相談支援の現場から見た家族の支援~相談支援センター

「相談支援の現場から見た家族の支援~相談支援センターわんぱくの事例を通して~」
特定非営利活動法人わんぱくクラブ育成会
相談支援センターわんぱく
相談支援専門員
野末
由紀子
はじめに~わんぱくクラブ育成会の概要について
1986 年世田谷幼稚園学童クラブ OB 会「わんぱくクラブ」を結成。翌年より父母が共同で場所を借りて 6
年生までの共同保育の学童クラブとして活動を開始しました。現在に至るまで父母がわんぱくクラブの運営を
担っています。1990 年、運営が大変な中必要の高い障害児が増え、障害児の通所施設を目指し始めました。
同時に現在の成人日中ショートステイの「成人グループひかり」の前身である青年学級の活動を始めました。
2000 年に NPO 法人になり、現在の放課後等デイサービスの前身である「わんぱくクラブ三軒茶屋」
「わん
ぱくクラブ駒沢」を開設(昨年度「わんぱくクラブ三宿」を開設し現在は 3 か所で放課後等デイサービスを
行っています。
)
。2006 年にはわんぱくクラブ駒沢内に就学前の子ども達を対象とした「児童デイサービスわ
んぱく」を開所。その後代田に引っ越し、現在は「幼児グループわんぱく」となっています。現在のわんぱく
クラブ育成会では居宅介護、移動支援、相談支援、短期入所など 6 種類の事業を 8 か所で、幼児グループの
1 歳児からひかりの 40 代までが利用しています。
幼児グループわんぱくについて
幼児グループわんぱくは開設してちょうど 10 年になります。閑静な住宅街の一軒家で、10 時から 14 時
半まで毎日 10 名前後の子ども達が通所しています。世田谷区に就学前児童の療育施設が少なかったことから、
先輩職員や私にとってわんぱくでの就学前療育施設の開所は長い間の目標でした。
幼児グループわんぱくでは、療育の必要な子どもたちにとって大切なのは「豊かな生活の場」をつくること
だと考えています。どんな些細な事でも自分の力でやる達成感、同年代の子ども達と遊びや生活を共にする楽
しさ、家族ではない大人にかわいがられる心地よさ、思いっきり体を動かして遊ぶ解放感などなどをたっぷり
経験できるようにしています。そういう生活の中で子どもが育っていく様子を保護者と療育者が一緒になって
喜んだり、悩んだりすることが、保護者支援につながっていくと考えています。その中で必要な支援を、遊び
の場面で取り入れることができるようにしています。
はじめに
私は約 10 年間児童発達支援事業所、幼児グループわんぱくで、1 歳児から5歳児までの子どもたちや保護
者と過ごしました。昨年度より相談支援専門員として主に幼児グループの利用者と、小学校低学年の相談支援
を行っています。
長い間療育者として子ども、保護者と関わってきましたので、相談支援専門員に対してもその延長線くらい
にしか考えていませんでした。しかし、実際療育者としてではなく、相談支援専門員となると保護者は、ご家
庭の話、ご自身の話、これまでの経緯など、これまでは知らなかった話をたくさん話してくださいました。中
にはどうしてもっと早く話してくれなかったの?もっと前に知っていたら対策があったのに・・・と思うよう
なケースも少なくありませんでした。私が療育者だったときには、保護者支援といいながらも、やはり子ども
を支援するという視点に重点を置いていたのだと思います。相談支援専門員となり、保護者支援をはっきり意
識するようになってからは、見えてくる景色が変わりました。
今回このような機会をいただきましたので、相談支援専門員となって見えてきた保護者支援についてお話し
したいと思います。
とにかく「聞く」そして「整理」する
・私が聞きたいことしか聞かなかったために、保護者に必要な援助ができなかった失敗。
・こちらが聞きたいことではなく、相手が話したいことをたっぷり話してもらえるように。
・保護者が持っている情報や気持ちを整理する。
・これまでの道のりを認める。
・子どものよいところ、強みを見つける。
「がんばって!」ではなく「一緒に育てましょう」という立場で
・保護者は色々な形で頑張っていることを忘れない。
・保護者に子どもの受容をせかさない。
・細かいことに気を配る。
・うれしいときは一緒に喜ぶ。困ったときは一緒に悩む。
・毎日のささいな出来事の積み重ねが障がい受容につながる。
「今」でなくても「いつか」声をかけてもらえるように
・自分の持っている物差しで保護者を測ってしまった大失敗。
・関係をつくるのには時間が必要。
・その時の保護者の心情を受け止める。
保護者の考えや経験を受け入れる
・保護者の要求の「出所」を探る。保護者の心配の原因は意外なところにある場合も。
・それまでに培ってきた考え方を尊重する。
ネットワークをつくる
・相談者が一人で抱え込まない。
・保護者が自然に話せる環境をつくる。
・相談者がネットワークを広げる努力をする。
・ちょっとしたつながりを大切にする。
発達を見る力をつける
・子どもの代弁者になれるように。
・保護者はよく子どもを見ている。家庭の様子に支援のヒントがあることも。
・子どもの状態をきちんとわからなければ、信用してもらえない。
・よく指導員と話をする。
・勉強会に参加する、本を読む、資格を取るなど、勉強をおこたらない。
おわりに
幼児グループわんぱくで働いているときに一番感じたのは、現代の社会って子育てするの大変だなというこ
とでした。子どもはこう育てなければならない、これがよい子ども、のような情報が沢山出回っていて、保護
者はそれらの情報に振り回されてしまっている様子をよく見ました。そして保護者は、異年齢の人たちとのつ
ながりをもつきっかけが少ないので、ちょっとしたことでもネットで調べ、些細な事でも大変なことだと感じ
てしまうことも多いです。おばちゃんのお節介、おばちゃんのちょっとした知恵、つながりみたいなのが、手
に入りにくい時代です。では、若いお母さんたちがそういうアナログな子育てを拒否しているかというと、そ
うでもないと感じています。わんぱくはアナログの典型のような事業所ですが、「親戚のおばちゃんちに通っ
てるみたいで楽しい」と言ってくださる保護者が沢山いました。実はそれこそがうちの強みだと思っています。
昔には戻れないかもしれませんが、相談支援を通して、ちょっとお節介を集めた支援体制をつくりたいな、と
思っています。
今日はご静聴ありがとうございました。