今週2月24日、初のプレミアムフライデー

リサーチ TODAY
2017 年 2 月 20 日
今週2月24日、初のプレミアムフライデー
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
プレミアムフライデーとは、月末の金曜日は早い時間帯(正午~午後3時頃)に仕事を切り上げることを
奨励し、買い物や旅行需要などを喚起させることを目的とした構想だ。名前に「プレミアム」とあるように、値
引きに頼らない、普段よりもワンランク上の消費喚起を目指すものである。第1回は、まさに今週金曜、24日
に実施される予定であり、第2回目以降も、月末の金曜日を軸に実施することが検討されている。ただし、
現段階ではプレミアムフライデー導入企業は多くなく、消費者も自宅でのんびり過ごすという意向が強いこ
とから、その効果は限定的だ。みずほ総合研究所は、プレミアムフライデーによる消費押し上げ効果に関
するリポートを発表している1。期待される分野は旅行消費だが、現段階では0.2~0.3兆円程度の需要喚起
にとどまると試算される。更なる消費の押し上げには、認知度の向上と、それに伴う働き方の見直しが必要
だろう。
下記の図表は、休日や働き方に関する近年の主な施策を示している。2000年代以降、休日が増えたこと
に伴い、休日の過ごし方に少しずつ変化が生じている。プレミアムフライデーは今回の2月だけでない。今
後、毎月月末の金曜日にプレミアムフライデーが実施される見込みである。次の3月31日は、学校の春休
みにあたり、4月28日はゴールデンウィークに近接するため、プレミアムフライデーでなくても行楽に出やす
い。従ってこの制度の定着は、その後の5月や6月の段階で受け入れられるかで見極めることになろう。
■図表:休日や働き方に関する近年の主なトピックス
ハッピーマンデーの適用開始
2000 年
(2000 年:成人の日・体育の日)
(2003 年:海の日・敬老の日)
昭和の日を制定・施行
2007 年
(みどりの日は 5 月 4 日へ)
2015 年
公務員のゆう活がスタート
2016 年
山の日の施行
2017 年
プレミアムフライデーの導入
(資料)みずほ総合研究所
今回、当社では旅行需要に絞って、プレミアムフライデーによる押し上げ効果を次ページの図表の通り
試算した。ここでは「1泊1.5日の国内旅行」及び「2泊2.5日の海外旅行」を想定し、旅行者が増加すること
で創出される旅行消費額をまとめた。今次の試算では、普及があまり進まない場合、旅行消費額は0.2~
0.3兆円程度の増加にとどまる(名目民間最終消費支出の0.09%程度)との結果になった。ただし、プレミア
ムフライデーの普及が進展した場合、押し上げ効果は0.5~0.6兆円程度まで増加する(名目民間最終消
費支出の0.2%程度)。つまりプレミアムフライデーが浸透すれば、旅行支出が個人消費を一定程度下支え
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2017 年 2 月 20 日
する可能性が示唆された。そもそも、日本の旅行産業の問題点は、旅行が限られた休暇に集中し、平日の
稼働率が上がらないことによる非効率性にあった。それだけに、プレミアムフライデーによる宿泊数の増加
は、稼働率の上昇による日本国内の観光産業の活性化につながる可能性がある。
■図表:旅行消費押し上げ効果の試算
(億円)
想定① 旅行創出人数
想定②
海外旅行
普及が進まない
ケース
普及が進む
ケース
個人旅行 ツアー 個人旅行 ツアー
中心
中心
中心
中心
旅行消費
押し上げ効果
2,195
2,637
4,975
5,976
(注)1.旅行創出人数は、プレミアムフライデーが普及するケースとそうでないケースの 2 パターンを想定。
2.海外旅行は、個人旅行とツアー旅行の違いにより、国内消費額にカウントされる額が大きく異なるため、個人旅
行中心のケースとツアー中心のケースの 2 パターンを想定。
(資料)各種資料より、みずほ総合研究所作成
下記の図表は、曜日別の支出を示すが、外食については、他の曜日よりも金曜日の支出額は 56%増加
する結果となった。更に、家計調査によれば「月末の金曜日」の外食支出額は「月末以外の金曜日」と比べ
て 12%増加する。早帰りの普及で外食産業が消費を下支えする可能性があると言えよう。
現段階では残念ながらプレミアムフライデーの定着にはまだまだといった印象で、その認識も低いままの
ように見える。しかし、プレミアムフライデーは新たな消費スタイルを確立する契機となる可能性があるため、
今後の浸透を期待したい。
■図表:各品目の金曜日の一世帯当たり平均支出額(総世帯のうちの勤労者世帯、2014年)
金曜日の支出額
他の曜日
月平均
=100
(円)
品目
199
187
162
156
135
133
126
124
124
122
121
118
117
116
114
114
112
111
107
107
電話及びテレファックス用品
保険
入院・出産費
外食
住居の管理及び修繕
交通費
被服
アルコール飲料
家庭用織物
自動車に関わる諸経費
電気・ガス及び他の燃料
水道料など
履物
自動車購入
ガラス製品,食卓用器具及び家庭用用具
宿泊サービス
理美容
診療費
新聞,書籍及び文房具
他の娯楽品目及び用品,庭及びペット用品
356
2,629
108
14,965 ⇒*月末の場合、
1,209 他の金曜日より
4,046 12%支出額増加
8,586
2,892
346
11,272
661
46
1,242
6,360
632
1,294
6,507
5,771
1,973
3,298
(注)*は、家計調査の二人以上の勤労者世帯から計算。
(資料)総務省「全国消費実態調査」、「家計調査」より、みずほ総合研究所作成
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宮嶋貴之 「プレミアムフライデーによる消費押し上げ効果は 0.2~0.3 兆円」 (みずほ総合研究所 『みずほインサイト』 2017 年
2 月 6 日)。また、『みずほリサーチ』(2017 年 2 月号 2017 年 2 月 1 日)も参照いただきたい。
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