(94 分)ダニス・タノヴィッチ監督 もしもわが子が…大企業社員の闘い

︿もしもわが子が⋮
大企業社員の闘い﹀
ジャーナリスト
金をばらまいたことを契約違反だと脅
す。だが、それは上司自身の指示でやっ
た こ と な の だ。騒 ぎ が 明 る み に 出 る に
つれ、人権団体、海外マスコミも動き出
す。上司は、このまま告発を続けると家
族の命の保証もないと脅したり、逆に、
頼を得て、やがてトップ・セールスマン
でたちまち顧客の病院や医師からの信
できない ﹂と励ます。アヤンは妻子を守
ザイナブは﹁信念に背くような夫は尊敬
アヤン。だが、病棟の子らの映像を見た
松本 侑壬子
失 職 で 生 活 も 苦 し く なったア ヤンに 莫
公 害 は 人 間 の 作 り 出 す 災 害 だ。日 本
に。新 し い 家 も 買 い、子 ど も も 生 ま れ、
大な和解金の額を示す。一瞬心が揺れる
そくなど世界に知られる公害問題を経
は水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜん
るため父親の故郷に避難させるが⋮。
巨 大 な グローバル企 業 相 手 に 内 部 告
生活は安定した。
だが、一九九七年、親しい医師に小児
験し、今、原発による放射能という深刻
な脅威にさらされている。問題は第三世
う 闘 う べ き か、経 験 も 知 識 も な い 孤 独
発をするとは、どういうことか。誰とど
な元社員の前に立ちはだかる権力の壁。
病 棟 で 何 本 ものチュー ブ につな が れ た
人権団体にもマスコミにも、それぞれの
骨と皮の乳幼児らの悲惨な姿を見せら
れる。それが自分の売ったミルクのせい
判断も事情もあり、一緒になって闘って
界にも広がっている。本作は、二十年前
だ、と告げられ大ショック。貧しい母親
くれるというものでもない。だが、アヤ
に 起 こ り、今 な お 続 く 実 在 の 事 件 の 映
らはミルクを溶かすのに不衛生な水や
画化である。
一九九四年、パキスタン。新婚のアヤ
ミルク瓶を使っているためだ。しかも、
ンは知ってしまった、自分の売ったミル
会社は巨大な多国籍企業に押されて倒
彼女らは外国製ミルクは栄養価が高く、
ンは国産製薬会社のセールスマンだが、
産 寸 前 だ。父 親 も 失 職 で 政 府 を 相 手 に
う事実を。ただ子どもを救いたい、こん
クがこの悲劇を引き起こしているとい
な製品は売るべきでない、という良心の
子どもの頭がよくなると信じ、高いミル
自分自身も父親としてアヤンは﹁すぐ
声 に 突 き 動 か さ れ て、無 謀 で も 突 き 進
クを薄めて飲ませているという。
た 巨 大 グローバル企 業 の 営 業 職 の 募 集
に販売を止めねば ﹂と上司に訴えるが、
むしかないのだ。
負っている。妻のザイナブが見つけてき
に 応 募、屈 辱 的 な 虎 の 吠 え 声 の 真 似 を
知の上でミルクを販 売 し続けていたの
驚いたことに、会社はそのことを既に承
裁 判 闘 争 中 で、一 家 の 生 計 を 一 身 に 背
させられたり、罠の質問に無理に答えさ
〝世界最高の粉ミルク〟を売る営業部だ。
用される。配属先は会社のブランド製品
中に医師や看護師に営業用の﹁粗品 ﹂や
るというアヤンに、上司はアヤンが在職
だ。会社を辞め、販売中止を求めて訴え
に直結している。
そ れ は 企 業 の 社 会 的 責 任への 問 い か け
て人間の生き方として深い感動を呼ぶ。
ア ヤ ン の 孤 独 な 奮 闘 劇 は、国 を 超 え
せ ら れ た り の 挙 句、難 関 を 突 破 し て 採
前職の経験・人脈と誠心誠意の仕事ぶり
『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』
インド・フランス・イギリス合作映画(94 分)
監督:ダニス・タノヴィッチ
出演:イムラン・ハシュミ、ギータンジャリ、アディル・
フセインほか
3 月 4 日より新宿シネマカリテほか全国順次公開
© Cinemorphic, Sikhya Entertainment & ASAP Films 2014
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We learn 2017.3