リサーチ TODAY 2017 年 2 月 24 日 東京五輪は「第2の復興」と高齢化社会先進モデルをアピール 常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを展望し、みずほ総合研究所は、「2020年東京オリンピック・パ ラリンピックの経済効果」と題するリポートを発表している1。ここでは、サブタイトルを「ポスト五輪を見据えた レガシーとしてのスポーツ産業の成長に向けて」とし、オリンピックを通じたスポーツ産業の活性化を議論し た。下記の図表は、東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う経済効果を当社が試算した結果である。直 接効果に加え、付随効果も含めて経済効果は約30兆円となった。大会にかかわる直接効果は2兆円にとど まるが、都市インフラの整備や観光需要の増大などから付随効果が28兆円になり、雇用誘発効果は、延べ 300万人に上る。ただし、東京オリンピック・パラリンピックはあくまでも通過点であり、真に求められるのは大 会後を見据えたレガシー(将来に向けた成長基盤)の構築にあると我々は考えた。また、海外からの観戦 者やメディア、インターネットを通じて開催国の魅力を世界に向けて発信する貴重な機会、展示場でもある。 高齢化社会のフロントランナーである日本が、パラリンピックを通じて高齢化社会の先進モデルや共生社会 の在り方を世界に示す意義は大きいと考える。 ■図表:東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う経済効果の概要 直接効果 ・施設整備費 ・⼤会運営費 ・⼤会観戦客⽀出 約2兆円 約30兆円 付随効果 ・投資拡⼤効果 ・インバウンド観光消費 ・多⾔語対応 ・スポーツ需要 ・⽇本⾷への需要 ・国際会議 etc. 約28兆円 (みずほ総合研究所 による試算ベース) (資料)みずほ総合研究所作成 次ページの図表は訪日客のこれまでの推移と今後の試算である。IMF世界経済見通し(2016年10月時 点)を基に試算すると、2020年には3,600万人に到達し、政府が掲げる2020年の訪日外客数4,000万人達 成は射程圏内になる。開催決定前のトレンドでは2020年で1,800万人くらいであったことから、約1,800万人 1 リサーチTODAY 2017 年 2 月 24 日 上振れしている。 ■図表:訪日外客数の推移と試算 (万人) 4000 試算値 3500 実績値 3,629 予測値 3000 2500 2000 開催決定前のトレンド 1500 1000 500 0 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 (年) (資料)日本政府観光局、IMF 等よりみずほ総合研究所作成 下記の図表は1964年の東京大会と2020年の東京大会で期待されるレガシーを比較したものだ。1964年 大会では新幹線や高速道路などのインフラが整備され、高度経済成長の礎となった。また、大会を契機に 外食や家電といった新たな産業が勃興した。一方、2020年大会はバブル崩壊という「第2の敗戦」からの 「第2の復興」を世界にアピールするいい機会になる。また、1964年大会がハードなインフラ整備が中心で あったのに対し、2020年は成熟化した高齢化社会に向けたソフト面での先進モデルを世界に示す場となる。 こうした観点から、日本で初の開催となるパラリンピックの意義は予想以上に大きいと考えられる。当社とし ては、今後も更なる検討を加えながら東京オリンピック・パラリンピックが日本経済に及ぼす影響を含めた議 論を進める所存である。 ■図表:1964年東京大会のレガシーと2020年東京大会で期待されるレガシー (資料)みずほ総合研究所作成 1 「2020 年東京オリンピック・パラリンピックの経済効果」 (『MIZUHO Research & Analysis』 2017 年 2 月 9 日) 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき 作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 2
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