賃金改善を見込む企業 49.0%、調査開始以来最高を

2017/3/8
名古屋支店
住所:名古屋市中村区名駅
5-17-10
TEL: 052-561-4846
URL:http://www.tdb.co.jp/
特別企画:2017 年度の賃金動向に関する愛知県企業の意識調査
賃金改善を見込む企業 49.0%、調査開始以来最高を記録
~賃金改善理由「労働力の定着・確保」が 7 割超、
人手不足感がさらに加速~
はじめに
2017 年の景気は、
「悪化」や「踊り場」局面になるとする企業が前年から減少したうえ、
「分か
らない」が過去最高となるなど(
「2017 年の景気見通しに対する企業の意識調査」
)
、先行きが一段
と見通しにくくなっている。その一方で、政府は官民対話等を通じて賃金の引き上げを要請して
いる。そのため、雇用確保とともにベースアップや賞与(一時金)の引き上げなど、賃金改善の
動向はアベノミクスの成否を決定づける要素として注目されている。
帝国データバンク名古屋支店は、2017 年度の賃金動向に関する愛知県企業の意識について調査
を実施した。本調査は、TDB 景気動向調査 2017 年 1 月調査とともに行った。
※調査期間は 2017 年 1 月 18 日~31 日、調査対象は 1453 社で有効回答企業数は 580 社(回答率
39.9%)
、全国の有効回答企業数は 1 万 195 社(回答率 42.8%)
。なお、賃金に関する調査は 2006
年 1 月以降、毎年 1 月に実施し、今回で 12 回目。
※賃金改善とは、ベースアップや賞与(一時金)の増加によって賃金が改善(上昇)すること
で、定期昇給は含まない。
調査結果(要旨)
1. 2017 年度の賃金改善が「ある(見込み含む)
」と回答した愛知県企業は 49.0%。前年度の見込
みを 2.4 ポイント上回った。全国平均(51.2%)と比べると 2.2 ポイント下回っているが、2
年ぶりに前年度を上回り、調査開始以来最高を記録した。一方、
「分からない」が 30.0%と前
年度の見込みから 2.2 ポイント減少。労働力を確保して経営を持続するために、賃金改善に取
り組む経営者のジレンマが窺える。
2.賃金改善の具体的内容は、
「ベースアップ」が 37.4%(前年度見込み 33.8%)
、
「賞与(一時金)
」
が 29.0%(同 25.9%)となり、ベアで賃金改善を考える企業は調査開始以来最高を記録した。
また、
「ベースアップ」と「賞与(一時金)
」がともに増加となるのは 2012 年以来 5 年ぶり。
3.賃金を改善する理由は、
「労働力の定着・確保」が 73.6%(複数回答、以下同)で最多。
「自社
の業績拡大」
(47.2%)
、
「同業他社の賃金動向」
(22.2%)を大きく上回り、突出している。一
方、改善しない理由でも、
「自社の業績低迷」
(56.6%)に続いて「人的投資の増強」が 24.6%
となり、賃金動向にも人手不足の影響が強まっていることが明らかとなった。
©TEIKOKU DATABANK, LTD.
1
2017/3/8
特別企画: 2017 年度の賃金動向に関する愛知県企業の意識調査
1. 2017 年度の賃金改善企業 49.0%、2 年ぶりに前年を上回り調査開始以来最高を記録
2017 年度の愛知県企業の賃金動向について尋ねたところ、正社員の賃金改善(ベースアップや
賞与、一時金の引上げ)が「ある(見込みを含む)
」と回答した企業は、580 社中 284 社、構成比
49.0%となり、前回調査(2016 年 1 月)における 2016 年度見込み(46.6%)を 2.4 ポイント上回
った。また、
「ない(見込み含む)
」と回答した企業は 122 社、同 21.0%と前回調査(21.2%)を
0.2 ポイント下回り、
「分からない」は 174 社、同 30.0%(前回調査 32.2%)となった。なお、全
国では、
「ある(見込みを含む)
」が 51.2%、
「ない(見込みを含む)
」は 22.5%だった。
2016 年度の見通しにおいて賃金改善が「ある」は一旦減少したが、今回調査では改善が「ある」
は 49.0%に達し、リーマン・ショック前の調査結果を上回り、調査開始以来最高を記録した。一方、
改善は「ない」は鈍化しながらも減少が続き、
「分からない」も前回調査から 2.2 ポイント減少し
ていることから、賃金動向について、労働力を確保して経営を持続するため、賃金改善に取り組
む経営者のジレンマが見え隠れする。
「ある(見込みを含む)
」との回答を業界別にみると、人手不足感の強い『製造』
(52.9%、前年
度比 3.6 ポイント増)
、
『運
グラフ1 賃金改善状況の推移
輸・倉庫』
(51.5%、
同 12.0
あった/ある
ポ イ ン ト 増 )、『 卸 売 』
2015年度見込み
(2015年1月調査)
(50.6%、
2.9 ポイント増)
となり、労働力確保のため
2016年度見込み
(2016年1月調査)
に待遇改善を行っている
2016年度実績
(2017年1月調査)
と思われる。一方で『不動
2017年度見込み
(2017年1月調査)
産』
(35.7%、同 4.3 ポイ
68.2%
47.1%)となり、いずれも
前年度を上回った。
また、東海 4 県では、改
善が「ある」は「岐阜」が
48.1%、
「三重」
が 46.5%、
「静岡」は 53.7%で 4 県
とも増加した。とりわけ
27.3%
46.6%
21.2%
31.0%
49.0%
0%
4.5%
32.2%
65.3%
21.0%
20%
40%
3.6%
30.0%
60%
表1 2017年度の賃金改善有無(正社員)
ある
そのほか、大都市圏では、
49.4%)
、
「福岡」50.7%(同
24.2%
80%
100%
注:2015年1月調査の母数は有効回答企業644社、2016年1月調査は622社、2017年1月調査は580社
減)では減少した。
44.2%)
、
「大阪」53.3%(同
27.3%
注:2015年1月調査の母数は有効回答企業644社、2016年1月調査は622社、2017年1月調査は580社
(41.6%、同 3.0 ポイント
「東京」47.5%(前年度は
分からない
48.4%
2015年度実績
(2016年1月調査)
などが前回調査から増加
ン ト 減 )、『 サ ー ビ ス 』
なかった/ない
(構成比%、カッコ内社数)
<参考>2016年度見込み <参考>2016年度実績
ない
前年度
との差
合計
前年度
との差
ある
ない
あった
なかった
全国
51.2 (5,217)
4.9 22.5 (2,295)
-1.2 100.0 (10,195)
46.3
23.7
65.6
30.4
愛知
49.0
2.4 21.0
(122)
-0.2 100.0
(580)
46.6
21.2
65.3
31.0
大企業
45.1
(65)
5.7 16.0
(23)
-2.7 100.0
(144)
39.4
18.7
68.1
26.4
中小企業
50.2
(219)
1.2 22.7
(99)
0.6 100.0
(436)
49.0
22.1
64.4
32.6
小規模企業 47.9
(69)
7.1 27.8
(40)
-4.0 100.0
(144)
40.8
31.8
56.9
40.3
-
-
-
(284)
農・林・水産
-
金融
40.0
(2)
-
-
-
0.0 20.0
-
(1) -20.0 100.0
-
-
-
-
(5)
40.0
40.0
40.0
60.0
0.1 100.0
(66)
47.9
21.1
65.2
34.8
(4) -11.4 100.0
(14)
40.0
40.0
57.1
42.9
建設
48.5
(32)
0.6 21.2
不動産
35.7
(5)
-4.3 28.6
製造
52.9
(99)
3.6 18.2
(34)
1.1 100.0
(187)
49.3
17.1
68.4
27.8
卸売
50.6
(90)
2.9 20.2
(36)
小売
36.8
(7)
7.4 26.3
運輸・倉庫
51.5
(17)
サービス
41.6
(32)
その他
0.0
(0)
(14)
0.4 100.0
(178)
47.7
19.8
66.3
29.8
(5) -14.9 100.0
(19)
29.4
41.2
47.4
52.6
12.0 24.2
(8)
0.5 100.0
(33)
39.5
23.7
69.7
27.3
-3.0 26.0
(20)
0.3 100.0
(77)
44.6
25.7
62.3
29.9
(1)
-
-
0.0
100.0
-
0.0
(0)
-
100.0
注1:網掛けは愛知県全体以上を表す
注2:全国の母数は有効回答企業1万195社。愛知は580社
「静岡」は前年度(43.1%)から 10.6 ポイントの大幅増加となった。
©TEIKOKU DATABANK, LTD.
2
2017/3/8
特別企画: 2017 年度の賃金動向に関する愛知県企業の意識調査
2. 賃金改善の内容、ベースアップ、賞与(一時金)ともに増加するのは 5 年ぶり
グラフ2 賃金改善の具体的内容
2017 年度の正社員における賃金改善の具体
50
(%)
的内容は、
「ベースアップ」
が 580 社中 217 社、
構成比 37.4%となり、
「賞与(一時金)
」は 168
ベースアップ
40
35.1% 33.8%
社で同 29.0%となった。前回調査(2016 年度
見込み)と比べると、「ベースアップ」は 3.6
賞与(一時金)
37.4%
30
27.5%
ポイント、
「賞与(一時金)
」は 3.1 ポイントそ
れぞれ上昇した。
「ベースアップ」
「賞与(一時金)
」ともに前
10
年度から増加となるのは、リーマン・ショック
の傷が癒えた 2012 年度以来、5 年ぶりとなった。
2
0
1
6
年
度
見
込
み
2
0
1
5
年
度
見
込
み
20
2
0
1
7
年
度
見
込
み
2
0
1
5
年
度
見
込
み
29.0%
25.9%
2
2
0
0
1
1
7
6
年
年
度
度
見
見
み込 み込
0
注:2015年度見込みは2015年1月調査、2016年度見込みは2016年1月調査、2017年
度見込みは2017年1月調査。母数は2015年度644社、2016年度622社、2017年度580
社
3. 賃金改善理由は「労働力の定着・確保」が 7 割超、人手不足感がさらに加速
賃金改善が「ある(見込みを含む)
」 グラフ3 賃金を改善する理由(複数回答)
と回答した企業に理由を尋ねたとこ
ろ、最も多かったのは「労働力の定着・
確保」で「ある(見込みを含む)」と
回答した 284 社中 209 社、構成比
73.6%(複数回答、以下同)。次いで
「 自 社 の 業 績 拡 大 」( 134 社 、 同
47.2%)が続き、前年度と同じ理由が
上位となった。また、4 番目に挙がっ
た「最低賃金の改定」は前回調査から
倍増していることなど、あらゆる方法
で賃金改善することにより、労働力
を確保したいと考える企業が多い実
態が明らかとなった。
一方、賃金改善が「ない」理由で
は、「自社の業績低迷」が、「ない」
と回答した 122 社中 69 社、同 56.6%
(複数回答、以下同)で最多となっ
た。次いで、採用活動の費用や教育
研修費など「人的投資の増強」(30
社、同 24.6%)が 2 位となり、賃金
を改善しない理由にも人手不足の影
0
20
40
60
(%)
64.7%
労働力の
定着・確保
80
74.1%
73.6%
48.4%
42.1%
47.2%
自社の
業績拡大
24.7%
26.2%
22.2%
同業他社の
賃金動向
7.1%
8.3%
最低賃金の
改定
物価動向
9.5%
2015年度 見込み
2016年度 見込み
16.5%
14.5%
2017年度 見込み
23.1%
注:2015年度見込みは2015年1月調査、2016年度見込みは2016年1月調査、2017年度見込みは2017年1月調
査。母数は賃金改善が「ある」と回答した企業、2015年度312社、2016年度290社、2017年度284社
グ ラフ4 賃 金 を改 善 し な い理 由 (複 数 回 答 )
0
20
40
同業他社の
賃金動向
内部留保の
増強
物価動向
(% )
80
6 3 .1%
6 2 .9%
5 6 .6%
自社の
業績低迷
人的投資の
増強
60
1 6 .5%
2 8 .0%
2 4 .6%
1 9 .3%
1 8 .2%
2 1 .3%
2 2 .2%
1 8 .9%
1 9 .7%
1 6 .5%
1 1 .4%
1 1 .5%
2015年 度 見 込み
2016年 度 見 込み
2017年 度 見 込み
注 :2015年 度 見 込 み は 2015年 1月 調 査 、2016年 度 見 込み は 2016年 1月 調 査 、2017年 度 見 込
み は 2017年 1月 調 査 。母 数 は 賃 金 改 善 が 「な い 」と回 答 した 企 業 、2015年 度 176社 、2016年 度
1 3 2 社 、 2 0 1 7年 度 1 2 2 社
響が出ている。総じて、
「業績拡大」が増加し、
「業績低迷」が減少している実態が窺える。
©TEIKOKU DATABANK, LTD.
3
2017/3/8
特別企画: 2017 年度の賃金動向に関する愛知県企業の意識調査
まとめ
政府が民間企業に賃上げを促す「官製春闘」も 4 年目を迎えたなか、賃金動向がアベノミクス
の評価を左右する大きな要素となっている。
2016 年度には 65.3%の愛知県企業が賃上げを実施したうえ、
2017 年度は過去最高となる 49.0%
の企業が賃金改善を実施する見通しとなった。さらに、賃金改善の「ある」企業の割合が「ない」
企業の割合を 28.0 ポイント上回っており、2017 年度の賃金動向は概ね改善傾向にある。また、改
善内容についても「ベースアップ」を考えている愛知県企業は 37.4%と調査開始以来最高となっ
た。ある試算では、全企業の総人件費が平均 2.61%上昇すると見込まれ、従業員への給与・賞与
は約 3.5 兆円増加すると推計される。
しかしながら、賃金改善の理由として「労働力の定着・確保」を挙げる企業は 73.6%と高水準
を記録したほか、さらに「自社の業績拡大」をあげる企業は、全国では 4 年連続減少するなか愛
知県企業は 2 年ぶりに増加に転じた。企業の賃金改善の背景は、人手不足が長期化するなかで労
働力の定着・確保を第一に捉えて実施する傾向がさらに加速しそうだ。
企業からも「労務費が大幅に上昇し、決算対策に四苦八苦している。大盤振る舞いは軽率だっ
たと反省している」
(サービス)といった声にもあるように、業績改善を背景としない賃上げは限
界に近づいている。経済の先行きに不透明感が漂うなか、企業が賃上げを継続的に実施するため
にも、政府は企業の業績が上向く経済環境を整えていく重要性が一層高まっているといえよう。
【内容に関する問い合わせ先】
株式会社帝国データバンク 名古屋支店 担当:中森、渡辺
TEL 052-561-4846
FAX 052-586-5774
当レポートの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。
当レポートはプレスリリース用資料として作成しております。報道目的以外の利用につきましては、著作権法の範囲内で
ご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。
©TEIKOKU DATABANK, LTD.
4