〈解説〉財務 お金の流れ

解説Ⅲ財務
お金の流れ
利益とコストに注目しながら
業務に取り組もう
高度ポリテクセンター
芹澤幸一*
把握しておいて欲しい。
プレス加工業の業務の流れ
また一般に会社では、仕事を分業して行ってお
まずは一般的なプレス加工業の主な業務の流れ
り、顧客から受けた製品を注文通りに納めるため
を一例として図 1 に示す。図 1 の各業務は、顧
に、各部門がそれぞれの担当の仕事に責任を持っ
客からプレス製品データ、納期などの要求を受け
て、各自の仕事を完結させながら次々工程を進め
(受注)⇒製品データを基に金型仕様を検討、金
て行く。そして最終的に顧客から受けた注文通り
型構想設計、CAD による設計(金型設計)⇒金
の製品に仕上げて納めている。
型設計図面や部品調達リストなどを基に金型を製
ここで注意しておきたいことは、会社がアウト
作するための部品・資材の調達(資材調達)⇒金
プットする「製品」についてである。ただ指示通
型加工の NC プログラミングから工作機械による
りに製品を納めればよいという考え方ではなく、
金型加工、熱処理・コーティングなどの表面処理、
その製品がその後どのように使われていくのか、
金型の組立・調整(金型製作)⇒金型完成後のプ
顧客の立場になって、顧客がその製品に望んでい
レス試し加工・調整、プレス量産加工(プレス加
る見えない要求までも「製品」として捉えること
工)⇒各工程における検査、最終検査(検査)⇒
が大切である。
梱包、出荷(出荷)を意味している。実際はもっ
そのため自分に任された業務は、全体の業務の
と多くの業務から成り立っているが、ここでは簡
どの部分に当たるのかを考えた上で、前後工程と
略している。
の連携を図りながら、自分の業務に向き合う必要
会社で行っている業務の範囲はさまざまで、プ
がある。そして、そのような考えを社員 1 人ひと
レス製品図面を受けて、金型設計から行っている
りが共通認識として持ち、顧客の要求に応えるべ
会社もあれば、金型設計図面を受けて金型製作か
く連携を取りながら業務を進め、顧客に喜んで頂
ら行う会社、または、プレス加工から行っている
ける製品とサービスをアウトプットすることが重
会社と会社によって業務内容は異なる。新入社員
要である。
の諸君は、自社の業務内容と全体の流れを、まず、
*
(せりざわ こういち)
:素材・生産システム系 能開准
教授
〒261−0014 千葉市美浜区若葉 3−1−2
TEL:043−296−2773 FAX:043−296−2780
各業務で発生するコスト
会社は、人を雇い、設備投資をし、製品をつく
るための材料を買い、材料を加工、製造し、完成
させた製品を顧客に納める。そして顧客から頂い
たお金が次の生産につなげていくための重要な資
金となる。しかし、各業務で多くのコストが掛か
受
注
金
型
設
計
資
材
調
達
金
型
製
作
プ
レ
ス
加
工
検
査
図 1 プレス加工業の業務の流れ
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出
荷
っていれば、その分、会社に残る資金は減ってし
まう。
コストは、会社が製品とサービスをアウトプッ
トするための業務活動の中で発生する。図 1 で示
プ レ ス 技 術