1.平成19年度試験問題 解答解説

1.平成 19 年度試験問題 解答解説 1.平成 19 年度試験問題 解答解説
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平成 19 年度試験問題 解答解説
Ⅳ 次の 35 問題のうち 25 問題を選択して解答せよ。(解答欄に 1 つだけマーク
すること。)
Ⅳ− 1 土中の浸透と地下水に関する次の記述のうち、誤っているものはどれ
か。
① 飽和した多孔質媒体中の地下水の流量、速度は、ダルシーの法則に従う。
② 土中の水の流れに対しては、圧力水頭は非常に小さいので無視すること
ができ、全水頭は、速度水頭と位置水頭の和で定義される。
③ 間
水圧は、土中の間
ている場合には、間
水が有する圧力をいう。飽和土中の水が静止し
水圧は静水圧に等しい。
④ 限界動水勾配とは、上向きの浸透力によって土中の有効応力が次第に減
少してゼロになるような動水勾配をいう。
⑤ フローネット(流線網)は、土中の二次元浸透流の状態を二組の曲線群
(流線と等ポテンシャル線)で網目状に表したものである。
【解答】②
【解説】水頭は、単位重量の流体がもっているエネルギーを、その流体柱の高さ
(メートル)で表したものである。水頭には、圧力水頭、速度水頭、位置
水頭などの他に、管路の場合には管と流体の摩擦や屈曲部、出入口などで
失われるエネルギーとして各種の損失水頭がある。これらの水頭の総和は
全水頭といい特に、圧力水頭と位置水頭の和はピエゾ水頭と呼ばれている。
一方、土質力学においては、土中の水の流速は非常に小さいと考えて速
度水頭は無視し、水頭を圧力水頭と位置水頭の和で定義している。
土質力学における全水頭 h = hp + z = uw / g w + z
(h:全水頭、hp:圧力水頭、z:位置水頭、
uw:土中の任意の点における間 水圧、g w:水の単位体積重量)
②の文は「全水頭は、速度水頭と位置水頭の和で定義される」としてい
るため誤りである。
2
1.平成 19 年度試験問題 解答解説 ① 圧密とは、土が内部間
水の排出を伴いながら徐々に圧縮していく現象
をいう。
② 圧密降伏応力は、粘土が弾性的(可逆的)な圧密挙動を示す範囲から塑
性的(非可逆的)な圧密挙動を示す範囲に移行する境界の応力をいう。
③ 一次圧密は、過剰間
水圧が消散する過程を表し、二次圧密は、一次圧
密終了後の粘土骨格の粘性圧縮に起因して生じる。
④ 過圧密とは、土が過去に受けた圧密履歴を表す用語の一つであり、現在
受けている有効土被り圧の大きさが、先行圧密圧力より大きくなっている
状態をいう。
⑤ 圧密係数は、粘土の圧密速度を支配する土質定数をいい、体積圧縮係数
と透水係数により定義される。
【解答】④
【解説】圧密とは、構造物の重量や土の自重などのために、透水度の低い飽和
粘性土が脱水されるにつれて体積が圧縮される現象のことである。一方、
圧密降伏応力に対して現在受けている有効土被り圧が低い場合を「過圧密」、
等しい場合を「正規圧密」と呼んでいる。正規圧密領域では塑性変形(除
荷しても元には戻らない変形)が卓越するのに対して、過圧密領域では弾
性変形(除荷すると元に戻る変形)を示す。
④の文は「過圧密とは、現在受けている有効土被り圧の大きさが、先行
圧密圧力より大きくなっている状態」としているため誤りである。
Ⅳ− 3 飽和粘土の供試体を用いて一軸圧縮試験を行ったところ、 圧縮強さが
qu となった。この土の強度定数(内部摩擦角f u と粘着力 cu)の組合せは次の
うちどれか。
① f u = 0°、 cu = 0.5qu ② f u = 0°、 cu = qu
③ f u = 0°、 cu = 2qu ④ f u = 30°、 cu = 0.5qu
⑤ f u = 30°、 cu = qu
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平成 年度
Ⅳ− 2 土の圧密に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
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【解答】①
【解説】一軸圧縮試験は、粘性土の圧縮強さを求め、これから間接的にせん断
強さを決定するとともに、応力と変形との関係及び鋭敏比を簡単に求める
ことができる。
飽和した、乱さない正規圧密粘土の一軸圧縮試験を行うと、三軸圧縮試
験の UU 試験(非圧密非排水試験)における見かけの粘着力 cu に相当する
強度定数が得られ、cu = qu / 2(cu:粘着力、qu:一軸圧縮強度)となる。また、
飽和粘土なので内部摩擦角f u の値はゼロ(度)になる。
したがってf u = 0°、cu = 0.5qu としている①が正しい。
Ⅳ− 4 土圧、支持力、基礎および斜面安定に関する次の記述のうち、誤って
いるものはどれか。
① 擁壁などが前方に移動するときのように、土が水平方向に緩む方向で変
形していくとき、水平土圧が次第に減少して最終的に一定値に落ち着いた
状態を受働状態という。
② 地盤に一定の荷重を作用させ、破壊に至ったときの荷重強度を極限支持
力という。
③ 杭の鉛直支持力は、先端支持力と周面抵抗力からなる。
④ 斜面の安全率を具体的に求める方法には、すべり面の形状を円形と仮定
する円弧すべり解析や、任意形状のすべり面を対象とした非円形すべり面
解析がある。
⑤ 地すべり対策工は、地すべりの発生機構および規模に応じて、抑制工と
抑止工を適切に組み合わせて計画する。
【解答】①
【解説】壁体が背面の土によって押されて外側に動き出す場合に、土は水平方
向に広がる形で変形していく。このとき土の水平応力は次第に減少し、土
は崩れはじめ 1 つのすべり面に沿って滑るようになる。このような状態に
なると土圧はある最小値に達する。このような状態を主働状態という。
一方、壁体を背面の土に向かって押し込む側に移動させると、土は次第
に水平方向に圧縮されて水平応力は次第に増大し、ある移動量に達したと
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1.平成 19 年度試験問題 解答解説 この間に土圧は次第に増加していくが、土が持ち上がったときにおける土
圧は最大値となる。このような状態を受働状態と呼んでいる。
さらに擁壁などの壁体の移動がなく、静止した状態において土が壁体に
及ぼす水平方向の土圧を静止土圧という。また、主働状態、静止状態、受
働状態それぞれの土圧の大きさは、主働土圧<静止土圧<受働土圧という
関係になる。
①の文は、主働状態の説明文に対して「受働状態という」としているた
め誤りである。
Ⅳ− 5 土の間
比を e、 含水比を w(%)、 土粒子の比重を Gs、 水の単位体積
重量を g w とするとき、 土の湿潤単位体積重量を算出する式として正しいも
のを次のうちから選べ。
① Gs + w / 100
G (1 − w / 100)
G (1 + w / 100)
γ w ② s
γ w ③ s
γw
1 −e
1+e
1 −e
④ Gs (1 + w / 100)
G (w / 100 − 1)
γ w ⑤ s
γw
1+e
1+e
【解答】④
【解説】湿潤単位体積重量(湿潤密度)は、自然のままの含水量をもつ土の単
位体積重量をいう。湿潤密度は、次の式で算出される。
W
湿潤密度 ρt =
(g / cm3) (W:土の重量、V:土の全体積)
V
一方、 土の間
比を e、 含水比を w、 土粒子の比重を Gs、 水の単位体積
重量をg w とすると、
Vv
Vs ms
=
× 1
G
s
Vs γ w
e =
(Vv:間
の体積、Vs:土粒子の体積)、
(ms:土粒子の重量)、
mw
× 100
(mw:水の重量)
ms
で表される。また、湿潤土の重量は土粒子の重量と水の重量を加えたもの
w
=
5
平成 年度
きに背面の土の一部が 1 つのすべり面に沿って上の方に持ち上げられる。
1
19

であるから、
土粒子の重量 ms = Gs ×Vs × γ w
水の重量 mw =
w × m = w × G ×V × γ となるから、
s
s
s
w
100
100
湿潤土の重量 W = ms + mw = Gs ×Vs × γ w + w × Gs ×Vs × γ w
100


w
= Gs • Vs •  1 +
 • γw
100 

また、空気と水の体積は Vv = Vs • e となり、土の全体積は
V = Vs + Vv = Vs + Vs • e = Vs (1 + e) となることから、


Gs • Vs •  1 + w  • γ w
100 
W

=
=
湿潤単位体積重量 σ
t
V
Vs (1 + e)
G (1 + w / 100)
= s
γw
1+e
これより④が正しい。
重 量
Vs
水
Ws
V
W
Vw
Vv
空 気
Ww
Va
体 積
土粒子
土の構成模型図
Ⅳ− 6 次図に示すように、長さ L(mm)の梁 AB の点 C に集中荷重 3P(N)
が作用している。このとき、点 C の鉛直方向変位の大きさd (mm)として、
c
正しいものは①∼⑤のうちどれか。なお、梁 AB の断面 2 次モーメントは 2I
(mm4)、ヤング率は E(N/mm2)であり、せん断変形は無視するものとする。
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