特集 私たちの学校給食 食生活の乱れ 食育の推進~給食から学ぶ ライフスタイルや価値観の多様化に伴い、近年、私たち の生活において、毎日の食事は手間なく簡単に済ませるこ とが求められ、家庭料理や伝統料理が食卓にあがる機会が 減ってきています。また、外食を利用したり、調理済み食 品で食事を済ませたり、好きな物だけを偏って食べること で栄養バランスの乱れも招いています。 かつて、食育の中心は家庭でした。家庭での食事を通し て、食べ物に感謝する心や地域の伝統の味を感じる味覚な どが養われてきました。しかし、核家族化の進展など、家 族形態の変化に伴い、伝統的な家庭の味などに触れる機会 が少なくなっています。 近年の食品の流通は、食事に至る過程(生産、流通、加 工、調理など)が見えにくく、食に関わる人や物への感謝 の念や理解の不足が見られます。食べ物を大切にする心や 食を提供する人に感謝する気持ちが薄れていることで、食 べ残しにもつながっていると考えられます。 「いただきます、 ごちそうさま」の挨拶をしていますか? 68 中2 55 成人 58 24 30 34 5 10 5 6 3 2 50% 100% 0% いつも言っている たまに言っている ほとんど言わない まったく言わない 引用:弘前市「食育に関するアンケート」 先生に インタビュー 小5 13 中2 6 成人 8 50 52 62 28 9 34 8 28 2 0% 50% 100% よく食べる たまに食べる ほとんど食べない 何が郷土料理か分からない 引用:弘前市「食育に関するアンケート」 こうした現状から、市では「弘前市食育推進計画」を策 定し、社会全体で食育への取り組みを進めています。 誰かと一緒に食事をとる「共食」は、食の楽しさを実感 させ、栄養や食材・料理に関する知識や食事のマナーを学 ぶ場ともなります。また、郷土料理などは地域の食文化を 伝える良い教材にもなっています。 現在の学校給食はそういった、食に関する知識や習慣、 伝統を学ぶ上で非常に重要な役割を果たしています。 す。 また、弘前市では和食のメニュー をすすめています。食物アレルギー にも対応しているため、みんなで同 じ給食が食べられるように、焼き魚 や煮物、みそ汁など、比較的アレル ギーが少ないものを選んで献立を考 えています。 作り手の顔 給食を通して子ども たちの未来を広げる 学校給食で、子どもたちの苦手な食べ物がで ることもあります。そんな時は、「今日は先生 の苦手な食べ物がでてる。でも先生も1口食べ るから、みんなもちょっとでいいから食べてみ よう」と言って少しだけでも食べることを促し ています。そうすることで、食事だけでなく勉 強やスポーツなどでも「苦手だけど少しチャレ ンジしてみよう」という気持ちにつながってい くと思います。 また、県産品など地元の食材を使っ た料理を食べる事を通して、自分た ちの生まれ育った地域をもっと好き になってほしいですね。友達と楽し く食べたり、残さず食べたり、そう いった食習慣を通して、食の大切さ を知ってもらいたいです。 西部学校給食センター 阿保 由美子 栄養教諭 愛情を込めた献立作り ▲手を合わせて、みんなで一緒に 「いただきます!」 ▲食事の準備はみんなで 協力 ◀大きな卵焼きをぺろり 大成小学校 阿保 健槻 先生 4 市内小・中学校の給食の献立の作成や食に関す る指導を行う東部給食センター・西部給食セン ターの栄養教諭・栄養士の皆さん。子どもたちの 日々の健康を考えて毎日の献立を作っています。 そんな皆さんにインタビューを通して給食に対 する思いを聞きました。 郷土料理を食べますか? 食べ物に感謝する心の薄れ 小5 私たちが献立を 作っています ◀野菜たっぷりの せんぎり汁も完食 子どもたちは素直で正直なので、 「食べづらかった」という声が上が ることもあります。そんな意見をた よりに、野菜だったら和え物よりも スープにしたり、豆はケチャップ味 にして食べやすくしたりと、どうし たら好んで食べてもらえるかを常に 考えながら献立を作成しています。 それから、弘前の学校給食は県内で も地産地消の割合が高く、ジャガイ モやみそ、ミニトマトは弘前産、も ちろんりんごも弘前産のものを使用 しています。ほかにもカレーライス はりんごピューレやワインを入れて こだわりのあるレシピで作っていま 中学校の終業日だったかな?その 日の食べ終わった空のコンテナが給 食センターに戻ってきて、その中に 「今日が最後の給食でした。今まで どうもありがとう」という内容の手 紙が入っていたことがありました。 調理師や栄養士など、作り手の存 在ってあまり知られていないと思っ ていたので、それを見た時は本当に うれしくて感動しました。 とか「将来自分の子どもにも教えた い」などと言ってくれます。 参観日に食育の授業を行うことも あります。子どもと保護者が一緒に 聞いて、見て、感じることができる 機会はとても貴重ですね。それを通 して各家庭に食育の必要性を伝えて いくこともまた私たちの重要な役割 であると感じています。例えば、小 学校低学年を対象に、1日に食べて もいいおやつの目安量なども授業で 教えたりしていますが、授業の後、 保護者から「家でもおやつの量を ちゃんと守っています」という声を 聞くと、教えたことが家庭でも生か されているんだなとうれしい気持ち になりますね。 家庭での食育につなげて ほしい 学校の家庭科の授業で郷土料理な どの調理実習を行っています。伝統 料理は、その地域の関わりの中で長 い間培われてきた貴重な財産なの で、自分たちの代で止めてしまわな いで、次の世代にも伝えていってほ しいという思いを込めて指導してい ますね。 そういう思いが伝わってか、 子どもたちは「家でも作ってみたい」 東部学校給食センター 伊藤 薫 栄養教諭 HIROSAKI 2017.3.1 5
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