女子体操競技情報 24 号

平成 29 年 3 月 1 日
女子体操競技情報 24 号
(公財)日 本 体 操 協 会 東 京 オ リ ン ピ ッ ク 強 化 委 員 会 女 子 体 操 競 技 強 化 本 部
審判委員会女子体操競技審判本部
日本体操協会では、東京オリンピック強化委員会女子体操競技強化本部による2017年
強化指針と審判委員会女子体操競技審判本部による2017年採点指針をここに通達し、こ
の通達をもって適用といたします。
2017年 強化指針
東京オリンピック強化委員会
女子体操競技強化本部長
塚原 千恵子
全体として
第 31 回リオデジャネイロオリンピック競技大会においては、団体予選 7 位で通過し、団体
決勝では 1968 年メキシコ大会以来、48 年ぶりに 4 位入賞を果たした。ロンドンオリンピッ
クからの経験者は寺本選手一人だけであったが、チームのムードは大変良く、初出場の若手
選手らがのびのびとした安定感のある演技を行った結果である。
団体 1 位のアメリカは、予選において段違い平行棒が世界ランキング 2 位でそれ以外は全
て 1 位であり、2 位のロシア・中国とは 8 点以上の差があり圧勝した。4位の日本は 3 位の
中国と 1.632 の差であった。個人総合では寺本選手が 8 位に入賞し、村上選手は 14 位。種目
別決勝においては村上選手のゆかが 7 位入賞で終わった。
日本の各種目の世界ランキングは、予選を見ると跳馬 6 位、段違い平行棒 6 位、平均台 10
位、ゆか 4 位、決勝においては跳馬 4 位、段違い平行棒 6 位、平均台 6 位、ゆか 3 位であっ
た。この結果から、過去、日本は段違い平行棒・平均台が上位で、跳馬・ゆかが 10 位前後で
得意種目ではなかったが、今大会は跳馬・ゆかの D スコアが高く、決勝においてゆかの 3 位
は強化の成果が表れていた。しかし、段違い平行棒は世界の流れに追いついておらず、更に
演技構成の工夫をして D スコアを上げることが課題となった。
東京2020五輪の第一目標は団体 3 位以内である。さらに個人総合・種目別でもメダル
獲得を目標にするために、FIG 採点規則の改訂に伴った具体的な中期計画が必要である。そ
のためには、まずは 15 点台の得点を獲得できる演技構成を考えていかなければならない。特
に跳馬においては、ユルチェンコ~後方伸身宙返り 2 回半ひねりが 6.3→5.8、前転とび~前
方伸身宙返り 1 回半ひねりが 6.2→5.8 になり、全体的に D スコアが下がった。東京五輪では
ユルチェンコ~後方伸身宙返り 3 回ひねりや前転とび~前方かかえ込み 2 回宙返りなどの 6.0
以上の技に挑戦しないとメダルには届かない。段違い平行棒は移動技の工夫(移動技の大き
さと流れを重視)と 6.0 以上の構成を目標としたい。平均台では、跳躍系が昇格している技
が多いので D スコア 6.0 以上の構成を考えたい。また世界の傾向として簡単な A 難度の上が
り技ではなく D 以上の上がり技を構成に組み込んで D スコアを上げる努力が必要である。ゆ
かでは体操系やコレオグラフを重視した芸術性や、アクロバット前後の振り付けの多様性が
要求されてくる。リオ五輪で日本選手は種目別に残ったが、D スコアが 6.0 以上あっても E
スコアでトップ選手との差が 1 点近くもあった。この差がどの箇所で減点されたのか具体的
に検証する必要がある。
また、昨年の国内選考会の採点をリオ五輪の採点と比較してみると、跳馬・ゆかの採点が
高く、段違い平行棒・平均台が低く採点されていた。今後は代表選手選考会においては強化
と審判がより連携を図り、国際基準で採点されるよう図ってゆく。
更に、世界レベルの男子体操指導者や海外から優秀な技術指導者を要請し、従来のナショ
ナル選手強化とターゲットエイジ選抜チームによる選手強化の両輪で選手強化を図っていき
たい。
<跳馬>
・D スコア 5.8 点以上の跳躍
・着手時の肘の曲がりや足の乱れなど姿勢欠点のない演技
・高さと距離を伴うダイナミックな演技
・高い姿勢での安定した着地
<段違い平行棒>
・基本技術の姿勢不良(身体の反り、肘のゆるみ、脚の乱れ)の修正
・倒立局面の角度(10 度以内)の徹底
・空中局面を伴う技の高さ、回転不足、空中姿勢
・D、E 難度から組合せ点をとる(両棒間の移動技の工夫)
・高い姿勢での安定した着地
・終末技は D 難度以上
<平均台>
・開始技は C 難度以上
・ふらつきのない安定した演技
・つま先、膝が伸びた脚のラインと体線の美しい姿勢
・D、E 難度以上のターンや跳躍技
・跳躍技の高さ、開脚度(180 度以上)の正確な実施
・アクロバットの高さと姿勢、安定した実施
・高い姿勢での安定した着地
・終末技は D 難度以上
<ゆか>
・アクロバット系の技は D、E 難度を含む構成(F 難度以上への挑戦)
・アクロバットの高さ・スピード・姿勢欠点のない演技
・アクロバットは安定性のある着地
・アクロバット前後の動きの多様性
・跳躍技は規定された姿勢や正確な実施
・顔の表情も含めた芸術的な演技と動きにマッチした音楽の選択
・C 難度以上のターンや跳躍技
・終末技は D 難度以上
2017年 採点指針
審判委員会女子体操競技審判本部
全体として
リオデジャネイロオリンピックを終え、2020 年東京オリンピックに向けて新たなスタート
が切られました。リオデジャネイロオリンピックにおいて日本女子チームはメキシコオリン
ピック以来 48 年ぶりの団体総合第4位、個人総合で寺本明日香選手が第8位入賞と大変素晴
らしい成績を収められましたが、2020 年東京オリンピックで更に高い目標を達成させるため
には、これまで以上に高いDスコアを獲得できる演技構成への挑戦が必須になります。特に
段違い平行棒は、ここ数年上位国との差が明確に現れた種目であり、昨年に引き続き多様な
空中局面を伴う技の習得と、組み合わせ点を複数獲得できる構成に取り組むことを強く望み
ます。平均台、ゆかにおいてもアクロバット系、ダンス系の技ともに高い難度の技の習得と
組み合わせ点を獲得できる組み合わせを演技の中に複数組み込む必要があります。選手、指
導者の皆さんには、東京オリンピックに向けて高いDスコアを獲得できる演技の構築を目指
し、積極的な取り組みを切望いたします。
採点においては、それぞれの技の特性をよく理解した上で、その技の理想像を念頭に置き、
適切な減点ができるようにします。また、技の実施はもちろん、立ち姿勢や歩く姿勢におい
ても手先足先がコントロールされた欠点のない姿勢での演技であるかを見極め、個々の技に
対する減点だけでなく演技全体に対する減点項目を有効に使い、常に美しい姿勢での演技と
そうでない演技との差を明確につけていきます。
これまですべての種目において美しい体線での演技を採点の最重要項目としてきましたが、
これを基盤にした上で、高い難度の技や組み合わせ点を獲得できる演技構成を高く評価し、
日本全体でDスコアの向上を目指した取り組みを進めていく必要があります。東京オリンピ
ックへの第一歩として、高いDスコアの演技と姿勢欠点のない美しい姿勢での演技を採点に
おける重要な観点といたします。
各種目について
跳馬
【指針】
-高さと距離を伴うダイナミックな跳躍。
-着地の体勢が高く、安定した着地。
【採点上の留意点】
-ダイナミックさに欠ける跳躍については、跳躍の大きさから感じられる迫力だけでなく、
技の難易度から受ける迫力や雄大性なども加味し、第 10 章跳馬「種目特有な実施減点」
の「ダイナミックさに欠ける -0.10/0.30」を有効に使って差をつける。
段違い平行棒
【指針】
-肘の曲がり、膝やつま先の緩みのない美しく伸びた体線での実施。
-多様な空中局面を伴う技を組み入れ、組み合わせ点を獲得できる演技構成。
-空中局面を伴う技の大きさと、ひねりを伴う技の正確な実施。
-終末技の高い体勢での安定した着地。
【採点上の留意点】
-け上がり、振り上げなどの基本技の姿勢においても注視し、各技の欠点については、
その都度個々に減点する。
-上記指針の内容に沿わない演技に対しては、第 8 章の一般欠点と減点表の減点項目や
第 11 章 段違い平行棒「種目特有な実施減点」を有効に使う。
平均台
【指針】
-立ち姿勢や歩く姿勢においても手先足先までコントロールされた、常に美しい姿勢での 演技。
-多様な技を組み入れ、組み合わせ点を獲得できるなど高得点を得るための前向きな構成。
-アクロバット系、ダンス系の技の正確な実施。
-リズムとテンポの変化があり、技の前の停止や無駄な調整のないスピード感ある演技。
【採点上の留意点】
-上記指針の内容に沿わない演技に対しては、第 8 章の一般欠点と減点表の減点項目や
第 12 章 平均台「芸術性と構成の減点」「種目特有な実施減点」を有効に使う。
ゆか
【指針】
-立ち姿勢や歩く姿勢においても手先足先までコントロールされた、常に美しい姿勢での
演技。
-多様な技を組み入れ、組み合わせ点を獲得できるなど高得点を得るための前向きな構成。
-アクロバット系、ダンス系の技の正確な実施。
-スピードや迫力を感じさせる雄大な実施と演技面を大きく使用した躍動感のある演技。
-選手の個性にあった振り付けと音楽の調和、顔の表情も含め全身を使った表情豊かで魅
力的な演技。
【採点上の留意点】
-上記指針の内容に沿わない演技に対しては、第 8 章の一般欠点と減点表の減点項目や
第 13 章 ゆか「芸術性と構成減点」「音楽性」「種目特有な実施減点」を有効に使う。
【跳躍や演技を試みなかった場合の国内対応】
国内競技会においては、従来認められていたように、緑ライトの点灯またはD1 審判員か
らの演技開始の合図の後、選手がD審判員に挨拶をし、跳躍板や器具に触れてから再び挨拶
することで 0.00 点として扱うこととする。(すべての種目)