ここから Column MESSAGE 「事前相談を使わないのは、もったいないですよ!」 Ⅲ 提案を具体的に考えたい 地方から寄せられた事前相談は、各地方公共団体から派遣されている私たち調査員 が窓口となり、丁寧に対応しています。事前相談を活用することのメリットとして、皆さ んのモヤモヤした疑問や悩みを内閣府とのやり取りを通じて、支障事例の形に整理し、 提案に結び付けることができる点にあります。 いわゆる説得力のある支障事例とはどのようなものでしょうか? 表 1 は、複数落札入 札制度を地方公共団体でもできるようにすべきという提案ですが、下水汚泥の処理能力 を例に、具体的な事実関係やデータをもとに支障事例がしっかりと書かれています。ま 内閣府 た、制度改正による効果についても、入札に要する事務の効率化として明確に書かれて 地方分権改革推進室調査員 います。この提案は担当省の理解を得て実現に至りましたが、内閣府との事前相談での 樋口 貴裕 やり取りにより、提案内容がこのような形で磨き上げられていきます。 (前橋市から派遣) また、当初は提案の対象外だったものが、事前相談を経て提案となり、実現した例もありま す。表 2は、当初の段階では、提案募集の対象外でしたが、事前相談におけるやり取りを重ねる中で、提案団体において 提案の方向性を工夫いただくことで、提案の対象となりました。さらに、提案の説得力が高まるよう、具体的な事実関係や データをもとに、現場の実態を明記するよう助言したところ、支障事例の補強を図ることができました。その結果、担当省 から前向きな回答を得ることができました。 このように事前相談は、皆さんと内閣府とのキャッチボールのような取組であり、いただいた疑問や悩みの本質 について理解を深めることができます。また、時間をかけるほど提案の内容を充実させ、実現の可能性を高めるこ とができます。この仕組みを使わないのはもったいないです。是非、気軽にご相談ください。 表 1 支障事例などが具体的に記載されている提案の例 支障事例の記載の良い点 【提案内容】 国が特定調達を行う際に認められている複数落札入札制度を地方公共団体で もできるようにすべき。 ●提案の目的やメリットが明確化されており、 担当省としても、問題点の把握や解消方法の検 討が行いやすい。 (青字部分) 【支障事例】 ●下水汚泥について、県内の需要数量が年間約 14,500t(約 55t/ 日)と多く、 継続的かつ安定的にリスク分散を図りながら処分する必要があるため、収集 運搬及び処分を民間事業者への業務委託 ( 特定調達契約 ) しているが、県内事 業者については、その処理能力が 5t∼10t/ 日程度しかなく、全量を処分する ことができない。また、県外事業者については、処理能力は 35t/ 日以上ある が、県内事業者よりも約 1 割程度処分費が高く、処分費用の抑制という観点 から課題がある。 ●複数落札入札が可能となった場合、入札件数を現在の 5 件から 2 件にまと めることができ、入札に要する事務の効率化を大幅に図ることができる。 1 提案の検討のポイント 提案の概要 ●支障事例が、県内の下水汚泥の需要数量や業 者の処理能力など、具体的な事実関係やデータ をもとに記載されており、制度改正の必要性に 説得力を持たせている。 (赤字部分) ●制度改正による効果が、具体的な入札件数を もとに、入札に要する事務の効率化として明確 に記載されている。 (赤字部分) 表 2 事前相談によって支障事例や論点が明確化されるなどして、提案に至った例 当初の事前相談の概要 【相談内容】 動物取扱責任者研修に 係る研修回数等の義務 付けを廃止すべき。 【支障事例】 毎年の受講であること や、扱う動物種や業態 がさまざまであるにも かかわらず、研修の時 間や項目等が一律に義 務付けられているため、 研修内容がどうしても マンネリ化したものに なりがちで、全ての業 者に対して有効な内容 の研修の実施が難しい。 提案の概要 事前相談における助言のポイント 【提案内容】 地方分権の観点から、自治体がそれぞれの地域の実情を 踏まえ、自らの判断により研修の実施回数や講義内容を 設定可能とすべき。 ●研修回数等の義務付けの廃止は、事業 者を対象とした規制であることから、提 案募集の対象外となる。 【支障事例】 提 案 団 体 内 に お け る 動 物 取 扱 業 の 割 合 は、 保 管 業 が 47%、販売業 38%、貸出2%、訓練9%、展示4%と大 きく偏りがあり、取扱う動物種も、最多は犬猫等の哺乳 類であるが、それとは全く生態を異にしている鳥類、爬 虫類を扱う業者も少なくなく、動物種間で必要とされる 知識は大きく異なっている。 しかし、毎年の受講であることや、基本的な項目等が省 令で一律に義務付けられているため、事業者は事業種や 動物種にかかわらず毎年同じような内容を受講すること になってしまい、研修のマンネリ化を招くとともに、全 ての業者に対して有効な内容の研修を提供することの妨 げとなっている。 ●このため、提案の方向性を工夫するよ う助言し、国が毎年の研修実施を一律に 義務付けるのではなく、自治体が自らの 判断で、研修の実施回数や講義内容を設 定可能とすることを求める提案となった。 (青字部分) ●さらに、提案の説得力が高まるよう、 具体的な事実関係やデータをもとに、動 物取扱業の業態や取扱う動物種の実態を 明記し、支障事例を補強するよう助言し た。 (赤字部分) 37
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