新製品上市におけるバーチャルな連携 クラウド利用でパートナー企業との関係を最大限に生かす 複 雑な疾患を治療する特殊 製剤の創薬ニーズが高ま る中、より多くの治療法・ 医薬品のより迅速な開発を求めて、 ライフサイエンス企業にかかるプ レッシャーはますます強くなって います。その結果、中核事業のプロ セスの多くを外注するライフサイ エンス企業が増える傾向にありま す。 ここ数年、特に製造について社外の 能力に大きな期待が寄せられ、この 傾向がバーチャル製薬モデルの注 目度上昇につながっています。実際、 製薬業界ではバーチャル技術を提 供する企業の存在感が増し、開発パ イプラインにある数多くの新薬の 開発をこれら企業が担っているの です。最小限の固定資産と社員でよ り多くの医薬品を開発することで コストを削減し、開発から上市まで の大幅なスピードアップを実現し ています。 Mike Jovanis Veeva Systems Vault Quality 担当ヴァイスプレ ジデント Mike Jovanis は 、 Vault Quality Suite 担当ヴァイスプレジデン ト。製品戦略、顧客エンゲージメント、 事業開発を担当。ライフサイエンス分野 で 15 年以上の経験を有し、各企業向け の品質ソリューションの開発・設計に従 事している。Veeva 入社前は、Sparta Systems 社の製品管理戦略担当の副社 長。Sparta 社では、製品・垂直市場戦 略・戦略的パートナー連携を推進し、同 社の成長に寄与した。Rutgers Business School でマーケティングの学士号、 Rutgers Graduate School of Management で戦略・国際ビジネスの MBA 取得。 『Contract Pharma』のページより そ の 一 例 が 、 Karyopharm Therapeutics 社です。バーチャル製 造モデルとパートナーとしての医 薬品製造受託機関(CMO)を多数 活用する同社の主眼は、がんその他 の重要な疾患の治療を目的とした、 細胞核輸送と関連ターゲットに対 する画期的な First-in-class の創薬・ 開発・上市にあります。Karyopharm 社は 8 年前の創業以来、あえて数を 限定した社員と 10 数社のパートナ ー企業とで成長してきましたが、 CMO とやり取りする様々な文書す べてに単独の信頼できる監視を常 時維持するという点で、難しい問題 に直面していました。 継続的かつ透明性のあるコンテン ツ管理ができなければ、製造過程の 最終段階に近づいて初めてスポン サー企業が問題に気づくというこ ともありえます。これは悪い影響を 拡大しかねない問題です。情報を早 めにチェックすることは、プロセス のより早い段階で問題を検知し、リ スクを軽減し、先手を打って行動で きることを意味します。通常、スポ ンサー企業は、コントロールを確保 するため大量の文書と情報を COM とやり取りします(時にセキュリテ ィの甘い文書共有方法を使うこと も)。しかし、これがバージョンの 混乱の原因になり、スポンサー企業 にとっては信頼できる監査証跡が 得られにくくなり、それらがすべて コンプライアンスや品質のリスク を招き、プロセス効率に影響してし まうのです。 れた 2016 Veeva R&D Summit で同 社による事例発表がありました。 Karyopharm 社 の 規 制 業 務 担 当 Craig Gassman 参事は、 「かつて当社 は、CMO と文書を共有するために 5 つ以上の異なるチャネルを使って いたため、必要な情報を見つけ、プ ロセスのステータスを常に可視化 し、やり取りの中でどれが最新の文 書か判断するということが困難に なっていました。また、コンプライ アンスにとどまらず、データ完全性 の確保の点でも、明確な Chain of Custody(証拠の連続性)を維持す ることが組織全体にとって極めて 重要でした」とした上で、「世界各 地のステークホルダーとの連携と アクセス維持は、コンプライアンス にも業務上の協調の推進にも、不可 欠な要素になっています」と説明し ています。 Karyopharm 社はこの品質ソリュー ションの導入直後から、カナダにあ る同社の CMO、Piramal Healthcare 社にアクセスを提供しました。 Karyopharm 社が Piramal 社と初めて 業務提携を結んだのは 2011 年、毒 性に関する非臨床試験と試料調製、 第 I 相試験の原料供給の契約でした。 現在 Piramal 社は、第 III 相試験とビ ジネスサポートも提供しています。 同社によると、パートナー企業の監 視に関する規制要件の厳格化も、新 たな課題になっていました。 こうした問題を克服するため、また、 社内のチームと受託するパートナ ー企業のいずれからも信頼され、詳 細な監査証跡の残る単一の常に最 新の情報源を構築するために Karyopharm 社が採用したのが、ク ラウド型品質ソリューションでし た。昨年、フィラデルフィアで行わ contractpharma.com 2016 年 11 月 「CMO 施設で行われている作業に ついてすべての責任を負うスポン サー企業は、規制の要求がさらに高 まることを前提としています。その 結果、情報のやり取りが増加してし まうわけです。Karyopharm も例外 ではありません」と言うのは、 Piramal 社のプログラムマネジャー Leslie Aucoin 氏。 「Karyopharm 社の 新しいクラウドソリューションを 使えば、常時種々のプロジェクトを 完全に把握でき、規制上のニーズや プロジェクト計画についての情報 も社内で容易に得ることができま す。なにより、何年もたってから Karyopharm 社が文書を求めて来る こ と が な く な り ま し た 。」 Karyopharm 社によると、このクラ ウドによって社外パートナーとの 業務が大幅に効率化され、同社のバ ーチャルモデル実施の成功が可能 になったと言います。メリットとし て次のような点が挙げられました。 • • • 品質管理――情報の一元化に より、Karyopharm 社にとっては、 • CMO によるガイドライン遵守 と適切なレベルの試験実施の 確保のために、手間のかかるマ ニュアル確認をする必要がな 2016 年 11 月 くなったこと。 可視性の向上――クラウド利 用により承認されたベンダー はいつでも文書を確認するこ とができ、Karyopharm 社とその パートナーの協調が保たれる こと。 時 間 の 節 約 ― ― か つ て Karyopharm 社では一つの文書 を検索するのに推定で 20 分か かっていたのが、現在は 2 分以 内になったこと。Gassman 参事 は「文書を見つけるのに過去の 手順を遡ったり、担当社員がす でに退社した場合などは存在 しない手順を遡ったり、という 手間がなくなった」と言います。 さらに、Karyopharm 社の新し いソリューションは、規制当局 への申請も迅速化。クラウドを 使うとすべての重要文書や関 連の情報が簡単に見つかり、申 請書類に直接リンクを張るこ とも可能です。 コンプライアンスの強化―― Karyopharm 社では明確な Chain of Custody が確立されたこと。 誰が情報の検証・承諾をしたか Twitter: @ContractPharma が一目瞭然で、バッチリリース プロセスを支えています。リリ ースの前にすべての問題が解 決しているという当局に対す る証明となります。 全般的に Karyopharm 社にとって、 クラウドに移行した最大のメリッ トはパートナー企業との連携が能 率化されたことで、経営効率は約 30%向上したと概算されています。 「最新のクラウド技術により、重要 な製造パートナー企業を当社の品 質プロセスにシームレスに統合し、 各種プロセスを関連の資料文書に リンクさせることが可能になり、コ ンプライアンスが向上します」と Karyopharm 社の Maria Conklin 品質 管理部長が述べています。更に「例 えば不適合を調査しようとすると きには、試験報告書を変更管理文書 とリンクさせるだけ。それで自信を もって調査は完了です。どの手順も 抜けていないこと、どの問題も解決 されていることを規制当局に実証 する完全なパッケージができあが ります。このすべてが過去には考え られなかったほど、素早く効率的に 完了するのです。」と続けています。 『Contract Pharma』のページより
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