別添1 系統安定化に向けた蓄電システム実証事業(インド共和国) 事業計画書 スマートコミュニティ部 1.実証事業の背景・目的・目標および内容 (1)実証事業の背景 本実証事業は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」 という。)の「エネルギーの消費効率化等に資する我が国技術の国際実証事業」の一環と して実施する。 本実証事業は、我が国のエネルギー・環境分野における優れた技術力を強みに、低炭 素技術・システムを海外に積極的に展開・普及し、成長著しい世界の低炭素関連市場で のビジネスを獲得し、もって我が国及び世界のエネルギーセキュリティに貢献するとと もに、我が国の経済成長や雇用創出につなげ、また、海外の政府・企業とも連携し、最 先端の実証事業に取り組むことで、中核的な技術・システムに関する世界でのフロント ランナーとしての地位を確保すると共に、共同で世界市場の獲得を目指すことを目的と する。 (2)実証事業の目的 インドは経済成長と共に一次エネルギーの大量輸入・消費国となる見通しから再生可能 エネルギーの導入が積極的に進められており、2022 年までに太陽光・熱発電 100GW、風力 60GW、バイオマス等 10GW、小水力 5GW を導入する目標を掲げている。また、2015 年 10 月 に国連気候変動枠組条約事務局(UNFCC)に提出した約束草案(INDC)では、2030 年の GDP あたりの温室効果ガス排出量を 2005 年比で 33~35%削減、発電容量に占める非化石エネル ギー減の占める割合を 40%に高めることを明記している。このため、インド政府は州間・ 州内連系線の強化をはじめとして再生可能エネルギーの大量導入に対応できる取り組みを 進めており、解決策の一つとして蓄電システムの導入へ高い関心を示している。 そこで本事業では、インドにおいて太陽光発電や風力発電等の変動性のある再生可能エ ネルギーの大規模な導入により課題となる系統対策に対して、蓄電池を実系統に接続し需 給調整を行う蓄電システムの実証事業を行う。 なお、現在インドではピーク時や系統不安定化への対応策として、負荷遮断や再生可能 エネルギーの出力抑制が頻繁に行われている。かかる状況は、急増する再生可能エネルギ ー導入に対して、系統運用機関に需給調整の責任が不明確、また周波数調整力の調達にお いて適切な市場が構築されていないこと等に起因する。同環境下において、蓄電システム を導入していくためには、本事業を通じ、蓄電システムの導入で得られる便益、必要な諸 制度や市場構築に向けたルール整備等を明確にし、インド政府に対する制度改善への働き かけと一体となって進めていく必要がある。 1 本事業を通じて、複数の蓄電池の充放電を遠隔制御・運用する蓄電池統合制御システム 及び蓄電池の実証を行い、電力供給の不安定な環境下における充放電タイミングの適切な 運用方法を含む蓄電システムの有効性と経済性を明確化し、当該国の再生可能エネルギー の導入拡大を促進し、蓄電システムの普及展開に繋げることを目的とする。 なお、本年 1 月に、世耕経産大臣とゴヤル電力・石炭・新・再生可能エネ・鉱物大臣と の会談において、蓄電システムを含めた系統対策の分野で協力を進めていくことに合意し ている。 (3)実証事業の目標 ①蓄電システムを活用した系統安定化技術実証 太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギーの導入が拡大している地域を対 象として、蓄電池及び複数の蓄電池を組み合わせて最適制御する蓄電池統合制 御システムを導入し、系統安定化策としての蓄電システムの有効性及び経済性 を実証する。 ②ビジネス展開プランの策定 蓄電池統合制御システム及び蓄電池について、当該国における展開可能性、競 合企業・技術によるソリューションとの比較などによる競争力の評価、当該技 術普及のためのビジネスモデル及びビジネス展開プランの策定及び普及に必要 な制度改善事項を検討する。 (4) 想定する実証事業の内容 上記目標を達成するために、以下の項目について、実証事業を実施することを想定。 ①蓄電システムを活用した系統安定化技術実証 太陽光発電および風力発電等の再生可能エネルギーの導入が拡大している地域 を対象として、蓄電池及び複数の蓄電池を組み合わせて最適制御する蓄電池統 合制御システムを導入し、実証事業を行う。 また、実証対象となる州において 2022 年を含む中長期的な再エネ導入量、需 給バランス、負荷パターン等を考慮した系統解析、蓄電システムの限界コスト、 揚水発電、火力発電、連系線強化、ディマンドレスポンス等の系統安定化対策 の限界コストの分析を行い、本事業の成果を展開した場合の系統安定化対策と しての有効性及び効果をシミュレーションにより評価する。加えて、蓄電シス テム導入によるインド全土の電力システムへのコストベネフィットを評価する。 2 ②ビジネス展開プランの策定 今回の実証技術の当該国での展開について検討しビジネスモデル及びビジネス 展開プランを策定する。策定にあたっては、当該国内の関連法規制および政策 動向等を調査の上、ビジネスモデル及びビジネス展開プランを成立させる上で 必要となる制度改善事項についても検討する。 2.実証事業の実施方式 (1)実証事業の実施方式 ①本実証事業は、実証事業の内容、推進体制、事業期間および実証後の普及展開モデル を詳細に策定し、その結果見込まれる経済効果および CO2 削減効果を精査する「実 証前調査」と、実証前調査に基づき当該国で技術実証を行う「実証」までの一連の事 業を 1 テーマと見なし、迅速かつ効率的に事業を実施する。 ②実証前調査終了時には、 「5.評価に関する事項」に基づき、事業化評価を実施し、実 証への移行を判断する。 (2)実証事業の実施体制 ①NEDO が本事業を開始するに当たっては、外部有識者から構成される委員会等を設置 し、事業内容・計画及び実施体制の妥当性についての審議に基づいた評価を行った上 で委託して実施する。 ②本実証事業では、「1.(4)想定する実証事業の内容」に示す全項目を一体的に推進す ることが目標達成に効果的である。このため、実証前調査及び実証にわたって、全項 目について一体となって取り組む適切な実施体制を構築する。 3.実証事業の実施期間 (1)実 証 前 調 査:NEDO が指定する日から平成 29 年 12 月 31 日までとする。 (2)実 証:実証前調査に引き続き速やかに実施することを想定。 平成 29 年度の事業化評価終了後から平成 32 年度までの約 3 年間 を予定する。 なお、本事業は、政府予算に基づき実施するため、予算案等の審議 状況や政府方針の変更等により、契約期間等を変更することがあ り得る。 4.事業規模 事業全体のうち、NEDO 負担分は以下の通り。 (1)実 証 前 調 査:60 百万円以下 (2)実 証:25 億円以下 3 5.評価に関する事項 NEDO は、実証事業の位置付け・必要性、実証事業実現可能性、普及可能性の観点から、 実証前調査の調査報告書に基づいて事業化評価を実施する。なお、事業化評価の時期につ いては、当該実証事業に係る技術動向、政策動向や調査の進捗状況等に応じて、前倒しす る等、適宜見直すものとする。 6.その他重要事項 (1)実証事業の成果の取り扱い ①成果の普及 得られた実証事業の成果については、NEDO、実施者とも普及に努めるものとする。 ②標準化等との連携 得られた実証事業の成果については、標準化等との連携を図るため、ユースケース 等の提供、標準の提案等を積極的に行う。 (2)実証事業計画の変更 NEDO は、実証事業内容の妥当性を確保するため、社会・経済状況、国内外の技術動 向、政策動向、第三者の視点からの評価結果、実証事業費の確保状況、当該実証事業の 進捗状況等を総合的に勘案し、達成目標、実施期間、実証事業体制等、実証事業計画の 見直しを弾力的に行うものとする。 (3)根拠法 本実証事業は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法第 15 条第 4 号及び 9 号に基づき実施する。 4
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