システム再構築を成功に導くユーザガイド ~ ユーザとベンダで共有する再構築のリスク対策 ~ システム再構築を取り巻く現状 再構築の問題化を防ぐために 企業活動を円滑に遂行するための重要な仕組みを担う基幹システムは、長期間にわたる維持保守と度重 なる追加開発を通じて、老朽化、肥大化・複雑化、ブラックボックス化が進んでいる。このようなレガシーシス テムでは、再構築で必要となる現行の業務知識が失われており、再構築の問題化を引き起こしている。 企画段階で以下のような点について検討し、ユーザ企業とベンダ企業双方で認識をあわせることで再構築 の問題化防止につながる。 ●再構築の企画段階で検討すべき観点 ステップ1 2 章 • まずは「現行システム調査」から 現行システム調査・分析 ステップ2 再 構 築 手 法 選 択 編 • 再構築の目的・方向性の検証 新システムの要求事項分析 ステップ3 • 再構築手法の候補を選定 再構築手法の選択 ステップ4 • 最も適した再構築手法の決定 再構築手法の決定 再構築の現場で何が起こっているか 要求の確認 現行業務知識の不足により、特に「現行踏襲」と「品質保証」で問題が起こりやすい。 現行踏襲内容の明確化 3 章 「現行踏襲」の「現行」が何か、ユーザ企業とベンダ企業との間でギャップが発生 しがちである。 現行踏襲内容の明確化 計 画 策 定 編 設計書とソースコードとのギャップ 設計書が更新されておらず記載内容が古い状態となっている 設計書やソースコードと動作しているシステムとのギャップ 品質保証の検討 • 現行業務知識不足部分の整備計画 • 整備不可部分への方針決め • 設計変更箇所の明確化と変更内容の早期確認 • 新システムの設計に反映すべき観点確認 • システム方式、運用方式の確認 ※書籍版の「3章 計画策定編」では8つの観点を記載しているが、ここではとくに重要な観点に絞っている。 どの再構築手法を 選択すべきなんだろう 再構築の品質保証では「業務継続性の担保」が求められるが、現行業務知識が不足していることで、 様々な困難が発生する。 その1① • 各ステークホルダと調査・合意し、内容を明確化 現行業務知識不足への対応 品質保証の検討 ・製品の提供する機能で実現されている機能が設計書には明記されていない ・設計書に記載されているシステムの設計の時限と実際の運用フローの時限に乖離がある(帳票の出 力時間など) • 再構築手法選択編で抽出した要求の確認 PMBOK 共通 フレーム 社内 標準類 この手法で再構築を実現 するために検討すべき ことはなんだろう テストをどこまで実施する必要があるかの判断が困難 テスト項目の作成が困難 その3 トラブル時に解析が困難 1 RFP システム化 計画 その2 本ガイド 2 再構築手法選択編 計画策定編 再構築手法選択編では、再構築のテーマを起点に、現行システムの状態と新システムの要件から再構築手 法を選択するプロセスを示す。 計画策定編では、再構築に特有なシステム化計画策定時に検討すべき観点を示す。 要求の確認 再構築のテーマ 1 HW SW 老朽化対応 維持コスト 削減 業務スリム化 柔軟性向上 要員不足 対応 ユーザ企業内の全てのステークホルダが、要求事項の内容に認識齟齬がない状態を、 新システムに対する要求事項のベースラインとして合意する 現行踏襲内容の明確化 ステップ1 現行システム 調査・分析 再構築の際に必要となる現行システムの状態を正確に把握するための調査・分 析を行う。 調査・分析作業は、ユーザ企業で実施、あるいはユーザ企業がベンダ 企業のサービスなどを活用して実施する。 1 企画工程で、機能要件、非機能要件に対して現行踏襲内容を明確化する 2 明確化できない部分はベンダ企業等と協力して現行仕様を調査し、要件定義工程で明確化する 3 現行通りの実現にはコスト・時間が増加する場合があり、対応方針を決定する 【ポイント!】 ステップ2 新システムの 要求事項分析 再構築の目的を達成するために、新システムへの要求事項の洗い出しと要求事項の 優先付けを行う。これにより、新システムへの要求事項が明確になる。 現行業務知識不足への対応 ステップ3 再構築手法 の選択 ステップ4 再構築手法 の決定 ・検討した内容は、設計ドキュメントに記載し、各ステークホルダで合意しておく ・利用部門との認識齟齬が起こりやすいため、レビューへの利用部門の参画、サンプルの早期 提供による使用感の確認実施を検討することが望ましい 新システムへの要求事項(業務仕様や基盤の変更有無)と再構築後の効果および移 行期間の組み合わせから、再構築手法の候補を1つ(場合によっては複数)を選択する。 1 不足している範囲を確認し、ドキュメントや有識者を整備するための対策を計画する 2 経営者を含む再構築に関わるステークホルダが協議して再構築手法を決定する。ここ で決定した再構築手法に対するコスト、期間、リスクおよび、業務有識者の関与度合い については、計画策定編の作業を経てユーザ企業とベンダ企業で合意する。 整備できない現行業務知識の不足部分に対して、どのように開発を進めていくのかという 「判断」が必要となる場合に備え、判断するための意思決定プロセスを検討する 品質保証の検討 1 どういう状態になれば業務が継続できるか、どういう確認をどこまで行えば業務 継続性を担保できるかを業務の重要性や予算・期間を考慮して具体化する 2 開発工程全体での取り組みを検討する 計画策定編へ 独立行政法人情報処理推進機構(IPA) 技術本部 ソフトウェア高信頼化センター(SEC) http://www.ipa.go.jp/sec/index.html 3 4
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