50g)を1規定度の水酸
化カリウム300mLで洗浄した。これを更に水で洗浄
し、pH7.0に調整した。
【0046】ロブスター殻の場合には、Wangらの方法
(Proc. Natl. Sci. Coun., Rep.of China, Part
B :Life Sciences, Vol. 21, pp. 71-78,199
7)を改良した方法で処理した。具体的には、まずロブ
スター殻を水洗し、オーブン(60°C)で乾燥させた
後、乳鉢ですりつぶした。この乾物30gに対して2規
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定度の塩酸1.5Lを加え、通常のボールミル粉砕器を
用いて2日間、4度で粉砕処理した。このようなボール
ミル処理の終了後、9,000×Gで30分間遠心分離
し、得られた沈殿物(湿重量50g)を2規定度の水酸
化カリウムによりpH7.0に調整した。これを9,0
00×Gで30分間遠心分離し、得られた沈殿物をオー
ブン(65°C)で乾燥した。
【0047】(実施例2:クロストリジウム・パラプト
リフィカム M株の培養)C. paraputrificum M株
を、下記に示す組成のGS改良培地で、N−アセチル−
D−グルコサミンを炭素源として前培養した。前培養の
条件としては、温度37°C、初期pH6.8、培養時
間を12時間とした。
【0048】上記のGS改良培地は、1L当たり、酵母
エキス 4.5g、ポリペプトン1.0g、KH2 PO4
3.0g、K2 HPO4 5.8g、(NH4 )2 SO4 2.6
g、L−システイン塩酸塩 1.0g、3−(N−モル
ホリノ)プロパンスルホン酸 10g、炭酸ナトリウム
2.5g、レサズリン 0.1gを含んでいる。
【0049】前培養は試験管培地10mLで行い(気相
を窒素ガスにより置換し、ブチルゴム栓で密閉して嫌気
状態を維持した)、前培養した菌体4本分を、ジャーフ
ァーメンターを用いて培地(上記と同じ組成のGS改良
培地に対して、実施例1で調製した粉体試料であるエビ
殻又はロブスター殻、あるいは市販の粉末状N−アセチ
ル−D−グルコサミンを、10g/Lとなるように添加
し、オートクレーブしたもの)1Lに植菌し、本培養を
行った。この植菌は気相を窒素ガスで置換しながら行
い、本培養中もジャーファーメンター内部を窒素ガスに
より嫌気状態に維持した。
【0050】なお、本培養時には培地をpH5.5∼
6.5、とりわけpH6.0に維持すると水素ガスが良
く発生することが実験的に分かっているので、上記いず
れの場合の本培養も、pHを6.0近傍に維持して行っ
た。
【0051】(実施例3:水素ガスの生産)
1)炭素源を市販の粉末状N−アセチル−D−グルコサ
ミンとした培養例では、pHを5.8に維持した5時間
の本培養により、培地1L当たり1.87Lの水素ガス
生産が認められた。換言すると、N−アセチル−D−グ
ルコサミン1モル当たり2.4モルの水素ガス生産が認
められた。
【0052】2)炭素源をボールミル処理したキチンと
した培養例では、pHを6.0に維持した16時間の本
培養により、培地1L当たり1.50Lの水素ガス生産
が認められた。換言すると、1gのボールミル処理した
キチンが4.5mMのN−アセチル−D−グルコサミン
を含むものとして換算した場合、N−アセチル−D−グ
ルコサミン1モル当たり1.5モルの水素ガス生産が認
められた。従って、キチン10gの内、9.9gが消費
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されたことになる。
* mMのN−アセチル−D−グルコサミンを含むものとし
【0053】3)炭素源をボールミル処理したエビ殻と
て換算した場合、N−アセチル−D−グルコサミン1モ
した培養例では、pHを6.0に維持した12時間の本
ル当たり1.3モルの水素ガス生産が認められた。従っ
培養により、培地1L当たり395mLの水素ガス生産
て、ロブスター殻10gの内、2.5gが消費されたこ
が認められた。換言すると、1gのボールミル処理した
とになる。
エビ殻が4.5mMのN−アセチル−D−グルコサミン
【0057】(実施例4:エビ殻の圧縮性)清浄に洗浄
を含むものとして換算した場合、N−アセチル−D−グ
処理した通常の湿り状態にある2gのエビ殻を2例準備
ルコサミン1モル当たり1.0モルの水素ガス生産が認
し、それぞれ水を張った適宜な培養瓶に収容した。その
められた。従って、エビ殻10gの内、2.6gが消費
内の1例(本発明の実施例)については、気相を窒素ガ
されたことになる。
10 スに置換しつつ実施例2に係る試験管前培養した菌体5
【0054】4)炭素源をボールミル処理及び化学処理
mL分を添加し、以後、培養瓶内を嫌気状態に保ちつ
したエビ殻とした培養例では、pHを6.0に維持した
つ、37°Cで20日間静置した。他の1例(比較例)
18時間の本培養により、培地1L当たり469mLの
については、特段の処理をすることなく、37°Cで2
水素ガス生産が認められた。換言すると、上記換算に従
0日間静置した。
った場合、N−アセチル−D−グルコサミン1モル当た
【0058】上記培養の後、いずれの例においても培養
り1.2モルの水素ガス生産が認められた。従って、エ
瓶の内容物をビーカーに移し、上から200gの重量を
ビ殻10gの内、4.1gが消費されたことになる。
おもりを載せて20分間放置した。次いで上記の固形分
【0055】5)炭素源をボールミル処理したロブスタ
を型くずれしないようにビーカーからそっと取出し、乾
ー殻とした培養例では、pHを6.0に維持した22時
燥機中で60°Cで充分に乾燥して、乾燥後の重量を測
間の本培養により、培地1L当たり270mLの水素ガ 20 定すると共に、形状を観察した。
ス生産が認められた。換言すると、1gのボールミル処
【0059】重量測定の結果、比較例は0.725g、
理したロブスター殻が4.5mMのN−アセチル−D−
本発明の実施例は0.350gであった。又、上記形状
グルコサミンを含むものとして換算した場合、N−アセ
観察に係る写真(斜め上方より写したもの)を図1に示
チル−D−グルコサミン1モル当たり1.2モルの水素
す。図1の左側の試料が比較例であり、右側の試料が本
ガス生産が認められた。従って、ロブスター殻10gの
発明の実施例である。比較例では、荷重を解除すると元
内、4.1gが消費されたことになる。
の嵩高い状態に戻り、その容積上の圧縮効果は殆ど認め
【0056】6)炭素源をボールミル処理及び化学処理
られなかった。本発明の実施例では、ビーカーの底部で
したロブスター殻とした培養例では、pHを6.0に維
圧縮された状態の形状を維持し、顕著な容積上の圧縮効
持した22時間の本培養により、培地1L当たり334
果が認められた。
mLの水素ガス生産が認められた。換言すると、1gの 30 【図面の簡単な説明】
ボールミル処理及び化学処理したロブスター殻が4.5*
【図1】エビ殻の圧縮試験の結果を示す写真である。
【図1】
(7)
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フロントページの続き
7
(51)Int.Cl.
C12R
識別記号
1:145)
(72)発明者 木村 哲哉
三重県鈴鹿市白子駅前11−18 ロイヤルハ
イツ白子駅402
FI
B09B
テーマコート゛(参考)
3/00
304Z
(72)発明者 森本 兼司
三重県津市栗真町屋町1625−39 Mハイツ
2103号
Fターム(参考) 4B065 AA23X BB18 BB23 CA01
CA55
4D004 AA04 BA03 CA03 CA04 CA18
CA34 CA40 CA45 CC07 CC12