平成29年度施政方針演述

平成29年第1回市議会定例会
施 政 方 針 演 述
陸 前 高 田 市
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本日ここに、平成29年第1回市議会定例会が開催されるにあたり、今後の市
政運営並びに平成29年度の主要施策について、所信の一端を申し上げます。
東日本大震災の発生から間もなく7年目を迎えようとしています。
震災で犠牲となられた方々にあらためて哀悼の誠を捧げるとともに、未だ行方
がわからず探し続けているご家族のご心中をお察し申し上げる次第であります。
また、今なお市内外で避難生活を続けておられる皆様に対しましても、心より
お見舞いを申し上げます。
そして、国内はもとより世界各国の皆様から、継続的なご支援をいただいてお
りますことに対しまして、陸前高田市民を代表して心から感謝の意を表すところ
であります。
陸前高田市震災復興計画の「復興展開期」3年目であった昨年は、国、県との
連携を図りながら震災復興計画に掲げた各種施策を着実に実行し、様々な復興事
業を推進することができました。
復興の最重点課題として取り組んでいる住宅の再建は、被災市街地復興土地区
画整理事業による、高田地区の高台3において、一部被災者の方々に宅地の引き
渡しを行っており、住宅再建が進んでおります。また、高台4についても、今年
度内の引き渡しを予定しております。
今泉地区においては、仮換地指定を行い、新年度には高台5、6において宅地
の引き渡しを予定しております。残る高台についても、一日も早く引き渡しがで
きるように宅地の造成工事を進めて参ります。
なりわいの再生については、昨年8月から津波復興拠点整備事業によって、か
さ上げ後の中心市街地に、商業の拠点となる大型商業施設「アバッセ」の建設が
進められています。また、新たな商業の方向性として「地域の生活とコミュニテ
ィを支える商業」
「便利であるとともに、用事がなくても行きたくなる、集まり
たくなる商業」
「陸前高田の良さを市民から来訪者まで広く発信・提供する商業」
の3つのコンセプトを掲げ、ユニバーサルデザインに配慮した店舗を各ゾーンに
コンパクトに集約・集積しながら、市街地全体の魅力と回遊性を高めていくこと
としており、引き続き、商工会をはじめ、各事業者と連携を図りながら、新たな
商店街づくりに取り組んでいくこととしております。
一方、国においては、平成29年度の復興施策として、災害公営住宅整備や高
台移転に伴う宅地造成工事等の大規模事業がピークを越えたことから、農業、水
産業及び観光業等のなりわいの復興や、被災地域への人材の流れをつくり、企
業・事業所の経営力の向上に繋げるための人材確保対策事業に強く支援を行って
いく方針が示されたところでありますが、今後も、より一層、国、県との連携を
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図りながら、「なりわいの再生」や「交流人口の拡大」に向けた各種事業に取り
組んで参りたいと考えているところであります。
新年度においては、被災市街地復興土地区画整理事業の推進に引き続き全力で
取り組むとともに、大学や企業、関係団体等と連携を強めながら、農林水産業、
商工業の新たな取り組みへの支援の拡大を図り、「市民と共にその復興を実感で
きる」「将来への希望を見出すことのできる」陸前高田市の未来を拓く年にして
参ります。
次に、平成29年度の基本施策について申し上げます。
第1に「震災復興計画の着実な推進」についてであります。
平成29年度は震災復興計画の7年目、基本計画の第2期「復興展開期」の4
年目となり、計画期間も残り2年となることから、各種復興事業の完了を見据え、
課題解決に取り組みながら、確実に事業を推進して参ります。
まず、被災した高田地区、今泉地区の市街地の復興として、土地区画整理事業
により、東日本大震災津波と同規模の津波が来襲した場合でも、浸水しない高さ
にかさ上げしたコンパクトな新市街地を形成するとともに、被災した方々の住宅
再建に向けて、高台に住宅用地を確保するため、引き続き事業を推進して参りま
す。
災害公営住宅の整備については、市内11団地のうち、すでに8団地が完成し
ており、平成29年第1四半期内には、すべての建設が完了する予定であります。
応急仮設住宅については、昨年8月に実施した「住宅再建に関する最終確認調
査」の結果を踏まえ、「撤去・集約化の基本方針」の見直しを行い、学校用地に
ついては、優先的に縮小または、撤去集約化に取り組んでいくこととしておりま
す。また、公共施設の整備については、体育館施設と室内温水プールが一体的に
整備される(仮称)総合交流センターや、まちづくりの核となる大型商業施設に
併設される市立図書館が新年度に完成する予定でありますので、市民はもとより
来訪者にも気軽に利用していただける施設を目指して参ります。
第2に「まち・ひと・しごと総合戦略事業の実践」についてであります。
総合戦略に掲げる7つの基本施策を推し進めることで、人口減尐や尐子高齢化
が抑制され、地域の産業、生活に必要なサービス、対外的な交流など、様々な分
野において維持・活性化が図られ、次世代を担う若者をはじめ、市民の誰もがい
きいきと暮らせるまちづくりに取り組んで参ります。
まず、
「
『陸前高田思民』の拡大と市民総活躍の環境づくり」として、岩手大学
と立教大学により開設される交流活動拠点「陸前高田グローバルキャンパス」が
この4月にオープンいたします。キャンパスでは、学びを通して「つなぐ」「つ
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たえる」「つくる」というコンセプトに沿った様々な事業を展開していくととも
に、
「市民と大学」「大学と大学」「日本と海外」など多様な主体がつながる事が
できる場を創出することで、交流人口の更なる拡大に努めて参ります。また、本
市に関心と愛着を持ち、何度も繰り返し訪問され、市民と交流を続けている人や、
ふるさと納税にご協力いただいた人など、本市と関わりを続ける人達がいること
から、これらの人達を対象とした「陸前高田思民」制度を創設し、募集を行って
参ります。
「ふるさと『陸前高田』住みたいまち移住・定住支援プロジェクト」として、
空き家バンクを創設いたします。市内の空き家情報を含む移住定住に関する総合
サイトの作成、移住相談者を対象としたワンストップ窓口の設置、U・I・Jタ
ーン者を対象とした「お試し居住」など、移住者の受入れから受入れ後の支援ま
で切れ目のない、移住定住の促進に取り組んで参ります。
第3に「ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくり」についてで
あります。
昨年、ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくりに係る取り組み
として、株式会社ミライロ様との包括的連携協定の締結をはじめ、ノーマライゼ
ーション大使の委嘱、推進フォーラム等を開催させていただき、徐々にではあり
ますが、市民の皆さんにご理解いただけたと感じております。
新年度においても、コミュニケーションセミナーや講演会、ユニバーサルマナ
ー検定などの取り組みを通して、市民の皆さんと共に機運を醸成させて参ります。
また、新たな中心市街地を、誰もが使いやすい、ユニバーサルデザインに配慮
したまちにするため、店舗の本設にあたっての確認事項をまとめた「ユニバーサ
ルデザインチェックリスト」を今年1月に発行し、今後の店づくりに利用してい
ただくとともに、チェック項目に適合している店舗を、ユニバーサルデザインに
配慮した店舗として認証し、市のホームページ等で広く紹介して参ります。
次に、新年度予算(案)の総括的な部分について、その概要を申し上げます。
平成29年度当初予算については、引き続き、新たな中心市街地の整備など、
復興に係る事業を最優先に進めるとともに、まち・ひと・しごと総合戦略に基づ
き、交流人口の拡大や子育て支援などに取り組んでいくこととしております。
一般会計全体では、これらの事業等の実施に必要な予算として、767億4,
800万円としており、対前年度比で11.3パーセントの増としております。
また、6つの特別会計を合わせた全会計の総額は、838億6,800万円で、
土地区画整理事業、都市計画街路整備事業の事業費の増などにより対前年度比
10.0パーセントの増となったところであります。
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次に、陸前高田市震災復興計画に掲げる6つの復興のまちづくりの基本方向に
従い、主要施策について申し上げます。
第1に、「災害に強い安全なまちづくり」に係る諸施策についてであります。
東日本大震災津波の経験から、津波防災・減災への教訓を謙虚に受け止め、再
び人命や財産が失われることのない防災施設の整備、命を守る行動をとるための
避難訓練の実施及び、防災教育の充実などハード・ソフトの両面にわたる多重防
災型のまちづくりに取り組み、更なる防災意識の向上を図っていくことが必要で
あります。
海岸保全施設については、平成24年度に工事着工された「高田地区海岸防潮
堤」は、今年1月に第1期工事が終了したところであり、残る気仙川水門につい
ても、早期の完成が待たれるところであります。
災害に強い道づくりについては、国道45号アップルロード交差点と高田地区
の高台に整備される拠点エリアを浸水区域外のルートで直接結ぶ、
(仮称)高田・
米崎間道路の整備に取り組んで参ります。
地域防災対策については、昨年の台風10号の被害を受け、国のガイドライン
が改訂され、県の地域防災計画も大幅に見直されることから、市地域防災計画に
ついても見直しを行って参ります。また、災害時に市民や来訪者が安全に避難で
きるよう、避難誘導標識の整備を進めて参ります。
災害に強い情報通信インフラの整備については、防災行政無線子局の新設や戸
別受信機の貸与を行うとともに、放送内容を携帯メールで受信できるメール配信
システムや電話で確認できる電話対応サービスの普及に取り組んで参ります。
自主防災組織については、地域防災のリーダーを対象とした防災研修会を開催
し、地域防災力の向上に努めるとともに、防災資機材の整備費に対し引き続き支
援を行い、防災備蓄倉庫の整備や備蓄品の充実を図って参ります。
消防の救援・救護体制については、消防防災センターを拠点として迅速な消防
救急体制を充実させるとともに、消防職員、消防団員の教育訓練を図りながら、
多様化する災害に対し安全第一とする消防活動に努めて参ります。また、消防防
災センターの機能を活用し、市民の防災意識の高揚のための教育・啓発活動に取
り組んで参ります。
消防団の活動拠点となる消防屯所については、順次高台に整備を進めるととも
に、消防団員の確保に努めます。
第2に、「快適で魅力のあるまちづくり」に係る諸施策についてであります。
先行して整備を進めておりました中心市街地では、土地の引き渡しが進み、大
型商業施設等の復興が進んでおり、居住環境が整いつつありますので、被災した
方々の住宅再建が促進されるものと期待されます。
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被災した住居地域については、移転元の用地取得や取得用地の管理を進めなが
ら、土地の利活用に向け、水産関係用地や共同利用漁具倉庫、交流の場としての
コミュニティ広場などの整備を図って参ります。
三陸縦貫自動車道の整備については、平成23年度に事業化された「唐桑高田
道路」において、昨年12月に宮城県との県境トンネルが貫通したところであり、
平成30年度の供用を目指し、引き続き事業が進められているところであります。
市道等の整備については、都市活動を支えるため、高台移転事業に併せた関連
道路の整備とともに、避難経路となる南北方向の幹線道路やネットワーク道路網
の整備に取り組んで参ります。
橋梁の整備については、姉歯橋及び誂石橋の復旧整備を促進するとともに、
(仮
称)今泉大橋、気仙大橋においては、一日も早い完成を目指し、鋭意工事が進め
られております。
公共交通については、かさ上げ後の中心市街地への大型商業施設オープンに合
わせ、JR大船渡線BRT「まちなか陸前高田駅」を新設するとともに、今後、
復興段階に応じた柔軟な運行の実施など、交通事業者と連携を密にしながら、市
民や来訪者にとって安全安心で、利用しやすい公共交通環境の構築を図って参り
ます。
高田松原津波復興祈念公園の整備については、平成27年度に事業化、現在は
実施設計が進められているところであり、平成32年度の完成を目指し、新年度
には工事が予定されております。
野球場、サッカー場等のスポーツ施設の整備については、津波復興祈念公園内
に復旧することとし、平成29年度には、工事に着手する予定としております。
また、新庁舎の整備については、昨年11月に新庁舎建設候補地をお示しし、
これまで、議会でのご議論や市民との懇談会等により、多くのご意見等を伺って
きたことから、今議会において、新庁舎の建設位置を決定していただき、新年度
から新庁舎整備に係る事務事業に着手したいと考えております。
第3に、「市民の暮らしが安定したまちづくり」に係る諸施策についてであり
ます。
被災した方々の自力による住宅再建を後押しするために、給水工事、道路整備
工事等の支援事業を継続するとともに、市建設業協会との協働で専門的な見地か
ら、被災者の住宅再建の相談に応じる場の提供に努めて参ります。
一般住宅については、引き続き、耐震診断、耐震改修に対する助成を行い、防
災に強いまちづくりに努めるとともに、リフォーム助成を通じて、市内経済の活
性化にも配慮して参ります。
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水道事業については、安全で安心な水道水の安定的供給を図るため、施設の更
新や適切な管理運営に努めるとともに、地域が共同で行う給水設備等の整備に対
し、支援を行って参ります。
簡易水道については、平成26年度から着手している横田地区の拡張工事を継
続して参ります。
下水道事業については、土地区画整理事業等と調整を図りながら、整備を進め
ることとしており、新年度には北幹線の道路整備に併せて、汚水管渠の整備を進
めて参ります。また、被災者の下水道への接続に対する住宅再建等排水設備設置
工事支援金を継続して参ります。
浄化槽設置事業については、各世帯の浄化槽設置に対する補助事業に、市独自
の嵩上げ補助を継続して参ります。
子育て支援については、被災した今泉保育所を安心・安全な保育環境が確保で
きる高台へ移転し、在宅で子育てを行っている保護者が子育てについての相談が
できる支援センターや放課後児童クラブを併設した施設として整備を進めて参
ります。また、子どもの出生時、小中学校就学時に、保護者に対し新生児用品や
学用品が購入できるクーポン券を配布することにより、子育て世帯の経済的負担
の軽減を図って参ります。
ひとり親等の生活支援として、ひとり親支援員を配置し、生活や就労等の相談
支援強化を図るとともに、貧困による教育的格差等の是正に向け、子どもの貧困
に係る実態調査を実施し、状況の把握に努めて参ります。
県立高田病院については、新年度内の開院を目指して新築工事が進められてお
り、内科、皮膚科等の常勤医師の配置など診療体制の充実を県に対して働き掛け
て参ります。併せて保健福祉総合センターについては、平成30年度内の開設を
目指しており、県立高田病院と連携した医療・介護・福祉の拠点として機能する
よう努めて参ります。
広田診療所については、本年6月の完成を目指し工事を進めておりますが、常
勤医師の確保とともに診療所機能の充実に努めて参ります。また、二又診療所は、
医療・介護連携の拠点として地域の信頼が高まっており、手狭となっている駐車
場の確保など環境整備を図って参ります。
医療費助成については、今年度に引き続き、扶助対象を中学生まで拡大し、子
育て支援を継続するとともに、未就学児童及び妊産婦を対象とする現物給付を実
施して参ります。また、国民健康保険税については、震災による被災者の負担へ
の緩和措置として引き続き、低所得世帯に対し減免を継続して参ります。
健康支援については、地域包括ケアアドバイザーの設置や、健康相談員による
仮設住宅、災害公営住宅等の家庭訪問や健康相談を実施し、精神的な不安解消を
図りながら、健康保持に努めて参ります。また、仮設住宅からの移転時期を迎え
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た方々に対し、新しい環境への適応を支援するため、見守りや地域との交流事業
を実施するとともに、サロンの開設により、日常感じている不安などの様々な相
談を適正な支援につなげ、安心して暮らせる環境づくりに努めて参ります。
母子保健については、切れ目のない妊産婦・乳幼児への保健対策として定期的
な健診及び各種教室などの充実を図り、妊娠、出産、育児まで、安心して子ども
が産める環境づくりに努めて参ります。また、乳幼児歯科健診では、保護者への
口腔衛生の周知啓発や希望者へのフッ素塗布を実施するなど、3歳6か月児にお
ける県内う歯保有率ワースト1からの脱却に向けて取り組んで参ります。
生活支援を必要とする高齢者や障がいのある方に対し、配食サービスや外出支
援事業、軽度生活援助事業等の生活支援サービスの提供や地域、関係機関等の協
力をいただきながら高齢者等の見守り体制を強化して参ります。また、移動困難
者の社会参加や通院等を支援し、生活の向上を図るために、タクシー料金の一部
を助成する「ふるさとタクシー助成事業」を実施して参ります。
地域包括ケアシステムについては、地域の創意工夫のもと地域の将来を見据え
たまちづくりの一環として位置づけることが必要なことから、医療、介護、予防、
福祉関係者等と地域住民が地域の実態や課題、地域資源等を共有するために取り
組み始めた「地域ケア会議」を広げて参ります。
高齢者の増加に伴い、認知症を患う方が増加する恐れがあることから、認知症
初期集中支援チームにより、家族を含めた初期支援を包括的かつ集中的に行い、
かかりつけ医等と連携したサポート体制を構築するとともに、認知症を正しく理
解し、認知症の方やその家族の良き理解者となる住民を増やす取り組みを進めて
参ります。
障がい福祉ニーズの把握と福祉サービスの向上については、障がい者を中心と
したワーキンググループなどによりニーズを把握し、自立支援給付など適切なサ
ービスの提供に努めて参ります。
被災した方々に対する支援については、住宅再建に係る各種補助金の交付によ
り経済的な負担の軽減を図るとともに、説明会の開催や分かりやすい情報提供に
努めて参ります。また、お茶会や料理教室等の交流事業の開催、住宅再建の見通
しが立てられるよう、相談会を開催しながらサポートを継続して参ります。
第4に、「活力あふれるまちづくり」に係る諸施策についてであります。
地域ブランド米「たかたのゆめ」については、品質、食味、安全のブランドイ
メージと安定供給体制の確立を目指して、市場評価の向上と栽培体系の構築に向
けた取り組みを一層推進して参ります。また、「北限のゆず」や農産物のブラン
ド化、6次産業化への取組みを進めることで、農業を通した活力ある地域づくり
を進めて参ります。また、果樹のまち陸前高田のイメージを定着させるために、
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被災農地等の有効活用を図りながら、産地化に向けて担い手の掘り起しや、移住
定住の支援に取り組んで参ります。
重点道の駅内に整備を予定している「高田松原地域資源活用総合交流促進施
設」については、国、県と連携を図りながら、整備を進めて参ります。
農産物の生産性の向上については、意欲ある経営体に対し、施設整備や機械導
入等の支援を積極的に行い、持続可能な農業基盤を構築して参ります。
鳥獣被害防止対策につきましては、電気柵の設置エリアを拡大するとともに、
鳥獣被害対策実施隊による捕獲活動を充実させ、被害防止に向けた取り組みを強
化して参ります。
林業振興については、良質の用材の生産や地域木材の有効利用を推進するとと
もに原木しいたけ生産者への環境整備と資材導入等の支援により、生産体制の整
備を進めて参ります。
林業の担い手対策については、地域おこし協力隊を募集し、新規参入を促す事
業モデルの構築を図ります。また、定住促進につなげるため、農業と林業が持つ
複合的な地域資源を活用した仕事づくりにチャレンジできる環境整備を行って
参ります。
気仙スギをはじめとする地元木材の利用促進については、これまで住宅再建に
限っていた支援対象を、新たに店舗整備に対しても支援の対象として拡大すると
ともに、供給体制の強化に向けた取り組みを支援して参ります。
松くい虫被害対策については、被害木の効率的な駆除作業を進めるとともに、
樹幹注入等の防除作業により、重要な松林の保全を推進して参ります。
漁港の整備については、新たに県管理漁港並びに只出漁港において、防波堤、
船揚場及び臨港道路等の施設整備を進めて参ります。
養殖漁業の振興については、安定した生産活動の拡充と、安心・安全な水産物
の出荷体制の確立を図るため、特定養殖共済への加入促進と生食用カキ等の出荷
に伴う自主検査費用への支援を引き続き行って参ります。
種苗から生産、出荷までの養殖技術が確立されている「エゾイシカゲ貝」につ
いては、陸前高田オンリーワンブランドとして「陸前高田・広田湾」の産地名称
を国内外に広くPRするとともに、年間水揚げ量100トンを達成するため生産
体制の強化を進めて参ります。
漁業の担い手育成確保対策については、小中学生及び高田高校海洋システム科
の生徒を対象として、漁業の魅力を伝える体験学習の開催に取り組んでいくとと
もに、「がんばる海の担い手支援事業」の継続により、新規参入者及び担い手の
育成確保に努めて参ります。
商工業の再建については、高田地区、今泉地区の土地区画整理事業による新た
な市街地への商店街整備について、商店や事業所の早期再建が図られるよう、県
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によるグループ補助金のほか、復旧事業費補助金や被災事業者復興支援事業費補
助金を継続するとともに、ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづく
りへ向けた、店舗等ユニバーサルデザイン推進事業などを継続し、商店街再生に
向けた取り組みを進めます。また、商工業者の再建支援と経営改善・相談指導を
行うとともに、経済振興を図るため、商工会活動の拠点となる商工会館整備への
支援を行って参ります。
さらに、創業希望者の発掘、育成支援として、中心市街地でのチャレンジショ
ップとしての活用やNPO法人等の連携・活動拠点となる施設の整備を進めて参
ります。
産業の活性化については、大型商業施設が建設され、中心市街地への出店も始
まる中で、安定的な雇用が確保されるよう、ふるさとハローワークや関係団体と
連携しながら、雇用対策に取り組んで参ります。
物産振興については、産業まつりの開催やプレミアム商品券事業の推進、市外
への販路拡大の取り組みを支援するとともに、ご当地グルメ「陸前高田ホタテと
ワカメの炙りしゃぶしゃぶ御膳」の更なる知名度の向上に努め、地場産品の消費
拡大を図って参ります。
観光の振興については、被災地見学等を含めた防災教育や農林水産体験プログ
ラムを通した教育旅行、企業研修の誘致に取り組んで参ります。また、ラグビー
ワールドカップ2019、2020東京オリンピック・パラリンピックや三陸沿
岸道の全線開通を見据え、外国人を含めた旅行者の受入体制強化を進めて参りま
す。
名古屋市や川崎フロンターレをはじめ、本市を支援していただいている個別自
治体や各種団体、企業との様々な交流を通じた交流人口の拡大を図るとともに、
シンガポールやアメリカ合衆国、特にも高田高校と交流のあるクレセントシティ
市との更なる友好関係を構築して参ります。
復興のシンボルとなっている「奇跡の一本松」については、引き続き、来訪者
の安全性及び利便性の向上に努めます。また、
(仮称)一本松記念館については、
市立博物館との一体的な施設整備を図り、市民と来訪者との交流を通じ、中心市
街地をはじめ本市全体の交流人口の拡大や賑わいの創出の中心的な役割を担う
施設として、整備に向けた検討を進めて参ります。
ふるさと納税については、前年度を上回る寄附金額を頂戴しているところであ
ります。陸前高田市の復興を応援して下さる方々や、本市の農林水産物をはじめ、
果樹、加工品などの認知度が向上し、ファンが広がっていることから、新年度も
高齢者や障がいのある方々の就労支援を通じた生きがいづくりと、新たな特産品
の開発等に取り組みながら、広く情報を発信して参ります。
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第5に、「環境にやさしいまちづくり」に係る諸施策についてであります。
太陽光発電や木質バイオマスなど再生可能エネルギーを利用した環境にやさ
しいまちづくりを推進するため、一般家庭への導入支援制度を充実させるととも
に、災害時に自給できるエネルギー源の確保と市民意識の醸成を図って参ります。
また、限りある資源を有効に活用した循環型社会の形成を促進するため、使用
済小型家電の回収、リサイクルを実施し、貴重な資源の再利用に取り組みながら、
ごみの減量化を推進して参ります。
公共施設については、
(仮称)総合交流センターや小友地区コミュニティセン
ターに太陽光発電及び蓄電設備を設置し、災害時においても一定のエネルギーを
自給できる体制を整備して参ります。
第6に、「協働で築くまちづくり」に係る諸施策についてであります。
コミュニティ施設等の整備については、小友町柳沢地内において再建を進めて
いる小友地区コミュニティセンターの建設工事に着手し、新年度内の完成を目指
して参ります。また、既存のコミュニティセンターについては、必要に応じて施
設の改修、補修等を行いながら利便性の向上を図るとともに、ふるさと納税寄附
金を活用してAEDを設置し、利用者の安全確保に努めて参ります。
各地区の自治会館については、引き続き、流失した施設に対する新築再建、防
災や避難所に対応した増改築等に対する支援を行うとともに、世帯数が大幅に増
加した地域の施設整備につきましても支援を行って参ります。
次に、今後の行財政運営について申し上げます。
市税の状況については、震災前の9割程度まで回復しているものの、基幹税目
である固定資産税については、減免措置などにより震災前の状況には至っていな
いことから、納税貯蓄組合の活動支援やコンビニ収納など市民の利便性を図るな
ど、県内でもトップクラスの収納率を維持しながら、税収の確保に努めて参りま
す。
市職員については、震災からの復興を一日も早く成し遂げるために、職員一人
ひとりが常に市民の目線に立ち、使命感と意欲を持って効率的で質の高い行政サ
ービスを目指し、情報の共有化とスピード感を持って業務に取り組んで参ります。
さらに、復興事業の推進にあたっては、引き続き、県内更には全国の自治体から
のご支援による職員派遣を受けながら、職員の適正配置に努めて参ります。また、
復興業務の増加や生活環境の変化等により、本市職員・派遣職員とも、精神的な
負担が大きいことから、組織的なメンタルヘルス対策や長時間労働対策にも取り
組んで参ります。
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最後になりますが、震災復興計画も残すところ2年となり、復興後の新しいま
ちの姿が見え始めて参ります。しかし、それで陸前高田市が復興を果たしたかと
言えば、私はそうではないと思っております。
やはり、この地に新たな魅力と、新しい産業をつくり、我々の手で発展させて
いくことではじめて、陸前高田市が持続可能なまちとして未来永劫存続すること
ができると信じています。
新年度においては、震災復興計画を受け継ぎ、本市の進むべき方向性を示す新
しい総合計画の策定に着手しますが、計画づくりはもとより、今後も、子どもか
ら高齢者まで市民みんなが活躍し、生き生きと笑顔で過ごせるノーマライゼーシ
ョンという言葉のいらないまちを実現するため、皆様とともに全力を挙げて取り
組んで参ります。
以上、市政運営の基本方針と新年度の主要施策の概要について申し上げました。
議員各位と市民の皆様のご理解とご協力を心からお願い申し上げまして、所信
といたします。
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