現地駐在員だより ジェッダだより 水デスク代表・ジェッダ ジャパンデスク代表 竹内 豪 昨年の12月7日にサウジアラビアのジェッダに駐在し,ようやく,1年が経とうとして います。正式の駐在は,カタールに2012年頃から1ヵ月出張して2~3週間日本に戻ると いうほぼ駐在のような3年間を除けば,入社1年目の2000年に赴任したエジプト以来の 16年ぶりとなります。 エジプトに駐在した時期はルクソール事件の一年後ということで,若干の緊張感が残っ ていた時期でした。そういう意味では,現在の中東を覆う緊張感と同じような感覚がある ころだったと言えるのかもしれません。一方,カタールに出入りしていた頃は,サッカー ワールドカップ開催が決まったこともあり,非常に国としての興奮,高揚感と発展を感じ る時期でした。 ジェッダについて 現在,駐在しているジェッダについて書こうと思います。ジェッダに初めて来た時に, ドーハに似ていると感じました。アレキサンドリアは建物も中東っぽくない白壁の建物も あり,晴天の時は地中海を感じさせる雰囲気があるのでジェッダの感じとは違い,ドーハ の雑多な旧市街と,近代都市のような新市街が混在した感じと似ていると感じました。 弊センターのジェッダオフィスがあるジェッダ商工会議所から南側は以前からのジェッ ダの町並みを残すエリアで,北側は新しく拡張し始めたエリアです。しかし,北側が南側 に比べて比較的新しいというだけで,雑然とした雰囲気はあまり変わりません。北側も至 る所で工事中の建物,工事が止まっているプラント,住居が密集している市街とゴチャゴ チャとしています。 ジェッダを代表するものと聞かれれば,いろいろあるのだと思いますが,私は「アルバ イク(Al Baik)」だと思います。「アルバイク」というのは,ジェッダ発祥の鶏の唐揚げを メインとしたファーストフードチェーンで,非常に人気が高く,モールのフードコートや 店舗ではいつも人だかりができています。なかなか飽きのこない独特の味付けで私もはま ってしまい,ジェッダに駐在してからはケンタッキーフライドチキンに行かなくなりまし たし,月に1,2回ぐらいは確実に行っています。出張者がジェッダに来られた時には, 34 中東協力センターニュース 2017・2 一度は「アルバイク」にお連れするようにしています。 「アルバイク」と言えば,味も印象的ですが,買い方も印象的です。レジで注文するのは 普通なのですが,受け取り方がすごいです。レジで支払後にレシートを受け取り,そのレ シートに記載された番号で商品を受け取ることになります。その番号が商品受け取り窓口 にあるモニターに表示されてから受け取りに行くのが普通なのですが, 「アルバイク」では 違います。レシートを受け取ってから直ぐに商品受け取り窓口に行き,押し合いへし合い しながら店員を呼んで自分の注文書を見せて,少しでも早く受け取るように頑張るのが 「ア ルバイク」流です。最初はついて行けませんでしたが,今は人混みをかき分けて最前列に 行き,ビシッと注文書を店員に突きつけて店員にアピールするようにしています。 35 中東協力センターニュース 2017・2 ジェッダ,リヤド,ダンマンの運転マナー ジェッダに駐在してリヤド,ダンマンに月に一度程度のペースで出張して感じるのが各 都市の運転マナーの違いです。あくまでも他の都市に比べてということですが,ダンマン の運転マナーは非常に良く,一般的な交通ルールはちゃんと守ります。初めてサウジアラ ムコが運営するエリアに行った時に,40km/h というサウジアラビアでは考えられないぐ らい遅い制限速度をキッチリと守っているのを見て衝撃を受けたのを覚えています。 次にリヤドですが,運転マナーは良くもなく,悪くもないという感じです。しかし,人 口が密集していることから車の量が多いが駐車場が少ないので,路上駐車も多いです。少 し路地に入ると,片側一車線の道路の両側に路上駐車をびっしりしているので,お互いに バックが苦手なために張り合ってしまって身動きができなくなることがあります。 最後に,ジェッダは酷いです。大逆走,路上駐車,急停止,急発進,急な車線変更等々 なんでもありで,日に一度は交通事故を見かけます。また,クラクションの音を聞かない 日はありません。信号が赤から青に止まれば直ぐにクラクションを鳴らして動かせと合図 してきます。最初はせっかちだなと思っていたのですが,最近になって理由が判明しまし た。信号待ちにスマートフォンを直ぐにいじり始めるので,信号が変わったことに気づい ていない車が多いからのようです。それぐらい,スマートフォンをいじりながらの運転が 多いということです。 特に,ジェッダで車に乗っていて肝を冷やすのは片側三車線の道路で,一番左側を走っ ていた車が急に右折を開始することです。サウジアラビアは右側通行の国なので,右折を するなら右折に向けて段々と車線変更をして左の車線から右の車線に移動し,最終的に右 折するのが普通です。ここ,ジェッダでは,右折したいと考えたら,一番左の車線から一 気に右折を試みてきます。これを見る度に,交通事故が起きた際の手順を頭の中で復唱し ます。 ビジネスを進める上での留意点 さて,最後に,ビジネスを進める上での留意点について書きたいと思います。弊センター ではサウジアラビアの官公庁,政府系機関,民間企業向けに訪日のビジネスミッションを アレンジし,日本と日本の企業を知ってもらうために,施設視察をしたり,研修を受けた り,日本企業に会ったりして,双方のビジネスチャンスにつながる接点を作ることを目標 にしています。ですが,なかなかその後の関係が続いていないなと感じることが多いです。 ミッション後の状況について,サウジアラビアの参加者,視察等を受け入れていただいた 日本企業や面談をされた日本企業にヒアリングをするのですが,その後の関係構築ができ ていないという話をよく聞きます。 ヒアリングを続けて気づいたのは,サウジアラビア,日本の双方が相手からのコンタク 36 中東協力センターニュース 2017・2 トを持っているという状況が多いということです。日本企業は最新の技術・商品を紹介し, 面談では興味があると言っていたのでサウジアラビア側からの連絡を待っていて,サウジ アラビア側は最新の技術・商品を紹介してもらい,面談で興味があると伝えたので日本企 業からの連絡を待っている,という状況になっていることを見かけます。面白いように, 日本もサウジアラビア,共に商売のスタイルはほぼ待ちなので,どちらかが動かないと状 況は進展しません。 そのよう状況からか,サウジアラビアの官公庁,政府系機関,民間企業にヒアリングし て共通して言われるのは, 「日本企業は来ない」です。と言うことは,日本企業側が動いて 行けば,非常に興味を持って話を聞いてくれるということです。ミッション等でできた接 点を活用して,返信がなくてもめげずにコンタクトを続け,再度の面談につなげて会うこ とが大事だと思います。 特に,ジェッダに関しての留意点があります。到着日に予定を入れないことです。日本 人的にはわざわざ出張してきたのだからみっちりと到着日にも予定を入れたいところです が,ジェッダに国外から入国する場合はお勧めしません。なぜなら,入国手続きに時間が かかるケースが多く,時間を読めません。Fast TrackというようなFirst / Business Class 向けのラインは無く,東南アジア,インド,パキスタンからの便と重なると大量に人が並 んでいる上に,一人の審査に15分ぐらいかかることから,遅々として進まないというケー スがあるからです。 いろいろと書きましたが,日本からすると遙か彼方の国で文化も大きく違うサウジアラ ビアですが,2030年までの経済改革計画「ビジョン2030」を発表し,新たなビジネスチ ェンスが生まれています。この便りが,サウジアラビア市場に立ち向かう際の一つの情報 となればと思います。 37 中東協力センターニュース 2017・2
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