中国:石油・天然ガス関連13次五か年 計画の概要と当面の需給、対外投資の 展望 2017年2月23日 調査部 竹原 美佳 1 エネルギー産業の13次五か年計画 エネルギー13次五か年計画 発表時期:2016年12月~2017年1月 エネルギー全体の政策および個別の13次 五か年計画(2016~20年、以下「13・5計画」) 構成: ・12次五か年計画(2011~15年、以下「12・5計画」) の実績(成果と課題) ・「13・5計画」の主要目標 ・ 「13・5計画」の主要任務 高効率、スマートシステム 省エネ、低炭素、エネルギー消費革命 エネルギーサプライサイドの革命 エネルギー技術革命 エネルギーの公平なアクセス エネルギー国際協力 国民のエネルギーサービス享受 煤炭工业 发展“十 三五”规 划 电力发展 “十三五” 规划 能源发展“ 十三五”规 划 石油发展 “十三五” 规划 可再生能 源发展 “十三五” 规划 天然气发 展“十三 五”规划 天然ガスは別途CBM (CMM)、シェールの 13次五か年計画あり エネルギー「13・5」計画に基づき作成 2 エネルギー「13・5計画」の主要目標 エネルギー発展13次五か年計画における 1次エネルギー消費構成目標 40 35 石油換算 億トン(toe) 年率2.5%程度 35億toe以下 非化石 15% 天然ガス 8.3~ 10% 石油 17~ 18.7% 石炭 58% 30 非化石 12% 天然ガス 6% 石油 18% 石炭 64% 25 20 15 10 5 エネルギー「13・5計画」の主要目標 消費抑制:35億toe*以内 安全保障:自給率80%以上を維持 安定供給(生産):約28億toe 低炭素化:1次エネルギー消費比率を石 炭58%以下、非化石15%以上(拘束性**)、 天然ガス8.3~10%(予測性**)、石炭の発電 向け消費55%以上(予測性) 効率向上:GDP単位あたりエネルギー消 費を15年比15%削減、発電端石炭消費 310g/kWh以下、送電ロス6.5%以内 0 消費構成 (15年実績) 石炭 石油 消費構成 (20年目標) 天然ガス 非化石 エネルギー「13・5計画」、天然ガス「13・5計画」に基づき 作成(天然ガスの変動は石油で調整) 石油と天然ガスの消費は石炭と非化石エネ ルギーにより、天然ガスの需要は石炭や石 油からの転換次第で決まる 低炭素:GDP単位あたりCO2排出を2015 年比18%削減 サービス:エネルギー公共サービスの向上 *toe:石油換算トン **拘束性指標:必達目標 **予測性指標:必達ではなく政策の実施により到達する と思われる指標 3 発電設備の低炭素化は進むが発電の太宗は依然 石炭火力か 電力「13・5計画」における発電設備構成目標 20 +4.7億kW 億kW 非化石 39% うち水力 19% 原子力 3% 18 16 非化石 35% うち水力 21% 原子力 2% 14 12 10 8 6 2 6.0 非化石 26% うち水 力19% 5.0 発電設備容量 (20年目標) 億kW 石炭火力 ガス火力 石油火力 その他火力 水力(揚水含む) 風力 太陽光/熱 原子力 その他非化石 電源別 目標なし 火力 74% うち ガス 2.9% 3.0 2.0 1.0 0 発電設備容量 (15年実績) 億kW 7.0 6.8~7.2兆kWh 年率5.5% 4.0 化石61% うち石炭 55% ガス6% 化石65% うち石炭 59% ガス5% 4 電力「13・5計画」における発電電力量目標 0.0 発電電力量 (15年実績) 兆kWh 火力 発電電力量 (20年目標) 兆kWh 非化石 電力「13・5計画」に基づき作成、 15年実績は中国電力企業連合会 発電設備容量増強の6割強を非化石エネルギーと天然ガス火力が占める計画だが、 電源別発電設備目標は予測性、発電電力量は電源別の目標設定なし 4 石油「13・5計画」の主要目標 石油「13・5計画」の主要目標 国内探鉱開発、供給安定:主要産地の探鉱強化、原油生産4百万b/d維持 原油・石油製品パイプライン:中露原油(2期)他原油パイプライン新増設5,000km 国家石油備蓄構築加速:2期・3期の着工、国家製品備蓄を含む法整備 石油からの燃料転換(ガス・電化):工業用重油ボイラーの天然ガス・電化、天然ガス自動車、 船舶燃料(バンカリング)、電気自動車など公共輸送部門の燃料転換 技術開発、装備の国産化:深海、深層、非在来型油ガス開発技術、石油工程設備の国産化 2010年 (実績) 累計確認原始埋蔵量(in-place)10億bbl 原油生産量 100万b/d 石油見かけ消費量 百万b/d 原油純輸入量 百万b/d 輸入比率 *1 万km 原油パイプライン距離 原油パイプライン輸送能力 百万b/d 石油製品パイプライン距離 万km 石油製品パイプライン輸送能力 百万b/d 228 4.1 8.8 4.9 55% 2.2 3.6 1.8 2.9 2015年 (実績) 271 4.3 11.2 6.6 59% 2.7 4.2 2.1 4.3 2020年 (目標) 307 4.0< 12.0 7.8 65% 3.2 6.6 3.3 6.1 年平均成 年平均成 長率 長率 11→15年 16→20年 3.5% 2.5% 1.1% 4.8% 1.5% 6.9% 3.2% 4.2% 6.3% 3.1% 8.5% 3.5% 4.2% 9.5% 3.5% 石油「13・5計画」に基づき作成 供給安定、輸送・貯蔵インフラ整備、燃料転換、技術開発・装備の国産化 5 低油価による投資縮小で原油生産は減少 500 大慶(Daqing) 勝利(Shengli) 遼河(Liaohe) 西部 その他陸上 CNOOC他 万b/d 400 300 200 100 0 原油生産の約8割は陸上 大慶等東部油田:5割、西部陸上:3割 中国主要地域別原油生産推移、新華社China OGPに基づき作成 SINOPEC CEOは2016年3月に勝利油田について50ドル/ bblでも一部坑井は赤字であり、経済性の低い油井の操業 を停止し5%程度減産を行う計画を表明(実績は約10%以上 の減産)CNPCも大慶油田も同様の対応 2016年の国内原油生産量は前年比7%減(約30万b/d減、2010年以降初めて 400万b/dを下回る) 生産減少は主に東部成熟油田(経済性の低い油井の操 業を停止する計画的な減産を実施) 6 成熟油田減退抑制、西部油田増産による生産 維持は容易ではない 東部 西部 海洋 0.0 百万b/d 0.5 1.0 2015年 1.5 2.0 2.5 2020年 「13・5」計画における生産400万b/d維 持の地域別目標 石油「13・5計画」に基づき作成 東部:松遼盆地、渤海湾盆地(陸上)の大慶・勝利・遼河油 田等 西部:新疆ジュンガル・タリム、オルドス盆地長慶油田等 海洋:海洋油田(渤海、南シナ海等) 長慶油田生産・開発井掘削推移(2012~2015年) 10,000 55 8,000 50 6,000 45 4,000 40 2,000 35 0 国内新規坑井掘削は 15年に前年比25%減 開発・増産を進めて いた西部長慶油田の 掘削も同18%減 30 2012年 2013年 開発井掘削数(左軸) 2014年 2015年 生産量(右軸、万b/d) 長慶油田生産、開発井掘削推移 「産油国政府と国有石油会社の低 油価への対応- 中国の事例分析-」石 油・天然ガスレビュー2017年1月 陸上は東部大慶、勝利等成熟油田の生産減退ペースを抑制し、西部長慶油田等の増産 を図る(海洋は渤海、南シナ海等の生産維持と深海探鉱加速)ことで生産維持を図る計 画。←国有石油企業は15年以降生産維持、増産のための投資を抑制、投資が 上向いても生産に結びつくには数年を要すると思われる。 7 参考:中国国有石油会社純利益、探鉱 開発投資額推移 国有石油企業3社の上流投資は14年から16年にかけて4割減少 8 参考:CNOOC Ltd.2017年ビジネス戦略 投資額増加の一方、生産目標は引き下げ CNOOC Ltd 2017 strategy Preview ・2017年の投資額:6~7百億元(87~102億ドル) ←16年から引き あげ、15年水準へ ・2017年の生産目標:450~460mmboe(1.23~1.26MMboed) ←16年比3~5%減、2016年は4%減の495MMboed 9 政府の見通し通り原油輸入の伸びは鈍化? 2010年 (実績) 原油生産量 100万b/d 石油見かけ消費量 百万b/d 原油純輸入量 百万b/d 2015年 (実績) 4.1 8.8 4.9 4.3 11.2 6.6 年平均成 年平均成 長率 長率 11→15年 16→20年 4.0< 1.1% 12.0 4.8% 1.5% 7.8 6.9% 3.2% 2020年 (目標) 石油「13・5計画」に基づき作成 9.0 8.0 百万b/d 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 政府計画 輸入実績 石油「13・5計画」では原油純輸入 量は20年までに17%増(年平均 3.21%増)16年の原油輸入実績は 前年比13%増←政府19年見通し相当 CNPC経済技術研究院(ETRI)は17 年の同国石油製品生産量を前年 比4.3%増、ガソリン、軽油、ジェット 燃料の需要の伸びを同2%増(約 20万b/d増)と予測 原油純輸入政府見通しと輸入実績(17年はCNPC-ETRI予測) 政府計画は石油「13・5計画」、輸入実績は海関統計に基づき作成 17年輸入見通しはChina OGP(CNPC・ETRI予測)等に基づき試算 石油需要の伸びは鈍化するが一定の伸びが見込まれる。原油輸入の増加 は政府見通しを上回るのではないか。 10 輸入原油は今後どこから調達? UAE 3% その他 17% 中国の主要国からの原油輸入(2015・16年) ロシア 14% 0 20 40 60 80 100 120 140 サウジアラビア ロシア 13% サウジアラビア アンゴラ イラク アンゴラ オマーン 12% イラン ベネズエラ イラン 8% オマーン イラク 5% ベネズエラ 9% 10% ブラジル クウェート UAE サウジアラビア アンゴラ イラク オマーン イラン その他 クウェート 4% ブラジル 5% ロシア ベネズエラ ブラジル クウェート UAE その他 2015年 2016年 国別原油輸入比率(2016年) China OGPに基づき作成 中露原油パイプラインと国有石油企業の長期売買契約に加え2016年は地方製 油所(ティーポット)の調達増でロシアが輸入相手国首位に(16年がピークか?)。 中東からの輸入総量は増加しているが、ロシアや中南米など他地域の輸入増加 で相対的にシェアが低下。基本的には中東からの調達が増加すると思われるが 17年はOPEC減産合意によりシェアが低下する可能性。中南米からの調達はブラ ジルとの“Loan for Oil”追加等で若干増加の可能性。 11 参考:ロシアからの原油調達 120 万b/d 100 80 60 40 “Loan for Oil”(中国からロシアへの融資協定とロシア 20 0 から中国への長期原油輸出協定) 2009年合意時スキーム 2013 2015 2017 2019 2021 2023 2025 2027 2029 2031 2033 2035 2037 ESPO(CNPC) ESPO(SINOPEC) カザフスタン(CNPC) 輸入実績(ロシア) Rosneftと国有石油会社の原油売買契約とロシアから の輸入実績 新華社China OGP他に基づき作成 Rosneftとの原油売買契約(CNPC・SINOPEC) 2社計50万b/d Rosneftとのカザフスタン経由輸出契約(CNPC) 20万b/d 契約量計70万b/d 東シベリア太平洋(ESPO)原油パイプライン 大慶支線1期:11年11月稼働(30万b/d) 大慶支線2期:建設中、18年1月稼働予定 (全長941km、輸送能力30万b/d) 輸送能力計60万b/d 12 参考:ブラジルからの原油調達 50 万b/d 40 30 20 10 0 Sinopec CNPC・SINOPEC・Zhenhua 輸入実績 Petrobrasと国有石油会社の原油売買契約とブラジル からの輸入実績(3社輸入開始時期未詳、2017年以 降と仮定) 新華社China OGP他に基づき作成 “Loan for Oil”(中国からブラジルへの融資協定とブラ ジルから中国への長期原油輸出協定) 2009年合意時スキーム Petrobrasとの原油売買契約 (SINOPEC、09年) 09年:15万b/d 10~19年:20万b/d Petrobrasとの原油売買契約(CNPC、 Sinopec、Zhenhua2016年12月) 10年間10万b/d(開始時期不明) 13 石油需要に影響をもたらす要因 経済成長 構造改革vs景気対策 高い成長目標(2020年まで平均6.5%) “2017年は中国共産党人事の年” 企業債務と金融リスク 地方製油所(ティーポット)の動向と過剰能力 精製過剰能力、石油製品輸出増加 ティーポットの取り締まり・輸入枠削減 小型車(1,600cc以下)取得税減税延長 減税幅半減5%→7.5% 国家石油備蓄構築による備蓄積み増し 法整備、基地建設、国家石油製品備蓄他 石油からの燃料転換 重油ボイラー、公共交通機関の天然ガス・電化 14 参考:セクター別GDP成長率推移 セクター別GDP貢献率(2006~2015年、%) 16.0% 14.0% 14.2% 12.7% 12.0% 10.0% 5.8% 6.7% 8.0% 9.6% 4.5% 6.0% 4.0% 6.3% 7.1% 2.0% 10.6% 9.2% 4.2% 4.1% 4.7% 4.8% 2008 2009 6.1% 9.5% 7.7% 7.7% 7.3% 6.9% 6.7% 3.5% 3.7% 3.5% 3.7% 3.5% 3.8% 3.7% 3.4% 2.8% 2.7% 2012 2013 2014 2015 2016 4.2% 4.9% 0.0% 2006 2007 一次産業 2010 2011 二次産業 三次産業 GDP 国家統計局に基づき作成 16年GDP:6.7%増、三次産業52% 15 参考:中国の石油需給推移 中国の石油需給推移(13年1月~16年12月、万トン/月) 原油生産 原油純輸入 石油製品純輸出入 2社精製処理量 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 -200 1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 7月 9月 11月 新華社、海関統計に基づき作成 精製処理能力増強(能力過剰)、地方製油所(ティーポット)の原油輸入・ 稼働率増加、余剰石油製品の輸出増加(主に国有石油企業) 16 参考:自動車販売 自動車種別販売比率(2016年) SUV 37% 350 軽バン (交叉 型) 3% 300 250 200 乗用車 50% MPV(多 目的 車) 10% 乗用車 MPV(多目的車) 自動車販売台数増減(2012~2016年、万台) 150 100 50 0 -50 -100 2012年 SUV 軽バン(交叉型) 中国汽車工業協会に基づき作成 16年販売台数は前年比15%増 の約2,440万台 乗用車 2013年 2014年 MPV(多目的車) SUV 2015年 2016年 軽バン(交叉型) 16年は引き続きSUVの販売が好調 17 天然ガス「13・5計画」の主要目標 天然ガス「13・5計画」の主要 目標 累計確認埋蔵量*1 天然ガス生産量*2 うち在来型 うちタイトサンドガス うちシェールガス うちCBM生産(利用量) うちCMM抽出(利用量) 天然ガス輸入量 天然ガス見かけ消費量 天然ガスの1次エネルギーに占 める比率 ガス利用人口 都市人口天然ガス化率 天然ガスパイプライン距離 天然ガスパイプライン1次輸送 能力 LNG受入能力 地下貯蔵ワーキングガス量 TCM BCM/y BCM/y BCM/y % 2010年 2015年 2020年 (実績) (実績) (目標) 321 459 565 95 135 210 120 37 5 30 4(4) 10(9) 14(5) 14(7) 17 61 108 193 4 6 8.3~10 億人 % 万km 4 3 43 6 4.7 57 10 BCM 96 280 400 1,610 2 4,380 6 15 万t/年 BCM 天然ガス「13・5計画」に基づき作成 *1:2020年目標は在来型、*2:2020年生産量は計画で示されたまま(内訳の 合計とは合わない) 国内探鉱開発、供給増加:海洋 と陸上、在来と非在来ガスを共 に開発。 ・四大生産基地(西部タリム、 オルドス(長慶)、四川、海洋) ・非在来ガス(シェールガス、 CBM等) 天然ガスパイプライン網構築(中 央アジアD、中露東ルート等新 増設4万km) ガス貯蔵、ピーク調整設備建設 (地下貯蔵ワーキングガス9BCM 増強←拘束性、LNG受入基地能 力増強目標なし、既存基地拡張 優先、新設は適宜 市場化、高効率利用(石炭から の燃料転換、交通輸送分野(自 動車、船舶等、ガス発電設備1.1 億kW、発電設備の5%超) 18 天然ガスは石炭、石油からの燃料転換政策に よる増産 四川(Sichuan) 140 120 タリム(Talimu) 長慶(Changqing) CNOOC その他 BCM 100 80 60 40 20 0 天然ガス生産の8割は陸上 四大生産基地(西部タリム、オルドス(長慶)、 四川、海洋)の生産が7割 新華社China OGPに基づき作成 2016年の天然ガス生産量はシェール・CBM等非在来型ガスの増産で 前年比8%増(10BCM増)の140BCM、シェールガス生産は7BCM←1年 遅れで政府生産目標(6.5BCM)達成 CBMは5BCM、石炭合成ガスは1.6BCM 19 天然ガス需給の不確実性 2010年 (実績) 95 17 108 2015年 (実績) 135 61 193 2020年 (目標) 210 天然ガス生産量 BCM/y 天然ガス輸入量 BCM/y 52~105 天然ガス見かけ消費量 BCM/y 262~315 天然ガスの1次エネルギーに占 % 4 6 8.3~10 める比率 天然ガス「13・5計画」に基づき作成、輸入量・消費量は1次エネルギーに 占める消費の比率8.3~10%で試算 天然ガス「13・5計画」では天然ガスは国 30% 2,400 25% 1,900 20% 1,400 15% 900 10% 400 (100) 2006年 (億m3/年) 5% 2008年 国産ガス 2010年 LNG 2012年 輸入パイプラインガス 2014年 輸出 2016年 0% 内供給主体とあり、消費・輸入見通しの 記載なし(1次エネルギー消費に占める 目標から20年の需要を、生産量見込み -需要で輸入量を算出) CNPC(ETRI)は17年の天然ガス消費を 前年比5.9%増の216BCM、2020年の需 要(ベースシナリオ)を年8%増の 280BCMと予測、都市ガスの成長、発電 の着実な増加、工業用燃料も有望だが 政府目標達成には政策的支援と行政 指導の強化が必要と指摘 消費成長(%) 天然ガス需要、供給ともに伸びは石油に比べ高い。しかし需要、国産天然ガ ス供給、輸入ガス供給のいずれも不確実性あり 20 天然ガス(非在来含む)の増産は容易ではない 2015年 (目標) 在来型(タイトサンドガスを含 む)生産 シェールガス生産 CBM・CMM利用 計 2015年 (実績) 2015年目標 未達 2020年 (目標) BCM/y 139 125 -14 157 BCM/y BCM/y 7 10 156 5 9 138 -2 -1 -17 30 16 203 天然ガス「12・5計画」、「13・5」計画等に基づき作成 前回の「12・5計画」時の生産目標はいずれも未達 需要の伸び鈍化で在来型への投資を抑制 政府はシェールガスの2020年生産目標を下方修正(60~100BCM→30BCM) 現在シェールガス主力生産地域であるSinopecの重慶涪陵(Fuling)鉱区は1期の生 産能力(5BCM/y)の構築を終え、現在2期17BCM/yの開発中だが、1期に比べ難易 度上昇。他の鉱区開発も難航しており30BCMの目標達成は容易ではないと見られ る。 政府はシェールガス、CBMの2020年供給見通しを下方修正したが、2020年 の国産天然ガス供給は政府見通しを下回る可能性。 21 輸入天然ガスはどこから調達するのか? パプアニューギニア 4% LNG 20年のLNG長期契約:約4,100万t (55BCM)←輸入実績は契約量を下回 その他LNG 3% る 豪州 22% パイプライン 20年のパイプライン長期契約(ロシ アを除く):約85BCM←輸入実績は契 トルクメニスタ ン 40% カタール 9% インドネシア 5% マレーシア 5% ミャンマー 5% 中国国別天然ガス輸入(2016年) China LNG Weekly他に基づき作成 ウ ズ ベ キ ス カザフス タ タン ン 1% 6% 約量を下回る 13・5計画で建設が明記された輸入 ガスパイプラインの供給は20年以 降(段階的) 中央アジアパイプライン(Line D)30BCM 露中天然ガスパイプライン(東ルート) 38BCM 2016年の天然ガス純輸入量は前年比23%増(13BCM増)の70BCM 輸入比率34%に上昇(LNGは天然ガス輸入の48%、約2,600万t) 2020年時点の輸入ガス契約量はLNGとパイプライン計140BCMだが、輸入量は契約量 を下回る可能性。長期的にはロシア・中央アジアからの輸入が増加の見通し 22 参考:天然ガス需給推移 天然ガス需給前年同期比増減(2014Q1~2016Q4) 需給左軸(億m3)、対前年同期比消費成長(%) 80 16% 70 14% 60 12% 50 10% 40 8% 30 6% 20 4% 10 2% 0 0% -10 -20 -2% 14Q1 14Q2 14Q3 国内生産 14Q4 15Q1 15Q2 LNG輸入 15Q3 15Q4 16Q1 パイプラインガス輸入 16Q2 16Q3 16Q4 -4% 見かけ消費 新華社China OGP等に基づき作成 国産ガス供給は輸入ガス長期契約の影響を受ける可能性 23 天然ガス需要に影響をもたらす要因 経済成長 構造改革vs景気対策 “2017年は中国共産党人事の年” 高い成長目標(2020年まで平均6.5%) 企業債務と金融リスク 石炭や石油からの燃料転換と政府の支援 「煤改気」プログラムの進展 石炭・重油ボイラー、公共交通機関の天然ガス・電化 24 参考:省別GDP(16年Q4) 遼寧省、黒竜江省、チベット自治区、新疆ウイグル自治区は未発表のためQ3の値) 25 参考:電力消費推移(セクター別) 70,000 億kWh 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 電力消費増減(億kWh) 0 2005 2010 一次産業 2011 2012 二次産業 2013 三次産業 2014 2015 2016 5,000 生活消費 中電連に基づき作成 16年:前年比5%増の5.9億kWh 4,000 3,000 2,000 1,000 0 -1,000 2011 2012 一次産業 2013 二次産業 2014 三次産業 2015 2016 生活消費 中電連に基づき作成 16年:工業用需要回復 サービス・家庭11%増 26 「13・5計画」における対外投資(石油・天然ガス) 石油・天然ガス「13・5計画」における国際協力・対外投資 エネルギーと金融分野の協力を進め、企業の対外進出のレベルを向上 ロシア・中央アジア、中東、アフリカ、米州、アジア太平洋地域における油ガス協力事 業を向上あるいは推進 中国に優位性のある設備、技術、標準、サービスの対外投資を拡大。一帯一路沿線 国とのインフラ設備の相互接続を図る “グローバルエネルギーガバナンス”(全球能源治理)への積極的な参加、原油先物 市場の建設、IEA、エネルギー憲章条約等の国際組織との協力を通じ2国間あるいは 多国間のエネルギー協力を進め、発言権を得る。 具体的な数値目標なし 27 対外投資の現状 中国国有石油企業(NOCs)の国外資産・企業M&Aは2009 ~2013年の急拡大から2014年以降は鈍化。主な要因は低 油価、汚職取り締まり。当面保有資産の管理と入札への参 加(ex:CNOOCのメキシコ深海鉱区)等に注力か(既存整 理・売却の動きは現状なし)。 国家開発銀行等政策銀行の融資、“一帯一路”沿線国へ のインフラ・サービス等の輸出は政策的奨励分野 活発な非国有石油企業による対外投資(北京燃気、GeoJade Petroleum) 28 参考:中国NOCsの国外上流投資のトレンド 企業 NOCs国外投資 活発化 ’05~ 08 NOCs NY・香港等 でIPO ’00~‘01 NOCs国外投資 開始 ‘93 需給 政策 ‘90s NOCs国外投資 資産・企業買収 減速 ’14~ ガス純輸入国 ’06 石油純輸入国 ’93 走出去 (国外進出 奨励)’96~ NOCs国外投資 資産・企業買収 急拡大 ’09 ~’13 石油産業 改革(二大 石油集団、 IPOへ)‘98 パッケージ投 資(Loan For Oil)’09~ ‘00s ‘10s 国有企業 改革、汚職 取り締ま り’13~ パッケージ 投資(一帯 一路)’13~ 各種資料に基づきJOGMEC作成 ’09~’13は高額の国外上流資産・企業買収(M&A)が相次ぎ、M&A投資額は年 150~250億ドル、世界の上流M&Aの10%前後(特にSINOPECが積極的なM&Aを 実施。国内成長の限界により、開発資産・企業の買収による性急な規模拡大を 図った側面) 29 参考:国外投資資産・企業買収急拡大(’09~’13) CNPC SINOPEC CNOOC ・Eniの東アフリカ資産 (Area4権益20%を含 む)42.1億ドル(2013 年) ・Kazmunaigasから Conocophillipsのカシャ ガン権益8.3% 50億ド ル(2013年) ・Addax買収 88.19億 ドル(2009年) ・Galpのブラジル子会 社株式51.8億ドル (2011年) ・ConocoPhillipsのオイ ルサンド資産 46.5億 ドル(2010年) Repsolブラジル資産の 40% 71億ドル(2010 年) ・加Nexenを179億ドル (2012年) 各種資料に基づき作成、買収金額(負債を含む場合もある)、時期は合意段階 買収後トラブルに見舞われている事例もあるが、現状資産の 売却事例はなし 30 2016年以降の主な国外上流投資 企業名 非国有石油企 Geo-Jade 業 Petroleum(洲 際油気) 合意時期 16年3月 カナダBankers Petroleumを5.75億カナ ダドル(4.4億米ドル)で買収 ENN(新奥) 16年3月 豪Santos株式11.7%を7.5億ドルで取得 CEFC (華信能 源) 16年9月 台湾CPCからチャドPermit H権益35%を 取得(取得額未公表) Beijing Gas 16年11月 ロシアRosneftからVerkhnechonsk油田 20%を11億ドルで取得 CEFC (華信能 源) 17年2月 アブダビからADCO権益4%を取得(サイ ンボーナス8.8億ドル) 17年2月 アブダビからADCO権益8%を取得(サイ ンボーナス17.7億ドル) 国有石油企業 CNPC その他16年12月、CNOOOC Ltd.メキシコ深海入札(ラウンド1.4)Block1、4落札 非国有石油企業が積極的 31 対外投資に影響をもたらす要因 政府の対外投資・運用に対する厳しい姿勢 政府は対外投資を奨励する一方で “急速に成長したがリ スクコントロール、収益力が下がっている”と指摘。 資本流出規制 中国は資本流出圧力に直面、資本規制策を講じている模様 国有石油企業の財務、既往投資 国有石油企業は低油価の中コスト削減、既往投資案件の手 当を優先。09~13年のようなM&Aラッシュの再来は考えにくい が油価上昇局面において選択的に投資を行って行く姿勢 32 まとめ① エネルギー「13・5計画」は前回の五か年計画と同様に消費 総量の抑制、効率の向上、低炭素化を図りつつ自給率を維 持することを目指している。石油と天然ガスの消費は石炭と 非化石エネルギーによる。特に天然ガスは石炭や石油から の転換次第。 石油「13・5計画」のポイントは供給安定、輸送・貯蔵インフラ (備蓄)の整備、石油からの燃料転換、技術開発・装備の国 産化。成熟油田の減退抑制、西部陸上や深海開発加速に より生産維持を図る計画だが、低油価による投資抑制の影 響脱却には一定の時間を要する。基本的には中東からの 調達が増加、17年はOPEC減産によりシェア低下の可能性。 33 まとめ② 天然ガス「13・5計画」のポイントは国内供給増加、ガス貯蔵、 ピーク調整設備等のインフラ整備、市場化、高効率利用(石 炭からの燃料転換)。需要、生産、輸入ガス供給のいずれも 不確実性あり。国内供給は政府予測を下回り、ガス(LNG)輸 入量は長期契約を下回る可能性。長期的にはロシア・中央 アジアからの輸入が増加の見通し。 国有石油企業の対外投資は低油価、汚職取り締まり等の影 響で抑制的、非国有石油企業による対外投資が活発。政府 の対外投資・運用に対する厳しい姿勢と資本流出規制の影 響が懸念要因。国有石油企業はコスト削減、既往投資案件 の手当を優先しつつ選択的に投資を行って行く姿勢。 34
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