2017年に 投資銀行ビジネスが 直面する10の課題 イントロダクション 2017年に投資銀行ビジネスが直面する10の課題 加速する変化の波: 課題を乗り越えて前進するために アクセンチュアの「投資銀行ビジネスが 直面する10の課題」シリーズの9回目で すが、投資銀行ビジネスにとっては、依 然として、以下の3つの面で厳しい現実 が立ちはだかっています。 1. 見直しを迫られるコストベース 2. 継続的に変化する当局規制への対応 3. デジタル技術がもたらす希望と課題 さらに注視すべき点として、若干の金利上昇があったとしても、債 券・商品・為替にとっては依然として不確実な環境が続いており、 金融危機以前の利益水準の回復はほとんど期待できない、という ことが挙げられます。こうした現実に、欧米の主要選挙やイギリス のEU離脱を問う国民投票などの結果を考え合わせると、唯一確 実に言えるのは、2017年は不確実性こそが標準になる、というこ とです。 ビジネス環境に旧来から存在していた課題や新たに発生した課 題に投資銀行が対応していく上で、2008年以前の「平常」状態 そのことを裏付ける動きの1つがフィンテック金融への投資で す。2010年から2015年にかけて、投資銀行がフィンテック事業の 立ち上げに投資した額は、推定470億ドル以上と言われていま す 5 。こうしたデジタル技術の影響は、セールス、トレーディング等 の部門からオペレーションやコンプライアンスのプロセス、各種 業務に至るまで、組織のあらゆる部分へ波及しています。 フィンテックへの投資およびフィンテックの導入が拡大している 以上に、今年注目されるのが、新たなケーパビリティの獲得を加 速化するため、社外に目を向ける投資銀行が増えているという点 です。投資銀行が変革を実現する重要な手段としてユーティリテ ィサービス(業界横断型のシェアードサービス)やエコシステムに 関心を持っていることは以前も報告しましたが、その傾向がます ます強まっている兆しが見られます。 • クラウドの利用の加速 J.P.モルガンのCIO、デイナ・ディージー氏はパブリッククラウ ドの利用を検討していることを表明し、投資銀行がデジタル技 術を導入し、戦略上の優先課題を実行する上でクラウドサービ ス・プロバイダーが重要な役割と果たすということを強調しま した6 。 への回帰が選択肢にないことは明らかです。その代わり、資本負 • コンソーシアムによる協調型技術の実用化に向けて基準の制 ツ銀行、モルガン・スタンレー等が削減目標を発表)、従来とは違 50社以上が参加するR3CV(R3コンソーシアム)7 や、11月末現 担の増大に対し、リスク資産を減らしたり(クレディ・スイス、ドイ うビジネスモデルへ重点を移したり(例えば、ゴールドマン・サッ クスが消費者ローン事業Marcus1を開始、モルガン・スタンレー は2007年に400億ドルだった預り金残高を2015年には1500億 ドルにまで拡大 2)、不採算事業や地域から撤退(例えば、クレデ ィ・スイスは欧州の証券化商品市場から撤退 3、ドイツ銀行はメキ シコの資本市場から撤退 4)といった動きが見られるようになって います。 昨年のレポートでは、デジタル技術が投資銀行に新たなビジネス チャンスや課題をもたらすものとして、ますます重要な役割を担う ようになってきていることを報告しました。 定やオープンソース化の推進 在、プレミアムメンバー13社、一般メンバー77社、アソシエート メンバー4社を擁するハイパーレジャー(Hyperledger)8 といっ たコンソーシアムは、ブロックチェーン技術の実用化に向けて 金融業界がどのような役割を果たせるかを示すものです。 • デジタルプラットフォーム利用拡大の継続 バンク・オブ・アメリカ メリルリンチは、シンジケートローンの セカンダリー取引用電子プラットフォームInstinct® Loansをス タートさせました9 。 以上のような動向を分析した結果、今年の「10の課題」として大 きく3つのテーマが浮かび上がってきました。 シンプル化 イノベーション 前から始まっていましたが、これは2017年も引き続き優先課題の1 新しい金融商品の組成、電子取引所の開設、アナリティクスプラッ 投資銀行ビジネスにおいてシンプル化を目指した動きはしばらく つとなっていきます。なぜなら、これは成長機会の拡大、お客さま へのサービス向上、レガシー技術の負荷軽減(投資資金の確保や 新技術採用の障壁低減なども含む)、共通プロセスを通じたシェ アードサービス機能の整備、エラーや重複調整の低減などの実現 に向けて重要な鍵となるからです。今年、シンプル化に関しては、 以下の4つの課題を提言します。 • 課題1: 成長と独自性追求に向けた事業の「選別」 • 課題2: 攻めのコスト削減で筋肉質な組織へ • 課題3: オートメーションからインテリジェンスへ • 課題4: 立地戦略の再定義 デジタル化 多くの投資銀行は、過去2年間の実績を基盤として、デジタル技術 への投資、デジタル技術を利用した仕組みへの参加やそのための 協働をさらに推進しようとしており、第三者機関に参加してもらう ための新しい方法を模索しています。今年、デジタル化に関して は、以下の3つの課題を提言します。 • 課題5: デジタル・タレントの適正な配置 • 課題6: 顧客体験の向上 • 課題7: クラウド利用の加速化 投資銀行業界は、常にイノベーションを追い求めてきた業界です。 トフォームの活用など、例を挙げれば枚挙にいとまがありませ ん。2008年の金融危機直後には、投資銀行はコストとコンプラ イアンスに関わる問題への対応に追われ、イノベーションの動き は若干停滞してしまいました。これらの課題は依然として存在する ものの、投資銀行は新たな現実にも適応してきました。そして、こ うした課題に対応し、成長を牽引するにはイノベーションが重要 な役割を果たすということを多くの投資銀行が認識しています。今 年、イノベーションに関しては、以下の3つの課題を提言します。 • 課題8: 正しくイノベーションを起こす • 課題9: リサーチ機能を再検討する • 課題10: ブロックチェーンの早期採択 アクセンチュアは昨年の「10の課題」において「デジタル技術はす べてを変える」とお伝えしましたが、この1年間で、それが現実とな りつつある証拠が出てきています。そして、それは今年も引き続き、 すべての課題に共通するテーマとなっています。また、依然として 投資銀行経営陣の関心が強い課題も確認しています。例えば、ク ラウドソーシング、業界向けユーティリティー、サイバーセキュリテ ィー、データ管理およびデータ・ガバナンスの重要性などです。し かし、これらについてはすでに過去にも説明しているため、ここで 繰り返すことはいたしません。2017年の課題全体を包括するキー ワードは「加速化」です。 フィンテック投資の拡大、ロボティクスによるオートメーションの 急速な拡大ブロックチェーンのパイロット運用から分散型台帳技 術を基盤にした市場での運用開始などが、こうした加速化の結果 として考えられるものの一例です。そして、これらは来年、投資銀 行業界に課題とビジネスチャンスの両方をもたらすことになるはず です。 「2017年の 課題全体を包括 するキーワードは “加速化”です」 アクセンチュア金融サービスについて アクセンチュア金融サービスは、バンキング、キャピタル・マーケ ットおよび保険の3セクターにおける様々な金融機関に対し、世 界各国で「ストラテジー」 「コンサルティング」 「デジタル」 「テク ノロジー」 「オペレーションズ」の5つの領域で幅広いサービスと ソリューションを提供しています。 国内外の金融業界の変化をいち早くとらえ、金融機関の中核戦 略およびオペレーションに重要な役割を果たすことで、企業のみ ならず業界全体の成長に貢献したいと考えています。 クライアント企業のトップラインの拡大、コスト削減、高まる規制 やリスクへの対応、合併・買収に伴う統合作業、新しいテクノロ ジーや複数チャネルサービスの導入等、支援領域は多岐に亘り ます。 3つのセクターにおける主な金融機関は以下の通りです。 • バンキング:リテール銀行、商業銀行、総合金融機関、政府系 金融機関、クレジット・信販会社、リース会社 • キャピタル・マーケット:証券会社、信託銀行、投資/ 投資顧問 会社、資産運用会社、証券保管機関、各種金融商品取引所、清 算および決済機関 • 保険:損害保険会社、生命保険会社、年金保険会社、再保険会 社、保険ブローカー フォーチュン100社にランキングされている92%の金融機関に対 しサービスを提供しています。また、グローバルのトップ顧客10社 のうち9社と、20年以上継続してサービスを提供しています。 お問い合わせ ご不明点などがあれば、お気軽にお問い合わせください。 執行役員 金融サービス本部 アジア・パシフィック 証券グループ統括 兼 インクルージョン & ダイバーシティ統括 堀江 章子 金融サービス本部 マネジング・ディレクター 証券グループ統括 坂本幸一 [email protected] 本レポートの製作にあたり多大なるご協力を頂きましたエド・ブ ロムクヴィスト氏、ステファニー・ガリスト氏、プロッガ・ラッシド 氏、イリーナ・スカーレット氏に感謝致します。 「2017年に投資銀行ビジネスが直面する10の課題」 の全文を読む(英語のみ): www.accenture.com/10challenges 1https://www.bloomberg.com/news/articles/2016-10-13/ goldman-sachs-debuts-marcus-online-loans-to-disrupt-credit-cards 2 Morgan Stanley Financials (through Cap IQ) 3https://www.credit-suisse.com/us/en/about-us/media/news/articles/ media-releases/2016/03/en/accelerates-restructuring-global-markets. html 4https://www.bloomberg.com/news/articles/2016-10-27/ deutsche-bank-agrees-to-sell-mexican-units-price-not-disclosed 5 Accenture analysis on CB Insights data アクセンチュアについて 6http://www.americanbanker.com/news/bank-technology/ unexpected-champion-of-public-clouds-jpmorgan-cio-danadeasy-1091539-1.html ル」 「テクノロジー」 「オペレーションズ」の5つの領域で幅広いサ 8https://www.hyperledger.org/about/members アクセンチュアは「ストラテジー」「コンサルティング」「デジタ ービスとソリューションを提供する世界最大級の総合コンサルテ ィング企業です。世界最大の規模を誇るデリバリーネットワーク に裏打ちされた、40を超す業界とあらゆる業務に対応可能な豊 7http://www.r3cev.com/about/ 9http://newsroom.bankofamerica.com/press-releases/globalmarkets/bofa-merrill-lynch-launches-instinct-loans-electronicsyndicated-loan 富な経験と専門スキルなどの強みを生かし、ビジネスとテクノロ 免責事項 能な価値創出を支援しています。世界120カ国以上のお客様にサ 配布されています。いかなる形態にせよ、本レポートの一部でも ジーを融合させて、お客様のハイパフォーマンス実現と、持続可 ービスを提供する39万4,000人以上の社員が、イノベーションの 創出と世界中の人々のより豊かな生活の実現に取り組んでいます。 アクセンチュアの詳細はwww.accenture.comを、アクセンチュア 株式会社の詳細はwww.accenture.com/jpをご覧ください。 本レポートはアクセンチュアにより情報提供を目的として作成、 複製する場合は、アクセンチュアによる書面での許可が必要にな ります。アクセンチュアが判断材料として参考にしている情報源 および情報が正しいものであることを慎重に精査していますが、 ここに掲載されている情報が全て正しく、完全なものであること を意味するものではありませんし、そのような資料として使用す ることは出来ません。この情報を提供することでアクセンチュア は受託者として行動しているものではありません。本レポートに 記載されている情報、意見は告知なく変更になることがありま Copyright © 2017 Accenture All rights reserved. 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