︿もしもわが子が⋮ 大企業社員の闘い﹀ ジャーナリスト 金をばらまいたことを契約違反だと脅 す。だが、それは上司自身の指示でやっ た こ と な の だ。騒 ぎ が 明 る み に 出 る に つれ、人権団体、海外マスコミも動き出 す。上司は、このまま告発を続けると家 族の命の保証もないと脅したり、逆に、 頼を得て、やがてトップ・セールスマン でたちまち顧客の病院や医師からの信 できない ﹂と励ます。アヤンは妻子を守 ザイナブは﹁信念に背くような夫は尊敬 アヤン。だが、病棟の子らの映像を見た 松本 侑壬子 失 職 で 生 活 も 苦 し く なったア ヤンに 莫 公 害 は 人 間 の 作 り 出 す 災 害 だ。日 本 に。新 し い 家 も 買 い、子 ど も も 生 ま れ、 大な和解金の額を示す。一瞬心が揺れる そくなど世界に知られる公害問題を経 は水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜん るため父親の故郷に避難させるが⋮。 巨 大 な グローバル企 業 相 手 に 内 部 告 生活は安定した。 だが、一九九七年、親しい医師に小児 験し、今、原発による放射能という深刻 な脅威にさらされている。問題は第三世 う 闘 う べ き か、経 験 も 知 識 も な い 孤 独 発をするとは、どういうことか。誰とど な元社員の前に立ちはだかる権力の壁。 病 棟 で 何 本 ものチュー ブ につな が れ た 人権団体にもマスコミにも、それぞれの 骨と皮の乳幼児らの悲惨な姿を見せら れる。それが自分の売ったミルクのせい 判断も事情もあり、一緒になって闘って 界にも広がっている。本作は、二十年前 だ、と告げられ大ショック。貧しい母親 くれるというものでもない。だが、アヤ に 起 こ り、今 な お 続 く 実 在 の 事 件 の 映 らはミルクを溶かすのに不衛生な水や 画化である。 一九九四年、パキスタン。新婚のアヤ ミルク瓶を使っているためだ。しかも、 ンは知ってしまった、自分の売ったミル 会社は巨大な多国籍企業に押されて倒 彼女らは外国製ミルクは栄養価が高く、 ンは国産製薬会社のセールスマンだが、 産 寸 前 だ。父 親 も 失 職 で 政 府 を 相 手 に う事実を。ただ子どもを救いたい、こん クがこの悲劇を引き起こしているとい な製品は売るべきでない、という良心の 子どもの頭がよくなると信じ、高いミル 自分自身も父親としてアヤンは﹁すぐ 声 に 突 き 動 か さ れ て、無 謀 で も 突 き 進 クを薄めて飲ませているという。 た 巨 大 グローバル企 業 の 営 業 職 の 募 集 に販売を止めねば ﹂と上司に訴えるが、 むしかないのだ。 負っている。妻のザイナブが見つけてき に 応 募、屈 辱 的 な 虎 の 吠 え 声 の 真 似 を 知の上でミルクを販 売 し続けていたの 驚いたことに、会社はそのことを既に承 裁 判 闘 争 中 で、一 家 の 生 計 を 一 身 に 背 させられたり、罠の質問に無理に答えさ 〝世界最高の粉ミルク〟を売る営業部だ。 用される。配属先は会社のブランド製品 中に医師や看護師に営業用の﹁粗品 ﹂や るというアヤンに、上司はアヤンが在職 だ。会社を辞め、販売中止を求めて訴え に直結している。 そ れ は 企 業 の 社 会 的 責 任への 問 い か け て人間の生き方として深い感動を呼ぶ。 ア ヤ ン の 孤 独 な 奮 闘 劇 は、国 を 超 え せ ら れ た り の 挙 句、難 関 を 突 破 し て 採 前職の経験・人脈と誠心誠意の仕事ぶり 『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』 インド・フランス・イギリス合作映画(94 分) 監督:ダニス・タノヴィッチ 出演:イムラン・ハシュミ、ギータンジャリ、アディル・ フセインほか 3 月 4 日より新宿シネマカリテほか全国順次公開 © Cinemorphic, Sikhya Entertainment & ASAP Films 2014 13 We learn 2017.3
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