「今後の林業・木材産業の進むべき方向」 (PDF:9306KB)

今後の林業、木材産業の進むべき方向
遠藤日雄(鹿児島大学農学部)
キーワードとしての「2015年ショック」(1)
• 2014年4月に、現行の5
%から8%にアップ。
• 2015年に、さらに2%アッ
プして10%に。
• 現在、消費税増税前の「駆
け込み需要」発生。
• その反動減はどのような形
でやってくるのか?
キーワードとしての「2015年ショック」(2)
• 2015年以降=消費税増税に伴う住宅の「駆け込
み需要」(住宅ラッシュ)の反動。
• 2013年5月の新設住宅着工戸数(7万9751戸)
をもとにした季節調整済年率換算値は102万700
0戸(4年7カ月ぶりの100万戸台に)。
• 「駆け込み需要」の後:大方の予想は60万~80万
戸へ減少。しかし最悪の場合は、60万戸に近い50
万戸台へ激減する可能性も。
キーワードとしての「2015年ショック」(3)
• 奇しくもこの年は電力会社、製紙メーカーを中心に
計画されている木質バイオマス発電・熱利用ビジネ
スが本格稼働し始める年。「2015年はバイオマス
発電元年」と予測されている。
• 『日刊木材新聞』(2013.12.18)によれば、現在、バ
イオマス発電施設新設計画案件は全国で60件(こ
のうち公的助成を見込んでいる案件は40件)。これ
にRPSからFITへ移行するバイオマス発電も含める
と、想定される燃料量木材需要は800万㎥になる。
「2015年ショック」を示唆する過去の事例
• 1997年4月に税率が3%→5%にアップした
ときは、「駆け込み需要」とその「反動減」が顕
著に現れた。
• 引き上げ前の1996(平成8)年度の新設住
宅着工戸数は163万戸。
• 翌1997(平成9)年度は134万1000戸と
一気に約29万戸も減少。
キーワードとしての「2015年ショック」の整理
• 「駆け込み需要」の反動により、製材・加工業、集成材、合板製造業の淘
汰・縮小再編は必至→丸太供給の森林組合林産事業も縮小を余儀なく
される。森林所有者の立木販売機会の縮小。
• 奇しくもこの年は電力会社、製紙メーカーを中心に計画されている木質
バイオマス発電の本格稼働。計画の多くが未利用木材の中でも32円(K
w当たり。税別)と最も高い調達価格となる間伐材由来の木質バイオマス
からの出材を期待。しかし森林経営計画の属地化認定が不十分。
• 「駆け込み需要」の反動によって、川上(特に森林組合)は丸太の需要先
として、木質バイオマス産業へ大いなる期待。浮き足立つ川上。
• 以上を換言すれば、「A、B、C、D」の道を歩むか、「D、C、B、A」を選択
するか、日本の森林・林業は重大な岐路に立たされている。
地域林業政策と流域管理システムの考え方
(川上から川下への官主導の国産材産地化運動の挫折)
川上→川下への官主導の国産材産地化運動の考え方
• 日本経済がオイルショックを契機に挫折→新たな産業構造
の青写真が描けない→農林業に「地域農政」、「地域林業」
考え方が出始める。
• 川上から川下のシステム化(「一国一城」論の限界)とオルガ
ナイザー出現への期待。
• 川上-川下連携の考え方→しかし双方には矛盾→川上(森
林所有者とその協同組織である森林組合はできるだけ立木
を高く売りたい)→これに対して川下(製材・加工業)は原料
の立木、丸太をできるだけ安く買いたい(川上と川下の拮抗
関係)。
国産材安定供給特別対策事業(林野庁補助事業)
(昭和58年度=1983年度)
• 毎年10地域、5年間で合計50地域を選定→将来
の地域材安定供給基地づくりのモデルに。
• 東青(青森)、南部(岩手)、奥久慈(福島)、飛騨川(
岐阜)、飯南(三重)、津山(岡山)、三好(徳島)、嶺
北(高知)、南部(大分)、上球磨(熊本)の10地域
が初年度に選定。
小径木の製材・加工で母屋角・桁角
川上から川下へ、川下へ…。
林業構造改善事業等の導入状況(山田茂樹原図)
図1-4 嶺北地域の林業構造改善事業の導入状況
1965 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99
活性化林構
1次林構
追加事業
2次林構
新林構・山村林構
国産材供給
総合型
体制整備事業
活性化林構・産地形成型
大豊町
流域林業推進
モデル事業
活性化林構・資源活用型
活性化林構
1次林構
2次林構
新林構・山村林構
国産材供給
総合型
体制整備事業
→ 山村森林活性化緊急特別対策事業
本山町
活性化林構・産地形成型
流域林業推進
モデル事業
1次林構
2次林構
新林構・山村林構
活性化林構・総合型
↓
国産材供給
林業村落振興
体制整備事業
土佐町
→ 山村森林活性化緊急特別対策事業
緊急対策事業
活性化林構・産地形成型
流域林業推進
モデル事業
活性化林構
1次林構
新林構・地区林構
新林構・山村林構
総合型
国産材供給
体制整備事業
大川村
→ 山村森林活性化緊急特別対策事業
活性化林構・産地形成型
流域林業推進
モデル事業
1次林構
2次林構
新林構・山村林構
活性化林構・総合型
国産材供給
体制整備事業
活性化林構・産地形成型
旧本川村
流域林業推進
モデル事業
→活性化林構・地域活性化型
資料:嶺北流域林業活性化センタ-資料により作成。
注)「林業村落振興緊急対策事業」は2次林構事業、「国産材供給体制整備事業」、「山村森林活性化緊急特別対策事業」は新林構事業、「流域林業推進モデル事
業」は活性化林構事業である。
2000
川上の挫折、疲弊
• 川上による川下(製材・加工、合板、集成材、
プレカット、住宅企業そして木質バイオマス企
業)の誘致(地域林業→流域管理システムで
開設された半官半民の製材工場の買収、売
却→魂の入替え)。
• 川上による公募(協同組合兵庫木材センター、
青森県が現在公募中)。
川下の川上掌握(1)
• 地域林業政策、流域管理システムの破綻以後をど
うするか、川上による川下(製材・加工業、集成材生
産、合板メーカー)の誘致合戦→今後増える。
• 川上(森林組合、素材生産業者、原木市売市場)の
役割は丸太の安定供給。ほんとうにそれが可能な
のか。再吟味の要あり。
• 素材の増産体制を確立せずに、現在の丸太生産量
をその場その場で供給。
川下の川上掌握(2)
• 規模拡大する国産材製材業、集成材生産業、合板メーカー
は「森林経営計画」の進捗に疑問→いつになったらその輪郭
を整えるのか→百年河清を俟つ。
• ならば自社有林を。
• 自社で立木の伐採、採材を。
• 例)8m余で玉切り→トレーラー(改良の要あり)で自社に搬
入。自社のカスケード利用。自社のA、B、C、D、E採材。
• これを山側に委ねるとコストが発生。山側の論理で採材され
る危険性あり。
出口(需要)のない川上の集約化
(貧すれば鈍する)
大手製材、合板メーカーの社有林構想(1)
• 中国木材(株)堀川保幸社長「国産材の立木
買いに意欲」(2011年新年会)→既に九州を
中心に約2000haの人工林を購入済み→目
標は1万haの社有林。
• セイホク井上篤社長「森林伐採事業への進
出意欲を示し、新会社(社有林)設立の構想
を示す」(『木材建材ウィクリー』No.1812、2
011年3月7日)
製材・合板企業による森林取得の事例
• 中国木材:九州で2500haの人工林を購入。うち熊
本県の人工林は3団地2100ha。2013年4月~社
内に山林部を創設。さしあたり1万haの社有林。
• 秋田プライウッド:秋プラの森(社有林)440ha創設(2
440
箇所)。森林経営計画の認定。現在も2物件(うち1
件は200ha)。さしあたり1000haの社有林。
• 門脇木材:もともと素材生産業。現在、製材も兼営。
社有林2000a。
• トーセン:250haの社有林取得。
バイオマス発電は「諸刃の剣」(1)
「役に立つ側面」
• 中長期的にみれば、日本は国力を反映して構造的円安局面
に入ることが予想される(1000兆円以上の累積債務。財政
赤字に加えて経常収支も赤字に)。
• 木材を含めた海外資源の入手困難に。
• (例:原油価格;1994年17.2ドル/バレル→2008年99
ドル/バレルへ)。
• その一方で、1000万haに達する国内の人工林が成熟。
• 国産材のカスケード利用(マテリアルとしてのA、B、C。エネ
ルギー用としてのD、E…)の切り札になる可能性大きい。
• 森林資源の価値上昇につながる。
• 木質バイオマス発電に期待する面。
バイオマス発電は「諸刃の剣」(2)
「損害をもたらす側面」
• 木材のカスケード利用(マテリアルとしてのA
、B、C。エネルギー用としてのD、E…)では
なく、倒錯した「E、D、C、B、A」の世界へいく
危険性が十分ある。
• D材、E材価格では日本の森林・林業の持続
的経営は無理。
• 現在の森林・林業はB材林業→これでも持続
可能性は厳しい。
木質バイオマス発電所
木質バイオマス発電所の燃料(C材、D材、E材)
木質バイオマス発電の燃料
「『D、C、B、A』の世界なんてありえないっ」!?
• ほんとうに荒唐無稽な考えだろうか。
• じつは過去に「ヒヤリとした教訓」が。
• ロシアが資源ナショナリズムを背景に、2009年か
ら丸太輸出課税アップ(25%→80%)を打ち出した
とき(破綻国家の「飢餓輸出」から木材工業化政策
へ)。
• 国産材ってほんとうに頼れる資源なのかどうかが試
された。しかし、その結果は?
合板用丸太のウエイトが増加
図 用途別スギ素材生産量の推移(全国)
資料:『木材需給報告書』。
生産量(千m3)
10000
9000
8000
7000
6000
木材チップ用
合板用
製材用
5000
4000
3000
2000
1000
0
2003
2004
2005
2006
年
2007
2008
• 「国産材新加工・流通」
(2004~06年)を契
機に、01年の18万2
千㎥から11年の252
万4千㎥へと10年間で
14倍に増加。
国産材素材生産の増加率は年3%前後で推移
試算値と現実のギャップ(1)
• 1 輸出課税80%は事実上の輸出禁止措置。した
がって合板用の北洋材は輸入不可能。
• 2007年の合板用丸太消費量は522万7000㎥。
このうち北洋材は265万5000㎥(50.8%)、国産
材は163万2000㎥(31.2%)。
• 問題は北洋材+国産材=428万7000㎥を国産材
で賄えるか?
• そこで、2007年の増加率(6.3%)で2008年の
素材生産量を計算すると1876万2000㎥になるは
ずであった。
試算値と現実のギャップ(2)
• しかし実態は、それをはるかに下回る1770万9000㎥しか
供給できなかった。
• しかも同年の合板用素材生産量は213万7000㎥で、428
万7000㎥の半分にすぎない。
• ではどうするか?米マツやラジアータパインを輸入するより、
国産材製材用材(A材)を利用したほうが効率がよい。
• 国産材争奪合戦(B材がA材を、C材がB材を喰う素地がここ
にある)→「国産材戦国時代(下克上)」。
• 交通安全標語「ヒヤリで済んだあの教訓 今日も活かそう
危険予知」→「ヒヤリで済んだあの教訓 今後も活かそう 増
産へ」。
ウエイトを増す合板用素材
(東北ではその傾向が一層顕著)
図2 用途別素材生産量割合の推移(東北)
図1 用途別素材生産量割合の推移(全国)
資料:農林水産省『木材需給報告書』、同『木材統計』。
注:『木材需給報告書』、『木材統計』。
年
年
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
製材用
合板用
木材チップ用
0
10
20
30
40
50
割合(%)
60
70
80
90
100
製材用
合板用
木材チップ用
0
10
20
30
40 50 60
割合(%)
70
80
90 100
国産材争奪はなぜ起こるのか?
• 素材の増産体制を構築しないまま新たな需要へ振り向ける
から。《ある事例》
• 2005年、佐賀県伊万里市に西九州木材事業協同組合の
製材工場が稼働(隣接の中国木材伊万里事業所へ構造用
集成材ラミナを供給)。
• 九州各地からスギ丸太が供給(2008年には丸太消費量19
万2000㎥に)。
• ある産地の対応:100の素材生産能力を拡充せずに、20を
伊万里へ供給。地元の相場がよくなると、伊万里はやめて地
元に販売。協定取引がなかなか進まない一因。
増産できないファクター
《素材生産業者の孤立分散・ご都合主義的生産活動》
• 民間の素材生産業者→自分の思惑で、各自
がバラバラの生産活動(高性能林業機械の「
元」をとるため、従業員を遊ばせないため)。
• 《対策》素材生産業者の組織化と窓口の一本
化(ただし、かつての素材生産協同組合とは
違う)→協同組合ノースジャパンがヒント。
増産できない要因
《森林組合林産事業の「待ち」の姿勢》
• 森林組合の素材生産(林産事業)は間伐の
受託生産販売が中心→補助金でできる素材
供給(「官製伐採」)→「待ち」の姿勢。
• 「搬出間伐制度」がさらに拍車をかける。
• 春(年度末)に出材が集中する悪しき構造の
形成(供給過多の一因)。
増産できない要因
《森林組合林産事業の限界》
• 森林組合林産事業のテリトリー→組合の管
轄地域。
• 《対策》(県境を越えた)森林組合の連携によ
る林産事業(買取生産を含む)の拡充。→南
那珂(宮崎)、都城(同)、曽於地区(鹿児島)
3森林組合の取り組み。
増産できない要因
《原木市場の限界》
• 丸太の流通拠点である原木市売市場が荷主
(出荷者)と買方それぞれの情報を収集して、
お互いの情報を的確に伝えることが少ない。
• 《対策》「市売」の縮小と新たな事業展開→(
株)伊万里木材市場がヒント。
スギ素材生産の地域性に対応した素材生産・流通の
再編
• 南九州型→原木市売
市場の再編→伊万里
木材市場。
• 北東北型→国有林地
→
帯→国生協、素生協の
再編→ノースジャパン。
図 地域別スギ素材生産量の推移(指数
資料:『木材需給報告書』。
注:90年=100とした指数。
指数(%)
200
全国
150
青森
秋田
静岡
100
奈良
大分
熊本
宮崎
50
0
90
92
91
94
93
96
95
98
97
2000
99
2
1
年
4
3
6
5
8
7
10
9
11
改めて問われる国産材素材の増産と仕分け・配給機能の強化
事例1:群馬県森連渋川県産材センター
A、B、C材5万㎥弱取扱い
3カ月ごとの固定価格で買取り
事例1:群馬県森連渋川県産材センター
A、B、Cを全て3mで集荷
C材はチップに
事例1:群馬県森連渋川県産材センター
A、B、Cを全て3mで集荷
B材は集成材のラミナに(平均価格
より2000~3000円/㎥高い)
事例1:群馬県森連渋川県産材センター
A、B、Cを全て3mで集荷
A材はGR柱で県産材加工協組へ
事例1:群馬県森連渋川県産材センター
A、B、C材5万㎥弱取扱い
3カ月ごとの固定価格で買取り
東海木材相互市場サテライト美並の並材仕分け
(東海木材相互市場提供)
仕分けされた並材を1本1本土場に並べる
2人1組で目視による検収
(東海木材相互市場提供)
丸太の径級、曲り具合、枝ムシの有無などを1本1本見ていく
(東海木材相互市場提供)
周密な仕分けでこれだけの価格差(平成25年7月)市況
(愛知県森林協会『林業あいち』2013年9月号)
東海木材相互市場
• スギ16~18㎝、3m
• 1万円/㎥(安値)
• 1万1000円/㎥(高値)
• ヒノキ16~18㎝、3m
• 1万7000円/㎥(安値)
三河材流通加工センター
• スギ16㎝~18㎝、3m
• 6000円/㎥(安値)
• 1万円/㎥(高値)
• ヒノキ16~18㎝、3m
• 1万3000円/㎥(安値)
仮に「A、B、C、D」の道を歩んだとしても…
スギ柱取り用丸太の椪積(栃木県森連矢板共販所)
スギ集成管柱((株)K木材)
Aはほんとうに主役の資格があるのか?
(減少する「ひき角類」と増加する集成材)
図 ひき角類と構造用集成材の生産量の推移
資料:『木材需給報告書』、日本集成材工業協同組合調べ。
生産量(千m3)
3500
3000
2500
2000
構造用集成材
ひき角類
1500
1000
500
0
2000
1
2
3
4
5
年
6
7
8
9
10
地盤沈下が進む「先進」林業地
図 地域別スギ素材生産量の推移(指数)
資料:『木材需給報告書』。
注:1985年=100とした指数。
指数(%)
180
160
140
全国
東北
120
九州
東海
100
近畿
80
60
40
85
87
86
89
88
91
90
93
92
95
94
97
96
99
98
年
1
2000
3
2
5
4
7
6
9
8
10
高まる集成材採用率
図 部材別集成材の採用率の変化
資料:『木材建材ウィクリー』No.1892、2012年10月、日刊木材新聞社。
採用率(%)
80
70
60
50
柱
40
横架材
土台
30
20
10
0
98
99
2000
1
2
3
4
5
年
6
7
8
9
10
11
• 日刊木材新聞社が20
12年に実施したアンケ
ート調査結果。
• 回答社数は78社(うち
50棟以下は8社)
管柱の国産材率の低下
(日本木造住宅産業協会調べ)
•
•
•
•
•
•
管柱の国産材比率の推移
2008年(63.7%)→2011年(37.5%)
スギKD管柱の国産材比率の推移
2011年(4.7%)→対2008年比16.7ポイント減
ヒノキKD管柱の国産材比率の推移
2011年(6.5%)→対2008年比5.2ポイント減
• (出典:木住協「木造軸組工法住宅における国産材利用の実
態調査」、『日刊木材新聞』2013年5月2日付)
日本のスギ丸太は2002年を底に以後増加に
~A材の踏ん張りの現状~
図 日本のスギ丸太生産量の推移
資料:『木材需給報告書』。
丸太生産量(1000m3)
10000
9500
9000
8500
8000
7500
7000
6500
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
2000
年
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
スギ素材生産の地域性
• 増加傾向にある南九州
ブロック
• 90年代は停滞、2000
年代に入って増加に転
じた東北ブロック
• 減少に歯止めがかから
ない「先進林業地」
図 地域別スギ素材生産量の推移(指数
資料:『木材需給報告書』。
注:90年=100とした指数。
指数(%)
200
全国
150
青森
秋田
静岡
100
奈良
大分
熊本
宮崎
50
0
90
92
91
94
93
96
95
98
97
2000
99
2
1
年
4
3
6
5
8
7
10
9
11
7.5%の大規模工場が、製材用素材の63.5%を消費
(寡占状況の進行)
図 製材規模別素材消費割合(2012年)
図 出力階層別製材工場数割合の推移
資料:農林水産省『平成24年木材統計』
資料:『木材需給報告書』。
注:外材製材を含む。
年
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
2000
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
10.1%
26.4%
小規模(7.5~75.0Kw)
中規模(75.0~300.0)
大規模(300.0Kw以上)
63.5%
0
10
20
30
40
50
割合(%)
60
70
80
90
100
小規模(7.5~75.0Kw)
中規模(75.0~300.0)
大規模(300.0Kw以上)
原木消費量、27社で142万㎥
ー国産材製材協会・会員企業アンケート調査結果ー
• 会員27社の原木消費量は142万9000㎥(対前年比1.9
%増)→国産材製材に占めるシェアは12.9%(協会試算)。
• 人工乾燥施機保有台数は329基で、合計容量は1万5951
㎥、月4回転した場合、月産76万5648㎥→製材品生産量
に占める割合(KD比率、容量ベース)は89.9%。
• 製材品の販売先は、商社・問屋28.4%、プレカット22.7%、
製品市場13.8%、小売り9.1%、ハウスメーカー7.0%、ホー
ムセンター4.7%。
• (『日刊木材新聞』2013年8月8日付)
規模拡大が顕著な国産材大手製材業
国産材製材工場上位20社(2002年)
■ 大規模製材工場等の国内分布(H19)
凡
例
製材
1~5万m3
5~10万m3
集 成 材
0.5~1万m3
1~5万m3
5~10万m3
10~20万m3
20万m3 以上
0.5~1万m3
合板等
1~5万m3
5~10万m3
10~20万m3
20万m3以上
※ 製材工場は、国産材原木利用量1万m3以上
※ 集成材工場は、原木利用量(外材も含む)5千m3以上
※ 合板、LVL工場は、原木利用量(外材も含む)5千m3以上
2.我が国の森林を巡る状況
製材・合板工場の立地(沿岸から内陸へ)
■ 主な事例
○ S県産材センター(群馬県 渋川市)
A材、B材、C材すべてを買い取り、選別機で仕分けし、A材
は製材工場、B材は一次加工してから集成材工場、C材は製
紙工場やバイオマス発電所などに販売する予定。 バーク(樹
皮)についてもバイオマス発電所などに販売。
○ M合板協同組合(岐阜県 中津川市)
■ 大規模工場の国内分布(H21)
(年間原木消費量3万m3 以上)
製 材
集成材
合 板
S社グループ、県森連等が主体となり平成20年9月に設立。
現在、合板用原木を全て国産材でまかなう(原木使用量は約
10万m3を想定)べく、施設を整備している状況。本格稼働は平
成23年4月の予定。
○ 協同組合H木材センター(兵庫県 宍粟市)
主に県内の森林組合、素材生産業、木材加工業、木材販売
業など21社により、原木の安定的な供給から大規模な加工、
販売までを協同組合で一貫して行えるよう構成。
○ C株式会社(広島県 北広島町)
集成材ラミナの生産工場を、広島県内陸部の大朝工業団地
に整備。年間生産量は3万m3でスタートし、将来的には10万m3
程度まで拡大予定。 原木は、隣接している木材集出荷施設を
含む中国地方5県から調達。
○ 協同組合K製材(熊本県 あさぎり町)
M社、県森連など24業者により構成され、製材工場は平成
18年6月から本格稼働。地元産スギをラミナや間柱に加工、生
産量は当初2万6千m3 から夜間ラインの稼働により5万m3 を
計画。
資料 : 林野庁業務資料
注1: 製材工場は国産材の消費量
71
2: 製材工場以外は、国産材及び外材の消費量
製材革命の進行(ノーマン・ツインバンドソーの普及)
最新鋭の製材システム
(外山木材(株)志和池工場)
スギ間柱・ラミナ専門工場:久万広域森組父野川(愛媛県)
本邦初のカービングソー
スギ間柱の天然乾燥
スギ間柱・ラミナ専門工場(株)くまもと製材(熊本県)
ノーマンツインバンソー
板挽き専門
製材規模拡大の背景
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製材システムの改革(製材革命)
KD技術(特にスギ)に目処
スギ中目丸太の製材パターンに目処
KD用の木屑焚ボイラーの普及
戦後の拡大造林資源の成熟化
製材業へ投資する条件が整備
国産材産地としての北関東・東北南部の特徴
• 八溝山系を取り巻く形で大型量産工場(協和木材、トーセン、宮の郷木材
事業協組など)が多く立地。
• 上記2工場・1グループで約60万㎥の国産材丸太(大部分がスギ)を消
費。
• 福島(43万3000㎥)、栃木(32万8000㎥)、茨城(17万8000㎥)計9
3万9000㎥(スギ)の56.7%を占める→寡占化状況。
• さらに二ノ宮木材(6万㎥、栃木)、渡辺製材所(3万6000㎥、同)、マル
ハチ(2万1000㎥、同)、大栄木材(1万6000㎥、同)などが規模拡大
中。
• また吉源木材(福島)のようにロシア材から国産材へ原料転換しながら規
模拡大を模索している工場も。
国産材産地としての北関東・東北南部の課題
• 協和木材、トーセングループの集成材生産の取り込
み(ムク+集成材)、宮の郷木材事業協組(構造用
集成材ラミナ製材)にみられるように、集成材産地と
しての様相もみせはじめている。
• こうした丸太需要拡大に対応して、例えば、栃木県
のように従来の間伐一本槍から皆伐を視野に入れ
た増産体制の構築を志向する気配が出ている。
• 皆伐→カスケード利用。A材、B材、C材、D材に仕
分け・配給機能を誰がどういう形で担うか?
再び「2015年ショック」後を考える
• 新設住宅着工戸数(木造軸組工法住宅)の激減→
国産材(特にA材)の需要縮小。
• どこに需要を求めるのか(川上サイドの課題)?
• その一方で、製材・加工業の淘汰・再編による一部
大手国産材製材・加工業の寡占化状況の到来。
• 川下による川上の掌握のいっそうの進行。
• 川下対川上の矛盾先鋭化。森林管理のあり方は、
本来、こうした川上と川下の拮抗関係の中で考える
べき。