多摩市立複合文化施設等大規模改修工事 基本計画策定委員会報告書

多摩市立複合文化施設等大規模改修工事
基本計画策定委員会報告書
平成29年2月
多摩市立複合文化施設等大規模改修工事基本計画策定委員会
目次
はじめに···································································· P.1
施設の理念と方針···························································· P.3
パルテノン多摩が目指すべき将来像 ············································ P.4
第1章 パルテノン多摩の「役割」についての議論
1 法令等に見る社会状況の変化 ·········································· P.6
(1)劇場、音楽堂等に関する法令制定(巻末資料参照)
(2)劇場、音楽堂等に関連した建築に関する法令改訂
(3)バリアフリー等に関する法令制定・改訂
2 多摩市における文化振興についての法的取組み ························· P.10
3 多摩市の魅力と多摩センター地域のまちづくり ························· P.11
(1)多摩ニュータウンの生活環境と都市基盤
(2)人口構成の変化と税収減
(3)多様化するライフスタイル
(4)近隣類似施設・関連施設・教育機関
4 パルテノン多摩の改修・再生にあたっての視点 ························· P.13
第2章 パルテノン多摩の現状と課題
1 利用状況 ··························································· P.14
(1)稼働率
(2)各諸室の利用状況について
①大ホールの利用状況
②小ホールの利用状況
③リハーサル室・練習室の利用状況
④市民ギャラリー・特別展示室の利用状況
⑤博物館機能諸室の利用状況
⑥付属諸室(4階・5階)の利用状況
2 施設上の課題 ······················································· P.17
(1)共通の課題
①劣化及び現在の法規や規準への対応
②バリアフリー
③動線・ゾーニング
④省エネルギー
⑤くつろぎ・居場所・交流空間
⑥融通性と見える化
⑦施設の立地
(2)場所に対する課題
①外部の共用部(エントランスプラザ・大階段・ルーフテラス・回廊)
②内部の共用部(ロビー・ホワイエ・WC 等)
③歴史ミュージアム
④キッズファクトリー
⑤マジックサウンドルーム
⑥収蔵庫、荷解き室
⑦資料整理室(1階)・収蔵庫前通路(1階)・研究室(4階)等バックヤード
⑧市民ギャラリー・特別展示室
⑨練習室・リハーサル室
⑩会議室、和室、学習室、アトリエ、シティサロン等
⑪大ホール
⑫小ホール
⑬事務室等管理諸室
⑭カフェ・レストラン
3 運営上の課題 ······················································· P.24
(1)文化芸術に関する基本理念・基本方針の策定
(2)中長期施設改修計画と中長期事業計画の策定
(3)運営費の状況
(4)施設の立地に関する課題
(5)外部(民間)事業者の活用
(6)社会的変化への適合
(7)利用者拡大・開拓
第3章 パルテノン多摩の改修方針について
1 改修の方針 ························································· P.25
(1)劣化改修
(2)安全性向上(法規への適合)
(3)バリアフリー化(法規への適合)
(4)標準性能の確保
(5)機能及び利便性の向上
(6)中長期視点
2 改修案の検討 ······················································· P.27
(1)大階段・エントランスプラザ・入口
(2)1階 エントランス・事務室・練習室・リハーサル室・更衣室
(3)2階 エントランスロビー・博物館(常設展示室)・特別展示室・市民ギャラリー
(4)4階 会議室・博物館諸室 (ワークショップルーム・マジックサウンドルーム・
アトリエ・研究室・学習室)・ティーラウンジ
(5)5階 回廊・シティサロン・レストラン
(6)大ホール
(7)小ホール
第4章 今後の課題························································· P.51
1 理念と方針の周知と継続的議論
2 事業・活動・運営を考慮しながら建築を具体化
3 市民参画のあり方
4 地域の活性化
5 保全計画の見直し
6 外部(民間)事業者の活用
7 管理運営計画のあり方
8 文化芸術振興に関する条例
資料編 ···································································· P.54
1 文化施策について(まとめ)
2 パルテノン多摩の大規模改修を考える(本杉委員長提供資料)
3 文化施設の運営について
4 パルテノン多摩の利用と運営状況について(本杉委員長提供資料)
5 多摩市の地域特性(尾中委員提供資料)
6 基本計画策定委員会での意見まとめ
7 基本計画策定委員回会議開催日程
8 基本計画策定委員会委員名簿
はじめに
多摩市立複合文化施設(以下「パルテノン多摩」
)が開場した昭和 62 年は、熊本県立劇場(昭和
57 年)、福島市音楽堂(昭和 59 年)、こどもの城(昭和 60 年)等従来型の多目的ホールに対する反
省から専門劇場・ホールへの指向が意識された時代で、同時にザ・シンフォニーホール(昭和 57
年)、サントリーホール(昭和 61 年)
、銀座セゾン劇場(昭和 62 年)等民間企業の CI(コーポレイ
ト・アイデンティティ)として文化的イメージが注目されていた時期とも重なります。企業の社会
的貢献が積極的に展開された時代であり、生産中心の産業構造からサービスへと次第に重心を移し
て行く転換期でもありました。そうした時代背景の中で、多摩ニュータウンにおける文化的核施設
として誕生したのがパルテノン多摩です。ややクラシック音楽に特化したともいえる音響性能を有
したパルテノン多摩の大ホールが生まれた背景には、良質な文化芸術を提供し、市民文化活動を醸
成しようという時代の空気が感じられます。実際、小演劇フェスティバルからオペラ公演まで幅広
い事業が展開され、その役割をしっかりと担ってきました。
立地について見てみると、パルテノン多摩は、3 つの私鉄が乗り入れる多摩センター駅とそこから
まっすぐ南側の丘陵地に向かって延びた斜路の先にある広々とした公園を結ぶ接点にあることが
特徴です。つまり、都市施設であると同時に公園施設でもあるわけです。この地域は、駅から公園
に至るルートに限らず、面的な広がりを持って人と車が一切交差せずにゆったりした気分で安全に
移動できるように計画されたまちです。その歩行者専用通路に面して各種商業施設が配置されてい
ることから、文化・公園・商業施設が有機的に混じり合い市民生活に豊かさと潤いをもたらすこと
が期待された都市構造になっていることがわかります。
そうしたまちの仕組みが誕生しパルテノン多摩がまちのシンボルとして人々を向かい入れて 30 年
が経過しました。多摩市に限らず、市民も建物もまちもそれぞれが全体的に高齢化しています。世
代交代も行なわれています。時間的経過や社会的状況に応じて自然に交代・更新されていくものも
ありますが、公共的サービスの基本はそれほど大きく変化するものではありません。ただし、その
ままという訳にはいかないことも事実です。また、
「京都議定書」
(平成 9 年)
、COP21(平成 27 年)
等国際的な地球環境問題への取組みから建築の長寿命化を図ることも社会的命題です。
実際この間に、市民を取り巻く社会構造も社会環境も文化的状況も建築関連技術も劇的な変動の
波を受けています。過去 5 年を振り返ってみても、文化芸術に関しては「劇場、音楽堂等の活性化
に関する法律」(平成 24 年、略称「劇場法」)が、バリアフリー関連では「障害を理由とする差別
の解消の推進に関する法律」(平成 25 年、略称「障害者差別解消法」
)が、建築に関する法律では
東日本大震災における大空間における天井材崩落事故の経験から建築基準法施行令の一部改正(平
成 25 年)がある等、法制面における意識改革が顕著です。
これらは、すなわち私たちの生活意識・環境の変化を表すものです。そうした状況とパルテノン
多摩も無縁ではありません。担うべき役割が変化してきていることの表れです。オープンから 30
年を経て施設の老朽化は避けられないことですが、この間パルテノン多摩は、その活動と立地性か
1
らランドマーク的存在として定着し、まちの風景となってきました。それ故、その大規模改修につ
いて考えることは、この地域におけるまちづくりを再考することでもあるという共通認識のもと、
私たち基本計画策定委員会は議論を重ねて来ました。そこで拠り所としたのが、劇場法の前文でも
述べられている「新しい広場」という概念です。その実現のためには、文化芸術活動に関心を持っ
ている人はもちろん、そうでない人たちにとっても、公園や買い物、通学等の行き帰り等に気軽に
立ち寄れる場所となる必要があるということが当初から委員全員の理解でした。短期間でしたが、
10 回の委員会を持つことができました。それぞれ異なった分野で活動されている委員構成もあって、
幅広い視点で議論が行なわれたと思います。それらを通し、従来の活動を継続・推進するための改
修にとどまらず、幅広く市民を惹き付ける施設に向けての改善並びにそのための運営に関する考え
方を委員会の意見としてここに取りまとめましたのでご報告する次第です。
市には、本報告書の趣旨を踏まえ改修の基本計画を策定していただくとともに、市の文化施策の
整理やパルテノン多摩の設置目的の再整理等にもこの報告書を活用していただくことを望みます。
委員長
2
本杉
省三
施設の理念と方針
パルテノン多摩の基本理念について
パルテノン多摩は、
「市民の自主的な文化活動の場を提供し、文化の普及及び振興を図り、もって
地域の発展に寄与する」
(多摩市立複合文化施設条例)ために設置された施設であるが、それを実
行するにあたっての基本的な考え方が必要であると考えた。それは、施設運営の理念・方針である
と同時に、施設のあり方を考える時の拠り所にもなるものである。今度の改修にあたっても、その
方向性を考える上で大切なものであると考えた。
基本理念
文化芸術を通して、みんなが喜び、つながり、まちの魅力を創造する
基本方針
■ 方針1:豊かな文化芸術を、鑑賞し創造する楽しさや喜びを実感する場所づくり
・ 質の高い魅力的な文化芸術に、誰もが気軽に接し、楽しめる
・ 多くの市民が自らの創意を高め、活動をともにし、文化を生み出すことができる
・ 未来の担い手である子どもたちや、子育て世代の活動を積極的に支援する
■ 方針2:文化芸術を通した新しい広場・まちの広場づくり
・ 誰でも参加できる幅広い文化芸術を通じて、健康で心豊かな地域社会をつくる
・ 多摩市の内外から人々が集まり、まちに賑わいや憩いを生み出す広場をつくる
・ 世代を超えて地域の人・歴史と出会い、つながり、次世代に文化芸術を伝える
■ 方針3:多様な人々が集い、交流し、賑わうことを通し、未来に向けた地域づくり
・ 人々が買物や公園の散歩ついでに気軽に立ち寄り、また来たいと思える環境をつくる
・ 市民の一人ひとりが、個性や特技・趣味を生かして活動し交流する
・ 公園や図書館、駅や商業施設とも連携し、長期的にまちとつながることで地域を活性化する
3
パルテノン多摩の目指すべき将来像
文化芸術の鑑賞にとどまらず市民の創造活動を支援し文化を高める機会の実現を目指す
・ 文化施策において、文化芸術や施設の社会的意義が改めて問われているなかで、文化芸術が
もたらす「心の豊かさ」の重要性を認識し、その活力を社会で共有する場。
・ 鑑賞により感性を高め、創造により表現を磨き、コミュニケーション能力を育み、人と社会
とのつながりを豊かにする文化芸術活動が行われている場。
・ 市民の文化芸術の意欲を刺激し創造の活動を高める場として、交流を生み出しながら人づく
りやまちづくりに寄与する施設。
今まで以上に多くの市民が様々な使い方をし、まちの魅力を創造する文化施設を目指す
・ 市民参加型や市民提案型の事業が充実した運営が行われている場。
・ 市民の日常的な創造活動や、普及育成といった市民が主体的に活動できる事業が行われる場。
・ 多摩市の歴史・文化を継承するだけでなく、市民の創造活動が見え・触れられ・体験できる
ような文化芸術に出会える場。
文化芸術の創造・交流の場として、まちの賑わいを創造する管理運営を目指す
・ 多摩センター駅や近隣施設、多摩中央公園等の立地性を活かし、市民が寄り付きやすく、居
心地よく様々な人が交流できる連携の核となる場。
・ 市民参加を促し、市民協力が幅広く得られるように図る場。
・ 施設内外各所で、市民の様々な活動が日常的に行われ、賑わいの感じられる場。
4
第 1 章 パルテノン多摩の「役割」についての議論
多摩市文化振興財団が平成 27 年 4 月にまとめた「多摩市立複合文化施設 (パルテノン多摩)老朽
化の状況と運営リスクに関する報告」では、近年の修繕履歴と施設老朽化の具体的状況が写真入で
解説され、改修の緊急性を訴えている。また、先に定められた「多摩市立複合文化施設改修方針」
(平成 28 年 3 月)の「Ⅶ.施設の务化状況」と「Ⅷ.务化対応以外の水準(舞台を除く)
」には、建
築の部位や設備ごとにより細かな状況とそれに対する所見が報告されている。そして、それに基づ
いて施設の「Ⅵ.施設課題と基本方針」が示されている。もちろん、世界全体で温室効果ガス排出
削減問題に取組んでいる中で、建築を短いサイクルで更新して行くことは慎むべきことであるので、
改修で施設の長寿命化を図ることを前提に議論を重ねた。
基本計画策定委員会では、そうした施設の务化状況を理解した上で、もう一歩踏み込んで、以下
のような視点から議論を行った。
5
1 法令等に見る社会状況の変化
パルテノン多摩が開場してからこの 30 年程度の間に劇場・ホール等に関する環境は大きく変化し
てきた。1 つは、文化芸術の意義や劇場、音楽堂等施設の社会的役割・位置付けに関する法令であ
る。劇場、音楽堂等は、図書館法(昭和 25 年)や博物館法(昭和 26 年)等に比べても、その法的
根拠が不明確であったとされるが、ようやくそれが整ったことで、あるべき姿が明らかになってき
た。これに関連し、地方自治法第 244 条の 2(公の施設の設置、管理及び廃止)が改訂され、いわゆ
る指定管理者制度が導入されたことも大きな転換をもたらした。2 点目は、建築に関する法令の改
訂である。来るべき大規模震災に備えて、建築物の構造を安全なレベルに高めること、また従来構
造的な配慮に欠けていた劇場客席天井等の崩落事故に対する反省から、十分な耐力を持つよう基準
を設けたものである。そして、3 点目がバリアフリー化に関する法令である。誰もが障壁を感じず
に等しく社会参加できるようにしようとする流れは、いわば当然のことである。
改修にあたっては、これら法的な拠り所をベースとして計画していくことが求められる。
(1)劇場、音楽堂等の社会的位置付けに関する法令制定(巻末資料参照)
前述したように、同類の文化施設である図書館や博物館は、戦後いち早く法制面でその位置付け
が行われたが、劇場、音楽堂に関しては、明確な規定のないまま整備されて来た経緯がある。そう
した反省から、文化芸術振興基本法が平成 13 年に定められるところとなり、続いて、平成 24 年「劇
場、音楽堂等の活性化に関する法律」
(通称:劇場法)
、翌平成 25 年には「劇場、音楽堂等の事業
の活性化のための取り組みに関する指針」が告示されている。これらにより、劇場、音楽堂の役割
も明確に整理された。すなわち、これまでの社会教育的な鑑賞、貸館を中心とした運営からの脱皮
が求められ、パルテノン多摩も、従来の「質の高い芸術の提供」を中心とした、いわゆる「文化の
殿堂」としての役割だけにとどまらない地域コミュニティの創造・交流の場となっていく必要があ
る。
① 平成 13 年 12 月 文化芸術振興基本法
国の施策として自治体や民間の文化芸術活動を積極的に支援していくことが掲げられ、各自
治体が国との連携を図りつつ、
「自主的かつ主体的に」地域の特性に応じた文化政策を展開し
ていく責務を明記している。
(文化芸術の効果)
総則
文化芸術を創造し、享受し、文化的な環境の中で生きる喜びを見出すことは、人々の
変わらない願いである。文化芸術は、人々の創造性をはぐくみ、その表現力を高めるととも
に、人々の心のつながりや相互に理解し尊重し合う土壌を提供し、多様性を受け入れること
ができる心豊かな社会を形成するものであり、世界の平和に寄与するものである。
6
② 平成 24 年 6 月
劇場、音楽堂等の活性化に関する法律(略称「劇場法」)
劇場、音楽堂等を「文化芸術を継承、創造及び発信する場であり、人々が集い、感動と希望
をもたらし、人々の創造性を育み、ともに生きる絆を形成するための地域の文化拠点」、
「国民
の生活においていわば公共財ともいうべき存在」と位置づけ、その活性化に対して国や自治体
は責任があることを明記している。
(劇場、音楽堂の役割) 前文要点
ア)
人々が集い、人々に感動と希望をもたらし、人々の創造性を育み、人々がともに生きる
絆を形成するための地域の文化拠点
イ)
個人の年齢若しくは性別又は個人を取り巻く社会的状況等にかかわりなく、全ての国民
が、潤いと誇りを感じることのできる心豊かな生活を実現するための場
ウ)
「新しい広場」として、地域コミュニティの創造と再生を通じて、地域の発展を支える
エ)
国際文化交流の円滑化を図り、国際社会の発展に寄与する「世界への窓」にもなる
オ)
創られ、伝えられてきた実演芸術を守り、育てていくとは、今を生きる世代の責務
カ)
事業を行うために必要な人材の養成等を強化していく
キ)
団体及び芸術家、国及び地方公共団体、教育機関等が相互に連携協力して取り組む
ク)
短期的な経済効率性を一律に求めるのではなく、長期的かつ継続的に行う
(2)劇場、音楽堂等に関連した建築に関する法令改訂
阪神・淡路大震災(平成7年)
、東日本大震災(平成23年)
、熊本地震(平成28年)と過去 10
年だけを切り取ってみても、ほぼ 5 年おきに大地震に見舞われている。4 つのプレートがぶつかり
合っているところに位置している日本列島は、どこで・いつ地震が起きても不思議でないと言われ
ており、その認識に立って、大規模な地震に対して建築物を安全に保つ必要から、近年以下のよう
な法改定が行なわれた。
① 平成 25 年 11 月
建築物の耐震改修の促進に関する法律の一部を改正する法律(通
称:改正耐震改修促進法)
現行の耐震基準(昭和 56 年)に対する耐震化率が、平成 20 年時点で住宅:約 79%、不特定
多数が利用する建築物:約 80%で、平成 20 年までの達成目標よりも約 2%マイナスの状況で
ある。南海トラフ巨大地震や首都直下地震が起きた場合は、東日本大震災を超える甚大な人
的・物的被害が発生することが確実視されていたことから、早急に耐震改修を進める必要があ
り改正された。
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② 平成 26 年 4 月
安全上重要である天井および天井の構造耐力上安全な構造方法を定
める件(特定天井)建築基準法施行令の一部改正
東日本大震災において、劇場、音楽堂、体育館等広くて高い吊り天井部材が損傷、脱落した
ことを重く見て、そうした天井面に対して、天井脱落対策に係る基準が新たに定められた。新
築建築物等への適合を義務付けることだけでなく、既存建築物に対しても、何らかの対策を実
施することを求めている。特に、早急に改善すべき建築物として、劇場、公会堂等をあげてい
る。
③ 平成 26 年 6 月
建築基準法の一部(第 12 条:定期報告制度に関する内容)を改正
する法律
従来、広い面積の天井の点検調査における判断基準は、天井の耐震対策の有無を見るもので
あったのに対して、天井材に腐食、緩み、外れ、欠損、たわみ等があるかどうか、場合によっ
てはレーザー距離計等を用いて計測するというように厳格になった。
④ 平成 27 年 4 月
建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項
目、方法及び結果の判定基準並びに調査結果表を定める件(建築基準法施行規則一部
改正)
多数の死者が出た火災事故において、被害が拡大した要因の一つとして、建築物が適法状態
のままで適切に管理されていなかったことを踏まえ改正されたものだが、その内容は建築各部
位の全般にわたる。従来からの定期点検をより強化した。
(3)バリアフリー等に関する法令制定・改訂
バリアフリーは、建物においては個別の問題として扱われるが、その精神は建物、地域を越えて
広く世界につながる課題であると考えられる。人が行き来することを考えれば当然であり、このた
め、以下で取り上げている法令も生活圏全体を扱っている。また、施設や建築物等におけるバリア
フリー化にとどまらず、私たちひとり一人の中にある意識の課題をも改革していく必要性を訴えて
いる。本計画においても、1 施設の課題としてだけでなく、公園、歩行者専用道路、駅等との関連
で面的な広がりの中で考える必要があり、誰もがアクセスしやすく参加・利用できる施設として再
生するため、最大限の手立てが求められている。
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① 平成 18 年 6 月
高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフ
リー法)
高齢者や障害者等が日常的な生活を行なっていく上で、自立した生活環境を確保することを
目的として、旅客施設、道路、路外駐車場、都市公園、建築物等に対して、バリアフリー化基
準(移動等円滑化基準)への適合、努力義務を求めている。駅を中心とした地区や、高齢者や障
害者等が利用する施設が集中する地区(重点整備地区)において、住民参加による重点的かつ一
体的なバリアフリー化を進めるための措置等を定めている。この法の意図は、そうした物理的
な改善とともに、人々の心のバリアフリーすなわちバリアフリー促進に関する国民の理解・協
力を促すことでもある。この新法制定に伴い、従前のハートビル法と交通バリアフリー法は廃
止された。
② 平成 18 年 12 月 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令
本施行令及び要綱では、特定旅客施設、道路、公園施設、建築物等の上記バリアフリー法で
バリアフリー化促進が求められる施設の具体的規模、内容を明らかにしている。劇場や博物館
もそれに該当し、パルテノン多摩も対象となる。
③ 平成 18 年 12 月 高齢者、障害者等が利用しやすい建築物の整備に関する条例
(通称:建築物バリアフリー条例) 改正
バリアフリー法第 14 条第 3 項に基づき、高齢者、障害者等が利用しやすい建築物の整備に関
して東京都が定めたバリアフリー化に関する基準。バリアフリー法で定められた対象建築物の
範囲を広げ、整備基準を強化することでバリアフリー化推進を図っている。基準内容は、廊下、
傾斜路、便所、子育て支援環境の整備等具体的かつ多岐に及んでおり、改修に際しこの基準に
適合する必要がある。
④ 平成 28 年 4 月
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律
(通称:障害者差別解消法)
国連が定めた「障害者の権利に関する条約」の締結に向けた国内法整備の一環として制定さ
れた。障害者でも等しく社会に参加できるよう差別的扱いをなくし、またそれを防止するため
の啓発を促すとともに、社会的障壁を取り除くことを求めている。
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2
多摩市における文化振興についての法的取組み
多摩市では、文化芸術振興基本法(平成 13 年 12 月)を受けて、
「多摩市における文化芸術振興方
針」を市長決定している。そこでは、目的や基本理念と目標とともに、以下のとおり市の役割とパ
ルテノン多摩の活動方針についても言及している。
平成 21 年 12 月 多摩市における文化芸術振興方針(以下要点を抜粋)
(市の役割と責務)
ア)
市民の主体的で日常的な文化活動を支援する。
イ)
優れた文化や芸術に身近に触れ、親しめる機会を提供する。
ウ)
文化を通じた多摩市の魅力を発信する。
エ)
将来を見据え、市民と一緒に取り組みを進める。
オ)
歴史・文化の保存と継承の機会を保障する。
(多摩市文化振興財団の役割)
ア)
優れた文化芸術を提供し、文化を振興
イ)
文化芸術を通した、都市の活性化、コミュニティの醸成
ウ)
市民の文化活動を支援
エ)
資史料の保存、公開
オ)
参加・体験事業
カ)
他機関との連携
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3 多摩市の魅力と多摩センター地域のまちづくり
多摩ニュータウンは、計画的に生まれたまちである。長い時間をかけて自然発生的に発展してき
た全国の他のまちと異なり、特有の良い点も課題も沢山あげられる。パルテノン多摩の改修にあた
り、それらの特徴を振り返りながら、考えるべきポイントを示している。
(1)多摩ニュータウンの生活環境と都市基盤
・ 多摩ニュータウンは計画的に整備された都市基盤や緑のネットワークで構成された豊かな
環境、安心して散策や買い物等ができる歩車道が分離された環境が整っており、
「子育て世
代にとって住みやすいまち」となっている。
・ 多摩センター地域はベビーカーが多く見受けられるまちである。近年のびのびとした歩行者
専用道路の魅力が広がり、子育て世代が他地域からも数多く訪れており、週末の多摩中央公
園には若い子育て世代であふれている。
→まちの魅力を生かし、若い子育て世代を積極的に迎え入れていくことがまちの活性化につ
ながると考えられる。
・ まちと公園との接点に位置するのがパルテノン多摩である。子育て世代、ファミリー層を積
極的に受け入れ、文化芸術活動を通して、豊かな生活環境づくりに貢献できる。
・ ともに遊び・楽しみ・考え・汗をかき・にぎやかな時間を過ごすことで、将来にわたって文
化芸術に親しんでもらう施設、多摩の魅力を発信できる施設になれる。
→一方、短期間で集中的に開発されたニュータウンの特有の課題もある。高水準に整えられ
た都市基盤や公共施設も、開発から40年以上が経過し、様々な局面で老朽化に直面、大
規模改修や更新の時期を迎えている。
(2)人口構成の変化と税収減
・ 尐子高齢化によって人口構成が変化(生産年齢人口の減尐)している。これに伴い、市税収
入が減尐していく一方で、福祉関係経費は増加している。
・ 高齢化が特に進んでいるのが尾根幹線沿いの地域で世代交代の時期を迎えている。こうした
状況に対応して、若い子育て世代の流入を図る方策が必要である。
・ 市内の 30 年後の推計高齢化率は 40.8%となり、14 歳以下の年尐人口は 8.8%まで減尐すると
予測されている。持続可能なまちの人口動態に近づけるには、若い世代の転入を促す動機付
けは必要とされる。幸い多摩市には、前述した公園、商業、文化施設はもとより、多種多様
な住宅ストックがあり、その特色を生かして人口の流動化を図る基盤がある。
(※人口推計出典:平成 27 年 10 月 8 日第1回 多摩市まち・ひと・しごと創生総合戦略検討
委員会資料)
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(3)多様化するライフスタイル
・ ニュータウン開発期は、都心に通勤する住民のベッドタウンであったが、近年働く場が近隣
の市域で増加している。市民の勤務先は首都圏だけでなく市内及び近隣の広域にわたってい
る。
→平日でもパルテノン多摩の多世代の利用者が見込めるといえ、より地域に根差した市民
活動が潜在的にあると考えられる。
・ 社会現象として単身世帯やひとり親子世帯が増加している。家族構成の変化に伴い、市民の
ライフスタイルも多様化してきており、そうした子どもや単身者に対する支援、市民同士の
交流、居場所が求められている。
・ 近年多摩市に訪問、在住する外国人も増えている中で、多文化共生社会の実現が求められて
いる。
(4)近隣類似施設・関連施設・教育機関
・ 市内の主要拠点である永山駅・聖蹟桜ヶ丘駅にある 2 つ公民館は中規模の交流の場であり、
住居地域に点在する 8 つのコミュニティセンターは地域密着型の小規模の交流の場である。
これらの施設との差別化、棲み分け、連携体制を明確にする必要がある。例えば利用情報・
練習室の情報・回遊講演等連携することにより活発な交流の場となることが求められている。
・ パルテノン多摩の近隣には多くの大学もあり、ハード、ソフトの両面での連携が考えられる。
現在、子育てや健康面では大学連携があるが、文化芸術に関しての連携はあまりないのが現
状である。
・ 市・各教育機関・市民との文化芸術の交流・発表の場としての利用が求められる。
12
4
パルテノン多摩の改修・再生にあたっての視点
1 点目は、文化芸術施設としての核づくりである。魅力的な文化芸術活動に出会い、創造の喜び・
楽しさを実感できることは、この施設にとって核となるものであり、それを保証する運営と施設改
修が求められている。
2 点目は、文化芸術を通した新しい広場・まちの広場づくりである。音楽やダンス、演劇等の舞
台芸術は、心を豊かにするものとして理解されるが、同時にからだづくりにも通じるものである。
つまり、心身両面から人を育ててくれるものとして見るならば、より広い価値・意義を認めること
ができる。そうした側面を生かしていくことが今後ますます重要になってくると考えられる。特に、
社会的に弱い立場にある人や社会とつながりを持てない人たち(高齢者、障がい者、子ども、貧困
問題を抱える人等)等が、尐しずつ社会参加できる場をつくることができる。それは、心のバリア
フリー化にもつながるであろう。
3 点目は、人々の居場所づくりである。特技や趣味等を生かして他者との交流を持ちたいと考え
ている人たち、地域社会に貢献したいと考える人たち、特に文化芸術に関心があるわけではないけ
れど子どもとちょっと出掛けてみたいなと思っている人たち、買い物や散歩ついでにちょっとくつ
ろぎたいなと思っている人たち、そうした人たちの受け皿、居場所となるために、近付きやすく、
そこにいることが心地良いと感じられる場所、運営が求められる。
パルテノン多摩は、都市計画で計画的につくられた歩車分離のネットワークにより<駅―商業エ
リア―パルテノン多摩―多摩中央公園―建設予定の図書館本館>を安心して散策できる環境に位
置している。その利を生かして、これらの結節点となり、まちとつながる要の場になることもでき
る。
そうした様々な活動・場所が連鎖して、これまでなかった「新しい広場」が生まれる可能性を持
っている。まちとつながり、未来につながる場所に生まれ変わることにより多摩市のかかげる「健
幸まちづくり」を推進する力となることが期待される。
13
第2章 パルテノン多摩の現状と課題
1
利用状況
後述の諸室の利用状況からわかるように、大ホールの利用で最も多いのが「音楽・練習」である
ことが本施設の特徴である。舞台でしっかり練習・準備して公演に望むことができる環境にあると
評価できるが、逆の見方をすると、これによって稼働率を一定レベルに保っているとも言える。し
かし、収入面からすると、利用料金が割安になる「練習」よりも「公演」を増やすことがプラスに
なる訳で、
「音楽系公演」や「舞踊公演」に比べて公演数の尐ない「軽音楽」
・
「ミュージカル」
・
「演
劇」
・
「古典芸能等」の公演利用を伸ばしていくことでバランスの取れたサービスを提供していくこ
とが望まれる。そのためには、多様な演目の要求にも応えられる客席、楽屋等の改修が必要となる。
小ホールにおける「音楽練習利用」は大ホールほど多くないが、
「舞踊系」
・
「演劇系」
・
「古典芸能」
等の利用が「音楽系」の利用に対して低く、これらの利用を上げ、バランスの取れた演目に対応す
る改修が大ホール同様に望まれる。
リハーサル室・練習室の稼働率は高く、しかも抽選に漏れ利用できない人たちがあることから、
練習機能の需要はまだ多くあり、他の室をそうした「練習」にも使えるようにすることは有意義で
あると考えられる。
市民ギャラリー・特別展示室の稼働率には余裕があり、室の広さ・高さとも十分にあることから、
それらの特徴を生かして、他の用途にも転用できる性能を付与することができれば、現在の活動を
充実することや新たな活動にもつながる可能性が出てくる。
*稼働率=
利用回数/ 施設利用可能回数 : 休館日、保守日、工事等で利用できなかった午前・
午後・夜間の3区分を除いた区分数の合計
(1)稼働率(※平成 27 年度実績)
・ 大小ホールの稼働率は 60%前後を確保しているものの減尐傾向が続いている。
・ リハーサル室・練習室の稼働率は高く、特に第 1 練習室(81.4%)
、リハーサル室(69.3%)
は、ほとんど切れ目なく利用されている。第 2 練習室(52.5%)の利用も高い水準である。
・ 抽選漏れの利用者がいることを考えると、練習機能は現状以上のニーズがあると思われる。
・ 会議室は稼働率が 40〜50%前後であり、総じて利用が低下している。平成 27 年度の実績に
よると和室・アトリエを除く会議室 7 部屋はどれも稼動は 40%から 50%程度の利用になって
いる。このことから部屋に定員規模の差はあるが全体的に需要よりも部屋が多い。
・ 和室(第 1:26.3%、第 2:25.8%)やアトリエ(38.0%)の稼働率は伸び悩んでいる。
・ 市民ギャラリー(41.0%)
、特別展示室(54.1%)も稼働率では今一歩利用が伸びないが、
利用者数では一定の割合を保っている。
・ ホールとの音漏れ関係から使用できない場合があることが、会議室やリハーサル室の稼働率
にも現れている。
14
(2)各諸室の利用状況について
①大ホールの利用状況
・ 音楽系公演が多く、
「クラシック音楽公演」と「音楽公演(その他)
」の割合がほぼ同じ割合
である。
・ 特徴的なのは、
「練習(音楽)
」が上記 2 つの音楽系公演よりも多いこと、またそれらに続い
て 4 番目に多いのが発表会である。
・ 練習室利用では群を抜いて多い「舞踊」だが、大ホールにおける「バレエ、ダンス公演」は
前述の 4 種に次ぐ 5 番目となっている。
・ 「演劇等」の公演も行われているが、その数は「式典・大会・講演会」と同数にとどまって
おり、「古典芸能」の公演はさらに尐ない。
②小ホールの利用状況
・ 音楽系公演が多く、
「クラシック系音楽公演」「音楽公演(その他)
」の割合はほぼ同じ割合
である。
・ 「演劇等」
・「古典芸能」
・「練習(音楽)」
「バレエ・ダンス等公演」「会議・セミナー等」と
同等程度であり、「映画」やその他の項目と比較すると尐ない。
・ 特徴的なのは、
「発表会」が上記2つの音楽公演よりも多いことである。またそれらに続い
て多いのが「式典・大会・講演会」である
・ 利用実績は大ホールと比較すると「市民活動」が多い。
③リハーサル室・練習室の利用状況
・ 音楽練習で最も多く利用されているのがリハーサル室で、次いで第 1 練習室となっており、
広い部屋であること、遮音性があることが求められている
・ 舞踊練習で最も利用されているのが第 1 練習室で、3 番目がリハーサルであることから、室
の大きさ(ないしは利用料金)が最優先して選択されていると見ることができる。
・ これらに次いで控室としての利用も尐なくないことから、楽屋が不足している状況が伺える。
④市民ギャラリー・特別展示室の利用状況
・ 平成 27 年度実績では、市や近隣美大、クラフト協会といった高度な展示を望む利用が約 35%
を占め、1週間以上の比較的長めの連続期間で利用することが多い。また約 30%が財団の特
別展示として利用し、これらは 1 ヶ月以上の連続利用である。展示以外の利用として、全体
の約 15%が野外事業のリハーサル等で利用されている。市外の方による展示利用は 4%程度で
ほとんど利用がない。
15
・ 市民ギャラリーの利用は、金曜日から日曜日が使用の 64%を占めるのに比べ、特別展示室は
45%となっている。市民ギャラリーは集客の望める土日を主に、その前後の平日に留まる短
期利用が多いのに比べて特別展示室は、曜日に関わりなく1週間以上の展示利用がされてい
る。
・ 特別展示室の可動壁は、厚さ 0.9m、幅 2.7m。18 台あるため、保管にも大きなスペース(約
68 ㎡)を要している。
・ 市民ギャラリーは子ども等のイベントに使われる事もある。
⑤博物館機能諸室の利用状況
・ 博物館 3 室の来場者数は年々減尐傾向にあり、平成 26 年度は宮内公文書館との共催事業や
野外事業等との連携を行う改善で来場者数を盛り返したが減尐傾向は変わっていない。
・ キッズファクトリーは、土日や祝日と小中学校の長期休みの期間は賑わうが、平日は使われ
ていない。
・ マジックサウンドルームは、障がい者団体の遠足コースに組み込まれることは多いが、鑑賞
料を払っての入場は尐ない。
・ 歴史ミュージアムに学校が団体で見学に来ることはあまりない。
⑥付属諸室(4 階・5 階)の利用状況
・ 開館以降に公民館、コミュニティセンター、学校跡地等活動の場は広がったことで、アトリ
エでの創作活動団体、和室を利用しているマンション管理組合やリトルリーグ会合等は、他
施設でも登録も見られ、需要が低下したことも考えられる。
・ 会議室は、近隣企業の研修、入社面接等から、地域住民での趣味活動まで会議、打合わせ以
外での使用も多い。
・ 4階カフェ及び5階レストランは同一事業者が受託経営している。
16
2
施設上の課題
(1)共通の課題
①劣化及び現在の法規や規準への対応
・ 老朽化が進行し、また特定天井等の開館以降に制定された法規や新しい規準に合わない部分
もあり、安定的な運営や利用者の安全性の確保が困難になってきている。
・ 長期休館の恐れがあるため早急に対策が必要である。
②バリアフリー
・ 多くの箇所でバリアフリー化が現代の要求水準に達していない(舞台への動線、楽屋便所、
客席前方の車椅子席等)
。
・ 様々な障害を持った人たち(視覚障害、聴覚障害、身体障害、精神障害・高齢者等)が本施
設に気軽に立ち寄る環境にない。特に1階のアプローチ環境が優しくない。駐車場は暗く、
案内もわかりづらく、スロープは利用しにくい。
・ 障がい者だけでなく乳幼児への配慮も行き届いていない。
・ 屋内外に子どもから高齢者・外国人等の誰もが認識しやすくわかりやすいサインが整備され
ていない。
・ 誘導ブロックや階段の注意喚起ブロックが、経年务化で取れている。また、現行基準に適合
していない。
③動線・ゾーニング
・ 小ホールでは舞台・楽屋エリアと他施設(練習室エリア)の動線が明確でない。また、楽屋
動線と一般動線が混在している。
・ 事務室から大ホール舞台・楽屋への動線が複雑で、バリアフリー上の課題がある。
・ パルテノン多摩のエレベーターが高低差のある多摩中央公園のバリアフリー動線として使
われているが、開館時間にしか利用できない。
・ 開館以来更新していない耐用年数を超えたエレベーター2機は更新の必要がある。
④省エネルギー
・ 各種設備(空調・電気)が、現在の省エネ性に適合していない。
・ 照明設備等は LED 化する必要がある。
・ 個室については、施設全体の空調と同じ系統になっているため、個別での調整ができない。
⑤くつろぎ・居場所・交流空間
・ 練習室・リハーサルエリアでは、その利用前後に多くの人が集まるが、その人たちが待機で
き、くつろぎ、交流する場が不足している。
17
・ 様々な諸室があるが、目的を持たずに立ち寄り、滞在できる場所がない。
・ 入口にロビーはあるが、通過動線の場しか利用されておらず、居心地が良くない。
・ 「食」による交流、趣味による交流、ボランティア活動による地域貢献等色々な意識・価値
観を持った人たちが拠り所にできるような場がない。
・ 学校の団体利用では、館内で昼食を取りたいという問い合わせが多いが、館内に無料で団体
が飲食できるスペースがない。
・ 多世代交流できるような場所がない。
⑥融通性と見える化
・ 展示スペースが比較的大きく、利用料金もそれなりに高額なので市民には利用しづらい状況
がある。
・ 和室やアトリエ等利用率が低い室は、室環境が固定的であることに原因があると思われる。
・ 市民ギャラリー、学習室、アトリエは積極的に利用されているが、壁で閉ざされてしまって
いるため、中での活動の良さが伝わりにくく、はじめての人にとって近づきにくい。
・ 大・小ホールホワイエは公演時外の場合には、利用されておらず、スペースとして有効活用
されていない。
・ ホールをはじめ博物館等で、どのような催事を行っているのか、興味を引くような告知スペ
ースが館内外に尐ない。
⑦施設の立地
・ 多摩センター地域の活性化が求められている中で、パルテノン多摩は多摩センター地域のシ
ンボルであり集客に期待が持てるが、集客にはまだ伸び代がある。また、立ち止まり利用す
る施設となっていない現状がある。
・ 公園と商業、交通要所等に接し、車に交わらず快適に安心して利用できる環境の接点位置に
ありながら、その豊かな環境をつなぐ役割を果たせていないでいる。
(2)場所に関する課題
①外部の共用部(エントランスプラザ・大階段・ルーフテラス・回廊)
・ 大階段は上り下りする際に不安感を感じる。
・ トップライトやルーフテラスは、安全上の理由から立ち入り禁止になっている。
・ トップライトは漏水が発生している。
・ 大階段の上り下りをはじめ、外部にベンチ等の休憩できるスペースがない。
・ パルテノン多摩によってパルテノン大通りから多摩中央公園までの緑の連続が断絶されて
しまっている。
・ 多摩中央公園やエントランスプラザからの館内への入口がわかりにくく、寄り付きにくい。
18
・ 5階回廊は暗く、立ち寄りにくい。
②内部の共有部(ロビー・ホワイエ・WC 等)
・ 共用ロビー等、室内の雰囲気が暗く、日常的な賑わいが感じられない。
・ 大・小ホール同時使用時には、ロビー・ホワイエで、人が混雑することがある
・ 博物館や市民ギャラリー等諸室の中の活動の様子が共用部に対して見えない。
・ 諸室へのサイン等がわかり難く、位置がわかり難い。
・ 授乳室等子育て世代に対する配慮が足りていない。
・ ホールの公演時にトイレの数が不足することがある。
・ 段差があり、バリアフリー化を実現していないトイレもある。
・ 多目的トイレの新設等の整備が求められる。
・ クロークやロッカー等がなく不便である。
・ 受付の位置がわかりにくい(1、2階とも)
・ 公演、催事、文化芸術全般の情報発信に乏しい
③歴史ミュージアム
・ 入口がわかりにくく、初めての人にとっては近づきにくい(博物館の存在が知られていない)
。
・ 展示通路、書籍の供覧スペースが狭く展示スペースも十分でないため、学校団体等多人数の
参観者を収容しきれない。高齢者、障がい者にとっても観覧し易い通路幅が確保できていな
い。
・ フレキシブルに展示できるようになっておらず、収納や展示が固定化しやすいため、リピー
ターにつながらない。また子どもも見やすく参加できる展示物がない。
・ これまで実施した特別展や企画展による情報や史資料の蓄積、多摩ニュータウン関連資料や
自然史資料等多数の史資料がありながら、展示スペースが確保できていない。
④キッズファクトリー
・ 多摩中央公園に近い立地ながら、公園からのスムーズな動線や案内表示がなく、その立地を
活かせていない。
・ 室内窓がないため、廊下から中の活動の様子を見ることができない。
・ 乳幼児連れの親子の利用も多いが、ベビーカースペースが確保できていない。
・ 市民によるボランティア活動等、地域の人材の活躍の場でもあるが、活動が可視化できてい
ない。
・ ワークショップの実施のためにより使いやすい準備・材料ストックスペースが必要。
・ 展示準備作業等博物館のバックヤードとしても活用されている。
19
⑤マジックサウンドルーム
・ 来場者が尐ない曜日を閉室する等の対応を図りながらコスト削減を実施し、企画内容の工夫
も行ってきたが、利用者が限定されており、今後の発展は期待しにくい。また、開館以来 29
年が経過し、一定の役割は終了し、当該博物館機能を見直すべきだと考えられる。
・ 障がい者団体が外出で来場する機会が多く、文化芸術に親しむ貴重な場所として利用されて
いることから、一部の自動演奏楽器をパブリックスペース等で展示活用することは検討の余
地がある。
・ 維持・管理に多大なコストがかかっている。
⑥収蔵庫、荷解き室
・ 収蔵している内容物の一部に、空調設備を必要としない文書、物品が含まれている。倉庫や
文書庫への適正な収蔵場所での管理への見直しを行い、収蔵庫の有効活用が望まれる。
・ 資料の保管については単に収蔵だけではなく、資料のデジタルアーカイブ化を進め、活用の
効率化を進めることが望ましい。
・ 収蔵庫から近い場所に荷解き室があるが、防虫や湿気等保存環境上の問題から外気を直接取
り組む必要のない時には外気を遮断する必要がある。
・ 荷解き室廻りでは、活用されていないクレーン、テナントのゴミ出しや搬入等についても検
討が必要。
⑦資料整理室(1階)
・収蔵庫前通路(1階)・研究室(4階)等バックヤード
・ 研究室は部屋の広さ、事務机はあるが、その数ほど職員が常駐しているわけではない。改修
後も構造壁により仕切られた空間にはなるので、スタッフの休憩場所や限られた人しか使え
ない部屋とするのではなく、研究会以外にも、施設運営に関わる市民団体の事務局が入るこ
と等幅広く可能性を探る必要がある。
・ 4階を中心に利用されていないバックヤードスペースが多い。
⑧市民ギャラリー・特別展示室
・ 展示室入口が閉鎖的で、中が見えないため入り難さがある。また興味を引くような告知スペ
ースが館内外に尐ない。
・ 特別展示室の床から天井までの高さが 4.4mある。利用者が高年齢化していく現状では、ロ
ーリングタワーに上り、レールへのライト設置、吊りワイヤー展示は危険も伴う。また「作
品数を多く展示したい」や「高所作業は避けたい」等の理由により、壁に鋲や釘を打ちつけ
ての展示を行う利用が多く、石膏ボード壁に穴等の損傷が目立っている。
・ 特別展示室は、部屋が広すぎて、天井が高いため、市民の気軽な展示には使用しにくいスペ
ースになっている(広すぎることで利用料金と展示の負担が増)
。実際の利用実績でも、市
20
や財団による利用が多い。
・ 展示の需要は平成 27 年度実績で施設利用種目の中で全体利用件数の内 5.1%、貸館来場者で
視ると 17.6%に留まっている。創作活動を刺激し来館者に見てもらうためには、部屋だけで
なく共用部、フリースペース等での展示も検討課題と考える。
・ 展示用可動壁の保管について省スペース化の工夫、改善が必要である。
・ 平日の利用が尐ない市民ギャラリーは、他用途での利用可能性を広げる必要がある。
・ 利用の幅を広げるため市民ギャラリー・特別展示室ともに多機能化することが望ましい。
⑨練習室・リハーサル室
・ 需要の多い「クラシックバレエの練習」や「軽音楽活動」等に対して練習室、リハーサル室
の遮音が不十分である。
・ 管理の問題から日をまたいでの利用ができず、小道具を使用した練習が行いにくい現状であ
る。
・ 第 2 練習室と小ホールとの間で音漏れしている。
・ 練習室・リハーサル室の数が足りない。
・ 更衣室がない。
・ 練習室利用者の付き添いの方々の待機場所がない等の待合機能が不足している。
⑩会議室、和室、学習室、アトリエ、シティサロン等
・ 会議室の一部は公民連携の考え方を採り入れ、民間提案を求め、市民へのサービスの質、量
の向上の検討が必要である。
・ 第1会議室と大ホールの間の遮音が不十分である。
・ 会議室は扉が閉まると、中で何をしているのか、外には見えないので、閉鎖的な空間にも感
じ取れる。
・ LAN 配線や Wi-Fi によるネットワーク環境がない。
・ 会議室は稼働率改善のため、物理的な用途拡大と利用ルールの見直しによりもっと自由な使
い方(どの部屋でも飲食可、机を片付けられる、電源の容量の大きい部屋、電気調理を可と
する等)を可能な部屋とすることで利用目的の幅を広げ稼働率改善を望む。
・ 空調に関する苦情もある。排煙窓は日常開閉できないため、外気冷房や換気窓、個別空調の
導入が望ましい。
・ シティサロンや和室等、限られた用途でしか利用できないため、十分活用されていない。
⑪大ホール
*ステージ廻り
・ ステージ床レベルに収納スペースがなく、階下レベルに備品庫やピアノ庫があり舞台備品の
21
運搬や、ステージづくりに時間がかかる。
・ ステージ床レベルに楽屋がなく、楽屋スペースも自然光が入らず、暗く、部屋数も不足して
いる。
・ 舞台機構設備(吊もの、床昇降等)
、舞台照明設備、舞台音響設備が老朽化している。
*客席
・ 残響時間が長めでクラシック音楽には適していると言えるが、軽音楽、ロック、ミュージカ
ル、演劇、映画、会議式典等の演目に対しては、適切な音響条件となっていない。
・ 過去には演劇公演も一定の利用があったが、大ホールの最大視距離(舞台から最も遠い席ま
での距離)が長く、演劇公演のような細かな表情・しぐさが伝わらない。
・ 以前より体格が一回り大きくなったことによる座席の大型化が求められる。
・ 空調システムが全域空調のため、効率的でない。
・ 客席の床勾配が緩く、後部座席は前席の観客頭部が視界に入りステージが見にくい。
・ 親子室が遠く、狭い。またアクセスで段差がある。
⑫小ホール
*ステージ廻り
・ 楽屋とステージレベルに階段しかなく、車椅子等での移動が困難である。
・ 舞台機構設備(吊もの、床昇降等)
、舞台照明設備、舞台音響設備が老朽化している。
*客席
・ 側壁の色調が明るいため照明ハレーション(強い光が反射して見えにくくなる)が起きて演
劇等の用途に対応しにくい。
・ 舞台までの視界に前方席の観客の頭が入り見にくい。
・ 通路の段差の高さが各段で異なるため、上り下りしにくく、安全性の配慮が求められる。
・ 今後の市民利用も鑑みながら、舞台設備の向上も求められる。
・ 技術的環境の変化として省エネ技術や情報技術の革新がもたらす最新技術の導入が求めら
れる。
・ 親子室がない。
・ 空調システムが省エネ型ではない。
⑬事務室等管理諸室
・ 開館当初から人員削減されたため、職員人数と執務スペースのバランスが悪く、スペースが
有効に利用できていない。
・ 収蔵庫前に更衣スペースがはみ出している等、職員及び外注スタッフやボランティアを含め
たスタッフのためのバックヤードの整理と検討が必要である。
・ 真空集塵室等、当初目的の使用がされていない室についての使用目的の検討が必要である。
22
⑭カフェ・レストラン
・ カフェは、館内・外から位置がわかり難い。
・ カフェやレストランは多摩中央公園に近い位置にあるが、賑わって使われておらず拠点とし
て使われていない。
・ 全体空調のため個別空調ができない。休館日にレストランも営業ができないため、不規則営
業になっている。
23
3
運営上の課題
(1)運営費の状況
・ 運営費(指定管理料)全体については、平成4年をピークに毎年減尐を続けており、現在(平
成 27 年度)は、その 1/3 程度になっている。
・ 収益源として大きなウエイトを占める大ホールや展示スペースの稼働率は近年伸び悩んで
いる。
・ 市の収入に応じて、各種予算が計画されることは当然のことであるが、しかしながら年々予
算が削られていくのでは、文化芸術に関する活動の低下をまねきかねない。
(2)社会的変化への適合
・ これまでは音楽を中心とした施設機能として計画されているため、舞台芸術の多様性を受入
れる幅が比較的狭く、練習機能はあるものの創造のプロセスを幅広く支援する力が弱い。
・ 鑑賞に重心をおいた施設構成で、人々が日常的に訪れ時間を過ごす場所が尐ない。
・ 駅から近く、歩行者専用道路でアクセスできる、また公園にも隣接している等都市機能と公
園の接点にあるポテンシャルを活かしきれていない。
(3)利用者拡大・開拓
・ 従来の機能・活動を維持する傾向が強く、利用者が限定され将来的な伸びが懸念される。
・ 特に用事がない人でも気軽に立ち寄れる親しみやすい場所、利用の多い練習機能を充実させ、
公演活動等を支援する制作・練習の場等があれば、市民文化創造活動の向上につながってい
く可能性がある。
・ 大ホールでは、観客と舞台との距離感を近いと感じられる工夫が達成できれば演劇等の公演
利用を高めることにつながる。
・ 博物館では、現在の多摩ニュータウンの資料展示が多世代にわたって楽しめる展示内容に対
応しきれていない。
24
第3章 パルテノン多摩の改修方針について
1
改修の方針
施設の内外装や設備について、時間の経過に伴う機能・性能の低下による物理的な务化への機能
回復を「务化改修」とする。同時に、法改正や新基準への対応等を確保する改修項目として、「安
全性の向上」、
「バリアフリー化」、
「標準性能の確保」とし、以上の項目を最低限必要な改修項目と
した。更にパルテノン多摩の再生を目指し、新たな市民ニーズ対応や賑わいの創出を拡充し、現在
の社会が求める機能を付加することを「機能及び利便性の向上」とした。特に、大小ホール等専門
性の高いエリアに必要な付加機能については、専門家からのアドバイスを得ながら方針を設定した。
また、今回の改修は「中長期的視点」に留意したものとした。
対象範囲図
多摩中央公園
パルテノン多摩
多摩市立中央公園内
駐車場(東駐車場)
多摩市立中央公園内
駐車場(西駐車場)
エントランスプラザ
多摩センター駅
25
(1)劣化改修
時間の経過に伴う施設の機能・性能の低下を、開館当時の水準まで回復させて、今後も機能を維
持しながら、安定して施設を利用するための改修をいう。今回の改修工事の過半を占める改修で、
既存の建材・設備の撤去と新設により工事費も多くを占めることになる。「多摩市立複合文化施設
(パルテノン多摩)老朽化の状況と 運営リスクに関する報告」にある通り、長期休館にならない
ためにも早急に対策が必要な工事となる。現地調査や改修履歴調査等の他、既往の务化診断報告書
や指定管理者へのヒアリング結果をもとにして、必要な改修項目を抽出した。
(2)安全性向上(法規への適合)
今後も長く市民が安全・安心に施設を利用できるように、建築基準法の既存不適格部分を改修し
て安全性を向上させる。平成 23 年の東日本大震災を機に制定された建築物の天井脱落対策等、開
館以降に制定された法規に適合するよう整備する。
(3)バリアフリー化(法規への適合)
多摩市福祉のまちづくり整備指針や東京都バリアフリー条例への適合化に加え、全ての市民が利
用しやすい施設とするため、可能な限りの配慮をして整備する。
(4)標準性能の確保
現在のパルテノン多摩の使用状況を勘案し、必要な標準的設計基準を整備する。
さらに設備機器や方式も最新化することで省エネルギー化を図る。
(5)機能及び利便性の向上
市民や利用者ニーズを把握して、市民利用の促進や、ホール等の施設稼働率を向上させるように
整備する。まちに開いた施設とするため、多摩中央公園の利用者が気軽に立ち寄れ、ホールに催し
がなくても市民が自由に滞在できるように整備する。さらに子育て支援や民間活用を含めた賑わい
の創出、文化芸術創造の振興、利用率の向上、ひいては地域の活性化を目指した整備とする。
(6)中長期的視点
メンテナンス性に優れ、ライフサイクルコストも重視した整備をする。
26
2
改修案の検討
これまでの基本計画策定委員会で「現状」
「プロポーザル案」に対して議論を行い、その中で挙げ
られた意見を記載している。また、それらの意見を踏まえて基本計画策定に向けた「改修のポイン
ト」として要点を、以下の項目ごとに分類し記載している。
(1) 大階段・エントランスプラザ・入口
(2) 1 階エントランス・事務室・練習室・リハーサル室・更衣室
(3) 2 階エントランスロビー・博物館(常設展示室)
・特別展示室・市民ギャラリー
(4) 4 階会議室・博物館諸室(ワークショップルーム・マジックサウンドルーム
・アトリエ・研究室・学習室)
・ティーラウンジ
(5) 5 階回廊・シティサロン・レストラン
(6) 大ホール
(7) 小ホール
27
(1)大階段・エントランスプラザ・入口
<現状>
<現状に対する意見>
・ 多摩センター地区にはペデストリアンデッキからつながる歩行者専用のルートがあり、車と一切接触せずに
家に帰ることができるため、子育てには非常に向いた場所。改修計画の中にも子育て世代に優しい部分を多
くつくって差別化もできるのではないか。
・ この施設は駅から近くわかりやすい位置にあるはずなのに施設の内容はわかりにくい。親しみやすさはとて
も重要。
・ まちにとって、景観は大事にすべきだと思う。多摩センター駅を降りて見上げると、そこにパルテノン多摩
があるという印象は強い。
・ 大階段からの出入りはもっと積極的に図ってゆくべき。大階段とパルテノン多摩を寄り付きやすくして欲し
い。4・5 階が非常にわかりにくい。
・ 入口が 2 つあり、どちらに入れば目的の場所につくのかサイン等で明示できれば良い。
・ 現在は運営・管理のしやすさから、外に対して比較的閉じている印象がある。明るく、中の活動の様子が良
くわかるようなつくりだと、入りやすくなるはず。
・ エレベーター等を利用してパルテノン多摩を多摩中央公園への通路として使って欲しい。移動の途中にホー
ル・会議室等があり、面白いものがあれば寄り道をできるイメージが良い。
28
(1)大階段・エントランスプラザ・入口
<プロポーザル案>
<プロポーザル案に対する意見>
・ 大階段の上部列柱は多摩センター地区の原風景として心に刻まれている。アクロポリスの丘の上に建つパ
ルテノン神殿を連想させる風景である。提案の大階段上部にテントを張って列柱が見えにくくなることに
懸念がある。
・ 子どもたちにとって良いまちになって欲しい。トイレや授乳室位置がわかりにくい。提案にあるエントラ
ンスプラザ上の水盤は子どもにとっては楽しいだろうが、子育て世代の親としては、安全面や濡れること
による後始末等が大変であることから評判が良くない。
・ 演劇はホールの中でやるだけではなく、大階段等の屋外スペースを利用して、みんなが見られる場所で行
うと新たな利用方法として興味がある。
29
(1)大階段・エントランスプラザ・入口
30
(2)1階 エントランス・事務室・練習室・リハーサル室・更衣室
<現状>
<現状に対する意見>
・ 車で来た障がい者等のアクセスが良くない。1 階からのアプローチは車椅子利用者等にとってより良いもの
として欲しい。
・ 全ての障がい者に対応できるように、専用の駐車場を整備し、適切な斜路と照度を確保して欲しい。
・ リハーサル室・練習室は舞踊の利用が多いとともに、ホールの楽屋としての利用が見受けられる。これは楽
屋が不足していることに起因している。
・ 1 階小ホールまでの通路で、練習室等の利用者が着替えを行っているため、小ホールの楽屋にたどり着くま
でに困難なことがある。1 階に更衣室があれば良い。
・ 1 階リハーサル室は空調の効きが悪すぎるので、改善して欲しい。
・ 1 階には利用者や保護者等の待機場所がない。
・ 演劇の部分練習をするにはリハーサル室は大きすぎる。
・ 第 1、第 2 練習室は音漏れの影響による利用制限があるため利用率に違いがある。
・ リハーサル室、小ホール、練習室は時期、時間帯によっては、予約が困難な場合がある。レッスン主催者か
らは、レッスン継続に支障が出るとの声がある。連日使用できない時は小道具等を引き上げなければならな
い。
31
(2)1階 エントランス・事務室・練習室・リハーサル室・更衣室
<プロポーザル案>
<プロポーザル案に対する意見>
・ 計画案では事務室レイアウトを変更し、滞留できるスペースを確保しているが、小ホール利用者や事務用の
動線が区別できれば更に良いと思う。
・ 演劇の部分練習をするにはリハーサル室は大きすぎる。
32
(2)1階 エントランス・事務室・練習室・リハーサル室・更衣室
・
33
(3)2階 エントランスロビー・博物館(常設展示室)
・特別展示室・市民ギャラリー
<現状>
<現状に対する意見>
・ 大ホールが満席で運用すると小ホール前に人が至ることがある。その逆もあり何とかならないか。
・ 歴史ミュージアムは、壁面の調整等で特別展示室と空間を一体的にし、フレキシブルな利用ができないか。
・ 特別展示室は、奥まっていて入口もわかりにくい。
・ 市民ギャラリーや特別展示室で、多種用途の催しを開催できるよう、ハード、ソフトの面で対応して欲しい。
ハード面では特に音漏れ対策や、簡易的なステージ・客席の対応等。
・ 2 階特別展示室・市民ギャラリーが閉鎖的で利用頻度もそれほど高くない。
・ パルテノン多摩が他市の市民ホールと違う点は市民の歴史や文化について、知ることができる場があること。
・ 今あるものを活かして市民が学べる場所を大切にして残して欲しいと思う。
・ この改修を機に、資料の整理、展示の更新、明るい空間づくりに対応して欲しい。展示の場所が暗い。
・ 2 階特別展示室・市民ギャラリー天井が高く、間仕切りも尐ないため、市民利用の展示空間としては大きく
利用料金も高いことから使いにくい現状がある。間仕切り等で小割にすることで利用しやすい料金・広さで
貸し出すことも考えられる。
34
(3)2階 エントランスロビー・博物館(常設展示室)
・特別展示室・市民ギャラリー
<プロポーザル案>
<プロポーザル案に対する意見>
・ 2 階共用ロビー周りは人が滞留できるようなスペースがあると良い。
・ 横浜市の事例だが、日常的に市民が利用できるように工夫した事例(大人の BUKATSUDO)がある。この場所
で何をするかは参加する人が自ら決めるという運営方法。多摩市のポテンシャルを生かして、平日、夜間を
含め、パルテノン多摩で人が行きたい場所をつくり、いつでも人が集い交流し、活動できる仕掛けを民間活
用を含めて考える必要がある。
・ 地域内・外の人が交流する事が重要な場として考えている。タウンミーティング、イベント、スクール、ラ
ボ、セミナー等、今度こういうのをやってみようという地域の人が使える場所を設けることはどうか。
・ 市民ギャラリー及び展示室を利用用途の制限をせず柔軟に使えることが重要である。
・ 博物館機能を決められた場所だけでなく、ロビー・屋外テラス・大階段等に展示できるようにするべき。
・ 子どもたちが行きたいと思えるような博物館として欲しい。
・ 市民ギャラリーの間仕切りを変更し、ガラス張りのスペースにすれば、多目的で開放的に使える環境になる
のではないか。
・ 今後も引き続き市民と一緒に博物館を運営していくにあたり、現状同等のスペース確保及び機能拡充に対応
して欲しい。
・ ホワイエを共用空間とした場合の、ホールへの遮音はどう考えるか。
35
・ あえて展示室を設置するよりも、2 階のフリースペースを活用して展示スペース等を設ければ、ここは人が
集まる部分であるため、人の目につく機会が増える。
・ 劇場と博物館の機能を持つ施設として、公園法上の申請をしているので、博物館機能は存続させる必要があ
る。博物館機能を決められた場所だけでなく、ロビー・屋外テラス・大階段等に展示できるようにするべき。
・ 子どもたちが行きたいと思えるような博物館として欲しい。博物館の企画展示は、大人は見たいと思うが、
子どもを誘っても嫌がられてしまう。
・ 劇場と博物館の 2 つの機能が 1 つの施設に入っていることを活かし、
両機能の融合が図れれば意味が高まる。
例えば 2 階エントランスで 2 つが一緒になってやる事業のために、こうした場・空間が欲しいということは
あるか。座・高円寺は入口ホールの壁一杯に子どもが作った 1 つのパッチワーク作品を飾ったこともある。
キッズファクトリーで作ったものを 1 つの作品として展示できる共用空間とかがあっても良い。
・ 様々な人にとって活動しやすい場を設けることが必要。 展示も幅広い世代へ向けてのものが良い。
・ 空間に動かせるものを設置して自由に使ってもらう。ロッカー等ものをおいておける場所があると活動には
広げやすい。
・ パルテノン多摩に来られない人に対してどうやって活動を届けるか考えて、幅広い人に合わせる必要がある。
・ しっかりと整備されているのが多摩センター地区の特徴。反対にもう尐し様々な用途が入り混じっているよ
うな部分があっても良いと思う。座・高円寺ではきちんとしているレストランの中に色々な絵本の読める場
が併設されている、そんな運営事例もある。
・ 2 階博物館機能を利用しやすく充実した内容として欲しい。
・ データの蓄積は非常に素晴らしい。単純に鑑賞するだけの展示ではなく、触って楽しんだり、音声解説があ
ったりすると良いと思う。
・ 面白い展示をきっかけとして人が集まるのはいいアイデアだと思う。市民も参加できる楽しいことを改修の
時にやれると良い。入口だけでも楽しい雰囲気を作って欲しい。
36
(3)2階 エントランスロビー・博物館(常設展示室)・特別展示室・市民ギャラリー
37
(4)4階 会議室・博物館諸室(ワークショップルーム・マジックサウンドルーム・アト
リエ・研究室・学習室)
・ティーラウンジ
<現状>
<現状に対する意見>
・ キッズファクトリーについては、知っている人が使うと良いと感じる機能であるが、知名度が低いので、も
っと開かれるような工夫が欲しい。
・ 日曜日になれば公園にたくさんの人がいるのに、公園側からパルテノン多摩4階に入る入口の表示がなくわ
からないのが残念。館内に引き込むサイン等の工夫があれば良い。現在のように、目的がある人だけが訪れ
る施設とならないようにして欲しい。
・ 4 階の外部カフェテラスは、多摩中央公園のイベントとつながりが持てる場所なので、今回の計画では活用
方法の多様性が生まれる。
・ 4 階のカフェは外からは見通しがきかず入りにくい。今後はこのスペースをフレキシブルに使えれば良い。
・ 4 階外部カフェテラスからは見通し良いが、館内からはとても閉鎖的になっている。館内外に閉じずに開く
ことができれば、つながりが生まれ、良いと思う。
・ 和室の必要性については考え直した方が良い。
38
(4)4階 会議室・博物館諸室(ワークショップルーム・マジックサウンドルーム・アト
リエ・研究室・学習室)
・ティーラウンジ
<プロポーザル案>
<プロポーザル案に対する意見>
・ 公園とのつながりから子どもを室内で遊ばせるスペース、ベビーカー置場、授乳室等の子育て関連施設が、
公園レベル(4 階)にあった方が良い。
・ 4 階にカフェ&ライブラリーを設けるのであれば、同階にも授乳室があると良い。また、コンビニのような
機能もあれば、人々が立ち寄りやすくなると思う。
・ 4 階は、外部カフェテラスで実施している中央公園の祭り等イベントとのつながりが持てる場所なので、今
回の計画では活用方法の多様性が生まれる。持続的かつフレキシブルに利用できるような運用方針を検討し
ていきたい。
・ 多摩中央公園が子育て世代に人気なのは、広くて遮るものや遊具等がなく、広々のんびりできる点だと思う。
道路に接していないのが良い。ただ、ベビーカー置場や自転車置き場、荷物の置き場所が尐ない。パルテノ
ン多摩に荷物が多い時のためのロッカーがあれば買い物等のついでに寄りたくなる。
・ マジックサウンドルームが勿体ない。カフェエリアの BGM に使う等もう尐し解放できないか。
・ 大階段から 4 階へのアプローチを加えるのであれば、マジックサウンドルームは、ロビーやカフェ等での活
用が検討できないのか。
・ 4 階多目的室についても利用しやすく充実した内容として欲しい。
39
・ 4 階のカフェ&ライブラリーについては、つくりつけずに軽い椅子、簡易なパーテーション等、様々なレイ
アウトができるようにフレキシビリティを持たせる。
・ 多摩中央公園からパルテノン多摩への入り口がわかりにくく、公園利用者を取り込めていない。案内表示を
付ける等の対策があれば良い。
・ 公園に来ているファミリー層、子育て世代が使いやすい施設にして欲しい。
40
(4)4階 会議室・博物館諸室 (ワークショップルーム・マジックサウンドルーム・ア
トリエ・研究室・学習室)
・ティーラウンジ
41
(5)5階 回廊・シティサロン・レストラン
<現状>
<現状に対する意見>
・ 5 階シティサロンにコンビニ機能を設けると公園から人を引き込めると考える。商業的な表現であるシャワ
ー効果も得られる。
42
(5)5階 回廊・シティサロン・レストラン
<プロポーザル案>
<プロポーザル案に対する意見>
・ 5 階レストランの床を抜き吹き抜けをつくると、回廊から 4 階の活動が望めるようになり、一体の空間にな
るのではないか。
・ 多摩中央公園からパルテノン多摩への入り口がわかりにくく、公園利用者を取り込めていない。案内表示を
付ける等の対策があれば良い。
・ 公園に来ているファミリー層、子育て世代が使いやすい施設にして欲しい。
43
(5)5階 回廊・シティサロン・レストラン
・
44
(6)大ホール
<現状>
<現状に対する意見>
・ 何事も平均点を取ろうとすると、何にも使い勝手が悪いホールになる。そこは市民のみなさんと話し合って
いくと、こういうホールとして使いたいという特化したホールにもできる。
・ 大ホールは細長く奥行きが深いのでステージが見にくい。横広の客席だと見やすい。
・ 舞台までの距離が長く、子どもが飽きてしまうことがある。客席だけでなく、親子室も同様。
演劇の利用では非常に聞き取りにくい面がある。残響時間の問題だと思う。映画利用の際はなおさら聞き取
りにくい。
・ ホワイエ内のサービスコーナーの運用頻度が低く感じられる。現在の場所では死角となっていて存在がわか
りにくい。
・ ホールについて、最近では利用方法を限定するようなつくりだと利用が減る傾向にある。
・ 大ホールは残響時間が長く、利用用途が限られてしまっている。多くの市民の同意を得るには、幅広い利用
を促すような改修とすべきである。
45
(6)大ホール
<プロポーザル案>
<プロポーザル案に対する意見>
・ 既存の利用目的だけでなく、多様な舞台利用が増えてきている。歌舞伎の利用や、客席前面中央部の利
用も場合によっては対応できるホールを考えて欲しい。
・ 舞台自体が客席にせり出すことで、ホールの距離感が近くなることは確かであり、手間はかかっても客
席を脱着式とすること等で対応可。ただし、それに対応した照明、音響等の設備対応も必要となってく
る。
・ 大ホールについては、演劇が満足に鑑賞できるよう、残響時間の適正化は対応して欲しい。
・ 舞台周りの壁面は、演目イメージに支障しないよう、舞台近くは黒目の仕上げにする等、照明が反射し
ない仕上げを検討して欲しい。
・ 親子鑑賞室についての考え方について、
「親子」という限定的な使い方ではないので、
「多目的室」とし
て来場者の要望に応じた多目的な利用としている。ハンデのある方や年齢の低い子どもが泣く、声を出
すことがあって、それを気にしてしまうお客さんもいる。そういう方々に対してもソフト対応の場とし
て用意してあると望ましいと考える。
・ 客席奥の横幅が狭くなると、舞台から見た時に遠く感じることがある。法的な制約も鑑み、客席の勾配
の差をつける等、今後も検討を進めて欲しい。今より遠く感じるようなことがないようにして欲しい。
46
(6)大ホール
・
47
(7)小ホール
<現状>
<現状に対する意見>
・ 小ホールは発表会等の市民利用が多い。
・ 演劇や舞踊利用が尐ない。
・ リハーサル室・練習室は舞踊の利用が多いとともに、ホールの楽屋としての利用が見受けられる。これ
は楽屋が不足していることに起因している。
・ 舞台のバリアフリー化も実現の必要がある。
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(7)小ホール
<プロポーザル案>
<プロポーザル案に対する意見>
・ ホールについては高齢社会になる中で、手すり、スロープ等の対応を求めていた。
・ 小ホールは現況の座席数と利用率を考えると、ホールの質を確保しつつも客席数は確保したい。
・ サイドバルコニー席の設置等により鑑賞・演出の多様化を検討してはいかがか。
・ 客席の前列を親子等の座席として、現状幅のままひじ掛けなしの同伴席にして欲しい。
49
(7)小ホール
50
第4章 今後の課題
1 理念と方針の周知と継続的議論
これからパルテノン多摩の改修事業を進めていく上で、共通認識を持つ必要があると考え、パ
ルテノン多摩の基本理念と基本方針を提案した。今後の改修事業実施段階においても、広く市民
意見を反映するため引き続き議論が必要である。
とりわけ、これからの多摩市を担う若い世代の意見に耳を傾けることが大切と考える。今後の
ステップで、より詳細で具体的な内容について話し合いが行われるが、広く内容を周知し、若い
世代の意見を反映できる機会をつくり、意見をつなぎ合わせ、市民と広く共有される理念へと高
めていくことが望まれる。
2 事業・活動・運営を考慮しながら計画を具体化する
基本計画策定の段階では、改修にあたっての考え方・方向性を示すことに重点がある。限られ
た時間、人数と知識であるため、これまで述べて来た内容をここで詳細にわたって伝えることは
できないかもしれない。報告された課題は今後、基本設計・実施設計を進めて、議論を深めて行
く過程で次第に具体化され、イメージとして共有化されていくものだろう。市は想定する管理運
営費用を勘案し、事業・活動・運営等イメージの具体化(管理運営計画の策定)に向けて取組む
ことになる。その段階では、基本計画策定委員会委員も参加して基本計画の考え方を伝えるとと
もに、幅広い知見を持った劇場技術専門家と運営専門家の助けやアドバイスも必要である。
3 市民参画のあり方
今後の管理運営計画策定の過程において、市民ワークショップのような市民参加の場を設ける
ことも必要である。早い段階から市民が参加することで、施設・運営づくりやまちづくりのイメ
ージを具体的に共有化でき、共につくる喜びをわかち合うことができる。とりわけ、子育て世代
や若い世代の参加は、施設やまちを活気付けることにつながり、将来の市民サポーターの核とな
る人材を育てる機会ともなる。
特に 2 階ロビーや 4 階フリースペース等共用空間の計画においては若い世代の意見が重要であ
る。そうすることで、改修後の管理運営にどのように参加していくかを考える機会にもなる。
客席案内やチケットのもぎり、情報誌の作成、市民参加型フェスティバルの企画等、様々な形
の市民参加の場を増やすことにつながる。それらをサポートする「サポーター組織」の整備につ
いても検討すべきである。様々な市民がそれぞれの興味関心や得意分野等で力を発揮できるよう
なフレキシブルな組織とし、メンバーも長期に渡り固定化されないように留意されたい。誰もが
参加できる活力あふれる活動は、参加する市民の楽しみや生きがいにもつながり、
「健幸まちづく
り」の実現にも有効である。
「友の会」のような見るための組織に加え、企画・運営する側に積極的に参加する潜在的な人
材を掘り起こすことで、次の時代を担う若い市民を中心とした市民力による「新しい広場・まち
51
の広場」づくりが可能になると考えられる。
4
地域の活性化
多摩ニュータウン再生が進む中で、業務核都市である多摩センター地域は、更なる賑わい、活
性化が求められている。そのような中でパルテノン多摩は、地域のシンボル施設でありながら、
その機能を十分に果たしているとはいえない。その対策としては、パルテノン多摩が多摩センタ
ー地域の特性を生かし、若い子育て世代を積極的に受け入れることが地域の活性化につながる鍵
である。日常的に近付きやすく、居心地の良い場所となり、公園はじめ周辺機能と連携した運営
や場づくりを図って行くことが必要である。そのことにより、文化的な交流が誘発され、人の集
まりがまちの文化的な意識や雰囲気を高め、多摩センターのまちの魅力に寄与することになる。
これは多摩センター地域の活性化だけでなく多摩市全体の活性化にもつながる。従って、子育て
世代が集まり始めた多摩中央公園に立地するパルテノン多摩を、まちの広場として再整備すると
ともに、若い子育て世代が楽しめる多摩センターとして、地域全域のグランドデザインも検討を
進めることが重要である。
5
保全計画の見直し
本改修は、新しいパルテノン多摩として、今後も時代と利用状況に即しながら、良い状態で長
く利用し続けることを目的としている。そのためには今回の改修によって施設の長寿命化を図る。
また、開館後も定期的なメンテナンスに加え、機器によって求められる整備や更新の時期が異な
るため、適切な時期での対応が必要である。適切な時期にそれらを行わないと、動作不良や機器
故障、公演の中止等閉館を伴うリスクがある。
現在、多摩市では「公共建築物保全計画」に基づき施設を維持している。社会要請の変化、劇
場技術の変化や要請、適切な維持管理に対応するためには、適時、計画の見直しが必要である。
6
外部(民間)事業者の活用
2階ロビーや特別展示室・市民ギャラリー、4階諸室・5階諸室などは幅広い活用が可能であ
る。外部(民間)事業者にアイデアを募り運営することで、ホールや展示などの主要機能利用者
とは異なる活動が芽生え、新たな活気をもたらすことが期待される。施設の今後の内容としては、
子ども、若者、大人たちが、それぞれ趣味や関心等をキッカケとして集まる場、楽しむ場、協力
し合える場等があげられる。従来の枞にとらわれない外部(民間)事業者による活動が、施設利
用の幅を広げる一助になると考えられる。
7 文化芸術振興に関する条例
劇場法では、文化施設を「心豊かな生活を実現するための場」であると位置づけている。文化
施設は、文化活動する人や鑑賞する人だけの場所ではなく、皆がコミュニティを意識しながらつ
52
くりあげる場であり、国際化の背景においては、世界に開かれた場でなければならないとされて
いる。
今後、市民・行政に専門家を含めて、多摩市独自の文化について話し合うことから始め、文化
活動・施設の意義や「文化の必要性」について議論し、共通認識を持つことが重要である。それ
らの議論をまとめて文化芸術振興に関する条例を制定し、多摩市の文化施策を市民と共有するこ
とが、パルテノン多摩を市民と使いこなしていくための根拠になる。条例では文化審議会等、市
民や専門家の参画の場をつくり、多摩市の文化施策について継続的に議論することが、市民の手
による「多摩市の文化の創造」につながるのではないだろうか。
53
資料編
1
文化施策について(まとめ)
劇場・ホールに関する法令(文化政策/バリアフリー/指定管理/建築)
平成 13 年 12 月
文化芸術振興基本法
平成 14 年 12 月
文化芸術の振興に関する基本的な方針
第 1 次基本方針(閣議決定)、第 2 次(平成 19 年)、第 3 次(平成 23 年)、
第 4 次(平成 27 年)
平成 18 年 6 月
高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー
新法、これに伴い、ハートビル法と交通バリアフリー法は廃止)
平成 15 年 9 月
指定管理者制度/地方自治法改定、第 244 条の 2(公の施設の設置、管理
平成 22 年 12 月
及び廃止)指定管理者制度の運用について(助言)価格競争でない・労
働法令遵守・適切な運用
平成 18 年 12 月
高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令
平成 24 年 6 月
劇場、音楽堂等の活性化に関する法律(略称「劇場法」)
平成 24 年 7 月
高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準改訂(劇場、
平成 27 年 7 月
競技場等の客席・観覧席を有する施設に関する追補版)の策定
平成 24 年 9 月
文化審議会文化政策部会提言「東日本大震災から学ぶ文化力による地域
と日本の再生」
平成 25 年 3 月
劇場、音楽堂等の事業の活性化のための取り組みに関する指針(文部科
学省告示)
平成 25 年 6 月制定・
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)
平成 28 年 4 月施行
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律施行令
平成 25 年 11 月
建築物の耐震改修の促進に関する法律の一部を改正する法律(改正耐震
改修促進法)の主な改正点
平成 26 年 4 月
安全上重要である天井および天井の構造耐力上安全な構造方法を定める
件(特定天井)建築基準法施行令の一部改正
平成 27 年 4 月
建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、
方法及び結果の判定基準並びに調査結果表を定める件(建築基準法施行
規則)
図1.劇場・公共ホールに関する法令 (出典
54
本杉委員長の提供資料より)
2
パルテノン多摩の大規模改修を考える(本杉委員長提供資料)
55
56
57
58
3
文化施設の運営について
(1) 基本理念と人材について(本杉委員長提供資料)
59
60
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63
64
65
66
67
(2) 運営組織について(設計者提供資料)
68
69
70
71
72
73
4 パルテノン多摩の利用と運営状況について(本杉委員長提供資料)
①大小ホール
a.利用件数
b.稼働率
c.利用種目の件数・回数
74
②会議室等
a.利用件数
b.稼働率
②
ホールの利用内容
c.リハーサル室・練習室の平成 27 年度種目別利用回数(本杉委員長提供資料)
③市が負担する運営コスト(年度毎の収入)
75
5
多摩市の地域の特性(尾中委員提供資料)
76
77
78
6
基本計画策定委員会での意見まとめ
■建築・設備に関する意見
全体
①公共空間は誰にとっても居心地の良い居場所である必要がある。しかし、
どうも日本の「公(おおやけ)
」は文字通り「お上」とつながり堅いイメ
ージ、ドイツ語の「offen=公共」は開いているという語源から来ており、
その考えが今後基本になるのではないかと思う。
②多摩センター地区にはペデストリアンデッキからつながる歩行者専用の
ルートがあり、車と一切接触せずに家に帰ることができる子育てには非常
に向いた場所。改修計画の中にも子育て世代に優しい部分を多くつくって
差別化もできるのではないか。
③今回の改修は元に戻すだけでなく将来のまちのあり方を解いていく必要
がある。震災の際にも文化施設の多くは避難所として機能した。そういっ
た側面もある。
④子育て世代が使いやすい施設にして欲しい。
⑤共用部・オープンスペースの効果的活用と運営について、下記 3 点に沿
って検討を進めて欲しい。
・創造性
現在は発表の場はあるが、4 階ワークショップスペースのような、もの
つくりの場が弱いので、これを強化してはどうか。各分野、得意とする外
部の方を引き入れる場になるように。
・新しい広場
障がい者等を含め様々な人が利用し交流できる場としてはどうか
・民間との協働
民間の経験を導入し、直接文化に関わらない大人でも活動できるシェア
スペースのような場を検討してはどうか。
⑥多摩センター地域のまちづくりとして、子どもが集まりやすい環境を整
えるべき。
⑦事業費を考えると、施設としての特色が出せるのは 20.5 億円の範囲。的
を絞って実施するのが現実的と考える。例えば特別展示室を多目的利用の
場として新たに創設し、既存の室の特徴を伸ばすという選択もある。ただ
し、伸ばす特徴自体の選択が必要。
⑧公共施設を存分に使い尽くすという考えは素晴らしい。渋谷ヒカリエ 8
階のイベントスペース「ハチ」は、駅からは遠いが催し物を年中行うとい
う仕掛けが成功し、わざわざ 8 階まで人が集まってくる。パルテノン多摩
も仕掛けを作らないと使い尽くすことはできない。
⑨エレベーター等を利用してパルテノン多摩を多摩中央公園への通路とし
て使って欲しい。移動の途中にホール・会議室等があり、面白いものがあ
れば寄り道をできるイメージが良い。
⑩いわき市の事例では公園内にトイレを設けないで、ホール施設のトイレ
を公園利用者に使ってもらい施設に引き込む仕掛けをした。積極的に施設
の中に入ってきてもえるようになり、文化に興味がない人にもきっかけと
なり新しいお客さんになることもある。
⑪改修としての見直しできる機会は多くない、この時期を逃してはならな
いし、やるのであれば単純な改修ではなく、将来のまちづくりの視点を持
っていなければならない。
⑫バリアフリーに対応し将来に向けた施設になって欲しい。
⑬この施設は駅から近くわかりやすい位置にあるはずなのに施設の内容は
わかりにくい。親しみやすさはとても重要。
⑭公民館と違うのは、使った人が発信し、新たな人を結び付けていく機会
が増えるので、常に誰かが使っている場を考えてみてはどうか。
⑮本施設は背面に山が控えているため、単純に取り壊せばいいという話に
はならない。
79
⑯建物を健全に維持するのは長期修繕計画が必要である。本来は定期的に
改修すべきなのに、適切な工事を実施してこなかったので、まとまったコ
ストがかかっている。仮設や騒音の問題はあるが、改修箇所や改修内容を
分割して一部を後に回す等の検討もあるのではないか。
外観・外回り
①大階段の上部列柱は多摩センター地区の原風景として心に刻まれてい
る。アクロポリスの丘の上に建つパルテノン神殿を連想させる風景であ
る。提案の大階段上部にテントを張って列柱が見えにくくなることに懸念
がある。
②子どもたちにとって良いまちになって欲しい。トイレや授乳室位置がわ
かりにくい。提案にあるエントランスプラザ上の水盤は子どもにとっては
楽しいだろうが、子育て世代の親としては、安全面や濡れることによる後
始末等が大変であることから評判が良くない。
③まちにとって、景観は大事にすべきと思う。多摩センター駅を降りて見
上げると、そこにパルテノン多摩があるという印象は強い。
④大階段からの出入りはもっと積極的に図ってゆくべき。大階段とパルテ
ノン多摩の寄り付きやすくして欲しい。4・5 階が非常にわかりにくい。
⑤入口が 2 つあり、どちらに入れば目的の場所につくのかサイン等で明示
できれば良い。
⑥車で来た障がい者等のアクセスが良くない。1 階からのアプローチは車椅
子利用者等にとってより良いものとして欲しい。
⑦外装のシーリング等の目地材の改修も見込んでいる。
⑧演劇はホールの中でやるだけではなく、大階段等の屋外スペースを利用
して、みんなが見られる場所で行うと新たな利用方法として興味がある。
⑨現在は運営・管理のしやすさから、外に対して比較的閉じている印象が
ある。明るく、中の活動の様子が良くわかるようなつくりだと、入りやす
くなるはず。
⑩多様な障がい者に対応できるように、障がい者駐車場に開放し、斜路整
備と照度を確保して欲しい。
2階
①2 階共用ロビー周りは人が滞留できるようなスペースがあると良い。
②横浜市の事例だが、日常的に市民が利用できるように工夫した事例。こ
の場所で何をするかは参加する人が自ら決めるという運営方法。多摩市の
ポテンシャルを生かして、平日、夜間を含め、パルテノン多摩で人が行き
たい場所をつくり、いつでも人が集い交流し、活動できる仕掛けを考える
必要がある。今はあまり使われていない階の展示室や 4 階にそのような場
所を設定することで、人を呼び込み他の階への波及効果も期待できる。
③横浜市の事例では「全ての市民がアーティストである」という理念が良
い。誰しもが自分のいいところを出し合って社会に参加するというのは素
晴らしい考え。
④パルテノン多摩で同様の取り組みが出来たら良いと思う。
⑤大ホールが満席で運用すると小ホール前に人が至ることがある。その逆
もあり何とかならないか。
⑥ホワイエを共用空間とした場合の、ホールへの遮音はどう考えるか。
⇒ホールとホワイエの間の建具の遮音性能を向上することで対応を考え
る。
フリースペース
4階
フリースペース
①キッズファクトリーについては、知っている人が使うと良いと感じる機
能であるが、知名度が低いので、もっと開かれるような工夫が欲しい。
②公園とのつながりから子どもを室内で遊ばせるスペース、ベビーカー置
場、授乳室等の子育て関連施設が、公園レベル(4 階)にあった方が良い。
③4 階にカフェ・ライブラリーを設けるのであれば、同階にも授乳室がある
と良い。また、コンビニのような機能もあれば、人々が立ち寄りやすくな
80
ると思う。
④4 階は、外部カフェテラスで実施している中央公園の祭り等イベントとの
つながりが持てる場所なので、今回の計画では活用方法の多様性が生まれ
る。持続的かつフレキシブルに利用できるような運用方針を検討していき
たい。
⑤日曜日になれば公園にたくさんの人がいるのに、公園側からパルテノン
多摩 4 階に入る入口の表示がなくわからないのが残念。館内に引き込むサ
イン等の工夫があれば良い。現在のように、目的がある人だけが訪れる施
設とならないようにして欲しい。
⑥4 階の外部カフェテラスは、多摩中央公園のイベントとつながりが持てる
場所なので、今回の計画では活用方法の多様性が生まれる。
⑦持続的かつフレキシブルに利用できるような運用方針を検討していきた
い。
⑧4 階のカフェは館内からは見通しがきかず入りにくい。今後はこのスペー
スをフレキシブルに使えれば良い
⇒4 階外部カフェテラスからは見通し良いが、館内からはとても閉鎖的にな
っている。館内外に閉じずに開くことができれば、つながりが生まれ、良
いと思う。
大・小ホール
①一定粋を超えたより良いホールになった事例も見てきている。何事も平
均点を取ろうとすると、何にも使い勝手が悪いホールになる。そこは市民
のみなさんと話し合っていくと、こういうホールとして使いたいという特
化したホールにもできると思う。
②大ホールは細長く奥行きが深いのでステージが見にくい。横広の客席だ
と見やすい。
⇒舞台までの距離が長く、子どもが飽きてしまうことがある。客席だけで
なく、親子室も同様。
③演劇の利用では非常に聞き取りにくい面がある。残響時間の問題だと思
う。
⇒映画利用の際はなおさら聞き取りにくい。
④既存の利用目的だけでなく、多様な舞台利用が増えてきている。歌舞伎
の利用や、客席前面中央部の利用も場合によっては対応できるホールを考
えて欲しい。
⇒舞台自体が客席にせり出すことで、ホールの距離感が近くなることは確
かであり、手間はかかっても客席を脱着式とすること等で対応可。ただし、
それに対応した照明、音響等の設備対応も必要となってくる。
⑤大・小ホールの利用が重なると、現状の 2 階共用ロビーの広さでは入場
待機者のさばき方に課題がある。雤天時、屋外にまで並んでもらうことも
ある。
⑥ホワイエ内のサービスコーナーの運用頻度が低く感じられる。
⇒興行内容によっては飲食物を提供していると聞いている。ただし、現在
の場所では死角となっていて存在がわかりにくい。
⑦大ホールについては、演劇が満足に鑑賞できるよう、残響時間の適正化
は対応して欲しい。
⑧舞台周りの壁面は、演目イメージに支障をきたさないよう、舞台近くは
黒目の仕上げにする等、照明が反射しない仕上げを検討して欲しい。
⑨親子鑑賞室についての考え方について、
「親子」という限定的な使い方で
はないので、「多目的室」として来場者の要望に応じた多目的な利用とし
ている。ハンデのある方や年齢の低い子どもが泣く、声を出すことがあっ
て、それを気にしてしまうお客さんもいる。そういう方々に対してもソフ
ト対応の場として用意してあると望ましいと考える。
⑩ホールについて、最近では利用方法を限定するようなつくりだと利用が
減る傾向にある。
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⑪小ホールは発表会等の市民利用が多い。演劇や舞踊利用が尐ない。また、
リハーサル室・練習室は舞踊の利用が多いとともに、ホールの楽屋として
の利用が見受けられる。これは楽屋が不足していることに起因している。
⑫舞台のバリアフリー化も実現の必要がある。
⑬客席奥の横幅が狭くなると、舞台から見た時に遠く感じることがある。
法的な制約も鑑み、客席の勾配の差をつける等、今後も検討を進めて欲し
い。今より遠く感じるようなことがないように。
⑭小ホールは現況の座席数と利用率を考えると、ホールの質を確保しつつ
も客席数は確保したい。
⑮ホールについては高齢社会になる中で、手すり、スロープ等の対応を求
めていた。
⑯务化改修実施以後は、現代の機器等水準に準じたレベルアップは見込ま
れるのか。
⇒現在要求される水準に適合させることも务化改修に含まれる。
⑰大ホールは残響時間が長く、利用用途が限られてしまっている。多くの
市民の同意を得るには、幅広い利用を促すような改修とすべきである。
⑱客席の前列を親子等の座席として、現状幅のままひじ掛けなしの同伴席
にして欲しい。
展示室
①歴史ミュージアムは、壁面の調整等で特別展示室と空間を一体的にし、
フレキシブルな利用ができないか。博物館機能についても検討を進めて欲
しい。特別展示室は、奥まっていて入口もわかりにくい。
②市民ギャラリーや特別展示室で、多種用途の催しを開催できるよう、ハ
ード、ソフトの面で対応して欲しい。ハード面では特に音漏れ対策や、簡
易的なステージ・客席の対応等。
③地域内・外の人が交流する事が重要な場として考えている。タウンミー
ティング、イベント、スクール、ラボ、セミナー等、今度こういうのをや
ってみようという地域の人が使える場所を設けることはどうか。
④2 階特別展示室・市民ギャラリーが閉鎖的で利用頻度もそれほど高くな
い。また中の活動がわかりにくく、入りづらい。利用方法の一例として、
小規模な子どもバレエ発表会や朗読会等、子どもたちのための小さなイベ
ントができるような利用の仕方が良いのではないか。
⑤2 階特別展示室・市民ギャラリー天井が高く、間仕切りも尐ないため、市
民利用の展示空間としては大きく利用料金も高いことから使いにくい現
状がある。間仕切り等で小割にすることで利用しやすい料金・広さで貸し
出すことも考えられる。
⑥市民ギャラリー及び展示室を利用用途の制限をせず柔軟に使えることが
重要である。
⑦パルテノン多摩が他市の市民ホールと違う点は市民の歴史や文化につい
て、知ることができる場があること。今あるものを活かして市民が学べる
場所を大切にして残して欲しいと思う。
⑧劇場と博物館の機能を持つ施設として、公園法上の申請をしているので、
博物館機能は存続させる必要がある。博物館機能を決められた場所だけで
なく、ロビー・屋外テラス・大階段等に展示できるようにするべき。
⑨子どもたちが行きたいと思えるような博物館として欲しい。博物館の企
画展示は、大人は見たいと思うが、子どもを誘っても嫌がられてしまう。
⑩劇場と博物館の 2 つの機能が 1 つの施設に入っていることを活かし、両
機能の融合が図れれば意味が高まる。例えば 2 階エントランスで 2 つが一
緒になってやる事業のために、こうした場・空間が欲しいということはあ
るか。座・高円寺は入口ホールの壁一杯に子どもが作った 1 つのパッチワ
ーク作品を飾ったこともある。キッズファクトリーで作ったものを 1 つの
作品として展示できる共用空間とかがあっても良い。
⑪市民ギャラリーの間仕切りを変更し、ガラス張りのスペースにすれば、
82
多目的で開放的に使える環境になるのではないか。
⑫今後も引き続き市民と一緒に博物館を運営していくにあたり、現状同等
のスペース確保及び機能拡充に対応して欲しい。
⑬この改修を機に、資料の整理、展示の更新、明るい空間づくりに対応し
て欲しい。展示の場所が暗い。
練習室、
リハーサル室
その他
①1 階小ホールまでの通路で、練習室等の利用者が着替えを行っているた
め、小ホールの楽屋にたどり着くまでに困難なことがある。1 階に更衣室
があれば良い。
②1 階リハーサル室は空調の効きが悪すぎるので、改善して欲しい。
③1 階には利用者や保護者等の待機場所がない。計画案では事務室レイアウ
トを変更し、滞留できるスペースを確保しているが、小ホール利用者や事
務用の動線が区別できれば更に良いと思う。
④演劇の部分練習をするにはリハーサル室は大きすぎる
①5 階シティサロンにコンビニ機能を設けても公園から人を引き込めると
考える。商業的な表現であるシャワー効果も得られる。
②和室の必要性については考え直した方が良い。
③多摩中央公園が子育て世代に人気なのは、広くて遮るものや遊具等がな
く、広々のんびりできる点だと思う。道路に接していないのが良い。ただ、
ベビーカー置場や自転車置き場、荷物の置き場所が尐ない。パルテノン多
摩に荷物が多い時のためのロッカーがあれば買い物等のついでに寄りた
くなる。
④各種教育・育成の場がないので、指導者を立てて運営して欲しい。小さ
い子どもたちに体験させる場が欲しい。
⑤マジックサウンドルームが勿体ない。カフェエリアの BGM に使う等もう
尐し解放できないか。
⑥大階段から 4 階へのアプローチを加えるのであれば、マジックサウンド
ルームは、ロビーやカフェ等での活用が検討できないのか。
⇒温湿度管理等の維持が非常に繊細な機器が多い。
⑦第 1、第 2 練習室の利用率の違いは何か。
⇒音漏れの影響による利用制限である。
⑧市民ギャラリーと特別展示室の利用率の違いは何か。
⇒広さの違い(特別展示室が広すぎて使いきれない)
⑨4 階キッズファクトリーについては、知っている人が使うと良いと感じる
機能であるが、知名度が低いので、もっと開かれるような工夫が欲しい。
⑩4 階キッズルームについても利用しやすく充実した内容として欲しい。
⑪5 階レストランの床を抜き吹き抜けをつくると、回廊から 4 階の活動が望
めるようになり、一体の空間になるのではないか。
■運営に関する意見
文化条例、指針
①多摩市としての条例は市民を交えて将来的には制定することを前提とし
て、今回の大規模改修を考えるべき。公演鑑賞、市民利用の側面だけでな
く、いかに生活を良くしていくための施設であるかを加味する必要がある。
条例に含める言葉の定義も考えていくべきで、策定にあたっては公共性、
人権、社会包摂、地域課題の解決等の観点も大切にすべき。条例が絵に描
いた餅にならないように、
「文化基本計画」と、
「評価システム・評価審議
機関」も必要。
②条例策定の際には、パルテノン多摩での文化施策だけでなく、大階段で演
劇を行うというアイデアを受け、パルテノン大通り等のまちの空間を、規
制緩和等でもっと使いやすくしたりするのも良いと思う。それによりパル
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テノン多摩が立ち寄りたいと思える場所になればいいと思う。
③「多摩市における文化芸術振興方針」について市民に知られていない。ま
た方針が市長決定で策定されているが、市民の意見が反映されているよう
には見えない。条例を制定する場合には、市民とともにつくり上げること
が必須と考える。市が芸術活動を規定するのではなく、活動を尊重・支援
はするが、介入はしないというスタンスを明確にし、盛り込んで欲しい。
④文化芸術振興に関する法は、活動・施設の拠り所となるものであるため、
計測できるような効果を期待して設置するものではないのではないか。む
しろ意義あること・ものを認め、方向性を定めるもの。文化活動・施設等
必要ないという意見等も含めて、市民や議会が自分たちの文化について話
し合うことから始まる。
「文化の必要性」について言及し共通認識を持つこ
とが非常に重要。
⑤劇場法では、文化施設を心豊かな生活の場であると位置づけている。文化
施設は文化活動する人や鑑賞する人だけの場所ではなく、皆がコミュニテ
ィを意識しながらつくりあげる場であり、国際化の背景で世界に開かれた
場でなければならないとされる。これらが多摩市芸術振興方針には書かれ
ていない。そうした内容を含め議論し検討したほうが良い。
⑥運営についての理念が不十分であった。文化施設には知識と情熱の両方が
必要で、遅きに失してはいるが今後文化振興条例等の整備されていくプロ
セスで市民共有のものとして行きたい。
⑦恵まれた一部の人が文化的なものを享受していると思う。そうではなく
て、子育て世代や働く世代等、いろんな世代の多様な人々が文化を享受で
きる場が、公立文化施設だと思う。
⇒公立文化施設の社会的な役割を考えることが重要。
施設利用のルー
ル
管理運営者
①施設を余すところなく使い倒せるようにするためには、規約上の利用用途
制約がハードルとなっている。
②必要に応じて、パルテノン多摩の利用規制を緩和して、交流が活発となる
ようにする必要がある。
③どの自治体でも規制が問題として上がるが、運営形態によっては規制を自
治体側で緩和することを前提に議論している経緯がある。パルテノン多摩
も規制を緩和することで色々な文化の発信センターとなることが期待でき
る。周辺施設と連携して、コミュニティセンターや学校等の空室状況等を
確認できれば良い。
④改修後の運営方針がないと、素晴らしい施設ができても、使用制限等がか
けられてしまって、利用の幅が増えないのでは意味がない。運営規則に則
り規制するのではなく、できるための対策を運営サイドで提案を出して、
ともに考えるような施設としていきたい。市民活動を支援する施設である
とともに、市民が一緒になって考えられる施設であって欲しい。
⑤多摩中央公園利用者に対してエレベーターの利用をしやすさ改善やパル
テノン多摩内のトイレ利用促進は、張り紙をする程度で今でも改善できる
内容。大規模改修のタイミングを待たずしても直近で実施できることは、
対応しても良いと思う。せっかくの設備があっても、利用されていないの
ではもったいない。
⑥リハーサル室、小ホール、練習室は時期、時間帯によっては、予約が困難
な場合がある。レッスン主催者からは、レッスン継続に支障が出るとの声
がある。連日使用できない時は小道具等を引き上げなければならない。そ
のため、音楽や演劇練習は連続性・集団性の強い練習が求められる。その
サポートがソフト面でできるか。
①場所を準備するだけでなく仕掛けが必要で、コーディネーターが必要。
②ただ集まるというだけでは交流は生まれない。来た人をつなげるという明
確な意思を持ったコーディネーターがいないと難しい。財団職員や市民が
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核となって、交流の仕掛けを作っていければ良い。
③指定管理者制度は事業の活性化が目的であったはずだが、本来の活動の目
標とかけ離れたコスト削減が目立ってしまっている。本来、公共ホールは
人間の健康につながる重要な文化活動に向かっていくべき役割を担える施
設である。
④ホール利用者向けの託児を準備した経験があるが、コストがかかる割に利
用者が尐なく運営が難しい。
施設全体の運営
①休日はにぎわっていても、平日は使われていないではなく、使い倒す視点
で、仕組みを考えるべきであるし、そこには費用をかけてでも、それ以上
の成果として見えてくるように考えると良いと思う
②ハレの舞台であるがゆえに敷居が高いと感じる。市民が気軽に使える施設
になって欲しい。
③施設の中で有効利用されていない場所等を有効活用し、日常的に活動する
スペースの設置を今後検討した方が良い。ただし、スペースだけを設ける
だけでは機能しないので、運営的な仕掛けが必要。
④資料から読み取れるのは、大ホールはクラシック等音楽公演が多く、公演
だけでなく練習利用も多いこと。演劇公演が当初に比べ減っているのは運
営者側の支援が不足してきているからなのか、演劇が行いにくい環境から
きているのか等の要因が考えられる。
⑤大規模改修事業費 80 億円の内訳の見える化を進める必要がある。受益者
負担と行政負担の見える化をした上で、市民との議論をしなければならな
い。
⑥運営面の方針策定が必要と感じる。例えば、子どものため、学生のためと
いった、極端な方針としても良いと思う。
⑦例えば吉祥寺だと、特段の仕掛けがなくても若者が集まってくる。それは
子育て環境が良いのがひとつ。パルテノン多摩をきっかけに未来の子ども
たちをどう育成するか、どう呼び込むか、をどのように工夫できるのかを
考えていく必要がある。
⑧パルテノン多摩を子どもも育てられる場にして欲しい。
⑨一般の方の要望は今後吸い上げていくシステムのようなものがあると良
いと思う。多摩中央公園に人が集まっているのは、SNS での口コミの力が
大きい。
ホールの運営
①耐用年数については、舞台設備は電子機器が多いので、適切な期間を設定
し、ストックマネジメント計画を策定して欲しい。
②文化的な体験前後の「買う」
「食べる」
「飲む」といった、関連行動を引き
受ける商業的な部分が弱い。特に「買う」に対する側面。
フリースペー
①日常的にその空間に滞在する人たちで子どもたちを見守れるような仕組
みを準備すれば、保育所を兼ねられる。
②館内の場所をプロポーザルで民間の活力を取り込む等、民間が容易に参入
できる仕組みがあっても良いのではないか。
⇒どこまでを民間に委託するのかは早く議論が必要。
③4 階のフリースペースについては、つくりつけずに軽い椅子、簡易なパー
テーション等、様々なレイアウトができるようにフレキシビリティを持た
せる。
④使う人同士が自然と交流するためには、コーディネーターのような役割の
人が必要と考える。単純に場所だけを作っても、交流が自然発生的に起こ
るのは難しい。
⑤あえて展示室を設置するよりも、2 階のフリースペースを活用して展示ス
ペース等を設ければ、ここは人が集まる部分であるため、人の目につく機
会が増える。
ス・共用空間
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⇒様々な人にとって活動しやすい場を設けることが必要。展示も幅広い世代
へ向けてのものが良い。
⑥空間に動かせるものを設置して自由に使ってもらう。ロッカー等ものをお
いておける場所があると活動には広げやすい。
⑦パルテノン多摩に来られない人に対してどうやって活動を届けるか考え
て、幅広い人に合わせる必要がある。
⑧今後、ますます高齢化が進む中で市の収入も厳しくなっていくことが考え
られる。利用料金以外の収入を得る仕組みも必要だと思う。
⑨しっかりと整備されているのが多摩センター地区の特徴。反対にもう尐し
様々な用途が入り混じっているような部分があっても良いと思う。座・高
円寺ではきちんとしているレストランの中に色々な絵本の読める場が併設
されている、そんな運営事例もある。
博物館
①市民協働プログラムについては、博物館の長年にわたる積み重ねが花開
き、今の成果につながっていると思う。今後も継続して市民協働が実施さ
れることを願っている。ともに豊かになっていくかどうかという市民協働
の視点が大切。
②2 階博物館機能を利用しやすく充実した内容として欲しい。
③データの蓄積は非常に素晴らしい。単純に鑑賞するだけの展示ではなく、
触って楽しんだり、音声解説があったりすると良いと思う。
④面白い展示をきっかけとして人が集まるのはいいアイデアだと思う。市民
も参加できる楽しいことを改修の時にやれると良い。入口だけでも楽しい
雰囲気を作って欲しい。
外部
①パルテノン多摩は、大階段やエントランス広場、多摩中央公園といった周
辺環境に特徴があるので、どこで何をやっても許容され、創造性を駆り立
てる場が醸成されれば良い。
②多摩センター駅、商業施設等と一体となりゾーンとして成り立つことが大
切と考えるとパルテノン多摩が、周辺地域と連携していくことが大切。現
状は建物に来ないと公演情報がわからない状況であるが、まちに発信して
いく仕掛けも必要。
③多摩市の特性を活かすならば、大学があるので大学との連携もひとつ。特
に大学の文化施設活用は大学にも市にも利点がある。
④非常に大きい建物であるため、有事の際に、避難場所として認識されるよ
うな施設にした方が良いと思う。
⑤多摩中央公園からパルテノン多摩への入り口がわかりにくく、公園利用者
を取り込めていない。案内表示を付ける等の対策があれば良い。
⑥公園に来ているファミリー層、子育て世代が使いやすい施設にして欲し
い。
⑦大階段や共通ロビーをうまく利用してはいかがか。市民の活動をもっと広
くまちに広げていくことを考えられたら良いと思う。
⑧コミュニティセンターで夜間利用が尐ないのは高齢者の利用が多いこと
が考えられ、パルテノン多摩の駅前施設としてのポテンシャルを活かせば
夜間利用で勤労世代(若者)を受け入れられるのではないか
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7
基本計画策定委員会開催日程
実施回
主な検討課題・テーマ
日 程
第1回
平成28年7月8日
パルテノン多摩第1会議室
・改修方針及び平成 28 年度のスケジュール等について
・公共ホールの機能と役割
・
「地域や生活の中にあるホールとは。
(ホールの歴史、背景)
」
・設計事業者の事業提案書の説明・質問
第2回
・地域の特性理解について
平成28年7月24日
・近隣施設に対して、本施設をどのように位置付けるか、
パルテノン多摩第2・3会議室
どんな活動施設として考えるべきか
・本施設の良い点、課題点(改善点)
第3回
・パルテノン多摩大規模改修を考える
平成28年8月22日
・課題点の意見交換
パルテノン多摩第2・3会議室
第4回
・共用部・オープンスペースの効果的活用と運営について
平成28年8月31日
・設計事業者提案全体の概要確認
パルテノン多摩第2・3会議室
第5回
平成28年10月6日
パルテノン多摩第1会議室
・ホールの運営について考える
・条例や計画等、運用基準の見直し
第6回
平成28年10月24日
パルテノン多摩第1会議室
・条例や計画等、運用基準の見直し
・共用部・オープンスペースの効果的活用と運営について
・パルテノン多摩の複合性はどう活かすか(博物館機能、
文化財行政との連携)
・まちとのつながりについて
・人の交流が生まれる場としての運営について
第7回
平成28年11月6日
パルテノン多摩シティサロン
第8回
・基本計画策定委員会報告書案をもとにした意見交換
平成28年12月5日
パルテノン多摩第2・3会議室
第9回
・基本計画策定委員会報告書案をもとにした意見交換
平成29年1月6日
パルテノン多摩第2・3会議室
第10回
平成29年2月25日
パルテノン多摩シティサロン
・基本計画策定委員会報告書の確認
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8
基本計画策定委員会委員名簿
<多摩市立複合文化施設等大規模改修工事基本計画策定委員会委員>
氏名
委員長
副委員長
委員
委員
委員
委員
委員
委員
もとすぎ
本杉
職名等
しょうぞう
日本大学 理工学部 特任教授
省三
おなか
のぶお
やまもと
やすとも
あしかわ
まさあき
尾中 信夫
山本 康友
株式会社ケヤキ建築設計事務所 主宰
首都大学東京 都市環境学部 客員教授
公募市民
芦川 正明
あんらく
公募市民
安楽 きわ
さえき
あきこ
公募市民
佐伯 明子
さとう
み
ち
え
公募市民
佐藤 美千枝
しばた
公募市民
柴田 ゆき
<多摩市立複合文化施設等大規模改修工事基本計画及び基本設計業務委託受託者>
ナスカ・東畑・森村
多摩市立複合文化施設等大規模改修工事
<事務局>
多摩市 くらしと文化部
文化・市民協働課
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設計共同企業体