デジタル時代における対面チャネル及び 相談サービス提供の重要性 今後、日本における銀行のリ 新たな消費世代と新たな 営業店の復活:顧客対応の テールビジネスの成長には、い 銀行の価値 パーソナライゼーション くつかの障壁が立ちはだかりま モバイルなどを用いた決済・送金といっ 営業店は顧客の進化するスピードについ す。大きな経済成長は見込めず、 たデジタルチャネル経由での取引処理 ていかねばなりません。それには、どの 市場は成熟を迎え、マイナス金 サービスに対するニーズの高まりは、営 ようにすればよいのでしょうか。デジタ 利によってこれまでのような利 業店の終焉のように映ることもあります ル・バンキングが主流となった場合、顧 が、本質的にそれが意味するものは、従 客を繋ぎ止めるにはどうしたらよいので 益確保は難しい状況となってい 来型の営業店の在り方の終焉に他なりま しょうか。若年から高齢に至る様々な顧 1 ます 。この状況下で、収益を せん。営業店の新たな活用が、銀行の新 客に、再び営業店へと足を運んでもらう 確保するためには、今一度顧客 たな価値を創造する鍵となります。デジ には何が必要なのでしょうか。 タル・サービスが新たな顧客体験や期待 の新たなニーズと期待に焦点を を生み出してきたように、営業店におけ 1 つの答えは、顧客の状況に合わせた対 当てることが重要です。 る対面サービスでも、新たな顧客体験の 面型の相談機能の強化にあると考えます。 デジタルを活用して業界をリードする サービスを提供するとともに、従来の対 面サービスの中心である営業店の役割を 変え、商品やサービスの幅を広げ新たな 顧客体験を提供することが肝要です。 デジタルサービスと既存のマーケティン グ資源である対面サービスを組み合わせ た戦いは既に始まっており、確実に加速 していくと考えられます。アクセンチュ アがグローバルで実施した金融に関する 消 費 者 調 査(The Accenture Financial Services 2017 Global Distribution & Marketing Consumer Study) は、 日 本 の銀行が変化を迫られていることを如実 に示しています。 この調査結果によれば、海外 18 か国にお いては、平均して約 70% の顧客が銀行の サービスに満足していると回答している のに対し、日本では僅か 36% の顧客しか 満足していません。 海外の主要銀行の多くは、リテールビジ ネスの変革に既に取り組んでおり、デ ジタル・サービスと営業店の機能強化を 図ろうとしています。このような取組み により、顧客満足の改善と新たな競争優 位性を確立することができ、マーケット シェアの拡大を図ることができると考え ています。 2 提供が可能と考えてます。 日本における金融機関の顧客は、海外に 比べ、モバイルでのオンライン操作より も、営業店窓口や ATM を好む傾向が強 2 いのが特徴です 。実際、調査における 回答では、ロケーションの便利さが日本 人が銀行を選ぶ理由の一番となっていま す。海外では押しなべて、3 番目に留ま ります。 しかし、日本においてもこういった傾向 は変化しつつあります。若年層は銀行を 選択する際に、ロケーションをさほど重 要視していません(図 1 参照)。アクセン チュアの調査によれば、日本の若年層顧 客は、海外と同様に、オンラインで商品 を検索し購入するなどデジタル・サービ スを利用する傾向にあります。35 歳未満 の回答者のうち約 1/4(24%) が、デバイ ス上で自分の口座情報を、少なくとも週 に一度は確認していると回答している一 方、50 歳を超える顧客層で 10% に過ぎ ません。 若年層が成長するにつれ、銀行における 通常の取引処理は、モバイルなどデジ タルで実現できることが「当たり前」と なるでしょう。こういった顧客に対して 対面でこそ受けることができる価値ある サービスが提供できなければ、顧客は来 店を控えるようになり、銀行は顧客来店 に伴うセールス機会を失うリスクがある でしょう。 今回の調査においては、銀行の窓口担当 者と直接話すことの最大のメリットは、 質問や個別のアドバイスを受けられるこ とにあると回答されています。これは日 本だけでなく海外においても同様です。 銀行はより戦略的なサービスを営業店に おいて提供することが必要です。、顧客の 資産形成や運用について、時間をかけて 相談に乗り、長期的な目標設定(例えば 退職後の資産運用や不動産に対する相談 相続など)についてサポートしていく事 が重要です。 これは容易に思えるかもしれませんが、 大きな変革を必要とします。例えば、デ ジタル・サービスと営業店にて提供され るサービスはシームレスに一体化されな ければなりません。約 1/3 以上 (36%) の 日本の顧客が、営業店の対面型サービス とデジタル・サービスの融合を希望し、 どの顧客接点においてもシームレスで顧 客の状況に合わせた対応を望んでいるの です。 このデジタル・サービスと対面型サービ スの融合は、営業店のあり方を検討する 際の中心テーマとなることが多くありま す。例えば、サンタンデール銀行の営業 店の普遍的なコンセプトは、デジタル・ サービスと 1 対 1(マンツーマン)の対 面型サービスの融合を重視しており、そ の狙いはデジタル及び対面サービスの質 的向上です 3。 図1:世代別 銀行へのロイヤリティー・ドライバーとしてのロケーションの重要度 63% 50% 48% 46% 42% 65才以上 51-64才 しかし、銀行は「相談をする場」という よりも、 「取引処理を行う場」として捉え られているのが現状です。日本において は、78% の顧客が銀行を未だ基本的な取 引処理を行う場所と見なしており、銀行 をネットワーク創りやアドバイス主導の サービスを受ける場所だと考えているの は 22% に留まります。銀行は対面型相談 サービスの提供に、注力する必要があり ます。 一方で、営業店に従来型の取引処理を求 める顧客が一定存在していることも事実 です。従来のサービスは可能な限り残す 必要性はありますが、また一方で新たな ニーズが発露し始めており、それに対応 する必要があるということも事実です。 デジタル・チャネルを利用して新たな相 談・サービスを受けたいという顧客が現 れることが予想されます。これは我々の 調査結果からも証明されており、日本人 顧客の 1/4(25%) が、モバイル・デバイス 上で必要に応じて、即時に対面型アドバ イスへのアクセス出来る事を望むと回答 しています。一つのモデルで全ての顧客 を網羅する事は難しく、顧客を満足させ るには、自分にあったものを顧客自身に 選んでもらうのが最善といえます。 35-50才 22-34才 18-21才 営業店の復活:デザインの 勝利 DBS 銀行は、営業店内のレイアウトと人 員配置をより顧客中心的なモデルに変化 させ、行員が自由に商品や相談サービス 4 を提供できるようにしました 。 しかし、日本の状況は海外とは異なり、 他国での成功例が日本でもそのまま通 用するとは限らないことが調査からも明 らかです。銀行はどの方法が最善かを見 極めなければなりません。銀行のサービ スに満足している限られた顧客でこれら の新しいモデルを試みなければならいの です。 デジタル化の波は、営業店サービスに とって脅威ではなく、変革やマーケット シェア拡大を図る好機であると言えま す。伝統的な銀行か新規参入企業かと いったことに関わらず、素早い対応がで きる銀行にこそ勝算があります。そうで ない銀行は、低いマージンで、デジタル での取引処理業務に追われ、老朽化して いく営業店網を抱えながら、後塵に拝す ることを余儀なくされるでしょう。 3 参照 1https://www.bloomberg.com/news/ articles/2016-11-13/japanese-bank-profitsseen-sliding-as-margins-shrink-yen-jumps 2http://www.japantimes.co.jp/news/2015/09/22/ business/internet-banking-slow-take-root-nationbranches-offer-friendly-face-time/#.WHhiJRt95GM 3http://www.retail-focus.co.uk/news/1702santander-unveils-branch-of-the-future 4https://www.dbs.com/newsroom/ branch_banking/default.page お問い合わせ 調査方法 2016 年 6 月、アクセンチュアは、世界 18 の国と地域 (日本、米国、カナダ、ベネルクス 3 カ国、フランス、 ドイツ、アイルランド、イタリア、北欧諸国、スペイン、 英国、ブラジル、チリ、オーストラリア、香港、インド ネシア、シンガポール、タイ)で銀行、保険、資産管理 のサービスを利用している消費者、3 万 2,715 人を対象 に調査を実施しました。そのうち、日本の顧客は 2,000 人です。銀行口座を持ち、保険を契約していることを前 提条件として回答者を募り、また複数の世代と所得水準 を網羅するよう配慮しました。 アクセンチュアについて アクセンチュアは「ストラテジー」「コンサルティング」 ご不明点などがあれば、お気軽にお問い合わせください。 「デジタル」「テクノロジー」「オペレーションズ」の5つの 領域で幅広いサービスとソリューションを提供する世界 金融サービス本部 最大級の総合コンサルティング企業です。世界最大の規模 統括本部長 を誇るデリバリーネットワークに裏打ちされた、40を超す 中野 将志 業界とあらゆる業務に対応可能な豊富な経験と専門スキル [email protected] などの強みを生かし、ビジネスとテクノロジーを融合させ て、お客様のハイパフォーマンス実現と、持続可能な価値創 金融サービス本部 出を支援しています。世界120カ国以上のお客様にサービス ディストリビューション & を提供する39万4,000人以上の社員が、イノベーションの マーケティング グループ統括 創出と世界中の人々のより豊かな生活の実現に取り組んで マネジング ・ ディレクター います。 木原 久明 [email protected] アクセンチュアの詳細はwww.accenture.comを、 戦略コンサルティング本部 アクセンチュア株式会社の詳細は マネジング ・ ディレクター www.accenture.com/jp をご覧ください。 村上 隆文 [email protected] 金融サービス本部 シニア・マネジャー 近藤 龍司 [email protected] Copyright © 2017 Accenture All rights reserved. Accenture, its logo, and High Performance Delivered are trademarks of Accenture. 17-1004
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